特許第6797416号(P6797416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797416
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーのための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20201130BHJP
   C07K 14/745 20060101ALI20201130BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20201130BHJP
   C07K 14/755 20060101ALI20201130BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20201130BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20201130BHJP
   B01J 20/281 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   C07K1/18
   C07K14/745
   C07K14/765
   C07K14/755
   B01D15/00 M
   B01D15/36
   !B01J20/22 D
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-550147(P2017-550147)
(86)(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公表番号】特表2018-512416(P2018-512416A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2016057356
(87)【国際公開番号】WO2016162310
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年2月27日
(31)【優先権主張番号】1506117.9
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ホール,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ブソン,カロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】マロイセル,ジャン−リュク
(72)【発明者】
【氏名】スコグラー,ヘレナ
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525523(JP,A)
【文献】 特表2010−537960(JP,A)
【文献】 特表2005−537479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血漿から治療用タンパク質を精製するためのクロマトグラフィー法であって、内部多孔質コアと外部多孔質リッドとを有する多孔質リッドビーズを含む樹脂を充填したクロマトグラフィーカラムに血漿を充填する工程であって、前記内部多孔質コアはアニオン交換リガンドを備え、前記リッドおよびコアの多孔度により500kDよりも大きい分子の進入を許容しない工程と、前記コアの前記アニオン交換リガンド上に第IX因子(FIX)を吸着する工程と、フロースルー中で分離された血漿タンパク質を収集する工程と、前記コアの前記リガンドからFIXを溶出させる工程とを含むクロマトグラフィー法。
【請求項2】
前記アニオン交換リガンドが、ジエチルアミノエチル(DEAE)、第四級アミノエチル(QAE)または第四級アンモニウム(Q)から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン交換リガンドが第四級アンモニウム(Q)である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
FIX以外の他の血漿タンパク質が、前記コアとシェルとのふるい分け効果によって互いに分離された前記フロースルーで収集され、第VIII因子(FVIII)およびフォン・ヴィレブランド因子(vWF)、IgG、ヒト血清アルブミン(HSA)および補体C3(C3)を含む請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記血漿の充填を1〜20回反復した後、前記FIXが前記コアの前記リガンドから溶出される前に、ランニングバッファーを用いて対応する数のフロースルー(FT)を得る請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
それぞれのFTの特定の画分をプールして、それぞれFVIII/vWF、IgG/HSAおよびC3を得る請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記リッドビーズの総厚さが直径40〜100μmであり、前記リッドの厚さが2〜10μmである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コアの前記リガンド濃度が50〜200μmol/mLである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リッドが、親和性リガンド、疎水性相互作用リガンド、IMACリガンド、カチオン交換リガンドまたはマルチモーダルリガンドを備え、FIX以外の他の血漿タンパク質が、FIXが前記コアの前記リガンドに吸着されるのと同じ工程で前記リッドの前記リガンドに吸着され、血漿タンパク質が前記リッドの前記リガンドから順に溶出され、Fixが前記コアのリガンドから溶出される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リッドの前記リガンドが、免疫グロブリン親和性を有するリガンドである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リッドおよびコアが同じ多孔度のアガロースから製造されている請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記リッドの前記多孔度が前記コアの前記多孔度よりも大きい請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記リッドの前記多孔度が前記コアの前記多孔度よりも小さい請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーの分野に関する。さらに詳細には、本発明は、血漿タンパク質、例えば第VIII因子、フォン・ヴィレブランド因子および第IX因子の精製のためのクロマトグラフィー法に関する。クロマトグラフィー法は、内部多孔質コアと、該コアを取り囲む外部多孔質リッドとを含むマトリックス上で実施される。
【背景技術】
【0002】
血液は、重要な身体機能に必要な様々なタイプの細胞および分子を含み、したがって、例えば輸血のための治療目的で収集される。しかしながら、赤血球または無細胞血漿などの血液から様々な分画を分離して調製することが可能であり、これにより医学的状態をさらに直接的に治療処置することが可能になる。例えば、血液量を回復させるためにアルブミンが使用され、免疫不全のために免疫グロブリンが使用され、血液凝固障害のために凝固因子が使用されるなど、血漿中のいくつかのタンパク質をさらに分離して特定の治療処置に用いることができる。
【0003】
血漿は、例えば様々な機能、様々なサイズ、様々な量のタンパク質を含むことから、様々な血漿タンパク質を精製するための様々な方法がある。精製方法は、単一の血漿の出発プールからいくつかの標的タンパク質を得るように設計されることが多い。この方法は、典型的には、沈殿もしくはクロマトグラフィー法またはそれらの組合せを含む。クロマトグラフィーは、標的タンパク質の純度を高め、有害な副作用のリスクを低減するために使用されることが多い。多くの血漿タンパク質はきわめて強力な活性を示し、汚染物質として存在する場合、患者に投与すると、きわめて低量であっても有害反応を引き起こす可能性がある。
【0004】
収集されたヒト血漿は凍結保存され、血漿タンパク質精製方法の初期段階は、血漿の解凍およびプールである。典型的には1〜6℃の低温で解凍すると、一部の血漿タンパク質が沈殿し、例えば遠心分離によって収集することができる。収集された沈殿物は寒冷沈降物と呼ばれ、例えば凝固第VIII因子(FVIII)およびフォン・ヴィレブランド因子(vWF)の供給源として使用することができる。血漿中のFVIIIの大部分は大きなvWF多量体との複合体として存在し、したがって2つのタンパク質は共精製されることが多い。寒冷沈降物を除去した後の残りの液体は低温消耗した(cryodeplated)血漿または寒冷上清と呼ばれ、これは例えばアルブミン、免疫グロブリンG(IgG)、凝固第IX因子(FIX)の供給源として使用することができる。
【0005】
多くの血漿タンパク質の精製は困難なことがある。これは、望ましくないが強力な活性を有する少量の汚染物質の存在によるものであり得るか、タンパク質が時にそれらの活性を失うかまたは望ましくない活性を獲得することによるものであり得る。例えば、FVIIIは容易に活性を失い、精製に使用される既知の方法は多くの点で満足できるものではない。したがって、良好な収率で血漿生成物を得るために、タンパク質がその活性を保持する条件下で操作することができる改善された方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/024180号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、特にヒト血漿用途のために、血漿タンパク質を精製するためのクロマトグラフィー材料および方法を提供する。クロマトグラフィー材料は、様々な原理、例えば、サイズおよび結合/溶出に基づいて分離することができる。本発明の方法は、治療目的の大きなタンパク質(例えば、FVIII/vWF)および比較的小さなタンパク質(HSA、IgG、FIX)の両方を含む血漿サンプルの精製に特に適している。
【0008】
したがって、本発明は、血漿から治療用タンパク質を精製するためのクロマトグラフィー法であって、内部多孔質コアと外部多孔質シェルとを有する多孔質シェルビーズを含む樹脂を充填したクロマトグラフィーカラムに血漿を充填する工程と(内部コアはアニオン交換リガンドを備え、シェルは不活性であり(すなわちリガンドを備えない)、リッドおよびコアの多孔度によりFIII/vWFなどの500kDよりも大きい分子の進入を許容しない)、コアのアニオン交換リガンド上に第IX因子(FIX)を吸着する工程と、フロースルー中で分離された血漿タンパク質を収集する工程と、コアのリガンドからFIXを溶出させる工程とを含む。クロマトグラフィー法におけるランニングバッファーおよび溶出バッファーの調整は当業者の知識の範囲内であり、以下の実験の項にその例が記載されている。
【0009】
アニオン交換リガンドは、任意のアニオン交換リガンドであってもよいが、好ましくはジエチルアミノエチル(DEAE)、第四級アミノエチル(QAE)または第四級アンモニウム(Q)から選択され、最も好ましくはアニオン交換リガンドはQリガンドである。
【0010】
好ましい実施形態では、FIX以外の他の血漿タンパク質は、コアとシェルとのふるい分け効果によって互いに分離されたフロースルーで収集され、第VIII因子(FVIII)およびフォン・ヴィレブランド因子(vWF)、IgG、ヒト血清アルブミン(HSA)および補体C3を含む。以下の図1Bのクロマトグラムを参照して、ピークA、BおよびCを説明する。
【0011】
別の実施形態では、血漿の充填を1〜20回、好ましくは5〜10回反復した後、FIXがコアのリガンドから溶出される前に、ランニングバッファーを用いて対応する数のフロースルー(FT)を得る。各充填の後に約1カラム体積のランニングバッファーを用いて、充填の数に対応する数のFTを得る。これは、以下の図1A〜1Bにおいてさらに詳細に説明される。
【0012】
別の実施形態では、それぞれのFTの特定の画分をプールして、それぞれFVIII/vWF、IgG/HSAおよびC3を得る。したがって、1つの同じクロマトグラフィーカラムで、FVIII/vWF、IgG/HSA、C3およびFIXのための分離した血漿画分が得られる。
【0013】
好ましくは、シェルビーズ(すなわち、シェル+コア)の総厚さは直径40〜100μmであり、リッドの厚さは好ましくは2〜10μmである。コアのリガンド濃度は、好ましくは50〜200μmol/mLである。
【0014】
さらなる実施形態では、シェルは親和性リガンド、疎水性相互作用リガンド、IMACリガンド、カチオン交換リガンドまたはマルチモーダルリガンド(またはアニオン交換リガンド以外の分離原理で応答する任意のリガンド)を備え、FIX以外の他の血漿タンパク質、例えばFVIII/vWF、IgG、HSA、C3は、FIXがコアのリガンドに吸着されるのと同じ工程でシェルのリガンドに吸着され、血漿タンパク質(選択されたタイプのリガンドに応じてFVIII/vWFおよび/またはIgG、HSA、C3)は、シェルのリガンドおよびコアのリガンド(FIX)から順に溶出される。
【0015】
好ましくは、シェルのリガンドは、免疫グロブリン親和性を有するリガンド、例えば、タンパク質AもしくはGまたは当該分野で公知のそれらの変異体である。
【0016】
本発明の方法に使用される多孔質材料は、好ましくはふるい分け材料、例えばクロマトグラフィーに一般的に使用されるゲル濾過材料などである。内部コアの多孔質材料は、リッドの多孔質材料と同じまたは異なる多孔度を有することができる。多孔質材料は、合成ポリマー材料、例えばスチレンもしくはスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステルおよびビニルアミド、または天然ポリマー材料、例えばアガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラギーナン、ジェランおよびアルギン酸塩から選択される炭水化物材料に由来する。好ましい多孔質材料はアガロースである。
【0017】
シェルおよびコアは、同じ多孔度のアガロースから製造されてもよいが、異なる多孔度で作製されてもよい。
【0018】
第2の態様では、本発明は、上記の方法から得られた血漿タンパク質の治療のための使用に関する。例えば、血液量を回復させるためにアルブミンが使用され、免疫不全のために免疫グロブリンが使用され、血液凝固障害のために凝固因子が使用される。
【0019】
血漿タンパク質、特にFIXは、汚染物質からさらに精製することなく、しかし生体適合性等のために必要な調節を伴って、治療のために使用され得ることが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】プロトタイプ99カラムに適用された血漿のクロマトグラム。数字1〜6=6つのサンプル適用からのフロースルー(FT)ピーク、E=溶出ピーク、CIP=定置洗浄。
【0021】
吸光度280nm−実線、伝導率−点線、pH−破線。
図1B図1Aによるプロトタイプ99カラムに適用された血漿のクロマトグラムの部分拡大図であり、最終(6番目)のサンプル適用および溶出を示している。6=6番目のサンプル適用からのフロースルーピーク;A=大きな分子、例えばFVIII/vWF;B=比較的小さな分子、例えばアルブミン、IgG;C=部分的に保持された材料;E=溶出した分子、例えばFIX。
【0022】
吸光度280nm−実線、伝導率−点線、pH−破線。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ここで、いくつかの非限定的な実施例および添付の図面に関連して、さらに詳細に記載される。
【0024】
実施例1:プロトタイプの合成
一般
マトリックスの容積は確定されたベッドボリュームを示し、グラムで示されたマトリックスの重量は吸入乾燥重量を示す。大規模な反応では、マグネットバースターラーを使用するとビーズの損傷を引き起こすため、撹拌とは、懸架式のモーター駆動の撹拌機を指している。従来の方法を使用して、機能性を分析し、アリル化の程度またはビーズ上のリガンド含量を決定した。
【0025】
担体粒子
使用した担体粒子は、米国特許第6,602,990号に記載の方法に従って調製された高架橋アガロースビーズであった。米国特許第6,602,990号はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。ビーズは、88マイクロメーターの体積加重平均直径(D50、v)および細孔容積の69%がMw110kDaのデキストラン分子に利用可能であるような細孔サイズ分布を有していた。これは、「Handbook of Process Chromatography,A Guide to Optimization,Scale−Up and validation」(1997)Academic Press,San Diego.Gail Sofer&Lars Hagel編、ISBN 0−12−654266−X、p.368に記載の方法に従って測定した場合、ビーズ上のデキストラン110kDaのKdが0.69であるとも表現することができる。
【0026】
アリル化(プロトタイプ76)
6xゲル容積(GV)の蒸留水を用いて250mL(g)の担体粒子を洗浄し、次いで3xGVの50%NaOHを用いて洗浄した。次いで、ゲルを吸引乾燥させ、2Lの丸底フラスコに移した。485mLの50%NaOHを添加し、機械的プロペラ撹拌を適用し、フラスコを50℃の水浴に浸漬した。30分後、80mLのアリルグリシジルエーテル(AGE)を添加した。18.5時間反応を進行させた。1xGVの蒸留水、3xGVのエタノール、次いで8xGVの蒸留水を用いてゲルを洗浄した。
【0027】
滴定により、アリル含量、276μmol/mLを測定した。
【0028】
プロトタイプ99
部分臭素化およびシェル不活性化
アリル化ゲルスラリー(プロトタイプ76)171.8gをガラスフィルター(por.2)に移し、吸引乾燥させた。乾燥したゲルを、機械的撹拌機を備えた1000mLの丸底フラスコに移す。571gの蒸留水を添加し、懸濁液を300rpmで撹拌する。83.7gの1.6%臭素溶液を1.5分かけて添加する。添加後、懸濁液は依然として白色である。室温で15分間反応を進行させた。丸底フラスコを浴中に浸漬し、温度が50℃に達した時点で52gの50%NaOHを添加した。17時間反応を放置した。反応物をガラスフィルター(por.2)に移し、10×1GVの蒸留水を用いて洗浄する。滴定により、残りのアリル含量、216μmol/mLを測定した。これは、理論上3.5μmのシェルの厚さに相当する。
【0029】
コア臭素化およびQカップリング
機械的撹拌機を備えた250mLの丸底フラスコに、41.5mL(g)の部分的にアリル化された塩基性マトリックスを上から流した。10.37gの蒸留水および1.66gの酢酸ナトリウムを添加した。数分間撹拌した後、0.66mLの臭素をピペットで添加し、反応物を300rpmでさらに20分間撹拌する。過剰の臭素は、4.15mLの40%蟻酸ナトリウム溶液を添加することによって消費される。反応物は無色である。15分後、8.30mLの塩化トリメチルアンモニウム(TMAC)を添加し、50%NaOHを添加することによってpHを11〜11.5に調整する。反応物を250rpm、30℃で18時間撹拌する。ガラスフィルター(por.3)に移す前に、60%酢酸を添加することにより反応物をpH5〜7に中和する。10×1GVの蒸留水、続いて2×1GVの20%EtOHを用いてゲルを洗浄した。イオン交換基の滴定により125μmol/mLのQリガンド密度を得た。
【0030】
表1は、プロトタイプ99のリッドの厚さ、リガンドのタイプおよび濃度を示す。
【0031】
【表1】
実施例2:プロトタイプ99に対する血漿のクロマトグラフィー
サンプル
サンプルはヒト血漿であった。凍結したヒト血漿を解凍し、綿で濾過し、カラムに適用した。
【0032】
バッファーおよび操作条件
カラム:プロトタイプ99、ベッド高さ28.6cm、カラム体積(CV)22.5mLのTricorn10/300。
【0033】
クロマトグラフィー:サンプル体積6×5.2mL(6×0.23CV)。流速50cm/h(0.65mL/分)。
【0034】
ランニングバッファー:20mMクエン酸ナトリウム、0.15M NaCl、2.6mM CaCl2、pH7.0。
【0035】
溶出バッファー:20mMクエン酸ナトリウム、0.5M NaCl、2.6mM CaCl2、pH7.0。
【0036】
定置洗浄(CIP):0.5M NaOH。
【0037】
最初のサンプル適用の前にカラムをランニングバッファーにより平衡化した。0.23CVの血漿をカラムに適用し、続いて1.8CVのランニングバッファーを適用した。この手順、0.23CVの血漿の適用、続いて1.8CVのランニングバッファーの適用を5回繰り返し、合計6回血漿サンプルを適用した。1.8CVのランニングバッファーを最後に適用した後、1.5CVの高塩溶出バッファーでカラムを溶出した。1.5CVの0.5M NaOHを適用することによってカラムにCIPを施した。最後に、4CVのランニングバッファーによりカラムを再平衡化した。
【0038】
分析
SDS PAGEおよび液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)により、FVIII活性(Chromogenix Coamatic Factor VIIIキット)、vWF(Technozym vWF:Ag ELISAキット)、FIX(ROX Factor IXキット)について選択された画分を分析した。
【0039】
プロトタイプ99をTricorn10/300カラムに充填した。サイズに応じた群分離を可能にするために、ベッド高さを28.6cm(CV22.5mL)、流速を50cm/hとした。実験は6つの血漿サンプル適用(6x0.23CV)からなり、6つの群分離をもたらし、コアのQリガンドから1つの最終的な高塩溶出をもたらした。6つの群分離からの画分をプールして、きわめて大きな分子を有するプール画分A、比較的小さなタンパク質を有するプール画分B、わずかに保持された比較的小さなタンパク質を有するプール画分Cをそれぞれ1つ得た。高塩溶出により、溶出画分Eを1つ得た。FVIII、vWFおよびFIXについて全画分を分析した。クロマトグラムを図1Aに示し、部分拡大を図1Bに示す。
【0040】
分析結果および収率計算については、下記の表2を参照する。画分Aのプール中のFVIIIおよびvWFの収率は、それぞれ37%および40%であった。画分Bおよび画分Cのプールは、定量レベル未満のFVIIIおよびvWF活性を有していた。溶出画分Eは、22%のFVIII活性および13%のvWF活性を含んでいた。これにより、大きなFVIII/vWF複合体の大部分がビーズに入らず、これらの条件のもとでビーズに入るがコアのQリガンドに結合しない画分B中のアルブミンおよびIgGなどの比較的小さな分子から分離されたフロースルーを通過することが示された。SDS PAGEおよびLC−MSでは、アルブミンおよびIgGが画分Bの主なタンパク質であることが示された。LS−MCでは、画分Cの主要成分がC3およびアルブミンであることが示された。しかしながら、一部のFVIII/vWF複合体が細孔に入り、Qリガンドに結合するが、これはFVIII/vWF複合体のサイズの変化および低流量によるものであると考えられる。画分Eは、高塩で溶出した分子からなり、FIX活性を有する唯一の画分であり、収率は91%であった。これは、比較的小さなFIX分子がクロマトグラフィービーズに入り、コアのQリガンドに結合することを示す。これにより、不活性リッドおよびリガンド含有コアを有するクロマトグラフィー媒体を使用することにより、大きなタンパク質をフロースルーで収集し比較的小さな分子を溶出によって収集することができることから、いずれもコアのリガンドに結合する大きな(FVIII/vWF)血漿タンパク質および小さな(FIX)血漿タンパク質を分離することが可能であることが実証される。
【0041】
表2:プロトタイプ99上の血漿。FVIII、vWFおよびFIXの活性。画分については、図1Aおよび図1Bを参照のこと。
【0042】
X=測定されない。LOQ=定量レベル(FVIII:8mU/mL、vWF:0.10U/mL、FIX:30mU/mL)。
【0043】
【表2】
図1A
図1B