特許第6797424号(P6797424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797424微細気泡混合液の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797424
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】微細気泡混合液の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/04 20060101AFI20201130BHJP
   B01F 5/02 20060101ALI20201130BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20201130BHJP
   B01F 7/32 20060101ALI20201130BHJP
   B01F 7/28 20060101ALI20201130BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B01F3/04 Z
   B01F5/02 A
   B01F5/10
   B01F7/32 A
   B01F7/28
   B01F15/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-519555(P2018-519555)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2017019156
(87)【国際公開番号】WO2017204205
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2020年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-103475(P2016-103475)
(32)【優先日】2016年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503114792
【氏名又は名称】日新技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】山元 新一
(72)【発明者】
【氏名】山元 賢一
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−058195(JP,A)
【文献】 特開2010−162457(JP,A)
【文献】 特開2016−137454(JP,A)
【文献】 特開昭60−102927(JP,A)
【文献】 特開昭63−224721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/04
B01F 5/02
B01F 5/10
B01F 7/28
B01F 7/32
B01F 15/02
C02F 1/70− 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯液槽と、前記貯液槽に貯留された液体に気泡を供給する気泡供給手段とを備え、
前記気泡供給手段は、外周面に噴出部を有し駆動手段により回転駆動される回転筒と、 前記貯液槽に貯留された液体を取り出して前記噴出部から前記貯液槽に供給する循環手段と、前記循環手段により循環される液体に気泡を混合する気液混合部とを備えており、
前記貯液槽に貯留された液体に前記噴出部を浸漬させて前記回転筒を回転させることにより、気泡が混合された液体を前記噴出部から噴出させて、微細気泡混合液を生成する微細気泡混合液の製造装置であって、
前記回転筒は、下部開口が下部円板により閉塞され、回転により内部に旋回流が生じるように配置された回転翼を備える微細気泡混合液の製造装置。
【請求項2】
前記回転筒の外周面との間に隙間をあけて同軸状に配置された外筒を更に備える請求項に記載の微細気泡混合液の製造装置。
【請求項3】
貯液槽に貯留された液体に気泡を混合して微細気泡混合液を製造する方法であって、
外周面に噴出部を有し下部開口が下部円板により閉塞され回転により内部に旋回流が生じるように配置された回転翼を備える回転筒を垂下させて、前記噴出部を前記貯液槽の液中に浸漬させた状態で前記回転筒を回転させ、前記貯液槽の液体を取り出して気泡を混合した後に前記噴出部から旋回流として噴出させることにより、微細気泡混合液を生成する微細気泡混合液の製造方法。
【請求項4】
生成される微細気泡混合液は、水中に酸素を微細な気泡として含む除菌用または殺菌用 の微細気泡混合液である請求項3に記載の微細気泡混合液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡混合液の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体の溶解促進等を目的として、気泡を微細化して液中に混合させる装置が知られている。微細な気泡を生成する構成としてはノズル方式が知られているが、ノズル口径の縮小による微細化には限度があることから、例えば特許文献1においては、液中に供給される気泡を回転羽根の回転により圧縮して微細化することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−104764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示された気液混合装置は、気液を混合圧縮するために回転羽根を高速で回転させる必要があることから、回転抵抗が大きくなり、動力源の負荷が過大になるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、微細な気泡の混合液を効率良く生成することができる微細気泡混合液の製造装置および製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、貯液槽と、前記貯液槽に貯留された液体に気泡を供給する気泡供給手段とを備え、前記気泡供給手段は、外周面に噴出部を有し駆動手段により回転駆動される回転筒と、 前記貯液槽に貯留された液体を取り出して前記噴出部から前記貯液槽に供給する循環手段と、前記循環手段により循環される液体に気泡を混合する気液混合部とを備えており、前記貯液槽に貯留された液体に前記噴出部を浸漬させて前記回転筒を回転させることにより、気泡が混合された液体を前記噴出部から噴出させて、微細気泡混合液を生成する微細気泡混合液の製造装置であって、前記回転筒は、下部開口が下部円板により閉塞され、回転により内部に旋回流が生じるように配置された回転翼を備える微細気泡混合液の製造装置により達成される。
【0008】
また、前記回転筒の外周面との間に隙間をあけて同軸状に配置された外筒を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、貯液槽に貯留された液体に気泡を混合して微細気泡混合液を製造する方法であって、外周面に噴出部を有し下部開口が下部円板により閉塞され回転により内部に旋回流が生じるように配置された回転翼を備える回転筒を垂下させて、前記噴出部を前記貯液槽の液中に浸漬させた状態で前記回転筒を回転させ、前記貯液槽の液体を取り出して気泡を混合した後に前記噴出部から旋回流として噴出させることにより、微細気泡混合液を生成する微細気泡混合液の製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微細な気泡の混合液を効率良く生成することができる微細気泡混合液の製造装置および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る微細気泡混合液の製造装置の縦断面図である。
図2図1に示す微細気泡混合液の製造装置の要部分解斜視図である。
図3図1に示す微細気泡混合液の製造装置の作動状態を示す要部拡大図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る微細気泡混合液の製造装置の縦断面図である。
図5】本発明の更に他の実施形態に係る微細気泡混合液の製造装置の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る微細気泡混合液の製造装置の縦断面図である。図1に示すように、微細気泡混合液の製造装置1は、液体Lを貯留する貯留槽4と、貯留槽4の液体Lに気泡を供給する気泡供給装置6とを備えている。
【0013】
気泡供給装置6は、貯留槽4の上部開口に載置される支持板2の上面に固定された駆動モータ10と、駆動モータ10により回転駆動される円筒状の回転筒20と、回転筒20を収容するように支持板2から垂下する外筒30と、貯留槽4に貯留された液体を循環させる循環装置40と、循環装置40により循環される液体Lに気泡を混合する気液混合部50とを備えている。支持板2は、本実施形態では貯留槽4を密閉するように配置されているが、貯留槽4の内外を連通可能な構成であってもよい。貯留槽4に貯留された液体Lには、貯留槽4の内部または外部に設けられた鉱石や電池等により、微弱電流を付与してもよい。
【0014】
駆動モータ10は、出力軸11の上下両端部がケーシング12から突出するように構成されている。出力軸11には、中心部を軸方向に貫通する導入路11aが形成されている。出力軸11の上端部は、ロータリージョイント13を介して、気密且つ相対回転可能に導入部14に接続されている。
【0015】
出力軸11の下端部は、支持板2に形成された貫通孔2aを通過して、回転筒20の上端部に連結固定されており、回転筒20を垂下するように支持して回転駆動する。回転筒20は、例えばステンレス等の金属材料からなり、下部外周面に複数の噴出孔22aからなる噴出部22が形成されている。噴出孔22aは、出力軸11の導入路11aから回転筒20の内部に導入された気液混合液を周囲に向けて均一に噴射するように、周方向に沿って等間隔に形成されており、更に、噴出部22が所定の高さ(例えば、150mm程度)を有するように、軸方向にも等間隔に形成されている。噴出孔22aの径は、特に限定されないが、例えば、0.1〜1.5mmである。回転筒20の外周面は、撹拌羽根等を備えることなく平滑に形成されていることが好ましい。
【0016】
回転筒20の内部下部には、撹拌部材24が設けられている。撹拌部材24は、図2に分解斜視図で示すように、回転筒20の外径と略同じ径を有する下部円板24bに、平板状の回転翼24aが複数配置されている。回転翼24aを多数設ける場合には、放射状に等間隔に配置することが好ましい。回転翼24aの上部には、回転筒20の内径と略同じ径を有する上部円板24cが取り付けられている。この撹拌部材24は、図2に矢印で示すように、周方向に隣接する噴出孔22aの間に各回転翼24aが位置するように回転筒20の下方から挿入され、下部円板24bが回転筒20の下部開口を閉塞するように、回転筒20に固定される。上部円板24cは、中央に連通孔24dが形成されており、回転筒20の内部に導入された気液混合液は、連通孔24dを通過して回転翼24aにより撹拌され、噴出孔22aから噴出される。回転翼24aは、回転筒20の内部に旋回流を生じさせることが可能であれば、その形状や配置は特に限定されず、例えば、平板状の回転翼24aの代わりに、湾曲状、螺旋状、翼型状等の回転翼を用いてもよい。
【0017】
外筒30は、例えばアクリル等の樹脂やステンレス等の金属からなる直筒状に形成されており、回転筒20の外周面との間に隙間をあけて同軸状に配置され、上端部が支持板2に固定されている。外筒30の下端は、内筒20の下端と略一致しており、回転筒20の噴出部22が外筒30により覆われている。外筒30の内部に液体Lの旋回流が生じ易いように、外筒30の内周面に螺旋状のガイド板(図示せず)を設けてもよい。
【0018】
循環装置40は、貯液槽4の底部に形成された排出口4aと導入部14とを接続する配管42と、配管42の途中に介在されて貯液槽4の液体Lを貯液槽4の外部に取り出す循環ポンプ44とを備えている。気液混合部50は、配管42の途中の循環ポンプ44よりも下流側に配置されており、内部を通過する液体Lに対して、コンプレッサやガスボンベ等の給気装置52から加圧供給された気体を混合する。
【0019】
気液混合部50の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、多孔質フィルムの細孔を介して気泡を液中に混合させる細孔吹き出し方式、気体および液体を高速旋回させて混合させる旋回流方式、液体Lの通過により生じる負圧を利用して気体を導入するベンチュリー方式等であってもよい。また、給気装置52を設けることなく、気液混合部50が外気を吸引して液体Lに混合させる構成にすることもできる。気液混合部50から排出される気液混合液は、回転筒20の噴出部22から貯液槽4内に供給される。更に、気液混合部50は、液体を電気分解することにより気泡を生成する液体電解装置を備える構成であってもよく、この構成においては、生成された気泡を、電気分解されていない液体との混合状態で配管42内に供給してもよい。液体電解装置で気泡を生成する場合、上記の給気装置52と併用してもよいが、給気装置52を設けない構成により省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
循環路を構成する配管42には分岐管53が接続されており、分岐管53の途中に設けられた開閉弁54の開度を調節することにより、配管42を流れる気液混合液の一部を分岐管53から連続的に取り出すことができる。また、配管42には、給液装置55から液体Lを供給可能に構成されており、開閉弁56の開度を調節することにより、分岐管53から排出された量に相当する液体Lを連続的に補充することができる。配管42は、永久磁石等を用いて内部に磁場を付与する磁気処理部を備える構成であってもよく、液体の磁気処理によって微細気泡の保持力向上を図ることができる。
【0021】
次に、上記の構成を備える微細気泡混合液の製造装置1の作動を説明する。図1に示すように、貯留槽4に水などの液体Lを貯留し、回転筒20の略全体を液中に浸漬させる。ついで、駆動モータ10および循環ポンプ44を作動させると、回転筒20は、図3に矢示するように回転翼24aと共に軸周りに回転し、循環装置40から回転筒20の内部に導入された気液混合液が、回転翼24aにより旋回流となって噴出部22から噴射される。
【0022】
回転筒20が高速で回転すると、液体Lの液面Sは、回転筒20を中心としてすり鉢状に凹んだ状態になり、回転筒20の周囲においては、液面Sが噴出部22の近傍まで低下して、この付近で上下動する。このため、各噴出孔22aから排出された気液混合液の噴射流Fは、液面Sと衝突しながら撹拌されて液中に取り込まれるため、気泡が微細になって液体Lに拡散する。回転筒20の回転による液面Sの低下量は、回転筒20が高速で回転するほど大きくなるため、液面Sが噴出部22の近傍に維持されるように回転筒20の回転速度を調整することが好ましい(例えば、毎分3600〜15000回転、あるいは毎分15000回転以上)。回転筒20と外筒30との間に生じる隙間(図2の長さD)は、所望の液面Sの低下が生じ易いように適宜設定することが好ましく、例えば、10〜20mmまたは20mm以上である。
【0023】
このように、本実施形態の微細気泡混合液の製造装置1によれば、回転筒20の回転により噴出部22から噴射された気液混合液が、液切りを行いながら液体Lに混合されるので、マイクロバブルやナノバブル等の微細気泡が混合された微細気泡混合液を効率良く生成することができる。
【0024】
また、回転筒20は、回転翼24が内周面から中心に向けて延びるように放射状に配置されているので、回転筒20の外周面に回転翼を設ける場合と比較して回転抵抗の増大を抑制することができ、省電力化を図ることができる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態には限定されない。例えば、気液混合部50に供給する気体は、空気以外に、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、水素などであってもよく、給気装置52からこれらの気体を供給して、極微小な気泡として液中に長期間滞留させることができる。例えば、水中に酸素を微細な気泡として含む微細気泡混合液は、除菌用や殺菌用として好適に使用することができる。
【0026】
液体Lは、用途に応じて水以外を適宜選択することも可能であり、微細気泡を長時間維持するために、低温(例えば10℃以下)であることが好ましい。貯液槽4内の液体Lを低温に維持するため、貯液槽4の外周に沿って、あるいは、貯液槽4の液体Lに浸漬させるように、冷却用の熱交換器を配置してもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、回転筒20の回転時に所望のすり鉢状の液面Sが生じ易いように、外筒30を配置しているが、外筒30は必須のものではなく、例えば、貯留槽4が小型筒状であるような場合には、外筒30を設けない構成であってもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、回転筒20に気液混合液を導入するための導入路11aを駆動モータ10の出力軸11に形成することで、噴出部22から気液混合液を安定して噴出可能に構成しているが、導入路11aは、出力軸11以外であってもよく、回転筒20の上部や側部からメカニカルシール等を介して気液混合液を導入する構成であってもよい。
【0029】
また、微細気泡混合液の製造装置1は、図4に示すように、回転筒20の下端部を回転可能に支持する支持部材60を更に設けた構成であってもよい。支持部材60は、支持筒61の下端部に保持板62を備え、保持板62にすべり軸受け63が設けられており、回転筒20の先端部20aがすべり軸受け63により支持されている。支持筒61は、内外で液体Lを流通させる流通孔61aが適宜形成されている。この構成によれば、回転筒20をより安定して回転させることができ、所望の微細気泡混合液を容易に生成することができる。
【0030】
また、図1に示す微細気泡混合液の製造装置1は、微細気泡混合液を分岐管53から連続的に取り出し可能に構成されているが、図4に示すように、循環路となる配管42が分岐管53を備えないバッチ式の構成にすることもできる。
【0031】
また、図1に示す微細気泡混合液の製造装置1は、駆動モータ10の出力軸11に回転筒20を直結しているが、図5に要部側面図で示すように、出力軸11と回転軸20とを軸カップリング71を介して連結してもよい。この構成においては、支持板2の上面に複数の支柱72を介して台板73を設け、台板73に出力軸11が挿通される貫通孔73aを形成することにより、台板73上に駆動モータ10のケーシング12を搭載することができる。貯液槽4内部の気密状態を維持するため、支持板2の貫通孔2aには、回転軸20が気密に挿通される軸貫通部シール74を設けることが好ましい。
【0032】
図5に示す構成によれば、軸カップリング71を備えることにより、貯液槽4の内部と配管42との縁切りが容易であり、メンテナンス性も良好にすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 微細気泡混合液の製造装置
4 貯液槽
6 気泡供給装置
10 駆動モータ
20 回転筒
22 噴出部
24a 回転翼
30 外筒
40 循環装置
50 気液混合部
60 支持部材
L 液体
図1
図2
図3
図4
図5