特許第6797428号(P6797428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797428
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】観測装置、観測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20201130BHJP
   G01S 3/28 20060101ALI20201130BHJP
   H01Q 3/04 20060101ALI20201130BHJP
   G01S 13/90 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G01S7/02 218
   G01S3/28
   H01Q3/04
   G01S13/90 111
   G01S13/90 182
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-22337(P2019-22337)
(22)【出願日】2019年2月12日
(65)【公開番号】特開2020-60543(P2020-60543A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2018-191298(P2018-191298)
(32)【優先日】2018年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】瀬在 俊浩
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/174172(WO,A1)
【文献】 特開2008−154285(JP,A)
【文献】 特開2014−215237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00− 3/74
G01S 7/00− 7/42
G01S13/00−13/95
H01Q 3/02− 3/06
G01R29/08−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方位角内でビームが走査されるアンテナからの受信電力信号の平方根信号及び前記走査されるビームの方位角の信号に基づき、前記平方根信号を方位角に関してフーリエ変換した第1の方位角周波数信号を、前記アンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号前記方位角に関してフーリエ変換した第2の方位角周波数信号で除算し、前記除算した信号を、引数に実数部と虚数部とを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングする信号処理部
を具備する観測装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記フィッティングにより得られた電波源候補のうち、前記実数部の絶対値が所定値以下の電波源候補を抽出する
請求項1に記載の観測装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記抽出した電波源候補から実際の電波源を特定するための情報を、前記指数関数から取得する
請求項2に記載の観測装置。
【請求項4】
前記抽出した電波源候補から実際の電波源を特定するための情報は、前記電波源候補の相対振幅の値、実数部の値及び方位角の値である
請求項3に記載の観測装置。
【請求項5】
前記抽出された電波源候補及び前記実際の電波源を特定するための情報を表示する表示部
を更に具備する、請求項3又は4に記載の観測装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、プロニー法によりフィッティングする前に、前記除算した信号にローパスフィルタ処理を施す
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の観測装置。
【請求項7】
前記所定の方位角内でビームが走査されるアンテナとして、ビームアンテナ及び当該ビームアンテナを回転するアンテナ回転装置で構成されたアンテナシステム、電子的アンテナビーム走査装置を有するアンテナシステム及びビームアンテナ及び当該ビームアンテナを移動するアンテナ移動装置で構成されたアンテナシステムのうち、いずれかのアンテナシステム
を更に具備する、請求項1から6のうちいずれか1項に記載の観測装置。
【請求項8】
前記アンテナに送信電力を供給する送信部と、
送受信の切り替えを行うスイッチ部と
を更に具備する、請求項1から7のうちいずれか1項に記載の観測装置。
【請求項9】
所定の方位角内でビームが走査されるアンテナからの受信電力信号の平方根信号及び前記走査されるビームの方位角の信号に基づき、前記平方根信号を方位角に関してフーリエ変換するステップと、
前記フーリエ変換した第1の方位角周波数信号を、前記アンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号方位角に関してフーリエ変換した第2の方位角周波数信号で除算するステップと、
前記除算した信号を、引数に実数部と虚数部とを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングするステップと、
を備える、観測方法。
【請求項10】
所定の方位角内でビームが走査されるアンテナからの受信電力信号の平方根信号及び前記走査されるビームの方位角の信号に基づき、前記受信電力信号の平方根信号を方位角に関してフーリエ変換するステップと、
前記フーリエ変換した第1の方位角周波数信号を、前記アンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号方位角に関してフーリエ変換した第2の方位角周波数信号で除算するステップと、
前記除算した信号を、引数に実数部と虚数部とを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングするステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーダによる観測に使われる観測装置、観測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレーダにおいて観測対象物を観測する場合は、アンテナの回転等によってアンテナビームを回転させながら、アンテナで受信した電力信号の強さを観測する方法が用いられている。
【0003】
この際、回転範囲内で受信信号のピーク点をサーチすることで、電波源情報(位置(方位角)、強度)を求めることが一般的に実施されており、直接電波源情報を抽出することができないという問題がある。本発明者は、デコンボリューション法とプロニー法を用いて電波源情報を直接求める手法を提唱した(特許文献1及び非特許文献1参照)。この手法は理論的に電波源情報を求める方法であり、数値シミュレーションで電波源情報が得られることを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−114850号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】SEZAI,T."Improvement of Direction Resolution of Rotational Radar by Prony Analysis 0f Deconvolved Antenna Output" . 電子情報通信学会技術研究報告 (IEICE TECHNICAL REPORT)[ISSN:0913−5685]. Volume 117,Number 182. 2017,08,17. Pages 37−42*Sections 2−4*
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が提唱した手法では、アンテナで受信した電界信号とアンテナの電界パターン信号を使用する。電界信号及び電界パターン信号は複素数信号であるため、電界信号及び電界パターン信号の振幅と位相の取得が必要となる。従来の観測装置においては、振幅値の取得は一般的であるが、位相については取得していない場合がほとんどである
これに対して、例えばレーダや通信のようにアンテナに到来する電波の周波数が正確にわかっている場合、アンテナで受信した電界信号の位相を取得するためには、観測装置の受信部を改修し、位相取得機能を追加するか、新しい受信部を準備することが必要になる。例えば電波の探索のようにアンテナに到来する電波の周波数が正確にわかっていない場合、アンテナで受信した電界信号の位相を取得するためには、装置用アンテナに隣接してリファレンスアンテナを設置し、リファレンスアンテナで受信した電波を基準にして位相を取得することになる。このように、位相取得機能を追加することにより受信部、あるいは装置全体が複雑になり、寸法、重量、コストが増大するという課題があった。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明の目的は、アンテナで受信した電界信号の位相を用いずに、デコンボリューション法とプロニー法を用いて電波源情報を直接求めることができる観測装置、観測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明の一形態に係る観測装置は、所定の方位角内でビームが走査されるアンテナからの受信電力信号の平方根信号及び前記走査されるビームの方位角の信号に基づき、前記平方根信号を方位角に関してフーリエ変換した第1の方位角周波数信号を、前記アンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号方位角に関してフーリエ変換した第2の方位角周波数信号で除算し、前記除算した信号を、引数に実数部と虚数部とを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングする信号処理部を具備する。
【0009】
デコンボリューション法処理の過程で得られる電波源分布方位角周波数関数は、電波源の分布関数を方位角に関してフーリエ変換したものである。電波源の分布は複数の離散電波源の和であるとモデル化することが可能である。離散した電波源はそれぞれを点波源と考えることができるため、それをフーリエ変換したものは方位角周波数上では振幅が一定の指数関数で表現される。従って、電波源分布方位角周波数関数は振幅が一定の指数関数の和として表現される。
それ故、特許文献1で開示した手法、すなわち電波源分布方位角周波数関数をプロニー法により指数関数でフィッティングすることにより、電波源分布に関する情報を直接取得することが可能である。また、非特許文献1で開示した手法により、電波源分布方位角周波数関数から指数関数成分を抽出する際に、引数の実数部の値により、指数関数の識別を行い、雑音に起因する指数関数を除外することが可能である。
電波源分布関数は方位角の関数で、振幅は複素数である。しかし、電波源観測の際に位相情報が必要となることはほとんどない。そのため、アンテナからの受信電力信号の平方根信号及びアンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号使用して特許文献1及び非特許文献1の手法で処理をすることにより、電波源分布関数の振幅を実数とみなした場合の結果を取得しても、実用上、支障となることはない。
【0010】
前記信号処理部は、前記フィッティングにより得られた電波源候補のうち、前記実数部の絶対値が所定値以下の電波源候補を抽出することが好ましい。
【0011】
前記信号処理部は、前記抽出した電波源候補から実際の電波源を特定するための情報を前記指数関数から取得することが好ましい。
【0012】
前記抽出した電波源候補から実際の電波源を特定するための情報は、前記電波源候補の相対振幅の値、実数部の値及び方位角の値であることがより好ましい。
【0013】
本発明に係る観測装置は、前記抽出された電波源候補及び前記実際の電波源を特定するための情報を表示する表示部を更に具備することが好ましい。
【0014】
前記信号処理部は、プロニー法によりフィッティングする前に、前記除算した信号にローパスフィルタ処理を施すことが好ましい。
【0015】
本発明に係る観測装置は、前記所定の方位角内でビームが走査されるアンテナとして、ビームアンテナ及び当該ビームアンテナを回転するアンテナ回転装置で構成されたアンテナシステム、電子的アンテナビーム走査装置を有するアンテナシステム及びビームアンテナ及び当該ビームアンテナを移動するアンテナ移動装置で構成されたアンテナシステムのうち、いずれかのアンテナシステムを更に具備することが好ましい。
【0016】
本発明に係る観測装置は、前記アンテナに送信電力を供給する送信部と、送受信の切り替えを行うスイッチ部とを更に具備することが好ましい。
【0017】
本発明の一形態に係る観測方法は、所定の方位角内でビームが走査されるアンテナからの受信電力信号の平方根信号及び前記走査されるビームの方位角の信号に基づき前記受信電力信号の平方根信号を方位角に関してフーリエ変換するステップと、前記フーリエ変換した第1の方位角周波数信号を、前記アンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号方位角に関してフーリエ変換した第2の方位角周波数信号で除算するステップと、前記除算した信号を、引数に実数部と虚数部とを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングするステップとを備える。
【0018】
本発明の一形態に係るプログラムは、所定の方位角内でビームが走査されるアンテナからの受信電力信号の平方根信号及び前記走査されるビームの方位角の信号に基づき、前記受信電力信号の平方根信号を方位角に関してフーリエ変換するステップと、前記フーリエ変換した第1の方位角周波数信号を、前記アンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号方位角に関してフーリエ変換した第2の方位角周波数信号で除算するステップと、前記除算した信号を、引数に実数部と虚数部とを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングするステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、アンテナで受信した電界信号の位相を用いずに、デコンボリューション法とプロニー法を用いて電波源情報を直接求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る観測装置を示すブロック図である。
図2図1に示した観測装置の信号処理部の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電波源情報のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図4】非特許文献1に示された手法に係る電波源情報のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に一実施形態に係る観測装置を示すブロック図である。この実施形態は、本発明に係る観測装置をレーダ装置に適用したものである。
図1に示すように、観測装置10は、アンテナシステム11と、送信部12と、受信部13と、スイッチ部14と、信号処理部15と、表示部16とを具備する。
この観測装置10は、レーダ装置であり、対象物に向けて電波を送信し、その反射波を観測することにより、対象物の電波源情報を測る装置である。
【0022】
アンテナシステム11は、所定の方位内でアンテナビームを走査するものであり、ビームアンテナ111及び当該ビームアンテナ111を回転するアンテナ回転装置112で構成される。アンテナ回転装置112は、ビームアンテナ111の分解能を向上させる方向にビームアンテナ111を回転させる。アンテナシステム11は、アンテナ回転装置112の回転に応じて走査されるビームの方位角の信号を出力する。ビームアンテナとしては、ダイポール系のアンテナ、ホーンアンテナ、パラボラアンテナ、アレイアンテナなど如何なるアンテナでも用いることができる。
送信部12は、ビームアンテナ111に送信電力を供給する。
受信部13は、ビームアンテナ111の受信電力信号をその平方根信号に変換する。
スイッチ部14は、送受信の切り替えを行う。
信号処理部15は、スイッチ部14を介して受信部13から受信電力信号の平方根信号及びアンテナシステム11から方位角の信号を入力し、所定の信号処理を施し、電波源候補、その電波源候補の相対強度、後述する指数関数引数の実数部の値及び位置(方位角)に関する情報などを出力する。
表示部16は、信号処理部15からの出力に基づき電波源候補の相対強度、指数関数引数の実数部の値及び位置(方位角)に関する情報の相対強度及び方位角などに関する情報を表示する。
【0023】
図2は、上記の信号処理部15の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、信号処理部15は、フーリエ変換部151と、アンテナパターン信号保持部152と、除算部153と、ローパスフィルタ部154と、指数関数抽出部155と、指数関数選択部156と、電波源情報取得部157とを有する。
【0024】
フーリエ変換部151は、入力した受信電力信号の平方根信号e(θ)を方位角に関してフーリエ変換した方位角周波数信号E(ω)を求める。ここで、θは方位角、ωは方位角周波数である。
アンテナパターン信号保持部152は、ビームアンテナ111のレーダ装置で使用するアンテナ電力パターンの平方根信号g(θ)を方位角に関してフーリエ変換した方位角周波数信号G(ω)を保持する。
除算部153は、方位角周波数信号E(ω)を、方位角周波数信号G(ω)で除算する。除算値は、電波源分布を方位角に関してフーリエ変換した方位角周波数信号F(ω)である。すなわち、除算部153は、
F(ω)=E(ω)/G(ω)
を求める。
【0025】
ローパスフィルタ部154は、除算部153からの出力信号に対してローパスフィルタ処理を行う。アンテナ電力パターンの平方根信号をフーリエ変換した信号には、物理的に方位角周波数上の帯域が存在するため、その帯域を超えた成分は持ち得ないが、除算部153で信号処理を行って取得した除算信号(電波源分布方位角周波数信号)には、上記帯域を超えた方位角周波数成分が含まれる。これは実際の処理と理想的な処理との差により発生する。この帯域を超えた信号成分を、そのまま用いて次段の処理を行うと、信号を劣化させることになる。従って、ここでローパスフィルタ処理を行い、上記帯域を超えた信号成分を除去し、信号の劣化を防止している。
【0026】
指数関数抽出部155は、除算部153で除算し、ローパスフィルタ処理を行った信号を、引数に実数部αと虚数部jθとを有する指数関数(exp(α−jθ))でプロニー法によりフィッティングする。
指数関数選択部156は、予めαの大きさに閾値を設け、閾値以下のαを有する指数関数(電波源候補)を選択する。
電波源情報取得部157は、指数関数選択部156で選択した指数関数から電波源情報を取得する。電波源情報は、各電波源候補の相対強度、位置(方位角)の値である。
【0027】
次に、このように構成した観測装置10の動作を説明する。
アンテナ回転装置112によりビームアンテナ111を回転させながら、送信部12からビームアンテナ111に送信電力を供給し、ビームアンテナ111から電波を送信する。
【0028】
ビームアンテナ111から送信された電波が散乱体(対象物)で反射されて戻ってくると、ビームアンテナ111は受信電波を出力する。スイッチ部14を介した受信電波は受信部13で受信電力信号の平方根信号に変換され、次いで信号処理部15に入力される。
【0029】
信号処理部15では、以下の信号処理が実行される。
・受信電力信号の平方根信号e(θ)を方位角に関してフーリエ変換した方位角周波数信号E(ω)を求める。
・この方位角周波数信号E(ω)を、ビームアンテナ111のレーダ装置におけるアンテナ電力パターンの平方根信号g(θ)を方位角に関してフーリエ変換した方位角周波数信号G(ω)で除算する。
・除算信号に対してローパスフィルタ処理を行う。
・ローパスフィルタ処理を行った信号を、引数に実数部αと虚数部jθとを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングする。
・予めαの大きさに閾値を設け、閾値以下のαを有する指数関数(電波源候補)を選択する。
・選択した指数関数から電波源情報を取得する。
各電波源候補の相対強度、位置(方位角)の値が表示部16により表示される。表示部16は表形式などでこれらの情報を表示する。
【0030】
次に、本発明に係る効果を確認するために行った数値シミュレーション結果を説明する。
本発明に係るアンテナとしてアンテナ長が波長の50.42倍の一様分布の開口面アンテナ(アンテナビーム幅:1度)を用い、このアンテナを−45度から+45度まで回転させながら電波を送信し、アンテナから等距離上の−0.5度及び+0.5度の方向に位置する電波的に同一の点散乱体で散乱され、このアンテナに戻ってくる電波を信号対雑音比が20dBの環境で取得した際に得られる電波情報源を検討した。
【0031】
ローパスフィルタ処理は方位角周波数における絶対値で例えば0.8(度−1)内の信号を通過させる。
ローパスフィルタ処理を行ったF(ω)を、引数に実数部αと虚数部jθとを有する指数関数でプロニー法によりフィッティングし、実数部αの閾値が絶対値で0.01以下の指数関数を選択し、その指数関数の電波源情報、及び指数関数引数の実数部α(電波源強度の上位5情報)を表1に示す。
【0032】
【表1】
また、シミュレーションで得られた電波情報源を図示した結果を図3に示す。
これにより、本発明により得られる電波源情報より、実際の電波源に近い2つの方位にほぼ同じ強度の電波源が存在することが分かる。また、これらの方向から離れた方向に多数の電波源の存在を示す情報も示されるが、強度が約13dB以上小さいため、雑音によるものと判断することができる。
【0033】
比較例として、非特許文献1示された手法により、上記と同様の数値シミュレーションを行った結果を表2と図4に示す。
【0034】
【表2】
表1と表2を比較すると、本発明で得られる電波源の強度は非特許文献1で得られる強度とほぼ同じである。本発明で得られる電波源の方位の精度は非特許文献1で得られる電波源の方位の精度よりも悪い。図3図4を比較すると、本発明では電波源以外の出力の数は、非特許文献1よりも多くなる。このように本発明は非特許文献1と比較すると、電波源情報を取得する性能は低下するが、方位誤差は最悪でも0.035度と高精度であり、電波源以外による出力は雑音によるものと容易に判断できる。よって、本発明においても、電波源情報は精度よく取得できる。
【0035】
本発明は、上記の実施形態には限定されず、様々な変形が可能であり、それらも本発明の技術的思想の範囲に属する



【0036】
上記の実施形態においては、アンテナビームの指向方向を、観測電波源方向に移動させるための手段として、機械的なアンテナ回転装置を用いたものを示したが、アンテナビームの指向方向を移動させる手段としては、電子的なアンテナビーム走査手段や、航空機、人工衛星等のような移動プラットフォームに搭載してアンテナビームを移動させる手段等を用いることができる。
【0037】
また、上記の実施形態は、観測装置がアンテナシステムや表示部などを有するものであったが、観測装置が外部のアンテナシステムから受信電力信号や角度信号を入力する構成であっても構わない。また、観測装置が外部の表示装置に情報を出力し、表示装置に情報を表示させる構成であってもよい。また、観測装置は情報を表示することなく、指数関数から電波源情報に基づき所定の判断処理を実行してもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、アンテナパターン信号保持部がビームアンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号g(θ)を方位角に関してフーリエ変換した方位角周波数信号G(ω)を保持するものであったが、ビームアンテナのアンテナ電力パターンの平方根信号g(θ)が動的に変動するような場合にはその都度入力し、方位角周波数信号G(ω)を算出するように構成してもよい。
【0039】
上記の実施形態で例示した実数部αの閾値は適応的に可変するものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 観測装置
11 アンテナシステム
12 送信部
13 受信部
14 スイッチ部
15 信号処理部
16 表示部
151 フーリエ変換部
152 アンテナパターン信号保持部
153 除算部
154 ローパスフィルタ部
155 指数関数抽出部
156 指数関数選択部
157 電波源情報取得部
図1
図2
図3
図4