(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1]
複数の発電所と複数の需要者との間の電力取引を支援するシステムであって、
前記発電所のそれぞれについて、前記発電所で発電される電力のうち所定の電力ネットワークに送電された供給量を取得する供給量取得部と、
ブロックチェーンにおける前記発電所の第1アカウントに前記供給量に応じたトークンを発行するトークン発行部と、
前記需要者のそれぞれについて、前記電力ネットワークから受電した需要量を取得する需要量取得部と、
前記発電所及び前記需要者の組ごとに前記発電所から前記需要者に送られたとみなす送電量を決定する送電量決定部と、
前記発電所ごとに、前記発電所と前記組となる複数の前記需要者の第2アカウントのそれぞれを送付先とし、前記第1アカウントを送付元とし、前記需要者ごとの前記送電量に応じた前記トークンの量を移転させるトランザクションを発行するトランザクション発行部と、
を備えることを特徴とする電力取引支援システム。
[項目2]
項目1に記載の電力取引支援システムであって、
サーバ装置と、複数のワーカー装置とを含んで構成され、
前記ワーカー装置は、前記トランザクション発行部を備え、
前記サーバ装置は、前記発電所ならびに前記複数の需要者及び前記需要者に対応する前記送電量に対応する前記トークンの量を指定したリクエストを分散させて前記複数のワーカー装置に送信するリクエスト送信部を備え、
前記トランザクション発行部は、前記リクエストに応じて、前記トランザクションを発行すること、
を特徴とする電力取引支援システム。
[項目3]
項目2に記載の電力取引支援システムであって、
前記ワーカー装置は、複数のリージョンに配備されること、
を特徴とする電力取引支援システム。
[項目4]
項目1乃至3のいずれか1項に記載の電力取引支援システムであって、
前記トランザクション発行部は、複数のトランザクションを並列に発行すること、
を特徴とする電力取引支援システム。
[項目5]
複数の発電所と複数の需要者との間の電力取引を支援する方法であって、
コンピュータが、
前記発電所のそれぞれについて、前記発電所で発電される電力のうち所定の電力ネットワークに送電された供給量を取得するステップと、
ブロックチェーンにおける前記発電所の第1アカウントに前記供給量に応じたトークンを発行するトークン発行部と、
前記需要者のそれぞれについて、前記電力ネットワークから受電した需要量を取得するステップと、
前記発電所及び前記需要者の組ごとに前記発電所から前記需要者に送られたとみなす送電量を決定する送電量決定部と、
前記発電所ごとに、前記発電所と前記組となる複数の前記需要者の第2アカウントのそれぞれを送付先とし、前記第1アカウントを送付元とし、前記需要者ごとの前記送電量に応じた前記トークンの量を移転させるトランザクションを発行するステップと、
を実行することを特徴とする電力取引支援方法。
[項目6]
複数の発電所と複数の需要者との間の電力取引を支援するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記発電所のそれぞれについて、前記発電所で発電される電力のうち所定の電力ネットワークに送電された供給量を取得するステップと、
ブロックチェーンにおける前記発電所の第1アカウントに前記供給量に応じたトークンを発行するトークン発行部と、
前記需要者のそれぞれについて、前記電力ネットワークをから受電した需要量を取得するステップと、
前記発電所及び前記需要者の組ごとに前記発電所から前記需要者に送られたとみなす送電量を決定する送電量決定部と、
前記発電所ごとに、前記発電所と前記組となる複数の前記需要者の第2アカウントのそれぞれを送付先とし、前記第1アカウントを送付元とし、前記需要者ごとの前記送電量に応じた前記トークンの量を移転させるトランザクションを発行するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【0012】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態によるシステムについて、図面を参照しながら説明する。
<概要>
図1は、発電装置による電力の売電処理を示すイメージ図である。近年、電力の取引の自由化が進み、例えば、
図1に示されるように、複数の発電所1で発電された電力を、送電ネットワーク3を介して、複数の需要者2に販売することも可能になった。発電所と需要者(もしくはその間に介する電気事業者)とが電力販売契約(PPA;Power Purchase Agreement)を締結することもある。しかしながら、個々の発電所が発電した電力は、一度送電ネットワーク3に入ってしまうと、現状ではトレースすることは困難である。したがって、送電ネットワークを利用する場合にはPPAを実現することが困難である。
【0013】
本実施形態の電力取引支援システムでは、複数の発電所1と複数の需要者2とにおいて、トレーサビリティを有する電力取引、すなわち仮想的なPPAを実現する。需要者2によっては、たとえば、故郷にある発電所1や、被災地の発電津1、有名企業の発電所1など、特定の発電所1からの電力を調達したいというニーズが存在する。本実施形態の電力取引支援システムでは、そのような特定の発電所1からの電力調達を仮想的に実現する。
【0014】
具体的には、発電所1が発電した発電量(本実施形態では、送電ネットワーク3に送電した電力量のことを示す。)に対応するトークン(例えば、1kWh=1トークンとすることができる。なお、1kWhあたりのトークン数は任意に設定することができる。)を発行して、ブロックチェーンにおける発電所1のアカウントに登録する。なお、発電所1および需要者2のアカウントは例えばそれぞれが有するウォレットにより特定することが可能である。
【0015】
そして、需要者2が送電ネットワーク3から受電した電力量と、発電所1が発電して送電ネットワーク3に送電した電力量とのマッチングを行う。マッチングには、例えば、需要者2が特定の発電所1から電量供給を受ける仮想的なPPAを管理しておき、これを用いる。例えば、所定の単位時間(例えば、15分や30分とすることができる。)ごとに、発電所1が発電して送電ネットワーク3に供給した電力量(発電量)と、需要者2が送電ネットワーク3から受電した電力量(需要量)とを取得し、同一の発電所1との間でPPAを結んだ複数の需要者2の間で、発電所1からの発電量を按分して、発電所1から需要者2に対して供給された電力量(供給量)を計算することができる。按分は、例えば、PPAで契約した電力量の割合で行うことができる。
【0016】
一方で、ブロックチェーンネットワーク上において、供給量に相当するトークンを発電所1のアカウントから需要者2のアカウントに送付するようにする。これにより、電力の取引を疑似的にトレースすることが可能となり、特定の発電所1が提供した電力を特定の需要者2に擬似的に直接販売したと把握することが可能となる。これにより仮想的なPPAを実現することができる。
【0017】
<システム概要>
図2は、本発明の一実施形態に係る電力取引支援システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の電力取引支援システムは、ブロックチェーンネットワーク10、管理サーバ20、及び複数のワーカー装置30を含んで構成される。ブロックチェーンネットワーク10、管理サーバ20、及び複数のワーカー装置30はそれぞれ互いに通信ネットワークを介して通信可能に接続される。通信ネットワークは、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0018】
ブロックチェーンネットワーク10は、P2P(Peer to Peer)通信により互いに通信可能に接続された複数のコンピュータノードにより構成され、トークンの取引をトランザクションとして記録するブロックチェーンを管理する。なお、ブロックチェーンネットワーク10の構成は、一般的なブロックチェーンに用いられるものを想定しており、ここでは詳細の説明を省略する。
【0019】
管理サーバ20は、発電所1と需要者2との間での仮想PPAに係る取引の履歴を管理するコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、クラウドコンピューティングによる仮想的なコンピュータにより実現される。管理サーバ20は、上述したように、仮想PPAに係る電力の流れを、ブロックチェーンネットワーク10におけるトークンの流れとして管理する。
【0020】
ワーカー装置30は、トランザクションを発行するコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、クラウドコンピューティングによる仮想的なコンピュータにより実現される。ワーカー装置30は、複数配置される。また、ワーカー装置30は、複数のリージョン(コンピュータが配置されるエリア)に配備される。本実施形態では、ワーカー装置30は、管理サーバ20からのリクエストに応じてトランザクションを発行してブロックチェーンネットワーク10に送信する。
【0021】
本実施形態の電力取引支援システムでは、仮想PPAに係る取引に対応するトランザクションを発行するにあたり、複数のワーカー装置30が並列でトランザクションを発行するようにしている。通常の取引管理では、順次直列にトランザクションを発行していくところ、本実施形態のように、同時並行的にワーカー装置30を用いてトランザクションを発行することにより、大量の取引に対応する大量のトランザクションを効率的に発行することができる。
【0022】
図3は、管理サーバ20、ワーカー装置30、ブロックチェーンネットワーク10を形成するノードなどに用いられるコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。コンピュータは、CPU101、メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース104、入力装置105、出力装置106を備える。記憶装置103は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース104は、通信ネットワークに接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置105は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置106は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。
【0023】
図4は、管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ20は、需要量取得部211、発電量取得部212、マッチング処理部213、リクエスト送信部214、調達先記憶部231を備える。なお、需要量取得部211、発電量取得部212、マッチング処理部213、リクエスト送信部214は、管理サーバ20においてCPU101が記憶装置103に記憶されているプログラムをメモリ102に読み出して実行することにより実現され、調達先記憶部231は、管理サーバ20のメモリ102及び記憶装置103が提供する記憶領域の一部として実現されうる。
【0024】
需要量取得部211は、需要者2による電力の需要量を取得する。需要量取得部211は、例えば、需要者2の住居や工場、店舗等の施設に配置されるスマートメータから、送電ネットワーク3から受電した需要量を取得することができる。需要量取得部211は、所定の単位時間(例えば、15分や30分など)ごとの需要量を取得するものとする。
【0025】
発電量取得部212は、発電所1による発電量を取得する。発電量取得部212は、例えば、発電所1に配置されるスマートメータから発電量(発電所1から送電ネットワーク3に送出される電力量)を取得することができる。発電量取得部212は、上記所定の単位時間ごとの発電量を取得するものとする。
【0026】
調達先記憶部231は、需要者2と、当該需要者2の仮想PPAに係る電力の調達先となる発電所1とを対応づける情報(以下、調達先情報という。)を記憶する。調達先情報は、需要者2に対応付けて、発電所1と、契約電力量とを含むことができる。調達先情報には、需要者2に対応する、発電所1の優先順位を含めるようにしてもよい。
【0027】
マッチング処理部213は、発電所1と需要者2とのマッチングを行う。マッチング処理部213は、需要量取得部211が取得した需要量、発電量取得部212が取得した発電量、及び調達先情報に基づいて、発電所1、需要者2、及び発電量のうち需要者2に供給された供給量を決定することができる。例えば、マッチング処理部213は、発電所1ごとに、当該発電所1に対応する調達先情報を読み出し、読み出した調達先情報の契約電力量を用いて発電量を按分して、調達先情報の需要者2に対する供給量を計算することができる。
図5は、マッチング処理部213によるマッチングの結果の一例を示す図である。
図5の例のように、発電所1及び需要者2の組について、供給電力を計算することができる。
【0028】
リクエスト送信部214は、マッチング結果に応じたトークンの移転をするためのトランザクションを発行する為の処理を行う。本実施形態では、ワーカー装置30がトランザクションを発行するため、リクエスト送信部214は、ワーカー装置30に対して、発電所1、需要者2及び当該発電所1から当該需要者2への供給量とを対応付けた情報(以下、トランザクション情報という。)を含めたリクエストをワーカー装置30に送信する。リクエスト送信部214は、発電所1を選択して、マッチングされた発電所1と需要者2との組のうち選択した発電所1に対応するものを抽出し、抽出した全ての組をまとめて、発電所1と、当該発電所1からの供給先となる複数の需要者2、及び需要者2に対する供給量とをリクエストに含めることができる。
【0029】
図6は、ワーカー装置30のソフトウェア構成例を示す図である。ワーカー装置30は、リクエスト受信部311及びトランザクション発行部312を備える。
【0030】
リクエスト受信部311は、管理サーバ20から上述したリクエストを受信する。
【0031】
トランザクション発行部312は、リクエストに応じてトランザクションを発行し、ブロックチェーンネットワーク10に送信する。上述したように、リクエストには、発電所1に対応づけて、当該発電所1からの電力提供先となる複数の需要者2及びその需要者2に対する供給電力量が含まれている。そこで、トランザクション発行部312は、1つの発電所1のアカウントを送信元として、複数の需要者2のアカウントを送信先とし、需要者2ごとの供給電力量に対応する数のトークンを送信する、いわゆる1対Nのトランザクションを発行してブロックチェーンネットワーク5に送信する。なお、ブロックチェーンネットワーク5は、1対Nのトランザクションを処理可能な実装系であるものとする。これにより、発電所1からの全ての送電先(需要者2)についての仮想PPAに係る取引をまとめて、対応するトークンの移転を行う1対Nのトランザクションを発行することができる。
【0032】
<動作>
図7は、本実施形態の電力取引支援システムの動作を説明する図である。
【0033】
管理サーバ20は、発電所1と需要者2とのマッチングを行い(S321)、マッチング結果(
図5参照)から発電所1ごとに対応する取引をまとめて(S322)、まとめた取引、すなわち、マッチング結果から1つの発電所1に対応するものを抽出したトランザクション情報を含めたリクエストを分散させてワーカー装置30に送信する(S323)。例えば、管理サーバ20は、複数の発電所1のそれぞれについてリクエストを作成し、作成したリクエストを異なるワーカー装置30に送信することができる。
【0034】
ワーカー装置30では、リクエストに応じて、設定されている1つの発電所1のアカウントを送信元とし、複数の需要者2のそれぞれについて、需要者2のアカウントを送信先、供給電力量に対応するトークンの量を移転するトークンの量として設定した、1対Nのトランザクションを発行して、ブロックチェーンネットワーク10に送信する(S324)。
【0035】
以上のようにして、本実施形態の電力取引支援システムによれば、複数の発電所1と複数の需要者2とをマッチングさせて仮想PPAを実現することができる。また、仮想PPAに係る取引に対応するトークンをブロックチェーンネットワーク10上で管理することにより、改ざん困難に電力の相対取引を管理することが可能となる。さらに、本実施形態の電力取引支援システムによれば、1つの発電所1を供給元として複数の需要者2を供給先とした電力取引が行われるところ、これに対応する1対Nのトランザクションを発行することにより、ブロックチェーンネットワーク10に対するトランザクションの処理を効率的に行うことができる。また、分散させたワーカー装置30によりトランザクションを発行することができるので、マッチング処理を行う管理サーバ20の処理負荷を下げて、効率的なトランザクション発行処理を行うことが可能となり、トランザクションの発行にかかる時間を短縮することができる。また、ワーカー装置30を複数のリージョンに跨がって分散配備することにより、ネットワーク負荷によるトランザクション処理の遅延を回避することができる。
【0036】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【解決手段】複数の発電所と複数の需要者との間の電力取引を支援するシステムであって、発電所の夫々について、発電所で発電される電力のうち所定の電力ネットワークに送電された供給量を取得する供給量取得部と、ブロックチェーンにおける発電所の第1アカウントに供給量に応じたトークンを発行するトークン発行部と、需要者の夫々について、電力ネットワークから受電した需要量を取得する需要量取得部と、発電所及び需要者の組毎に発電所から需要者に送られたとみなす送電量を決定する送電量決定部と、発電所毎に、発電所と組となる複数の需要者の第2アカウントの夫々を送付先、第1アカウントを送付元とし、需要者毎の送電量に応じたトークンの量を移転させるトランザクションを発行するトランザクション発行部と、を備える。