特許第6797462号(P6797462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6797462ポリグリセリンモノエーテル及び洗浄剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797462
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ポリグリセリンモノエーテル及び洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20201130BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20201130BHJP
   C08G 65/02 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C11D1/72
   A61Q5/02
   C08G65/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-205706(P2015-205706)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-78033(P2017-78033A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(74)【代理人】
【識別番号】100152559
【弁理士】
【氏名又は名称】羽明 由木
(72)【発明者】
【氏名】前原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】坂西 裕一
(72)【発明者】
【氏名】細川 博史
(72)【発明者】
【氏名】金子 聖
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−009167(JP,A)
【文献】 特開2006−348084(JP,A)
【文献】 特開2007−056081(JP,A)
【文献】 特開昭52−110617(JP,A)
【文献】 特開昭58−180406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/02
C11D
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2’)
R’O−(C362)n2'−H (2’)
(式中、R’はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜16の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n2'はグリセリン単位の重合度を示し、35〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルを含有する洗浄剤組成物
【請求項2】
下記式(2”)
R”O−(C362)n2"−H (2”)
(式中、R”はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜15の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n2"はグリセリン単位の重合度を示し、25〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルを含有する洗浄剤組成物。
【請求項3】
下記式(2)
RO−(C362)n2−H (2)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルと、
アニオン性界面活性剤と、
両性界面活性剤とを含有する洗浄剤組成物であって、
前記洗浄剤組成物全量における、前記式(2)で表されるポリグリセリンモノエーテルの含有量が3〜9重量%である、洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項の何れか1項に記載の洗浄剤組成物を含有するシャンプー。
【請求項5】
下記式(1’)
R’O−(C362)n1−H (1’)
(式中、R’はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜16の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(1’)を開始剤とし、前記開始剤にグリシドールを開環重合させて、下記式(2’)
R’O−(C362)n2'−H (2’)
(式中、R’は前記に同じ。n2'はグリセリン単位の重合度を示し、35〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルを得るポリグリセリンモノエーテルの製造方法。
【請求項6】
下記式(1”)
R”O−(C362)n1−H (1”)
(式中、R”はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜15の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(1”)を開始剤とし、前記開始剤にグリシドールを開環重合させて、下記式(2”)
R”O−(C362)n2"−H (2”)
(式中、R”は前記に同じ。n2"はグリセリン単位の重合度を示し、25〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(2”)を得る工程を含む、該ポリグリセリンモノエーテル(2”)を含有する洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項7】
下記式(1)
RO−(C362)n1−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(1)を開始剤とし、前記開始剤にグリシドールを開環重合させて、下記式(2)
RO−(C362)n2−H (2)
(式中、Rは前記に同じ。n2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルを得る工程を含む、
該ポリグリセリンモノエーテル(2)と、アニオン性界面活性剤と、両性界面活性剤とを含有する洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物全量における、前記ポリグリセリンモノエーテル(2)の含有量が3〜9重量%である洗浄剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリグリセリンモノエーテル、及び前記ポリグリセリンモノエーテルを含み、起泡力に優れ、低刺激性で肌に優しい洗浄剤組成物に関する。前記洗浄剤組成物は、皮膚洗浄用、頭髪洗浄用等に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚や頭髪用の洗浄剤組成物には、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等の親水基としてスルホン酸構造を有するアニオン性界面活性剤が使用されてきていた。しかし、これらは起泡力には優れるものの、皮膚刺激性が強く、更に強いタンパク質変性作用を有するため、これらを皮膚や頭髪へ適用すると、肌のかさつき、肌荒れ、ひび割れ、湿疹、髪のパサツキ等を引き起こす場合があることが問題であった。
【0003】
そこで、近年、前記アニオン性界面活性剤に代えて、皮膚刺激性が低いポリオキシエチレン誘導体等の非イオン系界面活性剤が使用されている。しかし、ポリオキシエチレン誘導体は起泡力の点で不十分であった
【0004】
特許文献1、2には、界面活性剤として、アシル化アミノ酸系のアニオン性界面活性剤とモノアシルグリセリンを組み合わせて使用したり、ポリグリセリンアルキルエーテルを使用することにより、皮膚刺激性が低く、且つ起泡力に優れた洗浄剤組成物が得られることが記載されている。しかし、未だ、起泡力、及び皮膚刺激性の点で満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−156295号公報
【特許文献2】特開2006−348084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、新規のポリグリセリンモノエーテル、及び前記ポリグリセリンモノエーテルを含有し、起泡力に優れ、且つ低刺激性で肌に優しく、皮膚や頭髪の洗浄用として好適な洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、界面活性剤として、ポリグリセリンの重合度が高いポリグリセリンモノエーテルを用いると、タンパク質変性作用を抑制しつつ、優れた起泡力を発揮することができる洗浄剤組成物が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1)
RO−(C362)n1−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(1)を開始剤として、グリシドールを開環重合させて得られる、下記式(2)
RO−(C362)n2−H (2)
(式中、Rは前記に同じ。n2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルを提供する。
【0009】
本発明は、また、式(2)中のn2が20〜40である前記のポリグリセリンモノエーテルを提供する。
【0010】
本発明は、また、前記のポリグリセリンモノエーテルを含有する洗浄剤組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記の洗浄剤組成物を含有するシャンプーを提供する。
【0012】
本発明は、また、下記式(1)
RO−(C362)n1−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(1)を開始剤とし、前記開始剤にグリシドールを開環重合させて、下記式(2)
RO−(C362)n2−H (2)
(式中、Rは前記に同じ。n2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテルを得るポリグリセリンモノエーテルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄剤組成物は上記式(2)で表されるポリグリセリンモノエーテル(以後、「ポリグリセリンモノエーテル(2)」と称する場合がある)を含有する。そして、前記ポリグリセリンモノエーテル(2)は、水中で皮膚浸透性が小さい混合ミセルを形成するため、タンパク質変性作用を極めて低く抑制することができる。また、ポリグリセリンモノルエーテル(2)は優れた起泡力を発揮することができ、且つ泡持ちがよい。そのため本発明の洗浄剤組成物は、泡立ち、泡持ちがよく、且つ低刺激性で肌に優しいという特性を有し、皮膚洗浄用途や頭髪洗浄用途に好適に使用することができる。
また、本発明のポリグリセリンモノエーテルの製造方法によれば、前記ポリグリセリンモノエーテル(2)を高純度で、且つ効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ポリグリセリンモノエーテル(2)]
本発明のポリグリセリンモノエーテル(2)は、下記式(2)で表される。
RO−(C362)n2−H (2)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示し、n2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40である)
【0015】
前記ポリグリセリンモノエーテル(2)は、下記式(1)
RO−(C362)n1−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(1)を開始剤として使用し、前記開始剤にグリシドールを開環重合させることにより製造できる。
【0016】
式(1)、(2)の括弧内のC362は、下記式(3)及び(4)で示される両方の構造を有する。
−CH2−CHOH−CH2O− (3)
−CH(CH2OH)CH2O− (4)
【0017】
Rにおける炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル(ラウリル)、n−トリデシル、n−テトラデシル(ミリスチル)、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−ステアリル基等の直鎖状アルキル基;イソデシル、s−デシル、t−デシル、イソウンデシル、s−ウンデシル、t−ウンデシル、イソドデシル、s−ドデシル、t−ドデシル、イソトリデシル、s−トリデシル、t−トリデシル、イソテトラデシル、s−テトラデシル、t−テトラデシル、イソペンタデシル、s−ペンタデシル、t−ペンタデシル、ヘキシルデシル、イソヘキサデシル、s−ヘキサデシル、t−ヘキサデシル、イソヘプタデシル、s−ヘプタデシル、t−ヘプタデシル、イソステアリル等の分岐鎖状アルキル基;n−デセニル、n−ウンデセニル、n−ドデセニル、n−トリデセニル、n−テトラデセニル、n−ペンタデセニル、n−ヘキサデセニル、n−ヘプタデセニル、n−オレイル基等の直鎖状アルケニル基;イソデセニル、s−デセニル、t−デセニル、イソウンデセニル、s−ウンデセニル、t−ウンデセニル、イソドデセニル、s−ドデセニル、t−ドデセニル、イソトリデセニル、s−トリデセニル、t−トリデセニル、イソテトラデセニル、s−テトラデセニル、t−テトラデセニル、イソペンタデセニル、s−ペンタデセニル、t−ペンタデセニル、イソヘキサデセニル、s−ヘキサデセニル、t−ヘキサデセニル基等の分岐鎖状アルケニル基等を挙げることができる。
【0018】
Rにおけるヒドロキシル基を有している炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、前記炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基における炭素原子に結合する1個以上の水素原子がヒドロキシル基に置換された基を挙げることができる。
【0019】
本発明におけるRとしては、なかでも、界面上に強固な柵層(パリセード層)を形成することができ、それにより、優れた起泡力を発揮することができる点で、炭素数10〜18の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数の上限は、より好ましくは16、更に好ましくは15、特に好ましくは14、最も好ましくは13である。炭素数の下限は、特に好ましくは11、最も好ましくは12である。
【0020】
2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40の整数(好ましくは15〜40、特に好ましくは20〜40、最も好ましくは25〜40)である。n2が上記範囲を下回ると、HLB値が低下(親水性が低下)し、水性成分への溶解性が低下する傾向があり、起泡力が低下する。一方、n2が過剰であると、HLB値が大きくなり過ぎ(親油性が低下し)、かつ分子量が大きくなり過ぎるため、やはり起泡力が低下する。
【0021】
ポリグリセリンモノエーテル(2)のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance;親水親油バランス)は例えば15.0以上(例えば15.0〜20.0)であり、特に好ましくは17.0以上(例えば17.0〜20.0、とりわけ好ましくは17.5〜19.5)である。HLBが上記範囲を下回ると、親水性が低下し、水性成分への溶解性が低下し、起泡力が低下する傾向がある。HLB値は、例えば下記式により算出することができる(デイビス法)。尚、HLB値の計算式は下記式に限ったものではない。
HLB値=7+(親水基の基数の総和)−(疎水基の基数の総和)
【0022】
ポリグリセリンモノエーテル(2)としては、なかでも、ポリ(20)グリセリンモノデシルエーテル、ポリ(20)グリセリンモノラウリルエーテル、ポリ(25)グリセリンモノラウリルエーテル、ポリ(35)グリセリンモノラウリルエーテル、ポリ(40)グリセリンモノラウリルエーテル等の、上記式(2)で表されるポリグリセリンモノエーテルのうち、n2が20〜40で、Rが炭素数10〜18の直鎖状アルキル基である化合物が、水性成分への溶解性が高く、起泡力が高い点で特に好ましく、とりわけRが炭素数10〜12の直鎖状アルキル基(例えば、デシル基、ラウリル基)である化合物が、微細泡形成能に優れ、且つタンパク質変性抑制作用に優れる点で好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。尚、本明細書において「ポリ(20)グリセリン」の括弧内の数字はグリセリン単位の重合度を示し、前記はグリセリン単位の重合度が20のポリグリセリンを示す。「ポリ(25)グリセリン」、「ポリ(35)グリセリン」、「ポリ(40)グリセリン」もこれに準じる。
【0023】
[ポリグリセリンモノエーテルの製造方法]
本発明のポリグリセリンモノエーテルの製造方法は、下記式(1)
RO−(C362)n1−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリン単位の重合度を示し、4〜10である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(以後、「ポリグリセリンモノエーテル(1)」と称する場合がある)を開始剤とし、前記開始剤にグリシドールを開環重合させて、下記式(2)
RO−(C362)n2−H (2)
(式中、Rは前記に同じ。n2はグリセリン単位の重合度を示し、11〜40である)
で表されるポリグリセリンモノエーテル(=ポリグリセリンモノエーテル(2))を得ることを特徴とする。
【0024】
グリシドールの使用量は、ポリグリセリンモノエーテル(1)1モルに対して、例えば10〜40モル程度、好ましくは20〜40モル、特に好ましくは15〜30モルである。
【0025】
前記開環重合反応は、塩基性触媒(例えば、水酸化ナトリム等)の存在下で行うことが好ましい。
【0026】
前記塩基性触媒の使用量は、ポリグリセリンモノエーテル(1)100重量部に対して、例えば0.05〜0.5重量部程度、好ましくは0.1〜0.4重量部である。
【0027】
前記開環重合反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。前記溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等の飽和又は不飽和炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;スルホラン等のスルホラン系溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;シリコーンオイル等の高沸点溶媒等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
前記溶媒の使用量としては、ポリグリセリンモノエーテル(1)に対して、例えば50〜300重量%程度である。溶媒の使用量が上記範囲を上回ると反応成分の濃度が低くなり、反応速度が低下する傾向がある。
【0029】
反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0030】
反応温度は、例えば60〜120℃程度である。反応時間は、例えば0.5〜20時間程度である。反応終了後は、熟成工程を設けてもよい。熟成工程を設ける場合、熟成温度は例えば60〜120℃程度、熟成時間は例えば1〜5時間程度である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0031】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0032】
本発明のポリグリセリンモノエーテルの製造方法によれば、ポリグリセリンモノエーテル(2)を高純度で、且つ効率よく製造することができる。
【0033】
上記製造方法で得られる本発明のポリグリセリンモノエーテル(2)は、例えば、化粧料用組成物(例えば、ヘアコンディショニング剤、スキンケアローション組成物等)や洗浄剤組成物(例えば、シャンプー、ボディーシャンプー等)に使用する、界面活性剤、可溶化剤、分散剤、乳化剤、濡れ剤等として好適に使用することができる。
【0034】
[洗浄剤組成物]
本発明の洗浄剤組成物はポリグリセリンモノエーテル(2)を含有する。ポリグリセリンモノエーテル(2)の含有量は、洗浄剤組成物全量(100重量%)の例えば1重量%以上(例えば1〜50重量%)であり、用途に応じて適宜調整することができる。シャンプーに使用する洗浄剤組成物の場合、洗浄剤組成物全量における、ポリグリセリンモノエーテル(2)の含有量は、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは3〜9重量%である。ポリグリセリンモノエーテル(2)の含有量が上記範囲を下回ると、優れた起泡力が得られ難くなる傾向がある。一方、ポリグリセリンモノエーテル(2)の含有量が上記範囲を上回っても、起泡力を更に向上する効果は得られ難く、コスト面からも経済的ではない。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、更に水を含有することが好ましい。前記水は、硬水、軟水の何れでもよく、例えば、工業用水、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。
【0036】
水の含有量は、洗浄剤組成物全量(100重量%)の例えば30〜95重量%、好ましくは40〜85重量%、特に好ましくは50〜82重量%、最も好ましくは70〜80重量%である。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、更にまた、油脂を含有しても良い。前記油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、菜種油、ごま油、パーシック油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、落花生油、茶実油、米ぬか油、ホホバ油等の動植物油;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素;オレイン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;デシルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン等のシリコーン;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のエステル等;及び前記油脂に水素添加、分離等の処理を施して得られるもの等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物には、更に、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種を含有していても良い。これらを配合することにより、起泡力、肌感触等をより向上させることができる。
【0039】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩、高級脂肪酸石鹸、ラウロイルメチル―β―アラニン塩、アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩等を挙げることができる。
【0040】
前記両性界面活性剤としては、例えば、カルボベタイン系界面活性剤、アミドベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤、ホスホベタイン系界面活性剤、イミダゾリウムベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、アルキルアミドプロピルベタイン(例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等)、アルキルヒドロキシスルホベタイン(例えば、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、アルキルヒドロキシホスホベタイン(例えば、ラウリルヒドロキシホスホベタイン等)、2−アルキル−N−カルボキシアルキル−N−ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン(例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、アルキルジメチルアミンオキサイド(例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等)が好ましく、特に、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルヒドロキシホスホベタイン、2−アルキル−N−カルボキシアルキル−N−ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイドが好ましい。
【0041】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、C8-12脂肪酸モノグリセリド、グリセリンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、C6-24脂肪酸ジエタノールアミド、C6-24脂肪酸モノエタノールアミド、グリセリン脂肪酸(C6-24)エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤等を挙げることができる。
【0042】
アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、洗浄剤組成物全量(100重量%)の例えば0.1〜50重量%程度、好ましくは0.5〜35重量%、特に好ましくは0.8〜30重量%、最も好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、とりわけ好ましくは9〜19重量%である。これらを上記範囲内で配合すると、使用感、泡立ち、肌感触をより一層向上させることができる。
【0043】
更に、本発明の洗浄剤組成物には、カチオン性界面活性剤も含有していてもよいが、カチオン性界面活性剤の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は洗浄剤組成物全量(100重量%)の例えば3重量%以下、好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。カチオン性界面活性剤を上記範囲を超えて含有すると、タンパク質変性作用や皮膚刺激性が強まり、安全性が低下するため好ましくない。
【0044】
更にまた、本発明の洗浄剤組成物に含まれる全界面活性剤におけるポリグリセリンモノエーテル(2)の占める割合としては、例えば1〜70重量%であり、上限は好ましくは60重量%、特に好ましくは55重量%、最も好ましくは45重量%である。また、下限は、好ましくは3重量%、特に好ましくは5重量%、最も好ましくは20重量%である。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物には、更にまた、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性ポリマー等の粘度調整剤;ポリオール類等の保湿成分;脂肪酸等の増泡剤;アミド、水溶性高分子、pH調整剤、紫外線吸収剤、パール化剤、酸化防止剤、増粘剤、抗菌剤、防腐剤、キレート剤、香料、色素等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物は、例えば、上記ポリグリセリンモノエーテルの製造方法によりポリグリセリンモノエーテルを得、得られたポリグリセリンモノエーテルと、必要に応じて他の成分を混合することにより製造することができる。
【0047】
本発明の洗浄剤組成物は、例えばpH3〜11が好ましく、特に好ましくはpH4〜10である。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物は、低刺激性で、且つ起泡力優れ、泡持ちがよい。そのため、頭髪洗浄用(例えば、シャンプー)、皮膚洗浄用(例えば、手指用、顔用、身体用)、油汚れ洗浄用(例えば、衣料用、台所用)等の洗浄剤(特に、頭髪洗浄用、皮膚洗浄用)として好適である。
【0049】
[シャンプー]
本発明のシャンプーは上記洗浄剤組成物を含有する。シャンプー全量における上記洗浄剤組成物の含有量は、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。洗浄剤組成物の含有量の上限は100重量%である。すなわち、本発明のシャンプーは、上記洗浄剤組成物のみからなるものであってもよい。
【0050】
シャンプー全量におけるポリグリセリンモノエーテル(2)の含有量は、例えば1重量%以上(例えば1〜50重量%)、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは3〜9重量%である。
【0051】
本発明のシャンプーは、例えば、上記ポリグリセリンモノエーテルの製造方法によりポリグリセリンモノエーテルを得、得られたポリグリセリンモノエーテルと、必要に応じて他の成分を混合することにより製造することができる。
【0052】
本発明のシャンプーは、界面活性剤としてポリグリセリンモノエーテル(2)を含有するため、起泡力に優れ、泡持ちがよく、高い洗浄力を発揮することができ、且つ低刺激性で肌に優しい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例1、2、6、7、15及び16は参考例とする。
【0054】
実施例1(ポリ(20)グリセリンモノデシルエーテルの製造)
テトラグリセリンモノデシルエーテルに、テトラグリセリンモノデシルエーテル1当量に対して16当量となる量のグリシドールを、100℃を維持しつつ、12時間かけて滴下し、1時間の熟成を経て、85%リン酸水溶液を加えて反応を停止し、ポリ(20)グリセリンモノデシルエーテル(HLB:17.7)を得た。
【0055】
実施例2(ポリ(20)グリセリンモノラウリルエーテルの製造)
テトラグリセリンモノラウリルエーテルに、テトラグリセリンモノラウリルエーテル1当量に対して16当量となる量のグリシドールを、100℃を維持しつつ、12時間かけて滴下し、1時間の熟成を経て、85%リン酸水溶液を加えて反応を停止し、ポリ(20)グリセリンモノラウリルエーテル(HLB:17.2)を得た。
【0056】
実施例3(ポリ(25)グリセリンモノラウリルエーテルの製造)
テトラグリセリンモノラウリルエーテル1当量に対して21当量となる量のグリシドールを用いた以外は実施例2と同様にしてポリ(25)グリセリンモノラウリルエーテル(HLB:17.6)を得た。
【0057】
実施例4(ポリ(35)グリセリンモノラウリルエーテルの製造)
テトラグリセリンモノラウリルエーテル1当量に対して31当量となる量のグリシドールを用いた以外は実施例2と同様にしてポリ(35)グリセリンモノラウリルエーテル(HLB:18.3)を得た。
【0058】
実施例5(ポリ(40)グリセリンモノラウリルエーテルの製造)
テトラグリセリンモノラウリルエーテル1当量に対して36当量となる量のグリシドールを用いた以外は実施例2と同様にしてポリ(40)グリセリンモノラウリルエーテル(HLB:19.4)を得た。
【0059】
実施例6〜10、比較例1〜5
下記表1に示す配合組成(単位:重量部)により洗浄剤組成物を常法により製造し、得られた洗浄剤組成物について、起泡力、泡持ち、及びタンパク質変性抑制作用を下記方法で評価した。尚、下記表1中の界面活性剤のうち、ポリ(20)グリセリンモノデシルエーテルからポリ(40)グリセリンモノラウリルエーテルは、それぞれ実施例1〜5で得られたものを使用した。
【0060】
(起泡力評価)
洗浄剤組成物0.6g、水道水100mL(液温:40℃)をミキサーに仕込み、30秒撹拌し、静置1分後の泡高さ(mm)、及び静置4分後の泡高さ(mm)を測定した。
【0061】
(泡持ち評価)
上記(起泡力評価)で求められた泡高さ(mm)から、実施例及び比較例で得られた洗浄剤組成物の「泡持ち」を、下記式に基づいて算出した。
「泡持ち」(%)=(静置4分後の泡高さ)/(静置1分後の泡高さ)×100
【0062】
(タンパク質変性抑制作用評価)
文献(粧技誌 '84 18(2) p96-105)に従い、緩衝液中に卵由来アルブミン0.025gと洗浄剤組成物0.6gと水道水100mLを添加したものをサンプルとして使用し、調製直後、及び25℃で24時間静置した後のサンプル中の卵由来アルブミン量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定した。
調製直後のサンプルと比較して、25℃で24時間静置した後のサンプルにおける卵由来アルブミン量がどの程度減少しているか(減少割合)を算出し、それをタンパク質変性率として、下記基準によりタンパク質変性抑制作用を評価した。
評価基準
◎:タンパク質変性率が3%未満
○:タンパク質変性率が3%以上、10%未満
△:タンパク質変性率が10%以上、60%未満
×:タンパク質変性率が60%以上
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、本発明の洗浄組成物(実施例6〜10で得られた洗浄剤組成物)は、泡立ち(35mm以上)、泡持ち(90%以上)、及びタンパク質変性抑制作用のすべてに優れることが判る。一方、比較例1〜5で得られた洗浄剤組成物は、泡立ち、泡持ち、タンパク質変性作用のいずれかの点において、満足できるものではなかった。
【0065】
実施例11〜16、比較例6
下記表2に示す各成分(単位:重量部)を混合してシャンプーを得た。得られたシャンプーについて、上記と同様の方法で起泡力、泡持ち、及びタンパク質変性抑制作用について評価を行った。尚、下記表2中の、ポリ(20)グリセリンモノラウリルエーテルは実施例2で得られたものを使用した。
【0066】
【表2】
【0067】
表2より、本発明のシャンプー(実施例11〜16で得られたシャンプー)は、泡立ち、泡持ち、及びタンパク質変性抑制作用のすべてに優れることが判る。一方、本発明のポリグリセリンモノエーテルを含まない比較例6で得られたシャンプーは、泡立ちは良かったものの、泡持ちとタンパク質変性作用の点において満足できるものではなかった。