(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
マンション、病院、学校、商用ビル等の構造物は、床、天井、壁で囲まれた層が積み重なった複数階からなる構造で、各階は、立ち上がりコンクリートを打設することにより構築される。
【0012】
各階は、立ち上がりコンクリートのうち、柱間を繋ぐ梁の下側(梁底)まで打設され、柱、壁等が構築される。その後、梁や、梁により囲まれた床や天井となるスラブが、コンクリートの打設により同時に構築される。この作業を繰り返すことで、複数階からなるコンクリート構造物が構築される。
【0013】
このようなコンクリートの打設に際し、その打設により構築する躯体に関する躯体情報として、その位置や寸法を示した躯体図が使用される。
図1は、その躯体図の一例を示したものである。
図1に示す躯体図は、柱部10、梁部11、スラブ部12を構築するためにコンクリートを打設する位置とその厚さとを示している。この例では、4つの柱部10を構築するために、矩形に組まれた型枠にコンクリートを厚さ800mmほど打設し、4つの梁部11を構築するために、柱部10の間を繋ぐように組まれた型枠にコンクリートを厚さ600mmと800mmほど打設することを示している。また、この例では、4つの梁部11で囲まれた部分にスラブ部12を構築するために、その部分にコンクリートを厚さ200mmほど打設することを示している。
【0014】
なお、柱部10、梁部11、スラブ部12は、コンクリートを打設するのみであってもよいが、一定以上の強度を得るために鉄筋を配設し、その鉄筋を埋め込むようにコンクリートを打設してもよい。
【0015】
実際にコンクリートの打設は、
図2に示すように型枠20を組み、固定した後、まだ固まっていないコンクリート(生コンクリート)を搬送する生コンクリート車21から生コンクリートを荷下ろし、型枠20内に流し込むことにより行われる。生コンクリートの打設は、例えば生コンクリート車21から生コンクリートを受け、ポンプにより圧送するポンプ車22を使用して行うことができる。これは一例であるので、生コンクリートを受けるコンクリートバケットを用い、生コンクリートが収容されたコンクリートバケットをタワークレーン等で吊し、コンクリートバケットから生コンクリートを流し落とすことで、コンクリートを打設してもよい。
【0016】
生コンクリートは、生コンクリートを構成するセメントと水が反応し、数時間で固まり始めることから、その時間より短い時間内に、運搬し、打設しなければならない。このため、連絡待ち数量と打設スピードを事前に、生コンクリートを製造する工場(プラント)に連絡しておき、プラントから打設スピードに合わせて連絡待ち数量まで生コンクリートが途切れないように順次出荷してもらう。
【0017】
そして、コンクリートを打設していき、既打設数量に測定計算した残数量を加算したものから、既に発注している数量を減算して不足分の数量を求め、その不足分の数量を調整数量として追加発注する。追加発注する数量は、一般的に、不足が生じないように安全側に割り増しされる。しかしながら、安全を見て余分に発注すると、その分のコストに加えて、余ったコンクリートを処分するためのコストもかかる。
【0018】
そこで、余分に発注しなくても済むように、正確な残数量を計算することができるシステムについて、
図3を参照して説明する。
図3に示すコンクリート打設数量計算システムは、画像を撮像する撮像手段もしくは撮像装置として機能するカメラ30と、カメラ30と通信を行い、カメラ30が撮像した画像の画像データを取得し、上記の残りの数量を算出する情報処理装置としてのPC40とを含んで構成される。
【0019】
マンションや商用ビル等を建設する場合、敷地が狭く、重機を設置するスペースがないことから、建築に必要な鋼材等を吊り上げ、移動させるために仮設の揚重機であるタワークレーン23が使用される。タワークレーン23は、構造物の内部を貫通するように仮設するものと、構造物の外部に仮設するものとがあり、作業が終了すると解体される。
【0020】
タワークレーン23は、鉛直方向に延びる脚部(マスト)24と、材料を吊り上げるクレーン部25と、クレーン部25をマスト24に支持する架台26とを含んで構成される。クレーン部25は、腕部(ジブ)と、ジブの先端からワイヤにより吊り下げられ、材料を引っ掛けるためのフックとを含む。架台26は、昇降可能にする昇降手段と、方向を変えるために回転可能にする旋回体と、クレーンを操縦するための運転室とを含む。タワークレーン23のクレーン部25や架台26は、建築中の構造物の上部へ材料を吊り上げ、移動させるために、建築中の構造物の上部より高い位置となる。
【0021】
カメラ30は、コンクリートを打設する対象の領域27を上方から撮像するために、タワークレーン23のクレーン部25や架台26等に取り付けられる。
図3に示す例では、カメラ30は架台26に取り付けられている。なお、カメラ30は、領域27の全体を撮像できない場合、2台以上設け、2台以上のカメラで領域27の全体を撮像してもよい。また、カメラ30を2台以上設ける場合であって、タワークレーン23が2基以上仮設される場合は、当該2台以上のカメラ30の全てを1基のタワークレーンに取り付けるのではなく、他のタワークレーンにも分散させて取り付けることができる。
【0022】
カメラ30は、タワークレーン23に限られるものではなく、領域27の全体を上方から撮像することができれば、近隣の高層マンションや高層ビル等に設置してもよい。また、飛行体としてのドローンに搭載し、ドローンを決まった位置で静止飛行させ、撮像してもよい。
【0023】
カメラ30は、
図4に示すように、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子31と、レンズ32と、画像処理部33と、通信部34と、制御部35とを含む。撮像素子31は、レンズ32を介して入射され、集光された光を電気信号に変換し、画像処理部33は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成され、ノイズ除去、階調補正、画像の圧縮や伸張等の処理を行う。これらの処理は、良く知られた処理であるため、ここでは詳述しない。通信部34は、送受信機を含み、無線通信により画像データをPC40へ送信する。
【0024】
制御部35は、CPUおよびメモリ等により構成され、カメラ30全体を制御し、画像処理部33に対して画像処理を行うように指示し、画像処理された画像データをメモリに保存し、通信部34に対して画像データの送信を指示する。
【0025】
PC40は、地上にいる作業員が保持し、カメラ30から送信された画像データを受信し、画像データの画像を画像処理・解析し、躯体図と照合し(重ね合わせ)、コンクリートの未打設領域に打設するコンクリートの数量(残数量)を算出する。ここでは、躯体図との照合や残数量の計算にPC40を使用しているが、これらの照合や計算を実行することができるものであれば、PC40に限られるものではなく、スマートフォンやタブレット端末等であってもよい。
【0026】
PC40は、
図5に示すように、ハードウェアとして、CPU41と、ROM42と、RAM43と、HDD44と、通信I/F45と、入力装置46と、表示装置47と、入出力I/F48とを備える。CPU41と、ROM42と、RAM43と、HDD44と、通信I/F45と、入出力I/F48は、バス49に接続され、バス49を介して情報のやりとりを行う。
【0027】
ROM42は、PC40を起動するためのブートプログラムやファームウェア等を記憶する。HDD44は、OSや各種のアプリケーションプログラムを記憶する。CPU41は、作業領域としてRAM43を使用し、ROM42やHDD44に記憶された各種のプログラムをRAM43に読み出し、実行する。CPU41は、各種のプログラムの実行によりPC40を制御し、画像データの読み込みから残数量の算出結果の表示までの処理を実行する。
【0028】
通信I/F45は、カメラ30と無線通信を行い、カメラ30から送信された画像データを受信する。入力装置46は、キーボード、タッチパッド、マウス等の情報を入力するための装置で、表示装置47は、ディスプレイ等の情報を表示するための装置である。上記の算出結果は、表示装置47に表示される。入出力I/F48は、入力装置46や表示装置47をバス49と接続し、入力した情報をCPU41に処理させ、処理した結果を表示させる。
【0029】
PC40は、CPU41がHDD44に記憶されたプログラムを読み出し実行することにより各機能手段を生成し、各機能手段により上記の処理を実現する。このため、PC40は、各機能手段を備えているということができる。なお、これらの機能手段は、プログラムというソフトウェアに限らず、その一部または全部を回路等のハードウェアで実現されていてもよい。
【0030】
図6は、PC40の機能構成の一例を示したブロック図である。PC40は、機能手段として、少なくとも抽出手段50と、照合手段51と、処理手段52とを含む。PC40は、そのほか、通信手段53と、補正手段54と、生成手段55と、記憶手段56とを含むことができる。
【0031】
記憶手段56は、
図1に示したような、コンクリートを打設する厚さに応じて複数の二次元領域に区分した二次元の躯体情報である躯体図を記憶する。生成手段55は、記憶手段56に記憶された躯体図から、各部位の厚さの情報を付加して、
図7に示すような三次元の躯体情報としての立体図(3Dデータ)を生成する。生成手段55は、生成した三次元の躯体情報としての立体図を表示装置47に表示させる。
【0032】
通信手段53は、カメラ30と通信を行い、カメラ30により撮像された領域27の画像データを受信する。
図8に、カメラ30により撮像された領域27の画像を例示する。
図8では、まだ生コンクリートが打設されておらず、領域27に型枠20のみが設置されているのが示されている。この例では、領域27の中央に開口部13を形成するものとしている。
【0033】
領域27を真上から撮像できる場合、画像データの画像をそのまま利用することができる。カメラ30が領域27の斜め上方に取り付けられている場合、画像データの画像には歪みが生じているため、その画像をそのまま利用することはできない。
【0034】
そこで、補正手段54が、画像データの画像を、真上から撮像した画像となるように補正する。斜め上方から撮像された画像は、領域27の形状が正方形や長方形であっても、歪みが生じ、
図9(a)に示すように台形となる。この台形を正方形や長方形に修正するべく、台形補正という歪み補正を行うことができる。補正手段54は、画像上の基準となる位置に点(マーカー)28を設定し、
図9(b)に示す躯体図にも、画像と同じ位置にマーカー28を設定する。マーカー28は、画像、躯体図の各々につき、少なくとも4箇所設定する。
図9に示す例では、領域27の4隅にマーカー28を設定している。
【0035】
補正手段54は、設定したマーカー28を基に、縦方向および横方向に伸縮させる等して、歪みを補正する。
図9(c)は、補正後の画像を示している。
【0036】
抽出手段50は、通信手段53が受信した画像データの画像、もしくは補正手段54により補正された画像から、コンクリートの打設済領域と未打設領域との境界を抽出する。境界は、例えば画像を構成する画素の色情報(色調、階調)に基づき抽出することができる。具体的には、第1の画素の色情報がコンクリートとして認識される色情報の範囲内にあり、その隣の第2の画素の色情報がその範囲外である場合、第1の画素と第2の画素の間を境界として抽出することができる。
【0037】
境界は、複数の点として抽出されるが、近似アルゴリズムを使用して、その点の数を減らすことができる。近似アルゴリズムとしては、例えばDouglas-Peuckerアルゴリズムを使用することができる。このアルゴリズムは、許容距離を決定し、2つの点を繋ぐ直線からその間にある最も遠い点を探し、直線からその点までの距離が許容距離より遠い場合、その点を残し、許容距離より近い場合、その点を廃棄し、点を間引いていく方法である。
【0038】
図10は、抽出手段50により境界を抽出した例を示した図である。
図10中、斜線部が打設済領域60で、斜線のない部分が未打設領域61である。境界は、点同士を直線で繋ぎ、複数の優角および劣角を含む線として表される。優角は、1点から延びる2つの半直線が作る角のうち、180°より大きい方の角で、劣角は、180°より小さい方の角である。領域27には、作業を行う作業員、鉄骨、開口部13等が存在する。これらは、コンクリートの色とは異なる色であるため、それらの周りがコンクリート打設済であっても、境界として抽出されてしまう。
【0039】
このように抽出された境界は、
図11(a)に示すように、多角形や、劣角のうち45°以下の角度、または優角のうち315°以上の角度となって現れることが多い。
図11(a)に示す例では、丸で囲まれた1点から延びる直線がなす角が40°の角度で示されている。
【0040】
そこで、補正手段54は、設定された条件として、コンクリートの打設済領域が周りを取り囲むもの、および劣角のうち45°以下の角度もしくは優角のうち315°以上の角度となるものをなくすように、これらを削除する補正を行う。このように設定された条件に適合するように補正した境界を、
図11(b)に示す。
図11(b)では、40°の角度を作る点と2本の直線を削除し、それら2本の直線が接続されていた2つの点を直接直線で繋いでいる。補正手段54は、補正すべき箇所が存在する場合のみ、このような補正を行う。
【0041】
照合手段51は、抽出手段50により抽出された境界または補正手段54により補正された境界と、躯体図とを重ね合わせ、未打設領域の、柱部10、梁部11、スラブ部12といった各部位の寸法や厚さ等を調べる。
図12は、境界を示していないが、画像と躯体図とを重ね合わせているところを示している。照合手段51は、躯体図と重ね合わせる際、台形補正した後の画像を適宜拡大または縮小し、当該画像を躯体図の倍率に合わせることができる。なお、躯体図を画像に合わせて拡大または縮小してもよい。
【0042】
躯体図は、各部位に対するコンクリートの打設厚さhの情報を持っている。また、画像を構成する画素1つに対応する面積が予め求められている。このため、処理手段52は、未打設領域61を構成する画素の数を計数して、未打設領域61の面積を部位の厚さh毎に算出する。
【0043】
面積の算出方法としては、上記の画素の数を計数する方法のほか、打設済領域60と未打設領域61との境界線62を示す直線または曲線を近似式で表し、幅または奥行きの長さで積分する方法を用いることができる。このため、躯体図は、水平方向の幅や奥行きの長さの情報を含むことができる。この方法は一例であるので、面積を算出することができれば、これまでに知られたいかなる方法でも採用することができる。
【0044】
未打設領域61の面積は、部位の厚さ毎に算出することができるため、厚さ200mmの面積、厚さ600mmの面積、厚さ800mmの面積という3つの部位の面積が算出される。処理手段52は、部位ごとに算出した面積にその部位の厚さを乗算し、各部位につき得られた数量の和を求めることにより残数量を計算する。処理手段52は、表示装置47に、計算した残数量を表示させる。
【0045】
処理手段52は、カメラ30により領域27が撮像される毎に残数量を計算することができるが、その都度残数量を計算してもよいし、撮像される毎に差分を計算し、その差分から残数量を計算してもよい。
【0046】
具体的には、処理手段52は、領域27に打設すべきコンクリートの数量を計算し、カメラ30により領域27が撮像される毎に打設数量の差分を計算する。処理手段52は、任意の時刻における残数量を、領域27に打設すべきコンクリートの数量からそれまでに得られた打設数量の差分の合計を減算することにより計算する。
【0047】
差分は、
図13(a)に示すような第1の時刻tに撮像された画像70と、
図13(b)に示すような第2の時刻t+1に撮像された画像71とから、状況が変化した箇所を認識することにより、
図13(c)に示すような差分画像72を得る。差分画像72には、その間に打設されたコンクリート以外に、移動する物体として、作業員74や、作業員74が作業を行うために持つポンプ配管75等が含まれる。このため、これらの移動物体を除去し、
図13(d)に示すようなコンクリートの変化部分のみの差分画像73を得る。
【0048】
処理手段52は、差分画像73におけるコンクリート部分の画像を構成する画素の数を計数し、打設数量の差分を計算する。
【0049】
ところで、コンクリートを打設する領域27には、作業員等の未打設領域61の面積を算出するために障害となる障害物が存在し、カメラ30で撮像した画像において未打設領域61の一部が障害物に隠れる場合がある。2台以上のカメラ30を使用して撮像する場合は、あるカメラから隠れた部分は、別のカメラで撮像することができる。カメラ30が1台である場合は、即座に障害物を取り除いて取り直しが可能なときは、障害物を取り除いて再度撮像し、障害物を取り除くことが困難なとき、あるいは取り除くことができないときは、隠れた部分の周囲の画像から、隠れた部分が打設済みか、未打設か、一部が打設されているかを判定し、一部が打設されている場合、その周囲の画像から、どの程度打設されているかを予測することができる。
【0050】
例えば、
図14に示すような画像が得られた場合、障害物76に隠れた部分のコンクリートの打設状況は、障害物76によって途切れた、打設済領域60と未打設領域61の境界線62を、破線で示すように滑らかに繋ぎ合わせることにより、どの程度打設されているかを予測することができる。
【0051】
また、生コンクリート車1台の荷下ろしが終了し、打設したときの画像は、上方から撮像するので、
図15(a)に示すように、境界線62に近い打設領域60の領域63は、実際に躯体図のその部位の厚さhまで打設していなくても、その厚さhまで打設したように撮像されてしまう。領域63は、境界線62から破線までの領域である。
【0052】
そこで、領域63については、
図15(b)の切断線A-Aで切断した断面図のように、コンクリートを打設していく方向Bに向けて一定の勾配が形成されているものとし、方向Bへの領域63の長さCの半分まで、躯体図のその部位の厚さhで打設されたものとして、残数量を算出することができる。これにより、より正確な残数量を算出することができる。
【0053】
作業員は、PC40の表示装置47に表示された結果を確認し、既打設数量に測定計算した残数量を加算したものから既に発注している数量を減算して不足分の数量を求め、その不足分の数量を調整数量(追加発注数量)とし、追加発注することができる。
【0054】
型枠の中には、鉄筋等があり、コンクリート中に埋め込まれるため、計算数量と打設数量には必ず誤差が生じる。カメラ30での画像の撮像およびPC40でのコンクリートの残数量の算出は、調整数量の誤差を減らすため、終了間際に実施することができるが、誤差の傾向をつかみ、その傾向に基づき、最終数量を決定するため、生コンクリートの荷下ろしが終了するたびに撮像を行い、残数量を算出することができる。そして、最終的に打設する全体数量を算出して、設計時の全体数量と比較し、その差を誤差として検出することができる。
【0055】
PC40は、残数量を算出し、その結果を表示するだけではなく、プラントの出荷情報や現場での打設情報を管理し、現場の打設スピードや運搬時間等を表示装置47にリアルタイムで表示させることができる。
【0056】
これを実現するために、コンクリート打設数量計算システムは、
図16に示すように、カメラ30とPC40のほか、さらに通信端末80と入力手段として機能する情報入力装置81、82とを備えることができる。通信端末80は、生コンクリートを運搬する生コンクリート車21の運転手が所持するスマートフォン等で、情報入力装置81、82は、通信端末80をかざすことで、通信端末80をかざした時間等を入力する。情報入力装置81、82は、通信端末80が保持する生コンクリートに関する情報を読み取り、その情報を入力することも可能である。生コンクリートに関する情報としては、例えば出荷数量、コンクリートの組成等を挙げることができる。
【0057】
運転手は、現場に到着した時と打設が終了した時に通信端末80を、現場に設置された情報入力装置81にかざすことで、到着時刻と打設終了時刻を入力する。情報入力装置82は、プラントに設置され、運転手は、プラントから出発する時に通信端末80を情報入力装置82にかざし、出発時刻を入力する。
【0058】
情報入力装置81、82は、PC40と接続され、PC40は、情報入力装置81、82に入力された出発時刻、到着時刻、打設終了時刻の情報を取得し、これらの情報から打設スピードや運搬時間を算出する。算出された打設スピードや運搬時間は、残数量の算出結果とともに表示装置47に表示される。
【0059】
PC40、情報入力装置81、82は、例えばネットワーク83に接続され、PC40は、ネットワーク83を介して情報入力装置81、82と通信し、上記の情報を取得することができる。ネットワーク83は、有線ネットワークであっても、無線ネットワークであってもよい。また、ネットワーク83は、1つのネットワークであってもよいし、ルータやプロキシサーバ等の接続機器により接続された2以上のネットワークであってもよい。
【0060】
図17は、誤差の傾向をつかみ、その傾向に基づき、最終的に必要な数量を予測する方法について説明する図である。1台目の生コンクリート車21から生コンクリートを、ポンプ配管75を介して供給し、
図17(a)の打設部位(1)に打設する。実打設数量は、生コンクリート車21が運搬した量にほぼ等しく、1台分の4m
3となるはずであるが、梁下までの立ち上がり打設にも使用されているため、
図17(b)に示すように実打設数量は不明である。
【0061】
次に、2台目から5台目までの4台の生コンクリート車21から生コンクリートを供給し、
図17(a)の打設部位(2)に打設する。実打設数量は、4台分の16m
3である。このときの差分として計算された計算数量は、
図17(b)に示すように16m
3より多い16.24m
3となっている。そのときの誤差比率は、実打設数量を計算数量で除し、百分率で表した値で、98.5%となっている。
【0062】
実際の建物のコンクリート躯体の中には、鉄筋、設備配管、電気配線、仮設金物等の埋設物が存在する。このため、コンクリートの数量を正確に計算するには、図面上の面積×高さにより得られる体積から、これらの埋設物の体積を差し引かなければならない。しかしながら、これらの埋設物の体積を事細かに計算することは困難である。また、これらの埋設物以外にも、型枠の変形等の要因もある。これらの要因を計算に取り込むため、誤差比率というパラメータを導入し、その誤差比率の傾向を導き出し、それを計算数量に反映することで最終的に必要なコンクリートの数量を予測する。
【0063】
そこで、6台目から9台目まで、10台目から13台目までの計算数量、誤差比率を同様に計算する。また、これまでに計算した計算数量と、躯体図から得られる打設すべきコンクリートの数量とを用い、残数量としての打設部位(5)の計算数量を求める。ここでは、13.21m
3と算出されている。
【0064】
打設部位(5)の実打設数量は、打設部位(5)につき計算された計算数量と、これまでに算出された誤差比率とから予測される。すなわち、
図17(b)に示すように計算数量に誤差比率を乗算して予測値として計算することができる。
【0065】
誤差比率は、打設部位(2)〜(4)の3つ得られ、例えばそれらの平均値を採用することができる。予測値は、誤差比率が小さくなるほど小さくなり、実際に必要な数量に対して不足する可能性が高くなっていく。このため、誤差比率は、平均値より、3つの中の最も大きい値を採用することが望ましい。
図17に示す例では、3つの中で最も大きい値(99.2%)を採用している。
【0066】
図17に示す例では、計算数量に最も大きい誤差比率を乗じて13.1m
3と計算され、その値を実打設数量として用いることができるが、余裕を見るために0.5m
3単位で切り上げ、予測値を13.5m
3としている。ここでは、0.5m
3単位で切り上げているが、これに限られるものではなく、小数点以下を切り上げてもよい。
【0067】
図18は、表示装置47に表示される結果の画面の一例を示した図である。表示装置47に表示される項目としては、躯体図を基に算出される設計時の全体数量(当初計算数量)、連絡待ち数量、算出された残数量、プラントから出発した生コンクリート車21の台数から得られる出荷済数量、荷下ろしした生コンクリート車21の台数から得られる打設済数量、打設済数量と残数量との和として得られる予測最終数量、算出された打設スピードおよび運搬時間等が挙げられる。
【0068】
図18では、時間と数量との関係を示すグラフを表示し、時間は、出荷を開始した時点を0とし、打設開始A、現在の時点B等が示され、また、各時点における数量が示される。数量としては、当初計算数量、連絡待ち数量も示される。現在の時点Bまでに既に出荷された出荷済数量や打設済数量が実線で示される。また、打設済数量に残数量を加算して得られた予測最終数量も実線で示される。
【0069】
実線で示されたこれまでの時間と打設済数量との関係から、現在の打設スピードで連絡待ち数量まで打設したときの終了時間(連絡待ち数量終了時間)Dが決定される。終了時間Dから運搬時間を差し引いた時間が、最遅追加発注時間Cとして算出される。
【0070】
最遅追加発注時間Cは、その時間までに調整数量を発注すれば、運搬時間を考慮して、途切れることなくコンクリートを最後まで打設することが可能となる最終的な時間である。したがって、時間Cを超えると、コンクリートの到着待ち時間が発生することになる。
【0071】
予測最終数量は、生コンクリート車の荷下ろしが終了する毎に計算され、グラフに示される。
図18では、現在の時点Bで、当初計算数量より多くなっており、現在の時点Bでの予測最終数量と連絡待ち数量との差が、現在の時点Bでの追加発注数量となる。
【0072】
予測最終数量は、打設開始Aから現在の時点Bまで一定の割合で当初計算数量より増加しており、その傾向から、最遅追加発注時間Cにおける最終数量を予測することができる。
図18の例では、予測最終数量は、当初計算数量より増加しているが、減少する場合もある。予測した最遅追加発注時間Cでの最終数量と連絡待ち数量との差が、最遅追加発注時間Cでの追加発注数量となる。
【0073】
画面には、各数量を把握しやすくするため、数字で、連絡待ち数量、予測最終数量、追加発注数量、最遅追加発注時間が表示される。予測最終数量および追加発注数量は、最遅追加発注時間Cでの予測最終数量および追加発注数量である。
図18に示す例では、発注済数量が73m
3とされ、予測最終数量が76m
3、追加発注数量が3m
3、最遅追加発注時間Cが15時32分と算出され、表示されている。
【0074】
図19は、コンクリート打設数量計算システムを用いて、コンクリート構造物を構築する作業の流れを示した図である。ステップ100から作業を開始し、ステップ101で作業員が領域27にコンクリートの打設を開始する。作業員は、型枠を組み、ポンプ配管75を打設位置まで引き回し、生コンクリート車21から生コンクリートをポンプにて供給し、各型枠内に所定の高さまでコンクリートを打設する。コンクリートは、4つの隅部を有する矩形領域の1つの隅部から対角線上の隅部へ向けて放射状に打設していくことができる。コンクリートの打設は、生コンクリートを連続して供給し、連続的に打設してもよいし、途中、一時停止しながら打設してもよい。
【0075】
ステップ102では、生コンクリート車21が荷下ろしを終了したか、すなわち生コンクリート車21が運搬してきた生コンクリートを全て打設したかを判断する。打設したかどうかは、運転手が打設終了時に時間の入力があり、PC40がその入力を受け付けたかどうかにより判断することができる。
【0076】
ステップ103では、PC40からカメラ30に撮像を要求し、カメラ30でコンクリートを打設する対象の領域27を撮像する。ステップ104では、撮像した画像を画像データとしてカメラ30からPC40へ送信する。ステップ105では、PC40が、受信した画像に基づき、コンクリートの打設が不要か否かを判断する。すなわち、PC40は、画像データを受信し、画像データの画像を解析し、未打設領域61が存在するか否かにより、コンクリートの打設が必要か否かを判断する。
【0077】
打設済領域60と未打設領域61とは、例えば色や鉄筋の有無等により判別することができる。打設済領域60は、ほぼ均一に灰色で、未打設領域61は、鉄筋が見え、均一な灰色ではないからである。なお、打設済領域60と未打設領域61を判別することができれば、その他の方法を採用してもよい。
【0078】
ステップ105でコンクリートの打設が必要と判断した場合、ステップ106へ進み、画像と躯体図とを使用してコンクリートの残数量を計算する。計算後、ステップ102へ戻り、次の生コンクリート車21の荷下ろしが終了するのを待つ。
【0079】
ステップ105で、コンクリートの打設が不要と判断した場合、未打設領域61がないことから、ステップ107へ進み、生コンクリートの供給を停止し、コンクリート構造物の構築作業を終了する。
【0080】
図16は、
図15のステップ106のコンクリートの残数量を計算する処理の詳細な流れを示した図である。ステップ200から処理を開始し、ステップ201では、画像の歪み補正を行い、ステップ202で、補正後の画像から、コンクリートの打設済領域60と未打設領域61との境界を抽出する。ステップ203では、抽出された境界の情報を補正し、ステップ204では、躯体図と境界の情報とを照合し、未打設領域61の各部位の画素数を調べ、各部位の厚さの情報を取得する。
【0081】
ステップ205では、照合結果としての上記の取得した情報に基づき、未打設領域61の面積を、部位の厚さ毎に算出する。そして、ステップ206で、厚さ毎に算出された面積に各厚さを乗算し、得られた各値を加算して、コンクリートの残数量を算出する。そして、ステップ207へ進み、残数量の計算処理を終了する。
【0082】
本実施形態のシステムや方法は、コンクリートの打設中、瞬時に残数量を算出することができるため、実際の打設済数量を決定する時、例えば荷下ろしが終了したときとの時間的な差が生じることはなく、数量誤差が発生しない。また、PC40で計算するため、人的なミスは発生せず、コンクリートの余剰や不足も発生することがなくなる。
【0083】
また、誤差の傾向をつかみ、その傾向に基づき、最終終了を決定できるため、安全を見て余分に発注する必要がなくなる。
【0084】
さらに、瞬時に残りの打設数量を算出することができるため、打設スピードが速くても対応可能となり、ストレスなく、2台以上の生コンクリート車から同時に荷下ろし打設することができる。
【0085】
これまで本発明のシステムおよび方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。