特許第6797533号(P6797533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797533
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】LED電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/54 20200101AFI20201130BHJP
   H05B 45/3725 20200101ALI20201130BHJP
   H05B 45/30 20200101ALI20201130BHJP
   H05B 47/25 20200101ALI20201130BHJP
【FI】
   H05B45/54
   H05B45/3725
   H05B45/30
   H05B47/25
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-30756(P2016-30756)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-152080(P2017-152080A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】515037818
【氏名又は名称】パワーサプライテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 文明
(72)【発明者】
【氏名】石田 一露
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−190590(JP,A)
【文献】 特開2013−149593(JP,A)
【文献】 特開2010−129612(JP,A)
【文献】 特開2014−032881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00、47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電力によって充電される出力コンデンサを備え、この出力コンデンサに対して並列に接続されるLED負荷に負荷電流を供給するLED電源装置であって、
前記LED負荷に直列接続されて該LED負荷に流れる負荷電流を抑制する電流抑制回路と、
前記電流抑制回路をバイパスするバイパス経路に設けられたスイッチング素子と、
前記負荷電流の有無を検出する電流検出回路と、
前記バイパス経路上で前記スイッチング素子に対して直列に接続されて前記電流検出回路の検出動作を継続させる電流継続素子と、
前記電流検出回路の出力により前記スイッチング素子をオーバーシュート抑制回路を介してオン、オフさせるドライバと、
前記LED負荷を取り付ける端子間の電圧が所定電圧以下に低下したことを検出した場合に、前記スイッチング素子を強制的にオフ状態とする短絡検出回路と、を有し、
前記オーバーシュート抑制回路は、前記バイパス経路を流れる電流を漸増させるように前記スイッチング素子の制御信号を漸増させる機能を備え、
前記電流検出回路により前記負荷電流がないことを検出した場合に、前記スイッチング素子をオフ状態に維持
前記LED負荷が接続されて前記電流検出回路により前記負荷電流が流れ始めたことを検出した場合に、前記負荷電流を前記電流抑制回路に流した後に、前記機能が動作し、前記スイッチング素子をON状態として前記電流抑制回路の両端を前記スイッチング素子及び前記電流継続素子を介して短絡させる
ことを特徴とするLED電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用施設等に設置されたLED照明などのLED負荷に対して用いられるLED電源装置に関し、電源を切ることなくLED負荷を交換する場合や短絡故障時の負荷電流を抑制することが可能なLED電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ショッピングモール等の商用施設等においては、省電力化の要請やメンテナンス費用の削減のために、LEDを光源に使用したLED照明が積極的に導入されている。このようなLED照明は、例えば、図7(a)に示されるように、商用電源100に対して並列に接続された複数のLED電源装置101を用い、それぞれのLED電源装置101にLED照明110(COB LEDのような複数個のLEDを直列または並列または直並列に接続したLEDモジュール)を接続して、複数のLED照明110を同時に点灯するようにしている。
【0003】
それぞれのLED電源装置101は、例えば、図7(b)に示されるように、商用交流電源(例えば、AC100V)100に接続し、この商用電源からのノイズ(高調波電流)の流入や電源装置内部からのノイズ(高調波電流)の流出を防止するノイズフィルタ(ラインフィルタ)102と、このノイズフィルタ102の出力を整流して直流に変換する整流回路103と、整流回路103の出力電圧を昇圧すると共に入力電流波形が入力電圧波形と同位相となるように力率を改善するPFC回路(力率改善回路)104と、PFC回路104からの出力電圧をLED照明に必要な制御電圧に変換するDC/DCコンバータ105と、を有し、このDC/DCコンバータ105の二次側に二次電圧が印加される出力コンデンサ3を設け、この出力コンデンサ3に対して並列にLED照明110を接続し、出力コンデンサ3を介して一定電流をLED照明110に供給するようにしている。
【0004】
このような構成においては、各LED電源装置101の出力端間の無負荷電圧Voは、LED1個当たりの順電圧のバラつきや、直列に接続するLEDの個数の変更を見越して、LEDの最大直列個数で必要となる電圧よりも高めに設定してある。
このため、LED照明110の内部で断線が生じると、LED電源装置101の出力端子は開放状態となり、出力端子間の電圧は、無負荷電圧Voとなり、LED照明が正常である場合にクランプされていた出力端子間の電圧(以下、クランプ電圧Vcという)よりも高くなる。
【0005】
したがって、電源を切ることなくLED照明110を交換するために、そのLED照明110をLED電源装置101から一旦取り外し、その後、取り付けたいLED照明110をLED電源装置101に接続すると、LED照明110にかかる電圧Vfは、図8(b)に示すようになり、LED電源装置101の開放時の出力電圧VoとLED照明110を取り付けた際のクランプ電圧Vcとの電位差により、一時的に大きな突入電流(インラッシュ電流)がLED照明110に流れ、LED照明110を破損させる恐れがある。
【0006】
このような突入電流によるLED照明110の破損を避けるためには、電源スイッチを 切って電力供給を停止し、LED照明110を交換した後に電源スイッチを投入すれば、 LED照明に流れる電流Ifの変化は、図8(a)で示す通常の電源投入時の電流変化と なり、LED照明110に大きな負荷をかけることはなくなるが、電力供給の停止は、同じ電源ラインに接続されている他の電源装置をも停止させることになるので、広範囲でL ED照明が消灯し、商用施設等においては現実的なやり方ではない。
【0007】
そこで、従来においては、電源を切ることなくLED負荷の開放状態からLED負荷がいきなりLED電源装置に接続された場合でも、許容される最大電流以上の負荷電流が流れないように負荷電流を制限してLED負荷を保護するLED電源装置が提案されている(特許文献1参照)。
これは、電源電力によって充電された出力コンデンサに対してLED負荷を並列に接続する電源装置において、LED負荷に直列接続された電流制限抵抗と、この電流制限抵抗の両端を結ぶスイッチング素子と、LED負荷に流れる負荷電流値を検出する負荷電流検出用の抵抗と、電源装置からLED負荷が取り外された状態でスイッチング素子をオフ状態に維持し、LED負荷の接続直後に負荷電流を電流制限抵抗に流し、負荷電流が基準値まで減衰した後にスイッチング素子をオン状態にして電流制限抵抗の両端を短絡させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−190590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、LED照明の接続時に生じる突入電流を効果的に抑えるために、LED負荷に対して直列接続される電流制限抵抗は大きな抵抗値に設定されているので、負荷電流が電流制限抵抗に流れている途中でスイッチング素子をオン状態にすると、電流制限抵抗の端子間で生じていた電位差が急激に小さくなり(スイッチング素子の抵抗を考えなければ電位差がなくなり)、この電圧変化によりLED照明に瞬間的な突出電流が流れ、フリッカーを引き起こす不都合がある。
【0010】
また、スイッチング素子がオン状態になった後は、LED照明を接続する電源端子間が再び開放状態になるまではスイッチング素子のオン状態が維持されるので、LED照明が短絡故障を起こした場合には、スイッチング素子や負荷電流を検出するために設けられた電流検出用の抵抗に過大な電流が流れ、スイッチング素子にダメージを与えたり、抵抗を発熱させて出火させたりする恐れが懸念される。
【0011】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、電源が投入されている時にLED負荷を電源装置に接続した際の突入電流を抑えつつ、フリッカーの発生をも抑えることが可能なLED電源装置を提供することを主たる課題としている。また、このような機能を備えた上でLED照明の短絡故障において、電源装置の各素子の破損を防ぐと共に出火する恐れを無くすことが可能なLED電源装置を提供することをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するために、本発明に係るLED電源装置は、電源電力によって充電される出力コンデンサを備え、この出力コンデンサに対して並列に接続されるLED負荷に負荷電流を供給するLED電源装置であって、
前記LED負荷に直列接続されて該LED負荷に流れる負荷電流を抑制する電流抑制回路と、
前記電流抑制回路をバイパスするバイパス経路に設けられたスイッチング素子と、
前記負荷電流の有無を検出する電流検出回路と、
前記バイパス経路上で前記スイッチング素子に対して直列に接続されて前記電流検出回路の検出動作を継続させる電流継続素子と、
前記電流検出回路の出力により前記スイッチング素子をオーバーシュート抑制回路を介してオン、オフさせるドライバと、
前記LED負荷を取り付ける端子間の電圧が所定電圧以下に低下したことを検出した場合に、前記スイッチング素子を強制的にオフ状態とする短絡検出回路と、を有し、
前記オーバーシュート抑制回路は、前記バイパス経路を流れる電流を漸増させるように前記スイッチング素子の制御信号を漸増させる機能を備え、
前記電流検出回路により前記負荷電流がないことを検出した場合に、前記スイッチング素子をオフ状態に維持し、
前記LED負荷が接続されて前記電流検出回路により前記負荷電流が流れ始めたことを検出した場合に、前記負荷電流を前記電流抑制回路に流した後に、前記機能が動作し、前記スイッチング素子をON状態として前記電流抑制回路の両端を前記スイッチング素子及び前記電流継続素子を介して短絡させることを特徴としている。
【0013】
したがって、LED負荷が内部で断線した場合やLED負荷を電源装置から取外した場合には、負荷電流が流れないので、電流検出回路により負荷電流がないことが検出され、スイッチング素子はオフ状態に維持される。
この状態においては、電源装置は開放状態となり、出力端子間の電圧は、正常なLED負荷がクランプされていた時の出力端子間の電圧よりも高くなる(無負荷電圧Voとなる)。
【0014】
その後、LED照明を電源装置に接続すると、電源装置の開放時の出力電圧VoとLED負荷を取り付けた際のクランプ電圧Vfとの電位差により、一時的に大きな突入電流(インラッシュ電流)がLED負荷に流れようとするが、LED負荷を取り付けた直後は、スイッチング素子がオフ状態であるので、負荷電流はLED負荷に直列に接続された電流抑制回路を流れ、突入電流が抑制される。
【0015】
そして、負荷電流が電流抑制回路を流れた後に、スイッチング素子はオン状態へ移行するので、負荷電流はスイッチング素子を介してバイパス経路を流れ、電流抑制回路を短絡させる。
この際、電流抑制回路が短絡することで電圧変動が生じ得るが、電流検出回路によりLED負荷が接続されて負荷電流が流れ始めたことを検出した場合に、オーバーシュート抑制回路により、スイッチング素子を介してバイパス経路に流れる電流を漸増させるので、負荷電流が電流抑制回路を流れている状態からスイッチング素子を流れる状態に切り替えられた場合でも、負荷電流は、大きく突出することはなくなり、フリッカーを抑えることができる程度に小さく抑えることが可能となる。
【0016】
なお、本発明は、バイパス経路に、電流検出回路の検出動作を継続させる電流継続素子、すなわち、スイッチング素子のオン状態を維持させる抵抗素子を設けたことをも特徴としている。
スイッチグ素子は、電流抑制回路を短絡させるものであるので、スイッチング素子自体の抵抗は非常に小さい。そこで、負荷電流の検出を持続させてスイッチング素子のオン状態を継続させるためには、負荷電流がスイッチング素子を流れている場合でも的確に電流が流れていることを把握する必要がある。このため、電流検出に必要な最小限度の抵抗値を備えた電流継続素子(例えば、抵抗素子)をバイパス経路にスイッチング素子と直列に設けるようにしている。
【0017】
また、前記オーバーシュート抑制回路は、スイッチング素子としてFETが用いられる場合には、FETのゲート端子に接続された時定数回路で構成するとよい。
【0018】
ところで、負荷電流がないことを検出した場合に、スイッチング素子をオフ状態に維持し、LED負荷が接続された場合にスイッチング素子をオン状態にして電流抑制回路を短絡させ、以後、スイッチング素子のオン状態を維持する構成においては、LED負荷が短絡すると、過大な短絡電流がスイッチング素子を介して流れ、スイッチング素子に過大な負荷を与え、また、短絡電流が流れるライン上に電流検出用の抵抗が設けられていると、その抵抗が発熱し、最悪の場合には出火する不都合が懸念される。
【0019】
そこで、本発明においては、LED負荷を取り付ける端子間の電圧を検出する出力電圧検出回路と、出力電圧検出回路でLED負荷を取り付ける端子間の電圧が所定電圧以下に低下したことを検出した場合に、スイッチング素子を強制的にオフ状態にする短絡検出回路をさらに設けるようにしてもよい。
【0020】
このような構成によれば、出力電圧検出回路でLED負荷が短絡した際の出力電圧の低下が検出されると、スイッチング素子を強制的にオフ状態にするので、電流抑制回路の短絡状態が解除され、負荷電流は電流抑制回路を流れることになり、短絡電流を小さく抑えることが可能となる。
この際、電流抑制回路をポジスタで構成することが好ましく、このような構成とすることで、過大な電流がポジスタに流れて発熱するとポジスタの抵抗値は増大するので、短絡電流を一層小さく抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明によれば、電源が投入されている状態でLED負荷が取り付けられる場合において、負荷電流を電流抑制回路に流すことで突入電流を小さくすることができ、また、オーバーシュート抑制回路を設けることで、負荷電流が電流抑制回路を流れた後にスイッチング素子を介してバイパス経路を流れる状態に切り替えられる場合でも、スイッチング素子を介して流れる電流は、負荷電流が流れ始めると漸増するので、スイッチング素子による電流経路の切り替え時に、負荷電流が瞬間的に大きく突出することはなくなり、フリッカーの発生を抑えることが可能となる。
【0022】
また、短絡検出回路を設けているので、出力端子間で短絡が発生した場合には、電流抑制回路の短絡状態が解除されて負荷電流は電流抑制回路を強制的に流れ、短絡電流を小さく抑えることが可能となる。
この際、電流抑制回路をポジスタで構成することで、電流抑制回路に過大な電流が流れて発熱すると抵抗値が増大するので、短絡電流を一層小さく抑えることができ、電源装置の各部品の発熱を抑えると共に、電源装置の出火の恐れを無くすことが可能となる。
さらに、バイパス経路に、電流検出回路の検出動作を継続させる電流継続素子をスイッチング素子に対して直列に設けたので、負荷電流がスイッチング素子を流れている場合でも的確に電流が流れていることを把握することができ、負荷電流の検出を持続させてスイッチング素子のオン状態を継続させることが可能となる。しかも、出力端子間で短絡が発生した場合には、電流抑制回路の短絡状態が解除されて負荷電流(短絡電流)を電流抑制回路に強制的に流すので、バイパス経路に設けられる電流継続素子に短絡電流が流れて出火させる不都合やスイッチング素子に過大な負荷を与える不都合がなくなり、耐久性や安全面において優れたLED電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るLED電源装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明に係るLED電源装置の構成例を示す回路図である。
図3図3(a)は、本発明に係るLED電源装置における通常の電源投入時の動作を説明する回路図であり、図3(b)は、電源投入時のLED照明にかかる順方向電圧VfとLED照明を流れる電流Ifの変化を示す線図である。
図4図4は、本発明に係るLED電源装置からLED照明を取り外した場合の動作を説明する回路図である。
図5図5(a)は、本発明に係るLED電源装置に電源が投入されている状態でLED照明を取り付けた場合の動作を説明する回路図であり、図5(b)は、LED照明を取り付けた場合のLED照明にかかる順方向電圧VfとLED照明を流れる電流Ifの変化を示す線図である。
図6図6は、本発明に係るLED電源装置の出力端子間で短絡が生じた場合の動作を説明する回路図である。
図7図7(a)は、LED電源装置とLED照明との一般的な接続構成例を説明する図であり、図7(b)は、従来のLED電源装置の一例を示す概略構成図である。
図8図8(a)は、従来のLED電源装置における電源投入時のLED照明にかかる順方向電圧VfとLED照明を流れる電流Ifの変化を示す線図であり、図8(b)は、従来のLED電源装置に電源が投入されている状態でLED照明を取り付けた場合のLED照明にかかる順方向電圧VfとLED照明を流れる電流Ifの変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るLED電源装置の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は本発明の実施形態に係るLED電源装置のDC/DC変換回路より二次側の回路構成例を示すブロック図である。
【0026】
図1において、絶縁型フライバックコンバータからなるDC/DCコンバータのトランス1は、ダイオード2を介して二次側の直流電圧が出力コンデンサ3に印加するように構成されている。
この出力コンデンサ3に対して、COB LEDのような複数個のLEDを直列または並列または直並列に接続したLEDモジュールからなるLED照明110が並列に接続されており、出力コンデンサ3を介して一定電流(例えば、0.5A)が流れるようになっている。
【0027】
出力コンデンサ3とLED照明110との間には、LED照明に流れる電流の変動を抑制する制御回路106が設けられ、この制御回路106は、LED照明110が接続される端子間を流れる電流の有無を検出する電流検出回路10と、この電流検出回路10での検出結果に応じて駆動信号(例えばDC10Vと0Vの切替)を生成するドライバ20とを備える。したがって、電流検出回路10により、電源が投入されたか否か、電源投入時においてLED照明110が取り外され、又は、LED照明110の内部が断線して端子間が開放状態になったか否か、電源投入時において端子間の開放状態からLED照明110が取り付けられたか否か等が検出される。
【0028】
また、制御回路106には、LED照明110に流れる突入電流を抑制する突入電流抑制回路30がLED照明110に対して直列に接続され、この突入電流抑制回路30の両端を結ぶバイパス経路5に、前記ドライバ20からの駆動信号に応じてこのバイパス経路5を導通させて突入電流抑制回路30を短絡させるスイッチング素子40と、このスイッチング素子40に対して直列に接続されて前記電流検出回路10の検出動作を継続させる電流継続素子50とが設けられている。
【0029】
さらに、制御回路106には、トランス1の二次側の出力電圧(LED照明110を接続する端子間の電圧に相当)を検出する出力電圧検出回路60と、出力電圧の有無や電源投入の有無に応じて、スイッチング素子40へのドライバ20からの駆動信号の導入タイミングを制御するオーバーシュート抑制回路70と、電源投入時においてLED照明110が短絡故障したことを検出してスイッチング素子40を制御する短絡検出回路80とを備えている。
【0030】
図2において、図1の制御回路106の各回路ブロックの内部構成を、簡略化して示した回路構成例が示されている。
【0031】
突入電流抑制回路30は、LED照明と直列に接続された抵抗素子R1で構成してもよく、特にこの例では、ポジスタが用いられている。
【0032】
スイッチング素子40は、抵抗素子R1に対して並列に接続されたMOS型のFET:Q1で構成してもよく、また、電流継続素子50は、抵抗素子R2によって構成してもよい。Q1とR2は、R1の両端を結ぶバイパス経路5に直列に設けられ、Q1のゲート端子は、後述するドライバ20にオーバーシュート抑制回路70を介して接続され、Q1のドレインは、LED照明110とR1との間に接続され、Q1のソースは、R2に接続されている。
【0033】
R1の抵抗値は、LED電源装置101がオン状態で、無負荷の開放状態からLED照明110を接続した負荷接続状態に移行した場合の突入電流を、LED照明110に流れる負荷電流の許容最大電流以下となるように設定され、この例では、突入電流のピーク値が駆動電流(0.5A)に対して大幅に大きくならないように、33Ωに設定してある。
【0034】
電流検出回路10は、基準電圧を−入力端子に印加し、LED照明110と突入電流抑制回路(抵抗素子R1)30との間の電圧(ノード電圧Vn1)を+入力端子に入力してこれらの電圧差を増幅するオペアンプ(AMP)によって構成してもよい。
このオペアンプにより、LED照明が接続端子間に接続されている状態で電源がON/OFFされたことを、また、電源が投入されている状態で、LED照明が取り外されたことや、LED照明が取り付けられたことなどが検出される。
【0035】
したがって、電流の有無を的確に検出するためには、Q1がON状態となってR1を短絡させた場合においても、ノード電圧Vn1がオペアンプ(AMP)を作動させる程度に高められる必要がある。R2は、突入電流抑制回路30を短絡させる上では本来であれば無い方が好ましいが、R2を設けない場合には、Q1がON状態になると、バイパス経路5上の抵抗がほとんどなくなるので電流の有無を検出することが困難となる。そこで、Q1がON状態である場合でもバイパス経路5を流れる電流の有無(負荷電流の有無)を検出することができるようにR2を設け、このR2の抵抗値を、突入電流抑制回路30の短絡状態を阻害しないように、電流検出回路10を適切に作動させて後述するドライバ20によるQ1のON状態(R1をバイパスして電流が流れる状態)を継続させることができる最小限の大きさ(例えば、1Ω)に設定するようにしている。
【0036】
ドライバ20は、電流検出回路10の出力側に接続され、バイポーラ型のNPN型(P型)のトランジスタQ2とPNP型(N型)のトランジスタQ3とを含む。ドライバ20の出力端子は、オーバーシュート抑制回路70の時定数回路を構成する抵抗R3を介してQ1のゲート端子に接続されている。したがって、電流検出回路10で電流が流れていることを検出した場合には(AMPからの出力電圧がトランジスタを作動させる程度に大きくなった場合には)、Q2をONさせてスイッチング素子40(FET:Q1)をON状態にし、また、電流が流れていないことを検出した場合には、Q3をONさせてスイッチング素子40(FET:Q1)をOFF状態にする。
【0037】
出力電圧検出回路60は、LED照明110の接続端子間において、電圧検出抵抗R4,R5とこれに直列接続されたツェナーダイード:ZDとをLED照明110に対して並列に接続し、また、トランス1の出力端子間において、正側直流電源ラインからPNP型トランジスタQ4、抵抗R6、及びコンデンサC1を直列に接続した直列回路を出力コンデンサ3に対して並列に接続して構成してもよい。ツェナーダイードZDのアノードは負側直流電源ライン(Vn1)に接続され、抵抗R4,R5は正側直流電源ラインとツェナーダイードZDのカソードとの間に接続されている。また、抵抗R4と抵抗R5の間はトランジスタQ4のベースに接続され、Q4のエミッタを正側直流電源ラインに接続し、Q4のコレクタを抵抗R6に接続している。したがって、R4は、Q4のベース・エミッタ間の抵抗であり、R5は、ZDの電流制限抵抗である。ここで、ZDの降伏電圧は、LED照明の内部が短絡して出力電圧が非常に低くなったことを検出できる程度の適当な電圧(例えば、30V)に設定してある。
【0038】
よって、LED照明110が接続されていて電源が投入された場合や、電源が投入されている状態でLED照明110が取り外された場合やLED照明が再接続された場合には、ZDはON状態(電流が流れる状態)となり、Q4はオン状態となり、R6とC1との間のノード電圧は徐々に高められる。また、LED照明110が故障して出力端子間が短絡した場合には、ツェナーダイードZDはOFF状態(電流が流れない状態)となり、Q4はオフ状態となる。
【0039】

オーバーシュート抑制回路70は、コンパレータCMP1とコンデンサC2及び抵抗R3とから構成するようにしてもよい。
コンパレータCMP1は、出力端子がコンデンサC2を介してスイッチング素子40を構成するFET:Q1のゲート端子に接続され、+入力端子が基準電位に固定され、−入力端子が出力電圧検出回路60の抵抗R6とコンデンサC1との間に接続されている。R3は、ドライバ20の出力端子とQ1のゲート端子との間に接続され、コンデンサC2は、R3とQ1のゲート端子との間に接続されている。
【0040】
したがって、R3とC2とによってドライバからQ1へ入力される駆動信号の入力タイミングを調整する時定数回路が構成され、CMP1の出力がONの場合には、Q1のゲート端子がC2を介してGNDに接続されると共に、ドライバ20の出力端子がR3及びC2を介してGNDに接続され、ドライバの出力がONになると、Q1のゲート電圧はR3とC2とによって決まる時定数で徐々に高くなる。また、CMP1の出力がOFFの場合には、ドライバ20の出力はR3を介してQ1のゲート端子に供給され、C2が放電されない状態にあるため、ドライバ20からの駆動信号は、オーバーシュート抑制回路70で漸増することなく速やかにQ1のゲート端子に供給される。
【0041】
短絡検出回路80は、コンパレータCMP2とトランジスタQ5とにより構成してもよい。
CMP2は、+入力端子が基準電位に固定され、−入力端子が出力電圧検出回路60のR6とC1との間に接続されている。また、CMP2の出力端子はQ5のベース端子に接続されている。トランジスタQ5は、NPN型であり、コレクタ端子がQ1のゲート端子に接続され、エミッタ端子がGNDに接続されている。
【0042】
したがって、CMP2の出力がONの場合には、Q1のゲート端子がGNDに接続され、Q1のドレイン−ソース間が即座に遮断されることになる。また、CMP2の出力がOFFの場合には、ドライバ20からの出力状態、及び、オーバーシュート抑制回路70の状態に応じてQ1の動作状態が制御される。
【0043】
以上の構成において、次に、各状態(電源の通常投入時、LED照明の取り外し時、LED照明の取り付け時、出力短絡時)での制御回路106の動作を説明する。
【0044】
<電源の通常投入時>
図3において、電源装置にLED照明が接続されている通常の状態において、電源を投入した時の動作が示されている。
電源が投入されると、投入直後にR1に負荷電流が流れ、電流検出回路10のAMPで電流が流れたことを検出し、ドライバ20の出力をONにしてQ1をONさせる。
この際、電源の出力電圧Vfは、LED照明110が接続されているので、この接続されているLED照明によって決定されるクランプ電圧(例えば、Max80V)となる。出力電圧検出回路60において、ZDは、降伏電圧が30Vに設定されているので、電源のVoが出たことを検出してON状態となり、Q4をONにするが、R6とC1とで決まる時定数の遅れにより、電源起動時には、C2は、CMP1を介してすぐにはGNDに接続されない(オーバーシュート抑制回路70はすぐには機能しない)。
【0045】
したがって、通常の電源投入時には、オーバーシュート抑制回路70をすぐには機能させないので、LED照明110を流れる電流Ifができるだけ小さい段階で(R1の両端に発生する電圧が小さい段階で)Q1がONし、R1を短絡させることで、図3(b)に示されるように、オーバーシュートを発生させることなく速やかにLED照明の点灯を安定させることができる。
その後、CMP1の−入力端子の電位が高くなれば、C2は、Q1のゲート端子とGNDとの間に接続される。
【0046】
<電源が投入されている状態でLED照明を取り外した時>
図4において、電源が投入されている状態で、LED照明110を交換するために外した(又は、LED照明110が故障して接続端子間が開放状態となった)場合の動作が示されている。
電源が投入されている状態でLED照明110を外すと(又は、LED照明110が故障して接続端子間が開放状態になると)、R1を流れる電流が無くなり、電流検出回路10のAMPにより電流が無くなったことが検出され(AMPの出力が小さくなり)、ドライバ20の出力をOFFにしてQ1をOFFにし、R1の短絡状態が解除される。
【0047】
電源の電圧Vo+は、LEDがないため、出力コンデンサ3によって決まるLED照明の接続時よりも高い出力電圧(無負荷電圧:例えば100V)で固定される。
出力電圧検出回路60は、この出力電圧Vo+が出ていることを検出しているので、ZDはON状態になっており、Q4はON状態に維持されて、オーバーシュート抑制回路70を有効にするため、C2は、Q1のゲートとGNDとの間に接続された状態となる。
【0048】
<電源が投入されている状態でLED照明を取り付けた時>
図5において、電源が投入されている状態で、正常なLED照明110がLED電源装置に取り付けられた場合の動作が示されている。
LED照明110を接続する接続端子間が開放されている状態から接続端子間にLED照明110を接続すると、接続直後には、出力開放時での出力電圧(100V)とLED照明を接続した場合のクランプ電圧(例えば、60V)との電位差により突入電流がR1に流れる。この際、R1は大きな抵抗値に設定されているので、LED照明110に流れる突入電流を小さく抑えることが可能となる。
【0049】
突入電流が抑えられた後に、電源装置は、定電流制御を行うので、R1を流れる電流(例えば、0.5A)によりR1の両端には、(R1×0.5)Vの電位差が生じ、電流がR1に流れ続けると、0.5×R1の電力消費となる。このため、突入電流が終息したタイミングで、LED照明110を流れる電流をR1をバイパスして流す方が好ましい(R1を短絡させることが好ましい)が、Q1を瞬時に動作させてR1を短絡させると、電圧Vfが急激に変化するので(R1−R2)*Ifに相当する電圧の変動があるので)、この時点でLED照明110に流れる電流Ifがオーバーシュートする恐れがある。
【0050】
しかし、LED電源装置は、LED照明110が取り外されていた間に、C2がQ1のゲート端子とGNDとの間に接続され、オーバーシュート抑制回路70が機能する状態となっているので、LED照明110を取り付けて、R1に電流が流れると、この電流が電流検出回路10のAMPで検知されてドライバ20から駆動信号が出力され、R3とC2で決定される時定数の遅れをもってQ1のゲート電圧が徐々に高められ、それに伴いQ1を流れる電流も徐々に高められることになる。このため、突入電流が抑えられた後にR1を短絡させる場合でも(電流IfがR1を流れる状態からR2に流れる状態へ移行する場合でも)、図5(b)に示されるように、電流Ifのオーバーシュートの発生を抑制された突入電流と同程度以下に低減することが可能となる。
その後、電源を切るか、LED照明が取り外されるまでは、Q1のON状態が維持される。
【0051】
<出力短絡時>
図6において、電源が投入されている状態で、出力端子間が短絡した場合の動作が示されている。
電源が投入されてLED照明110が断線せずについている状態においては、Q1のON状態が維持されているため、LED照明の内部が短絡して出力端子間が短絡すると、短絡電流がQ1や抵抗値の小さいR2に流れ、Q1にダメージを与えたりR2が発熱して出火したりすることが懸念される。
【0052】
しかしながら、出力端子間が短絡すると、出力電圧は急激に低下するので、出力電圧検出回路60のZDがOFFしてQ4がOFFとなり、これに伴い短絡検出回路80のQ5がONして、Q1がOFFとなる。
【0053】
したがって、短絡時には、Q1が強制的にOFF状態となるので、LED照明110を介して流れる短絡電流は、抵抗値の大きいR1のみに流れるので、抵抗値の小さいR2に短絡電流が流れて出火させる不都合やQ1を発熱させる不都合がなくなる。また、R1はポジスタで構成されているので、R1に流れる電流によりR1が発熱すると、R1の抵抗値が増大するので、R1を流れる短絡電流を一層小さく抑えることが可能となり、電源や配線などを保護することが可能となる。
【0054】
よって、上述した電源装置によれば、LED照明を取り替えた際の突入電流を抑えることができ、また、突入電流を抑えた後は、LED照明を流れる電流が突入電流抑制回路を流れないようにして(突入電流抑制回路を短絡させ)、突入電流抑制回路での無駄な電力消費を抑えると共に、突入電流抑制回路を短絡させる際に生じる電流のオーバーシュートを低減してLED照明のフリッカーの発生を抑えることが可能となる。
【0055】
また、出力短絡時には、Q1を直ちにOFFすることで、Q1に過大な負荷を与えることやR2に過大な電流が流れて出火することを抑え、また、短絡電流をポジスタであるR1に流すことで、R1に流れる短絡電流を小さくすることが可能となり、耐久性や安全面において優れたLED電源装置を提供することが可能となる。
【0056】
なお、上述ではLED負荷としてLED照明110を用いた場合の例を示したが、他のLED負荷を取り付ける電源装置に対して、同様の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
3 出力コンデンサ
5 バイパス経路
10 電流検出回路
30 突入電流抑制回路
40 スイッチング素子
50 電流継続素子
60 出力電圧検出回路
70 オーバーシュート抑制回路
80 短絡検出回路
101 LED電源装置
110 LED照明
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8