(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による建具の一例として縦辷り出し窓について添付図面により説明する。
図1及び
図2に示す実施形態による縦辷り出し窓1は例えばアルミ合金等の金属部材と樹脂部材の複合建具からなっている。この縦辷り出し窓1は、躯体の開口部にそれぞれアルミ合金及び樹脂からなる上枠3と下枠4と左右の縦枠5、6とが四角形枠状に形成された枠体7を取り付けている。
枠体7内に開閉可能に納めた障子9は、それぞれアルミ合金と樹脂からなる上框10及び下框11と左右の縦框12,13とが略四角形枠状に形成された框体14を有している。框体14の内部にはパネルとして例えば二層ガラス等の複層ガラスからなるガラスパネル15を納めている。障子9の吊元は枠体7の見付け方向の一端部である縦枠6近傍に設けられ、その軸線は上下方向に延びて上枠3と下枠4に支持されている。
【0015】
図1に示す縦辷り出し窓1の縦断面図において、枠体7の上枠3は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属上枠3aと屋内側に設けた樹脂上枠3bとが互いに係合されている。下枠4は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属下枠4aと屋内側に設けた樹脂下枠4bとが互いに係合されている。
また、
図2に示す横断面図において、吊先側(
図2において左側)に設けた縦枠5は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属縦枠5aと屋内側に設けた樹脂縦枠5bとが互いに係合されている。吊元側(
図2において右側)に設けた縦枠6は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属縦枠6aと屋内側に設けた樹脂縦枠6bとが互いに係合されている。
【0016】
枠体7に納められた障子9の框体14はそれぞれ屋外側に設けたアルミ合金からなる金属上框17と金属下框18と左右の金属縦框19,20とで四角形枠状に形成されている。
図1に示す金属上框17と金属下框18にはガラスパネル15の上端部と下端部を嵌合するための断面略L字状のパネル嵌合溝17a、18aが形成され、それぞれゴム等のシール材からなるパッキン22によってガラスパネル15の上端部と下端部の両面を保持している。
金属上框17と金属下框18に形成したパネル嵌合溝17a、18aの屋内側にはパッキン22を介してガラスパネル15の屋内側の側面を押圧保持するための上部押縁24、下部押縁25がそれぞれ取り付けられている。なお、金属下框18のパネル嵌合溝18aの下部には中空のホロー部18bが形成されている。
【0017】
上部押縁24は係合部a,bで互いに係合する金属押縁片24aと樹脂押縁片24bとが一体化されている。金属押縁片24aはパッキン22を介してガラスパネル15を押圧し、パネル嵌合溝17aと共に断面略コの字状を形成してガラスパネル15を保持する。しかも金属押縁片24aは係合部c、dで金属上框17に係合されている。係合部a,b,c,dはいずれか一方が爪部で他方が爪部と係合する係合受け部をそれぞれ構成する。
同様に下部押縁25も金属押縁片25aと樹脂押縁片25bが係合部a、bで互いに係合して一体化され、金属押縁片25aは係合部c,dで金属下框18と係合されている。また、パネル嵌合溝18aと金属押縁片25aのパネル側側壁25aaとで断面略コの字状とされてガラスパネル15を保持する。
そのため、上框10は金属上框17と上部押縁24で構成され、下框11は金属下框18と下部押縁25で構成されている。
【0018】
また、金属上枠3aの屋内側端部には略L字状に屈曲して屋外側を向く部分に形成された受け部に気密性を確保するシール部材26aが取り付けられている。同様に、金属下枠4aの屋内側端部は略L字状に屈曲して屋外側を向く部分に形成された受け部にシール部材26bが取り付けられている。閉鎖状態にある障子9の金属上框17と金属下框18の屋内側端部がシール部材26a、26bに当接して気密にシールする。
【0019】
図2において、左側の金属縦框19にはガラスパネル15の左側端部を受けるための断面略コの字状のパネル嵌合溝19aが形成され、ゴム等のシール材からなるパッキン22を介してガラスパネル15の左側端部の両面を保持している。
右側の金属縦框20にはガラスパネル15の右側端部を嵌合するための断面略L字状のパネル嵌合溝20aが形成され、ゴム等のシール材からなるパッキン22によってガラスパネル15の右側端部の両面を保持している。
そして、右側の金属縦框20に形成した断面略L字状のパネル嵌合溝20aの屋内側にはパッキン22を介してガラスパネル15を押圧保持するための縦部押縁28が取り付けられている。
【0020】
この縦部押縁28も金属押縁片28aと樹脂押縁片28bが係合部a,bで互いに係合して一体化され、係合部c,dで金属押縁片28aと金属縦框20が係合されている。金属押縁片28aとパネル嵌合溝20aとで断面略コの字状とされてガラスパネル15を保持する。そのため、右側の縦框13は金属縦框20と縦部押縁28で構成されている。
また、金属縦枠6aの屋内側端部には略L字状に屈曲する屋外側を向く部分に形成された受け部にシール部材26cが取り付けられている。閉鎖状態にある障子9の金属縦框20の屋内側端部がシール部材26cに当接して気密にシールする。
【0021】
図2で、左側の金属縦框19に形成した断面略コの字状のパネル嵌合溝19aの屋内側にはホロー部を有する金属縦框19が平面視略L字状に屈曲して延びてハンドル受け部19bが形成されている。このハンドル受け部19bの見込み面19baにはグレモン錠のハンドル30が取り付けられている。ハンドル受け部19bには見込み面19baを除いて屋内側見付け面を覆う樹脂縦框27が係合されている。そのため、左側の縦框12は金属縦框19と樹脂縦框27で構成されている。
また、吊先側の金属縦枠5aの屋内側端部には略L字状に屈曲して屋外側を向く部分に形成された受け部に気密性を確保するシール部材26dが取り付けられている。閉鎖状態にある障子9の金属縦框19の屋内側端部がシール部材26dに当接して気密にシールする。
【0022】
本実施形態による縦辷り出し窓1では、障子9の吊先側の縦框12には、金属縦框19の見込み面19baにハンドル30を設けたため押縁は設けられていない。ハンドル30を吊先側の縦框12の見込み面19baに設けたことで、縦框12の見付け方向の幅を小さくできる。
その一方で、障子9の框体14における上框10と下框11と吊元側の縦框13には金属上框17、金属下框18、吊元側の金属縦框20にそれぞれ屋内側から内押縁として上部押縁24、下部押縁25、縦部押縁28が設置されていることで、各パネル嵌合溝17a,18a、20aとの間でガラスパネル15を屋内側から押圧して固定している。この場合も、ハンドル30を設けない上框10、下框11、吊元側の縦框13の3方にそれぞれ上部押縁24、下部押縁25、縦部押縁28を固定したことで、上框10、下框11、吊元側の縦框13の見付け方向の幅を小幅してもガラスパネル15の高い保持強度を得られる。
【0023】
また、障子9の金属上框17の外側上端部に設けた受け部に上枠3に当接して気密にシールするシール部材29aが設けられている。左右の金属縦框19,20の外側端部に設けた受け部にも左右の縦枠5,6にそれぞれ当接して気密にシールするシール部材29b、29cが設けられている。
また、
図2において、金属上枠3aと金属上框17の間には障子9の開放範囲を規制するフリクションアーム31が連結され、金属下枠4aと金属下框18の間にも障子9の開放範囲を規制するフリクションアーム32が連結されている。
【0024】
図1において、下部押縁25の屋内側には下枠4の金属下枠4aが略L字状に屈曲して上側に延びており、その上面4aaには開き調整器33が設置されてねじ34aで補強板35を介して固定されている。開き調整器33は障子9を開放させる際に例えば45度以上90度程度の所定角度に開いてそれ以上の角度に開かないように開き角度を規制するものである。
図3の拡大断面図で示すように、下部押縁25内には上側の樹脂押縁片25bから下側の金属押縁片25aにかけて断面略L字状の第一補強部材38が設置されている。第一補強部材38は例えばスチールやアルミ合金等の金属部材からなり、樹脂押縁片25bの屋内側側壁に当接する起立部38aと金属押縁片25aの下面に当接する平面部38bとを有している。
開き調整器33に設けた断面略L字状の固定部材36は、下部押縁25の樹脂押縁片25bの屋内側側壁25baの孔を通して第一補強部材38の起立部38aにねじ34bで固定されている。
【0025】
第一補強部材38の平面部38bは金属押縁片25aの下面側に載置されている。金属押縁片25aの下面25abと金属下框18の略U字状部18cとで仕切る中空のホロー部40内には例えばスチールやアルミ合金等の第二補強部材41が収納されている。そして、第一補強部材38の平面部38bから金属押縁片25aの下面25abに形成した孔を通して第二補強部材41にねじ34cがねじ込まれて、第一補強部材38と第二補強部材41が金属押縁片25aを介して連結固定されている。
なお、第二補強部材41はホロー部40の形状に応じて例えば3枚の補強板で構成され、上側からねじ34c固定されていると共に、下側から金属下框18の略U字状部18c側を通してねじ34dで固定されている。しかし、第二補強部材41は一枚の補強部材で形成されていてもよい。なお、第一補強部材38と第二補強部材41とは補強部材37を構成する。
【0026】
そして、障子9を開放位置まで開放した際に停止時に生じる荷重と衝撃を第一補強部材38を介して第二補強部材41で受けることができる。しかも、第一補強部材38と第二補強部材41をガラスパネル15の屋内側に設置した下部押縁25と金属下框18のホロー部40とで受けるため、断熱性の高いガラスパネル15の面積を下方に大きくしてパネル嵌合溝18aの下側のホロー部18bを小さくすることができる。そのため、従来よりも断熱性を向上できる。
【0027】
次に
図4は金属下枠4aの上面4aaに固定された開き調整器33の一例を示すものである。開き調整器33は金属下枠4aの上面4aaにねじ34aで固定された略凸部状の基板42の上部に回動腕43の一端を支持する支持軸44を取り付けている。回動腕43内には進退可能な出没アーム45が設けられ、出没アーム45の他端は下部押縁25内の第一補強部材38とねじ34bで固定される固定部材36に連結されている。
回動腕43の上面には回動腕43の回転操作によって障子9を開閉作動させる操作部46が設けられている。回動腕43において出没アーム45の下方にはバネ47の付勢力によってピン48を出没アーム45の孔部45a内に嵌合させて障子9を開放位置で停止させるロック部50が設けられている。回動腕43の上面にはロック部50のピン48を押してロックを解除する解除ボタン51が取り付けられている。
【0028】
本実施形態による縦辷り出し窓1は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
本実施形態による縦辷り出し窓1は、
図1乃至
図3に示す閉鎖状態で開き調整器33の出没アーム45はほとんどが回動腕43内に納められている。そして、ハンドル30を操作してロックピンを外し、開き調整器33の操作部46を操作することで障子9を開放作動する。障子9の開放動作に従って回動腕43から出没アーム45が引き出されて障子9が辷り出し状に開いていく。その際、開き調整器33は開放方向に引っ張られる。
【0029】
そして、障子9が開放位置(例えば45度)に至ると出没アーム45の孔部45a内にロック部50のピン48がバネ47の付勢力で突出して停止する。その際の衝撃や荷重は固定部材36に固定された下部押縁25内の第一補強部材38を介してその下側の金属下框18のホロー部40内の第二補強部材41で受ける。
第一補強部材38を固定した下部押縁25は強度の小さい樹脂押縁片25bを含むと共に、金属押縁片25aのパネル側側壁25aaがパネル嵌合溝18aと共にガラスパネル15を保持するため、障子9の開閉時の衝撃や荷重を分担させることはできない。本実施形態では下部押縁25内に設けた第一補強部材38をその下側の金属下框18のホロー部40内に設けた第二補強部材41にねじ34cで固定したため、障子9の開放停止時の荷重を下部押縁25を介して下框11の第二補強部材41で受けることができる。そのため、下部押縁25に荷重がかかって損傷したりパネル嵌合溝18aのパネル側側壁25aaに影響を与えたりすることを防止できる。
【0030】
そして、障子9を開放状態から閉鎖作動させる場合には、障子9の框体14が枠体7に当接することで停止する。その際、障子9の下框11にかかる衝撃や荷重も下部押縁25内の第一補強部材38を介して金属下框18のホロー部40内の第二補強部材41で受け止めることができる。
【0031】
上述のように本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、従来、ガラスパネル15の下側のホロー部18b内に設けた開き調整器33の補強部材に代えて、ガラスパネル15の屋内側に下部押縁25内の第一補強部材38とその下側の金属下框18のホロー部40内の第二補強部材41とを設けたため、ガラスパネル15の下部を下框11の下方側に延ばすことができてガラスパネル15による断熱性を向上させることができる。
しかも、下部押縁25には屋内側側壁25baを有する樹脂押縁片25bを設けたため一層断熱性を向上できる。
【0032】
また、開き調整器33の固定部材36に連結した第一補強部材38を下部押縁25内に設け、第一補強部材38をその下側の金属下框18内の第二補強部材41に連結したため、障子9の開閉時に係る衝撃や荷重は第一補強部材38を介して第二補強部材41で受けることができる。そのため、パネル嵌合溝18aと共にガラスパネル15を保持する金属押縁片25aのパネル側側壁25aaや下部押縁25に衝撃や荷重がかからずガラスパネル15の保持部に悪影響を与えない。
更に、ガラスパネル15の屋内側に下部押縁25と開き調整器33を支える金属下枠4aの延長部を設けたため、見込み方向の幅が増大して剛性が向上する。
【0033】
なお、本発明による縦辷り出し窓1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の他の実施形態や変形例等について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を省略する。
【0034】
次に本発明の第二実施形態による縦辷り出し窓1Aについて
図5により説明する。本第二実施形態において、枠体7がアルミ合金等の金属部材からなり、障子9の框体14もアルミ合金等の金属部材で構成されている。更に、第一実施形態との相違点として、金属押縁片25aと樹脂押縁片25bからなる下部押縁25に代えて、金属製の金属下部押縁60を設置している。
【0035】
相違点について説明すると、本第二実施形態における金属下部押縁60は例えば略四角形枠状の断面形状を有している。この金属下部押縁60内の二面には断面略L字状の第一補強部材38が設置され、その屋内側側壁60aに形成した孔を通してねじ34bで固定部材36と第一補強部材38の起立部38aが固定されている。
また、金属下部押縁60の下面60bとその下側に設けた金属下框18の断面略U字状部18cとで形成するホロー部40内に第二補強部材41が設置されている。
【0036】
そして、第一補強部材38の平面部38bと第二補強部材41とを下面60bの孔を通してねじ34cで互いに固定している。第二補強部材41はホロー部40の下面を通してねじ34dによっても固定されている。また、金属下部押縁60の上面にはねじ34cをドライバー等で締め込むための穴部60eが形成されている。この穴部60eを通してねじ34cを締め込んだ後、障子9の開閉用の把手61を取り付けて穴部60eを塞ぐようにした。
本第二実施形態においても第一実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0037】
なお、上述した第一実施形態や第二実施形態による縦辷り出し窓1,1Aに代えて、障子9の上框10、下框11、ハンドル30を設置しない側の縦框13の少なくとも下框11を屋内側から見て枠体7内に隠れる隠し框構造に形成してもよい。なお、隠し框構造では押縁は設置しない。
この場合も、下框11の上下方向の幅を小さくしてガラスパネル15を下方に延ばすため、金属下框38の上面に設置した第一補強部材38と金属下框18内の第二補強部材41とを設けて障子9の開閉時の荷重を第一補強部材38を介して第二補強部材41で受け止める。これにより、障子9の框体14と開き調整器33を補強することができる。
【0038】
また、上述した第一及び第二実施形態においても補強部材37の設置に際して必ずしも下部押縁25,60等の各押縁を設置しなくてもよい。
パネル嵌合溝18aと共にガラスパネル15を保持する金属押縁片25aのパネル側側壁25aaと、その屋内側に設置した第一補強部材38及び第二補強部材41に相当する補強部材があればよい。この場合、例えば、下框11が金属下框18と樹脂下框の複合構造であり、補強部材37が金属下框18と樹脂下框の間の空間に設置され、金属下框18と補強部材37をねじ固定していてもよい。
【0039】
また、金属下框18が断面略コの字状のパネル嵌合溝18aを有している場合には、パネル側側壁25aaは必要ない。この場合には開き調整器33の荷重を受ける補強部材37があればよい。そのため、本発明では見込み方向におけるガラスパネル15とその屋内側に固定した開き調整器33との間に固定部材36に連結された第一補強部材38及び第二補強部材41を備えた補強部材37が金属下框18に固定されていればよい。この場合、第一補強部材38と第二補強部材41を一体に形成してなる補強部材37を設置してもよい。
【0040】
なお、本発明による縦辷り出し窓1、1A等の建具はビル用に限らず一般住宅用の建具等にも採用できる。
また、本発明による建具として縦辷り出し窓1を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、引き違い窓等各種の建具にも適用できる。