特許第6797550号(P6797550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797550
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】車体侵入防止装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20201130BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/00 991
   B60R21/00 992
   B60R21/00 993
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-87094(P2016-87094)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-199071(P2017-199071A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 博文
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−509018(JP,A)
【文献】 特開2017−091358(JP,A)
【文献】 特開2009−190531(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155349(WO,A1)
【文献】 特開2007−125981(JP,A)
【文献】 特表2004−530997(JP,A)
【文献】 特開2003−002142(JP,A)
【文献】 特開平05−229449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0181338(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1394771(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60K 25/00 − 28/16
B60R 21/00 − 21/13
B60R 21/34 − 21/38
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 50/16
B62D 6/00 − 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に侵入禁止エリアが位置するように前記車両が前記侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から、前記侵入禁止エリアから離れるように発車する際に、前記侵入禁止エリアへ前記車両の車体が侵入することを防止する車体侵入防止装置であって、
前記車両の操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記車両が前記侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から発車した場合に、前記車両の停車位置からの走行距離を検出する走行距離検出部と、
前記車両が前記侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から発車する際に、前記走行距離検出部によって検出された走行距離が操舵禁止距離以上となるまでの間に、前記操舵角検出部によって基準角度以上の操舵角が検出された場合、前記侵入禁止エリアへ前記車体の侵入の可能性があると判定する侵入判定部と、
前記侵入判定部によって前記侵入禁止エリアへ前記車体の侵入の可能性があると判定された場合に、前記車両のドライバに対し、前記侵入禁止エリアへ前記車体の侵入の可能性がある旨の報知を行う報知部と、を備え、
前記操舵禁止距離は、前記車両が前記侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から前記操舵禁止距離の走行後に前記侵入禁止エリアから離れる向きに操舵を行った場合に、前記車両の後端が前記侵入禁止エリアを通過してから前記侵入禁止エリア側に張り出す距離である、車体侵入防止装置。
【請求項2】
前記操舵禁止距離は、前記侵入禁止エリアにおける前記車両の進行方向前方側の端部であるエリア終端位置と前記車両の停車位置との位置関係と、前記車両が操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて設定されている、請求項1に記載の車体侵入防止装置。
【請求項3】
前記車両の前方を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された撮像情報に基づいて前記侵入禁止エリアの前記エリア終端位置を検出する終端位置検出部と、を更に備え、
前記侵入判定部は、前記終端位置検出部で検出された前記エリア終端位置と前記車両の停車位置との位置関係と、前記車両が操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて前記操舵禁止距離を設定する、請求項2に記載の車体侵入防止装置。
【請求項4】
前記車両の側方に前記侵入禁止エリアが位置するように前記車両が停車している状態で、前記侵入禁止エリアと前記車両との間隔を検出する間隔検出部を更に備え、
前記侵入判定部は、前記間隔検出部で検出された間隔が狭い場合、検出された間隔が広い場合に比べて前記基準角度を小さくする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車体侵入防止装置。
【請求項5】
前記車両の操舵の操舵角速度を検出する角速度検出部を更に備え、
前記侵入判定部は、前記角速度検出部で検出された操舵角速度が基準角速度よりも速い場合、前記操舵角検出部によって検出された操舵角が前記基準角度未満であっても、前記走行距離検出部によって検出された走行距離が前記操舵禁止距離未満のときには、前記侵入禁止エリアへ前記車体の侵入の可能性があると判定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の車体侵入防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、車体侵入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転操作を支援する装置が、種々提案されている。例えば特許文献1には、自車両に接近してくる他車両の有無を検知し、ドライバに警報を発する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−268225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の操舵が行われた場合、車体の後端が操舵が行われた方向に対して反対側に張り出すことがある。例えば、車両がバスであり、停留所から離れる向きの操舵を行いつつバスが発車する場合、バスの後端が停留所側に張り出すことがある。このため、例えば、バスの停留所など、車体の侵入を禁止したい侵入禁止エリアに車体が侵入することを防止することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から発車する際に、侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入することを防止可能な車体侵入防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、車両の側方に侵入禁止エリアが位置するように車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から、侵入禁止エリアから離れるように発車する際に、侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入することを防止する車体侵入防止装置であって、車両の操舵角を検出する操舵角検出部と、車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から発車した場合に、車両の停車位置からの走行距離を検出する走行距離検出部と、車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から発車する際に、走行距離検出部によって検出された走行距離が操舵禁止距離以上となるまでの間に、操舵角検出部によって基準角度以上の操舵角が検出された場合、侵入禁止エリアへ車体の侵入の可能性があると判定する侵入判定部と、侵入判定部によって侵入禁止エリアへ車体の侵入の可能性があると判定された場合に、車両のドライバに対し、侵入禁止エリアへ車体の侵入の可能性がある旨の報知を行う報知部と、を備え、操舵禁止距離は、車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から操舵禁止距離の走行後に侵入禁止エリアから離れる向きに操舵を行った場合に、車両の後端が侵入禁止エリアを通過してから侵入禁止エリア側に張り出す距離である。
【0007】
この車体侵入防止装置では、車両の発車後、車両の走行距離が操舵禁止距離以上となるまでの間に基準角度以上の操舵が行われた場合に、車両のドライバに対し、侵入禁止エリアへ車体の侵入の可能性がある旨の報知が行われる。また、操舵禁止距離は、車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から操舵禁止距離の走行後に侵入禁止エリアから離れる向きに操舵を行った場合に、車両の後端が侵入禁止エリアを通過してから侵入禁止エリア側に張り出す距離である。すなわち、車両の走行距離が操舵禁止距離未満である場合に操舵が行われると、車両の車体が侵入禁止エリアに張り出すこととなる。このため、車体侵入防止装置は、車両の車体が侵入禁止エリアに張り出す可能性がある場合、すなわち、走行距離検出部によって検出された走行距離が操舵禁止距離以上となるまでの間に、操舵角検出部によって基準角度以上の操舵角が検出された場合に、ドライバに対して報知を行う。これにより、ドライバは、侵入禁止エリアへ車体の侵入の可能性があることを認識することができ、例えば操舵を戻すなど、侵入禁止エリアへ車体が侵入することを防止するための操作を行うことができる。以上のように、車体侵入防止装置は、車両が侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から発車する際に、侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入することを防止することができる。
【0008】
操舵禁止距離は、侵入禁止エリアにおける車両の進行方向前方側の端部であるエリア終端位置と車両の停車位置との位置関係と、車両が操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて設定されていてもよい。この場合には、エリア終端位置と車両の停車位置との位置関係と、車両が操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量とに基づいて、操舵禁止距離を適切に設定することができる。
【0009】
車体侵入防止装置は、車両の前方を撮像するカメラと、カメラで撮像された撮像情報に基づいて侵入禁止エリアのエリア終端位置を検出する終端位置検出部と、を更に備え、侵入判定部は、終端位置検出部で検出されたエリア終端位置と車両の停車位置との位置関係と、車両が操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて操舵禁止距離を設定してもよい。この場合には、例えば、車両の停車位置が予め定められた位置からずれていたとしても、カメラの撮像情報を用いて検出されたエリア終端位置等に基づいて操舵禁止距離を設定することができ、侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入することを防止することができる。
【0010】
車体侵入防止装置は、車両の側方に侵入禁止エリアが位置するように車両が停車している状態で、侵入禁止エリアと車両との間隔を検出する間隔検出部を更に備え、侵入判定部は、間隔検出部で検出された間隔が狭い場合、検出された間隔が広い場合に比べて基準角度を小さくしてもよい。例えば、侵入禁止エリアと車両との間隔が広い場合、操舵角がわずかであり、車両の後端の張り出し量が小さい状況においては、操舵が行われていても侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入しない場合がある。このため、侵入禁止エリアと車両との間隔に応じて基準角度を変更することで、ドライバに対する報知を侵入禁止エリアと車両との間隔に応じて適切に行うことができる。
【0011】
車体侵入防止装置は、車両の操舵の操舵角速度を検出する角速度検出部を更に備え、侵入判定部は、角速度検出部で検出された操舵角速度が基準角速度よりも速い場合、操舵角検出部によって検出された操舵角が基準角度未満であっても、走行距離検出部によって検出された走行距離が操舵禁止距離未満のときには、侵入禁止エリアへ車体の侵入の可能性があると判定してもよい。例えば、操舵角速度が速い場合には、大きな操舵が行われることが考えられる。このため、操舵角速度が速く、大きな操舵が行われる可能性がある場合、車体侵入防止装置は、操舵角が基準角度以上となっていなくとも即座に報知を行うことで、侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入することを適切に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、侵入禁止エリアに隣接して停車した状態から車両が発車する際に、侵入禁止エリアへ車両の車体が侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る車体侵入防止装置の概略構成を示す図である。
図2】停留所と車両との位置関係を示す図である。
図3】操舵を行った場合における連接部及び車両の後端の軌跡を示す概略図である。
図4】車両の発車時に車体侵入防止装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、車体侵入防止装置100は、大型の車両Mに搭載されている。ここでの車両Mは、図2に示すように、前方車体M1と、後方車体M2とが連接された連接バスである。前方車体M1と後方車体M2とは、連接部Rにおいて互いに揺動可能に連接されている。前方車体M1には、前輪T1と、後輪T2とが設けられている。前輪T1は操舵輪であり、後輪T2は従動輪である。後方車体M2には、駆動輪T3が設けられている。車両Mは、ドライバによって運転操作が行われる車両である。
【0016】
車体侵入防止装置100は、車両Mの側方に停留所(侵入禁止エリア)Pが位置するように停留所Pに隣接して停車した状態から、停留所Pから離れるように車両Mが発車する際に、停留所Pへ車両Mの車体が侵入することを防止するための装置である。車両Mが発車する際に停留所Pへ車両Mの車体が侵入する場合とは、例えば、停留所Pから離れる方向に操舵が行われた状態で車両Mが発車した際に、車両Mの連接部Rが停留所P側に張り出す場合、及び車両Mの後端が停留所P側に張り出す場合である。
【0017】
低速走行時に車両Mが操舵を行った場合における、車両Mの連接部R及び車両Mの後端の張り出し量の変化は、例えば図3に示すように、幾何学的に決定される。図3では、右側に操舵が行われた状態で前進した場合おける、連接部Rの中央部の左側面の軌跡と、車両Mの後端の左側の端部の軌跡とを示している。軌跡D1〜D7は、連接部Rの中央部の左側面の軌跡である。軌跡F1〜F7は、車両Mの後端の左側の端部の軌跡である。
【0018】
また、図3では、一例として、軌跡D1及びF1は車両Mの舵角が5°、軌跡D2及びF2は車両Mの舵角が10°、軌跡D3及びF3は車両Mの舵角が15°、軌跡D4及びF4は車両Mの舵角が20°、軌跡D5及びF5は車両Mの舵角が30°、軌跡D6及びF6は車両Mの舵角が40°、軌跡D7及びF7は車両Mの舵角が52°の場合の軌跡をそれぞれ示している。図3に示されるように、舵角が大きいほど、車両Mの連接部R及び車両Mの後端の張り出し量も大きくなる。また、車両Mの後端の左側の端部は、右側の操舵が行われた場合に、軌跡F1〜F7に示されるように走行開始直後において右側に一旦移動した後、左側に張り出す。
【0019】
停留所Pの高さが車両Mの車体の高さ位置よりも低い場合には、車両Mの連接部R及び車両Mの後端が停留所P側に張り出すと、車両Mの連接部R及び車両Mの後端が停留所Pに侵入する。なお、停留所Pの高さが車両Mの車体の高さ位置よりも高い場合には、車両Mの連接部R及び車両Mの後端が停留所P側に張り出すと、車両Mの連接部R及び車両Mの後端が停留所Pの壁面に接触する。本実施形態における車体侵入防止装置100は、停留所Pへ車両Mの車体が侵入すること(停留所Pの壁面に接触すること)を防止するための装置である。
【0020】
車体侵入防止装置100は、操舵角センサ(操舵角検出部)1、操舵角速度センサ(角速度検出部)2、車速センサ3、前方カメラ(前方を撮像するカメラ)4、側方カメラ5、ECU[Electronic Control Unit]6、及びスピーカ(報知部)7を備えている。
【0021】
ECU6は、例えば、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECU6では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU6は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。ECU6には、CAN通信回路を介して、操舵角センサ1等が接続されている。
【0022】
操舵角センサ1は、例えば、車両Mのステアリングシャフトに対して設けられ、ドライバによって操舵された車両Mの操舵角を検出する。操舵角速度センサ2は、例えば、車両Mのステアリングシャフトに対して設けられ、ドライバによって操舵された車両Mの操舵の操舵角速度を検出する。なお、操舵角センサ1及び操舵角速度センサ2は、互いに異なるセンサであってもよく、一つのセンサによって操舵角と操舵角速度とが検出可能な構成であってもよい。
【0023】
車速センサ3は、車両Mの速度を検出する検出器である。車速センサ3は、例えば、車両Mの車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、車輪の回転速度に応じた車速パルス信号を生成する。前方カメラ4は、例えば、車両Mの前端部に設けられ、車両Mの前方を撮像する撮像装置である。側方カメラ5は、例えば、車両Mの側面の上部に設けられ、車両Mの側方を見下ろすように撮像する撮像装置である。スピーカ7は、車両Mのドライバに対してブザー音或いは音声等の音を出力する機器である。
【0024】
次に、ECU6の機能的構成について説明する。ECU6は、走行距離検出部11、終端位置検出部12、間隔検出部13、侵入判定部14、及び報知制御部(報知部)15を備えている。
【0025】
走行距離検出部11は、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から発車した場合に、車両Mの停車位置からの走行距離を検出する。具体的には、走行距離検出部11は、例えば、車速センサ3で生成された車速パルス信号の積算値に基づいて走行距離を検出する。
【0026】
終端位置検出部12は、前方カメラ4で撮像された撮像情報に基づいて、停留所Pのエリア終端位置P1を検出する。ここで、エリア終端位置P1とは、図2に示すように、停留所Pにおける車両Mの進行方向前方側の端部である。終端位置検出部12は、車両Mが停留所Pに隣接して停車している状態で、エリア終端位置P1を検出する。具体的には、終端位置検出部12は、エリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係を検出する。すなわち、終端位置検出部12は、エリア終端位置P1と車両Mとの距離を検出する。なお、終端位置検出部12が行うエリア終端位置P1の検出は、既存の画像処理技術を用いて行うことができる。
【0027】
間隔検出部13は、側方カメラ5で撮像された撮像情報に基づいて、車両Mが停留所Pに隣接して停車している状態で、停留所Pと車両Mとの間隔を検出する。ここでの停留所Pと車両Mとの間隔とは、停留所Pにおける車両M側の端部と、車両Mにおける停留所P側の側面との隙間の長さである。なお、間隔検出部13が行う停留所Pと車両Mとの間隔の検出は、既存の画像処理技術を用いて行うことができる。
【0028】
侵入判定部14は、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から発車する際に、車両Mの車体が停留所Pへ侵入する可能性があるか否かを判定する。具体的には、侵入判定部14は、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から発車する際に、走行距離検出部11によって検出された走行距離(停車位置からの走行距離)が操舵禁止距離以上となるまでの間に、操舵角センサ1によって基準角度以上の操舵角が検出された場合、停留所Pへ車両Mの車体の侵入の可能性があると判定する。
【0029】
なお、侵入判定部14は、基準角度として、ゼロ(操舵が行われていない状態)、又は予め定められた所定の角度を用いることができる。
【0030】
ここで、操舵禁止距離としては、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から当該操舵禁止距離の走行後に停留所Pから離れる向きに操舵を行った場合に、車両Mの後端が停留所Pを通過してから侵入禁止エリア側に張り出す距離が設定されている。すなわち、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から操舵禁止距離を超える前に操舵を行った場合には、車両Mの連接部R及び車両Mの後端が停留所Pに侵入する、或いは車両Mの後端が停留所Pに侵入する。また、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から操舵禁止距離を超えてから操舵を行った場合には、車両Mの連接部R及び車両Mの後端が停留所P側に張り出すものの、停留所Pの通過後であるために車両Mの連接部R及び車両Mの後端のいずれも停留所Pに侵入しない。
【0031】
図3を用いて上述したように、操舵を行った場合における車両Mの後端の軌跡(張り出し)は事前に把握することができる。このため、エリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係が把握できている場合、車両Mが停車した状態から何メートル走行した後に操舵を行えば、車両Mの後端が停留所Pに侵入しないかを求めることができる。このように、操舵禁止距離とは、車両Mの停車位置と、車両Mの後端を停留所Pを通過してから侵入禁止エリア側に張り出させるための操舵の開始位置との間の距離である。このように、操舵禁止距離は、停留所Pのエリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係と、車両Mが操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて設定されている。
【0032】
図2に示す例では、実線で示す車両Mが停車状態とする。そして、車両Mが発車して真っ直ぐに前進した後、破線で示す車両Mの位置に到達したときに右側に操舵を行うと、車両Mの後端が停留所Pを通過してから侵入禁止エリア側に張り出す状態とする。この場合、図2に示す距離Kが、操舵禁止距離となる。図2及び図3に示す例では、例えば、車両Mの前端が車両Mの全長のおおよそ80%程度、エリア終端位置P1を通過してから操舵を行うと、車両Mの車体が停留所Pに侵入しない。
【0033】
また、操舵禁止距離は、事前に侵入判定部14に設定されていてもよい。例えば、車両Mが停留所Pに隣接して停車したときに、車両Mが予め定められた位置に停車し、エリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係が把握できている場合、侵入判定部14は、事前に設定された操舵禁止距離を用いて侵入の判定を行うことができる。
【0034】
一方、車両Mが停留所Pに隣接して停車したときに、車両Mが予め定められた位置に停車していない場合がある。この場合、侵入判定部14は、終端位置検出部12で検出されたエリア終端位置P1の位置と車両Mの停車位置との位置関係と、車両Mが操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて操舵禁止距離を設定する。
【0035】
また、侵入判定部14は、停留所Pへ車両Mの車体の侵入の可能性があるか否かを判定する際に用いた基準角度を、間隔検出部13で検出された間隔に基づいて変化させる。具体的には、侵入判定部14は、間隔検出部13で検出された間隔が狭い場合、検出された間隔が広い場合に比べて、基準角度を小さくする。
【0036】
侵入判定部14は、操舵角速度センサ2で検出された操舵角速度が予め定められた基準角速度よりも速い場合、操舵角センサ1によって検出された操舵角が基準角度未満であっても、走行距離検出部11で検出された走行距離が操舵禁止距離未満のときには、停留所Pへ車体の侵入の可能性があると判定する。
【0037】
報知制御部15は、侵入判定部14によって停留所Pへ車体の侵入の可能性があると判定された場合、車両Mのドライバに対し、スピーカ7を通じて停留所Pへ車体の侵入の可能性がある旨の報知を行う。報知制御部15は、例えば、スピーカ7からブザー音又は音声等を出力させることにより、スピーカ7を用いて報知を行う。これにより、車両Mのドライバは、車両Mの操舵を行ったことにより車両Mの車体が停留所Pに侵入する可能性があることを認識することができる。
【0038】
次に、停留所Pに隣接して停車する車両Mの発車時に、車体侵入防止装置100で行われる処理の流れについて説明する。なお、車両Mが停留所Pに隣接して停車した後、車両Mが発車する前に、侵入判定部14は操舵禁止距離を設定する。具体的には、侵入判定部14は、車両Mが予め定められた位置に停車し、エリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係が把握できている場合、事前に設定された操舵禁止距離を用いる。また、侵入判定部14は、車両Mが予め定められた位置に停車していない場合、終端位置検出部12で検出されたエリア終端位置P1の位置と車両Mの停車位置との位置関係と、車両Mが操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて操舵禁止距離を設定する。
【0039】
また、車両Mが停留所Pに隣接して停車した後、車両Mが発車する前に、侵入判定部14は、間隔検出部13で検出された間隔に基づいて、停留所Pへ車両Mの車体の侵入の可能性があるか否かを判定する際に用いる基準角度を設定する。ここでは、侵入判定部14は、間隔検出部13で検出された間隔が狭い場合、検出された間隔が広い場合に比べて、基準角度を小さく設定する。
【0040】
以下、操舵禁止距離及び基準角度の設定が終了した状態で車両Mが発車した場合に、車体侵入防止装置100で行われる処理の流れを図4を用いて説明する。車両Mが発車すると、侵入判定部14は、操舵角センサ1で検出された操舵角が基準角度以上であるか否かを判定する(S101)。操舵角が基準角度以上でない場合(S101:NO)、侵入判定部14は、操舵角速度センサ2で検出された操舵角速度が基準角速度以上であるか否かを判定する(S102)。
【0041】
操舵角速度が基準角速度以上でない場合(S102:NO)、侵入判定部14は、走行距離検出部11で検出された走行距離が操舵禁止距離を超えたか否かを判定する(S103)。走行距離が操舵禁止距離を超えた場合(S103:YES)、侵入判定部14は、処理を終了する。この場合には、車両Mの走行距離が操舵禁止距離を超えているため、その後に車両Mの操舵が行われても、車両Mの後端が停留所Pを通過してから停留所P側に張り出すこととなり、車両Mの車体が停留所Pに侵入しない。一方、走行距離が操舵禁止距離を超えていない場合(S103:NO)、侵入判定部14は、S101の処理に戻る。
【0042】
操舵角センサ1で検出された操舵角が基準角度以上である場合(S101:YES)、又は操舵角速度センサ2で検出された操舵角速度が基準角速度以上である場合(S102:YES)、侵入判定部14は、車両Mの車体が停留所Pに侵入する可能性があると判定する。そして、報知制御部15は、車両Mの車体が停留所Pに侵入する可能性がある旨の報知をスピーカ7を通じて行う(S104)。
【0043】
本実施形態は以上のように構成され、この車体侵入防止装置100では、車両Mの発車後、車両Mの走行距離が操舵禁止距離以上となるまでの間に基準角度以上の操舵が行われた場合に、車両Mのドライバに対し、停留所Pへ車体の侵入の可能性がある旨の報知が行われる。また、操舵禁止距離は、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から操舵禁止距離の走行後に停留所Pから離れる向きに操舵を行った場合に、車両Mの後端が停留所Pを通過してから停留所P側に張り出す距離が設定されている。すなわち、車両Mの走行距離が操舵禁止距離未満である場合に操舵が行われると、車両Mの車体が停留所Pに張り出すこととなる。このため、車体侵入防止装置100は、車両Mの車体が停留所Pに張り出す可能性がある場合、すなわち、走行距離検出部11によって検出された走行距離が操舵禁止距離以上となるまでの間に、操舵角センサ1によって基準角度以上の操舵角が検出された場合に、ドライバに対して報知を行う。
【0044】
このようにして報知が行われることにより、車両Mのドライバは、停留所Pへ車体の侵入の可能性があることを認識することができ、例えば操舵を戻すなど、停留所Pへ車体が侵入することを防止するための操作を行うことができる。以上のように、車体侵入防止装置100は、車両Mが停留所Pに隣接して停車した状態から発車する際に、停留所Pへ車両Mの車体が侵入することを防止することができる。
【0045】
操舵禁止距離は、停留所Pのエリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係と、車両Mが操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて設定されている。これにより、リヤオーバーハング等に基づいて、操舵禁止距離を適切に設定することができる。
【0046】
車体侵入防止装置100は、前方カメラ4と、前方カメラ4で撮像された撮像情報に基づいてエリア終端位置P1を検出する終端位置検出部12とを備えている。侵入判定部14は、終端位置検出部12で検出されたエリア終端位置P1と車両Mの停車位置との位置関係と、車両Mが操舵を行った場合における走行距離に応じたリヤオーバーハングの張り出し量と、に基づいて操舵禁止距離を設定する。この場合には、例えば、車両Mの停車位置が予め定められた位置からずれていたとしても、前方カメラ4の撮像情報を用いて検出されたエリア終端位置P1等に基づいて操舵禁止距離を設定することができ、停留所Pへ車両Mの車体が侵入することを防止することができる。
【0047】
侵入判定部14は、間隔検出部13で検出された停留所Pと車両Mとの間隔が狭い場合、検出された間隔が広い場合に比べて判定に用いる基準角度を小さくする。例えば、停留所Pと車両Mとの間隔が広い場合、操舵角がわずかであり、車両Mの後端の張り出し量が小さい状況においては、操舵が行われていても停留所Pへ車両Mの車体が侵入しない場合がある。このため、停留所Pと車両Mとの間隔に応じて基準角度を変更することで、ドライバに対する報知を停留所Pと車両Mとの間隔に応じて適切に行うことができる。
【0048】
侵入判定部14は、操舵角速度センサ2で検出された操舵角速度が基準角速度よりも速い場合、操舵角センサ1によって検出された操舵角が基準角度未満であっても、停留所Pへ車体の侵入の可能性があると判定する。例えば、操舵角速度が速い場合には、大きな操舵が行われることが考えられる。このため、操舵角速度が速く、大きな操舵が行われる可能性がある場合、車体侵入防止装置100は、操舵角が基準角度以上となっていなくとも即座に報知を行うことで、侵入禁止エリアへ車両Mの車体が侵入することを適切に防止できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、車両Mは、連接バスとしたが、一つの車体からなる単車型の車両であってもよい。また、車両Mは、バス以外の車両であってもよい。さらに、車体の侵入を防止したい侵入禁止エリアとして停留所Pを用いて説明したが、停留所P以外のエリアであってもよい。なお、停留所Pの形状についても、図2に示す形状に限定されない。
【0050】
停留所Pのエリア終端位置P1は、前方カメラ4で撮像された撮像情報以外の情報に基づいて検出されてもよい。例えば、終端位置検出部12は、カメラ以外のセンサ(レーダセンサ等)を用いてエリア終端位置P1の位置を検出してもよい。
【0051】
また、終端位置検出部12は、エリア終端位置P1の位置情報を停留所Pに設置された送信装置等から無線通信等によって取得してもよい。そして、終端位置検出部12は、GPS受信機等によって検出される車両Mの位置と取得したエリア終端位置P1の位置情報とに基づいて、エリア終端位置P1の位置と車両Mの停車位置との位置関係を検出してもよい。或いは、終端位置検出部12は、エリア終端位置P1の位置情報を予め記憶していてもよい。そして、終端位置検出部12は、GPS受信機等によって検出される車両Mの位置と記憶されたエリア終端位置P1の位置情報と基づいて、エリア終端位置P1の位置と車両Mの停車位置との位置関係を検出してもよい。
【0052】
停留所Pと車両Mとの間隔は、側方カメラ5で撮像された撮像情報以外の情報に基づいて検出されてもよい。例えば、間隔検出部13は、カメラ以外のセンサ(レーダセンサ等)を用いて停留所Pと車両Mとの間隔を検出してもよい。
【0053】
走行距離検出部11は、車速センサ3で生成された車速パルス信号以外の情報に基づいて、走行距離を検出してもよい。
【0054】
報知制御部15は、スピーカ7を通じてドライバに報知を行う構成としたがスピーカ7を通じて報知を行うことに限定されない。例えば、報知制御部15は、ランプの点灯或いは表示装置の表示によって、ドライバに報知を行う構成であってもよい。また、報知制御部15は、スピーカ7を通じた報知に加えて、ランプの点灯或いは表示装置の表示によってドライバに報知を行ってもよい。
【0055】
なお、終端位置検出部12で検出されたエリア終端位置P1に基づいて操舵禁止距離を設定する処理を侵入判定部14が行うことは必須では無い。侵入判定部14は、予め定められた操舵禁止距離のみを用いてもよい。間隔検出部13で検出された間隔に基づいて基準角度を変更する処理を侵入判定部14が行うことは必須では無い。侵入判定部14は、一定の基準角度を用いてもよい。操舵角速度センサ2で検出された操舵角速度に基づいて停留所Pへ車体の侵入の可能性がある旨の判定を侵入判定部14が行うことは必須では無い。
【符号の説明】
【0056】
1…操舵角センサ(操舵角検出部)、2…操舵角速度センサ(角速度検出部)、4…前方カメラ(前方を撮像するカメラ)、7…スピーカ(報知部)、11…走行距離検出部、12…終端位置検出部、13…間隔検出部、14…侵入判定部、15…報知制御部(報知部)、100…車体侵入防止装置、M…車両、P…停留所(侵入禁止エリア)、K…操舵禁止距離。
図1
図2
図3
図4