特許第6797566号(P6797566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797566撮像装置、撮像装置の制御方法、および、画像処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797566
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法、および、画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20201130BHJP
   G03B 5/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H04N5/232 480
   G03B5/00 K
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-110809(P2016-110809)
(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公開番号】特開2017-216656(P2017-216656A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正明
【審査官】 大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−118513(JP,A)
【文献】 特開2008−005109(JP,A)
【文献】 特開2010−093343(JP,A)
【文献】 特開2009−194770(JP,A)
【文献】 特開2007−089091(JP,A)
【文献】 特開2008−205842(JP,A)
【文献】 特開2011−244144(JP,A)
【文献】 特開2008−206020(JP,A)
【文献】 特開2009−153046(JP,A)
【文献】 特開2007−060449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0207278(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0003261(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0204564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222− 5/257
H04N 5/91 − 5/956
G03B 5/00 − 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
前記撮像部による撮像を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記撮像部に対し、第1の露光時間による第1のフレーム画像の撮像の合間に前記第1の露光時間より短い第2の露光時間による撮像を所定周期毎に行わせて、通常の撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成するレンダリング処理に用いる第2のフレーム画像を撮像させて、前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像により構成される画を出力させ、
前記第2の露光時間については前記撮像部が備える光学系のレンズの焦点距離に応じて制御する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記焦点距離が短いほど、前記第2の露光時間を長く制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
撮像部と、
前記撮像部による撮像を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記撮像部に対し、第1の露光時間による第1のフレーム画像の撮像の合間に前記第1の露光時間より短い第2の露光時間による撮像を所定周期毎に行わせて、通常の撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成するレンダリング処理に用いる第2のフレーム画像を撮像させて、前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像により構成される画を出力させ、
前記第2の露光時間については撮像された被写体像の動き量に応じて制御する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記動き量が小さいほど、前記第2の露光時間を長く制御することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第2の露光時間を長く制御する際には、前記第1の露光時間を上限とした制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、撮像された被写体像の動き量に応じて、前記第2のフレーム画像を撮像させる前記所定周期を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記動き量が小さいほど、前記所定周期を長く制御することを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像により構成される1の動画から、前記第1の動画の撮像がなされた際の撮影軌跡を推定する推定手段と、
前記第1の動画の前記撮影軌跡の変動を低減させるように補正する補正手段と、
前記補正された撮影軌跡に対応した第2の動画を、前記第1の動画の前記第2のフレーム画像を用いた前記レンダリング処理により生成する処理手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記推定手段は、前記第1の動画の前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像を用いて前記撮影軌跡を推定することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記処理手段は、前記補正された撮影軌跡に対応した第3の動画を、前記第1の動画の前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像を用いて生成することを特徴とする請求項8又は9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記処理手段は、前記第3の動画の前記第2のフレーム画像に対し、前記第1のフレーム画像の動きブレに相当する動きブレを付与した第3のフレーム画像を生成して、前記第1のフレーム画像及び前記第3のフレーム画像により構成される前記第3の動画を出力することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記処理手段は、時間軸上で隣接した前記第1のフレーム画像と前記第2のフレーム画から検出される画素毎の変動量を、前記第1のフレーム画像の前記動きブレとして求めることを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記処理手段は、時間軸上で隣接した前記第1のフレーム画像と前記第2のフレーム画像との間の時間を、目標の露光時間に応じて時間分割し、前記第2のフレーム画像から、前記画素毎の変動量に応じた補間処理により各分割時間に対応した複数の中間フレーム画像を生成し、前記複数の中間フレーム画像を合成して前記第3のフレーム画像を生成することを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
撮像部の露光時間を制御する制御ステップと、
前記制御ステップにより制御された露光時間で前記撮像部に撮像を行わせる撮像ステップと、を含み、
前記制御ステップでは、
前記撮像部に対し、第1の露光時間による第1のフレーム画像の撮像の合間に前記第1の露光時間より短い第2の露光時間による撮像を所定周期毎に行わせて、通常の撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成するレンダリング処理に用いる第2のフレーム画像を撮像させて、前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像により構成される動画を出力させ、
前記第2の露光時間については前記撮像部が備える光学系のレンズの焦点距離に応じて制御する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項15】
撮像部の露光時間を制御する制御ステップと、
前記制御ステップにより制御された露光時間で前記撮像部に撮像を行わせる撮像ステップと、を含み、
前記制御ステップでは、
前記撮像部に対し、第1の露光時間による第1のフレーム画像の撮像の合間に前記第1の露光時間より短い第2の露光時間による撮像を所定周期毎に行わせて、通常の撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成するレンダリング処理に用いる第2のフレーム画像を撮像させて、前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像により構成される動画を出力させ、
前記第2の露光時間については撮像された被写体像の動き量に応じて制御する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項16】
第1の露光時間により撮像された複数の第1のフレーム画像と、前記第1のフレーム画像の撮像の合間に前記第1の露光時間より短い第2の露光時間による撮像が所定周期毎に行われた複数の第2のフレーム画像とにより構成される第1の動画から、前記第1の動画の撮像がなされた際の撮影軌跡を推定する推定手段と、
前記第1の動画の前記撮影軌跡の変動を低減させるように補正する補正手段と、
前記補正された撮影軌跡に対応した第2の動画を、前記第1の動画の前記第2のフレーム画像を用いたレンダリング処理によって通常の撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成する処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1乃至13の何れか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータを、請求項16に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像撮影を行う撮像装置、撮像装置の制御方法、撮影画像に対して信号処理を行う画像処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
手ブレなどによる撮影動画の変動を電子的に安定化させる技術として、従来から、撮影動画から撮影軌跡を推定し、その推定された撮影軌跡の軌跡変動が低減するように補正を行い、その補正後の撮影軌跡に対応した動画を生成する技術が提案されている。以下、補正後の撮影軌跡に対応して生成された動画を「安定化動画」と表記する。例えば、特許文献1には、撮影情報に応じて、撮影軌跡を補正するための安定化フィルタのパラメータを調整する技術が開示されている。
【0003】
また、通常、安定化動画の再生速度は撮影動画の再生速度と同じであるが、撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成することで、撮影された長時間の動画を短時間のダイジェスト動画として楽しむ、といったことも盛んに行われている。以下、撮影動画の再生速度に対してN倍速となされた安定化動画を「N倍速安定化動画」と表記する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−126436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、通常のデジタルカメラで撮影された長時間動画から短時間ダイジェスト動画を生成した場合、動画の各フレームにおけるブレが目立って、ブレの不快感が増大してしまう。ここで、例えば撮影者の頭部などに設置されて利用される小型カメラの場合、撮影者のフレーミング動作が無くても周囲の状況を撮影できるように広角レンズが装着されていることが多いため、動画の各フレーム画像のブレは少ない。
【0006】
一方、通常のデジタルカメラでは、例えば撮影者の頭部等に設置される小型カメラよりも長い焦点距離の標準画角レンズが装着されていることが多く、この場合、動画の各フレームのブレが大きくなる。また、通常のデジタルカメラで撮影された動画からN倍速安定化動画を生成した場合には、ブレの不快感が更に増大してしまい、許容できないレベルになってしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明は、ブレによる不快感を低減できる動画の撮像を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、撮像部と、前記撮像部による撮像を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記撮像部に対し、第1の露光時間による第1のフレーム画像の撮像の合間に前記第1の露光時間より短い第2の露光時間による撮像を所定周期毎に行わせて、通常の撮動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)の安定化動画を生成するレンダリング処理に用いる第2のフレーム画像を撮像させて、前記第1のフレーム画像及び前記第2のフレーム画像により構成される画を出力させ、前記第2の露光時間については前記撮像部が備える光学系のレンズの焦点距離に応じて制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブレによる不快感を低減できる動画の撮像が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態のデジタルカメラの概略的な機能構成を示す図である。
図2】第1の実施形態の撮像部の露光時間制御の説明に用いる図である。
図3】画像処理部の概略的な機能構成を示す図である。
図4】フレーム画像間の変動量検出の説明に用いる図である。
図5】通常速安定化動画生成の際のカメラ軌跡の補正の説明に用いる図である。
図6】通常速安定化動画生成の際のレンダリングの説明に用いる図である。
図7】動きブレ付与部の概略的な機能構成を示す図である。
図8】動きブレ付与部の動作説明に用いる図である。
図9】N倍速安定化動画生成の際のカメラ軌跡の補正の説明に用いる図である。
図10】N倍速安定化動画生成の際のレンダリングの説明に用いる図である。
図11】焦点距離に応じた露光時間制御の説明に用いる図である。
図12】第2の実施形態のデジタルカメラの概略的な機能構成を示す図である。
図13】第2の実施形態の撮像部の露光時間制御の説明に用いる図である。
図14】画像変動量に応じた露光時間制御の説明に用いる図である。
図15】画像変動量に応じた露光時間の切り替え制御の説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態の撮像装置及び画像処理装置は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、カメラ機能を備えたスマートフォンやタブレット端末などの各種携帯端末、工業用カメラ、車載カメラ、医療用カメラなどに適用可能である。本実施形態では、撮像装置及び画像処理装置の一例として、デジタルカメラへの適用例を挙げて説明する。また、本実施形態のデジタルカメラは、撮影した動画から手ブレ等に起因する撮影画像のブレを安定化させた安定化動画を生成する機能を有している。さらに、本実施形態のデジタルカメラは、撮影した動画から短時間のダイジェスト動画を生成する機能を有している。ダイジェスト動画は、撮影動画の再生速度に対してN倍速(Nは整数)に相当する安定化動画として生成される。以下、撮影動画と同じ再生速度の安定化動画を通常速安定化動画と表記し、撮影動画の再生速度に対してN倍速の安定化動画をN倍速安定化動画と表記する。本実施形態では、撮影動画が第1の動画、N倍速安定化動画が第2の動画、通常速安定化動画が第3の動画の一例である。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態のデジタルカメラ100の概略的な機能構成を示す図である。
図1において、ROM102は、デジタルカメラ100が備える各部の動作プログラムや、各部の動作に必要なパラメータ、設定値等のデータを記憶した、書き換え可能な不揮発性メモリである。RAM103は、書き換え可能な揮発性メモリであり、ROM102から読み出された動作プログラムが展開される。また、RAM103は、撮影された動画等のデータや通常速安定化動画のデータ、N倍速安定化動画のデータ等の一時記憶の他、デジタルカメラ100が備える各部が用いるデータ等を一時的に記憶する記憶領域としても用いられる。
【0013】
制御部101は、例えばCPUであり、ROM102から動作プログラムを読み出してRAM103に展開して実行することにより、デジタルカメラ100が備える各部の動作を制御する。
【0014】
光学系104は、レンズや絞り、シャッター等を有して構成されている。撮像部105は、CMOSセンサ等の撮像センサであり、光学系104により撮像センサの撮像面上に結像された光学像を光電変換して得られたアナログ画像信号を、A/D変換部106に出力する。なお、動画撮影が行われている場合、撮像部105では連続的な撮像が行われ、撮像部105から出力されるアナログ画像信号は動画を構成する各フレームの画像信号となる。A/D変換部106は、入力された動画の各フレームのアナログ画像信号にA/D(アナログ/デジタル)変換処理を行う。A/D変換部106から出力される各フレームのデジタル画像データは、本実施形態に係る第1の動画データとしてRAM103に記憶される。
【0015】
記録媒体108は、着脱可能なメモリカード等である。記録媒体108には、A/D変換部106でA/D変換されてRAM103に一時記憶されている動画データや、画像処理部107で後述するような処理が行われてRAM103に一時記憶されている動画データなどが、記録動画データとして記録される。
【0016】
画像処理部107は、RAM103に記憶された第1の動画データから、撮影がなされた際の撮影軌跡を推定して、その推定した撮影軌跡の軌跡変動を低減するような補正処理を行い、その補正後の撮影軌跡に対応した第2の動画データを生成する。本実施形態では、第2の動画データが安定化動画のデータとなる。詳細は後述するが、本実施形態の場合、画像処理部107は、安定化動画として、通常安定化動画とN倍速安定化動画を生成可能となされている。なお、画像処理部107は、例えば他の撮像装置等により撮像されて記録媒体108に記憶されている動画データや、ネットワーク等を介して取得された動画データから安定化動画を生成することも可能となされている。
【0017】
図2は、図1の制御部101による撮像部105の露光時間制御の説明に用いる図であり、動画のフレーム番号1〜121までの各フレームにおける露光時間を表している。各フレームの露光時間は、撮像センサの光電変換素子の電荷がリセットされる行リセットタイミング201から、蓄積された電荷が読み出される行読み出しタイミング202までの期間である。また、本実施形態において、撮像部105から出力される動画のフレームレートは、例えば60fps(フレーム/秒)であるとする。ここで、本実施形態の場合、動画の撮像の際には、第1の露光時間による第1のフレーム画像の撮像が60fpsで連続的に行われるが、所定周期毎に1回、第1の露光時間より短い第2の露光時間による第2のフレーム画像が撮像される。本実施形態では、一例として、第1の露光時間は1/60秒、第2の露光時間は1/500秒となされ、所定周期は例えば60フレームに1回の周期となされている。図2の例では、フレーム番号60と120のフレームが1/500秒の第2の露光時間による第2のフレームとなされ、それ以外は1/60秒の第1の露光時間による第1のフレームとなっている。
【0018】
図3は、図1の画像処理部107の概略的な構成例を示す図である。入力動画データ308は、例えば撮像部105により撮像されてRAM103に一時的に記憶された後に読み出された、前述の図2で説明した第1の動画データである。入力動画データ308は、カメラ軌跡推定部301及びレンダリング部303と、カメラ軌跡推定部305及びレンダリング部307とに送られる。
【0019】
詳細については後述するが、カメラ軌跡推定部301とカメラ軌跡補正部302とレンダリング部303とからなる構成は、入力動画データ308から通常速安定化動画データを生成する。動きブレ付与部304は、通常速安定化動画の各フレーム画像のうち、前述した露光時間が1/500秒の第2のフレーム画像に対しては、1/60秒のフレーム画像のブレに相当する動きブレを付与して出力する。なお、動きブレ付与部304は、露光時間が1/60秒の第1のフレーム画像についてはそのまま出力する。動きブレ付与部304から出力された通常速安定化動画データ309は、例えばRAM103に一時的に記憶された後に読み出されて例えば記録媒体108に記録される。通常速安定化動画を生成する手法としては、例えば特許文献1に開示されているような手法を用いることができる。
【0020】
また詳細は後述するが、カメラ軌跡推定部305とカメラ軌跡補正部306とレンダリング部307とからなる構成は、入力動画データ308からN倍速安定化動画データ310を生成する。N倍速安定化動画データ310は、例えばRAM103に一時的に記憶された後に読み出されて例えば記録媒体108に記録される。
【0021】
以下、図4図5(a)〜図5(c)、図6を用いて、カメラ軌跡推定部301とカメラ軌跡補正部302とレンダリング部303とからなる構成による通常速安定化動画の生成動作について説明する。
カメラ軌跡推定部301は、図4に示すように、時間軸上で隣接した現フレーム画像401(フレーム番号n)と次フレーム画像402(フレーム番号n+1)の絵柄のマッチング処理を行って画像間の動き量を求め、それら画像間の画像変動量axを検出する。
【0022】
図5(a)は、カメラ軌跡推定部301がフレーム毎に検出した画像変動量axを、フレーム番号順に時系列に並べた図である。図5(a)のフレーム毎の画像変動量axは、それぞれ1本の矢印で表現されているが、この1本の矢印で水平及び垂直の2成分の画像変動量を表現するものとする。そして、カメラ軌跡推定部301は、図5(a)に示した各フレームの画像変動量axを時間方向に累積して、図5(b)に示すような累積画像変動量pを求める。この累積画像変動量pは、各フレーム画像が撮像されたときのカメラの撮影軌跡に相当する。カメラ軌跡推定部301は、この累積画像変動量p(カメラ軌跡)の情報を、カメラ軌跡補正部302に出力する。
【0023】
カメラ軌跡補正部302は、図5(b)に示した累積画像変動量pに対し、1フレーム毎の変化が滑らかになるように安定化フィルタ処理を施して、図5(c)に示すような補正カメラ軌跡Pを生成する。カメラ軌跡補正部302により生成された補正カメラ軌跡Pの情報は、レンダリング部303に送られる。
【0024】
レンダリング部303は、入力動画データ308のフレーム毎に、図5(c)の補正カメラ軌跡Pに応じた画角領域の画像を、そのフレーム画像内から読み出し、その読み出された画像を通常速安定化動画のフレーム画像とするようなレンダリング処理を行う。具体的には、レンダリング部303は、図6に示すように、フレーム番号nのフレーム画像601から、そのフレーム番号nの補正カメラ軌跡Pに応じた図中点線で示す画角領域の画像602を読み出す。そして、レンダリング部303は、この読み出された画像602を、通常速安定化動画のフレーム番号nのフレーム画像603とする。同様に、レンダリング部303は、フレーム番号n+1のフレーム画像611から、そのフレーム番号n+1の補正カメラ軌跡Pに応じた図中点線で示す画角領域の画像612を読み出す。この読み出された画像612が、通常速安定化動画のフレーム番号n+1のフレーム画像613となされる。フレーム番号n+2のフレーム画像621についても同様に、補正カメラ軌跡Pに応じた画角領域の画像622が読み出されて、それが通常速安定化動画のフレーム番号n+2のフレーム画像623となされる。以下、図示しないフレーム番号n+3以降の各フレーム画像についても同様の処理を行うことにより、通常速安定化動画データが生成される。このように、レンダリング部303は、入力動画データ308から、補正カメラ軌跡Pに対応した通常速安定化動画を再構成するようなレンダリング処理を行う。レンダリング部303から出力された通常速安定化動画データは、図3の動きブレ付与部304に送られる。
【0025】
図7は、動きブレ付与部304の概略的な構成例を示す図である。
図7の動きブレ付与部304には、レンダリング部303から出力された通常速安定化動画データ705が入力される。この通常速安定化動画データ705は、動きベクトルマップ生成部701とフレーム補間部702とフレーム選択部704とに送られる。
【0026】
動きベクトルマップ生成部701は、現フレーム(例えばフレーム番号n)と前フレーム(フレーム番号n−1)の画像間の絵柄を、それらフレーム内の局所領域毎にマッチングさせて、それら画像間の画素毎の変動量(動きベクトル)を検出する。動きベクトルマップ生成部701による変動量の検出動作の詳細は後述する。動きベクトルマップ生成部701により検出された画素毎の変動量(動きベクトル)の情報は、フレーム補間部702に送られる。
【0027】
フレーム補間部702は、現フレームの画像と前フレームの画像とを用い、画素毎の変動量に応じた補間処理を行って、それら現フレームと前フレームとの間を時間分割した各分割時間に対応した複数の中間フレーム画像を生成する。フレーム補間部702による複数の中間フレーム画像の生成動作の詳細は後述する。フレーム補間部702がフレーム補間により生成した複数の中間フレーム画像のデータは、合成部703に送られる。
【0028】
合成部703は、フレーム補間により生成された複数の中間フレーム画像を加算平均して動きブレ付与フレーム画像を生成する。動きブレ付与フレーム画像は、第3のフレーム画像の一例である。合成部703により生成された動きブレ付与フレーム画像のデータは、フレーム選択部704に送られる。
【0029】
フレーム選択部704は、通常速安定化動画データ705の動画の各フレーム画像のうち、露光時間が1/60秒の第1のフレーム画像のデータについてはそのまま選択して出力する。一方、フレーム選択部704は、通常速安定化動画データ705の動画の各フレームのうち、露光時間が1/500秒の第2のフレーム画像については、合成部703で生成された動きブレ付与フレーム画像のデータを選択して出力する。このフレーム選択部704の出力データ706が、図3で説明した通常速安定化動画データ309となる。
【0030】
図8(a)〜図8(d)は、図7に示した動きブレ付与部304の動作の説明に用いる図である。
図8(a)は、図7の通常速安定化動画データ705の現フレーム(フレーム番号n)のフレーム画像801と、現フレームに対して1フレーム分の時間だけ前のフレーム(フレーム番号n−1)のフレーム画像802の例を示している。また、フレーム画像801は露光時間が1/500秒の第2のフレーム画像であり、フレーム画像802は露光時間が1/60秒の第1のフレーム画像であるとする。フレーム画像801内の実線で示された画像803は、現フレームにおける被写体像であるとする。同様に、フレーム画像802内の実線で示された画像804は前フレームにおける被写体像であるとする。また、前フレームの被写体像(画像804)を現フレームのフレーム画像801内に描いた場合、その画像804の位置は、図中点線で示される位置になるとする。なお、図8(a)の例の場合、被写体は例えば図の右から左に水平方向に移動しており、したがって、現フレームの被写体像803は、前フレームの被写体像804に対して左に例えば8画素分だけ水平方向にずれた位置にあるとする。
【0031】
図7の動きベクトルマップ生成部701は、現フレームと前フレームの画像間で、フレーム内の局所領域毎に絵柄をマッチングさせ、それら画像間の画素毎の動きベクトル(変動量)を検出して、現フレームの動きベクトルマップを生成する。ここで、本実施形態の場合、動きベクトルマップ生成部701は、現フレームの動きベクトルマップを、例えば符号なしの8ビットのRGB画像形式のデータとして出力する。具体的には、動きベクトルマップ生成部701は、R画像が動きベクトルのX成分を表し、G画像が動きベクトルのY成分を表し、B画像が未使用となされた、動きベクトルマップを生成する。この動きベクトルマップにおいて、例えば、R画像の画素値の"128"はX成分の動きなしを表し、画素値の"127"以下は負のX成分、画素値の"129"以上は正のX成分を表しているとする。同様に、G画像の画素値の"128"はY成分の動きなし、画素値の"127"以下は負のY成分、画素値の"129"以上は正のY成分を表しているとする。
【0032】
図8(b)は、図7の動きベクトルマップ生成部701の出力例を示しており、図8(a)に示した現フレームのフレーム画像801における動きベクトルマップの例を表している。ここで、図8(a)で説明したように、現フレームの被写体像803は、前フレームの被写体像804に対して左に8画素分だけ水平方向にずれるように移動した像となっている。このため、現フレームのフレーム画像801内の被写体像803の動きベクトルは、水平方向であるX成分が"8"で垂直方向のY成分が"0"の、ベクトル(8,0)となる。したがって、図8(a)のフレーム画像801の場合の動きベクトルマップは、図8(b)に示すように、被写体像803においては、R画像805の画素値が"136"(=128+8)、G画像806の画素値が"128"(=128+0)となる。なお、被写体像803を除く背景領域の動きベクトルはX成分が"0"でY成分が"0"のベクトル(0,0)であるとする。この背景領域においては、R画像805の画素値が"128"(=128+0)、G画像806の画素値が"128"(=128+0)となる。B画像807は未使用となされているが、本実施形態では、B画像807の画像全面にわたって画素値が"128"に設定されているとする。
【0033】
図8(c)は、図7のフレーム補間部702の出力例を示している。本実施形態では、露光時間が1/500秒の第2のフレーム画像に対して動きブレを付与するようになされているため、現フレーム画像が第2のフレーム画像である場合、この現フレームに対してフレーム補間処理が行われることになる。また、1/500秒の露光時間の8倍は8/500=1/62.5秒≒1/60秒となり、本実施形態では、この8/500≒1/60秒を、フレーム補間処理の際の目標の露光時間とする。そして、フレーム補間部702は、図8(c)に示すように、前フレームが撮像された時から現フレームが撮像された時までの間の時間を、目標の露光時間に応じて時間分割する。さらに、フレーム補間部702は、各分割時間に各々対応した各中間フレーム画像を、前述した動きベクトルマップの動きベクトルに応じた補間処理により生成する。図8(c)は、各分割時間に対応した各中間フレーム画像として、フレーム画像808からフレーム画像814までの7フレームの画像例を示している。なお、フレーム画像808からフレーム画像814は、フレーム画像808が現フレーム画像801に最も時間的に近い画像で、以下、フレーム画像809,810,・・・,814の順に前フレーム画像802に近くなっているとする。8個目のフレーム画像は現フレーム画像801となる。ここで、フレーム補間部702は、動きベクトルマップ(R画像805、G画像806、B画像807)を参照することで、被写体像803に対して右に8画素ずれた位置に被写体像804がいることが分かっている。したがって、フレーム補間部702は、被写体像803を水平方向の右に1画素(=8画素/8等分)ずつずらすようにして補間処理を行い、各中間フレーム画像808〜814におけるそれぞれの被写体像815〜821を生成する。フレーム補間部702からは、この図8(c)に示したような各中間フレーム画像808〜814のデータが出力されて、図7の合成部703に送られる。
【0034】
図7の合成部703は、図8(d)に示すように、それら中間フレーム画像808〜フレーム画像814の7フレーム画像に、現フレーム画像801を合わせた8フレームの画像を合成することにより、動きブレ付与フレーム画像822を生成する。
【0035】
図7の動きブレ付与部304は、前述のような処理を行うことにより、60フレームに1回だけ挿入されている1/500秒のフレームに対し、1/60秒相当の動きブレを付与することが可能となる。これにより、通常速安定化動画は、1/500秒の第2のフレーム画像と、それ以外の1/60秒の第1のフレーム画像との間の動きブレの違いによる違和感が解消された動画となる。
【0036】
以下、図9(a)〜図9(d)、図10図11を用いて、図3のカメラ軌跡推定部305とカメラ軌跡補正部306とレンダリング部307からなる構成によるN倍速安定化動画の生成動作について説明する。
【0037】
カメラ軌跡推定部305は、前述した図4で説明したのと同様に、時間軸上で隣接した現フレーム(フレーム番号n)と次フレーム(フレーム番号n+1)の絵柄をマッチングさせてフレーム画像間の画像変動量ax(画像の動き量)を検出する。
【0038】
図9(a)は、カメラ軌跡推定部305がフレーム毎に検出した画像変動量axを、フレーム番号順に時系列に並べた図である。図9(a)のフレーム毎の画像変動量axは、図5(a)の例と同様に、それぞれ1本の矢印で表現されているが、この1本の矢印で水平及び垂直の2成分の画像変動量を表現するものとする。カメラ軌跡推定部305は、図9(a)に示した各フレームの画像変動量axを時間方向に累積して、図9(b)に示すような累積画像変動量pを求める。この累積画像変動量pは、前述の図5(b)と同様に各フレームの画像撮影が行われたときのカメラの撮影軌跡に相当する。
【0039】
ここで、カメラ軌跡推定部305は、図9(b)に示した累積画像変動量pから、図9(c)に示すような長時間にわたる累積画像変動量Lpを求める。なお、図9(c)の累積画像変動量Lpは、長時間にわたって図9(b)の累積画像変動量pを求めた結果を表しているものである。図9(c)では、60フレームに1回挿入される1/500秒の露光時間による第2のフレームが図中黒丸で示され、1/60秒の露光時間の各第1のフレームが図中実線で示されている。カメラ軌跡推定部305は、この図9(c)に示したような累積画像変動量Lpの情報を、カメラ軌跡補正部306に出力する。
【0040】
カメラ軌跡補正部306は、図9(c)に示した累積画像変動量Lpに対し、露光時間が1/500秒の第2のフレーム毎の変化が滑らかになるように安定化フィルタ処理を施して、図9(d)に示すような補正カメラ軌跡LPを生成する。カメラ軌跡補正部306により生成された補正カメラ軌跡LPの情報は、レンダリング部307に送られる。
【0041】
レンダリング部307は、入力動画データ308から、補正カメラ軌跡LPに対応したN倍速安定化動画を再構成するようなレンダリング処理を行う。すなわち、レンダリング部307は、入力動画データ308の中で露光時間が1/500秒の第2のフレーム毎に、図9(d)の補正カメラ軌跡LPに応じた画角領域の画像を読み出してN倍速安定化動画のフレーム画像とするレンダリング処理を行う。ここで、例えば図10に示すように、フレーム番号n、フレーム番号n+60、フレーム番号n+120、・・・が、それぞれ1/500秒の露光時間の第2のフレームであるとする。この例の場合、レンダリング部307は、フレーム番号nのフレーム画像1001から、そのフレーム番号nの補正カメラ軌跡LPに応じた図中点線で示す画角領域の画像1002を読み出す。そして、レンダリング部307は、この読み出された画像1002を、N倍速安定化動画のフレーム番号nのフレーム画像1003とする。同様に、レンダリング部307は、フレーム番号n+60のフレーム画像1061から、そのフレーム番号n+60の補正カメラ軌跡LPに応じた図中点線で示す画角領域の画像1062を読み出す。この読み出された画像1062が、N倍速安定化動画のフレーム画像613(フレーム番号n+60)となされる。フレーム番号n+120のフレーム画像1121についても同様に、補正カメラ軌跡LPに応じた画角領域の画像1122が読み出されて、それがN倍速安定化動画のフレーム画像1123(フレーム番号n+120)となされる。以下、図示しないフレーム番号n+180以降の各フレーム画像についても同様の処理を行うことにより、N倍速安定化動画データが生成される。
【0042】
このように、N倍速安定化動画を生成する際には、露光時間が1/500秒の第2のフレーム画像のみが用いられる。露光時間が1/500秒のように高速シャッタースピードで撮像された第2のフレーム画像は、画像のブレが少ない。このため、それら1/500秒の露光時間のフレームのみから形成されるN倍速安定化動画は、画像のブレが少なく、動画のブレの不快感が非常に少ない動画となる。
【0043】
前述の実施形態では、60フレーム毎に1回挿入される第2のフレーム画像の第2の露光時間が1/500秒の画像となされているが、例えば、図1の光学系104のレンズの焦点距離fに応じて、第2のフレーム画像の第2の露光時間が制御されてもよい。
【0044】
図11は、所定周期毎(60フレーム毎)に1回挿入される第2のフレーム画像における第2の露光時間Tvと、光学系104のレンズの焦点距離fとの関係を説明するための図である。この図11に示すように、制御部101は、焦点距離fが長い場合には、第2のフレーム画像の露光時間Tvを短くし、焦点距離fが短くなるにつれて、第2のフレーム画像の露光時間Tvを長くするように、撮像部105を制御する。なお、焦点距離fに応じて第2の露光時間Tvを変更する場合、その第2の露光時間Tvの長さは、第1の露光時間を長さの上限とし、第1の露光時間より長くしないように制御される。
【0045】
ここで、例えばレンズの焦点距離fが短い場合には、第2のフレーム画像の露光時間Tvを長くしても、そのときの第2のフレーム画像に生ずるブレの量は少ないので、前述のようにして生成されるN倍速安定化動画のブレの不快感が増大することはない。一方で、第2のフレームの露光時間Tvを長くした場合、通常速安定化動画の生成の際に付与される動きブレ付与フレームの数(補間フレームの数)を抑えることができる。例えば、第2の露光時間Tvが1/500秒の場合には前述したように7(=500/60−1)フレームの補間フレームが必要になるが、第2の露光時間Tvが1/125秒の場合には補間フレーム数は1(=125/60−1)フレームに抑えることができる。そして、生成する補間フレーム数が少なくなれば、補間フレームを生成する際の動きブレ付与部304の消費電力を抑えることが可能となる。このように、図1の光学系104のレンズの焦点距離fに応じて、第2のフレーム画像の露光時間Tvを制御することにより、N倍速安定化動画のブレの不快感の低減や、通常速安定化動画生成の際の消費電力の低減が可能となる。
【0046】
<第2の実施形態>
図12は、第2の実施形態のデジタルカメラ1200の概略的な機能構成を示す図である。図12において、制御部101〜記録媒体108は前述の図1と同様のものであるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0047】
第2の実施形態のデジタルカメラ1200において、光学系1201は、レンズや絞り、シャッター等を有して構成されており、第2の実施形態の場合にはレンズは単焦点レンズであるとする。また、第2の実施形態の場合、画像変動量検出部1202が、前述の図4で説明したのと同様にして、時間軸上で隣接したフレーム間の絵柄のマッチング処理により、被写体像等の動き量を検出して画像変動量を求める。
【0048】
図13は、第2の実施形態のデジタルカメラ1200における露光時間制御の説明に用いる図であり、前述の図2の例と同様に動画のフレーム番号1〜121までの各フレームにおける露光時間を表している。また、図13の例でも前述の図2と同様に、各フレームの露光時間は、撮像センサの光電変換素子の電荷がリセットされる行リセットタイミング201から、蓄積された電荷が読み出される行読み出しタイミング202までの期間である。撮像部105から出力される動画のフレームレートは60fps(フレーム/秒)であるとする。
【0049】
ここで、第2の実施形態の場合、第2のフレーム画像における第2の露光時間Tvは、その第2のフレーム画像の直前の第1のフレーム画像について画像変動量検出部1202が検出した被写体像等の動き量、つまり画像変動量の大きさMvに応じて制御される。
【0050】
図14は、第2のフレーム画像における第2の露光時間Tvと、その直前の第1のフレーム画像で検出された画像変動量の大きさMvとの関係を説明するための図である。この図14に示すように、制御部101は、直前の第1のフレーム画像から検出された画像変動量の大きさMvが大きい場合には、第2のフレーム画像における第2の露光時間を短くするように、撮像部105を制御する。一方、制御部101は、直前の第1のフレームの画像変動量の大きさMvが小さくなるにつれて、第2のフレーム画像における第2の露光時間Tvを長くするように、撮像部105を制御する。なお、第2の露光時間Tvを変更する場合、その第2の露光時間Tvの長さは、第1の露光時間を長さの上限とし、第1の露光時間より長くしないように制御される。このように、第2の実施形態では、直前の第1のフレーム画像の画像変動量の大きさMvが大きい場合は、第2のフレーム画像の第2の露光時間Tvを短くすることで、フレーム画像のブレを小さくする。一方、直前の第1のフレーム画像の画像変動量の大きさMvが小さい場合には、第2のフレーム画像の第2の露光時間Tvは長くなるが、このときの画像変動量は小さいので、そのフレーム画像のブレは小さい。
【0051】
また、第2の実施形態において、制御部101は、第2のフレーム画像が挿入される所定周期を制御するようにしてもよい。具体的には、制御部101は、第2のフレーム画像の第2の露光時間Tvを、図15に示すように1/500秒と1/60秒の2種類を切り替えることにより、第2のフレーム画像が挿入される所定周期を制御する。例えば、直前の第1のフレーム画像の画像変動量の大きさMvが例えば閾値以下になる場合には、そのフレームの次のフレーム(第2のフレーム)に対する露光時間を、第1の露光時間と同じ1/60秒の露光時間Tvを用いるようにする。図15の例の場合、画像変動量の大きさMvが、閾値の一例として設定されている12画素分以下(Mv≧12画素)になった場合、次のフレームの露光時間が1/60秒の露光時間Tvになされる。この場合、実質的に第2のフレーム画像の挿入が1回分キャンセルされることになるため、第2のフレーム画像の挿入間隔、つまり所定周期が伸ばされたことになる。すなわち、直前の第1のフレーム画像の画像変動量の大きさMvが小さい場合は、第2のフレーム画像の挿入時間間隔(所定周期)を伸ばすような制御が行われることになる。直前の第1のフレーム画像の画像変動量の大きさMvが小さい場合には、次のフレーム画像の画像変動量も小さい可能性が高く、露光時間Tvを長くしたとしても、そのフレーム画像のブレは目立たない。このため、生成されるN倍速安定化動画のブレの不快感が増大することはない。また、直前の第1のフレーム画像の画像変動量の大きさMvが大きい場合だけ、第2のフレームの第2の露光時間Tvが短く制御されるので、通常速安定化動画生成の際には、動きブレ付与で生成する補間フレーム数を低減でき、消費電力の低減が可能となる。
【0052】
第2の実施形態では、画像変動量の大きさMvに応じて、第2の露光時間Tvの制御、第2のフレーム画像が挿入される所定周期の制御をそれぞれ行う例を挙げたが、これらは組み合わされて両方が行われてもよい。また、第2の実施形態において、前述の第1の実施形態で説明した焦点距離fに応じた第2の露光時間の制御を組み合わせることも可能である。
【0053】
<その他の実施形態>
前述の第1、第2の実施形態では、60フレーム毎に1回、1/500秒のような露光時間が短い第2のフレーム画像を挿入し、その挿入された第2のフレーム画像を用いてN倍速安定化動画を生成する例を挙げた。このため、前述したN倍速は60倍速となるが、例えば3フレーム毎に1回、第2のフレーム画像を挿入するようにした場合には、その3フレームに1回の第2のフレーム画像を用いて3倍速安定化動画を生成することができる。また、3フレームに1回の各第2のフレーム画像のうち、例えば一つおきの第2のフレーム画像を用いるようにすれば6倍速安定化動画を生成でき、例えば二つおきの第2のフレーム画像を用いるようにすれば9倍速安定化動画を生成できる。このように、Nフレームに1回、第2のフレーム画像を挿入した場合、Nの倍数の倍速安定化動画を生成することができる。なお、Nフレームに1回、第2のフレーム画像を挿入する際の「N」の値については、例えばユーザが任意に設定することも可能である。
【0054】
また、前述の実施形態では、デジタルカメラ100の画像処理部107が通常速安定化動画やN倍速安定化動画のような第2の動画を生成している例を挙げたが、第2の動画は外部の画像処理装置により生成されてもよい。この場合、デジタルカメラ100は、第1のフレーム画像と第2のフレーム画像により構成される第1の動画を出力する。そして、外部の画像処理装置は、前述の画像処理部107と同様の処理により、第1の動画から撮影軌跡を推定してその変動を補正して第2の動画を生成する。
【0055】
また、前述の第1、第2の実施形態では、ハードウェア構成を例示したが、前述の図1の画像処理部107、図12の画像処理部107や画像変動量検出部1202等の機能を、例えばCPUがプログラムの実行により実現することも可能である。本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、上述の実施形態の各機能は回路(例えばASIC)とプログラムとの協働により実現することも可能である。
【0056】
上述の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
100,1200:デジタルカメラ、101:制御部、102:ROM、103:RAM、104,1201:光学系、105:撮像部、106:A/D変換部、107:画像処理部、108:記録媒体、1202:画像変動量検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15