特許第6797576号(P6797576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797576
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電動ベッド
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/005 20060101AFI20201130BHJP
   A61G 7/015 20060101ALI20201130BHJP
   A47C 20/08 20060101ALI20201130BHJP
   A47C 20/04 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A61G7/005
   A61G7/015
   A47C20/08 Z
   A47C20/04 Z
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-129011(P2016-129011)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-18591(P2017-18591A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-137267(P2015-137267)
(32)【優先日】2015年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】大野 渉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拡昭
(72)【発明者】
【氏名】下村 晃生
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−207541(JP,A)
【文献】 特開2012−085738(JP,A)
【文献】 特開2004−159807(JP,A)
【文献】 特開2000−060907(JP,A)
【文献】 特開2002−200122(JP,A)
【文献】 特表2003−524483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/00− 7/16
A47C 20/00−20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の複数箇所に設置された複数個の動作機構と、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストンが前記動作機構に連結された複数個のアクチュエータと、
を有し、
前記複数個のアクチュエータの凸部を、前記ベッドフレーム下側の中央部で、前記ベッドフレームの幅方向に沿った方向でかつ略同一方向に向けて配置することを特徴とする電動ベッド。
【請求項2】
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッドの長手方向の一端部側に設置された第1の動作機構に連結された第1アクチュエータと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッドの長手方向の他端部側に設置された第2の動作機構に連結された第2アクチュエータと
を有し、
前記第1アクチュエータの凸部及び前記第2アクチュエータの凸部を、前記ベッドフレーム下側の中央部で、前記ベッドフレームの幅方向に沿った方向でかつ略同一方向に配置することを特徴とする電動ベッド。
【請求項3】
台車フレームと、
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置された昇降アクチュエータ受けと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッド長手方向の一方の端部側を向いて配置された第1昇降アクチュエータと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部が前記ベッド長手方向の他方の端部側を向いて配置された第2昇降アクチュエータと、
ベッド長手方向の前記一方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第1昇降アクチュエータにより駆動される第1リンクと、
ベッド長手方向の前記他方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第2昇降アクチュエータにより駆動される第2リンクと、
を有し、
前記第1昇降アクチュエータの凸部及び前記第2昇降アクチュエータの凸部を、前記ベッドフレーム下側の中央部で、前記ベッドフレームの幅方向に沿った方向でかつ略同一方向に配置することを特徴とする昇降・傾斜機能付き電動ベッド。
【請求項4】
前記第2昇降アクチュエータは、前記第1昇降アクチュエータに対してベッド前後方向に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の昇降・傾斜機能付き電動ベッド。
【請求項5】
前記台車フレームの前記一方の端部側に固定された第1リンク受けと、
前記台車フレームの前記他方の端部側に固定された第2リンク受けと、
前記ベッドフレームの前記一方の端部側に固定された第3リンク受けと、
前記ベッドフレームの前記他方の端部側に固定された第4リンク受けと、
前記第1リンク受け及び前記第3リンク受けに、回動可能に連結され、前記第1昇降アクチュエータにより回転駆動される第1リンク部材と、
前記第2リンク受けに一端部が揺動可能に連結された揺動リンク部材と、
前記揺動リンク部材の他端部及び前記第4リンク受けに、回動可能に連結され、前記第2昇降アクチュエータにより回転駆動される第2リンク部材と、
を有し、
前記第1リンクは、前記第1リンク受け、前記第3リンク受け、及び前記第1リンク部材により構成され、
前記第2リンクは、前記第2リンク受け、前記第4リンク受け、前記第2リンク部材、及び前記揺動リンク部材により構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の昇降・傾斜機能付き電動ベッド。
【請求項6】
前記第1リンク部材は、前記第1リンク受けとの回動支点と、前記第3リンク受けとの回動支点との間の中間部に、前記第1昇降アクチュエータとの回動支点が配置されており、前記第2リンク部材は、前記揺動リンク部材との回動支点と、前記第4リンク受けとの回動支点との間の中間部に、前記第2昇降アクチュエータとの回動支点が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の昇降・傾斜機能付き電動ベッド。
【請求項7】
前記第1昇降アクチュエータ及び前記第2昇降アクチュエータは、ベッドの幅方向の中央に配置されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の昇降・傾斜機能付き電動ベッド。
【請求項8】
少なくとも背ボトム、腰ボトム、膝ボトム及び脚ボトムを含む複数個のボトムが長手方向に並置されて支持されたベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッド長手方向の頭部側を向いて配置された第1アクチュエータと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部が前記ベッド長手方向の足部側を向いて配置された第2アクチュエータと、
を有し、
前記第1アクチュエータにより、前記背ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動し、前記第2アクチュエータにより、前記膝ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動することを特徴とする背上げ・膝上げ機能付き電動ベッド。
【請求項9】
前記膝ボトムと前記脚ボトムとは、回動可能に連結されており、前記脚ボトムは、前記第2アクチュエータによる前記膝ボトムの揺動により連動して上下動することを特徴とする請求項8に記載の背上げ・膝上げ機能付き電動ベッド。
【請求項10】
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の複数箇所に設置された複数個の動作機構と、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、その作動部が前記動作機構に連結された複数個のアクチュエータと、
を有し、
前記複数個のアクチュエータの凸部を、前記ベッドフレーム下側の中央部で、前記ベッドフレームの幅方向に沿った方向でかつ略同一方向に向けて配置することを特徴とする電動ベッド。
【請求項11】
少なくとも背ボトム、腰ボトム、膝ボトム及び脚ボトムを含む複数個のボトムが長手方向に並置されて支持されたベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、その作動部の先端部がベッド長手方向の頭部側を向いて配置された第1アクチュエータと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、その作動部の先端部が前記ベッド長手方向の足部側を向いて配置された第2アクチュエータと、
を有し、
前記第1アクチュエータにより、前記背ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動し、前記第2アクチュエータにより、前記膝ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動することを特徴とする背上げ・膝上げ機能付き電動ベッド。
【請求項12】
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置された昇降アクチュエータ受けと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、他端部がベッド長手方向の一方の端部側を向いて配置された第1昇降アクチュエータと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、他端部が前記ベッド長手方向の他方の端部側を向いて配置された第2昇降アクチュエータと、
ベッド長手方向の前記一方の端部側に配置されて台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第1昇降アクチュエータにより駆動される第1リンクと、
ベッド長手方向の前記他方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第2昇降アクチュエータにより駆動される第2リンクと、
を有し、
前記ベッドフレームを頭部側が足部側よりも高い位置になるように変移させるときは、前記第2アクチュエータにより前記膝ボトム及び前記脚ボトムを膝上げするように変移させた後に、前記第1昇降アクチュエータおよび前記第2昇降アクチュエータにより前記ベッドフレームの頭部側が足部側よりも高い位置になるように変移させ、
前記ベッドフレームを頭部側が足部側よりも低い位置になるように変移させるときは、前記第1アクチュエータにより前記背ボトムを背上げするように変移させた後に、前記第1昇降アクチュエータおよび前記第2昇降アクチュエータにより前記ベッドフレームの頭側が足部側よりも低い位置になるように変移させることを特徴とする請求項11に記載の背上げ・膝上げ機能付き電動ベッド。
【請求項13】
ベッドのボトムを揺動可能に動作させる他のアクチュエータを更に備え、
前記他のアクチュエータの凸部は、前記複数個のアクチュエータの凸部と対向する方向に配置することを特徴とする請求項1に記載の電動ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平状態と、傾斜状態との双方をとることができる傾斜機能を有し、更に昇降機能も有する傾斜機能付き昇降ベッド、背ボトム及び膝ボトムの上昇下降機能を有する背上げ・膝上げ機能付きベッド等の電動ベッドに関する。本発明において、昇降ベッドというときは、昇降椅子も含む概念である。
【背景技術】
【0002】
治療用ベッドにおいては、医師の診察・治療及び看護師の看護のために、ベッド全体が、水平状態で昇降することができるようになっている。また、背ボトムを上昇させたり、下降させて,背ボトムの傾斜角度を変化させることができ、これにより、ベッド上の使用者がリラックス体勢をとることができるようにしたものがある(特許文献1,2)。特に,特許文献1に記載された多機能ベッドにおいては、背ボトム及び膝ボトムの上昇及び下降の動作の他に、ベッド全体も傾斜させることができるようになっている。このベッド全体の傾動は、ベッドの足部側の位置に、アームを揺動可能に連結し、アームの他端は、床面に沿って移動可能に支持し、このアームの途中にシリンダのピストンを連結して、ピストンを進出退避移動させることにより、アームを傾動させ、これにより、ベッドの足部側を持ち上げたり、下げたりすることによって、ベッドを傾斜させるものである。
【0003】
一方、身体トレーニング用に、ベッド全体を傾斜させることができるようにした傾斜ベッド装置も開示されている(特許文献3)。この傾斜ベッド装置においては、ベッド長手方向に延びるボールネジ軸を設け、このネジ軸に螺合するボールナットの位置を、ボールネジ軸をモータ駆動により回転させて、調節する。そして、床面に揺動可能に軸支された傾動軸の先端をベッドの足部に回動可能に連結し、この傾動軸の途中にボールナットを取り付け、この傾斜角度をボールナットの位置により調節することにより、ベッドの傾動角度を調節するものである。
【0004】
また、頭部が下方になるようにベッド全体を傾斜させ、ベッドの傾斜角度に伴って脳に供給される血液の量が変化し、これにより変化する脳波に関し、アルファ波が最大となるようにベッドの傾斜角度を保持することを目的として、傾斜角度の調節が可能なベッド装置が提案されている(特許文献4)。この傾斜調節可能なベッド装置においては、床にシリンダを揺動可能に設置し、ベッドの足部側の位置に前記シリンダのピストンの先端を揺動可能に連結し、更に、ベッドの頭部側の位置を固定揺動軸により揺動可能に支持することにより、前記シリンダのピストンを進出させることによって、ベッドの足部側を持ち上げて、足部側が上になるようにベッドを傾斜させるものである。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1、3、4に開示された従来の傾斜可能なベッド装置においては、ベッド全体の傾斜が可能であるが、ベッドの昇降はできない。また、特許文献2に開示された従来のベッド装置においては、背ボトムの上方及び下降は可能であるが、ベッド全体の傾斜及びベッドの昇降はできないという問題点がある。
【0006】
特に、透析・化学療法向けチェア及びICUベッドは、背部及び脚部が水平に固定された臀部に対して、揺動可能になっており、背部及び脚部が臀部に対して一平面になるように位置した場合に、通常のベッドと同様に使用者が仰向けに寝ることができるようになり、背部が起き上がり、脚部が下降した場合に、通常の椅子と同様に使用者が座することができるようになっている。この座状態で、透析又は化学療法が行われるが、この治療の途中で、患者が貧血等の理由により容体が急変した場合、チェアを一平面状態にすると共に、足部側を上げ、頭部側を下げることにより、血液を頭部側に集中させて、容体の回復を促すことができる。このように、頭部側を下げる傾斜状態を、トレンデレンバーグという。
また、これと反対に、頭部側を上げ、脚部側を下げる傾斜状態をリバーストレンデレンバーグという。このリバーストレンデレンバーグにおいては、例えば、逆流性食道炎の治療に有効である。
【0007】
そこで、従来、図11乃至図14に示す傾斜機能付き昇降ベッドが開発されている。図11はその下面図、図12乃至図14は正面図である。このベッドにおいては、台車フレーム1が、その4隅部で、キャスタ2により支持されている。この台車フレーム1上には、ベッドフレーム3がリンク機構5を介して支持されている。ベッドフレーム3には、背ボトム4a、腰ボトム4b、膝ボトム4c及び足ボトム(脚ボトム)4dが配置されており、腰ボトム4bは、ベッドフレーム3に固定されており、背ボトム4aは、その腰ボトム4b側の端部がベッドフレーム3に対して回動可能に支持されており、膝ボトム4cは、その腰ボトム4b側の端部がベッドフレーム3に対して回動可能に支持されている。また、足ボトム4dは、その膝ボトム4c側の端部が足ボトムに連結されていて、膝ボトム4cと連動して動作する。
【0008】
リンク機構5においては、台車側昇降リンク受け11が台車フレーム1に固定されており、頭側昇降リンク受け23がベッドフレーム3に固定されている。そして、図示で逆「く」字形状をもつ頭側昇降リンク13の一方の端部が、台車側昇降リンク受け11に回動可能に連結されており、頭側昇降リンク13の逆「く」字形状の屈曲部が、頭側昇降リンク受け23に回動可能に連結されている。また、ベッドフレーム3に頭側昇降アクチュエータ受け12が固定されており、この頭側昇降アクチュエータ受け12に頭側昇降アクチュエータ21の基端部が揺動可能に連結されている。この頭側昇降アクチュエータ21のピストンは、足側昇降リンク17の他方の端部に回動可能に連結されている。そして、足側においては、台車フレーム1に、揺動リンク受け14が固定されており、この揺動リンク受け14に揺動リンク15の一方の端部が回動可能に連結されている。また、ベッドフレーム3には、足側昇降リンク受け24が固定されている。そして、図示で「く」字形状をもつ足側昇降リンク17の一方の端部が、揺動リンク15の他方の端部に回動可能に連結されており、足側昇降リンク17の「く」字形状の屈曲部が、足側昇降リンク受け24に回動可能に連結されている。また、ベッドフレーム3には、足側昇降アクチュエータ受け16が固定されており、足側昇降アクチュエータ受け16には、足側昇降アクチュエータ22の基端部が揺動可能に連結されている。足側昇降アクチュエータ22のピストンは、頭側昇降リンク13の他方の端部に回動可能に連結されている。頭側昇降アクチュエータ21は正逆回転してそのピストンが進出退避移動し、足側昇降アクチュエータ22は正逆回転してそのピストンが進出退避移動する。これにより、頭側昇降アクチュエータ21は、足側昇降リンク17を回動駆動し、足側昇降アクチュエータ22は、頭側昇降リンク13を回動駆動する。
【0009】
頭側昇降リンク13及び足側昇降リンク17は、一定の角度で屈曲しており、夫々、足側昇降アクチュエータ22及び頭側昇降アクチュエータ21により回転駆動されて、ベッドフレーム3が昇降し、更に傾斜する。図12に示すように、ベッドフレーム3が低床位置にある状態から、図13に示すように、足側昇降アクチュエータ22のピストンを進出させ、同時に頭側昇降アクチュエータ21のピストンを進出させて、頭側昇降リンク13と足側昇降リンク17を、その上端部が相互に広がるように回動させると、頭側昇降リンク13と足側昇降リンク17が起き上がり、頭側昇降リンク13と足側昇降リンク17の各中間部(屈曲部)に連結された頭側昇降リンク受け23及び足側昇降リンク受け22が持ち上がり、これらの頭側昇降リンク受け23及び足側昇降リンク受け22が固定されたベッドフレーム3が上昇する。このようにして、ベッドの寝床部を上昇させることができる。
【0010】
一方、図12に示す低床状態から、図14に示すように、足側昇降アクチュエータ22のピストンは進出させるが、頭側昇降アクチュエータ21のピストンはそのままである(進出させない)と、足側昇降リンク17は横になったままであり、頭側昇降リンク13のみが起き上がるので、ベッドフレーム3は、足側が低く、頭側が高くなる傾斜した状態になる。このようにして、ベッドを傾斜した状態にすることができる。
【0011】
これにより、ベッドフレーム3、ひいては、背ボトム4a、腰ボトム4b、膝ボトム4c及び足ボトム4dは、水平に並んで患者が仰向けに寝ることができる状態と、足側又は頭側を上げ、他方を下げるようにして、背ボトム4a、腰ボトム4b、膝ボトム4c及び足ボトム4dを、同一平面上に位置させつつ、頭側又は足側を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−24056号公報
【特許文献2】特開2010−227393号公報
【特許文献3】特開平5−220236号公報
【特許文献4】特表2006−503637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の特許文献1乃至4に開示された従来技術は、傾斜ベッドにはなるが、昇降機構を有しないものであり、治療、安眠及び看護のために、ベッドを昇降及び傾斜させるという機能を果たすことができず、多機能ベッドとしては、その機能が不足するものであった。
【0014】
また、図11乃至図14に示す傾斜機能付きの昇降ベッドにおいては、この昇降及び傾斜動作のために、多数のアクチュエータ及びリンクを設置する必要があり、昇降及び傾斜のための駆動機構が大型化し、構造が複雑化するという欠点がある。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、水平状態と傾斜状態の双方の態様を、小型及び簡素な駆動機構によりとることができ、軽量な傾斜機能付き昇降ベッド及び小型軽量化された電動ベッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る第1の電動ベッドは、
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の複数箇所に設置された複数個の動作機構と、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストンが前記動作機構に連結された複数個のアクチュエータと、
を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る第2の電動ベッドは、
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッドの長手方向の一端部側に設置された第1の動作機構に連結された第1アクチュエータと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッドの長手方向の他端部側に設置された第2の動作機構に連結された第2アクチュエータと、
を有することを特徴とする。
【0018】
なお、これらの第1及び第2の電動ベッドにおいて、アクチュエータが設置されるベッドフレームの長手方向の中間部とは、ベッドフレームの長手方向の一端部と他端部との間の位置を意味する。
【0019】
本発明に係る第3の電動ベッドは、
台車フレームと、
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置された昇降アクチュエータ受けと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッド長手方向の一方の端部側を向いて配置された第1昇降アクチュエータと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部が前記ベッド長手方向の他方の端部側を向いて配置された第2昇降アクチュエータと、
ベッド長手方向の前記一方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第1昇降アクチュエータにより駆動される第1リンクと、
ベッド長手方向の前記他方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第2昇降アクチュエータにより駆動される第2リンクと、
を有することを特徴とする昇降・傾斜機能付き電動ベッドである。
【0020】
この電動ベッドにおいて、例えば、
前記第2昇降アクチュエータは、前記第1昇降アクチュエータに対してベッド前後方向に並ぶように配置されている。
【0021】
前記第3の電動ベッドは、例えば、更に
前記台車フレームの前記一方の端部側に固定された第1リンク受けと、
前記台車フレームの前記他方の端部側に固定された第2リンク受けと、
前記ベッドフレームの前記一方の端部側に固定された第3リンク受けと、
前記ベッドフレームの前記他方の端部側に固定された第4リンク受けと、
前記第1リンク受け及び前記第3リンク受けに、回動可能に連結され、前記第1昇降アクチュエータにより回転駆動される第1リンク部材と、
前記第2リンク受けに一端部が揺動可能に連結された揺動リンク部材と、
前記揺動リンクの他端部及び前記第4リンク受けに、回動可能に連結され、前記第2昇降アクチュエータにより回転駆動される第2リンク部材と、
を有し、
前記第1リンクは、前記第1リンク受け、前記第3リンク受け、及び前記第1リンク部材により構成され、
前記第2リンクは、前記第2リンク受け、前記第4リンク受け、前記第2リンク部材、及び前記搖動リンク部材により構成されていることを特徴とする。
【0022】
更に、上記電動ベッドにおいて、
前記第1リンク部材は、前記第1リンク受けとの回動支点と、前記第3リンク受けとの回動支点との間の中間部に、前記第1昇降アクチュエータとの回動支点が配置されており、前記第2リンク部材は、前記揺動リンクとの回動支点と、前記第4リンク受けとの回動支点との間の中間部に、前記第2昇降アクチュエータとの回動支点が配置されているように構成することができる。
【0023】
また、上記本発明の第3の電動ベッドにおいて、例えば、
前記第1昇降アクチュエータ及び前記第2昇降アクチュエータは、ベッドの幅方向の中央に配置されている。
【0024】
本発明に係る第4の電動ベッドは、
少なくとも背ボトム、腰ボトム、膝ボトム及び脚ボトムを含む複数個のボトムが長手方向に並置されて支持されたベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部がベッド長手方向の頭部側を向いて配置された第1アクチュエータと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、そのピストン先端部が前記ベッド長手方向の足側を向いて配置された第2アクチュエータと、
を有し、
前記第1アクチュエータにより、前記背ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動し、前記第2アクチュエータにより、前記膝ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動することを特徴とする背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドである。
【0025】
この背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドにおいて、例えば、
前記膝ボトムと前記脚ボトムとは、回動可能に連結されており、前記脚ボトムは、前記第2アクチュエータによる前記膝ボトムの揺動により連動して上下動するように構成することができる。
【0026】
また、本発明に係る電動ベッドは、
寝台を支持するベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の複数箇所に設置された複数個の動作機構と、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、その作動部が前記動作機構に連結された複数個のアクチュエータと、
を有することを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る電動ベッドは、
少なくとも背ボトム、腰ボトム、膝ボトム及び脚ボトムを含む複数個のボトムが長手方向に並置されて支持されたベッドフレームと、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置されたアクチュエータ受けと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、その作動部の先端部がベッド長手方向の頭部側を向いて配置された第1アクチュエータと、
前記アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、その作動部の先端部が前記ベッド長手方向の足部側を向いて配置された第2アクチュエータと、
を有し、
前記第1アクチュエータにより、前記背ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動し、前記第2アクチュエータにより、前記膝ボトムが前記腰ボトム側の端部を揺動支点として揺動することを特徴とする背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドである。
【0028】
また、この背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドは、
前記ベッドフレームの長手方向の中間部に設置された昇降アクチュエータ受けと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、他端部がベッド長手方向の一方の端部側を向いて配置された第1昇降アクチュエータと、
前記昇降アクチュエータ受けにその基端部が揺動可能に支持され、他端部が前記ベッド長手方向の他方の端部側を向いて配置された第2昇降アクチュエータと、
ベッド長手方向の前記一方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第1昇降アクチュエータにより駆動される第1リンクと、
ベッド長手方向の前記他方の端部側に配置されて前記台車フレームと前記ベッドフレームとの間を連結し、前記第2昇降アクチュエータにより駆動される第2リンクと、
を有し、
前記ベッドフレームを頭部側が足部側よりも高い位置になるように変移させるときは、前記第2アクチュエータにより前記膝ボトム及び前記脚ボトムを膝上げするように変移させた後に、前記第1昇降アクチュエータおよび前記第2昇降アクチュエータにより前記ベッドフレームの頭部側が足部側よりも高い位置になるように変移させ、
前記ベッドフレームを頭部側が足部側よりも低い位置になるように変移させるときは、前記第1アクチュエータにより前記背ボトムを背上げするように変移させた後に、前記第1昇降アクチュエータおよび前記第2昇降アクチュエータにより前記ベッドフレームの頭側が足部側よりも低い位置になるように変移させることを特徴とする背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電動ベッドに設置される複数個のアクチュエータのうち、少なくとも一部の複数個のアクチュエータが1個のアクチュエータ受けで支持されているので、ベッドの小型軽量化が可能であり、構造の簡素化が可能である。
【0030】
また、第1昇降アクチュエータと、第2昇降アクチュエータとが、ベッド前後方向に並ぶように配置されている場合、アクチュエータに印加する応力が、相互に打ち消し合って、アクチュエータを支持する昇降アクチュエータ受け及びその設置機構に必要な所要強度を低くすることができる。また、頭側昇降アクチュエータ受けと、足側昇降アクチュエータ受けを、単一の部品に統合することができる。このようにして、本発明においては、小型軽量化が可能であり、構造の簡素化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係る傾斜機能付き昇降電動ベッドの正面図(最低床高時)である。
図2】同じく、本実施形態に係る傾斜機能付き昇降電動ベッドの正面図(最高床高時)である。
図3】同じく、本実施形態に係る傾斜機能付き昇降電動ベッドの正面図(傾斜時)である。
図4】同じく、その下面図である。
図5】同じく、その一部拡大下面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドを下方から見た図であって、ベッドフレームに垂直の方向に対し、ベッド幅方向の一方に若干傾斜した方向から見た下面図である。
図7】同じく、本発明の第2実施形態に係る背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドを下方から見た図であって、ベッドフレームに垂直の方向に対し、ベッド幅方向の他方に若干傾斜した方向から見た下面図である。
図8】同じく本発明の第2実施形態に係る背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドを示す正面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る電動ベッドを下方から示す斜視図である。
図10】同じくその変形例を示す斜視図である。
図11】従来の傾斜機能付き昇降ベッドを示す下面図である。
図12】同じく、その正面図である。
図13】同じく、その動作を示す正面図である。
図14】同じく、その動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1乃至図3は、本発明の実施形態を示す正面図,図4はその下面図、図5は同じくその一部を拡大して示す下面図である。図1は、ベッドが最低床高さ位置にあるとき、図2は、ベッドが最高床高さ位置にあるとき、図3は、ベッドが傾斜している状態を示す。図1乃至図3に示すように、台車フレーム30の4隅部にキャスタ31,32が垂直軸の周りに回転可能に配置されており、台車フレーム30はキャスタ31,32に支持されて、任意の方向に移動することができる。この台車フレーム30は、ストッパ33を踏み込むことにより、キャスタ31,32の回転を拘束し、その場に停止させることができる。
【0033】
ベッドフレーム40は、マットレス等の寝台を支持するもので、このベッドフレーム40には、頭側から足側にかけて、背ボトム41a、腰ボトム41b、膝ボトム41c、及び足ボトム41dが、この順に配置されている。腰ボトム41bは、ベッドフレーム40に、フレームにより構成される面と平行に固定されている。また、背ボトム41aは、その腰ボトム41b側の端部がベッドフレーム40に揺動可能に支持されており、膝ボトム41cは、その腰ボトム41b側の端部がベッドフレーム40に揺動可能に支持されている。そして、足ボトム41dは、その膝ボトム41c側の端部が膝ボトム41cに連結されていて、膝ボトム41cに連動して揺動する。ベッドフレーム40の頭側の端部には、ヘッドボード42が立設されており、足側の端部には、フットボード43が立設されている。
【0034】
台車フレーム30は、図4に示すように、1対のベッド長手方向に延びる側部部材30C,30Dと、この側部部材30C,30D間に架け渡された頭部側の短手部材30Aと、同じく側部部材30C,30D間に架け渡された足部側の短手部材30Bとを相互に固定して構成されている。また、ベッドフレーム40も、1対のベッド長手方向に延びる側部部材40C,40Dと、この側部部材40C,40D間に架け渡された頭部側の短手部材40Aと、同じく側部部材40C,40D間に架け渡された足部側の短手部材40Bとを相互に固定して構成されており、更に、側部部材40C,40D間には、ベッド長手方向の中央部近傍に、1対の短手部材40E,40Fが架け渡されて、固定されている。
【0035】
そして、台車フレーム30の短手部材30Aには、その中間に、リンク受け34が固定されており、その先端部には、回動軸35が設けられている。また、短手部材30Bには、その中央に、揺動リンク受け36が固定されており、この揺動リンク受け36の先端には回動軸37が設けられている。
【0036】
図1乃至図3において、逆「く」字形に屈曲したリンク61は、その屈曲部(中間部)の近傍の位置で、回動軸46に回動可能に連結されており、その下端の位置で、回動軸35に回動可能に連結されている。また、「く」字形に屈曲したリンク62は、その屈曲部(中間部)の近傍の位置で、回動軸47に回動可能に連結されており、その下端の位置で、回動軸64に回動可能に連結されている。
【0037】
そして、ベッドフレーム40の中央短手部材40Fには、その中央の位置に、アクチュエータ受け50が固定されている。また、このアクチュエータ受け50には、頭側昇降アクチュエータ51と、足側昇降アクチュエータ52とが、それらの基端部を背中合わせにして、若干揺動可能に支持されている。そして、頭側昇降アクチュエータ51のピストン53の先端部は、リンク61の上端の回動軸55に回動可能に連結されている。また、足側昇降アクチュエータ52のピストン54の先端部は、リンク62の上端の回動軸56に回動可能に連結されている。これらの頭側昇降アクチュエータ51と、足側昇降アクチュエータ52は、上述の如く、ベッドフレーム40の幅方向の中央にて、ベッド長手方向に延びる一直線上に、配置され、1個のアクチュエータ受け50に、それらの後端部を回転可能に共通して軸支されている。
【0038】
なお、ベッドフレーム40には、背ボトム41aの昇降(背上げ及び背下げ)用のアクチュエータ71及びピストン72と、膝ボトム41cの昇降(背上げ及び背下げ)用のアクチュエータ73及びピストン74とが配置されている。
【0039】
次に、上述のごとく構成された本実施形態の傾斜機能付き昇降ベッドの動作について説明する。先ず、昇降動作について説明する。図1に示す最低床高さ位置から、頭側昇降アクチュエータ51のピストン53と、足側昇降アクチュエータ52のピストン54とを進出させる。そうすると、ピストン53、54に連結された逆「く」字状のリンク61及び「く」字状のリンク62が、回動軸46,47を中心として、その上端部(回動軸55,56)が相互に離反する方向に揺動する。これにより、リンク61の回動軸46より回動軸35側の部分が、固定回転支点である回動軸35を中心として、図1乃至図3の反時計方向に揺動する。一方、リンク62の回動軸47より回動軸64側の部分が、固定回転支点である回動軸47を中心として、図1乃至図3の時計方向に揺動する。このとき、リンク62の下端の回動軸64を介して揺動レバー63が時計方向に若干揺動する。
【0040】
このとき、リンク61.62は、回動軸46,47を中心として回動する。このため、アクチュエータ51,52の動作により、固定回転支点である回動軸46,47を中心として、リンク61,62が揺動すると、回動軸35,64間の直線距離(間隔)は、変化せざるを得ない。このため、回動軸64を回動軸35と同様に固定回転支点とすると、リンク61,62は動作し得ない。そこで、本実施形態においては、回動軸64を揺動リンク63の上端に設け、揺動リンク63を固定回転支点である回動軸37の周りに揺動可能とすることにより、回動軸35と回動軸64との間の直線距離(間隔)を、可変とする。これにより、リンク61,62の揺動動作が可能となる。
【0041】
リンク61,62が、回動軸35,64を介して、夫々反時計方向及び時計方向に回動することにより、回動軸46,47及びリンク受け44,45を介して、図2に示すように、ベッドフレーム40が上昇する。このとき、揺動リンク63が揺動することにより、回動軸64が若干移動して、リンク61,62の夫々反時計方向及び時計方向への回動が可能となる。
【0042】
アクチュエータ51,52のピストン53,54を退入させることにより、上述と逆の動作で、図1に示すように、ベッドフレーム40を下降させることができる。
【0043】
次に、ベッドの傾斜動作について説明する。仮に、図2に示すように、ベッドが最高床高位置にあるとする。この状態で、図3に示すように、足側の昇降アクチュエータ52のピストン54のみを退入させ、リンク62を回動軸47を中心として、図1乃至図3の反時計方向に回動させる。これにより、リンク62の回動軸47より回動軸64側の部分が上昇しようとするが、この部分は回動軸64を介して、揺動リンク63に連結されているので、リンク62は下降する、これにより、回動軸47及びリンク受け45を介して、ベッドフレーム40の足側の部分のみが下降する。ベッドフレーム40の頭側の部分は上昇したままであるので、図3に示すように、ベッドフレーム40は傾斜する。
【0044】
仮に、図1に示すようにベッドフレーム40が最低床高位置にあるときは、頭側の昇降アクチュエータ51のピストン53のみを進出させる。そうすると、リンク61が、回動軸35を介して、図1乃至図3の反時計方向に回動する。これにより、リンク61の回動軸46の位置が上昇し、リンク受け55を介して、ベッドフレーム40の頭側部分が上昇する。ベッドフレーム40の足側部分はそのままであるので、ベッドフレーム40は、図3に示すように傾斜する。
【0045】
このようにして、ベッドフレーム40は、図1に示すように最低床高時の場合に、患者が就寝することに適し、図2に示すように最高床高時の場合に、医師又は看護師による治療又は看護を行うことに適し、図3に示すように、頭側が上になるように傾斜することにより、逆流性食道炎等の患者に対する治療に適する状態を、アクチュエータ51,52の動作により、容易に得ることができる。この場合に、アクチュエータ51,52は、ベッドフレーム40に設けた1個のアクチュエータ受け50に支持されており、しかもそれらの基端側を背中合わせにしてアクチュエータ受け50に支持させているので、ベッド動作時にアクチュエータ51,52に作用する反力は、相互に打ち消し合う。また、2個のアクチュエータ51,52は、一直線上に配置されているので、アクチュエータ受け50に作用する応力は、ベッドフレームの幅方向の1点に作用し、アクチュエータ受け50にモーメントは作用しない。このため、アクチュエータ受け50に印加される応力は、各アクチュエータ51,52を別個のアクチュエータ受けで支持する場合に比して、小さくすることができる。このため、アクチュエータ受け50及び短手部材40Fの所要強度は低くても足り、軽量化が可能である。また、本実施形態においては、リンク61,62,揺動リンク63のリンク機構により、昇降及び傾斜動作をさせることができるので、構造が簡素であり、軽量化が可能である。更に、アクチュエータ51,52をベッドの幅方向中央近傍に配置することができるため、ベッドの重心が中央寄りになり、ベッドの搬送性が向上する。
【0046】
しかも、リンク61,62は、逆「く」字形状又は「く」字形状をなすので、表裏の形状をなすため、共通して使用することができる。リンク受け44,45も同様に表裏で同一形状をなしているので、共通して使用することができる。
【0047】
なお、図5に示すように、アクチュエータ受け50は、ベッドフレーム40の長手方向の中央に設けられた1対の短手部材40E,40Fの一方の短手部材40Fに固定されているので、アクチュエータ受け50は、アクチュエータ51,52の各後端部の支持位置から、短手部材40Fへ向けて、湾曲している。しかし、この短手部材40Fの位置をベッドフレーム40の長手方向の中央に設けた場合は、アクチュエータ受け50は湾曲せずに、垂直方向に延びるものとしてもよい。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態について、図6乃至図8を参照して説明する。本実施形態は、背上げ・膝上げ機能付き電動ベッドに関するものである。図8に示すように、この電動ベッドは、頭側から足側にかけて、背ボトム41a、腰ボトム41b、膝ボトム41c、及び足ボトム41dが、この順に配置されている。腰ボトム41bは、ベッドフレーム40に、ベッドフレームにより構成される面と平行に固定されている。また、背ボトム41aは、その腰ボトム41b側の端部がベッドフレーム40に揺動可能に支持されており、膝ボトム41cは、その腰ボトム41b側の端部がベッドフレーム40に揺動可能に支持されている。そして、足ボトム41dは、その膝ボトム41c側の端部が膝ボトム41cに連結されていて、膝ボトム41cに連動して揺動する。
【0049】
ベッドフレームの頭部側の位置には、ベッド幅方向に延びる回動軸93が設置されており、この回動軸93に背上げリンク91a、91bが回動可能に軸支されており、これらの背上げリンク91a、91bは図8の正面視で、「逆く字形」になるように一定の角度で屈曲している。また、背上げアクチュエータ81がその基端部を、アクチュエータ受け80に揺動可能に支持されており、背上げアクチュエータ81のピストン83の先端部は、リンク91aの先端部(下端部)に回動可能に連結されている。また、リンク91bの先端部(上端部)は、背ボトム41aにスライド可能に連結されている。これにより、背上げアクチュエータ81のピストン83が進出すると、リンク91a、91bを介して、背ボトム41aが上方に移動し、逆にピストン83が退入すると、リンク91a、91bを介して、背ボトム41aが下方に移動して、水平状態に戻る。一方、ベッドフレームの足部側の位置には、ベッド幅方向に延びる回動軸94が設置されており、この回動軸94に膝上げリンク92a、92bが回動可能に軸支されており、これらの膝上げリンク92a、92bは図8の正面視で、「逆く字形」になるように一定の角度で屈曲している。また、膝上げアクチュエータ82がその基端部を、アクチュエータ受け80に揺動可能に支持されており、膝上げアクチュエータ82のピストン84の先端部は、リンク92aの先端部(下端部)に回動可能に連結されている。また、リンク92bの先端部(上端部)は、膝ボトム41cにスライド可能に連結されている。これにより、膝上げアクチュエータ82のピストン84が退入すると、リンク92a、92bを介して、膝ボトム41cが上方に移動し、逆にピストン84が進出すると、リンク92a、92bを介して、膝ボトム41cが下方に移動して、水平状態に戻る。
【0050】
而して、図4に示す第1実施形態においても、背上げボトム41a及び膝上げボトム41cの背上げ・膝上げ機能を有している。図4に示すように、傾斜機能付き昇降機能を有するアクチュエータ51及びアクチュエータ52の他に、この電動ベッドのベッドフレームには、背上げ用アクチュエータ181と、膝上げ用アクチュエータ182が、設置されている。この背上げ用アクチュエータ181は、そのピストン183の進出・退入により、頭側の背ボトム41aが上下動駆動される。一方、膝上げ用アクチュエータ182は、そのピストン184の退入・進出により、足側の膝ボトム41cが上下動駆動される。よって、この図4に示す第1実施形態においては、昇降・傾斜機能用アクチュエータ51,52を挟んで、その両側に、背上げ用アクチュエータ181と膝上げ用アクチュエータ182とが、夫々、別のアクチュエータ受けにより支持されて配置されている。
【0051】
これに対し、本第2実施形態においては、図6及び図7に示すように、昇降・傾斜機能用のアクチュエータ51,52の隣に、1個のアクチュエータ受け80が設置されており、このアクチュエータ受け80に、背上げ用アクチュエータ81がその基端部を揺動可能に支持されており、膝上げ用アクチュエータ82がその基端部を揺動可能に支持されている。これにより、アクチュエータ81のピストン83は頭部側を向き、図7及び図8に示す背上げ用リンク91aの下端に回動可能に連結されている。また、アクチュエータ82のピストン84が足部側を向き、図7及び図8に示す膝上げ用リンク92aの下端に回動可能に連結されている。そして、背上げ用アクチュエータ81と膝上げ用アクチュエータ82とは、昇降・傾斜用アクチュエータ51,52と同様に、1個のアクチュエータ受け80に、背中合わせに配置して支持されており、ベッド長手方向に並ぶように配置されている。
【0052】
このように、本実施形態においては、4個のアクチュエータが、2個のアクチュエータ受けに支持されて、2列に配置されており、昇降・傾斜機能と、背上げ・膝上げ機能とを具備する電動ベッドの構造を極めて小型軽量化することができ、構造の簡素化が可能である。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、ベッドフレームを下方からみた斜視図である。ベッドフレームの短手部材151(ベッドフレームの幅方向に延びる支持棒)に、アクチュエータ受け150が設置されており、このアクチュエータ受け150には、短手部材151の長手方向に3個の仕切152,153,154が設けられている。そして、仕切152と仕切153との間には、昇降用アクチュエータ51がその基端部を揺動可能に支持されており、仕切152と仕切154との間には、背上げ用アクチュエータ81がその基端部を揺動可能に支持されている。本実施形態においては、昇降用アクチュエータ51と、背上げ用アクチュエータ81が、ベッド幅方向に並置されており、それらのピストンはいずれもベッドの長手方向の一方の側(例えば、頭側)を向いている。従って、本実施形態においては、このアクチュエータ受け150は、ベッド長手方向の他方の側(例えば、足側)に偏倚して配置されており、昇降用アクチュエータ51は昇降用リンクを駆動し、背上げ用アクチュエータ81は背上げ用リンクを駆動する。本実施形態においても、アクチュエータ50,51の設置のスペースが縮小化され、メインテナンス性が向上する。また、本実施形態においては、アクチュエータ受け150を一体化しているので、溶接治具へのセット工数を削減することができる。更に、アクチュエータをアクチュエータ受けに支持させるための連結ピン及び抜け止めピンの所要数が1セットになるため、部品代と組み立て工数を削減することができる。
【0054】
また、図10に示すように、アクチュエータ受け150を、仕切153、152b、152a、154により3分割し、各仕切により挟まれた部分に、夫々昇降用アクチュエータ51、背上げ用アクチュエータ81及び膝上げ用アクチュエータ82を、各基端部を揺動可能に支持させて配置することができる。このように、昇降用アクチュエータ51、背上げ用アクチュエータ81及び膝上げ用アクチュエータ82を、1個のアクチュエータ受け150により支持するようにすることにより、設置スペースの縮小化が可能であり、メインテナンス性が向上する。また、図9の場合と同様に、溶接治具へのセット工数の削減、及び部品代と組み立て工数の削減を図ることができる。なお、図9及び図10のように、1個の昇降用アクチュエータ51を設置した場合は、傾斜機能は有しない。
【0055】
次に、第4実施形態について説明する。
本実施形態の電動ベッドは、第2実施形態の電動ベッドと同様な構成を備えるものであり、同様な構成部品については同一の符号を付することで説明を省略する。
【0056】
本実施形態の電動ベッドは、図8に示すように、第2実施形態と同じように、背ボトム41a、腰ボトム41b、膝ボトム41c、及び足ボトム41dを備えた電動ベッドであって、傾斜機能付き昇降機能を有するアクチュエータ51及びアクチュエータ52の他に、図6に示すように、背上げ用アクチュエータ81と、膝上げ用アクチュエータ82とを備え、ベッドの傾斜動作を行う際には、アクチュエータ51及びアクチュエータ52の行う昇降動作に関連づけて背上げ用アクチュエータ81及び膝上げ用アクチュエータ82による背上げ、膝上げ動作をさせるようにしたことを特徴とするものである。
【0057】
ベッドの傾斜動作および上下方向の昇降動作を行う場合は、第1実施形態で説明したように、ベッドの初期状態に応じて、頭部側のアクチュエータ51と足部側のアクチュエータ52とを適宜に動作させることで、所望する状態に変移させることができる。
【0058】
また、ベッドの背上げ動作および膝上げ動作を行う場合は、第2実施形態で説明したように、背上げ用アクチュエータ81及び膝上げ用アクチュエータ82を動作させることで、背ボトム41a、腰ボトム41b、膝ボトム41c、及び足ボトム41dを所望する状態に変移させることができる。
【0059】
ここで、本実施形態の電動ベッドによる特徴的なベッドの傾斜動作について説明する。
ベッドフレーム40を、図1に示すように、低床位置にある状態から、図3に示すように、頭部側が足部側よりも高い位置になるように傾斜させるときは、図8に示すように、まず、膝上げ用アクチュエータ82を駆動して膝ボトム41c及び足ボトム41dを膝上げするように変移させる。その後、アクチュエータ51を駆動して頭部側を上昇させて傾斜させる。このようにすることで、使用者が足部側にずり落ちることなくベッドフレームの頭部側を高い位置にすることができる。
【0060】
ベッドフレーム40を、図2に示すように、最高床高位置にある状態から、頭部側が足部側よりも高い位置になるように傾斜させるときは、アクチュエータ52を駆動して足部側を下降させて傾斜させる。
【0061】
また、ベッドフレーム40を、図1に示すように、低床位置にある状態から、頭側が足側よりも低い位置になるように変移させるときは、図8に示すように、まず、背上げアクチュエータ81を駆動して背ボトム41aを背上げするように変移させて、使用者の頭部側を起こした状態にする。その後、アクチュエータ52を駆動して足部側を上昇させて傾斜させる。このようにすることで、使用者の頭部側が下がってずり落ちることなく、使用者の頭部側を起こした状態でベッドフレーム40の足側を高い位置にすることができる。
【0062】
ベッドフレーム40を、図2に示すように、最高床高位置にある状態から、頭部側が足部側よりも高い位置になるように傾斜させるときは、アクチュエータ51を駆動して頭部側を下降させて傾斜させる。
【0063】
このように、本実施形態によれば、ベッドフレーム40の頭部側と足部側とに高低差を付けて傾斜させる場合に、アクチュエータ51及びアクチュエータ52の行う昇降動作に関連づけて背上げ用アクチュエータ81及び膝上げ用アクチュエータ82による背上げ、膝上げ動作を行うようにしたので、使用者の姿勢に負担を掛けることなく、また、使用者がずり落ちることなくベッドを傾斜させることができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、アクチュエータが動作する作動部としてピストンを採用しているが、作動部として機能するものであれば、例えば、伸縮可能な伸縮部材を用いたり、進退可能なロッド部材等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
30:台車フレーム
34:リンク受け
36:揺動リンク受け
35,37:回動軸
40:ベッドフレーム
44、45:リンク受け
46,47:回動軸
50:アクチュエータ受け
51,52,81,82,83:アクチュエータ
53,54:ピストン
55,56:回動軸
61,62:リンク
63:揺動リンク
64:回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14