特許第6797580号(P6797580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797580
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】粉末化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20201130BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20201130BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/02
   A61Q1/12
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-135175(P2016-135175)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-2682(P2018-2682A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年2月26日
【審判番号】不服2019-14480(P2019-14480/J1)
【審判請求日】2019年10月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗吉 裕樹
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 岡崎 美穂
【審判官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/123284(WO,A1)
【文献】 特開2002−212030(JP,A)
【文献】 特開2008−115161(JP,A)
【文献】 特開2006−52299(JP,A)
【文献】 特開平6−192594(JP,A)
【文献】 特開2006−045491(JP,A)
【文献】 特開2015−151357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粉体と油性成分とを含む化粧原料を溶媒中で混合してスラリーを調製するスラリー調製工程、
前記調製したスラリーのミストを噴霧器により噴霧し、該噴霧されたミストを乾燥することで粉末化粧料の乾燥粒子を得る噴霧乾燥工程、及び、
前記粉末化粧料の乾燥粒子をそのまま粉末化粧料(ルースパウダー)とする工程、又は、粉末化粧料の乾燥粒子を型に充填して粉末化粧料(プレストパウダー)を成型する成型工程を有する、粉末化粧料の製造方法であって、
前記噴霧乾燥工程において用いられる噴霧器はノズルを備え、該ノズルの先端からミストを噴霧し、
前記ノズルは、異なる方向から気流によってスラリーを流動させて、スラリー同士を衝突させることでミストを発生させる機構を有するノズルであり、
前記噴霧乾燥工程において得られる乾燥粒子の中位径D50が20μm以下である、粉末化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記粉体は少なくとも球状粉体を含む、請求項1に記載の粉末化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記粉体は、板状粉体の周囲に微粒子が配置された複合粉体を少なくとも含む、請求項1又は2に記載の粉末化粧料の製造方法。
【請求項4】
粉末化粧料がルースパウダーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末化粧料の製造方法。
【請求項5】
粉末化粧料がプレスドパウダーである、請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記粉末化粧料が、平均粒子径が10μm以下の微粒子を少なくとも含む粉体、及び油性成分を含むルースパウダーであって、中位径D50が20μm以下である、請求項に記
載の粉末化粧料の製造方法。
【請求項7】
前記粉末化粧料が、平均粒子径が10μm以下の微粒子を少なくとも含む粉体、及び油性成分を含むプレスドパウダーであって、
パフにより擦り取ったプレスドパウダーのうち、250μmメッシュパスのプレストパウダーの中位径D50が20μm以下である、請求項に記載の粉末化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末化粧料は、粉体と油性成分等を混合し、該混合物をパルペライザ等の粉砕機にて解砕したのち、金属や樹脂製の中皿に充填、あるいはさらに乾式プレス成型することで製造を行う乾式製法と称される方法が採用され、製造されてきた。
一方で、乾式製法によると使用感などの特性が十分ではないことから、特性改善を目的とし、粉体と油性成分とを揮発性溶媒に添加してスラリーを調製し、スラリーの状態で容器に充填し、その後真空吸引などで溶媒を除去して粉末固形化する、湿式製法と称される方法が提案されている。
【0003】
乾式製法は上記のとおり、肌への塗布における使用感に改善の余地を残し、また湿式製法は、固形化粧料が固くなりすぎてパフへの取れに改善の余地を有するものであり、いずれの方法においても、満足の得られる固形化粧料を得るために改良を要した。
【0004】
上記問題点に対し、湿式製法におけるスラリーを乾燥する工程に着目し、スラリーを機械的なせん断力により微細液滴化し、該微細液滴に乾燥ガスを送付することでスラリーを乾燥させ、使用感触及び使用性共に優れた粉末化粧料を得る方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、湿式製法において、スラリーにおける粉体、油性成分及び水の配合量を特定の範囲内とすることで、粉体の表面に油性成分を均一に且つ効率良く付着させることができ、使用性及び耐衝撃性を両立する粉末固形化粧料を得る方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−055990号公報
【特許文献2】特開2015−000855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載のとおり、湿式製法において肌に塗布した際の使用感と、パフへの取れ具合や落下強度といった使用性と、を両立させる試みが検討されている。本発明においても、湿式製法において、肌に塗布した際の使用感と、パフへの取れ具合や落下強度といった使用性と、を両立できる粉体化粧料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らも同様に使用感及び使用性を両立させた粉末化粧料を得るべく鋭意検討したところ、スラリー状態において粉体が一次粒子の状態で油分中に分散されていたとしても、乾燥工程において粉体同士が近接していることで粉体が再凝集し、粉体表面が均一に油分で被覆されないとの知見を得た。当該知見に基づいて検討を重ね、乾燥工程においてスラリーを乾燥させた際の乾燥粉体の粒径を微細にすることで、粉体の再凝集を抑制することができることに想到した。乾燥粉体の粒径を微細とすべく検討を重ね、スラリーのミストを噴霧器により噴霧し、該噴霧されたミストを乾燥することで極めて微細な乾燥粉体を得られることを見出した。
【0008】
本発明は、以下のものを含む。
(1)少なくとも粉体と油性成分とを溶媒中で混合してスラリーを調製するスラリー調製工程、及び
前記調製したスラリーのミストを噴霧器により噴霧し、該噴霧されたミストを乾燥することで乾燥粒子を得る噴霧乾燥工程、を有する、粉末化粧料の製造方法。
(2)前記噴霧乾燥工程において用いられる噴霧器はノズルを備え、該ノズルの先端からミストを噴霧する、(1)に記載の粉末化粧料の製造方法。
(3)前記粉体は少なくとも球状粉体を含む、(1)または(2)に記載の粉末化粧料の製造方法。
(4)前記粉体は、板状粉体の周囲に微粒子が配置された複合粉体を少なくとも含む、(1)または(2)に記載の粉末化粧料の製造方法。
(5)前記噴霧乾燥工程において得られる乾燥粒子の中位径D50が20μm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載の粉末化粧料の製造方法。
(6)前記噴霧乾燥工程で得られた乾燥粒子を型に充填して成型する成型工程、を更に有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の粉末化粧料の製造方法。
(7)粉末化粧料がルースパウダーである、(1)〜(6)のいずれかに記載の粉末化粧料の製造方法。
(8)粉末化粧料がプレスドパウダーである、(1)〜(6)のいずれかに記載の粉末化粧料の製造方法。
(9)平均粒子径が10μm以下の微粒子を少なくとも含む粉体、及び油性成分を含むルースパウダーであって、中位径D50が20μm以下である、ルースパウダー。
(10)平均粒子径が10μm以下の微粒子を少なくとも含む粉体、及び油性成分を含むプレスドパウダーであって、
パフにより擦り取ったプレスドパウダーのうち、250μmメッシュパスのプレストパウダーの中位径D50が20μm以下である、プレスドパウダー。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、肌に塗布した際の使用感と、使用性を両立できる粉体化粧料を提供することができる。更に、粉体表面が油分で均一に被覆されており凝集を防ぐことができることから、粉体の有する機能を最大限に発揮させることが可能となり、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛等を配合した化粧料、及び板状粉体の周囲に微粒子が配置された複合粉体を配合した化粧料では、SPF値を向上させることができる。
また、湿式製法においては、真空吸引時に紫外線吸収剤が一緒に吸引される傾向にあり、SPF値が向上し難い状況であったが、本発明では紫外線吸収剤の添加によるSPF値の効果が十分に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で製造した乾燥粉体の粒度分布を示す図である。
図2】実施例4で製造した乾燥粉体の粒度分布を示す図である。
図3】本実施形態における噴霧乾燥工程に用いられ得る噴霧器のノズルの先端を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態である粉末化粧料の製造方法について説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の具体的な実施形態にのみ限定されるものではない。
【0012】
本実施形態に係る粉末化粧料の製造方法は、少なくとも粉体と油性成分とを溶媒中で混合してスラリーを調製するスラリー調製工程、及び前記調製したスラリーのミストを噴霧器により噴霧し、該噴霧されたミストを乾燥することで乾燥粒子を得る噴霧乾燥工程、を有する、粉末化粧料の製造方法である。また、前記噴霧乾燥工程で得られた乾燥粒子を回
収する回収工程を更に有してもよく、前記噴霧乾燥工程で得られた乾燥粒子を型に充填して成型する成型工程を更に有してもよい。
【0013】
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程は、少なくとも粉体と油性成分とを溶媒中で混合してスラリーを調製する工程である。スラリー調製の際には、化粧料の調製に必要な粉体と油性成分以外の成分を適宜添加することができる。
【0014】
1)粉体
本実施形態で使用し得る粉体は、水、油脂、界面活性剤、アルコール類、シリコーン類などの化粧料原料には溶解しない、有機或いは無機の固形物の総称を意味する。
粉体の具体例としては、カオリン、タルク、マイカ、セリサイト、チタンマイカ、積層樹脂小片(グリッター)、ホウケイ酸Ca/Al、チタンセリサイト、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、群青、紺青、赤色102号、赤色226号、黄色4号アルミニウムレーキ、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、メチルシロキサン網状重合体、架橋型メチルポリシロキサン樹脂、アクリル酸アルキル樹脂類、ナイロン、シルク、セルロース或いはこれらの複合材料などが例示できる。
粉体の形状は、球状、不定形、多孔質状、中空状、繊維状、板状或いは塊状であっても良い。更に、その表面は、シリコーン被覆処理、金属石けん被覆処理、アシルアミノ酸塩被覆処理など、通常知られている表面処理が為されていてもよい。
【0015】
粉体は、スラリー中、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本実施形態において粉体の含有量は、粉末化粧料中通常70質量%以上であり、75質量%以上であることが好ましく80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。また、通常98質量%以下であり、95質量%以下であることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、後述するように噴霧乾燥工程により、微細な乾燥粉体を得ることができる。そのため、微粒子粉体を含有する場合に特に好ましく適用でき、微粒子粉体が有する散乱効果を十分に発揮することが可能となり、SPF値が改善する。また、球状粉体を含有する場合、板状粉体の周囲に微粒子が配置された複合粉体を含有する場合などにも好ましく適用できる。
【0017】
球状粉体としては、ナイロン、スチレン、メタクリル酸メチル、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー等の有機球状樹脂粉体、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム等の無機球状粉体等が例示され、これらの球状粉体を粉体全量に対し、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下配合することで、伸び広がり等の使用性を向上させつつ、落下強度を保つことが可能となり、またケーキング性も良好となる。
球状粉体の平均粒子径は、伸び広がり等の使用性の観点より、通常1μm以上、好ましくは3μm以上であり、また通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。なお、球状粉体は、分散性や付着性等の向上を目的とし、公知の方法により表面処理されていてもよい。表面処理はその目的に応じ疎水処理であってよく、親水処理であってもよい。
【0018】
板状粉体の周囲に微粒子が配置された複合粉体としては、SMT−57S(テイカ(株)製)が例示され、これらの複合粉体を粉体全量に対し、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以
下配合することで、落下強度が向上し、ケーキング性が生じることなくSPF値を向上させることができる。
【0019】
微粒子粉体としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛が例示され、ここでは平均粒子径が10μm以下のもの微粒子と称し、1μm以下であってよく、500nm以下であってよく、100nm以下であってよい。微粒子粉体を粉体全量に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下配合することで、落下強度が向上し、ケーキング性が良好となり、またSPF値が向上し、肌への適用において透明性が損なわれない。
【0020】
このように、本実施形態によると、微粒子粉体であっても粉体表面が油分で均一に被覆されており凝集を防ぐことができることから、粉体の有する機能を最大限に発揮させることが可能となる。
なお、粉体は、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本実施形態において粉体の含有量は、粉末化粧料中通常65質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、通常95質量%以下であり、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
2)油性成分
本実施形態で使用し得る油性成分の具体例としては、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素油;オレイン酸、イソステアリン酸等の液状脂肪酸;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の液状高級アルコール;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット、グリセリルトリイソステアレート、グリセリルトリイソオクタネート等の合成エステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油;があげられる。但し、後述する特定の界面活性剤群に属するものは、油性成分として取り扱わないものとする。
【0022】
油性成分は、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本実施形態において油性成分を配合する場合、化粧料中通常5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましい。また、通常25質量%以下であり、20質量%以下であることが好ましい。
【0023】
3)溶媒
溶媒としては、スラリーを調製するために通常用いられる溶媒であればよい。例えば、精製水、揮発性シリコーン油、低級アルコール、エーテル類、揮発性炭化水素油、ピロリドン類、などがあげられる。また、これらを混合して用いてもよい。
溶媒の量は、粉体と油性成分を混合させるために十分な量であればよく、通常粉体10
0質量部に対して50質量部以上、200質量部以下使用する。
【0024】
4)その他
本実施形態で製造される粉末化粧料は、通常粉末化粧料に使用される成分を広く配合することが可能である。
【0025】
例えば、有効成分としては、美白成分、抗炎症成分、植物エキス等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、
ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、
ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等) 、POEアルキル
エーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、等が挙げられる。
【0026】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
【0027】
増粘剤としては、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、等が挙げられる。
【0029】
スラリー調製におけるスラリー化の方法は特段限定されるものではなく、既知の手法を用いることができる。例えば、溶媒中に粉体及び油性成分、並びに必要に応じその他成分を添加し、ディスパーミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、撹拌ミル、などを用いて混合、撹拌することでスラリー化できる。
【0030】
<噴霧乾燥工程>
噴霧乾燥工程は、前記調製したスラリーのミストを噴霧器により噴霧し、該噴霧されたミストを乾燥することで乾燥粉体の微粒子を得る工程である。
噴霧器は、スラリーをミスト化して噴霧することができれば限定されず、既存の噴霧器を適用することができる。本実施形態では、ノズルを有する噴霧機であって、ノズル先端からミストを噴霧する噴霧器であることが、その後の乾燥工程においてミストを乾燥させ易く、さらに回収も容易であることから、好ましい。
スラリーをミスト化し、噴霧できるノズルの一例を図3により説明する。なお、ノズルの形状は、ミストを噴霧可能であれば図3に示すものに限られない。
【0031】
図3に示されるノズル100は、一端が尖鋭な形状を有する円柱状のノズルエッジ1、円柱状のノズルエッジ1の周囲に配置され、ノズルエッジ1との間にスラリー流路10となるスリットを形成する第一リング部材2、及び第一リングの周囲に配置され、第一リングとの間に気体流路20となるスリットを形成する第二リング部材3、から構成される。
【0032】
ノズルエッジ1の一端(図中上端)は尖鋭な形状となっており、尖鋭形状の傾斜と同一平面を形成するように、第一リング部材の一端(図中上端)はテーパ形状を有する。
スラリー流路10はリング状となっており、スラリー射出口11からスラリーがリング状に射出される。一方気体流路20もリング状となっており、気流射出口21から気流がリング状に射出される。ここで、ノズルエッジ1の尖鋭形状の傾斜と同一平面を形成するように、第一リング部材の一端がテーパ形状となっている。そのため、気流射出口21から高速で噴射された気流は、スラリー射出口11から射出されたスラリーをノズルエッジの先端に向かって高速で流動させて衝突ポイント30で衝突させ、スラリーを微細なミスト状とした噴霧することができる。
本実施形態では、図3に示すように、異なる方向から気流によってスラリーを流動させて、衝突ポイントで衝突させることでミストを発生させる機構を有するノズルを用いることで、スラリーを微細なミスト化することが可能となり、好ましい。図3の断面図においては、気流の流路が2つ存在するがこれに限られず、断面とした場合に4つの気流の流路が存在する構成でもよい。
【0033】
この際の、スラリーの射出流量、気流の射出流量、気流の流速などは、スラリーの粘度や、所望のミストの粒径等に応じて適宜設定できる。ミストの粒径を小さくするほど、乾燥させた際の粉体の粒径が小さくなることから、ミストの平均粒径を30μm以下とすることが好ましく、20μm以下とすることがより好ましく、10μm以下とすることが更に好ましい。なお、微細なミストを生成したとしても、スラリーがより粒径の大きな粉体を含有する場合には、当該粉体は微細なミストとはならず、粉体の粒径付近の粒子が噴霧される。サブミクロンオーダーの微粒子、例えば微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛を含んでなるミストの平均粒径が20μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることがより好ましく、5μm以下とすることが更に好ましい。なお、ミストの平均粒径は、高速度カメラなどで撮影した画像を拡大し、画面上における20個以上のミスト(液滴)の長径の平均粒径を測定することで、算出することができる。
【0034】
噴霧されたスラリーのミストは、乾燥されて乾燥粒子となり、回収される。乾燥には高
温の乾燥ガスを用いることが一般的であり、用いた溶媒が蒸発する温度の乾燥ガスをスラリーのミストに吹き付けることで、スラリーは乾燥粒子となる。乾燥粒子は適宜回収されるが、噴霧器、乾燥器と一体となって回収が可能な装置を用いることが好ましい。
【0035】
本実施形態では、スラリーをミスト化し、該ミストを乾燥することで乾燥粒子を得ることから、乾燥させた乾燥粒子の粒径を細かく制御することができる。特に微粒子粉体を含む場合には、微粒子粉体それぞれに油性成分を被覆することができるため、使用感が劇的に向上する。また、成型して固形化した際に、その落下強度も著しく向上する。更に、粉体の有する機能を最大限に発揮させることができるため、例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛などを配合した化粧料の場合には、SPF値が改善されるなど、予測できない効果を奏するものである。
【0036】
具体的には、噴霧乾燥工程によって得られる乾燥粒子の中位径D50が20μm以下であることが好ましく、17μm以下であることがより好ましく、13μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であってもよい。なお、中位径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
また、微粒子酸化チタン及び/又は微粒子酸化亜鉛を含有させた化粧料では、噴霧乾燥工程によって得られる乾燥粒子の粒度分布において、20μm以下に極大値を有することが好ましく、17μm以下に極大値を有することがより好ましく、13μm以下に極大値を有することが更に好ましく、10μm以下に極大値を有してもよく、該極大値が微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの微粒子に由来することが好ましい。
なお成型された粉体化粧料である場合には、パフにより化粧料を擦り取り、擦り取った化粧料を250ミクロンメッシュで分級し、該分級後の化粧料の粒径を測定することで、噴霧乾燥工程によって得られる乾燥粉体の粒径を測定することができる。本発明者らは、上記方法により測定した成型された粉体化粧料の粒子径と、乾燥噴霧工程における乾燥粉体の粒子径がほぼ一致することを確認した。
【0037】
なお、ルースパウダーのような成型していない粉体化粧料の場合には、そのまま粒子径を測定することで、噴霧乾燥工程によって得られる乾燥粒子の粒子径が得られる。
すなわち、本発明の別の実施形態は、平均粒子径が10μm以下の微粒子を少なくとも含む粉体、及び油性成分を含むルースパウダーであって、中位径D50が20μm以下である、ルースパウダーである。
また、平均粒子径が10μm以下の微粒子を少なくとも含む粉体、及び油性成分を含むプレストパウダーであって、パフにより擦り取ったプレスドパウダーのうち、250μmメッシュパスのプレスドパウダーの中位径D50が20μm以下である、プレストパウダーである。
【0038】
<成型工程>
本実施形態において、所望により設けられる成型工程は、噴霧乾燥工程で得られた乾燥粉体を型に充填して成型する工程である。成型することでプレスドパウダーとしてもよく、成型せずルースパウダーとしてもよい。プレスドパウダーとする場合、使用感が好ましく、また落下強度が改善される。ルースパウダーとする場合、使用感が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が例示された実施例のみに限定されることはない。
【0040】
(実施例1乃至4、比較例1乃至4)
<スラリー調製>
表1に記載の粉体及び油剤合計100質量部に対して、純水120質量部添加し、ダブ
ルプラネットミキサー(DPM)を用いて撹拌しスラリーを調製した。
【0041】
<噴霧乾燥>
調製した実施例1乃至3に係るスラリーを、図3に記載の構造を有するノズルを備えた噴霧器により、スラリーを噴霧する気流の流速を4g/minとしてミストを噴霧し、乾燥させ、乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子の中位径D50は、表1に記載のとおりであった。
また、調製した実施例4に係るスラリーを、スラリーを噴霧する気流の流速を8g/minとした以外は実施例1と同様にして、乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子の中位径D50は、表1に記載のとおりであった。図1に、実施例1で得られた乾燥粒子の粒度分布を、図2に実施例4で得られた乾燥粒子の粒度分布を示す。
乾燥粒子は、プレス機で成型させ、プレスドパウダーを得た。
【0042】
調製した比較例1乃至3に係るスラリーを容器に充填し、圧縮成形した後に乾燥させて、プレスドパウダーを得た。
【0043】
調製した比較例4に係るスラリーを、気流式乾燥機(回転するドラムによりスラリーにせん断力を付与し、粒子とする装置)で、乾燥させ、乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子の中位径D50は、表1に記載のとおりであった。比較例4に係る乾燥粒子は、プレス機で成型し、プレスドパウダーを得た。
【0044】
<評価>
得られたプレスドパウダーは、以下の項目及び評価基準にて評価を行った。
・伸び広がりの均一性:評価人10人がプレスドパウダーを使用し、評価した。
◎:10名中9名以上が伸び広がりが均一であると回答
○:10名中6〜8名が伸び広がりが均一であると回答
△:10名中3〜5名が伸び広がりが均一であると回答
×:10名中0〜2名が伸び広がりが均一であると回答
・感触の柔らかさ:評価人10人がプレスドパウダーを使用し、評価した。
◎:10名中9名以上が感触が柔らかいと回答
○:10名中6〜8名が感触が柔らかいと回答
△:10名中3〜5名が感触が柔らかいと回答
×:10名中0〜2名が感触が柔らかいと回答
・仕上がりの粉っぽさ:評価人10人がプレスドパウダーを使用し、評価した。
◎:10名中9名以上が仕上がりの粉っぽさがないと回答
○:10名中6〜8名が仕上がりの粉っぽさがないと回答
△:10名中3〜5名が仕上がりの粉っぽさがないと回答
×:10名中0〜2名が仕上がりの粉っぽさがないと回答
【0045】
・落下強度:各プレスドパウダーについて、50cmの高さから厚さ50mmの合板上に5回落下させた後の状態を、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:ヒビ、欠けがまったくない
○:表面に極僅かにヒビ、欠けがある
△:部分的にヒビ、欠けがある
×:全体的にヒビ、欠けがある
【0046】
・SPF効果:各プレスドパウダーを、サージカルテープ(Transporeスリーエムヘルスケア株式会社製)に、2mg/cm2の載り量で6.4cm×6.4cmの広さ
で塗布し、Labsphere社製UV−2000S SPFアナライザーを用いて10回測定して得られた平均防御スペクトルからSPF値を求めた。なお、表1には、実施例
1の測定値を1とした相対値を記載した。
【0047】
(実施例5及び比較例5)
<スラリー調製>
表2に記載の粉体及び油剤合計100質量部に対して純水120質量部に添加し、ダブルプラネットミキサー(DPM)を用いて撹拌しスラリーを調製した。
<噴霧乾燥>
調製した実施例5に係るスラリーを、図3に記載の構造を有するノズルを備えた噴霧器によりミストを噴霧し、乾燥させ、乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子の中位径D50は、表2に記載のとおりであった。
また、得られたスラリーを気流式乾燥機(回転するドラムによりスラリーにせん断力を付与し、粒子とする装置)で、乾燥させ、乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子の中位径D50は、表2に記載のとおりであった。
乾燥粒子はそのままルースパウダーとした。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【符号の説明】
【0050】
100 ノズル
1 ノズルエッジ
2 第一リング部材
3 第二リング部材
10 スラリー流路
11 スラリー射出口
20 気体流路
21 気体射出口
30 衝突ポイント
図1
図2
図3