特許第6797598号(P6797598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6797598-水素火炎検出装置 図000003
  • 6797598-水素火炎検出装置 図000004
  • 6797598-水素火炎検出装置 図000005
  • 6797598-水素火炎検出装置 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797598
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】水素火炎検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20201130BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20201130BHJP
   G01J 1/06 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G01J1/02 G
   G01J1/04 B
   G01J1/02 J
   G01J1/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-157741(P2016-157741)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-25477(P2018-25477A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】岩見 知明
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036974(JP,A)
【文献】 実開平05−071734(JP,U)
【文献】 特開2004−219360(JP,A)
【文献】 特開昭61−277023(JP,A)
【文献】 特開2003−323681(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00074225(EP,A1)
【文献】 特開2005−294423(JP,A)
【文献】 特開2013−130460(JP,A)
【文献】 米国特許第5574286(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0844133(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
G08B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素火炎の紫外線を検出する紫外線検出素子と、
前記紫外線検出素子の前方に設けられ、外光を取り入れる透過窓と、
前記透過窓を一部に有し、前記紫外線検出素子を被覆して前記透過窓以外からの光の入射を遮断する筺体と、
前記水素火炎以外の外乱光を減衰させる外乱光減衰手段と、
を有し、前記外乱光減衰手段が、前記紫外線検出素子の前方に設けられるバンドパスフィルタであって、185nm以上、280nm以下の範囲内で、10nm以上、20nm以下の帯域で透過するバンドパスフィルタである水素火炎検出装置。
【請求項2】
前記バンドパスフィルタを透過する10nm以上、20nm以下の帯域が、200nm以上、260nm以下の範囲内にある請求項1記載の水素火炎検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水素火炎検出装置において、さらに偏光フィルタが前記紫外線検出素子の前方に設けられている水素火炎検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素火炎検出装置において、前記紫外線検出素子と前記透過窓との距離の調整、および/または前記透過窓の大きさの調整により、視野角が60°以下、10°以上になるように制御されている水素火炎検出装置。
【請求項5】
前記水素火炎検出装置が水素供給ステーション内の水素配管に向けて設置されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素火炎検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素供給ステーション内などで設置が義務付けられている水素火炎検出装置に関する。さらに詳しくは、例えば近くに工場などがあり、工場内で溶接やグラインダーなどにより発生する紫外線や、電車などのパンタグラフから発生する紫外線などの外乱光による誤報を発生させることなく、確実に水素火炎を検出することができる安価な水素火炎検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車にも水素ガスが用いられるようになり、水素供給ステーションや燃料電池などの水素ガス利用設備の連続監視が重要になってきている。水素ガスは、燃焼しても太陽光線下では肉眼ではほぼ透明にしか見えず、平成22年に改正された一般高圧ガス保安規則の例示基準では、特定圧縮水素スタンドの火災を検知するための装置等について、水素火炎が発する紫外線を検知する方法を用いることが規定されている。この水素火炎から発生する紫外線は、UV−C(280〜100nm)という特に短波長で、人体にも悪影響を及ぼす波長帯である。
【0003】
このような紫外線検出センサとしては、例えば浜松ホトニクス(株)の炎センサ、UVトロン(登録商標)(型番R2868)が知られている。この紫外線検出センサは、例えば図4のAに示されるような波長に感知し得る相対感度を有しており、太陽光は遮断しながら、185〜260nmの波長の光を検出することができる。図4において、Aが検知し得る紫外線の波長帯に対する相対感度を示し、Bは太陽光の地表でのスペクトラム、Cは水素火炎の一例の波長に対するスペクトラム、Dはタングステン電球の波長に対するスペクトラムをそれぞれ示す。すなわち、太陽光のこの短波長の紫外線は、オゾン層により遮断されて、地表には届いていないことが利用されている。しかし、水素供給ステーションなどの屋外にこの炎センサが設置されると、水素火炎が発生していないにも拘らず、紫外線を検知する、すなわち誤報が生じやすいという問題がある。
【0004】
一方、930〜950nmの範囲の近赤外線および熱画像を検出して、水素火炎を可視化する装置も開示されている(例えば特許文献1参照)。この場合でも、水素火炎に起因する特定波長の紫外線受光素子を有する紫外線検出手段を用いることも開示されている。紫外線検出器を使用する場合でも、このように赤外線受光素子と併用し、両方を検知する場合に、火炎の発生を報知することにより、外乱光による誤報を防止することができると考えられているが、それでも完全には誤報を防止することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−36974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の紫外線検出センサを使用すると、太陽光の光を遮断し、水素火炎から発する紫外線を効果的に検知することができる。しかし、水素供給ステーションなどの屋外に設置されると、実際には、水素の火炎が発生していないにも拘らず、警報を発する場合が多く生じるという問題がある。
【0007】
さらに、前述の紫外線検出センサの他に、赤外線検知センサなどを設置して、両者が検出された場合に、実際に水素火炎が発生したという判断をする構成にすることは、複数のセンサを設ける必要があり、コストアップになるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、市販されている紫外線検出センサを用いながら、誤報が発生し難い安価な水素火炎の検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来の市販の小型・高感度・高視野の紫外線オンオフセンサを使用しても、誤報のない水素火炎検出をするため、鋭意検討を重ねた。その結果、誤報の原因が、水素火炎と波長帯が重なる紫外線は太陽光には含まれていないが、地上で発生する外乱光の入射に起因していることを見出した。すなわち、工場などで、アーク溶接などの溶接やグラインダーによる研磨などの際に発生する火花、雷や電車のパンタグラフで発生するスパークなどから放出される紫外線が、直接または建物などによる反射光として紫外線検出センサに入射し、その光が誤報の原因になることを見出した。
【0010】
そして、さらに本発明者らが鋭意検討を重ねて調べた結果、前述の市販されている紫外線オンオフセンサは、センサの特性上、高感度、高視野が追及されているが、例えば水素供給ステーションのようなセンサから比較的近い場所の水素火炎監視に用いる水素火炎検出装置においては、むしろ感度を低下させた方がよいことを見出した。そして、185〜280nm、好ましくは200〜260nmの範囲で、その内の一部の狭い帯域を透過させるバンドパスフィルタを挿入したり、反射光をカットしやすい偏光フィルタを挿入したり、センサの透過窓を小さくするか、透過窓と紫外線検出素子との距離を大きくすることで視野角を狭くしたりすることにより、外乱光の侵入が阻止され、誤報の殆どない水素火炎検出装置が得られることを本発明者らは見出した。
【0011】
本発明の水素火炎検出装置は、水素火炎の紫外線を検出する紫外線検出素子と、前記紫外線検出素子の前方に設けられ、外光を取り入れる透過窓と、前記透過窓を一部に有し、前記紫外線検出素子を被覆して前記透過窓以外からの光の入射を遮断する筺体と、前記水素火炎以外の外乱光を減衰させる外乱光減衰手段と、を有している。
【0012】
ここに外乱光とは、水素火炎に起因する紫外線以外の紫外線を意味する。また、外乱光減衰手段とは、水素火炎以外からの紫外線は殆ど検出しない程度に減衰されることを意味している。従って、外乱光が完全にカットされていなくても、紫外線検出素子により検出されない程度に減衰されていればよく、また、水素火炎に起因する紫外線が減衰されても、その水素火炎に起因する紫外線を検出することができれば、少々の減衰は問題としない趣旨である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、市販の紫外線検出素子を用いながら、簡単な外乱光減衰手段を設けるだけで、水素火炎検出装置の誤報を殆ど排除することができる。この外乱光減衰手段は、例えば紫外線検出素子の前方に設けられるバンドパスフィルタにより検出される水素火炎由来の紫外線の帯域内の狭い範囲に紫外線検出素子への入射光を限定したり、偏光フィルタが紫外線検出素子の前方に設けられることにより、偏光した反射光をカットしたり、視野角を小さくすることにより外乱光の入射を制限したりすることなどにより形成される。その結果、非常に安価に構成することができながら、確実に誤報を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の水素火炎検出装置の一実施形態の構成を示す図である。
図2】本発明の水素火炎検出装置の他の実施形態の構成を示す図である。
図3】本発明の水素火炎検出装置のさらに他の実施形態を説明する図である。
図4】ある紫外線検出センサの分光感度特性を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の水素検出装置が、具体的な構成例を示す図1〜3を参照しながら説明される。本発明の水素火炎検出装置は、図1にその一実施形態の概略構造図が示されるように、水素火炎の紫外線を検出する紫外線検出素子1と、紫外線検出素子1の前方に設けられ、外光を取り入れる透過窓3と、透過窓3を一部に有し、紫外線検出素子1を被覆して透過窓3以外からの光の入射を遮断する筺体4と、水素火炎以外の外乱光を減衰させる外乱光減衰手段2(21、22)とを有している。
【0016】
紫外線検出素子1は、水素火炎から発せられる紫外線を検出する素子が用いられる。水素火炎のスペクトラムは、285nm、306nm、309nmにピークを持ち、185nm〜320nmに亘って発光する。すなわち、図4のCで、水素火炎のスペクトラムが示されているように、ピークの波長ではなくても、僅かな放射強度を有する帯域がある。この場合、300nm近傍以上では太陽光の紫外線が地表に届くので、185〜280nmの光が微弱になるが検出するのに適している。例えば前述の浜松ホトニクス(株)製の炎センサUVトロン(登録商標)を使用することができるが、これには限定されない。また、この炎センサは放電管であるが、放電管ではなく半導体素子からなる紫外線検出素子でもよい。前述の炎センサは、185〜260nmの範囲に感度波長を有しており、水素火炎の検出に適している。しかし、この分光感度特性を有していない紫外線検出素子であっても、185〜280nm、好ましくは200〜260nmの波長帯内の帯域を透過させるバンドパスフィルタ21を設けることにより、所望の波長帯域の紫外線のみを受光することができると共に、所望しない外乱光を排除することができる。すなわち、紫外線検出素子1としては、185〜280nmの範囲を検出することができれば、その範囲を超えるものでもよく、検出する波長帯域は制限されない。本実施形態では、水素火炎以外の外乱光を減衰させる目的でバンドパスフィルタ21が設けられている。そのため、このバンドパスフィルタ21により透過する、185〜280nm、好ましくは200〜260nm内であって、ある波長帯の光が検出されれば、紫外線検出素子1としては、その感度特性は限定されない。
【0017】
外乱光減衰手段2は、前述のように、バンドパスフィルタ21(図1参照)、偏光フィルタ22(図2参照)、視野角制御手段(図3参照)など種々の方法により外乱光を遮断することができるものである。これらの手段を2以上併用することもできる。図1に示される例は、外乱光減衰手段2として、バンドパスフィルタ21が用いられている。紫外線領域のバンドパスフィルタ21は、所望の波長帯域のみを通過させ、他の波長帯域を遮断するという特性のみならず、通過帯域でも20〜40%程度の減衰を生じる。この通過帯域での透過率の低下が、外乱光を排除するのに好ましいことを本発明者らは見出した。すなわち、前述のように、水素供給ステーションに設置される水素火炎検出装置においては、水素火炎の発生が予想される場所に比較的近い場所に設置される。従って、検出したい水素火炎から発する紫外線は、外乱光の紫外線よりも遥かに大きく、検出する紫外線が少々減衰しても、検知すべき水素火炎についての検出性に何ら支障は生じない。一方、工場の溶接などにより発生する紫外線などの外乱光は、多くの経路を経るので弱くなっており、さらに減衰されることにより、紫外線検出素子1により感知されなくなる。
【0018】
また、水素火炎のスペクトラムは、前述の図4のCと近似しており、ピークではない185〜280nm、好ましくは200〜260nmの範囲でコンスタントに弱い光を発生している。従って、この範囲の全体で紫外線の検出をしなくても、一部の帯域のみで検出しても、水素火炎の発生を知ることができ、バンドパスフィルタで通過帯域を狭くすることにより、外乱光を排除できることを本発明者らは見出した。すなわち、バンドパスフィルタ21の通過帯域を前述の185〜280nm、好ましくは200〜260nmの範囲内の、例えば10〜20nmの帯域で透過するバンドパスフィルタ21が挿入されることにより、外乱光を大幅に減少させ得ることを本発明者らは見出した。要するに、バンドパスフィルタ21の通過帯域を狭くすることにより、外乱光の侵入を阻止しやすくなる。特に発生しやすい紫外線の波長が分っていれば、その波長帯を外したバンドパスフィルタを用いることができる。このようなバンドパスフィルタ21としては、例えば朝日分光(株)の商品名HQBP248−UV、型番LX0248を用いることができる。このバンドパスフィルタ21は、透過帯域(60%以上)が240〜250nmであり、阻止帯域(透過率0.1%以下)が、280〜570nmの特性を有している。従って、前述の紫外線検出素子1を用いれば、水素火炎を検出しながら、非常に狭い帯域以外の紫外線を排除することができる。紫外線検出素子1が200nmより短い波長の光を検出する能力を有する場合には、その短波長側を阻止するハイパスフィルタを併用すればよい。
【0019】
このようなフィルタは、石英ガラスに誘電体膜を積層したり、光を吸収する物質を混ぜ込んだりすることにより所定の波長帯域の光のみを遮断するフィルタが形成される。従って、前述のバンドパスフィルタに限定されることなく、所望の波長帯域を透過し、他の波長帯域を阻止するフィルタが用いられ得る。このバンドパスフィルタ21は、1個のフィルタで、ある帯域のみを透過させるフィルタにしなくても、紫外線検出素子1の検知帯域と合せて185〜280nm、好ましくは200〜260nm内のいずれかの波長帯域を検出することができればよい趣旨である。また、ハイパスフィルタと、ローパスフィルタとの組合せにより、バンドパスフィルタが形成されてもよい。要は、紫外線検出素子1で所望の波長帯だけが限定して検出される構造であればよい。
【0020】
外乱光減衰手段2としては、後述されるように、反射光を選択的にカットする偏光フィルタが設けられてもよい。さらには、外乱光の入射をできるだけ防止するように視野角が狭くされてもよい。このように、本来、検出すべき水素火炎から発生する紫外線を減衰させても、外乱光をカットできるものが用いられる。従って、絶対値的にどの程度外乱光を減衰させるということではなく、紫外線検出素子1の感度と相対的に外乱光がカットされるものであればよい。
【0021】
透過窓3は、筐体4の一部であって、紫外線検出素子1の正面側に設けられている。紫外線を透過させるものであればよいが、普通のガラスでは、紫外線を減衰させると共に、紫外線で変色しやすいため、石英ガラスが用いられることが好ましい。内部を気密にする必要がなければ、貫通孔でも構わない。しかし、紫外線検出素子1を保護する観点から、石英ガラスなどと筐体4により密封されることが好ましい。
【0022】
筐体4は、紫外線検出素子1を保護すると共に、外部からの光の侵入を防止するために設けられている。金属板で形成されてもよいし、プラスチックで形成されてもよい。光を透過させなければよい。図1において、5は、この水素火炎検出装置を駆動し、水素火炎を検出したら報知する警報回路を含む駆動・検出警報回路で、従来のものを使用することができる。
【0023】
図2は、外乱光減衰手段2として、偏光フィルタ22が紫外線検出素子1の前面側に設けられた例である。偏光フィルタ22以外は、図1に示される構成と同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。偏光フィルタ22は、例えばエドモンド・オプティックス・ジャパン社の超広帯域ワイヤーグリッド偏光フィルタを使用することができる。この偏光フィルタは、例えばアルミニウム製マイクロワイヤの薄い層を2枚の合成石英ガラス板で両側から挟み込んだ構造になっている。この構造で、アルミニウム線網を構成するワイヤーグリッドの面での複屈折作用によって偏光され、入射光がワイヤーグリッド面に入射すると、p成分の光は誘電体部に入って透過し、s成分の光はミラー面に当たって反射される。一方反射して外乱光となる光は、反射面で反射することにより、一方向の振動に偏光することが知られている。そのため、反射光のみがカットされ得る。外乱光は、一般的に反射してくるため、その反射した外乱光を狙い撃ちにカットすることができる。水素火炎から発生する紫外線も偏光フィルタの作用により、半分は透過することができず、紫外線の強度は半分に減光するが、前述のように、検出する水素火炎の強度は強いため、特に問題はない。
【0024】
図3は、外乱光減衰手段2として、視野角を狭くする例の説明図である。すなわち、監視対象領域6をカバーするように透過窓3と紫外線検出素子1とが設けられている場合の視野角がθ1である。今、監視対象領域6は、水素供給ステーションの全体である必要はなく、水素火炎の発生場所は限られており、例えば水素配管の繋ぎ目または排出口など特定の場所がカバーされればよい。従って、例えば透過窓3の直径をd1からd2に小さくして視野角をθ2としたり、透過窓3はそのままで、透過窓3と紫外線検出素子1との距離をh1からh2に大きくしたりすることにより、視野角をθ3として、最初の視野角θ1より、それぞれ小さくすることができる。このように視野角が狭くなることにより、例えば図3に外乱光Pおよびその反射光が示されるように、視野角がθ1のときは紫外線検出素子1に入射していた外乱光Pが、視野角θ2に狭くなった場合には、透過窓3の周囲で反射して透過することができず紫外線検出素子1に到達しなくなる。その結果、外乱光Pを除去することができる。
【0025】
この視野角を絞る方法としては、透過窓3の径を小さくするのではなく、透過窓3と紫外線検出素子1との距離をh1からh2に広げることによっても、視野角を狭くすることができる。すなわち、図3において、透過窓3は従来の直径d1のままで、紫外線検出素子1と透過窓3との距離がh2に広げられると、外乱光Pが反射して透過窓3を通っても、その光が紫外線検出素子1に入らなくなる。従って、外乱光Pは検出されなくなる。
【0026】
この視野角は、監視対象領域6の範囲や構造により変わるが、一般的には、10°以上であって、60°以下であれば充分である。設置場所により変わるのであれば、例えば透過窓3に絞り機構を敷設しておき、その開口を可変できるようにすれば、設置場所に応じて、その都度、最適な視野角に設定することができる。
【実施例】
【0027】
実施例1
前述の図1に示される構造で、紫外線検出素子1として、前述の浜松ホトニクス(株)の炎センサ、UVトロン(登録商標)を用い、市販のバンドパスフィルタを用いて、水素火炎の大きさを変えて検出できる距離を調べた。なお、本実施例によると、紫外線の透過量は約1/6に減少していた。その結果が、表1に、バンドパスフィルタ21が設けられない比較例と比較して示されている。なお、誤報については、1日動作を5回繰り返した結果、図1に示される実施例では誤報が0であったが、比較例では、2〜3回/日の誤報があった。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、本実施例によれば、感度は1/6程度に低下するため、検知距離も比較例に比較すると大幅に低下する。しかし、誤報が0になるため、その信頼性が大幅に向上していることが分る。
【0030】
実施例2
図2に示される構造で、同様に水素火炎の検出距離を調べた。その結果、紫外線の透過量は1/2になり、視野角は約1/4になったが、水素火炎の高さ15cmの場合に3.5mの距離で水素火炎を検出することができた。また、誤報の回数も0であった。偏光フィルタ22が設けられない場合の誤報の回数は、前述の例による。
【符号の説明】
【0031】
1 紫外線検出素子
2 外乱光減衰手段
21 バンドパスフィルタ
22 偏光フィルタ
3 透過窓
4 筐体
5 駆動・検出・警報回路
A 炎センサの分光感度
B 太陽光のスペクトラム
C 水素火炎のスペクトラムの一例
D タングステン電球のスペクトラム
P 外乱光
図1
図2
図3
図4