(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797624
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】光源装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20201130BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20201130BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20201130BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20201130BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20201130BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20201130BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20201130BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20201130BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20201130BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20201130BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20201130BHJP
【FI】
F21S2/00 482
F21S2/00 439
F21V9/30
F21V7/28 240
H01L33/50
G02F1/13357
G02B5/20
G02B5/26
G02B5/28
G02B5/30
F21Y115:10
F21Y115:15
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-188487(P2016-188487)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-55885(P2018-55885A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−248495(JP,A)
【文献】
特開2009−140822(JP,A)
【文献】
特開2016−042452(JP,A)
【文献】
再公表特許第2014/073313(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/28
F21V 9/30
G02B 5/20
G02B 5/26
G02B 5/28
G02B 5/30
G02F 1/13357
H01L 33/50
F21Y 115/10
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発生させる光源および前記光源を支持するフレームを備える光源部と、
前記光源部からの光によって励起される量子ドットを含む容器と、
前記光源部と前記量子ドットとの間に設けられ、前記光源部からの光を透過させるとともに前記量子ドットにより生成される光を反射する波長選択反射膜と、
を備え、
前記容器は前記フレーム上に直接固定され、
前記波長選択反射膜は、前記容器の内部と前記光源部に面する容器の壁面上とに設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記光源部と前記容器とは一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光源部からの光の波長は380nm以上480nm未満であり、
前記波長選択反射膜が反射する光の波長は480nm以上780nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記光源部からの光の波長は10nm以上380nm未満であり、
前記波長選択反射膜が反射する光の波長は380nm以上780nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光源部は青色光を発生させるように構成され、
前記波長選択反射膜は前記青色光を透過させるとともに、緑色光および赤色光を反射するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記波長選択反射膜は、誘電体多層膜を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記波長選択反射膜は、コレステリック液晶を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記波長選択反射膜は、右巻きのコレステリック液晶および左巻きのコレステリック液晶を積層した積層構造と、前記右巻きのコレステリック液晶を積層した積層構造と、半波長板と前記右巻きのコレステリック液晶とを有するか、または、前記左巻きのコレステリック液晶を積層した積層構造と、半波長板と前記左巻きのコレステリック液晶とを有する請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記光源装置と、前記光源装置からの光が照射される位置に設けられた液晶パネルと、を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、色再現性の良い画像を表示することができる液晶表示装置を提供するため、液晶表示素子への入射光の色純度を高める技術の開発が求められている。一例として、量子ドットを用いた技術が開発されている。量子ドットは蛍光体であり、発光ダイオード(LED)等の光源からの励起光が入射されると該励起光の波長よりも長い波長の光を生成する。量子ドットの種類や粒径を変えることによって、量子ドットが生成する光の波長を調整可能である。例えば、励起光としてLEDからの青色光を用い、量子ドットは該青色光が入射された際に半値幅が狭い緑色光および赤色光を生成するように構成される。これにより、量子ドットを用いて、光の三原色に対応する狭い波長領域の光を生成可能な高効率の光源を実現することができる。
【0003】
量子ドットにより生成される光は様々な方向に発せられる。特許文献1に記載の技術は、発光素子が設けられている凹部の内面を反射壁とするとともに、量子ドットを含む変換部材の側方を取り囲む反射壁を設けている。このような構成により、発光素子から発せられる光および量子ドットから発せられる光の広がりを抑制して、輝度ムラや色ムラを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−216104号公報
【特許文献2】特開2015−233057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
量子ドットにより生成される光は一般的に発光素子とは異なる方向に出射することによって利用されるため、発光素子の方向へ向かう光(すなわち、励起光が入射する方向へ向かう光)は利用されず無駄になってしまう。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、量子ドットにより生成される光の側方への広がりの抑制することを目的としているが、量子ドットから発光素子へ向かう光を考慮していない。特許文献1に記載の技術において量子ドットから発光素子に向かう光は凹部の内面で反射し得るが、量子ドットから該内面まで離れているため減衰が大きく、また該内面で光の多重反射が起こるため、量子ドットにより生成される光の利用効率は大きく低下する。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みて行われたものであって、量子ドットにより生成される光の高い利用効率を実現できる光源装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、光源装置であって、光を発生させる光源部と、前記光源部からの光によって励起される量子ドットを含む構造体と、前記光源部と前記量子ドットとの間に設けられ、前記光源部からの光を透過させるとともに前記量子ドットにより生成される光を反射する波長選択反射膜と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源部と量子ドットとの間に設けられた波長選択反射膜が、光源部からの光を透過させつつも、量子ドットにより生成される光を反射する。そのため、量子ドットにより生成される光が光源部に戻って減衰することを抑制し、該光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る表示装置の前面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る表示装置の断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る量子ドット構造体の断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る波長選択反射膜による光の反射を説明する模式図である。
【
図5】第2の実施形態に係る表示装置の断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係る表示装置の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本発明は各実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る表示装置10の前面図である。表示装置10は、液晶パネル20と、液晶パネルの背面に沿って設けられた光源装置100と、液晶パネル20および光源装置100を支持する枠30とを備える。
図1において、視認性のために液晶パネル20は背面側の光源装置100を透過するように示されている。
図1に示す表示装置10に含まれる各部の数および大きさは実際の構成を反映しておらず、実際の実装方法に応じて任意に設計されてよい。
【0012】
光源装置100は直下型バックライトユニットであり、液晶パネル20の背面側から液晶パネル20に光を照射する。光源装置100の詳細な構成については、
図2および3を用いて後述する。液晶パネル20は、液晶層、偏光板、カラーフィルタ、および薄膜トランジスタ(TFT)等の電気回路を含む周知の構成を有する。液晶パネル20は、電気回路を通じて画素ごとに光源装置100からの光の透過率を制御することによって、所望の画像を表示する。枠30は樹脂、金属等を用いて構成されており、液晶パネル20および光源装置100を支持する。枠30の内部には、液晶パネル20および光源装置100への電気配線が配設される。なお、本実施形態ではバックライトユニットの方式として直下型バックライトユニットを例示しているが、エッジライト方式であってもよい。
【0013】
図2は、
図1のA−A線から見た表示装置10の断面図である。光源装置100は、所定の波長の光を生成する光源部120、および光源部120からの光の波長を変換する量子ドット構造体110を備える。
【0014】
光源部120は、発光素子121、基板122、およびフレーム123を有する。発光素子121は、所定の波長の光を生成し、液晶パネル20へ向けて照射する。発光素子121は不図示の電気配線に電気的に接続されており、該電気配線を通じて印加される電力を用いて光を生成する。発光素子121により生成される光の波長は、例えば青色光の波長領域または紫外光の波長領域である。発光素子121として、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等の任意の発光素子を用いてよい。発光素子121からの光が励起光として後述の量子ドット構造体110に入射することによって、光源装置100は光の三原色に対応する狭い波長領域の光を生成することができる。
【0015】
フレーム123は、凹状の形状を有しており、該形状の底面に発光素子121を支持する。フレーム123の形状はこれに限られず、任意の形状でよい。フレーム123は、樹脂、金属、半導体等の任意の材料を用いて構成されてよい。フレーム123は省略されてよく、その場合には発光素子121は基板122の上に直接支持されてよい。
【0016】
基板122は、液晶パネル20の表面に対して平行に延在し、複数の発光素子121およびフレーム123を支持する。本実施形態では、所定の数の発光素子121およびフレーム123が基板122の上に格子状かつ等間隔に配置される。発光素子121およびフレーム123の数および配置は、表示装置10の構成に応じて任意に設定されてよい。基板122は、樹脂、金属、半導体等の任意の材料を用いて構成されてよい。
【0017】
量子ドット構造体110は液晶パネル20の背面と光源部120との間に位置し、光源部120から液晶パネル20の背面へ照射される光の光路に介在する。すなわち、光源部120からの光は、量子ドット構造体110を介して液晶パネル20の背面に照射される。量子ドット構造体110は、光源部120のフレーム123の上に直接固定されており、光源部120と一体化されている。本実施形態では、1つの発光素子121の直上に1つの量子ドット構造体110が設けられているOn−Chip型の実装方式が採用されている。量子ドット構造体110は、光源部120側に後述の波長選択反射膜111を備える。
【0018】
図3は、
図1のA−A線から見た量子ドット構造体110の詳細な断面図である。量子ドット構造体110は、波長選択反射膜111、密閉容器112、ならびに密閉容器112の中に封入された量子ドット113および分散媒114を含む。分散媒114は量子ドット113を均等に分散させる液状または固体状の媒体であり、少なくとも可視光の波長領域(約380nm〜780nm)の光を透過する樹脂等の任意の材料を用いて構成される。また、光を散乱させる材料を含んでいてもよい。
【0019】
密閉容器112は、外部空間(すなわち大気)から隔離された内部空間を有する容器であり、少なくとも可視光の波長領域(約380nm〜780nm)の光を透過するガラスや樹脂等の任意の材料を用いて構成される。水および酸素による量子ドット113の劣化を抑制するために、密閉容器112は水および酸素に対してバリア性を有する材料を用いて構成されることが望ましい。
【0020】
本実施形態において、密閉容器112は水および酸素に対するバリア性が高いガラスを用いて形成されたガラスセルとして構成される。具体的には、密閉容器112は、互いに平行な2つのガラス製の矩形板がガラス製の側壁を介して所定の間隔をおいて対向した四角柱状の構造を有する。光源部120からの光は、該2つのガラス製の矩形板に対して垂直に入射する。密閉容器112の構造は、ここに示したものに限られず、公知のものを用いてよい(例えば、特許文献2参照)。密閉容器112の形状は、例えば円柱状、多角柱状等、量子ドットを内包することが可能な任意の形状でよい。密閉容器112を構成する壁面の少なくとも一部は平面状でなく、曲面状でもよい。
【0021】
量子ドット113(コロイド状量子ドットともいう)は、量子力学に従う光学特性を有するナノスケールの材料であり、粒子径が約1nm〜100nm、好ましくは1nm〜50nm、より好ましくは1nm〜20nmの微小な半導体粒子である。量子ドット113は、バンドギャップ(価電子帯および伝導帯のエネルギー差)よりも大きなエネルギーを有する光子を吸収し、その粒子径に応じた波長の光を放出する。したがって、量子ドット113は、所定の波長以下の光を吸収する性質を持ち、粒子径を調整することによって所望の波長の光を発生させることができる。本実施形態において、量子ドット113は
図3のように球状であるが、これに限られず任意の形状であってよい。
【0022】
量子ドット113は、少なくとも1つの半導体材料を含む。量子ドット113の半導体材料として、第IV族元素、第II−VI族化合物、第II−V族化合物、第III−VI族化合物、第III−V族化合物、第IV−VI族化合物、第I−III−VI族化合物、第II−IV−VI族化合物、第II−IV−V族化合物等を用いてよい。具体的には、量子ドット113の半導体材料として、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、A1N、A1P、AlSb、TiN、TiP、TiAs、TiSb、PbO、PbS、PbSe、PbTe、Ge、Si等を用いることができる。量子ドット113の材料として、ここに示したものに限られず、量子ドットの機能を発揮できる限り任意の材料をもちいてよい。
【0023】
光源部120が生成する光が青色光である場合には、緑色光の波長領域(約510nm以上610nm以下、好ましくは520nm以上580nm以下)に発光中心波長を有する第1の量子ドット113と、赤色光の波長領域(約600nm以上700nm以下、好ましくは610nm以上680nm以下)に発光中心波長を有する第2の量子ドット113とを組み合わせて用いる。すなわち、光源部120が生成する青色光は、量子ドット113に対する励起光として機能するとともに、光源装置100が発する可視光として機能する。本実施形態においては、青色、緑色、および赤色の3つの極大がある発光スペクトルを有する光源を示したが、量子ドットの発光中心波長および量子ドットの組み合わせはこれに限られず任意の組み合わせを用いてよい。
【0024】
光源部120が生成する光が紫外光である場合には、緑色光の波長領域に発光中心波長を有する第1の量子ドット113と、赤色光の波長領域に発光中心波長を有する第2の量子ドット113と、青色光の波長領域に発光中心波長を有する第3の量子ドット113とを組み合わせて用いる。すなわち、光源部120が生成する紫外光は、量子ドット113に対する励起光として機能する。
【0025】
量子ドット113は、少なくとも1つの半導体材料を含むコアと、少なくとも1つの半導体材料を含むシェルとからなるコアシェル型構造を有していてもよい。具体的には、コアとしてCdSe、シェルとしてCdZnSを有する量子ドット113、コアとしてCdZnSe、シェルとしてCdZnSを有する量子ドット113、コアとしてCdS、シェルとしてCdZnSを有する量子ドット113等を用いることができる。
【0026】
波長選択反射膜111(波長選択透過膜ともいう)は、所定の波長の光を選択的に反射し、それ以外の波長の光を透過させる膜である。本実施形態で、波長選択反射膜111は、光源部120(発光素子121)が生成する励起光の波長を透過し、該励起光を用いて量子ドット113が生成する光の波長を反射するように構成される。より具体的には、光源部120が生成する光が青色光の波長領域(例えば380nm以上480nm未満)である場合には、波長選択反射膜111は青色光の波長領域を透過させ、緑色光および赤色光の波長領域(例えば480nm以上780nm以下)を反射するように構成される。また、光源部120が生成する光が紫外光の波長領域(例えば10nm以上380nm未満)である場合には、波長選択反射膜111は紫外光の波長領域を透過させ、緑色光、赤色光および青色光の波長領域(例えば380nm以上780nm以下)を反射するように構成される。これに限られず、波長選択反射膜111が透過および反射する波長領域は、光源部120および量子ドット113が生成する光の波長に応じて適宜設定される。
【0027】
波長選択反射膜111は、密閉容器112(量子ドット構造体110)の励起光が入射する側に設けられている。具体的には、波長選択反射膜111は密閉容器112の内部において、密閉容器112の光源部120に対向する壁面上に設けられている。波長選択反射膜111は密閉容器112の外部において、密閉容器112の光源部120に対向する壁面上に設けられてもよい。波長選択反射膜111と密閉容器112の壁面との間は接していることが望ましいが、波長選択反射膜111と密閉容器112の壁面との間に隙間が設けられてもよい。
【0028】
波長選択反射膜111として、所定の波長の光を選択的に反射し、それ以外の波長の光を透過させることが可能な任意の構成を用いてよい。波長選択反射膜111として、例えば誘電体多層膜を用いてよい。誘電体多層膜は、互いに屈折率の異なる無機材料または有機材料の複数の層を積層した積層体であり、該積層体を構成する層の厚みおよび屈折率に応じて所定の波長の光を反射する性質を有する。具体的な誘電体多層膜を構成する材料として、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
3、SiO
2、MgF
2、CaF
2などを用いることができる。誘電体多層膜に含まれる各層の厚さは、各層の材料の屈折率および反射したい波長に応じて調整される。
【0029】
また、波長選択反射膜111として、例えばコレステリック液晶を用いてよい。コレステリック液晶は、そのらせん構造(すなわちピッチおよび巻き方向)に応じて所定の波長および偏光の光を反射する性質を有する。具体的には、波長選択反射膜111として、右巻きのコレステリック液晶および左巻きのコレステリック液晶を積層した積層体、または右巻き(左巻き)のコレステリック液晶、半波長板および同じ巻き方向のコレステリック液晶を順に積層した積層体を用いることができる。コレステリック液晶のらせん構造のピッチは、反射したい波長に応じて調整される。
【0030】
図4は、本実施形態に係る波長選択反射膜111による光の反射を説明する模式図である。
図4の例では、光源部120(発光素子121)は青色光を生成するように構成され、波長選択反射膜111は青色光の波長領域を透過し、緑色光の波長領域および赤色光の波長領域を反射するように構成されている。
図4には、量子ドット113のうち、緑色光を発するものにはGの符号が付され、赤色光を発するものにはRの文字が付されている。
【0031】
光源部120により生成される青色光は、波長選択反射膜111を透過し、量子ドット構造体110の光源部120とは反対側にそのまま出射する。また、量子ドット113により生成される緑色光および赤色光のうち、量子ドット構造体110の光源部120とは反対側に向かう光はそのまま出射する。一方、量子ドット113により生成される緑色光および赤色光のうち、光源部120に向かう光は波長選択反射膜111により反射され、量子ドット構造体110の光源部120とは反対側に出射する。
【0032】
本実施形態によれば、光源部120からの励起光は波長選択反射膜111を透過するためほとんど減衰せず、量子ドット113から光源部120へ向かう光は波長選択反射膜111によって反射されて出射方向に戻る。このような構成により、量子ドット113により生成される光の利用効率を向上させることができる。波長選択反射膜111は量子ドット113の近傍に配置されているため、量子ドット113から光源部120へ向かう光は量子ドット113に近い位置で反射され、該光の減衰を抑制することができる。波長選択反射膜111は密閉容器112の励起光入射面の内部または外部に配置されるため、密閉容器112の構成として公知のものを用いることができ、本実施形態に係る構成を容易に導入することができる。
【0033】
(実施例)
実施例として上述の実施形態に係る光源装置100を模した試料を作製し、正面輝度の測定を行った。具体的には、基板上に中心波長を450nmかつ半値全幅を18nmとする青色LEDを載置し、表面に反射帯域の中心波長を525nmかつ半値全幅を56nmとする、無機誘電体多層膜からなる波長選択反射膜が設けられたガラス板を該LEDから離して固定した。さらに中心波長を530nmかつ半値全幅を40nmとする緑色量子ドットおよび、中心波長を639nmかつ半値全幅を30nmとする赤色量子ドットを封入した密閉容器を該ガラス板の上に載置した。このような構成において、LEDからの青色光は量子ドットを励起し、量子ドットにより生成された光およびLEDからの青色光は密閉容器から出射する。量子ドットにより生成された緑色の光のうち、LEDに向かう光は、波長選択反射膜で反射されて出射方向に戻る。また、比較例として波長選択反射膜が設けられていないガラス板を用いた試料を作製した。
【0034】
実施例および比較例においてそれぞれ青色LEDを点灯した状態で、量子ドットを封入した密閉容器を通過した光の正面輝度を測定した。正面輝度として、量子ドットを封入した密閉容器の35cm上方において視野角2度で測定された輝度を用いた。測定結果を表1に示す。
【0036】
表1に示すように、波長選択反射膜が設けられた実施例では、波長選択反射膜が設けられていない比較例よりも正面輝度が向上している。したがって、波長選択反射膜を設けることによって、量子ドットにより生成された光の利用効率が向上することが確認できた。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではOn−Chip型の実装方式が採用されているが、本実施形態では複数の発光素子121の上方に平面状(フィルム状)の量子ドット構造体110が設けられているOn−Surface型の実装方式が採用されている。量子ドット構造体110の形状および配置以外は、第1の実施形態と同様である。バックライトユニットの方式は、第1の実施形態と同様に、直下型バックライトユニットであっても、エッジライト方式であってもよい。
【0038】
図5は、本実施形態に係る表示装置10の断面図である。量子ドット構造体110は、液晶パネル20の背面と光源部120との間に位置し、光源部120から液晶パネル20の背面へ照射される光の光路に介在する。量子ドット構造体110は、平面状(フィルム状)の形状を有し、複数の発光素子121(すなわち光源部120に含まれる発光素子の一部または全部)の上方を覆うように延在する。量子ドット構造体110は、第1の実施形態のように密閉容器112内に量子ドット113および分散媒114を封入した構成でよく、あるいは量子ドット113を分散させた固体状の分散媒114をフィルム状に延伸した構成でもよい。該フィルム状に延伸した構成の好適な例としては、量子ドット113を分散させた固体状の分散媒114からなるフィルムが、ガスバリア性を有する層で上下から挟まれた構成が挙げられる。
【0039】
波長選択反射膜111は、量子ドット構造体110の励起光が入射する側に設けられている。具体的には、波長選択反射膜111は量子ドット構造体110と光源部120との間において、量子ドット構造体110に沿って延在するように設けられる。本実施形態では量子ドット構造体110と波長選択反射膜111との間に隙間が設けられているが、密着していてもよい。
【0040】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、量子ドット113により生成される光の利用効率を向上させる効果を得ることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
第1の実施形態ではOn−Chip型の実装方式が採用されているが、本実施形態では液晶パネル20の端面に沿って量子ドット構造体110が設けられているOn−Endge型の実装方式が採用されている。バックライトユニットはエッジライト方式である。量子ドット構造体110および光源部120の形状および配置以外は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
図6は、本実施形態に係る表示装置10の前面図である。
図6において、視認性のために枠30は内部の光源装置100を透過するように示されている。本実施形態において、量子ドット構造体110および光源部120を含む光源装置100は、液晶パネル20の端面に沿って設けられている。光源装置100からの光は、液晶パネル20の背面側に設けられた不図示の導光板を介して液晶パネル20に照射される。本実施形態では光源装置100は液晶パネル20の右側端面にのみ設けられているが、液晶パネル20の上側端面、下側端面、左側端面および右側端面のうち1つ、2つ以上または全部に設けられてよい。
【0043】
光源部120は、液晶パネル20の端面に沿って延在する基板122の上に設けられた複数の発光素子121を備える。第1の実施形態とは異なり、本実施形態ではフレーム123が省略されているが、フレーム123が設けられてもよい。発光素子121は液晶パネル20の端面に向けて所定の波長の光を照射する。
【0044】
量子ドット構造体110は液晶パネル20の側面と光源部120との間に位置し、光源部120から液晶パネル20の側面へ照射される光の光路に介在する。量子ドット構造体110は、棒状(例えば円柱状または四角柱状)の形状を有している。量子ドット構造体110は、第1の実施形態のように密閉容器112内に量子ドット113および分散媒114を封入した構成でよく、あるいは量子ドット113を分散させた固体状の分散媒114を棒状に延伸した構成でもよい。
【0045】
波長選択反射膜111は、量子ドット構造体110の励起光が入射する側に設けられている。具体的には、波長選択反射膜111は量子ドット構造体110と光源部120との間において、量子ドット構造体110に沿って延在するように設けられる。本実施形態では量子ドット構造体110と波長選択反射膜111との間に隙間が設けられているが、密着していてもよい。
【0046】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、量子ドット113により生成される光の利用効率を向上させる効果を得ることができる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 表示装置
110 量子ドット構造体
111 波長選択反射膜
112 密閉容器
113 量子ドット