特許第6797626号(P6797626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797626ラベル、ラベル長尺体、及びラベル長尺体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797626
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ラベル、ラベル長尺体、及びラベル長尺体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/00 20060101AFI20201130BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20201130BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20201130BHJP
   B31D 1/02 20060101ALI20201130BHJP
   B41M 1/40 20060101ALI20201130BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G09F3/00 S
   G09F3/00 E
   G09F3/02 P
   B65B57/00 A
   B31D1/02 A
   B41M1/40 Z
   B41F33/00 280
【請求項の数】17
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-194877(P2016-194877)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-187733(P2017-187733A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-73267(P2016-73267)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】永島 崇平
(72)【発明者】
【氏名】阪田 良津
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−226616(JP,A)
【文献】 特開2016−013681(JP,A)
【文献】 特開2006−218717(JP,A)
【文献】 特開2009−145370(JP,A)
【文献】 特開2006−146018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00− 3/20
B65B 57/00
B65D 23/00−25/56
B31B 50/00−70/99
B31C 1/00−99/00
B31D 1/00−99/00
G01N 21/84−21/90
G01N 21/93−21/958
B41F 31/00−35/06
B41M 1/00− 3/18
B41M 7/00− 9/04
G03G 13/01
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されることによって個々のラベルとなる部分であるラベル部を長手方向に複数含み、前記各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、前記各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域とが形成されたラベル長尺体を製造する方法であって、
前記各ラベル部、前記各ラベル部から選択される複数の前記ラベル部、前記各ラベル部と幅方向に併設される各ラベルタブ、又は前記各ラベルタブから選択される複数の前記ラベルタブには、前記可変表示領域を印刷する工程において、前記可変表示領域の形成と共に固定表示マークが形成され、前記各固定表示マークは当該マークが形成された前記ラベル部又は前記ラベルタブで印刷パターンが同じである所定範囲を有し、
前記各ラベル部に形成される前記可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程であって、前記固定表示マークの目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域とし、前記可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域として、前記非マスク領域に光を照射することによって得られる反射光又は透過光の検知情報によって前記可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程を備えた、ラベル長尺体の製造方法。
【請求項2】
固定表示マークの目標形成範囲は、一部が前記非マスク領域で、当該一部を除く他の部分が前記マスク領域であり、前記非マスク領域は前記マスク領域で囲われている、請求項1に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項3】
前記検査工程では、前記反射光を撮像して得られる検査画像をマスター画像と比較して、前記可変表示領域の印刷不良の有無を確認する、請求項1又は2に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項4】
前記ラベル部又は前記ラベルタブには、前記固定表示領域で囲われ前記固定表示マークの目標形成範囲となる窓部が形成され、
前記窓部は、その全体が前記固定表示マークの目標形成範囲であり、
前記検査工程では、前記窓部の少なくとも一部を非マスク領域とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項5】
前記ラベルタブには、前記固定表示領域で囲われ前記固定表示マークの目標形成範囲となる窓部が形成され、
前記窓部は、その全体が前記固定表示マークの目標形成範囲であり、
前記固定表示領域は、前記ラベル長尺体の長手方向に連続して、前記各ラベルタブに帯状に形成され、
前記検査工程では、前記窓部の少なくとも一部を非マスク領域とする、請求項1又は2に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項6】
前記検査工程では、前記窓部を透過する前記透過光が所定の閾値を超えるときに前記可変表示領域の印刷不良ありと判定する、請求項5に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項7】
前記可変表示領域は、複数種の印刷インキ又はトナーを用いて形成され、
前記窓部は、前記ラベル部又は前記ラベルタブにおいて、前記可変表示領域を形成する前記各印刷インキ又は前記各トナーの少なくとも2種類につき、種類毎に少なくとも1つ形成され、
前記固定表示マークは、前記各印刷インキ又は前記各トナーを用いて、当該インキ又は当該トナー毎に異なる前記窓部にそれぞれ形成される、請求項4に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項8】
前記可変表示領域は、複数種の印刷インキ又はトナーを用いて形成され、
前記固定表示マークは、前記各印刷インキ又は前記各トナーの少なくとも2種類を用いて、当該インキ又は当該トナー毎に異なる部分にそれぞれ形成されるか、又は前記各印刷インキ又は前記各トナーを重ねて形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項9】
前記ラベル部の一方の端部に前記固定表示マークが形成され、前記ラベル部の他方の端部に前記固定表示領域が形成される、請求項7又は8に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項10】
前記固定表示マークは、前記可変表示領域を形成する全ての色材を用いて形成される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項11】
前記固定表示マークは、全体が無模様の印刷パターンで形成される、請求項1〜10に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項12】
有版印刷により前記ラベル長尺体を構成する長尺状ラベル基材上に前記固定表示領域を形成する有版印刷工程と、
無版印刷により前記長尺状ラベル基材上に前記可変表示領域と前記固定表示マークを形成する無版印刷工程と、
を備えた、請求項1〜11のいずれか1項に記載のラベル長尺体の製造方法。
【請求項13】
切断されることによって個々のラベルとなる部分である複数のラベル部と、
前記各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、
前記各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域と、
前記可変表示領域を形成する印刷インキ又はトナーの少なくとも1種を用いて形成された複数の固定表示マークと、
を備え、
前記各ラベル部、前記各ラベル部から選択される複数の前記ラベル部、前記各ラベル部と幅方向に併設される各ラベルタブ、又は前記各ラベルタブから選択される複数の前記ラベルタブには、前記固定表示領域で囲われた単数又は複数の窓部が形成され、
前記各固定表示マークは、前記窓部に形成され、前記窓部が形成された前記ラベル部又は前記ラベルタブで印刷パターンが同じである所定範囲を有する、ラベル長尺体。
【請求項14】
前記可変表示領域は、複数種の印刷インキ又はトナーを用いて形成され、
前記窓部は、前記ラベル部又は前記ラベルタブにおいて、前記可変表示領域を形成する前記各印刷インキ又は前記各トナーの少なくとも2種類につき、種類毎に少なくとも1つ形成され、
前記固定表示マークは、前記各印刷インキ又は前記各トナーを用いて、当該インキ又は当該トナー毎に異なる前記窓部にそれぞれ形成されている、請求項13に記載のラベル長尺体。
【請求項15】
前記可変表示領域は、複数種の印刷インキ又はトナーを用いて形成され、
前記固定表示マークは、1つの前記窓部において、前記各印刷インキ又は前記各トナーの少なくとも2種類を用いて、当該インキ又は当該トナー毎に前記窓部の異なる部分にそれぞれ形成されているか、又は前記各印刷インキ又は前記各トナーを重ねて前記窓部の全体に一様に形成されている、請求項14に記載のラベル長尺体。
【請求項16】
前記ラベル部の一方の端部に前記固定表示マークが形成され、前記ラベル部の他方の端部に前記固定表示領域が形成されている、請求項13〜15のいずれか1項に記載のラベル長尺体。
【請求項17】
ラベル基材と、
前記ラベル基材上に形成された有版印刷層により形成される第1表示領域と、
前記ラベル基材上に形成された無版印刷層により形成される第2表示領域と、
前記第1表示領域で囲われた少なくとも1つの窓部と、
前記無版印刷層を形成する印刷インキ又はトナーの少なくとも1種を用いて前記窓部に形成された表示マークと、
を備え、
前記表示マークは、前記ラベル基材の端部同士を重ね合わせて当該ラベル基材を筒状体に成形したときに当該筒状体の内側に位置する内側端部となる部分に形成されており、
前記内側端部の外側に重ね合わされる外側端部となる部分には、前記第1表示領域が形成され、前記表示マークが当該第1表示領域で覆われる、ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル長尺体の製造方法に関し、より詳しくは固定表示領域と可変表示領域を含むラベル長尺体の製造方法に関する。また、本発明は、ラベル及びラベル長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルなどの容器には、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を付与するために、シュリンクラベル等のラベルが装着されている。ラベルには、商品名や絵柄を設けるために印刷層が形成される。かかる印刷層はグラビア印刷やフレキソ印刷等の有版印刷により形成されることが一般的であるが、近年、トナーを用いた電子写真方式の印刷機により当該印刷層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、インクジェット方式の印刷機を用いて印刷層を形成する方法も提案されている。
【0003】
電子写真方式やインクジェット方式は、版を必要としない無版印刷法である。無版印刷法は、有版印刷法と比べて、可変印刷が容易、グラデーションが綺麗、小さな文字をシャープに印刷可能、デザイン性に優れる等のメリットがある。他方、有版印刷法は、無版印刷法と比べて、金や銀、パール等の色を鮮明に表現できる、印刷濃度が高い、彩度が高い等のメリットがある。そこで、有版印刷法のメリットと無版印刷法のメリットの両方を活かすために、ラベルの一部に有版印刷層を形成し、他の一部に無版印刷層を形成する印刷形態が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−013443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ラベルは、長尺状のラベル基材に印刷層を形成してなるラベル長尺体を個々のラベルサイズに切断することで製造される。その際、個々のラベルとなる部分である各ラベル部に目的とする印刷表示が形成されているか否かを検査し、印刷抜けや印刷ズレ等があるラベル部を不良品として取り除く必要がある。かかる検査は、例えば各ラベル部に形成された印刷表示の画像を取得し、当該画像と目的とする印刷表示の画像(マスター画像)とを比較して行われるが、各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域が形成される場合、当該領域が印刷不良として認識される。そのため、可変表示領域をマスクして各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域のみを検査する方法も考えられる。しかし、この場合は可変表示領域の印刷不良が検知できないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、可変表示領域についても印刷不良の有無を検査することが可能なラベル長尺体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るラベル長尺体の製造方法は、切断されることによって個々のラベルとなる部分であるラベル部を長手方向に複数含み、前記各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、前記各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域とが形成されたラベル長尺体を製造する方法であって、前記各ラベル部、前記各ラベル部から選択される複数の前記ラベル部、前記各ラベル部と幅方向に併設される各ラベルタブ、又は前記各ラベルタブから選択される複数の前記ラベルタブには、前記可変表示領域を印刷する工程において、前記可変表示領域の形成と共に固定表示マークが形成され、前記各固定表示マークは当該マークが形成された前記ラベル部又は前記ラベルタブで印刷パターンが同じである所定範囲を有し、前記各ラベル部に形成される前記可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程であって、前記固定表示マークの目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域とし、前記可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域として、前記非マスク領域に光を照射することによって得られる反射光又は透過光の検知情報によって前記可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程を備えることを特徴とする。ここで、長尺体とは長手方向の長さが長手方向に垂直な幅方向の長さに比して十分に長い形状のものを意味する。長尺体は、例えば長手方向の長さが幅方向の長さの5倍以上、好ましくは20倍以上である。
【0008】
本発明に係るラベル長尺体は、切断されることによって個々のラベルとなる部分である複数のラベル部と、前記各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、前記各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域と、前記可変表示領域を形成する印刷インキ又はトナーの少なくとも1種を用いて形成された複数の固定表示マークとを備え、前記各ラベル部、前記各ラベル部から選択される複数の前記ラベル部、前記各ラベル部と幅方向に併設される各ラベルタブ、又は前記各ラベルタブから選択される複数の前記ラベルタブには、前記固定表示領域で囲われた単数又は複数の窓部が形成され、前記各固定表示マークは、前記窓部に形成され、前記窓部が形成された前記ラベル部又は前記ラベルタブで印刷パターンが同じである所定範囲を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るラベルは、ラベル基材と、前記ラベル基材上に形成された有版印刷層により形成される第1表示領域と、前記ラベル基材上に形成された無版印刷層により形成される第2表示領域と、前記第1表示領域で囲われた少なくとも1つの窓部と、前記無版印刷層を形成する印刷インキ又はトナーの少なくとも1種を用いて前記窓部に形成された表示マークとを備え、前記表示マークは、前記ラベル基材の端部同士を重ね合わせて当該ラベル基材を筒状体に成形したときに当該筒状体の内側に位置する内側端部となる部分に形成されており、前記内側端部の外側に重ね合わされる外側端部となる部分には、前記第1表示領域が形成され、前記表示マークが当該第1領域で覆われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るラベル長尺体の製造方法によれば、固定表示マークを用いることにより、各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域についても印刷不良の有無を検査することができる。固定表示マークの目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域として検査を行うため、目的とする可変表示領域が形成されている場合には、検査対象となる非マスク領域に固定表示マークのみが現れるため、当該可変表示領域は印刷不良として認識されることがない。他方、例えば許容範囲を超える可変表示領域の印刷ズレが発生した場合には、非マスク領域に固定表示マーク以外の可変表示部分が現れることにより、当該印刷ズレを検知することができる。また、可変表示領域の印刷抜けが発生した場合には、可変表示領域の一部である固定表示マークも形成されないため、当該印刷抜けを検知することができる。
【0011】
本発明に係るラベル長尺体は、印刷不良の無い可変表示領域がそれぞれ形成された複数のラベル部を有する。また、本発明に係るラベルでは、印刷不良が無い第2表示領域(ラベル長尺体の可変表示領域に対応する領域)が形成されており、且つ使用状態で第1表示領域(ラベル長尺体の固定表示領域に対応する領域)により隠蔽される部分に表示マーク(ラベル長尺体の固定表示マークに対応するマーク)が形成されているため、例えば当該マークが目立ち見栄えが損なわれるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の一例であるラベルを表側から見た図である。
図2図1中のAA線断面図である。
図3】実施形態の一例であるラベル長尺体を表側から見た図である。
図4】実施形態の一例である検査工程の手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態の一例である検査工程を説明するための図である。
図6】実施形態の一例である検査工程を説明するための図である。
図7】実施形態の一例である筒状ラベルの製造工程を説明するための図である。
図8】実施形態の他の一例であるラベルを表側から見た図である。
図9図8中のBB線断面図である。
図10】実施形態の他の一例であるラベルを表側から見た図である。
図11】実施形態の他の一例である検査工程を説明するための図である。
図12】実施形態の他の一例である検査工程の手順を示すフローチャートである。
図13】実施形態の他の一例である検査工程を説明するための図である。
図14】実施形態の他の一例である検査工程を説明するための図である。
図15】実施形態の他の一例であるラベル長尺体を表側から見た図である。
図16】実施形態の他の一例であるラベル長尺体を表側から見た図である。
図17】被検査部の他の一例を示す図である。
図18】被検査部の他の一例を示す図である。
図19】実施形態の他の一例であるラベル及びその筒状体を示す図である。
図20】実施形態の他の一例であるラベル及びその筒状体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本発明の適用は以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0014】
本明細書では、ラベルが容器等の被装着物に装着された状態で、被装着物側を向くラベルの面を「裏面」、裏面と反対側の面を「表面」とし、ラベルの各構成要素についても「表裏」の用語を使用して相対的な位置関係を説明する。また、ラベルを筒状に成形してなる筒状ラベルでは、ラベルの裏面が筒の内側に向く内面となる。また、本明細書において「端縁」とは、印刷領域を例に挙げて説明すると、印刷領域の端に位置する部分を意味し、「端部」とは印刷領域の端縁及びその近傍部分を意味する。
【0015】
以下では、熱収縮性を有するシュリンクラベルであるラベル10,60,70を例示するが、本発明に係るラベルは、例えば熱収縮性を有さない巻き付けラベル、ストレッチラベル、タックラベル等に適用することもできる。
【0016】
図1及び図2に、実施形態の一例である製造方法によって得られるラベル10を示す。図1及び図2に例示するように、ラベル10は、ラベル基材11と、ラベル基材11上に形成された有版印刷層12と、ラベル基材11上に形成された無版印刷層13とを備える。有版印刷層12は有版印刷法により形成される印刷層であり、無版印刷層13は無版印刷法により形成される印刷層である。いずれの印刷層も、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を表示するための印刷層である。
【0017】
詳しくは後述するが(後述の図3参照)、ラベル10は、ラベル長尺体30を用いて製造される。ラベル長尺体30は、切断されることによって個々のラベル10となる部分であるラベル部33を長手方向に複数含み、各ラベル部33で印刷パターンが同じである固定表示領域と、各ラベル部33で印刷パターンが異なる可変表示領域とが形成された長尺体である。ラベル長尺体30の製造方法は、ラベル長尺体30の構成材料(長尺状ラベル基材31、各種印刷インキ)を準備する準備工程と、固定表示領域を形成する印刷工程と、可変表示領域と固定表示マーク14とを形成する印刷工程と、可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程とを有する。各ラベル部33、又は各ラベル部33とラベル長尺体30の幅方向に併設される各ラベルタブ94(後述の図11参照)には、可変表示領域を印刷する工程において、可変表示領域の形成と共に固定表示マークが形成され、各固定表示マークは各ラベル部33又は各ラベルタブ94で印刷パターンが同じである所定範囲を有する。そして、検査領域では、固定表示マークの目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域として、非マスク領域に光を照射することによって得られる反射光又は透過光の検知情報によって可変表示領域の印刷不良の有無を確認する。
【0018】
本実施形態では、ラベル10において、有版印刷領域Z12のうちラベル10の表側から見える領域がラベル長尺体30の上記固定表示領域に対応する第1表示領域であり、無版印刷領域Z13のうちラベル10の表側から見える領域であって、ラベル長尺体30の上記固定表示マーク14に対応する表示マークを除く領域が、ラベル長尺体30の上記可変表示領域に対応する第2表示領域である。第1表示領域は、ラベル長尺体30を切断して製造される複数のラベル10において、印刷パターンが同じとなる領域である。第2表示領域は、ラベル長尺体30を切断して製造される複数のラベル10において、印刷パターンが異なる領域である。ここで、有版印刷領域Z12とはラベル基材11上において有版印刷層12が形成された領域を意味し、無版印刷領域Z13とはラベル基材11上において無版印刷層13が形成された領域を意味する。なお、ラベル10の表示マークと、ラベル長尺体30の固定表示マーク14は同じものであるから、本明細書では、ラベル10においても固定表示マーク14の用語を用いて説明する。また、有版印刷領域Z12、無版印刷領域Z13等の用語も、ラベル10及びラベル長尺体30の両方で使用する。
【0019】
ラベル10は、例えば平面視矩形形状を有する。ラベル10の形状はラベル基材11の形状によって決定される。ラベル基材11は、上記各印刷層の支持体として機能する。ラベル基材11は、例えば熱収縮性を有するシュリンク基材であって、縦方向と横方向の熱収縮率が異なる。図1に示すラベル10は、縦方向に延びる短辺と、横方向に延びる長辺とを有し、横方向が主収縮方向となる。ラベル10(ラベル基材11)の形状は、平面視矩形形状に限定されず、楕円形状、円形状、矩形形状以外の多角形状、端縁が波形等に形成された形状などであってもよい。本明細書において平面視とは、ラベル10(ラベル基材11)の表裏面に対して垂直に見た状態を意味する。
【0020】
有版印刷層12は、ラベル基材11の端部と後述する窓領域Zを除くラベル基材11の裏面上に形成されている。ラベル基材11の一方の短辺に沿った端部には、有版印刷層12が形成されないラベル基材11の裏面が露出した露出領域が他の端部の露出領域よりも幅広に設けられている。以下、当該幅広の露出領域を一方側露出領域18(図1)とする。ラベル10は、例えば長辺方向を筒周方向として筒状ラベル20に成形され、一方側露出領域18に接合部21が形成される(後述の図7参照)。有版印刷層12は、接合部21の接合強度向上等の観点から少なくとも接合部21となる部分には形成されないことが好ましい。但し、粘着テープを用いて筒状ラベル20の筒周方向端部同士を接合する場合など、接合形態によってはラベル基材11の端縁まで有版印刷層12等を形成してもよい。
【0021】
ラベル基材11上には、有版印刷領域Z12によって周りが囲まれた領域である窓領域Zが設けられている。図1に示す有版印刷領域Z12は、その全体がラベル10の表側から見えるので、その全体が第1表示領域である。窓領域Zとは、有版印刷領域Z12によって周りが囲まれ、且つ有版印刷層12が形成されていない領域である。窓領域Zには、透明の有版印刷層が形成されていてもよい。なお、窓領域Zの端縁となるのは有版印刷領域Z12の端縁E12である。窓領域Z内には、無版印刷層13が形成されている。窓領域Zは、無版印刷層13により表示される文字や絵柄が有版印刷層12に隠れることなくラベル10の表側から見える領域(以下、「無版印刷層表示領域」という場合がある)となる。図1では、窓領域Zの全体に無版印刷層13が形成され、窓領域Zには第2表示領域と固定表示マーク14とが形成されている。図1等で低密度のドットで表示した部分が第2表示領域であり、高密度のドットで表示した部分が固定表示マーク14である。無版印刷層表示領域とは、第2表示領域(可変表示領域)と、固定表示マーク14とを含む領域である。
【0022】
窓領域Zの端縁となる有版印刷領域Z12の端縁E12は、環状に形成されている。窓領域Zは、平面視円形状を有し、ラベル基材11の長辺方向中央部において一方の長辺寄りに形成されている。窓領域Zの形状、配置、及び寸法は、図1に示すものに限定されず、例えば平面視楕円形状、多角形状、端縁E12が波形等に形成された形状などであってもよい。また、窓領域Zはラベル基材11上の任意の位置に形成できる。窓領域Zは1つに限定されず、複数設けられていてもよい。なお、窓領域Zは、全周が有版印刷領Z12で囲われたものに限定されず、窓領域Zの端縁の少なくとも一部が有版印刷領域Z12の端縁と同じであるもの(例えば、窓領域の端縁の他部はラベル10の端縁と同じ)であってもよい。
【0023】
無版印刷層13は、ラベル基材11の裏面上に形成されている。無版印刷層13は、ラベル基材11の窓領域Zに形成されると共に、窓領域Zの周囲に位置する有版印刷層12の裏側に重なって形成されている。図1に示す例では、無版印刷層13が、窓領域Z内の全域に形成されると共に、窓領域Zの周囲に位置する有版印刷層12の裏側に重なって形成されている。窓領域Z内に形成された無版印刷層13、及び窓領域Zの周囲に位置する有版印刷層12の裏側に重なって形成された無版印刷層13は連続している。
【0024】
無版印刷層13は、有版印刷層12の裏側において所定幅を有する環状に設けられており、無版印刷領域Z13の全ての端縁E13は有版印刷層12(有版印刷領域Z12)の裏側に位置する。無版印刷領域Z13は、端縁E13が有版印刷領域Z12の端縁E12と交差することなく、有版印刷領域Z12の裏側に重なっている。無版印刷領域Z13の端縁E13を有版印刷領域Z12の裏側に重ねることで、無版印刷領域Z13の端縁E13を目立ち難くすることができる。無版印刷領域Z13の有版印刷領域Z12の裏側に重なった部分がラベル10の表側から透けて見えない場合は、無版印刷領域Z13のうち有版印刷領域Z12の裏側に重なった部分は無版印刷層表示領域ではない。他方、無版印刷領域Z13の有版印刷領域Z12の裏側に重なった部分がラベル10の表側から透けて見える場合、無版印刷領域Z13の全体が無版印刷層表示領域である。
【0025】
無版印刷領域Z13は、例えば窓領域Zよりも直径が大きな平面視円形状を有している。無版印刷領域Z13の形状は、窓領域Zの形状に対応して適宜変更可能であり、平面視楕円形状、多角形状、端縁E13が波形等に形成された形状などであってもよい。なお、無版印刷領域Z13の形状は窓領域Zの形状と異なっていてもよいが、上述の通り端縁E13は窓領域Z内に存在せず有版印刷領域Z12の裏側に位置することが好ましい。
【0026】
無版印刷層13は、有版印刷領域Z12によって周りが囲まれ、且つ有版印刷層12が形成されていない窓領域Zのみにおいて有版印刷層12を介することなくラベル基材11の裏面上に形成されている。なお、窓領域Z以外に無版印刷層表示領域を設けてもよく、例えばラベル基材11の端部近傍等の有版印刷領域によって周りが囲まれていない領域に無版印刷層表示領域を設けてもよい。
【0027】
ラベル10には、上述のように、固定表示マーク14が形成されている。固定表示マーク14は、無版印刷領域Z13の印刷不良の有無を検査する際に使用される印刷表示であって、無版印刷領域Z13の他の部分(第2表示領域)と共に無版印刷によって形成される。ラベル長尺体30を用いて連続生産される複数のラベル10において、無版印刷領域Z13のうち第2表示領域は複数の異なる印刷パターンで形成されるが、無版印刷領域Z13の一部である固定表示マーク14の印刷パターンはいずれのラベル10でも同じである。
【0028】
固定表示マーク14は、有版印刷層12に隠れることなくラベル10の表側から見える窓領域Zに形成されており、第2表示領域と共に無版印刷層表示領域を構成する。固定表示マーク14は、平面視円形状を有し、無版印刷層表示領域の中央よりも端縁寄りに、即ち有版印刷領域Z12の端縁E12の近傍に形成されている。詳しくは後述するが(図5参照)、固定表示マーク14は、その全体が無模様で濃淡差のない単一色で形成されることが好ましい。
【0029】
固定表示マーク14の形状、配置、及び寸法は、図1に示すものに限定されず、例えば固定表示マーク14の形状は平面視楕円形状、多角形状、端縁E14が波形等に形成された形状などであってもよい。但し、無版印刷領域Z13の印刷ズレの判定精度向上等の観点から、好ましくは平面視円形状(真円形状)又は四角形状である。固定表示マーク14は、ラベル長尺体30の長手方向に2mm以上の長さを有するものが好ましい。さらに、ラベル長尺体30の幅方向も2mm以上の長さを有するものがより好ましい。固定表示マーク14は、例えば直径2mmの円以上の大きさを有するマークが好ましい。固定表示マーク14は1つに限定されず、複数設けられていてもよい。
【0030】
固定表示マーク14は、無版印刷領域Z13の他の部分と調和し、無版印刷領域Z13に表示されるデザインの一部を構成することが好適である。デザインの一部を構成しない場合は、例えば検査に支障がない範囲で固定表示マーク14の大きさを小さくし、また固定表示マーク14を無版印刷層表示領域の端部に形成してマークを目立たなくしてもよい。固定表示マーク14は、無版印刷領域Z13の第2表示領域を形成する全ての色材、例えばシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)に発色する各色材を用いて形成されることが好ましい。固定表示マーク14は、第2表示領域で使われる全ての色を用いて形成することが特に好ましいが、これに限定されず、第2表示領域で使われる少なくとも1の色で形成することが好ましい。例えば、固定表示マーク14は、ブラックを除くCMYのみ形成されてもよいし、CM、MY、CY、CK、Cのみ等で形成されてもよい。この場合、無版印刷領域Z13の検査において、無版印刷領域Z13を構成する各色材の濃度が目標範囲内にあるか否かも確認することができる。
【0031】
ラベル10は、無版印刷層13に接して、無版印刷層13とラベル基材11との間に形成されたアンカーコート層15を備える。アンカーコート層15は、例えばラベル基材11及び有版印刷層12と無版印刷層13との密着性を向上させる機能を有し、少なくともラベル基材11と無版印刷層13との間に形成される。アンカーコート層15は、好ましくは無色透明であるが、無版印刷層13がラベル10の表側から視認可能であれば着色されていてもよい。
【0032】
アンカーコート層15は、例えば無版印刷層13の印刷ズレを考慮して、無版印刷領域Z13の全体を含み、且つ無版印刷領域Z13よりも大きな領域に形成されることが好適である。アンカーコート層15は、無版印刷層13とラベル基材11との間(窓領域Zの全域)、及び無版印刷層13と有版印刷層12との間(端縁E12と端縁E13とで囲われる環状領域)に介在している。換言すると、無版印刷層13はアンカーコート層15上から食み出すことなく、アンカーコート層15の裏側に重なって形成されている。なお、ラベル基材11等と無版印刷層13との密着性が良好である場合には、アンカーコート層15を設けない形態としてもよい。
【0033】
ラベル10は、無版印刷層13を覆って、無版印刷層13のラベル基材11と反対側に形成された保護層16を備える。無版印刷層13の表側にはラベル基材11が存在するため、表側からの無版印刷層13の損傷は抑制されるが、保護層16を設けることで無版印刷層13の裏側からの損傷についても抑制される。保護層16は、例えば無色透明であるが、白色顔料等の添加により着色されていてもよい。保護層16は、例えば白色顔料を含み、ラベルを表側から見たときに、有版印刷層12及び無版印刷層13のデザインが透けて見えることを防止する。なお、保護層16は無版印刷法により形成されてもよいが、保護性に優れる保護層16が容易に形成できる理由から、有版印刷法により形成されることが好ましい。即ち、保護層16は有版保護印刷層であることが好ましい。
【0034】
保護層16は、無版印刷層13上だけでなく、有版印刷層12上にも形成される。保護層16は、ラベル基材11の端部に形成されてもよいが、筒状ラベル20の接合部21が形成される部分には形成されないことが好ましい。保護層16は、無版印刷領域Z13及び有版印刷領域Z12の全体を覆い、ラベルの最裏層として形成されている。最裏面に形成された保護層16は、ラベル10の裏面の滑り性、耐摩擦性等を向上させるため、例えば滑剤等を含有していていることが好ましい。
【0035】
ラベル10では、無版印刷領域Z13の端縁E13と重なる位置、即ち窓領域Zの周囲において、表側(ラベル基材11側)から有版印刷層12、アンカーコート層15、無版印刷層13、及び保護層16が順に積層形成されている。窓領域Z内においては、表側からアンカーコート層15、無版印刷層13、及び保護層16が順に積層形成されている。また、窓領域Zから離れた部分には、表側から有版印刷層12、及び保護層16が順に積層形成されている。
【0036】
以下、ラベル10の各構成要素について更に詳説する。
【0037】
[ラベル基材]
ラベル基材11は、例えば熱収縮性を有するシュリンク基材であって、シュリンクフィルム(熱収縮性フィルム)から構成されることが好ましく、無色透明なシュリンクフィルムがより好ましい。ラベル基材11は、有版印刷層12や無版印刷層13の支持体となり、ラベル10の強度や剛性、シュリンク特性(収縮特性)に主たる影響を及ぼす。なお、ラベル基材11は、シュリンク基材に限定されず、実質的に熱収縮性を有さない無延伸基材、ストレッチ性、非収縮性基材を有するストレッチ基材等であってもよい。例えば、ラベル10が巻き付けラベルである場合は、ラベル基材11に無延伸フィルムや非収縮性フィルムが適用され、ラベル10がストレッチラベルである場合は、ラベル基材11にストレッチ性を有するストレッチフィルムが適用される。ラベル基材11を構成する樹脂フィルムとしては、特に限定されず、従来公知の樹脂フィルムを用いることができる。
【0038】
ラベル基材11を構成する樹脂の種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。ラベル基材11がストレッチフィルムである場合、フィルムの主成分として低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
【0039】
ラベル基材11を構成する樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、同種又は異種の樹脂を積層した積層フィルムであってもよい。樹脂フィルムの好適な一例としては、ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系樹脂を主成分とするポリスチレン系フィルム、ポリエステル系樹脂を外層とし、ポリオレフィン系樹脂又はポリスチレン系樹脂を内層とした異種積層フィルムや、ポリスチレン系樹脂を外層とし、ポリオレフィン系樹脂を内層とした異種積層フィルムが挙げられる。
【0040】
上記ポリエステル系フィルムに用いられるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂やポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。中でも、PET系樹脂が好ましい。
【0041】
上記PET系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート(PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、ネオペンチルグリコール(NPG)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(NPG共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、ジエチレングリコール等のエチレングリコール以外のジオール成分を共重合成分として用いた共重合ポリエステルなどのジオール変性PET、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を共重合成分として用いたジカルボン酸変性PET、ジオール成分とジカルボン酸成分の両方が共重合成分を含むジオール・ジカルボン酸変性PETなどが挙げられる。
【0042】
上記ポリオレフィン系フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒系LLDPE(mLLDPE)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、環状オレフィン樹脂などが挙げられる。特に、ポリオレフィン系フィルムとしては、環状オフィン樹脂を外層とするものが好ましい。例えば、環状オレフィン樹脂を外層とし、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を内層(中心層)とするものが好ましい。
【0043】
上記ポリスチレン系フィルムに用いられるポリスチレン系樹脂としては、構成モノマーとして、例えばスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体を1種又は2種以上含む樹脂が挙げられる。好適な例としては、汎用ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレン共重合体(SBIS)、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0044】
ラベル基材11がシュリンクフィルムである場合、当該フィルムは、良好なシュリンク特性を発揮する観点から、少なくとも一方向に配向したフィルム(例えば、一方向に配向したフィルムや、一方向及び一方向と直交する方向に配向したフィルム)であることが好ましい。ラベル基材11は、シュリンクフィルムの配向方向に主に熱収縮する。シュリンクフィルムが積層フィルムの場合には、積層フィルム中の少なくとも1層のフィルム層が配向していることが好ましく、全てのフィルム層が少なくとも一方向に配向していることがより好ましい。シュリンクフィルムとしては、一方向に配向した一軸配向フィルム(一方向に主に延伸され、当該一方向と直交する方向にわずかに延伸された、実質的に一方向に延伸されたフィルムを含む)、又は一方向及び一方向と直交する方向に配向した二軸配向フィルムが用いられることが好ましい。
【0045】
上記配向フィルムは、例えばテンター方式、ロール方式、チューブ方式等によって、未延伸フィルムを少なくとも一方向に延伸することで得られる。例えば、一軸配向フィルムは未延伸フィルムを一方向に延伸することで得られ、二軸配向フィルムは未延伸フィルムを一方向及び当該一方向と直交する方向に延伸することで得られる。一軸配向フィルムは一軸延伸フィルムとも呼ばれ、二軸配向フィルムは二軸延伸フィルムとも呼ばれる。
【0046】
上記シュリンクフィルムの主収縮方向の熱収縮率は、90℃の熱水に10秒浸漬する条件において、例えば30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜85%、特に好ましくは45〜80%である。上記シュリンクフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率(90℃の熱水に10秒浸漬)は、特に限定されないが、−3〜15%が好ましく、−1〜10%がより好ましい。なお、シュリンクフィルムの「主収縮方向」とは最も熱収縮率が大きい方向であり、一般的には主延伸方向が主収縮方向となる。シュリンクフィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは15μm〜80μm、特に好ましくは20μm〜60μmである。
【0047】
上記シュリンクフィルムは、溶融製膜又は溶液製膜などの慣用の方法によって作製することができる。積層構成のシュリンクフィルムを作製する場合、積層の方法には、例えば共押出法、ドライラミネート法などを用いることができる。シュリンクフィルムには、市販品を用いることも可能である。例えば、東洋紡績(株)製「SV−808」、三菱樹脂(株)製「LX−10S」、「LX−18S」、「LX−61S」(以上、ポリエステル系フィルム);シーアイ化成(株)製「ボンセット」、グンゼ(株)製「GMLS」(以上、ポリスチレン系フィルム);グンゼ(株)製「FL」(ポリオレフィン系フィルム);三菱樹脂(株)製「エコロージュ」(ポリ乳酸系フィルム);三菱樹脂(株)製「DL」、グンゼ(株)製「HGS」(以上、表層がポリエステル系樹脂、中心層がポリスチレン系樹脂の積層フィルム)等が挙げられる。
【0048】
ラベル基材11は、必要に応じて、コロナ放電処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。また、ラベル基材11にはシュリンク特性等を損なわない範囲で上記各有版印刷層、無版印刷層13、アンカーコート層15、及び保護層16以外の層を設けてもよい。特にコロナ放電処理は、濡れ性(濡れ張力)を向上させ、印刷特性等を改善させることが可能となる。このため、例えばラベル基材11の印刷特性が低い場合にラベル基材11の裏面側に当該処理を施すことが好適である。また、アンカーコート層15と無版印刷層13との密着性を向上させるために、例えばアンカーコート層15に重ねて無版印刷層13を形成する前にアンカーコート層15の裏面側に当該処理を行い無版印刷層13の印刷を行うことが好適である。
【0049】
[有版印刷層]
有版印刷層12は、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を表示するための印刷層であって、任意の印刷パターンで形成される。印刷パターンとは、文字や絵柄等のデザイン、及びデザインの配置を意味する。有版印刷層12は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法、スクリーン印刷法などの従来公知の有版印刷法により形成される。有版印刷法は、印刷層の文字や絵柄等に応じて作製された版を用いる印刷法である。例えば、グラビア印刷法には凹版が、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法には凸版が、スクリーン印刷法には孔版がそれぞれ用いられる。有版印刷層12の形成に適用される印刷法は、有版印刷法であれば特に限定されないが、好ましくはグラビア印刷法又はフレキソ印刷法であり、特に好ましくはグラビア印刷法である。グラビア印刷法は、綺麗な印刷層を短時間に形成できる優れた印刷法であり、一般的に無版印刷法よりも高速の印刷が可能である。
【0050】
有版印刷層12は、例えば色材及びバインダ樹脂を含み、また各種添加剤を含んでいてもよい。有版印刷層12は、従来公知の油性インキ(溶剤系インキ)又は水性インキを用いて形成できる。これらインキは、例えば色材と、バインダ樹脂と、任意の添加剤と、溶媒又は分散媒(以下、溶媒等という)とを含有し、バインダ樹脂や色材が溶媒等に溶解又は分散したものである。溶媒等は、バインダ樹脂等を溶解又は分散させることができれば特に限定されないが、水性インキの場合は水を主成分とする。
【0051】
有版印刷層12の色(色相、明度、彩度)は、文字や絵柄等のデザインに応じて任意に設定でき、例えば赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、金属色(銀色、金色等)、パール色等が挙げられる。有版印刷層12の色は、白色、黒色、灰色(無彩色)であってもよい。有版印刷層12は、例えば1種類の色材を含む1つの印刷層によって、又は互いに異なる色材を含む2以上の印刷層を組み合わせることによって文字や絵柄等を形成している。有版印刷層12は、金属色を示す場合は金属顔料を含み、パール色を示す場合はパール顔料を含む。なお、金属色及びパール色は無版印刷法により形成することは困難である。
【0052】
有版印刷層12は、例えばラベル基材11上に所望の印刷インキがドット状に多数付着して形成されており、当該ドットの大きさとラベル基材11の単位面積当たりのドット数によって有版印刷層12の色(特に濃淡等)が表現される。印刷インキのドット密度、寸法等は、版の凹凸パターンを変更することにより調整可能である。有版印刷層12には版の凹凸パターンの跡が残っている。
【0053】
有版印刷層12に含まれる色材は、文字や絵柄等のデザインに応じて所望の色を表現できるものであれば特に限定されず、従来公知の染料や顔料を用いることが可能である。顔料としては、無機顔料、有機顔料のいずれを用いてもよい。色材の具体例としては、シアン顔料(例えば、銅フタロシアニンブルー、ウルトラマリン青、プロシア青等)、マゼンダ顔料(例えば、縮合アゾ系顔料、鉛丹等)、イエロー顔料(例えば、アゾレーキ系顔料、黄鉛、亜鉛黄等)、及びブラック顔料(例えば、カーボンブラック、チタンブラック等)が挙げられる。なお、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各顔料によって、又はこれらの2種類以上を組み合わせることによって、上記各色を表現することができる。また、有彩色を表現できる顔料に加えて、光沢調整などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料を使用してもよい。
【0054】
有版印刷層12に含まれるバインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂などから選択される1種又は2種以上の混合物が例示できる。中でも、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂が好ましい。
【0055】
有版印刷層12は、必要に応じて、可塑剤、沈降防止剤、分散剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色別れ防止剤、香料、消臭剤、消泡剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでいてもよい(無版印刷層13、アンカーコート層15、保護層16等についても同様)。有版印刷層12の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1μm〜5μmである。
【0056】
[無版印刷層]
無版印刷層13は、有版印刷層12と同様に、商品名や絵柄、製造者名、ロゴマーク、商品説明等を表示するための印刷層である。一方、無版印刷層13は、電子写真方式、インクジェット方式等の版を必要としない無版印刷法により形成される。電子写真方式、インクジェット方式等の無版印刷法によれば、製版にかかる時間やコストをカットすることができる。無版印刷法は、デジタル印刷法又はオンデマンド印刷法とも呼ばれ、グラビア印刷法のような高速印刷は難しいが、製版に時間やコストをかけることが難しい少数印刷(多品種小ロット品の印刷)に好適な方法である。連続生産される複数のラベル10において、無版印刷領域Z13の第2表示領域は複数の異なる印刷パターンで形成される。
【0057】
無版印刷層13は、例えば色材等を含有するトナーを含む。無版印刷層13の色(色相、明度、彩度)は、文字や絵柄等のデザインに応じて任意に設定でき、例えば赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫等が挙げられる。無版印刷層13の色は、白色、黒色、灰色(無彩色)であってもよい。トナーに含有される色材は特に限定されないが、トナーは上記のシアン顔料、マゼンダ顔料、イエロー顔料、及びブラック顔料(CMYKの各顔料)を含有することが好適である。無版印刷層13は、例えば1種類のトナーを含む1つの印刷層によって、又は互いに異なるトナーを含む2以上の印刷層を組み合わせることによって文字や絵柄等を形成している。なお、インクジェット方式で印刷する場合は、トナーに替えて印刷インキとして、インクジェット方式の印刷機に使用される液体インキ(インクジェット用の水性インキやUVインキ)が使用できる。
【0058】
トナーを用いた電子写真方式により形成された無版印刷層13を光学顕微鏡等で観察すると、印刷層を構成するトナーの粒子に起因したドットが確認できる。インクジェット方式で形成された無版印刷層13の場合は、インクジェット滴に起因したドットが確認できる。これらのドットは、一般的に有版印刷層12の版の凹凸に起因したドットよりも小さい。無版印刷層13は、無版印刷法により形成される印刷層であればよいが、生産性、意匠性等の観点から、好ましくはトナーを用いた電子写真方式により形成される。
【0059】
電子写真方式による無版印刷層13の形成は、例えば感光体ドラムに電荷を与えた後、トナーを載せたくない部分をレーザー等で描画して電荷を除去し、所望のパターンでトナーを感光体ドラム上に付着させ、ブランケットを介して該トナーをラベル基材11上に転写することで行われる。無版印刷層13が複数の色を有する場合は、上記工程を1色ずつラベル基材11に転写して表示を形成してもよいが、上記プロセスにより各色のトナーをブランケット上に1色ずつ転写して乾燥させた後、全ての色が載ったブランケットをラベル基材11に押し付けて転写し表示を形成してもよい。
【0060】
無版印刷層13を構成するトナーは、バインダ樹脂、ワックス、荷電制御剤(CCA)、所望の色材等を含有する粒子径が1〜15μm程度の粒子である。バインダー樹脂は、ワックス、CCA、顔料、添加剤等を結着する役割を担うものである。バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合系樹脂、スチレン−共役ジエン共重合体も含まれるものとする)、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、イソシアネート系樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン−ポリエステルグラフト共重合体などが挙げられ、耐ブロッキング性、低温定着性に優れる樹脂が好ましい。
【0061】
CCAは、帯電性を調整する機能を有し、クロム錯体等の負帯電型CCA、ニグロシン等の正帯電型CCAが例示できる。ワックスは、低温定着性や定着時における離型性をトナーに付与する機能を有し、天然ワックス、石油ワックス、合成ワックスのいずれを用いることもできる。上記添加剤としては、例えば表面処理剤、架橋剤、離型剤、流動性向上剤、金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア等)の微粒子の表面をシランカップリング剤で処理して疎水化したものなどが挙げられる。
【0062】
上記トナーには、一般的な複写機に使用されるものを使用することもできるが、印刷機に応じてそれに適合する専用品を使用することが好適である。トナーとしては、粉体トナーを使用してもよいし、液体トナーを使用してもよい。汎用性等の観点からは、粉体トナーが好ましい。他方、一般的に液体トナーは粉体トナーに比べて粒子径が小さい。そのため、液体トナーを用いた場合は、無版印刷層13の厚みを薄くすることができ、シュリンク加工の際に無版印刷層13の割れが発生し難くなる。
【0063】
粉体トナーである場合、トナーの平均粒子径(体積平均粒子径)は、特に限定されないが3〜8μm程度が好ましい。また、液体トナーである場合、トナーの平均粒子径(体積平均粒子径)は、特に限定されないが、1〜5μm程度が好ましい。無版印刷層13の厚みは、特に限定されないが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.2μm〜15μmがより好ましい。
【0064】
[アンカーコート層]
アンカーコート層15は、上述の通り無版印刷層13とラベル基材11との間、及び無版印刷層13と有版印刷層12との間に形成され、ラベル基材11に対して無版印刷層13の密着性を向上させる機能を有する。アンカーコート層15は、プライマー層とも呼ばれる。ラベル10では、窓領域Z及びその周囲にアンカーコート層15が形成されている。アンカーコート層15が無版印刷層13の表側に形成される場合、アンカーコート層15は無色透明な樹脂から構成されることが好ましい。
【0065】
アンカーコート層15は、ラベル基材11及び無版印刷層13の両者に対する密着性が良好な樹脂から構成される。具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられる。アンカーコート層15は、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版輪転印刷、スクリーン印刷等の従来公知の有版印刷法や、バーコーター、コンマコーター、スプレーコーター等の従来公知の汎用コーターを用いた塗工法により、上記樹脂を含有するアンカーコート剤をラベル基材11上に塗布し、乾燥固化して形成することができる。アンカーコート層15を形成するアンカーコート剤には、市販品を用いてもよい。アンカーコート層15の厚みは、特に限定されないが、0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜3μmがより好ましい。
【0066】
[保護層]
保護層16は、無版印刷層13が形成された無版印刷領域Z13の全体を覆って形成されることが好適である。保護層16は、無版印刷領域Z13を覆っていれば、無版印刷領域Z13と同じ範囲に同じ面積で設けられていてもよいが、好ましくは有版印刷層12が形成された有版印刷領域Z12を覆って形成される。保護層16は、例えば有版印刷層12及び無版印刷層13を保護すると共に、ラベルの最裏面に設けられた場合は被装着物と接触するラベル10の裏面に滑り性を付与する。保護層16は、無版印刷層13等の表側に形成される場合、無色透明な樹脂から構成されることが好ましい。一方、保護層16が無版印刷層13の裏側に形成される場合、保護層16は白色顔料等の色材を含んでいてもよい。
【0067】
保護層16を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等)、イソシアネート系樹脂、ロジン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)、イミン系樹脂などが例示できる。中でも、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を樹脂の主成分とすることが好ましい。また、保護層16は滑剤を含有することが好適であり、必要により可塑剤、沈降防止剤、分散剤、安定剤、硬化剤、消泡剤などの添加剤を含有していてもよい。保護層16は、上述のように白色顔料を含んでいてもよく、この場合、有版印刷層12及び無版印刷層13のデザインが透けて見えることを防止できる。
【0068】
上記滑剤としては、例えばポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス等の各種ワックス(ワックス類)や樹脂ビーズが挙げられる。滑剤の含有量は、特に限定されないが、保護層16の総重量に対して0.1〜20重量%が好ましく、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0069】
保護層16は、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版輪転印刷、スクリーン印刷等の従来公知の有版印刷法や、バーコーター、コンマコーター、スプレーコーター等の従来公知の汎用コーターを用いた塗工法により、上記樹脂を含有するインキをラベル基材11上に塗布し、乾燥固化して形成することができる。保護層16を形成するインキには、市販品を用いてもよい。保護層16は、有版印刷法により形成される有版保護印刷層であることが好ましい。保護層16の厚みは、特に限定されないが、0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜3μmがより好ましい。
【0070】
[ラベル長尺体]
図3は、ラベル長尺体30を表側から見た図である。図3に例示するラベル長尺体30は、長尺状ラベル基材31を備え、当該基材上に有版印刷層12、無版印刷層13等が形成されたものである。長尺状ラベル基材31は、ラベル長尺体30において各印刷層の支持体として機能し、本実施形態では、幅方向に主に熱収縮をする(主収縮方向が長尺状ラベル基材31の幅方向である)シュリンク基材である。
【0071】
ラベル長尺体30は、切断されることによって個々のラベル10となる部分であるラベル部33と、各ラベル部33で印刷パターンが同じである固定表示領域と、各ラベル部33で印刷パターンが異なる可変表示領域とを備える。ラベル長尺体30は、さらに、可変表示領域を形成する印刷インキ又はトナーの少なくとも1種を用いて各ラベル部33に形成された、各ラベル部33で印刷パターンが同じである固定表示マーク14を備える。ラベル長尺体30では、固定表示マーク14が全てのラベル部33に形成されている。このため、各ラベル部33における可変表示領域の印刷不良の有無をより確実に検出できる。
【0072】
ラベル長尺体30(長尺状ラベル基材31)は、縦方向に延びる短辺と、横方向に延びる長辺を有する、縦方向(幅方向)が主収縮方向であるラベル部33が複数つながって構成されている。ラベル長尺体30では、各ラベル部33の縦方向が長手方向、各ラベル部33の横方向が幅方向となるように形成されている。ラベル長尺体30は、幅方向に並ぶ3つのラベル長尺体32と、幅方向一端部に設けられたタブ35とを有する。つまり、ラベル長尺体30は、切断予定部αで切断されることにより、3つのラベル長尺体32と、1つのタブ35とに分離される。ラベル長尺体30には、各ラベル長尺体32の幅方向一端部に長手方向に沿って有版印刷層12等の各印刷層が形成されず長尺状ラベル基材31を構成するフィルム表面が露出した露出領域34が設けられている。露出領域34は、後述する長尺体接合部41及び接合部21(後述の図7参照)となる部分である。
【0073】
ラベル長尺体32とは、ラベル10の1枚分の横方向長さを有するラベル長尺体である。ラベル長尺体30(長尺状ラベル基材31)の幅は、ラベル10の3つ分の横方向長さと、タブ35の幅とを足した長さである。タブ35とは、ラベル10にならない部分であって、ラベル長尺体30の長手方向に沿って帯状に設けられ、本実施形態では、トリムマーク36C,36M,36Y,36Kが形成される部分である。各トリムマークは、有版印刷層12を構成する上記複数の印刷層の位置合わせに用いられるマークである。各トリムマークは、例えば平面視三角形状を有し、タブ35に所定間隔で形成されている。
【0074】
ここで、トリムマーク36Cとは、有版印刷層12を構成する複数の印刷層のうちシアン顔料を含有するインキにより形成される印刷層(以下、「印刷層C」とする)と共に形成され、印刷層Cの位置合わせに使用されるマークである。トリムマーク36Mとは、有版印刷層12を構成する複数の印刷層のうちマゼンダ顔料を含有するインキにより形成される印刷層(以下、「印刷層M」とする)と共に形成され、印刷層Mの位置合わせに使用されるマークである。トリムマーク36Yとは、有版印刷層12を構成する複数の印刷層のうちイエロー顔料を含有するインキにより形成される印刷層(以下、「印刷層Y」とする)と共に形成され、印刷層Yの位置合わせに使用されるマークである。トリムマーク36Kとは、有版印刷層12を構成する複数の印刷層のうちブラック顔料を含有するインキにより形成される印刷層(以下、「印刷層K」とする)と共に形成され、印刷層Kの位置合わせに使用されるマークである。
【0075】
ラベル長尺体30は、個々のラベル10となる部分であるラベル部33が長手方向に複数つながった長尺体である。また、ラベル長尺体30の幅方向にも複数のラベル部33が並んでいる。図3に示す例では、ラベル長尺体30の幅方向に3つのラベル部33が形成され、当該3つのラベル部33には同じ印刷パターンで無版印刷領域Z13が形成されている。ラベル長尺体30には、上述の通り、ラベル1枚分の横方向長さを有するラベル長尺体32が幅方向に3列形成されている。
【0076】
ラベル長尺体30は、可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程後に切断予定部αでスリットされ、3つのラベル長尺体32に分離される。ラベル長尺体32は、例えば後述する筒状ラベル長尺体40に成形され、切断予定部βで切断されて個々のラベルサイズに分離され、筒状に成形されたラベル10である筒状ラベル20が得られる。
【0077】
ラベル長尺体30を構成する各ラベル長尺体32において、各ラベル部33の無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷パターンは、他のラベル部33と異なる印刷パターンで形成される。ラベル長尺体32は、少なくとも2種類、好ましくはより多くの可変表示領域の印刷パターンを有し、ラベル長尺体32を構成する複数のラベル部33は2種類以上存在する。可変表示領域と共に無版印刷層表示領域を構成する固定表示マーク14の印刷パターンは、いずれのラベル部33においても同じ印刷パターンで形成されている。
【0078】
一方、ラベル長尺体30を構成する各ラベル長尺体32において、各ラベル部33の有版印刷領域Z12の印刷パターンは、いずれも同じ印刷パターンで形成される。本実施形態では、有版印刷領域Z12の全体がラベル10の表側から見えるため、有版印刷領域Z12の全体が有版印刷層表示領域である。有版印刷層表示領域は、各ラベル部33で同じ印刷パターンを有する固定表示領域である。各ラベル部33の有版印刷領域Z12の印刷パターンは互いに同じであり、窓領域Zの形状、配置、及び寸法もそれぞれ同じである。各ラベル部33では、例えばアンカーコート層15及び保護層16の印刷パターンも互いに同じであり、換言すると可変表示領域の印刷パターンのみが複数存在する。
【0079】
ラベル長尺体30を切断予定部α,βで切断することにより、2種類以上のラベル10が得られる。例えば、各ラベル10の多くは、固定表示領域の印刷パターンが互いに同じで、可変表示領域の印刷パターンが互いに異なっている。ラベル長尺体32における可変表示領域の印刷パターンの数は特に限定されないが、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。ラベル長尺体32を構成する全てのラベル部33の可変表示領域の印刷パターンを異なる印刷パターンとすることも可能である。これに対して有版印刷の場合、版(一般に円筒形状)の円周長とラベル部33の長さの関係により、ラベル長尺体32における固定表示領域の印刷パターンの数は1つであることが好ましい。本実施形態では、固定表示領域の印刷パターンは1つである。
【0080】
図3に示す例では、ラベル長尺体32の長手方向に連続したラベル部33A,33B,33Cの各無版印刷領域Z13A,Z13B,Z13Cの可変表示領域が互いに異なる印刷パターンで形成されている。本実施形態では、無版印刷領域Z13A,Z13B,Z13Cは、その形状、配置、及び寸法は互いに同じである。
【0081】
ラベル長尺体32は、それぞれ異なる可変表示領域が形成されたラベル部33の組が繰り返される形態であるが、同じ可変表示領域が形成されたラベル部33が所定数連続した後、別の可変表示領域が形成されたラベル部33が所定数連続する形態であってもよい。また、異なる可変表示領域が形成されたラベル部33がランダムに配置されていてもよい。このように、各ラベル部33は特定領域(無版印刷層表示領域)以外のデザインが互いに同じである一方、特定領域のデザインは互いに異なっている。
【0082】
[ラベル長尺体の製造方法]
図3図6を参照しながら、ラベル長尺体30の製造方法について詳説する。図4は、検査工程の手順を示すフローチャートである。図5は検査工程においてラベル長尺体30の無版印刷領域Z13の固定表示マーク14(目標形成範囲)を非マスク領域51とし、可変表示領域(目標形成範囲)をマスク領域50とした様子を示す図、図6は固定表示マーク14を用いた無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査方法を説明するための図である。
【0083】
ラベル長尺体30の製造工程は、上述のように、ラベル長尺体30の構成材料(長尺状ラベル基材31、各種印刷インキ)を準備する準備工程と、固定表示領域である有版印刷領域Z12を形成する印刷工程(有版印刷工程)と、可変表示領域と固定表示マーク14とを含む有版印刷領域Z13を形成する印刷工程(無版印刷工程)と、可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程とを有する。本実施形態では、有版印刷領域Z12を形成することで、各ラベル部33の範囲が決定される。ラベル長尺体30の製造工程は、さらに、アンカーコート層15を形成する工程と、保護層16を形成する工程とを有する。アンカーコート層15を形成する工程は有版印刷工程と無版印刷工程の間に設けられ、保護層16を形成する工程は無版印刷工程の後に設けられる。無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程は、保護層16を形成する工程の前に実施されてもよいが、本実施形態では保護層16が形成された後、即ちラベル長尺体30について実施する。
【0084】
(準備工程)
準備工程では、例えば長尺状ラベル基材31及び各種印刷インキが準備される。長尺状ラベル基材31は、上述のように、ラベル長尺体30における各印刷層の支持体として機能する。本実施形態では、長尺状ラベル基材31として、ラベル10の3つ分の横方向長さと、タブ35の幅とを足した長さに相当する幅を有するシュリンク基材が用いられる。
【0085】
図3に例示する長尺状ラベル基材31は、熱収縮性を有し、長手方向(以下、「MD方向」という)に直交する幅方向(以下、「TD方向」という)に主配向し、TD方向が主収縮方向である。長尺状ラベル基材31は、例えばTD方向に対して2〜8倍程度の延伸倍率で延伸処理される。長尺状ラベル基材31は、MD方向に配向していてもよく、MD方向に対して1.01〜2倍程度の延伸倍率で延伸されていてもよい。延伸処理は、例えば70〜100℃の温度で、ロール方式、テンター方式、チューブ方式等を用いて行うことができる。なお、帯状ラベルを被装着物に巻き付けて装着することで筒状体を形成する場合(巻付方式の筒状体の場合)には、後述するように、MD方向が主収縮方向となる長尺状ラベル基材31を用いることが好ましい。
【0086】
(有版印刷工程)
有版印刷工程では、有版印刷により長尺状ラベル基材31の一方の面(裏面)上に有版印刷層12を形成する。有版印刷層12は、各ラベル部33の端部に対応する領域及び窓領域Zを除く長尺状ラベル基材31の一方の面上に、長尺状ラベル基材31のMD方向に沿って断続的に形成される。また、長尺状ラベル基材31のTD方向にも3つのラベル部33に対応する有版印刷層12が形成される。有版印刷層12は、上述の通り従来公知の油性インキ(溶剤系インキ)又は水性インキを用いて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法、スクリーン印刷法などの従来公知の有版印刷法により形成される。中でも、グラビア印刷法又はフレキソ印刷法が好ましく、グラビア印刷法が特に好ましい。有版印刷層12の形成に使用される1つの版には、複数の有版印刷層12に対応するデザインが設けられており、本実施形態では、各デザインが同じである。
【0087】
有版印刷工程では、シアン顔料、マゼンダ顔料、イエロー顔料、及びブラック顔料の各顔料を含有する4種類のインクを用いて有版印刷層12を形成することが好適である。有版印刷層12は、例えば当該4種類のインクを用いて形成される各印刷層によって構成され、有版印刷層12により表示されるデザインは各印刷層を組み合わせることで形成される。なお、デザイン性をさらに良くする観点から、CMYK以外の色を示す色材、例えば金色、銀色、パール色、草色、白色(W)等を示す色材も使用可能である。特に、CMYKWの5色が最も好ましい。
【0088】
有版印刷工程では、上記各印刷層の位置合わせ用のマークであるトリムマーク36C,36M,36Y,36Kが、長尺状ラベル基材31の幅方向一端部に位置するタブ35に所定間隔で形成される。CMYKの各顔料を含む4種類のインクを用いて形成される印刷層C,M,Y,Kは、印刷層K、印刷層C、印刷層M、印刷層Yの順で形成されることが好ましい。トリムマーク36Kは、ブラック顔料を含有するインキにより形成される印刷層Kと共に形成される。グラビア印刷法では、印刷層Kを形成するインキと同じインキ(ブラック顔料を含有するインキ)、及び同じ製版によりトリムマーク36Kが形成される。トリムマークを形成する製版のセルは、例えば1つの製版につき1つであり、複数のラベル部33(複数の印刷層K)につき1つの割合でトリムマーク36Kが形成される(他のトリムマークについても同様)。
【0089】
続いて、シアン顔料を含有するインキを用いて印刷層Cを形成する。このとき、印刷層Cと共にトリムマーク36Cが形成される。同様に、マゼンダ顔料を含有するインキを用いて印刷層Mとトリムマーク36Mが形成され、イエロー顔料を含有するインキを用いて印刷層Yとトリムマーク36Yが形成される。各トリムマークはいずれも、例えば平面視三角形状を有し、同じ寸法で形成される。各印刷層が目標とする位置に形成された場合、各トリムマークはタブ35の長手方向に略真っ直ぐに並び予め定められた間隔で形成される。
【0090】
有版印刷層12を構成する各印刷層が目標とする位置に形成されているか否かは、例えばトリムマーク36Kを基準として確認される。各トリムマークの位置は、所定波長の光をトリムマーク形成部35に照射し、マークが形成された部分とマークのない部分とにおける光の反射角や反射光量、透過光量の差を読み取ることにより検出される。有版印刷工程では、例えば各トリムマークの実際の位置と目標位置に基づいて印刷ズレ量を算出し、印刷機が自動的に印刷ズレの修正を行なう。
【0091】
(アンカーコート層の形成工程)
次に、後の無版印刷工程で形成される無版印刷領域Z13に対応する領域にアンカーコート層15を形成する。アンカーコート層15は、長尺状ラベル基材31の一方の面上において各ラベル部33の窓領域Z及びその周囲に形成される。アンカーコート層15は、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版輪転印刷、スクリーン印刷等の従来公知の有版印刷法や、バーコーター、コンマコーター、スプレーコーター等の従来公知の汎用コーターを用いた塗工法により、無色透明の樹脂を含有するアンカーコート剤を長尺状ラベル基材31の一方の面上に塗布し、乾燥固化して形成することができる。アンカーコート層15は、グラビア印刷等の有版印刷法により形成されることが好ましい。有版印刷層12及びアンカーコート層15は、いずれも同じ印刷法で形成することが好ましい。
【0092】
(無版印刷工程)
無版印刷工程では、無版印刷によりアンカーコート層15上に無版印刷層13を形成する。無版印刷層13は、窓領域Z及びその周囲においてアンカーコート層15が形成された領域からはみ出すことなく形成される。また、無版印刷層13は、無版印刷領域Z13の端縁E13及び端縁E13から所定幅の領域が有版印刷層12の裏側に重なるように形成される。無版印刷工程では、可変表示領域と固定表示マーク14を含む無版印刷領域Z13を形成する。トナーを用いた電子写真方式の印刷機は、例えば感光体ドラムに電荷を与えた後、トナーを載せたくない部分をレーザー等で描画して電荷を除去することで、感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、トナーを潜像に付着させ、長尺状ラベル基材31の一方の面上に転写した後、トナーを溶融させ長尺状ラベル基材31上に定着させることで無版印刷層13を形成する。トナーとしては、一般的な複写機に使用されるものを用いることもできるが、印刷機に応じてそれに適合する専用品を用いることが好適である。
【0093】
電子写真方式の印刷機には、市販品を用いることができる。好適な市販品としては、エプソン社製の「LP−S9000シリーズ」、リコー社製の「SPC831/831M」、「SPC830/830M」、「SPC810−ME」、「SPC731/731M」、「SPC730/730M」、ヒューレット・パッカード社製の「HP Indigo WS20000」、「HP Indigo WS6600」、「HP Indigo WS6000」、「HP Indigo WS4600」、富士ゼロックス社製の「DocuPrint C5000」、「DocuPrint C4000」、「DocuPrint C3360」、「DocuPrint C3350」などが挙げられる。
【0094】
無版印刷工程では、シアン顔料、マゼンダ顔料、イエロー顔料、及びブラック顔料の各顔料を含有する4種類のトナーを用いて無版印刷層13を形成することが好適である。さらに、白色顔料を含有するトナーを用いてもよい。無版印刷層13は、例えば当該4種類のトナーを用いて形成される各印刷層によって構成され、無版印刷層13により表示されるデザインは各印刷層を組み合わせることで形成される。無版印刷領域Z13の可変表示領域は、1種類のトナーを用いて形成することもできるが、好ましくはCMYKの各顔料をそれぞれ含む4種類のトナーを用いて形成される。
【0095】
固定表示マーク14は、可変表示領域を形成する全ての色材を用いて形成されることが好適である。可変表示領域がCMYKの各顔料をそれぞれ含む4種類のトナーを用いて形成される場合、同じ4種類のトナーを用いて固定表示マーク14を形成することが好ましい。この場合、固定表示マーク14にはCMYKの各顔料が含まれることになる。この場合、後の検査工程で無版印刷領域Z13の可変表示領域を構成するCMYKの各顔料の濃度が目標範囲内にあるか否かを確認することが可能になる。例えば、固定表示マーク14中にCMYKの各顔料を含む4種類のトナーのいずれかが存在しない場合、CMYKのいずれかの色が全くでない所謂色抜けを検知できる。
【0096】
また、固定表示マーク14は、その全体が無模様の印刷パターンで形成されることが好適である。固定表示マーク14は、その全体が無模様で濃淡差のない単一色で形成されることが好ましい。このように固定表示マーク14を形成することで、無版印刷領域Z13の検査精度が向上する。
【0097】
(保護層の形成工程)
次に、上記各印刷層を覆って保護層16を形成する。保護層16は、例えば長尺状ラベル基材31の露出領域34及びタブ35を除く一方の面上に、MD方向に沿って連続的に形成される。保護層16は、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版輪転印刷、スクリーン印刷等の従来公知の有版印刷法や、バーコーター、コンマコーター、スプレーコーター等の従来公知の汎用コーターを用いた塗工法により、保護層16を形成する成分を含有するインキを長尺状ラベル基材31上に塗布し、乾燥固化して形成することができる。保護層16は、有版印刷法により形成されることが好ましい。
【0098】
以上の工程により、多数のラベル部33が長手方向に並ぶと共に、3つのラベル部33が幅方向に並んだラベル長尺体30が得られる。ラベル長尺体30を構成する3列のラベル長尺体32は、固定表示領域の印刷パターンが互いに同じで、可変表示領域の印刷パターンが互いに異なる複数種のラベル部33を有する。
【0099】
(検査工程)
図4に例示するように、検査工程は、ラベル長尺体30の各ラベル部33に形成される無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷不良の有無を確認する工程である。図4に例示する検査工程では、固定表示マーク14の目標形成範囲の少なくとも一部に設定される非マスク領域51に光を照射することによって得られる反射光を撮像して得られる検査画像をマスター画像と比較して可変表示領域の印刷不良の有無を確認する。図4では、可変表示領域の印刷不良の有無を確認するフローを示しているが、固定表示領域の印刷不良の有無についも本検査工程で確認されることが好ましい。ここで、マスター画像とは、例えば検査画像が取得される前に検査装置(画像センサ)に予め登録されており、例えば目的とする固定表示領域、可変表示領域、及び固定表示マーク14が形成された良品のラベル部33(ラベル10)の固定表示領域及び固定表示マーク14を撮像して登録される。なお、固定表示領域の印刷不良の有無の検査を別工程として行う場合は、マスター画像には固定表示マーク14の画像のみが含まれる。図4では、S10としてマスター画像を撮像する工程を設けているが、画像センサにマスター画像が既に登録されている場合は、S10の手順は不要である。
【0100】
図4に例示する検査工程は、ラベル部33のマスター画像を撮像する工程(S10)と、ラベル部33の固定表示マーク14の目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域51とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域50とする工程(S11)と、非マスク領域51を撮像して検査画像を取得する工程(S12)と、非マスク領域51の検査画像とマスター画像とを比較して、両画像が一致するか否かを判定する工程(S13、S14)とを有する。そして、検査画像とマスター画像が一致する場合は、可変表示領域の印刷不良なしと判定し(S15)、検査画像とマスター画像が一致しない場合は、可変表示領域の印刷不良ありと判定する(S16)。可変表示領域に印刷不良がある場合は、印刷不良の原因を特定する(S17)。
【0101】
S12では、非マスク領域51を撮像して検査画像を取得するが、このとき、固定表示領域の目標形成範囲の画像も非マスク領域51の画像として併せて取得する。つまり、S12ではラベル部33のマスク領域50以外の画像を取得する。マスク領域50は、上述のように、可変表示領域の目標形成範囲に設定され、検査画像として取得されない領域、即ちマスタ画像との比較に用いられる対象とならない領域である。S12では、マスク領域50を含むラベル部33の全体の画像を取得した後、マスク領域50に相当する範囲の画像を削除することにより、検査画像を取得してもよい。
【0102】
図5に例示するように、本検査工程は、各ラベル部33における固定表示マーク14の目標形成範囲の一部を非マスク領域51とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域50として行われる。固定表示マーク14の目標形成範囲は、一部が非マスク領域51で、当該一部を除く他の部分がマスク領域50であり、非マスク領域51はマスク領域50で囲われている。マスク領域50の外側に位置する固定表示領域の目標形成範囲も非マスク領域である。本検査工程で確認できる印刷不良としては、無版印刷層13の印刷抜け、目標形成範囲からの印刷ズレ、目標濃度範囲からの色材濃度のズレが挙げられる。本検査工程では、印刷不良の原因を自動的に特定する必要はない。印刷不良の原因を自動的に特定することも可能であるが、本実施形態では印刷不良の有無のみを自動的に判定する。印刷不良の原因は、例えばオペレータによる目視検査又はその他の検査により特定される。
【0103】
ここで、固定表示マーク14の目標形成範囲とは、固定表示マーク14の設計通りの位置であって、目的とする可変表示領域が形成された場合に固定表示マーク14が存在する範囲である。また、可変表示領域の目標形成範囲とは、可変表示領域の設計通りの位置であって、目的とする可変表示領域が形成された場合に可変表示領域が存在する位置である。可変表示領域の印刷不良の有無の検査で使用されるマスター画像とは、目的とする可変表示領域が形成された場合に非マスク領域51に現れる固定表示マーク14の画像である。本実施形態では、上述のように、マスター画像として良品のラベル部33の固定表示領域及び固定表示マーク14の画像が含まれる。
【0104】
本検査工程では、固定表示マーク14の目標形成範囲の一部を除く固定表示マーク14と可変印刷領域の目標形成範囲をマスクして検査を行う。このため、ラベル部33に目的とする可変印刷領域が形成された場合には、無版印刷領域Z13のうち、非マスク領域51に固定表示マーク14のみが現れる。このように、非マスク領域51に固定表示マーク14が正しく現れた場合には、当該無版印刷領域Z13は目標とする位置に形成されたとして、可変印刷領域は印刷不良として認識されることがない。
【0105】
本検査工程では、ラベル長尺体30を表側から撮像して検査画像を取得する。マスター画像も、良品のラベル部33(ラベル10)を表側から撮像して取得される。本検査工程は、ラベル長尺体30を各ラベル長尺体32に分離した後、各ラベル長尺体32について実施されてもよいが、生産性向上等の観点からラベル長尺体30の状態で実施されることが好ましい。なお、本検査工程は、ラベル部33ごとだけではなく、複数のラベル部33を1群として実施してもよい。
【0106】
本検査工程は、非マスク領域51に現れるラベル部33の検査画像を予め登録されたマスター画像と比較して行われる。本検査工程には、例えば検査画像を撮像すると共に、メモリに記憶されたマスター画像と比較することが可能な画像センサが用いられる。画像センサは、長手方向に連続又は断続的に搬送されるラベル長尺体30の各ラベル部33について非マスク領域51を撮像して検査画像を取得する。使用される画像センサは、1台であってもよく、各ラベル長尺体32に対応する数(3台)であってもよい。
【0107】
固定表示領域の印刷不良の有無の検査は、上述の通り、無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷不良の有無の検査と別に行われてもよいが、好ましくは各領域の検査は同時に行われる。即ち、本検査工程において、固定表示領域及び可変表示領域の両方について印刷不良の有無が検査される。固定表示領域は、各ラベル部33で印刷パターンが同じであるため、固定表示領域の検査には可変表示領域のようにマスク領域50を設定し、固定表示マーク14を用いて検査する必要はない。即ち、画像センサを用いた従来公知の方法により、各ラベル部33に目的とする固定表示領域が形成されているか否かを確認することができる。
【0108】
以下、図4に例示する検査工程の各手順について、図4及び図5を参照しながらさらに詳説する。図4及び図5に例示するように、本検査工程では、まず検査画像と比較するためのマスター画像を撮像する(S10)。マスター画像は、上述の通り、目的とする可変表示領域が形成された場合に非マスク領域51に現れる固定表示マーク14の画像であって、撮像後、検査装置に登録される。本実施形態では、マスター画像として良品のラベル部33又はラベル10の固定表示領域及び固定表示マーク14の画像が含まれる。次に、各ラベル部33における固定表示マーク14の目標形成範囲の一部を非マスク領域51とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域50とする(S11)。固定表示マーク14の目標形成範囲は、一部が非マスク領域51で、当該一部を除く他の部分がマスク領域50となり、非マスク領域51はマスク領域50で囲われている。マスク領域50の外側に位置する固定表示領域の目標形成範囲も非マスク領域である。図5では、ラベル部33Aの可変表示領域の目標形成範囲に設定されたマスク領域50に網目を付している。また、図5は、目的とする可変表示領域が形成されている場合の図であって、マスク領域50で囲われた非マスク領域51内に固定表示マーク14のみが現れた状態を示している。
【0109】
このようにマスクを設けることで、目的とする可変表示領域が形成された場合には、非マスク領域51内に固定表示マーク14のみが現れ、可変表示領域は現れない。可変表示領域は、マスク領域50とされるため、ラベル部33の可変表示領域がラベル部33毎に異なることが原因で印刷不良と判定(エラー判定)されることはない。本検査工程では、固定表示マーク14と非マスク領域51の大きさの差によって、無版印刷領域Z13の印刷ズレの許容幅(閾値)を規定することができる。ここで、閾値とは、検査者側で許容可能な印刷ズレの距離である。閾値は、1.5mm以上4mm以下が好ましく、2mm以上3mm以下がより好ましい。例えば、固定表示マーク14の大きさが一定である場合に、非マスク領域51の大きさを大きくすると、印刷ズレの許容幅(閾値)を小さくすることができる。
【0110】
マスク領域50は、画像センサの撮像マスクとして設定することが好ましい。即ち、画像センサにおいて画像を取得しない非撮像領域としてマスク領域50を設定する。マスク領域50は、可変表示領域の平面視形状に対応する形状で設けられることが好ましく、本実施形態では略円形状に設けられる。無版印刷領域Z13の端縁が透けて見える場合(即ち、窓領域Zの外側の所定幅の領域において有版印刷層12の裏側に設けられた無版印刷層13が透けて見え、窓領域Zの内側と窓領域Zの外側の所定幅の領域が可変表示領域である場合)には、マスク領域50の直径は無版印刷領域Z13の直径よりも大きい方が好ましく、目的とする無版印刷領域Z13が多少位置ズレした場合でも、無版印刷領域Z13の端縁がマスク領域50に含まれる。
【0111】
マスク領域50の端縁E50と無版印刷領域Z13の端縁E13との間隔は、非マスク領域51の端縁E51と固定表示マーク14の端縁E14との間隔よりも大きく設定されることが好ましい。
【0112】
本検査工程の初めの検査対象となるラベル部33に対するマスク領域50及び非マスク領域51の設定は、例えばトリムマーク36C等を用いて行うことができる。トリムマーク36C,36M,36Y,36Kと各ラベル部33の可変表示領域及び固定表示マーク14の目標形成範囲との位置関係は予め定まっているため、トリムマークのいずれかを基準としてマスク領域50及び非マスク領域51の位置を決めることができる。また、ラベル部33同士の間隔は予め定まっているため、2番目以降のラベル部33についてはラベル長尺体30の搬送速度に基づいて自動的にマスク領域50及び非マスク領域51の位置を決定することが可能である。なお、検査が開始されるラベル長尺体30の長手方向一端部と当該一端部に最も近いラベル部33との間隔が分かっている場合、或いは初めの設定を手動で行う場合など、トリムマークを使用しなくてもマスク領域50及び非マスク領域51の位置合わせは可能である。固定表示領域も同時に検査する場合には固定表示領域を基準として、マスク領域を設定してもよい。
【0113】
非マスク領域51の位置は、上述のように、周囲がマスク領域50に囲まれ、マスク領域50の端縁E50から離れたマスク領域50内に設定される。非マスク領域51は、いずれの方向の印刷ズレも精度良く検知できるように、円形状(真円形状)又は四角形状であることが好ましい。非マスク領域51の直径は固定表示マーク14の直径よりも小さく、目的とする無版印刷領域Z13が形成された場合に、固定表示マーク14の端縁E14は非マスク領域51の端縁E51よりも外側に位置する。
【0114】
次に、非マスク領域51を撮像して検査画像を取得する(S12)。このとき、固定表示領域の目標形成範囲の画像も併せて取得する。即ち、ラベル部33のマスク領域50以外の画像を取得する。S12では、マスク領域50を含むラベル部33の全体の画像を取得した後、マスク領域50の画像を削除することにより、検査画像を取得してもよい。そして、取得した検査画像とマスター画像とを比較して、両画像が一致するか否かを判断する(S13,S14)。
【0115】
S13,S14では、検査画像とマスター画像との比較に基づいて、可変表示領域の印刷不良の有無を確認する。また、検査画像とマスター画像との比較により、固定表示領域の印刷不良の有無についても同時に検査できる。この工程では、可変表示領域の印刷抜けの有無、及び閾値を超える可変表示領域の印刷ズレの有無、例えば印刷ズレと印刷抜けの少なくともどちらか一方による印刷不良を検知できる。固定表示マーク14が可変表示領域を構成する全ての色材を用いて形成される場合、可変表示領域の色材の濃度が目標範囲内にあるか否も確認できる。例えば、可変表示領域で使用される色が出ていない場合は、その色抜けを検知できる。但し、この工程では、印刷不良の原因が印刷抜け、印刷ズレ、濃度ズレのいずれであるかを特定しない。
【0116】
ここで、図6を適宜参照し、無版印刷領域Z13の印刷不良の有無の判定についてより具体的に説明する。図6(a)は、可変表示領域が目標形成範囲に形成された状態を示す(図5と同じ)。図6(b)は、可変表示領域が目標形成範囲からズレて形成された状態(閾値を超えた印刷ズレが発生した状態)を示す。図6(a)に示すように、目的とする可変表示領域が形成され閾値を超える可変表示領域の印刷ズレがない場合には、非マスク領域51内に固定表示マーク14のみが現れ、固定表示マーク14以外の部分は現れない。この場合、非マスク領域51を撮像して得られる検査画像は、可変表示領域で使用される色が出ていれば目標の色となっているため、マスター画像と一致し、印刷不良なし(印刷抜け、閾値を超える印刷ズレ、色材濃度の目標範囲からのズレのいずれもなし)と判定される(S15)。
【0117】
一方、図6(b)に示すように、閾値を超える可変表示領域の印刷ズレが発生した場合には、非マスク領域51に固定表示マーク14の端縁E14と、可変表示領域の一部が現れる。この場合、非マスク領域51を撮像して得られる検査画像中に可変表示領域が含まれるためマスター画像と不一致となり、印刷不良ありと判定される(S16)。
【0118】
印刷ズレの許容度を規定する閾値は、上述のように、例えば固定表示マーク14と非マスク領域51の相対的な大きさを変更することで任意に設定できる。固定表示マーク14の直径が固定されている場合、非マスク領域51の直径を小さく設定すると、閾値が大きくなり印刷ズレの許容幅が大きくなる。他方、非マスク領域51の直径を大きく設定すると、閾値が小さくなり印刷ズレの許容幅が小さくなる。
【0119】
可変表示領域の印刷抜けが発生した場合には、無版印刷領域Z13の一部である固定表示マーク14も形成されないため、検査画像中に固定表示マーク14は含まれず、また可変表示領域も含まれない。この場合、検査画像とマスター画像は不一致となり、可変表示領域の印刷抜けを検知することができる。
【0120】
S13,S14では、可変表示領域を構成する各色材の濃度が目標範囲内にあるか否かも確認できる。固定表示マーク14は、上述の通り可変表示領域を形成する全ての色材を用いて形成され、例えばシアン顔料、マゼンダ顔料、イエロー顔料、及びブラック顔料の各顔料を含む。ゆえに、各色材(CMYKの各顔料)のいずれかが存在しない所謂色抜けが発生した場合には、検査画像とマスター画像が不一致となり、かかる印刷不良を検知することができる。
【0121】
S14で検査画像とマスター画像が一致すると判定された場合は、可変表示領域の印刷不良なしと判定して(S15)、一連の検査工程を終了する。本検査工程では、有版印刷領域Z12についても、印刷抜け、印刷ズレ、及び色材濃度等に関わる印刷不良の有無が検査され、検査対象となるラベル部33の有版印刷領域Z12及び無版印刷領域Z13(可変表示領域)の印刷不良がない場合に、当該ラベル部33は良品であると判定される。本検査工程において、全てのラベル部33が良品と判定されたラベル長尺体30は、次の工程に供給され、例えば切断予定部αでスリットされて各ラベル長尺体32に分離される。ラベル長尺体30のスリットは、一般的に、筒状ラベル長尺体40の製造工程で行われる。
【0122】
一方、S14で検査画像とマスター画像が一致しないと判定された場合は、可変表示領域の印刷不良ありと判定する(S16)。可変表示領域の印刷不良ありと判定された不良品のラベル部33は、次の工程には供給されず、ラベル長尺体30から切除される。不良品のラベル部33がラベル長尺体30の一部である場合は、不良品のみを切除すればよい。不良品のラベル部33が検知された場合は、例えば検査工程を中断してラベル長尺体30から不良品を切除した後、検査工程を再開し、ラベル長尺体30を構成する全てのラベル部33について一連の検査を行う。検査が終わった後に、検査結果に基づいて、印刷不良部分が切除されてもよい。
【0123】
可変表示領域の印刷不良ありと判定された不良品のラベル部33については、印刷不良の原因を特定しておくことが好ましい(S17)。印刷不良が、印刷抜け、印刷ズレ、色材濃度のズレのいずれによるものかの特定は、例えばオペレータによる目視検査で行われる。或いは、さらなる画像解析や顕微鏡観察によって印刷不良を特定してもよい。
【0124】
[筒状ラベル長尺体及び筒状ラベルの製造工程]
図7は、ラベル長尺体32を切断して各ラベル部33を分離する工程を示す図である。図7では、ラベル長尺体32を裏側から見た様子を示す。図7に例示するように、筒状ラベル長尺体40は、ラベル長尺体30を切断予定部αでスリットして得られたラベル長尺体32を用いて製造される。筒状ラベル長尺体40は、ラベル長尺体32の裏面が内側を向いた状態で筒状に成形されてなる。筒状ラベル長尺体40は、ラベル長尺体32の幅方向を筒周方向として、当該筒周方向一端部を筒周方向他端部に重ね合わせた状態で、当該一端部の内面の少なくとも一部が当該他端部側の外面に接合された長尺体接合部41を有する。筒状ラベル長尺体40は、検査工程で良品と判定されたラベル部33を含むラベル長尺体32を用いて製造される。不良品も含んで筒状ラベル長尺体が作成され、その後、不良品を取り除いてもよい。
【0125】
本実施形態では、ラベル長尺体32を筒状ラベル長尺体40に成形した後、筒状ラベル長尺体40を筒状に成形されたラベル10である筒状ラベル20に分離するものとして説明する。筒状ラベル20は、ラベル長尺体32を切断してラベル10に分離した後、ラベル10を筒状に成形して製造することも可能であるが、生産性向上の観点から、好ましくは筒状ラベル長尺体40を経て製造される。
【0126】
筒状ラベル長尺体40の製造工程では、まずラベル長尺体30をスリットして各ラベル長尺体32に分離する。続いて、各ラベル長尺体32の筒周方向一端部の内面(露出領域34)及び筒周方向他端部の外面となるラベル長尺体32のTD方向端部のうち一方に、テトラヒドロフラン(THF)等の溶剤をMD方向に沿って所定幅で塗布する。そして、溶剤塗布部を他方のTD方向端部に重ね合わせることでMD方向に連続した長尺体接合部41を形成する。これにより、ラベル長尺体32が筒状に成形された筒状ラベル長尺体40が得られる。ラベル長尺体30を用いた場合、3つの筒状ラベル長尺体40を製造することができる。
【0127】
筒状ラベル長尺体40では、固定表示領域の印刷パターンが互いに同じで、可変表示領域の印刷パターンが互いに異なった筒状ラベル部43A,43B,43Cが、筒状ラベル長尺体40の長手方向に連続している。筒状ラベル部43A,43B,43Cは、ラベル長尺体32のラベル部33A,33B,33Cにそれぞれ対応する。なお、ラベル長尺体32のTD方向両端部を重ね合わせた状態で、当該両端部の外面に跨って粘着テープを貼付することで当該両端部を接合してもよい。また、接着剤を用いて接合部21を形成してもよい。この場合、露出領域34を設けなくてもよい。
【0128】
筒状ラベル20は、筒状ラベル長尺体40を切断予定部βでTD方向に切断することにより製造される。筒状ラベル長尺体40は、例えば被装着物に筒状ラベル20が装着される過程(シュリンクラベラー)で個々の筒状ラベル20に分離される。筒状ラベル20は、ラベル10の裏面が内側を向いた状態で当該ラベルが筒状に成形されてなる。筒状ラベル20は、ラベル10の筒周方向一端部が筒周方向他端部に一端部を外側にして重ね合わされ、一端部の内面の少なくとも一部が他端部側の外面に接合された接合部21を有する。無版印刷層13は、接合部21から離れた位置、例えば接合部21のちょうど反対側に形成されている(図7では図示せず)。
【0129】
[ラベル付き容器]
ラベル10が装着される被装着物は特に限定されないが、ラベル10は、例えば容器に装着されてラベル付き容器として用いられる。容器としては、ペットボトル、カップ麺容器、牛乳瓶、調味料などの飲料・食品用容器、医薬品用容器、洗剤、スプレー等の化学製品・トイレタリー製品用容器などが例示できる。
【0130】
上記ラベル付き容器は、例えば筒状ラベル20を容器に外嵌した後、加熱処理によって筒状ラベル20を熱収縮させて容器に追従密着させること(シュリンク加工)によって作製できる。上記加熱処理の方法としては、例えば熱風トンネルやスチームトンネルを通過させる方法、赤外線などの輻射熱で加熱する方法等が挙げられる。特に、80〜100℃のスチームで処理する(スチーム及び湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)方法が好ましい。また、101〜140℃のドライスチームを用いることもできる。上記加熱処理温度は、特に限定されないが、筒状ラベル20の温度が85〜100℃(特に、90〜97℃)となる温度範囲で実施することが好ましい。処理時間は、生産性、経済性の観点から、4〜20秒程度が好ましい。
【0131】
図8及び図9に、実施形態の他の一例であるラベル60を示す。図8及び図9に例示するように、ラベル60は、隠蔽印刷層61を備える点で、ラベル10と異なる。ラベル60の構成は、例えば隠蔽層印刷61を備える点を除き、ラベル10の構成と同じである。ラベル60には、ラベル10の場合と同様に、有版印刷領域Z12によって周りが囲まれた窓領域Zが設けられている。有版印刷層12は、ラベル基材11の端部と窓領域Zを除くラベル基材11の裏面上に形成されている。窓領域Zは、無版印刷層13により表示される文字や絵柄が有版印刷層12に隠れることなくラベル60の表側から見える無版印刷層表示領域であって、図8に示す例では、無版印刷層13が、窓領域Zの全体に形成されると共に、窓領域Zの周囲に位置する有版印刷層12及び隠蔽印刷層61の裏側に重なって形成されている。ラベル基材11上において無版印刷層13が形成された領域である無版印刷領域Z13は、例えば窓領域Zよりも直径が大きな平面視円形状に形成されている。
【0132】
ラベル60は、ラベル10と同様に、ラベル60となる部分であるラベル部を含むラベル長尺体が切断されることによって製造される。ラベル60となる部分であるラベル部を含むラベル長尺体では、ラベル長尺体30の場合と同様に、各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域とが形成されおり、各ラベル部には、可変表示領域を印刷する工程において、可変表示領域の形成と共に各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示マーク14が形成される。
【0133】
ラベル60となる部分であるラベル部を含むラベル長尺体では、有版印刷領域Z12の全体が表側から見えるため、有版印刷領域Z12の全体が固定表示領域である。他方、無版印刷領域Z13については、無版印刷領域Z13のうち隠蔽印刷層61にと重なる領域は、表側から見た際に隠蔽されているので無版印刷層表示領域ではない。無版印刷領域Z13のうち、隠蔽印刷層61と重ならず、有版印刷層12と重なる領域が表側から透けて見える場合は、隠蔽印刷領域Z61の端縁E61に囲われる領域のうち固定表示マーク14以外の領域が可変表示領域である。隠蔽印刷層61を設けた場合は、隠蔽印刷層61に覆われる無版印刷領域Z13の端部が表側から透けて見えない。ここで、隠蔽印刷領域Z61とはラベル基材11上において隠蔽印刷層61が形成された領域を意味する。
【0134】
隠蔽印刷層61は、有版印刷層12と無版印刷層13の間において、無版印刷層13が形成された無版印刷領域Z13の端縁E13に重なって形成される。つまり、無版印刷領域Z13の端縁E13の表側には、有版印刷層12と隠蔽印刷層61が形成されている。ラベル60は、無版印刷領域Z13の端縁E13に対応する部分において、ラベル基材11側から有版印刷層12、隠蔽印刷層61、及び無版印刷層13が順に積層形成された層構造を有する。
【0135】
ラベル60では、無版印刷領域Z13が窓領域Z及びその周囲のみに設けられ、無版印刷領域Z13の全ての端縁E13が隠蔽印刷層61を介して有版印刷領域Z12に重なっている。無版印刷領域Z13の端縁E13を有版印刷領域Z12の裏側に重ねることで、無版印刷領域Z13の端縁E13は目立ち難くなるが、端縁E13を十分に隠蔽できない場合がある。ラベル60によれば、有版印刷層12の裏側且つ端縁E13の表側にデザイン上の制約がない隠蔽印刷層61を形成することで、隠蔽印刷層61の裏側にある無版印刷領域Z13が隠蔽される。
【0136】
隠蔽印刷層61は、例えば有版印刷領域Z12の裏側において当該領域の略全域に重なって形成されている。より詳しくは、有版印刷領域Z12の端縁E12の近傍を除く有版印刷領域Z12の略全域に重なって隠蔽印刷層61が形成される。即ち、隠蔽印刷層61は、窓領域Zの周囲において、有版印刷領域Z12の端縁E12から離れた位置に形成され、端縁E12から所定幅の環状領域には形成されていない。窓領域Zを囲む隠蔽印刷領域Z61の端縁E61は、窓領域Zの端縁である有版印刷領域Z12の端縁E12よりも無版印刷領域Z13の端縁E13側に位置しており、端縁E12と端縁E13の間に位置する。こうすることで端縁E12と端縁E13の境界が隠蔽され、表面側から見たデザインを美麗にすることが可能となる。
【0137】
端縁E12と端縁E61との間隔は、有版印刷層12と隠蔽印刷層61の印刷ずれを考慮して決定される。例えば、ラベル60の製造過程で許容限度の印刷ずれが発生したときにおいても、隠蔽印刷領域Z61が窓領域Z内に食み出さないように当該間隔が決定される。また、隠蔽印刷層61は、無版印刷領域Z13の端縁E13だけでなく、端縁E13の重なる領域側と、重ならない領域側とに跨って存在している。
【0138】
隠蔽印刷層61は、無版印刷層13の端縁E13を隠蔽するだけでなく、例えば有版印刷層12の透けを防止して当該印刷層のデザイン等を際立たせる役割を果たす。また、隠蔽印刷層61の色が有版印刷層12によって表示されるデザインの背景色となる構成であってもよい。例えば、部分的に形成された有版印刷層12の裏側に、有版印刷層12とその周囲を覆うように隠蔽印刷層61を設けた場合、有版印刷層12によって表示されるデザインの周囲から見える隠蔽印刷層61の色が当該デザインの背景色として見える。隠蔽印刷層61は、有版印刷領域Z12の裏側に形成されると共に、有版印刷層12が形成されない領域では、例えばラベル基材11上に直接形成されてもよい。
【0139】
隠蔽印刷層61は、視認できない位置に設けられる場合等の、位置ズレしても表示に影響を及ぼさない場合には、無版印刷により形成されてもよいが、隠蔽性等の観点から、有版印刷層12と同様に、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法、スクリーン印刷法などの従来公知の有版印刷により形成されることが好ましい。即ち、隠蔽印刷層61は、有版隠蔽印刷層であることが好ましい。中でも、グラビア印刷法又はフレキソ印刷法により形成されることが好ましく、グラビア印刷法により形成されることが特に好ましい。
【0140】
隠蔽印刷層61は、例えば隠蔽性を付与する色材及びバインダ樹脂を含み、また各種添加剤を含んでいてもよい。隠蔽印刷層61は、有版印刷層12の場合と同様に、従来公知の油性インキ(溶剤系インキ)又は水性インキを用いて形成できる。隠蔽印刷層61の色は、特に限定されず、例えば有版印刷層12のデザイン等に応じて適宜変更できるが、好ましくは白色系、金属色系で、より好ましくは白色系(特に白色)である。隠蔽印刷層61の色が白色系である場合には、隠蔽印刷層61は、例えば白色の色材を含む。金属色の色材は、アルミニウム、チタニウム、スズなどの金属顔料が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。隠蔽印刷層61は、白色の色材又は金属色の色材に加えてさらに白色以外の色材を含み、若干その色材の色を呈しているものであってもよい。
【0141】
上記バインダ樹脂には、有版印刷層12の場合と同様の樹脂を用いることができる。白色の色材としては、酸化チタン、亜鉛華(亜鉛白)、鉛白、リトボン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)等の白色顔料が例示できる。白色顔料には、2種以上を併用してもよいが、少なくとも酸化チタンが含まれることが好適である。酸化チタンには、印刷インキに用いられる従来公知の酸化チタンを適用することができる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型のいずれを用いてもよいが、好ましくはルチル型である。
【0142】
白色の色材(例えば、酸化チタン)の含有量は、隠蔽印刷層61の総重量に対して、例えば20重量%以上、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。隠蔽印刷層61の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5μm〜10μmである。
【0143】
ラベル60は、有版印刷層12の裏側に隠蔽印刷層61を形成する以外、ラベル10と同様の方法で製造でき、上述のように、個々のラベル60となる部分であるラベル部を複数含むラベル長尺体を切断することにより製造される。当該ラベル長尺体には、ラベル長尺体30の場合と同様に、各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域とが形成されている。そして、各ラベル部には、可変表示領域を印刷する工程において、可変表示領域の形成と共に各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示マーク14が形成される。ラベル60となる部分であるラベル部を含むラベル長尺体では、上述の通り、有版印刷領域Z12の全体が固定表示領域である。また、無版印刷領域Z13の隠蔽印刷層61に覆われる端部は、隠蔽印刷層61によって隠蔽されているため、隠蔽印刷領域Z61の端縁E61に囲われる領域のうち固定表示マーク14以外の領域が可変表示領域である。
【0144】
無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程は、固定表示マーク14を用いて上述したラベル10の製造工程と同様の方法で行うことができる。但し、ラベル60の製造工程における検査では、無版印刷領域Z13の端部が隠蔽印刷層61によって高度に隠蔽されているため、無版印刷領域Z13の端部がラベル60の表側から透けて見えることがなく、無版印刷領域Z13の端部は可変表示領域とはならない。この場合も、固定表示マーク14の目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域とする。
【0145】
図10は、実施形態の他の一例であるラベル70を示す図である。図10に例示するように、ラベル70は、無版印刷領域Z73の端縁E73に沿って平面視環状の固定表示マーク74が形成されている点で、平面視円形状の固定表示マーク14が形成されたラベル10と異なる。図10では、低密度のドットで表示した部分がラベル長尺体の可変表示領域に対応する第2表示領域であり、高密度のドットで表示した部分が固定表示マーク74である。固定表示マーク74は、第2表示領域(可変表示領域)の印刷不良の有無を確認する検査工程で使用される。このような固定表示マーク74は、例えば第2表示領域と調和して、第2表示領域と共にデザインの一部を構成する。無版印刷領域Z73の可変表示領域は、窓領域Zにおいて、固定表示マーク74に囲まれて平面視円形状に形成されている。
【0146】
固定表示マーク74は、その全体が無模様で濃淡差のない単一色の印刷パターンで形成されることが好ましい。また、固定表示マーク74は、第2表示領域を形成する全ての色材、例えばシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色材を用いて形成されることが好ましい。
【0147】
ラベル70は、固定表示マークとして平面視環状の固定表示マーク74を形成する以外、ラベル10と同様の方法で製造でき、個々のラベル70となる部分であるラベル部を複数含むラベル長尺体を切断することにより製造される。当該ラベル長尺体には、各ラベル部で印刷パターンが同じである固定表示領域と、各ラベル部で印刷パターンが異なる可変表示領域とが形成されており、各ラベル部には無版印刷領域Z73の一部として各ラベル部で印刷パターンが共通する固定表示マーク74が形成されている。ラベル70となる部分であるラベル部を含むラベル長尺体では、ラベル60の場合と同様に、有版印刷領域Z12の全体が固定表示領域である。ラベル70では、固定表示マーク74に囲まれた平面視円形状の領域の全体が可変表示領域である。
【0148】
可変表示領域の印刷不良の有無を確認する検査工程は、固定表示マーク74を用いて上述したラベル10の製造工程と同様の方法で行うことができる。検査工程では、上述の実施形態の場合と同様に、ラベル70となる部分である各ラベル部における固定表示マーク74の目標形成範囲の少なくとも一部を非マスク領域とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域とする。マスク領域は、可変表示領域の目標形成範囲の全体に設定されると共に、固定表示マーク74の目標形成範囲の一部にも設定される。固定表示マーク74の目標形成範囲は、一部が非マスク領域で、当該一部を除く他の部分がマスク領域であり、非マスク領域はマスク領域で囲われていることが好ましい。非マスク領域は、1つであってもよいが、固定表示マーク74に適用される非マスク領域は、例えば2つ以上設定される。固定表示マーク74は、平面視環状に形成されているため、ラベル長尺体の長手方向又は幅方向のいずれに印刷ズレが発生した場合でも可変表示領域の印刷ズレを精度良く検知することができるように、各非マスク領域が当該長手方向及び幅方向に並ばないように、2つ以上の非マスク領域を設定し、各マスク領域の検査画像に基づいて、可変表示領域の印刷不良の有無を検査することが好ましい。非マスク領域の平面視形状は、特に限定されず、例えば上述の非マスク領域と同様に円形状(真円形状)であってもよい。なお、固定表示マーク74よりも幅が狭い環状を呈する非マスク領域としてもよい。
【0149】
図11図13は、実施形態の他の一例であるラベル長尺体90、及びその製造方法(可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程)を説明するための図である。図11に例示するように、ラベル長尺体90は、個々のラベルとなる部分であるラベル部93が長手方向に複数つながった長尺体であって、幅方向にも3つのラベル部93を有する点で、ラベル長尺体30と共通する。ラベル長尺体90には、ラベル1枚分の横方向長さを有するラベル長尺体92が幅方向に3列形成されている。一方、ラベル長尺体90は、各ラベル部93に固定表示マークが形成されていない点で、ラベル長尺体30と異なる。
【0150】
図11に示す例では、各ラベル長尺体92の長手方向に連続した各ラベル部の無版印刷領域Z19A,Z19B,Z19Cが互いに異なる印刷パターンで形成されている。ラベル部93A,93B,93Cは、窓領域Zに形成された無版印刷領域に固定表示マークが形成されていない点を除き、ラベル長尺体32の各ラベル部と共通する。以下では、特に断らない限り、ラベル部93Aを例にラベル長尺体90の構成及び検査工程について説明する。
【0151】
各ラベル部93と幅方向に併設されるラベル長尺体90の各ラベルタブ94には、無版印刷領域を印刷する工程において、各ラベルタブ94で印刷パターンが同じである固定表示マーク97が形成される。ラベルタブ94は、タブ35の一部であって、各ラベル部93と長尺体の幅方向に並んだ部分を意味する。ラベル長尺体90の場合、後工程で切除される各ラベルタブ94に固定表示マーク97が形成されるため、当該マークが各ラベル部のデザインに影響を与えないという利点がある。
【0152】
各ラベルタブ94には、ラベル長尺体90の長手方向に延びる帯状の固定表示領域が形成されている。本実施形態では、帯状の固定表示領域として、検査工程で使用される検査光を透過しない遮蔽性能がある固定表示領域である遮蔽領域95が形成されている。各ラベル部93間で固定表示領域(遮蔽領域95)が連接して、タブ35において長手方向に延びる帯状の固定表示領域となっている。帯状の固定表示領域内には、固定表示領域で囲われる窓部96(有版印刷層12が設けられていない領域)が各ラベルタブ94に1つずつ形成されている(即ち、遮蔽領域96で囲われる窓部96が形成されている)。固定表示領域は、有版印刷によって遮蔽性を有する遮蔽印刷層が形成され、遮蔽性のある固定表示領域である遮蔽領域96となっている。固定表示マーク97は、無版印刷層によって遮蔽性を有する遮蔽印刷層が形成されることが好ましく、この場合、遮蔽性のある固定表示マーク97となる。窓部96は、固定表示マーク97の目標形成範囲である。このため、可変表示領域が目的とする位置に形成された場合は、固定表示マーク97は窓部96に形成される。例えば、遮蔽性を有する固定表示マーク97が目標形成範囲に設けられ、当該固定表示マーク97が窓部に形成される場合、可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程では、窓部96の上を含む帯状の固定表示領域に沿って検査光が照射され、当該検査光が連続的に遮蔽されている場合に可変表示領域の印刷不良なしと判定される。ここで、検査光とは、可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程で固定表示マーク97の目標形成範囲に照射される光である。
【0153】
以下では、ラベル長尺体90の各ラベルタブ94に遮蔽性を有する帯状の固定表示領域及び固定表示マーク97を形成し、透過光で可変表示領域の印刷不良の有無を検査する例を示すが、帯状の固定表示領域と固定表示マーク97の色を合わせて、反射光の撮像を用いて検査してもよい。この場合、各ラベル部93の可変表示領域をマスク領域とし、固定表示領域を非マスク領域とするとともに、タブ35にはトリムマーク等の製造に用いる表示が形成されているので、タブ35のうちこれらの表示が施された領域はマスク領域として、帯状の固定表示領域と窓部とを非マスク領域として、上述の実施形態と同様に非マスク領域を撮像して検査されることが好ましい。また、各ラベルタブ94に設けられた固定表示マーク97の一部の非マスク領域を除いて各ラベルタブ94全体をマスク領域と設定(非マスク領域がマスク領域で囲まれることが好ましい)して、上述の実施形態と同様に非マスク領域を撮像して検査してもよい。また、帯状の固定表示領域は、検査光を完全に遮蔽しなくてもよく、検査光の一部が透過されるものであってもよい。
【0154】
図11に示す例では、遮蔽領域95が、ラベル長尺体90の長手方向に沿って一定の幅で真っ直ぐに形成される。そして、遮蔽領域95に囲まれる各ラベルタブ94の窓部96は、例えば同一直線上に等間隔で配置される。この場合、無版印刷領域の可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程でラベル長尺体90に照射される光をON/OFFする必要がなく、遮蔽領域95に沿って連続的に照射することができる。検査で使用される光(検査光)には、一般的に波長450nm〜1700nmの可視光又は赤外光が使用される。遮蔽領域95は、上述のように、無版印刷層によって遮蔽性を有する遮蔽印刷層によって構成され、検査光が透過しないように着色されている。遮蔽領域95の色は、特に限定されないが、好ましくは黒色である。遮蔽領域95を形成する有版印刷層は、例えば黒色顔料を含有する。
【0155】
窓部96は、各ラベルタブ94に複数設けられてもよいが、好ましくは1つずつ設けられる。但し、各ラベルタブ94に窓部96が必ず1つある構成には限定されず、窓部96は複数(例えば、2〜5つ)のラベルタブ94毎に1つであってもよい。窓部96は、例えば平面視四角形状を有し、各ラベルタブ94の長手方向中央部に形成される。窓部96は、その全体が固定表示マーク97の目標形成範囲であり、可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程では、窓部96の少なくとも一部に非マスク領域を設定し、例えば可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域とする。図11に示す例では、無版印刷領域Z19Aの表側から見える部分(即ち、可変表示領域)にマスク領域98を設定する。なお、窓部96の形状、配置等は、固定表示マーク97との上述の位置関係を満たす限り特に限定されず、例えば平面視略円形状であってもよい。
【0156】
固定表示マーク97は、例えば平面視四角形状を有する。固定表示マーク97は、上述のように、設計通りの無版印刷領域Z19Aの可変表示領域が形成された場合に、例えば窓部96の全てを覆って形成される。ラベル長尺体90においても、固定表示マーク97は可変表示領域を形成する全ての色材を用いて形成されることが好適である。可変表示領域がCMYKの各顔料をそれぞれ含む4種類のトナーを用いて形成される場合、同じ4種類のトナーを用いて固定表示マーク97を形成することが好ましい。
【0157】
図12は、ラベル長尺体90における可変表示領域の印刷不良の有無の検査手順を示すフローチャートである。図12に例示するように、ラベル長尺体90における無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程では、固定表示マーク97の目標形成範囲である窓部96の少なくとも一部を非マスク領域とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域98とする工程(S20)と、窓部96の非マスク領域に光を照射する工程(S21)と、閾値を超える透過光が検知されたときに可変表示領域の印刷不良ありと判定し、閾値を超える透過光が検知されなかったときに可変表示領域の印刷不良なしと判定する工程(S22〜S24)とを有する。また、図12に例示する検査工程では、可変表示領域の印刷不良ありと判定された場合に、印刷不良の原因を特定する(S25)。
【0158】
本検査工程では、ラベル長尺体30の検査工程の場合と同様に、まず固定表示マーク97の目標形成範囲である窓部96の少なくとも一部を非マスク領域とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域98する(S20)。図11では、マスク領域98に網目を付している。また、図11に示す例では光(検査光)が照射される領域である窓部96の全体と遮蔽領域95とを非マスク領域としている。図11に示す例では、上述のように、無版印刷領域Z19Aの表側から見える部分が可変表示領域となるから、少なくとも無版印刷領域Z19Aの表側から見える部分の目標形成範囲をマスク領域98とする。なお、ラベル部93の固定表示領域については、例えばタブ35の全体と可変表示領域とをマスクして、ラベル部93の固定表示領域を非マスク領域として、透過光ではなく反射光の撮像によって当該固定表示領域の印刷不良の有無が別途検査されることが好ましい。或いは、ラベル部93のみを撮像して(タブ35は撮像しない)、固定表示領域の検査画像を取得して検査してもよい。即ち、透過光を用いて可変表示領域の印刷不良の有無の検査する場合には、反射光の撮像によって固定表示領域の印刷不良の有無を検査することが好ましい。
【0159】
次に、ラベルタブ94の窓部96に光を照射する(S21)。ラベル長尺体90には、長手方向に連続する帯状の遮蔽領域95が形成され、遮蔽領域95に囲まれた各窓部96が略同一直線上に並んで設けられているため、光は遮蔽領域95に沿って連続的に照射すればよい。この場合、例えばラベル長尺体90を長手方向に連続又は断続的に搬送することで、光は各ラベルタブ94の窓部96に照射される。
【0160】
本検査工程では、全体が非マスク領域である窓部96に光を照射し、窓部96を透過する当該光の検知情報に基づいて無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良の有無を確認する。なお、固定表示マーク97の目標形成範囲の端部は、帯状の固定表示領域によって覆われている。本検査工程では、窓部96に照射した光が当該領域で反射された反射光を検知して印刷不良の有無を検査することも可能であるが、好ましくは窓部96を透過する透過光に基づいて可変表示領域の印刷不良の有無を検査する。
【0161】
本検査工程には、例えば検査光を照射する光源と、光源から出力された検査光を検知可能な受光素子とが用いられる。窓部96を透過する透過光を検知しようとする場合、例えば光源がラベル長尺体90の表側に設置され、受光素子がラベル長尺体90の裏側において光源から出力される光を受光可能な位置に設置される。光源及び受光素子には、従来公知の装置を用いることができる。光源としては、波長450nm〜1700nmの可視光又は赤外光を出力可能な装置を用いることが好ましい。
【0162】
次に、S21で窓部96に照射された光のうち、窓部96を透過した透過光であって、所定の閾値を超える透過光が受光素子によって検知された場合は、無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良ありと判定する(S22,S23)。この工程では、可変表示領域の印刷抜けの有無、及び閾値を超える可変表示領域の印刷ズレの有無を確認できる。窓部96の一部を非マスク領域とする場合は、固定表示マーク97と窓部96に設定される非マスク領域の大きさの差によって規定できる。固定表示マーク97の大きさが固定されている場合、非マスク領域を小さくすると、閾値が大きくなり印刷ズレの許容幅が大きくなる。他方、非マスク領域を大きくすると、閾値が小さくなり印刷ズレの許容幅が小さくなる。また、固定表示マーク97を構成する各色材の一部の抜け(色抜け)が発生して透過光が検知される場合は、色抜けを確認することも可能である。但し、この工程では印刷不良の原因を特定しない。
【0163】
ここで、図13を適宜参照し、無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良の有無の判定についてより具体的に説明する。図13(a)は、可変表示領域が目標形成範囲に形成された状態を示す(図11と同じ)。図13(b)は、可変表示領域が目標形成範囲からズレて形成された状態(閾値を超えた印刷ズレが発生した状態)を示す。図13(a)に示すように、目的とする可変表示領域が形成され閾値を超える可変表示領域の印刷ズレがない場合には、固定表示マーク97が窓部96(非マスク領域)の全体を覆って形成される。この場合、窓部96に照射される光は当該領域を透過せず又は透過光が減少し、受光素子によって閾値を超える透過光は検知されないため、印刷不良なしと判定される(S23)。
【0164】
一方、図13(b)に示すように、閾値を超える可変表示領域の印刷ズレが発生した場合には、非マスク領域である窓部96に固定表示マーク97の端縁E97が現れ、窓部96の一部のみが固定表示マーク97となる。即ち、窓部96の一部に検査光を透過する透明な部分が形成される。この場合、窓部96に照射される検査光が固定表示マーク97のない部分を透過し、受光素子によって閾値を超える透過光が検知されるため、印刷不良ありと判定される(S24)。
【0165】
S22で閾値を超える透過光が検知されず、無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良なしと判定された場合は、無版印刷領域Z19Aの可変表示領域についての検査工程が終了する。本検査工程では、有版印刷領域Z12についても、印刷不良の有無が検査され、検査対象となるラベル部93Aの有版印刷領域Z12及び無版印刷領域Z19Aの印刷不良がない場合に、当該ラベル部93Aは良品であると判定される。本検査工程において、全てのラベル部93が良品と判定されたラベル長尺体90は、次の工程に供給され、例えば切断予定部αでスリットされて各ラベル長尺体92に分離される。
【0166】
一方、S22で閾値を超える透過光が検知され、可変表示領域の印刷不良ありと判定された不良品のラベル部は、次の工程には供給されず、ラベル長尺体90から切除される。不良品のラベル部93がラベル長尺体90の一部である場合は、不良品のみを切除すればよい。不良品のラベル部93が検知された場合は、例えば検査工程を中断してラベル長尺体90から不良品を切除した後、検査工程を再開し、ラベル長尺体90を構成する全てのラベル部93について一連の検査を行う。無版印刷領域の印刷不良ありと判定された不良品のラベル部93については、印刷不良の原因を特定しておくことが好ましい(S25)。
【0167】
図14は、実施形態の他の一例であるラベル長尺体100、及びその製造方法(可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程)を説明するための図である。図14に例示するように、ラベル長尺体100は、3列のラベル長尺体92を有する点で、ラベル長尺体90と共通する。この場合も、固定表示マークが各ラベル部93に形成されておらず、当該マークが各ラベル部93のデザインに影響を与えないという利点がある。また、ラベル長尺体100の各ラベルタブ94には、固定表示マーク101が1つずつ形成されている点でも、ラベル長尺体90と共通する。各ラベルタブ94に形成される各固定表示マーク101は、ラベル長尺体100の長手方向に沿って同一直線上に等間隔で形成されている。
【0168】
一方、ラベル長尺体100には、遮蔽領域95及び窓部96が形成されておらず、平面視円形状を有する固定表示マーク101が各ラベルタブ94に1つずつ形成された構成になっている点で、ラベル長尺体90と異なる。図14に示す例では、固定表示マーク101が平面視円形状を有するが、当該マークは平面視四角形状であってもよい。ラベル長尺体100における無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程では、固定表示マーク101の目標形成範囲の端部を隠すマスク領域102が設定され、固定表示マーク101の目標形成範囲の一部(中央部)に非マスク領域103が設定される。マスク領域102は各ラベルタブ94に設定される。固定表示マーク101の目標形成範囲は、一部が非マスク領域103で、当該一部を除く他の部分がマスク領域102であり、非マスク領域103はマスク領域102で囲われている。マスク領域102は、例えば固定表示マーク101の目標形成範囲の端部に沿ってリング状に設定される。この場合も、図11に示す例と同様に、ラベル部93の可変表示領域にはマスク領域98が設定される。なお、固定表示マーク101の一部を除くタブ35の全体をマスク領域としてもよい。ラベル部93については、可変表示領域のみがマスク領域98となる。そして、非マスク領域103のマスター画像と検査画像との比較に基づいて無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷不良の有無が判断される。固定表示領域については、図11に示す例と同様に、例えばタブ35の全体と可変表示領域とをマスクして、ラベル部93の固定表示領域を非マスク領域として撮像によって検査されてもよく、ラベル部93のみを撮像して(タブ35は撮像しない)、固定表示領域の検査画像を取得して検査してもよい。特に、ラベルタブ94に設定された固定表示マーク101の目標形成範囲の一部を除いてラベルタブ94の全体と、可変表示領域とをマスク領域とし、固定表示マーク101の目標形成範囲の一部と固定表示領域とを非マスク領域として撮像して検査することが好ましい。この場合、1の検査画像を取得することで、固定表示領域と可変表示領域の印刷不良の検査ができる。
【0169】
目的とする可変表示領域が形成され、閾値を超える無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷ズレがない場合には、非マスク領域103内に固定表示マーク101が現れ、固定表示マーク101以外の部分(例えば、無色透明な部分)は現れない。そして、非マスク領域103を撮像して得られる検査画像がマスター画像と一致すれば、印刷不良なし(例えば、印刷抜け、閾値を超える印刷ズレ、色材濃度の目標範囲からのズレのいずれもなし)と判定される。この場合も、固定表示マーク101と非マスク領域103の大きさの差によって、無版印刷領域Z19Aの可変表示領域の印刷ズレの許容幅(閾値)を規定することができる。
【0170】
上述の各実施形態では、ラベル長尺体の幅方向(TD方向)が各ラベル部の長辺方向である形態を例示したが、図15に示すように、ラベル長尺体120の長手方向(MD方向)が各ラベル部33の長辺方向であってもよい。ラベル長尺体120を構成する長尺状ラベル基材121がシュリンク基材である場合、MD方向が主収縮方向であることが好ましい。また、長尺状ラベル基材121は実質的に無延伸の基材であってもよい。ラベル長尺体120の場合も、図3に例示するラベル長尺体30の場合と同様の方法で、無版印刷領域Z13の可変表示領域の印刷不良の有無を検査できる。
【0171】
上述の各実施形態では、各ラベル部又は各ラベルタブに1つずつ固定表示マークが形成される構成を例示したが、本発明に係るラベル長尺体はこの構成に限定されず、各ラベル部から選択される複数のラベル部、又は各ラベルタブから選択される複数のラベルタブに固定表示マークが形成される構成であってもよい。例えば、ラベル長尺体のMD方向に並ぶ複数のラベル部又はラベルタブに対して、一定数おきに固定表示マークを形成してもよい。固定表示マークを形成する間隔は、ラベル部3つに1つなど、任意に設定することが可能である。
【0172】
図16は、実施形態の他の一例であるラベル長尺体200、及びその製造方法(可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程)を説明するための図である。以下では、ラベル長尺体30と異なる構成を主に説明し、説明しない構成についてはラベル長尺体30の構成を援用できる。図16の矢印は、ラベル基材201上に各印刷層を形成する印刷工程におけるラベル基材201の搬送方向を示す。例えば、各印刷層が形成され、各印刷層の検査が行われたラベル長尺体200は、矢印の方向に搬送されてロール状に巻き取られる。なお、ラベル長尺体200を切断してラベル250(後述の図19参照)を製造し、容器等の被装着物に装着する際には、ラベル長尺体200はロールから図16の矢印と反対方向に送り出される。
【0173】
図16に例示するように、ラベル長尺体200は、切断されることによって個々のラベル250となる部分である複数のラベル部233と、各ラベル部233で印刷パターンが同じである固定表示領域と、各ラベル部233で印刷パターンが異なる可変表示領域とを備える。また、ラベル長尺体200は、各ラベル部233において、可変表示領域を形成する印刷インキ又はトナーの複数種(好ましくは全て)を用いて形成された複数の固定表示マーク204K,204C,204M,204Yを備える。可変表示領域は、複数種の印刷インキ又はトナーを用いて形成されることが好適である。
【0174】
ラベル長尺体200は、ラベル部233が長手方向に複数つながったラベル長尺体232を幅方向に3列有するもの(即ち、幅方向にも3つのラベル部233を有しするもの)であって、全てのラベル部233に固定表示マークがそれぞれ形成されている点で、ラベル長尺体30と共通する。ラベル長尺体200には、一方、固定表示マーク14が窓領域Z内に存在するラベル長尺体30と異なり、ラベル長尺体200の固定表示マークは、窓領域Z内に存在せず、各ラベル部233の横方向一方の端部に形成されている。
【0175】
ラベル長尺体200は、長尺状ラベル基材201を備え、当該基材上に有版印刷層202、及び無版印刷層203が形成された長尺体である。ラベル長尺体200では、ラベル長尺体30と同様に、固定表示マークが全てのラベル部233に形成されているため、各ラベル部233における可変表示領域の印刷不良の有無を、例えばラベル長尺体200の検査時における捩れ等の影響を受けずにより正確に検出できる。
【0176】
長尺状ラベル基材201上の有版印刷層202が形成された領域である有版印刷領域Z202は、各ラベル部233において同じ印刷パターンで形成される。図16に示す例では、有版印刷領域Z202の全体がラベル長尺体200の表側から見えるため、有版印刷領域Z202の全体が有版印刷層表示領域である。有版印刷層表示領域は、各ラベル部233で同じ印刷パターンを有する固定表示領域である。
【0177】
他方、長尺状ラベル基材201上の無版印刷層203が形成された領域である無版印刷領域Z203は、各ラベル部233において異なる印刷パターンで形成される。ラベル長尺体200を構成する各ラベル長尺体232は、印刷パターンが互いに異なる無版印刷領域Z203A,Z203B,Z203Cがそれぞれ形成されたラベル部233A,233B,233Cを備える。ラベル部233A,233B,233Cは、ラベル長尺体232の長手方向に連設している。ラベル長尺体200の幅方向に並ぶ3つのラベル部233は、無版印刷領域が同じ印刷パターンで形成されているが、それぞれ印刷パターンが異なるものであってもよい。
【0178】
長尺状ラベル基材201上には、有版印刷領域Z202によって周りが囲まれた領域である窓領域Zが設けられている。窓領域Zは、有版印刷領域Z202で囲われる領域に有版印刷層202(遮蔽印刷層)を形成しないことによって形成できる。窓領域Zは、無版印刷層203により表示される文字や絵柄が有版印刷層202に隠れることなくラベル長尺体200の表側から見える無版印刷層表示領域となる。なお、窓領域Z内には、上記のように固定表示マークは形成されていない。ゆえに、ラベル長尺体200では、ラベル長尺体90と同様に、窓領域Zの全体が可変表示領域となっている。
【0179】
本実施形態では、ラベル長尺体30と異なり、平面視四角形状を有する各ラベル部233の横(長辺方向)がラベル長尺体200の長手方向(MD方向)に沿っている。有版印刷領域Z202は、各ラベル部233の端縁に沿った領域と窓領域Zと後述の窓部を除く各ラベル部233の略全域に形成されており、各ラベル部233には一方側露出領域18のような幅広の露出領域は形成されない。例えば、ラベル長尺体201は実質的に熱収縮しない基材であって、切断予定部αで切断されたラベル長尺体200を切断予定部βで切断して得られるラベル250は、巻き付けラベルに好適である。実質的に熱収縮しない基材としては、無延伸フィルムや、ポリプロピレン系やポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる二軸延伸フィルム等の非収縮性フィルムを含む基材が例示できる。
【0180】
各ラベル部233は、固定表示領域である有版印刷領域Z202に囲われた窓部206K,206C,206M,206Yを有する。各窓部は、有版印刷領域Z202で囲われる領域に有版印刷層202(遮蔽印刷層)を形成しないことによって形成できる。窓部は、例えば、可変表示領域を形成する各印刷インキ又は各トナーの少なくとも2種類につき、種類毎に少なくとも1つ形成される。本実施形態では、可変表示領域が4種類の印刷インキ又はトナーで形成され、ラベル部233には4つの窓部206K,206C,206M,206Yが設けられている。即ち、本実施形態では、可変表示領域を形成する全ての印刷インキ又はトナーを用いて、種類毎に1つずつ固定表示マークが形成されている。窓部は固定表示マークの目標形成範囲であって、固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、窓部206K,206C,206M,206Yにそれぞれ形成されている。即ち、各固定表示マークは、可変表示領域を形成する印刷インキ又はトナー毎に異なる窓部にそれぞれ形成される。
【0181】
各ラベル部233は、各窓部を囲む固定表示領域として、隠蔽印刷領域205を有することが好ましい。隠蔽印刷領域205は、隠蔽印刷層により形成される。隠蔽印刷層は、有版隠蔽印刷層であることが好ましく、例えばグラビア印刷法又はフレキソ印刷法により形成される。隠蔽印刷層は、有版印刷層202と同じ印刷法で形成されることが好ましい。隠蔽印刷層には、上述の隠蔽印刷層61と同様の構成が適用できる。隠蔽印刷領域205は、例えば、ラベル部233の縦方向に長い平面視四角形状を有する。窓部206K,206C,206M,206Yは、1つの隠蔽印刷領域205内に形成されている。各窓部の配置は特に限定されないが、好ましくはラベル部233の縦方向に各窓部が一列に並んで一定の間隔で形成される。
【0182】
隠蔽印刷領域205の色は、特に限定されないが、好ましくは黒色である。特に、各窓部の周辺は、各固定表示マークの端縁を隠すために、黒色の有版印刷層を有することが好ましい。隠蔽印刷領域205は、例えば、黒色顔料を含有する黒色の有版印刷層と、当該印刷層の裏側に積層された酸化チタン等の白色顔料を含有する隠蔽印刷層とによって形成される。このため、隠蔽印刷領域205は黒色の隠蔽領域となっている。窓部206K,206C,206M,206Yは、例えば平面視四角形状を有し、互いに同じ大きさで形成される。
【0183】
固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、各窓部の形状に対応して平面視四角形状を有することが好ましい。固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、ラベル長尺体90の固定表示マーク97と同様に、窓部206K,206C,206M,206Yよりも一回り大きく形成され、無版印刷領域Z203の一部である可変表示領域が設計通りに形成された場合は対応する各窓部の全域に形成される。
【0184】
可変表示領域がCMYKの各顔料をそれぞれ含む4種類のトナーを用いて形成される場合、同時に同じ4種類のトナーを用いてそれぞれ固定表示マークが形成される。CMYK以外の色材(例えば、白色や草色等)を含むトナーがさらに使用される場合は、窓部及び固定表示マークの数を1つ増やしてもよい。可変表示領域を形成する印刷インキ又はトナーの種類毎に窓部及び固定表示マークを形成することで、例えば色抜け等の可変表示領域の印刷不良が検知し易くなる。
【0185】
固定表示マーク204Kは、ブラック顔料を含有する黒色トナーを用いて形成される単色のマークであり、窓部206Kを目標形成範囲として形成される。固定表示マーク204Cは、シアン顔料を含有する青色トナーを用いて形成される単色のマークであり、窓部206Cを目標形成範囲として形成される。固定表示マーク204Mは、マゼンダ顔料を含有する赤色トナーを用いて形成される単色のマークであり、窓部206Mを目標形成範囲として形成される。固定表示マーク204Yは、イエロー顔料を含有する黄色トナーを用いて形成される単色のマークであり、窓部206Yを目標形成範囲として形成される。
【0186】
図16は、可変表示領域を形成する各色トナーが設計通りに印刷された状態を示している。黒色トナーが目的とする位置に形成された場合は、窓部206Kの全域に固定表示マーク204Kが形成される。固定表示マーク204Kは窓部206Kよりも一回り大きいため、固定表示マーク204Kは端縁E204Kが窓部206Kの端縁E206Kを囲むように形成される。青色トナーが目的とする位置に形成された場合は、窓部206Cの全域に固定表示マーク204Cが形成され、端縁E204Cが端縁E206Cを囲む。赤色トナーが目的とする位置に形成された場合は窓部206Mの全域に固定表示マーク204Mが形成されて端縁E204Mが端縁E206Mを囲み、黄色トナーが目的とする位置に形成された場合は窓部206Yの全域に固定表示マーク204Yが形成されて端縁E204Yが端縁E206Yを囲む。各固定表示マークの端縁は、隠蔽印刷領域205の裏側に重なっており、隠蔽印刷領域205によって隠蔽されている。
【0187】
固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、検査精度向上等の観点から、マークの全体が無模様の印刷パターンで形成されることが好適である。また、マークの全体が無模様で濃淡差のない単一色で形成されることが好ましい。図16に示す例では、各固定表示マークは、各ラベル部233の縦方向一端側(ラベル長尺体201の幅方向一端部側)からKCMYの順に各ラベル部233の縦方向に並んで形成されているが、各マークの順序はこれに限定されない。
【0188】
各ラベル部233には、一方の端部に各固定表示マークが形成され、他方の端部に固定表示領域が形成されている。隠蔽印刷領域205、各窓部、及び各固定表示マークを含む部分である被検査部207は、各ラベル部233において、ラベル250の端部同士を重ね合わせて当該ラベルを筒状体(筒状ラベル260)に成形したときに筒状ラベル260の内側に位置する筒状ラベル260の内側端部263(後述の図19参照)となる部分に形成されることが好ましい。ラベル長尺体200では、内側端部263の外側に重ね合わされる筒状ラベル260の外側端部262(後述の図19参照)となる部分に、固定表示領域である有版印刷領域Z202が形成されている。特に、外側端部262となるラベル部233の他方の端部に形成される固定表示領域である有版印刷領域Z202に隠蔽印刷層が形成され、隠蔽印刷領域となっている場合が好ましい。
【0189】
ラベル長尺体200を切断し、筒状体に成形して得られる筒状ラベル260は、一般的に、ラベル250の横方向が周方向となり、横方向各端部がそれぞれ外側端部262、内側端部263となる。このため、ラベル長尺体200において被検査部207は、各ラベル部233の横方向端部に形成されることが好ましい。また、ラベル250が巻き付けラベルに適用される場合は、各ラベル部233において、ラベル250を容器等の被装着物に貼り付ける際にラベル長尺体250又はラベル長尺体232の先に繰り出される側(長尺体がロール状に成形されている場合は巻外側)となる端部に、被検査部207を形成することが好ましい。巻き付けラベルを容器等の被装着物に装着する場合は、まず、ラベルの内側端部を被装着物に貼着するため、各ラベル部233の先に繰り出される側に位置する端部に被検査部207を形成しておくと、容器等へのラベルの装着が容易になる。
【0190】
図17及び図18は、被検査部の他の例を示す図である。図17に例示する被検査部217は、固定表示マーク214K,214C,214M,214Yが、可変表示領域を形成する複数種の印刷インキ又はトナーを用いて当該インキ又はトナー毎に窓部216の異なる部分にそれぞれ形成される点で、固定表示マークと共通する。固定表示マークは、可変表示領域を形成する各印刷インキ又は各トナーの少なくとも2種類を用いて、好ましくは可変表示領域を形成する各印刷インキ又は各トナーの全てを用いて形成される。他方、被検査部217は1つの窓部216に各固定表示マークが形成される点で、固定表示マークと同数の窓部を有する被検査部207と異なる。被検査部217は、被検査部207と同様に、窓部216を囲む固定表示領域として隠蔽印刷領域215を有する。隠蔽印刷領域215は平面視長方形状を有し、当該領域の中央部に平面視長方形状の窓部216が形成されている。
【0191】
固定表示マーク214K,214C,214M,214Yは、例えば、それぞれ黒色トナー、青色トナー、赤色トナー、黄色トナーによって形成される。各固定表示マークは、窓部216の長手方向に一列に並んで縞状に形成される。各固定表示マークは、窓部216の長手方向に対しては窓部216より小さく、いずれも略同じ大きさの平面視四角形状に形成されるが、隣接するマークの端部同士を重ね合わせながら縞状に形成されるため、窓部216の全域を固定表示マークで埋めることができる。可変表示領域が設計通りに形成された場合は、窓部216の全域を埋めるように4つの固定表示マークが縞状に形成される。可変表示領域の位置ズレが発生する場合は、一般的に、全ての固定表示マークの位置ズレが発生するため、図17に例示するような形態としてもよい。
【0192】
図17に示す例では、1つの窓部216内に4つの固定表示マーク214K,214C,214M,214Yを設けたが、窓部を形成せずに、複数の固定表示マークを形成してもよい。隠蔽印刷領域に囲われた窓部を設ける場合は、固定表示マークの端縁が隠蔽印刷領域によって隠蔽されるため、後述するように、窓部を超える範囲を非マスク領域として可変表示領域の印刷不良の有無を検査できるが、窓部を形成しない場合は、上述のラベル長尺体30の場合と同様に、固定表示マークの目標形成範囲の一部を非マスク領域とし、当該一部を除く他の部分をマスク領域として検査を行う。
【0193】
図18に例示する被検査部227は、固定表示マーク224が、可変表示領域を形成する複数種の印刷インキ又はトナーを重ねて形成される点で、単色の固定表示マークを備える被検査部207,217と異なる。固定表示マーク244は、可変表示領域を形成する各印刷インキ又は各トナーの少なくとも2種類を用いて、好ましくは可変表示領域を形成する各印刷インキ又は各トナーの全てを用いて、これらを重ねて形成される。被検査部227では、固定表示マーク224が1つの窓部216の全域に一様に形成されている。隠蔽印刷領域215及び窓部216の構成は、被検査部217と同じである。固定表示マーク224は、可変表示領域を形成する全ての印刷インキ又はトナーを用いて形成されることが好適である。固定表示マーク224は窓部216よりも一回り大きく形成されるため、可変表示領域が設計通りに形成された場合は窓部216の全域に固定表示マーク224が形成される。
【0194】
ラベル長尺体200における可変表示領域の印刷不良の有無の検査工程は、ラベル長尺体30の検査工程と同様の手順で行うことができる。ラベル長尺体200の検査工程では、固定表示マーク204K,204C,204M,204Yの目標形成範囲である窓部206K,206C,206M,206Yの少なくとも一部を非マスク領域とし、可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域とする。そして、各窓部の非マスク領域に光を照射することによって得られる反射光を撮像して得られる検査画像をマスター画像と比較して可変表示領域の印刷不良の有無を確認する。なお、固定表示領域も非マスク領域として可変表示領域と一緒に検査することが好ましい。
【0195】
ラベル長尺体200の検査工程では、窓部206K,206C,206M,206Yの全体と隠蔽印刷領域205とを非マスク領域とし、少なくとも可変表示領域の目標形成範囲をマスク領域とする。そして、非マスク領域を撮像して検査画像を取得し、非マスク領域の検査画像とマスター画像とを比較して、両画像が一致するか否かを判定する。検査画像とマスター画像が一致する場合は、可変表示領域の印刷不良なしと判定し、検査画像とマスター画像が一致しない場合は、可変表示領域の印刷不良ありと判定する。本検査工程では、可変表示領域を形成する各トナーの有無(色抜け)、及び閾値を超える可変表示領域の印刷ズレの有無を確認できる。
【0196】
図19は、ラベル長尺体200を切断予定部α,βで切断して得られるラベル250、及びラベル250を筒状体に成形した筒状ラベル260を示す図である。図19(a)に示すように、ラベル250は、ラベル基材251と、ラベル基材251上に形成された有版印刷層202により形成される第1表示領域と、ラベル基材251上に形成された無版印刷層203により形成される第2表示領域とを備える。ラベル250は、第1表示領域で囲われた少なくとも1つの窓部(図19では4つの窓部206K,206C,206M,206Y)と、無版印刷層203を形成する印刷インキ又はトナーの少なくとも1種を用いて窓部に形成された表示マーク(図19では4つの固定表示マーク204K,204C,204M,204Y)とを備える。固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、ラベル基材251の端部同士を重ね合わせて当該ラベル基材を筒状体に成形したときに当該筒状体の内側に位置する内側端部263(図19(b)参照)となる部分に形成されており、内側端部263の外側に重ね合わされる外側端部262(図19(b)参照)となる部分には、第1表示領域が形成され、各固定表示マークが当該第1表示領域に覆われている。外側端部262に設けられた第1表示領域によって各固定表示マークを含む被検査部207が覆われるので、被検査部207が見え難くなる。特に、外側端部262に隠蔽印刷層を設けて第1表示領域を形成すると、被検査部207の隠蔽性が向上する。
【0197】
ラベル250の第1表示領域は、有版印刷領域Z202(有版印刷層表示領域)であって、ラベル長尺体200の固定表示領域に対応する領域である。有版印刷領域Z202は、平面視四角形状のラベル基材251の端縁に沿った領域と窓領域Zと各窓部を除くラベル基材251上の略全域に形成されており、ラベル250には一方側露出領域18のような幅広の露出領域は形成されていない。
【0198】
ラベル250の第2表示領域は、無版印刷領域Z203のラベル250の表側から見える領域のうち各固定表示マークを含まない領域であって、ラベル長尺体200の可変表示領域に対応する領域である。ラベル基材251上には有版印刷領域Z202によって周りが囲まれた領域である窓領域Zが設けられており、ラベル250では、窓領域Zの全体が可変表示領域となっている。
【0199】
固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、窓領域Z内に形成されておらず、固定表示領域の一部である隠蔽印刷領域205に囲われた窓部206K,206C,206M,206Yにそれぞれ形成されている。各固定表示マークは、可変表示領域が設計通りに形成された場合は対応する各窓部の全域に形成される。隠蔽印刷領域205、各窓部、及び各固定表示マークを含む部分である被検査部207は、ラベル250の横方向一方側の端部に各固定表示マークがラベル250の縦方向に並んだ状態で形成されている。図19(a)の仮想線Xよりも外側に位置する部分が筒状ラベル260の内側端部262となる部分である。被検査部207は、ラベル250の横方向一方側の端部であって仮想線Xよりも外側に位置する部分に形成されている。
【0200】
ラベル250は、容器等の被装着物に巻き付けて装着される巻き付けラベルに好適である。ラベル250が巻き付けラベルに用いられる場合、ラベル長尺体200を切断予定部αで切断して得られたラベル長尺体232がラベラーに供給される。そして、ラベル長尺体232が切断予定部βで連続的に切断されて得られたラベル250が容器等の被装着物に巻き付けられる。このとき、被検査部207が形成されたラベル250の横方向他方側の端部から被装着物に巻き付けられ、ラベル250の横方向一方側の端部が他方側の端部に接合されて、ラベル250の横方向が周方向となる筒状ラベル260が得られる。即ち、筒状ラベル260は、ラベラーにおいてラベル250を被装着物に巻き付けたときに得られる。なお、図19では被装着物の図示を省略している。
【0201】
図19(b)及び図19(c)に例示するように、筒状ラベル260は、ラベル250(ラベル基材251)の横方向の端部同士を重ね合わせて接合することで筒状体に成形されている。接合部261は、例えば、筒状ラベル260の軸方向に沿って帯状に形成される。互いに重ね合わされるラベル250の横方向の端部のうち、筒状ラベル260の外側に位置する外側端部262の内面には接着剤層264が形成されており、外側端部262が接着剤層264を介して筒状ラベル260の内側に位置する端部である内側端部263に接合されることで接合部261が形成されている。即ち、外側端部262の内面と、内側端部263の外面とが接合している。また、内側端部263の内面には、被装着物の表面に筒状ラベル260を固定するための接着剤層265が形成されている。接着剤層264,265は、例えば、従来公知の感圧接着剤や感熱接着剤をラベル基材251又は容器に塗工して形成される。
【0202】
筒状ラベル260において、被検査部207は、内側端部263の縦方向他端側に設けられている。そして、被検査部207は、内側端部263の外側に重ね合わされた外側端部262の有版印刷領域Z202によって隠蔽されている。このため、被検査部207に起因して筒状ラベル260の見栄えが損なわれることが防止される。特に、外側端部262の有版印刷領域Z202に隠蔽性を付与することで、被検査部207の隠蔽性が向上する。
【0203】
図20は、ラベル300、及びラベル300を筒状体に成形した筒状ラベル310を示す図である。図20(a)に示すように、ラベル300は、被検査部207が形成された横方向他方側の端部と反対側の横方向一方側の端部に、他のラベル端縁に設けられる露出領域よりも幅広の一方側露出領域18(各印刷領域が形成されない領域)が設けられている点で、ラベル250と異なる。その他の点は、ラベル250と同様であるが、ラベル300は、ラベル基材251にシュリンク基材が適用されたシュリンクラベルであることが好ましい。この場合も、固定表示マーク204K,204C,204M,204Yは、ラベル基材251の端部同士を重ね合わせて当該ラベル基材を筒状体に成形したときに当該筒状体の内側に位置する内側端部313(図20(b)参照)となる部分に形成され、内側端部313の外側に重ね合わされる外側端部312(図20(b)参照)となる部分には、第1表示領域が形成されている。そして、各固定表示マークを含む被検査部207は第1表示領域に覆われている。
【0204】
ラベル300は、例えば、横方向の端部同士を重ね合わせて接合することで筒状体(筒状ラベル310)に成形された後、筒状ラベル310を容器等の被装着物に外嵌して加熱処理することによって被装着物の表面に密着した状態で装着される。筒状ラベル310は、上述の筒状ラベル20と同様の方法で作製できる。
【0205】
図20(b)及び図20(c)に例示するように、筒状ラベル310は、筒状ラベル260と同様に、ラベル300の横方向の端部同士を重ね合わせて接合することで筒状体に成形されている。接合部311は、例えば、一方側露出領域18が設けられたラベル300の横方向一方側の端部を筒状ラベル310の外側端部312とし、一方側露出領域18の内面を内側端部313の外面に溶着して形成される。一方側露出領域18は、内側端部313の有版印刷領域Z202が形成された部分に接合されるため、当該露出領域を通して被装着物が見えることを防止できる。
【0206】
筒状ラベル310において、被検査部207は、内側端部313の縦方向他端側に設けられている。被検査部207は、内側端部313のうち、一方側露出領域18が重ねられ接合部311が形成される部分よりも内端側に設けられることが好ましい。即ち、被検査部207は、内側端部313の外側に重ね合わされた外側端部312の有版印刷領域Z202と重なる位置に設けられ、有版印刷領域Z202よって隠蔽されることが好ましい。
【0207】
なお、図19及び図20では、被検査部207がラベル部にある形態を例示したが、被検査部207はラベルタブに形成されてもよい。また、各ラベル部から選択される複数のラベル部、又は各ラベルタブから選択される複数のラベルタブに被検査部が形成されてもよい。
【0208】
上述の実施形態では、各ラベル部又は各ラベルタブで、対応する固定表示マークの全体が同じ印刷パターンで形成されている。例えば、ラベル長尺体200の各ラベル部233において、各固定表示マーク204Kは全体が同じ印刷パターンで形成されている。しかし、各固定表示マークは、当該マークが形成されたラベル部又はラベルタブで印刷パターンが同じである所定範囲を有していてもよい。即ち、各固定表示マークは、当該マークが形成されたラベル部又はラベルタブにおいて、マークの一部である所定範囲のみが同じ印刷パターンで形成されていてもよい。
【0209】
上記所定領域は、可変表示領域の印刷不良の有無を検査する工程で固定表示マークの目標形成範囲にマーク用の非マスク領域を設定する実施形態では、当該非マスク領域に対応する領域、又は当該非マスク領域に対応する領域よりも少し大きい領域(例えば、当該非マスク領域の全周において1〜2mm程度大きい寸法の領域)である。上記所定領域は、窓部を有する実施形態では、窓部に対応する領域、又は窓部に対応する領域よりも少し大きい領域(例えば、窓部の全周において1〜2mm程度大きい寸法の領域)である。
【符号の説明】
【0210】
10,60,70,250,300 ラベル、11,251 ラベル基材、12,202,302 有版印刷層、13,19A,19B,19C,203 無版印刷層、14,74,97,101,204K,204C,204M,204Y,214K,214C,214M,214Y,224 固定表示マーク、15 アンカーコート層、16 保護層、18 一方側露出領域、20,260,310 筒状ラベル、21,261,311 接合部、30,32,90,92,100,120,200 ラベル長尺体、31,121,201,232 長尺状ラベル基材、33,33A,33B,33C,93,93A,93B,93C,233,233A,233B,233C ラベル部、34 露出領域、35 タブ、36C,36M,36Y,36K トリムマーク、40 筒状ラベル長尺体、41 長尺体接合部、43 筒状ラベル部、50,80,98,102 マスク領域、51,81,103 非マスク領域、61 隠蔽印刷層、95 遮蔽領域、96,206K,206C,206M,206Y,216 窓部、94 ラベルタブ、207,217,227 被検査部、261,311 接合部、262,312 外側端部、263,313 内側端部、264,265 接着剤層、E12,E13,E14,E19A,E50,E51,E61,E73,E74,E81,E96,E97,E98,E101,E102,E103,E204K,E204C,E204M,E204Y,E206K,E206C,E206M,E206Y 端縁、Z 窓領域、Z12,Z202,Z302 有版印刷領域、Z13,Z19A,Z73,Z203 無版印刷領域、205,215,Z61 隠蔽印刷領域、α,β 切断予定部
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