特許第6797630号(P6797630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797630
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】積層ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   F16J15/08 H
   F16J15/08 P
   F16J15/08 Q
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-201428(P2016-201428)
(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-62988(P2018-62988A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】小島 康史
(72)【発明者】
【氏名】中岡 真哉
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−085963(JP,U)
【文献】 特開2008−164155(JP,A)
【文献】 米国特許第06409178(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封対象空間の開口形状に対応する開口部を有するガスケットを複数積層してなる積層ガスケットであり、
前記積層ガスケットは、上段ガスケットと、中段ガスケットと、下段ガスケットからなり、
上段ガスケットを構成するガスケットは、対向する1組の位置決め孔が周囲に形成されており、中段ガスケットを構成するガスケットは、対向する2組の位置決め孔が周囲に形成されており、下段ガスケットを構成するガスケットは、対向する1組の位置決め孔が周囲に形成されており、
前記上段ガスケットの対向する1組の位置決め孔と、前記下段ガスケットの対向する1組の位置決め孔とは、位相が異なっており、
前記中段ガスケットの一方の組の前記位置決め孔は、前記上段ガスケットの前記位置決め孔に対応し、他方の組の前記位置決め孔は、前記下段ガスケットの前記位置決め孔に対応し、
対応する前記位置決め孔それぞれにピンを通して、該中段ガスケットと、上段ガスケット及び下段ガスケットとを固定してなることを特徴とする積層ガスケット。
【請求項2】
前記上段ガスケット、前記中段ガスケット及び前記下段ガスケットは、方形状の外方に突設する突片部を備え、
前記突片部に、前記位置決め孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の積層ガスケット。
【請求項3】
前記ピンは、前記位置決め孔の内径よりも小径の直筒状に形成され、
前記ピンの一端側及び他端側は、位置決め孔の内径よりも大径となされた係止部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の積層ガスケット。
【請求項4】
前記ガスケットハーフビードが形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の積層ガスケット
【請求項5】
前記ガスケットの片面又は両面に、ゴムコーティングされていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の積層ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ガスケットに関し、詳しくは、接合されるハウジング間の間隔が広い筐体や、さらに「面開き」に対する高い追従性の要求にも応じられる積層ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、内燃機関のシリンダブロック及びシリンダヘッドの接合部、あるいは排気マニホールド及び排気管の接合部等、種々の接合部をシールするために、互いに対向する接合面間に挟着されて使用されている。
【0003】
ガスケットは、通常は単層で使用される。しかし、シリンダブロック及びシリンダヘッドの接合部のように、接合面間の間隔が広くなる「面開き」に対する高い追従性が要求される場合には、ガスケットは積層して使用されることもあり、2層又は3層で使用され、各ガスケットはカシメにて組み付けられるのが一般的である。
カシメを使用する以外では、ガスケット自体を加工し、カーリングにより、各ガスケットを組み付ける手法が、特許文献1に提案されている。
【0004】
一方、ガスケットを積層させる手法としては、図12に示す手法が知られている。即ち、一方のガスケット101及び他方のガスケット102は、カシメピン104により、センタープレート103に取付けられて位置決めされる。
【0005】
このガスケット101にはハーフビード101aが形成され、ガスケット102にはハーフビード102aが形成され、このハーフビード101aとハーフビード102aを圧縮し局所的に面圧を発生させてシール機能を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−031978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、接合されるハウジング間の間隔が広い筐体や、「面開き」に対する高い追従性が要求される。
【0008】
しかしながら、カシメピンやカーリングによりガスケットをセンタープレートに固定させる従来手法では、上記のハーフビード付きの2枚のガスケットを、センタープレートを含めて3層構成とすると、センタープレート自体を固定しなければならず、その結果、センタープレートとガスケットとを固定しなければならない。そのため、センタープレートを介していては、積層構成ができないため、「面開き」に対する高い追従性の要求に応えることができない。
【0009】
そこで、本発明は、接合されるハウジング間の間隔が広い筐体や、さらに「面開き」に対する高い追従性の要求にも応じられる積層ガスケットを提供することを課題とする。
【0010】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
密封対象空間の開口形状に対応する開口部を有するガスケットを複数積層してなる積層ガスケットであり、
前記積層ガスケットは、上段ガスケットと、中段ガスケットと、下段ガスケットからなり、
上段ガスケットを構成するガスケットは、対向する1組の位置決め孔が周囲に形成されており、中段ガスケットを構成するガスケットは、対向する2組の位置決め孔が周囲に形成されており、下段ガスケットを構成するガスケットは、対向する1組の位置決め孔が周囲に形成されており、
前記上段ガスケットの対向する1組の位置決め孔と、前記下段ガスケットの対向する1組の位置決め孔とは、位相が異なっており、
前記中段ガスケットの一方の組の前記位置決め孔は、前記上段ガスケットの前記位置決め孔に対応し、他方の組の前記位置決め孔は、及び前記下段ガスケットの前記位置決め孔に対応し、
対応する前記位置決め孔それぞれにピンを通して、該中段ガスケットと、上段ガスケット及び下段ガスケットとを固定してなることを特徴とする積層ガスケット。
(請求項2)
前記上段ガスケット、前記中段ガスケット及び前記下段ガスケットは、方形状の外方に突設する突片部を備え、
前記突片部に、前記位置決め孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の積層ガスケット。
(請求項3)
前記ピンは、前記位置決め孔の内径よりも小径の直筒状に形成され、
前記ピンの一端側及び他端側は、位置決め孔の内径よりも大径となされた係止部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の積層ガスケット。
(請求項4)
前記ガスケットは、ハーフビードであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の積層ガスケット
(請求項5)
前記ガスケットの片面又は両面に、ゴムコーティングされていることを特徴とする請求項1〜4記載の何れかに記載の積層ガスケット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接合されるハウジング間の間隔が広い筐体や、さらに「面開き」に対する高い追従性の要求にも応じられる積層ガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の積層ガスケットの一例を示す側面図
図2】(ii)−(ii)線の拡大断面図
図3】積層ガスケットの分解斜視図
図4】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する上段ガスケットの一例を示す平面図、(b)(iv)−(iv)線の拡大断面図
図5】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する上段ガスケットの他の一例を示す平面図、(b)(v)−(v)線の拡大断面図
図6】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する中段ガスケットの一例を示す平面図、(b)(vi)−(vi)線の拡大断面図
図7】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する中段ガスケットの他の一例を示す平面図、(b)(vii)−(vii)線の拡大断面図
図8】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する下段ガスケットの一例を示す平面図、(b)(viii)−(viii)線の拡大断面図
図9】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する下段ガスケットの他の一例を示す平面図、(b)(ix)−(ix)線の拡大断面図
図10】(a)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する位置決めピンの一例を示す平面図、(b)本発明の実施形態の積層ガスケットを構成する位置決めピンの一例を示す側面図
図11図2の積層ガスケットの使用状態の一例を示す要部断面図
図12】従来のガスケットの要部を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の積層ガスケットの一例を示す側面図であり、図2は、(ii)−(ii)線の拡大断面図であり、図3は、図1の積層ガスケットの分解斜視図である。
【0016】
積層ガスケット1は、例えば、密封対象である内燃機関のシリンダブロック及びシリンダヘッドの空間である接合部、あるいは排気マニホールド及び排気管の接合部等、種々の接合部2をシールする。これら接合部2の接合対象20の接合面21と、接合対象22の接合面23の間に、複数のガスケット3、4、5を、位置決めピン(以下、単にピンともいう。)8、9、10、11を介して積層している。なお、接合対象20と22は図示しないボルトで固定される。
【0017】
ガスケット3、ガスケット4及びガスケット5は、各々複数枚で構成されている。この実施形態では、ガスケット3は、6枚のガスケットが積層された構成である。ガスケット4は4枚のガスケットが積層された構成である。ガスケット5は、6枚のガスケットが積層された構成である。
【0018】
ガスケット3、4及び5を構成する各ガスケットは、メタルガスケットであって、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板及びアルミニウム合板等から選択される弾性を有する金属薄板で形成されることが好ましい。ガスケット3、4、5には、ゴムコーティングを施してもよい。
【0019】
ガスケット3、ガスケット4及びガスケット5は、各々複数枚で構成されているので、複数枚をセットで説明する場合は、説明の便宜上、上段ガスケット3、中段ガスケット4、下段ガスケット5と称することがある。またガスケット3,4,5を構成する個々のガスケットに関しては、個別に説明する場合には、説明の便宜上、6枚のガスケット3に関しては、ガスケット30、31、32、33、34、35と各々区別する。また4枚のガスケット4に関しては、40、41、42、43と各々区別する。さらに6枚のガスケット5に関しては、50、51、52、53、54、55と各々区別する。
図4図9に基づいて、各ガスケットの構造の一例を説明する。
【0020】
図4及び図5は、上段ガスケット3に用いられるガスケットの一例を示す図であり、図4に示す例は、ガスケット30、32、34であり、図5に示す例は、ガスケット31、33、35である。
【0021】
図4(a)に示すように、ガスケット30は、方形状の外方に突設する2箇所(上辺と下辺)の突片部300に、位置決め孔301、302が開設されている。ガスケット30には、図4(b)に示すように、開口部7側に上方に向けて拡開するハーフビード303が形成されている。なお、ガスケット32及び34にも、上述したガスケット30に有する突片部300、位置決め孔301,302及びハーフビード303が形成されている。
【0022】
次に、図5(a)に示すように、ガスケット31は、方形状の外方に突設する2箇所(上辺と下辺)の突片部310に、位置決め孔311、312が開設されている。ガスケット31には、図5(b)に示すように、開口部7側に下方に向けて拡開するハーフビード313が形成されている。なお、ガスケット33及び35にも、上述したガスケット31に有する突片部310、位置決め孔311、312及びハーフビード313が形成されている。
【0023】
図6及び図7は、中段ガスケット4に用いられるガスケットの一例を示す図であり、図6に示す例は、ガスケット40、42であり、図7に示す例は、ガスケット41、43である。
【0024】
図6(a)に示すように、ガスケット40は、方形状の外方に突設する4箇所(上辺と下辺及び左辺と右辺)の突片部400に、位置決め孔401、402、403、404が開設されている。ガスケット40には、図6(b)に示すように、開口部7側に上方に向けて拡開するハーフビード405が形成されている。なお、ガスケット42にも、上述したガスケット40に有する突片部400、位置決め孔401、402、403、404及びハーフビード405が形成されている。
【0025】
次に、図7(a)に示すように、ガスケット41は、方形状の外方に突設する4箇所(上辺と下辺及び左辺と右辺)の突片部410に、位置決め孔411、412、413、414が開設されている。ガスケット41には、図7(b)に示すように、開口部7側に下方に向けて拡開するハーフビード415が形成されている。なお、ガスケット43にも、上述したガスケット41に有する突片部410、位置決め孔411、412、413、414及びハーフビード415が形成されている。
【0026】
図8及び図9は、下段ガスケット5に用いられるガスケットの一例を示す図であり、図8に示す例は、ガスケット50、52、54であり、図9に示す例は、ガスケット51、53、55である。
【0027】
図8(a)に示すように、ガスケット50は、方形状の外方に突設する2箇所(左辺と右辺)の突片部500に、位置決め孔501、502が開設されている。ガスケット50には、図8(b)に示すように、開口部7側に上方に向けて拡開するハーフビード503が形成されている。なお、ガスケット52及び54にも、上述したガスケット50に有する突片部500、位置決め孔501、502及びハーフビード503が形成されている。
【0028】
次に、図9(a)に示すように、ガスケット51は、方形状の外方に突設する2箇所(左辺と右辺)の突片部510に、位置決め孔511、512が開設されている。ガスケット51には、図9(b)に示すように、開口部7側に下方に向けて拡開するハーフビード513が形成されている。なお、ガスケット53及び55にも、上述したガスケット51に有する突片部510、位置決め孔511、512及びハーフビード513が形成されている。
【0029】
次に、上記ガスケットを用いて、積層ガスケットを構成する例を図1図10に基づいて説明する。
【0030】
<積層ガスケット全体の構成>
本実施形態の積層ガスケット1は、図1に示すように、6枚のガスケットからなる上段ガスケット3と、4枚のガスケットからなる中段ガスケット4と、6枚のガスケットからなる下段ガスケット5によって構成される。
【0031】
<上段ガスケット3の構成>
図3に示すように、6枚のガスケットを用いる。図4図5に示す各ガスケットを積層して上段ガスケット3を構成する。
【0032】
図4に示すガスケット30、32、34と図5に示すガスケット31、33、35の違いは、ハーフビードが開口部7側に上方に向けて拡開しているか、下方に向けて拡開しているかである。
【0033】
6枚のガスケットは、上方から下方に向かって、ガスケット30、31、32、33、34、35を順に配置する。位置決め孔は、図3に示すように、方形状ガスケットの対向する2辺に設けられており、各々の位置決め孔は上下方向で一致するように配置される。一つのピンを差し込んで固定するためである。
【0034】
図3の手前側の位置決め孔は、上方から順に、位置決め孔301、311、301、311、301、311が配置され、図3の奥側の位置決め孔は、上方から順に、位置決め孔302、312、302、312、302、312が配置される。
各々の位置決め孔301・・・311に、ピン9を通す。また各々の位置決め孔302・・・312に、ピン11を通す。
【0035】
<ピンの固定>
図10(a)は、本発明の実施形態の積層ガスケットを構成するピンの構成を示す平面図、(b)は側面図である。
【0036】
位置決めピン8、9、10、11は、図10に示すように、たとえば、位置決め孔の内径よりも小径の直筒状に形成され、一端側及び他端側に、位置決め孔の内径よりも大径となされた係止部12、13を有している。
【0037】
本発明において、位置決めピン8、9、10、11の固定手段は格別限定されない。ピンと係止部が、ネジ止めされたり、カシメ止めされたりしてもよい。
また、係止部12、13は、位置決めピン8、9、10、11と一体形成されても良いし、例えば係止部12だけを一体形成し、係止部13を別体として、各ガスケットの位置決め孔に通した後に位置決めピン形成してもよい。
【0038】
<中段ガスケット4>
中段ガスケット4は、上段ガスケット3の下方に設置されるガスケットであり、図3に示すように、4枚のガスケットを用いる。図6図7に示す各ガスケットを積層して中段ガスケット4を構成する。
【0039】
図6に示すガスケッ40、42と図7に示すガスケット41、43を用い、4枚のガスケットは、上方から下方に向かって、ガスケット40、41、42、43を順に配置する。
【0040】
図6に示すガスケッ40、42は、ハーフビードが開口部7側に上方に向けて拡開している。図7に示すガスケット41、43は、ハーフビードが開口部7側に下方に向けて拡開している。
【0041】
中段ガスケット4を構成する各々のガスケットには、図3図6に示すように、位置決め孔401、402、403、404が、方形状のガスケットの対向する4辺に設けられている。また、図3図7に示すように、位置決め孔411、412、413、414が、方形状のガスケットの対向する4辺に設けられている。
【0042】
各々の位置決め孔は上下方向で一致するように配置される。一つのピンを差し込んで固定するためである。
【0043】
ガスケット4の各々の位置決め孔404、414、404、414に、ピン8を通す。また各々の位置決め孔403、413、403、413に、ピン10を通す。またガスケット3の各々の位置決め孔301・・・311から通されたピン9を、ガスケット4の各々の位置決め孔401、411、401、411にも通す。またガスケット3の各々の位置決め孔302・・・312から通されたピン11を、ガスケット4の各々の位置決め孔402、412、402、412にも通す。
【0044】
次に、ピン8、9、10、11のうち、上段ガスケット3及び中段ガスケット4を固定するピン9、11を固定する。従って、固定用のピン9と11は、上段ガスケット3と中段ガスケット4の固定に共通して使用されるピンである。これにより、上段ガスケット3及び中段ガスケット4を固定することができる。
固定用のピン8、10は、中段ガスケット4及び後述する下段ガスケット5の固定に共通して使用されるピンである。
【0045】
<下段ガスケット5>
下段ガスケット5は、中段ガスケット4の下方に設置されるガスケットであり、図3に示すように、6枚のガスケットを用いる。図8図9に示す各ガスケットを積層して下段ガスケット5を構成する。
【0046】
図8に示すガスケッ50、52、54と図9に示すガスケット51、53、55を用い、6枚のガスケットは、上方から下方に向かって、ガスケット50、51、52、53、54、55を順に配置する。
【0047】
図8に示すガスケッ50、52、54は、ハーフビードが開口部7側に上方に向けて拡開している。図9に示すガスケット51、53、55は、ハーフビードが開口部7側に下方に向けて拡開している。
【0048】
下段ガスケット5を構成する各々のガスケットには、図3図8図9に示すように、位置決め孔501、511、501、511、501、511及び位置決め孔502、512、502、512、502、512が、方形状ガスケットの対向する2辺に設けられている。
各々の位置決め孔は上下方向で一致するように配置される。一つのピンを差し込んで固定するためである。
【0049】
中段ガスケット4の各々の位置決め孔404・・・414に通されたピン8を、各々の位置決め孔502・・・512にも通す。また各々の位置決め孔403・・・413に通されたピン10を、各々の位置決め孔501・・・511にも通す。
【0050】
次に、中段ガスケット4及び下段ガスケット5を固定するピン8、10を固定する。従って、固定用のピン8と10は、中段ガスケット4と下段ガスケット5の固定に使用されるピンである。これにより、中段ガスケット4及び下段ガスケット5を固定することができる。
【0051】
この結果、上段ガスケット3及び中段ガスケット4をピン9、11で固定し、中段ガスケット4及び下段ガスケット5をピン8、10で固定することによって、上段ガスケット3、中段ガスケット4及び下段ガスケット5を固定することができる。
【0052】
上記のようにして、上段ガスケット3、中段ガスケット4及び下段ガスケット5が積層構成されると、図2のような構成となる。
【0053】
本実施の形態において、上段ガスケット3、中段ガスケット4及び下段ガスケット5を積層可能にしているのは、位置決め孔の存在である。
【0054】
上段ガスケット3と下段ガスケット5は、いずれも、方形状のガスケット本体の外方の対向する2辺に各々位置決め孔が設けられている。積層の際には、位置決め孔の配置を、位相ずらして配置されていることが好ましい。後述する接合部が図示しないボルト等で締結される際に、位置決め孔の位相がずれていることにより、位置決め孔に通す異なるピン同士が締結の邪魔をせず、ガスケットを圧縮することができる。位相は、例えば、90度位相をずらすことができる。
【0055】
この上段ガスケット3と下段ガスケット5の二つのガスケットだけでは、積層ガスケットは形成できない。上段ガスケット3と下段ガスケット5が連結されていないからである。
【0056】
本実施の形態において、中段ガスケット4が、上段ガスケット3と下段ガスケット5の連結機能を果たす。
【0057】
中段ガスケット4には、方形状の枠体の外方の対向する4辺に各々位置決め孔が設けられている。即ち、4つの位置決め孔が設けられ、そのうち一方の2つの位置決め孔は、上段ガスケット3と位置を一致させる。また他方の2つの位置決め孔は、下段ガスケット5と位置を一致させる。
【0058】
このように位置決めして、4つの位置決め孔にピン8、9、10、11を通すと、中段ガスケット4が、上段ガスケット3と下段ガスケット5の連結機能を果たす。
【0059】
上記の実施形態では、中段ガスケット4に、4つの位置決め孔を設けているが、上段ガスケット3と下段ガスケット5の連結機能を果たせれば、これに限定されない。
【0060】
<積層ガスケット1の作用>
次に、積層ガスケット1の作用について、図2のような構成となった積層ガスケットを接合対象20、22に対して使用した状態を図11に基づいて説明する。
図11は、図2の積層ガスケットの使用状態の一例を示す要部断面図である。
【0061】
図11に示すように、接合対象20、22を図示しないボルトで締めると、上段ガスケット3、中段ガスケット4及び下段ガスケット5が圧縮変形する。
【0062】
そして、各ガスケット3、4、5が圧縮変形されると、中段ガスケット4及び下段ガスケット5は、位置決め孔を介して位置決めピン8に沿って、下方へ押されていき、上段ガスケット3も、同様に下方へ押されていく。この時上段ガスケット3は、位置決めピン8の位置に突片部300がないため、位置決めピン8に圧縮を邪魔されることがない。
【0063】
上段ガスケットと下段ガスケットとの位置決め孔を設ける位置を異ならせ、中段ガスケットに連結機能を果たさせることによって、上段ガスケットと下段ガスケットとを中段ガスケットを介して、ガスケット同士を積層させつつ、圧縮変形の邪魔をしないように構成することができ、これによって、接合されるハウジング間の間隔が広い筐体のシール性を可能にする。
【0064】
さらに、接合部の間隔が広くなった場合でも、上段ガスケット3は面開きにあわせて復元することができ、また中段ガスケット4及び下段ガスケット5は、位置決めピン8に沿って、係止部12まで復元できるため、各ガスケットの復元を可能にしている。このため、「面開き」に対する高い追従性の要求にも応じることができる。
【0065】
本実施形態の積層ガスケット1は、上段ガスケット3、中段ガスケット4及び下段ガスケット5の3層構成で説明しているがこれに限定されない。また間隔の広い筐体にあわせて各ガスケットの積層数を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1:積層ガスケット
2:接合部
20、22:接合対象
21、23:接合面
3:ガスケット(上段ガスケット)
30、32、34:ガスケット
300:突片部
301、302:位置決め孔
303:ハーフビード
31、33、35:ガスケット
310:突片部
311、312:位置決め孔
313:ハーフビード
4:ガスケット(中段ガスケット)
40、42:ガスケット
400:突片部
401、402、403、404:位置決め孔
405:ハーフビード
41、43:ガスケット
410:突片部
411、412、413、414:位置決め孔
415:ハーフビード
5:ガスケット(下段ガスケット)
50、52、54:ガスケット
500:突片部
501、502:位置決め孔
503:ハーフビード
51、53、55:ガスケット
510:突片部
511、512:位置決め孔
513:ハーフビード
7:開口部
8、9、10、11:位置決めピン(ピン)
12、13:係止部
101、102:ガスケット
101a、102a:ハーフビード
103:センタープレート
104:カシメピン
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