特許第6797660号(P6797660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797660
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   G03G9/08 384
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-243953(P2016-243953)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-126063(P2017-126063A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2544(P2016-2544)
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 努
(72)【発明者】
【氏名】中村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】上倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 祐一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 顕治
(72)【発明者】
【氏名】野崎 大
(72)【発明者】
【氏名】平松 徹
【審査官】 福田 由紀
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該製造方法が、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と水系媒体とを混合して該重合性単量体組成物の粒子の懸濁液を形成する造粒工程、および
金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有し、
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩におけるアルミニウムの含有比率が、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の全金属元素に対して1.0mol%以上95.0mol%以下であり、
該トナーの製造方法が、さらに
該水系媒体にアルミニウム化合物を添加して、該金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を含む該水系媒体を調整する工程、または
該懸濁液にアルミニウム化合物を添加して、該金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を含む該懸濁液を調整する工程、
を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩におけるアルミニウムの含有比率が、全金属元素に対して1.0mol%以上50.0mol%以下である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩が、金属元素としてアルミニウムおよびカルシウムを含有するリン酸金属塩である請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
該アルミニウムおよびカルシウムを含有するリン酸金属塩における、カルシウムとアルミニウムの含有比率がmol比率で50.0/50.0以上99.0/1.0以下である請求項3に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩が、該水系媒体にカルシウム化合物とリン酸化合物を添加したのちにアルミニウム化合物を添加することにより得られたものである請求項1から4のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
該製造方法が、水系媒体中にカルシウム化合物とリン酸化合物を添加したのちにアルミニウム化合物を添加することにより金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製する工程、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と該水系媒体とを混合して重合性単量体組成物の粒子の懸濁液を形成する造粒工程、および、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
該製造方法が、水系媒体中にカルシウム化合物とリン酸化合物を添加してリン酸カルシウム化合物を調製する工程、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と該水系媒体とを混合して重合性単量体組成物の粒子の懸濁液を形成する造粒工程、該懸濁液にアルミニウム化合物を添加して金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製する工程、および、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
該造粒工程から該重合工程までの間の該水系媒体および/または該懸濁液のpH変化が0.3以上6.0以下である請求項1から7のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット式記録法のような方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターや複写機の高画質化や高速化が求められている。これらの高機能化に対応するためには、帯電性や流動性に優れた球形のトナーが好ましい。球形のトナーを安定して製造するために、懸濁重合法の検討がなされている。
【0003】
懸濁重合法によるトナーの製造方法において、より効率的かつ安定に球形のトナーを得るために、懸濁時の分散安定剤について様々な検討がなされている。
【0004】
特許文献1では、リン酸カルシウム化合物を分散安定剤として用いた懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。
【0005】
特許文献2では、分散安定化剤として水酸化マグネシウムを用い、さらに水溶性無機アルミニウム化合物を添加した懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。
【0006】
特許文献3では、分散安定化剤として難水溶性無機アルミニウムを用いた懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−81727号公報
【特許文献2】特開2008−009092号公報
【特許文献3】特表2007−322687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載されたトナーの製造方法では、低pH領域、具体的にはpH5.0以下の領域において分散安定剤が溶解する恐れがある。そのため、トナーの製造工程においてpHを下げた場合には、トナーが合一し粗粒化してしまう。トナーの合一が生じた場合には、トナー収率が下がってしまったり、トナーの現像性が低下してしまったりするという課題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載されたトナーの製造方法では、分散安定剤の溶解性が低く、トナーの洗浄工程で分散安定剤を洗浄しきれない場合があり、トナー中に分散安定剤が残留しやすくなる。分散安定剤がトナーに残留すると、トナーの帯電性、特に高湿環境下の帯電性に影響を及ぼす場合がある。
【0010】
本発明は、従来の問題点を解決したトナー粒子の製造方法を提供するものである。即ち、本発明は、製造工程におけるトナー粒子の合一を抑制し、かつ洗浄工程では分散安定剤が容易に除去可能であるトナーの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述目的を達成するために、本発明は、トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該製造方法が、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と水系媒体とを混合して該重合性単量体組成物の粒子の懸濁液を形成する造粒工程、および
金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有し、
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩におけるアルミニウムの含有比率が、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の全金属元素に対して1.0mol%以上95.0mol%以下であり、
該トナーの製造方法が、さらに
該水系媒体にアルミニウム化合物を添加して、該金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を含む該水系媒体を調整する工程、または
該懸濁液にアルミニウム化合物を添加して、該金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を含む該懸濁液を調整する工程、
を含むことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造工程におけるトナーの合一を抑制し、かつ洗浄工程では分散安定剤が容易に除去可能であるトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】リン酸カルシウム化合物のpHに対する溶解度曲線である。
図2】リン酸アルミニウムのpHに対する溶解度曲線である。
図3】本発明の帯電量測定に用いた装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
リン酸金属塩はpHを下げると水に溶解するものが多い。図1に示したのは代表的なリン酸金属塩であるリン酸カルシウム化合物の、pHに対する溶解度曲線である。
【0015】
また、リン酸金属塩が水中に分散している場合には、温度によってpHが変化する場合がある。
【0016】
そのため、リン酸金属塩を分散安定剤として用い、懸濁重合法によるトナーの製造を行った場合には、製造工程における温度変化によってpHが変化する場合があり、その際に、リン酸金属塩が溶解する可能性がある。また、製造工程において意図的にpHを下げた場合にも同様である。結果として、トナーが製造工程中に合一する場合がある。
【0017】
一方で、リン酸アルミニウムの、pHに対する溶解度曲線を図2に示す。リン酸アルミニウムは、リン酸金属塩の中でも、低pHにおける溶解性が低い。そのため、リン酸アルミニウムを分散安定剤として用いて懸濁重合を行った場合には、製造工程におけるトナーの合一は生じにくい。しかし、低pHにおける溶解性が低いため、酸による洗浄が困難であり、分散安定剤がトナーに残留しやすい。
【0018】
本発明者らは、これらの相反する特性を両立するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に示すトナーの製造方法に至った。
【0019】
本発明のトナーの製造方法は、トナー粒子を有するトナーの製造方法である。該製造方法が、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と水系媒体とを混合して重合性単量体組成物の粒子の懸濁液を形成する造粒工程、および、金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有する。アルミニウムを含有するリン酸金属塩におけるアルミニウムの含有比率が、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の全金属元素に対して1.0mol%以上95.0mol%以下である。そして、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩が、該水系媒体および/または該懸濁液にアルミニウム化合物を添加することにより得られたものである。
【0020】
該金属元素のアルミニウム比率が前述範囲にあり、かつアルミニウムを含有するリン酸金属塩が水相にアルミニウム化合物を添加することにより得られたものであることで、低pHでは溶解しにくく、かつ洗浄時には容易に除去可能な分散安定剤を得ることができる。
【0021】
また、本発明では該重合性単量体組成物および、該懸濁液における該重合性単量体組成物の液滴を油相とも言う。また該水系媒体および、該懸濁液における該水系媒体の連続相を水相とも言う。
【0022】
これらの特性を両立できる理由としては、リン酸と結合力の高いアルミニウム元素を部分的に含有することで、低pHでも溶解しにくいリン酸金属塩を得ることができるため、さらに、洗浄時には部分的に存在するリン酸とアルミニウム部分を溶解させるだけで、リン酸金属塩を容易に除去可能であるためと推測している。
【0023】
油相にアルミニウム化合物を添加した場合には、トナー粒子内部にアルミニウム化合物が残留するため、分散安定剤の除去が困難となる。また、該金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩が分散安定剤として作用するには、水相で不溶化し、微粒子として存在する必要がある。そのため、アルミニウムが水相に可溶化した状態では効果は得られない。
【0024】
また、該金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を製造する際には、はじめにアルミニウム以外の金属元素を含有するリン酸金属塩を調製したのちに、該アルミニウム以外の金属元素を含有するリン酸金属塩を含有する水相にアルミニウム化合物を添加する方法がより好ましい。前述した製造方法を行うことで、該アルミニウム以外の金属元素を含有するリン酸金属塩の表面の金属元素がアルミニウムに置換される。これは、アルミニウム元素が他の金属元素よりも水系で安定して存在しにくく、リン酸イオンや水酸化物イオンと結合しやすいためだと考えている。
【0025】
その結果、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の表面付近にアルミニウムが多く存在し、他の金属元素が内部に存在する構造を明確に有する分散安定剤が得られ、より優れた特性が両立できる。
【0026】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩は、アルミニウムと他の金属元素のリン酸金属塩の複合物であることが好ましいが、難水溶性の無機アルミニウムとリン酸金属塩との混合物でもよい。
【0027】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩におけるアルミニウムの含有比率が、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の全金属元素に対して1.0mol%以上95.0mol%以下であることが必要であり、1.0mol%以上50.0mol%以下であることがより好ましい。50.0mol%以下であることで、分散安定剤を十分に洗浄可能なため、分散安定剤の残留量がより少ないトナーを得ることができる。
【0028】
該アルミニウムの比率は、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製する際の原材料の仕込み比、温度、pHによって制御可能であるが、中でも原材料の仕込み比で制御することが簡便であり好ましい。
【0029】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩は、金属元素としてアルミニウムおよびカルシウムを含有するリン酸金属塩であることがより好ましい。金属元素としてアルミニウムおよびカルシウムを含有することで、pH4以上pH7以下の領域においても溶解しにくく安定性の高い分散安定剤を得ることができる。これにより、該pH領域で造粒工程を行うことができるため、過度な界面張力低下による微小な粒子が発生しにくく、シャープな粒度分布を有するトナー粒子を得ることができ、トナー収率やトナーの現像特性がより優れる。
【0030】
また、カルシウムとアルミニウムの含有比率は、mol比率で50.0/50.0以上99.0/1.0以下であることが好ましい。50.0/50.0以上であることで、洗浄工程において十分に除去可能な分散安定剤が得られるため、トナーに分散安定剤が残留しにくい。99.0/1.0以下であることで、低pHでも溶解しにくい分散安定剤が得られ、トナーの粗粒化を抑えることができる。カルシウムとアルミニウムの含有比率は、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製する際の原材料の仕込み比で制御することが簡便であり好ましい。
【0031】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩における金属元素の比率の測定方法については後述する。
【0032】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩が、該水系媒体にカルシウム化合物とリン酸化合物を添加したのちにアルミニウム化合物を添加することにより得られたものであることがより好ましい。前述した製造方法を行うことで、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の表面付近にアルミニウムが多く存在し、カルシウムが内部に存在する構造を有する分散安定剤が得られる。結果として、粗粒化やトナーに残留する分散安定剤、トナーの粒度分布の観点から、より優れた特性が両立できる。
【0033】
該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の、アルミニウム以外の金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ビスマス、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀が挙げられる。中でも、前述のようにカルシウムであることが好ましい。
【0034】
該アルミニウム以外の金属元素を含有するリン酸金属塩にアルミニウム元素を導入するためのアルミニウム化合物としては、例えば、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム等の無機及び有機のアルミニウム、アルミニウム‐secブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
【0035】
難水溶性のアルミニウム化合物を添加してもよいし、水溶性のアルミニウム化合物を添加し、水相で不溶化させてもよい。
【0036】
さらに、該水系媒体および/または該懸濁液には界面活性剤を添加してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが挙げられる。
【0037】
該重合性単量体として使用できるものとしては、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体が挙げられる。
【0038】
該スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、及び、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体類が挙げられる。
【0039】
アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、及び、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
メタクリル系単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、及び、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0041】
さらに、重合性官能基を複数有するモノマー(多官能性モノマーともいう)を添加しても良い。
【0042】
多官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、及び、ジビニルエーテルが挙げられる。
【0043】
本発明のトナーの製造方法は、トナーの低温定着化や、トナーが高温定着時に定着部材に張り付く現象(高温オフセット)を抑制するために、該重合性単量体組成物に更にワックスを含有してもよい。例えば、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルの如き1価アルコールと脂肪族カルボン酸エステル、あるいは、1価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートの如き2価アルコールと脂肪族カルボン酸エステル、あるいは、2価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;グリセリントリベヘネートの如き3価アルコールと脂肪族カルボン酸エステル、あるいは、3価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートの如き4価アルコールと脂肪族カルボン酸エステル、あるいは、4価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートの如き6価アルコールと脂肪族カルボン酸エステル、あるいは、6価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートの如き多価アルコールと脂肪族カルボン酸エステル、あるいは、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスの如き天然エステルワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸;酸アミドワックスが挙げられる。
【0044】
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0045】
また、本発明のトナーの製造方法は、トナーの低温定着化のために、該重合性単量体組成物に更に結晶性樹脂を含有してもよい。該結晶性樹脂としては、例えば結晶性ポリエステルや結晶性のアクリル樹脂等が挙げられる。
【0046】
これらのワックスや結晶性樹脂を該重合性単量体組成物に添加した場合には、該重合性単量体組成物の粘度が低下するため、トナーの製造工程における粗粒化が生じやすい。そのため、本発明におけるトナーの製造方法が特に有効である。
【0047】
結晶性樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上50.0質量部以下であることが好ましい。
【0048】
本発明のトナーの製造方法は、該重合性単量体組成物にさらに極性樹脂を含有してもよい。極性樹脂とは、カルボキシ基やスルホン基等の、酸解離定数の低い官能基を有する樹脂や、アミノ基等の塩基解離定数の低い官能基を有する樹脂である。樹脂の種類としては、従来トナーに用いられる公知の樹脂が挙げられ、例えばポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0049】
極性樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0050】
また、本発明のトナーの製造方法は、該重合性単量体組成物にさらに荷電制御剤を使用しても良い。
【0051】
トナー粒子を負荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
【0052】
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。また、スルホン酸基、スルホン酸塩基、或いは、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸樹脂は好ましく用いることができる。
【0053】
トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば、以下に示す荷電制御剤を用いることができる。
【0054】
ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;。これらを単独或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5.00質量部以下であることが好ましい。
【0056】
該重合性単量体組成物に、極性樹脂や荷電制御剤を添加することにより、該重合性単量体組成物と水の界面張力が低下するため、より粒径の小さく、粒度分布の均一なトナー粒子が得られる。
【0057】
本発明のトナーの製造方法は、該重合性単量体組成物にさらに着色剤を含有してもよい。着色剤としては、ブラック用着色剤、イエロー用着色剤、マゼンタ用着色剤、シアン用着色剤が挙げられる。
【0058】
ブラック用着色剤としては、具体的にはカーボンブラック等が挙げられる。
【0059】
イエロー用着色剤としては、具体的には以下の、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アンスラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物等に代表されるイエロー顔料が挙げられる。より具体的には以下の、C.I.ピグメントイエロー74,93,95,109,111,128,155,174,180,185等が挙げられる。
【0060】
マゼンタ用着色剤としては、具体的には以下の、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物等に代表されるマゼンタ顔料が挙げられる。より具体的には以下の、C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,81:1,122,144,146,150,166,169,177,184,185,202,206,220,221,238,254,269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が挙げられる。
【0061】
シアン用着色剤としては、具体的には以下の銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レ−キ化合物等に代表されるシアン顔料が挙げられる。より具体的には以下の、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66が挙げられる。
【0062】
また、前述顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を用いる事も出来る。
【0063】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0064】
以下に懸濁重合法を用いた製造方法を例示して、さらに説明するが、以下に限定されるわけではない。
【0065】
重合性単量体に、必要に応じて公知の離型剤や荷電制御剤、粘度調整のための溶剤、結晶性樹脂、可塑剤、連鎖移動剤、さらに他の添加剤を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機のような分散機を用いて、これらを溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。
【0066】
次いで、前述重合性単量体組成物を、予め用意しておいた、分散安定剤としてリン酸金属塩を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機又は超音波分散機のような高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。
【0067】
このとき、造粒を行う前に該アルミニウム以外の金属元素を含有するリン酸金属塩を含む水系媒体にアルミニウム化合物を添加し、金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製してもよい。また、造粒を行った後の任意のタイミングで、該アルミニウム以外の金属元素を含有するリン酸金属塩を含む懸濁液にアルミニウム化合物を添加し、金属元素としてアルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製してもよい。
【0068】
前述重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合する際に、重合開始剤を用いても良い。該重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
【0069】
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら重合反応を行い、完結させ、必要に応じて脱溶剤処理を行うことでトナー粒子の水分散体が形成される。
【0070】
また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物、溶剤などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧もしくは減圧下で行うことができる。
【0071】
その後、洗浄を行い、種々の方法によって乾燥、分級を行うことでトナー粒子を得ることができる。さらに、該トナー粒子に前述無機微粉体などを外添することでトナーを得ることができる。
【0072】
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【0073】
本発明の製造方法は、水系媒体中にカルシウム化合物とリン酸化合物を添加したのちにアルミニウム化合物を添加することによりアルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製する工程、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と該水系媒体とを混合して重合性単量体組成物の粒子の懸濁液を形成する造粒工程、および、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有することがより好ましい。
【0074】
また、該製造方法は、水系媒体中にカルシウム化合物とリン酸化合物を添加してリン酸カルシウム化合物を調製する工程、重合性単量体を含有する重合性単量体組成物と該水系媒体とを混合して懸濁液を形成する造粒工程、該懸濁液にアルミニウム化合物を添加してアルミニウムを含有するリン酸金属塩を調製する工程、および、該アルミニウムを含有するリン酸金属塩の存在下で、該重合性単量体の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることによりトナー粒子を得る重合工程を有することも好適である。
【0075】
該造粒工程から該重合工程までの間の該水系媒体および/または該懸濁液のpH変化が0.3以上6.0以下であることが好ましい。pH変化が0.3以上6.0以下の範囲内であれば、本発明の効果が有効に作用する。また、pH変化が6.0以下であることで、造粒工程で得られた粒度分布がよりシャープなトナー粒子の製造が可能である。
【0076】
本発明によれば、製造工程におけるトナーの合一を抑制し、かつ洗浄工程では分散安定剤が容易に除去可能であるトナーの製造方法を提供することができる。
【0077】
以下に、本発明で規定する各物性値の測定方法を記載する。
【0078】
<リン酸金属塩に含まれる金属元素のmol比の測定、トナー粒子に残存するリン酸金属塩の量の測定>
リン酸金属塩に含まれる金属元素のmol比、トナー粒子に残存するリン酸金属塩の量の分析は蛍光X線により行う。各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119−1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
【0079】
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
【0080】
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にサンプル4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE−32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
【0081】
前述条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
測定は、FP定量法を用いて、サンプルに含まれる全元素の重量比率を測定し、mol%に換算した。
【0082】
また、各実施例におけるリン酸金属塩の金属元素のmol比は、各実施例において該重合性単量体組成物を添加しないで水相のみを調製したのちに、該リン酸金属塩を遠心分離、乾燥することで、サンプルを別途調製した。
【0083】
<トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量>
トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0084】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.2ml加える。更に測定試料を0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前述コンタミノンNを2ml添加する。
【0085】
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前述フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前述手順に従い調製した分散液を前述フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定して個数粒径の頻度%を測定し、この頻度%を100%から引いた値を、トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量として算出する。
【0086】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調製を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調製を実施することが好ましい。
【0087】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0088】
<トナー粒子の重量平均粒子径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒子径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標商品名、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0089】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解させて濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0090】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前述専用ソフトの設定を行う。
【0091】
前述専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0092】
前述専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0093】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前述電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前述電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を、イオン交換水で質量比で3倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。(4)前述(2)のビーカーを前述超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調製する。
(5)前述(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子またはトナー粒子の分散液を、トナー粒子が10mgになるよう少量ずつ前述電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前述(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散させた前述(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調製する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前述専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出する。なお、前述専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
【0094】
<重量平均分子量Mwの測定方法>
重量平均分子量分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0095】
まず、室温で24時間かけて、サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
【0096】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0097】
<ガラス転移温度Tg(℃)の測定方法>
ガラス転移温度Tg(℃)は示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、測定サンプル2mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲0℃から100℃の間で、昇温速度10℃/分の速度で昇温する。100℃で15分ホールドし、その後100℃から0℃の間で、降温速度10℃/分の速度で冷却する。0℃で10分ホールドし、その後0℃から100℃の間で、昇温速度10℃/分の速度で測定を行う。また、2回目の昇温過程における比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、ベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をTg(℃)とする。
【0098】
<樹脂の酸価の測定方法>
樹脂の酸価はJIS K1557−1970に準じて測定される。具体的な測定方法を以下に示す。
【0099】
試料の粉砕品2gを精秤する(W(g))。200mlの三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間溶解する。この時、必要に応じて加熱してもよい。指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加える。0.1モル/L規定のKOHもアルコール溶液を用いて前述溶液を、ビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。ブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
【0100】
次式により酸価を計算する。尚、式中の“f”は、KOH溶液のファクターである。
酸価(mgKOH/g)=〔(S−B)×f×5.61〕/W
【0101】
<樹脂のアミン価の測定方法>
アミン価は、試料1gに含まれる全アミンを中和するために必要な過塩素酸と、当量の水酸化カリウムのmg数である。樹脂のアミン価は、JIS K 7237−1995に準じて測定される。具体的には、以下の手順に従って測定した。
(1)試薬の準備
クリスタルバイオレット0.1gを酢酸100mLに溶解させ、クリスタルバイオレット溶液を得る。過塩素酸8.5mLをあらかじめ酢酸500mLと無水酢酸200mLとを混合した溶液中にゆっくりと加えて、混合する。これに、酢酸を加え、全量を1Lとした後、3日間放置して過塩素酸酢酸溶液を得る。前記過塩素酸酢酸溶液のファクターは次の手順で求める。まず、フタル酸水素カリウムを1mgまで量りとり、酢酸20mLに溶解させた後、o−ニトロトルエン90mLを加え、前記クリスタルバイオレット溶液を数滴加える。これを、前記過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定して求める。
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mLのビーカーに精秤し、o−ニトロトルエン/酢酸(9:2)の混合溶液を100mL加え、3時間かけて溶解する。次いで、前記クリスタルバイオレット溶液を数滴加え、前記過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の青が緑色に変色し、緑色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわち、o−ニトロトルエン/酢酸(9:2)の混合溶液のみとする。)以外は、前記操作と同様の試験を行う。
(3)全アミン価の算出
得られた結果を下記式に代入して、アミン価AmVを算出する。
AmV=[(D−C)×f×5.61]/S
ここで、AmVは、アミン価(mgKOH/g)を示し、Cは、空試験の過塩素酸酢酸溶液の添加量(mL)を示し、Dは、本試験の過塩素酸酢酸溶液の添加量(mL)を示し、fは、過塩素酸酢酸溶液のファクターを示し、Sは、試料の質量(g)を示す。
【0102】
<帯電量の測定方法>
まず、各トナー粒子に磁性キャリアを添加し、二成分現像剤を調製する。図3に示す装置において、底に635メッシュのスクリーン3のある金属製の測定容器2に帯電量を測定しようとする二成分現像剤を0.1g入れ、金属製の蓋をする。このとき測定容器2全体の質量を量りW1(g)とする。次に吸引機(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を1.0kPaとする。この状態で1分間吸引を行い、二成分現像剤を吸引除去する。このときの電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで8はコンデンサーであり容量をC(mCF)とする。吸引後の測定容器全体の質量を量りW2(g)とする。この二成分現像剤の帯電量(mC/kg)は下記式の如く計算される。
帯電量(mC/kg)=(C×V)/(W1−W2)
【実施例】
【0103】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中で使用する部は全て質量部を示す。なお、トナー粒子1〜20の製造方法を実施例とし、トナー粒子21〜24の製造方法を比較例とした。
【0104】
<非晶性樹脂1の製造>
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、テレフタル酸 25.0mol%、イソフタル酸 25.0mol%、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物 50.0mol%の比率で混合した混合物100.0部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。その後、エステル化触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52部を加え、温度200℃に昇温し所望の分子量になるまで縮重合し、さらに無水トリメリット酸を3.0部加え、非晶性樹脂1を得た。前述の方法に従って測定した非晶性樹脂1の重量平均分子量(Mw)は12000、ガラス転移温度(Tg)は70℃、酸価は8.2mgKOH/gであった。
【0105】
<非晶性樹脂2の製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。単量体として、スチレン 85.0部、アクリル酸n−ブチル 5.0部、メタクリル酸メチル 3.0部、メタクリル酸 3.0部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 3.0部、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 5.0部を混合した。調製した混合物を前述反応容器に撹拌しながら滴下し、65℃で10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下40℃で乾燥し、非晶性樹脂2を得た。前述の方法に従って測定した非晶性樹脂2の重量平均分子量(Mw)は20000、ガラス転移温度(Tg)は75℃、酸価は19.2mgKOH/gであった。
【0106】
<非晶性樹脂3の製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。単量体として、スチレン 88.0部、アクリル酸n−ブチル 10.0部、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチル 2.0部、アゾビスジメチルバレロニトリル 4.0部を混合した。調製した混合物を前述反応容器に撹拌しながら滴下し、65℃で10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下40℃で乾燥し、非晶性樹脂3を得た。前述の方法に従って測定した非晶性樹脂3の重量平均分子量(Mw)は18000、ガラス転移温度(Tg)は80℃、酸価は0.0mgKOH/g、アミン価は4.2mgKOH/gであった。
【0107】
<トナー粒子1の製造>
(重合性単量体組成物の調製)
スチレン:180.0部
C.I.ピグメントブルー15:3:24.0部
これらの材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料分散液を得た。
【0108】
該顔料分散液に
スチレン:36.0部
n−ブチルアクリレート:84.0部
非晶性樹脂1:15.0部
パラフィンワックス(HNP−9:日本精鑞製 融点75℃):21.0部
を加えた。前述材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0109】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.05モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液1500.0部を添加し、回転数を15000rpmに調製し、60℃に加温した。ここに1.0モル/リットルの塩化カルシウム水溶液125.0部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。このとき、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体のpHが5.0になるように、あらかじめ10%塩酸を添加した。
【0110】
予め、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液13.0部を、温度60℃に調整しておいた。これを前述水系媒体調製後に添加して、該水系媒体と塩化アルミニウムを混合し、分散安定剤としてアルミニウムを含有するリン酸カルシウム化合物を調製した。このときの水系媒体のpHを測定したところ、5.3であった(造粒工程時のpH)。
【0111】
(懸濁液の製造)
該水系媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ10分間造粒し、懸濁液を得た。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させ、さらに液温85℃にして2時間反応させた。ここで、該懸濁液の一部を抜きとり、冷却し、前述した方法でトナー粒子の重量平均粒子径を測定した。このときのトナー粒子の重量平均粒子径を、懸濁液を85℃にして2時間反応させた後の重量平均粒子径D4(μm)とする。
【0112】
その後、液温を98℃にして5時間反応させ、未反応の重合性単量体を留去した。このときの該懸濁液のpHを測定したところ、4.2であった(重合工程時のpH)。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、1.1であった。
【0113】
該懸濁液を冷却し、冷却された該懸濁液に塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することで分散安定剤を溶解させた。その後、該懸濁液の10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥してトナー粒子1を得た。前述の方法に従って測定したトナー粒子1の重量平均分子量(Mw)は45000、ガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0114】
<トナー粒子2〜7の製造>
表1に示すように、1.0モル/リットルの塩化カルシウム水溶液と1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液の添加部数を変更すること以外はトナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子2〜7を得た。なお、トナー粒子2〜7の製造において、造粒工程時のpHは全て5.3となるように10%塩酸の添加量を調整した。また、トナー粒子2〜7の製造における重合工程時のpHは全て4.2であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、1.1であった。
【0115】
【表1】
【0116】
<トナー粒子8の製造>
(重合性単量体組成物の調製)
トナー粒子1の製造における重合性単量体組成物の調製と同様にして重合性単量体組成物を調製した。
【0117】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.05モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液1500.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0モル/リットルの塩化カルシウム水溶液125.0部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。このとき、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体のpHが5.0になるように、あらかじめ10%塩酸を添加した。
【0118】
(懸濁液の製造)
該水系媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ10分間造粒し、懸濁液を得た。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変えた。
【0119】
予め、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液13.0部を、温度60℃に調整しておいた。これを該懸濁液に添加して、該懸濁液と塩化アルミニウムを混合し、分散安定剤としてアルミニウムを含有するリン酸カルシウム化合物を調製した。このときの水系媒体のpHを測定したところ、5.3であった(造粒工程時のpH)。
【0120】
該懸濁液を還流しながら70℃で5時間反応させ、さらに液温85℃にして2時間反応させた。ここで、該懸濁液の一部を抜きとり、冷却し、前述した方法でトナー粒子の重量平均粒子径を測定した。
【0121】
その後、液温を98℃にして5時間反応させ、未反応の重合性単量体を留去した。このときの該懸濁液のpHを測定したところ、4.2であった(重合工程時のpH)。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、1.1であった。
【0122】
該懸濁液を冷却し、冷却された該懸濁液に塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することで分散安定剤を溶解させた。その後、該懸濁液の10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥してトナー粒子8を得た。
【0123】
<トナー粒子9の製造>
トナー粒子8の製造方法において、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液を添加する工程を、懸濁液を製造した直後に行っていたところを、該懸濁液を70℃で反応させて2時間経過した後に行うように変更した。それ以外は、トナー粒子8の製造方法と同様にしてトナー粒子9を得た。造粒工程時のpHは5.0であり、塩化アルミニウム水溶液を添加したあとの懸濁液のpHは5.3であり、重合工程時のpHは4.2であった。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は1.1であった。
【0124】
<トナー粒子10の製造>
トナー粒子8の製造方法において、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液を添加する工程を、懸濁液を製造した直後に行っていたところを、該懸濁液を70℃で反応させて4.5時間経過した後に行うように変更した。それ以外は、トナー粒子8の製造方法と同様にしてトナー粒子10を得た。造粒工程時のpHは5.0であり、塩化アルミニウム水溶液を添加したあとの懸濁液のpHは5.3であり、重合工程時のpHは4.2であった。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は1.1であった。
【0125】
<トナー粒子11の製造>
(重合性単量体組成物の調製)
トナー粒子1の製造における重合性単量体組成物の調製と同様にして重合性単量体組成物を調製した。
【0126】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.05モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液1500.0部を添加し、回転数を15000rpmに調製し、60℃に加温した。ここに1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液13.0部、1.0モル/リットルの塩化カルシウム水溶液125.0部を添加し、分散安定剤としてアルミニウムを含有するリン酸カルシウム化合物を調製した。このとき、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体のpHが5.3になるように、あらかじめ10%塩酸を添加した(造粒工程時のpH)。
【0127】
(懸濁液の製造)
該水系媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ10分間造粒し、懸濁液を得た。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させ、さらに液温85℃にして2時間反応させた。ここで、該懸濁液の一部を抜きとり、冷却し、前述した方法でトナー粒子の重量平均粒子径を測定した。
【0128】
その後、液温を98℃にして5時間反応させ、未反応の重合性単量体を留去した。このときの該懸濁液のpHを測定したところ、4.2であった(重合工程時のpH)。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、1.1であった。
【0129】
該懸濁液を冷却し、冷却された該懸濁液に塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することで分散安定剤を溶解させた。その後、該懸濁液の10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥してトナー粒子11を得た。
【0130】
<トナー粒子12の製造>
トナー粒子1の製造方法において、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液を、塩酸でpHを3.0に調整した1.0モル/リットルの水酸化アルミニウム水溶液に変更する以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子12を得た。なお、造粒工程時のpHが5.3となるように10%塩酸の添加量を調整した。また、重合工程時のpHは4.2であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、1.1であった。
【0131】
<トナー粒子13の製造>
トナー粒子1の製造方法において、98℃にして5時間反応させて未反応の重合性単量体を留去する工程におけるpHを4.2から3.9に変更する(重合工程時のpH)以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子13を得た。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、1.4であった。
【0132】
<トナー粒子14の製造>
トナー粒子1の製造方法において、非晶性樹脂1を非晶性樹脂2に、分散安定剤としてリン酸カルシウム化合物を含有する水系媒体のpHを5.0から9.0(造粒工程時のpH)に、98℃にして5時間反応させて未反応の重合性単量体を留去する工程におけるpHを4.2から7.0に変更する(重合工程時のpH)以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子14を得た。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、2.0であった。
【0133】
<トナー粒子15の製造>
トナー粒子14の製造方法において、98℃にして5時間反応させて未反応の重合性単量体を留去する工程におけるpHを7.0から4.0に変更する(重合工程時のpH)以外は、トナー粒子14の製造方法と同様にしてトナー粒子15を得た。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、5.0であった。
【0134】
<トナー粒子16の製造>
(重合性単量体組成物の調製)
トナー粒子1の製造における重合性単量体組成物の調製において、非晶性樹脂1を非晶性樹脂2に変更する以外は、トナー粒子1の製造における重合性単量体組成物の調製と同様にして重合性単量体組成物を調製した。
【0135】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.1モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液1000.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0モル/リットルの塩化マグネシウム水溶液150.0部を徐々に添加し、リン酸マグネシウム微粒子を含む水系媒体を調製した。このとき、リン酸マグネシウム微粒子を含む水系媒体のpHが9.0になるように1N水酸化ナトリウムを添加した。
【0136】
予め、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液13.0部を、温度60℃に調整しておいた。これを前述水系媒体調製後に添加して、該水系媒体と混合し、分散安定剤としてアルミニウムを含有するリン酸マグネシウムを調製した。このとき、水系媒体のpHが9.0となるように適宜調整した(造粒工程時のpH)。
【0137】
(懸濁液の製造)
該水系媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ10分間造粒し、懸濁液を得た。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させ、さらに液温85℃にして2時間反応させた。ここで、該懸濁液の一部を抜きとり、冷却し、前述した方法でトナー粒子の重量平均粒子径を測定した。
【0138】
その後、液温を98℃にして5時間反応させ、未反応の重合性単量体を留去した。このときの該懸濁液のpHを測定したところ、7.0であった(重合工程時のpH)。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、2.0であった。
【0139】
該懸濁液を冷却し、冷却された該懸濁液に塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することで分散安定剤を溶解させた。その後、該懸濁液の10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥してトナー粒子16を得た。
【0140】
<トナー粒子17の製造>
(重合性単量体組成物の調製)
トナー粒子1の製造における重合性単量体組成物の調製において、非晶性樹脂1を非晶性樹脂2に変更する以外は、トナー粒子1の製造における重合性単量体組成物の調製と同様にして重合性単量体組成物を調製した。
【0141】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.5モル/リットルの塩化マグネシウム水溶液1000.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに2.0モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液333.0部を徐々に添加し、水酸化マグネシウム微粒子を含む水系媒体を調製した。このとき、水酸化マグネシウム微粒子を含む水系媒体のpHが9.0になるように1N水酸化ナトリウムをさらに添加した。
【0142】
予め、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液50.0部と、2.0モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液250.0部を、温度60℃に調整しておいた。これを前述水系媒体調製後に添加して、該水系媒体と混合し、分散安定剤として金属元素としてアルミニウム、マグネシウムを含有するリン酸金属塩調製した。このとき、水系媒体のpHが9.0となるように適宜調整した(造粒工程時のpH)。
【0143】
(懸濁液の製造)
該水系媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ10分間造粒し、懸濁液を得た。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させ、さらに液温85℃にして2時間反応させた。ここで、該懸濁液の一部を抜きとり、冷却し、前述した方法でトナー粒子の重量平均粒子径を測定した。
【0144】
その後、液温を98℃にして5時間反応させ、未反応の重合性単量体を留去した。このときの該懸濁液のpHを測定したところ、7.0であった。(重合工程時のpH)。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、2.0であった。
【0145】
該懸濁液を冷却し、冷却された該懸濁液に塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することで分散安定剤を溶解させた。その後、該懸濁液の10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥してトナー粒子17を得た。
【0146】
<トナー粒子18の製造>
トナー粒子17の製造方法において、非晶性樹脂2:15.0部を非晶性樹脂3:4.0部に変更する以外は、トナー粒子17の製造方法と同様にしてトナー粒子18を得た。なお、造粒工程時のpHを9.0となるように適宜調整した。重合工程時のpHは7.0であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、2.0であった。
【0147】
<トナー粒子19の製造>
トナー粒子18の製造方法において、0.5モル/リットルの塩化マグネシウム水溶液を0.3モル/リットルの塩化マグネシウム水溶液に変更し、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液の添加量を100.0部から300.0部に変更した。それ以外はトナー粒子18の製造方法と同様にしてトナー粒子19を得た。なお、造粒工程時のpHを9.0となるように適宜調整した。重合工程時のpHは7.0であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、2.0であった。
【0148】
<トナー粒子20の製造>
トナー粒子19の製造方法において、水系媒体のpHを9.0から7.0に変更する(造粒工程時のpH)以外は、トナー粒子19の製造方法と同様にしてトナー粒子20を得た。なお、液温を98℃にして5時間反応させて未反応の重合性単量体を留去する工程におけるpHは6.2であった(重合工程時のpH)。なお、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、0.8であった。
【0149】
<トナー粒子21の製造>
トナー粒子1の製造方法において、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液を添加しないように変更し、リン酸カルシウム化合物微粒子を含む水系媒体を調製する以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子21を得た。なお、造粒工程時のpHは5.0であり、重合工程時のpHは4.2であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、0.8であった。
【0150】
<トナー粒子22の製造>
トナー粒子1の製造方法において、水系媒体の調製工程を以下のように変更する以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子22を得た。
【0151】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.15モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液1000.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに0.5モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液300.0部を徐々に添加し、リン酸アルミニウム微粒子を含む水系媒体を調製した。このとき、リン酸アルミニウム微粒子を含む水系媒体のpHが5.0になるように10%塩酸を添加した。なお、造粒工程時のpHは5.0であり、重合工程時のpHは4.2であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、0.8であった。
【0152】
<トナー粒子23の製造>
トナー粒子1の製造方法において、水系媒体の調製工程を以下のように変更する以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にしてトナー粒子23を得た。
【0153】
(水系媒体の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液1500.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.5モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液200.0部を徐々に添加し、水酸化アルミニウム微粒子を含む水系媒体を調製した。このとき、水酸化アルミニウム微粒子を含む水系媒体のpHが5.0になるように10%塩酸を添加した。なお、造粒工程時のpHは5.0であり、重合工程時のpHは4.2であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、0.8であった。
【0154】
<トナー粒子24の製造>
トナー粒子18の製造方法において、1.0モル/リットルの塩化アルミニウム水溶液と、2.0モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液を添加しないように変更する以外は、トナー粒子18の製造方法と同様にしてトナー粒子24を得た。なお、造粒工程時のpHを9.0となるように適宜調整した。重合工程時のpHは7.0であり、造粒工程から重合工程までの間の水系媒体および懸濁液のpH変化は、2.0であった。
【0155】
上記トナー粒子1〜20製造方法を実施例1〜20、トナー粒子21〜24の製造方法を比較例1〜4として、得られたトナー粒子の物性をまとめて表2に示した。
【0156】
【表2】
【0157】
<分散安定剤1〜24の製造>
トナー粒子1乃至24の各製造方法において、重合性単量体組成物を添加せずに水相のみを調製し、得られた分散安定剤を遠心分離、ろ過、乾燥を行うことで、分散安定剤1〜24を得た。
【0158】
得られた分散安定剤1〜24の金属元素比率について、前述の方法を用いて測定を行った。結果をまとめて表3に示した。
【0159】
【表3】
【0160】
得られた各トナー粒子について以下の方法に従って性能評価を行った。
【0161】
[製造安定性]
トナー粒子の製造工程における、懸濁液を85℃にして2時間反応させた後の重量平均粒子径D4(μm)と、トナー粒子の重量平均粒子径D4(μm)との差について、以下の基準に従って評価した。この差は、懸濁液を98℃にして5時間反応させて未反応の重合性単量体を留去する工程における、トナー粒子の合一による粒子径の変化を意味し、該差が小さいほど製造安定性が高く好ましい。
A:粒子径の変化が0.3μm未満。
B:粒子径の変化が0.3μm以上0.5μm未満。
C:粒子径の変化が0.5μm以上0.8μm未満。
D:粒子径の変化が0.8μm以上1.0μm未満。
E:粒子径の変化が1.0μm以上。
【0162】
[微小粒子量]
トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量(個数%)について、以下の基準に従って評価した。
【0163】
(評価基準)
A:トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量が10個数%未満。
B:トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量が10個数%以上20個数%未満。
C:トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量が20個数%以上30個数%未満。
D:トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量が30個数%以上40個数%未満。
E:トナー粒子の2.0μm以下の粒子の含有量が40個数%以上。
【0164】
[帯電性の環境安定性]
帯電性の環境安定性の評価を行うために以下のように二成分現像剤の調製を行った。磁性キャリアF813−300(パウダーテック社製)9.3gと評価トナー粒子0.7gを50ccの蓋付きプラスチックボトルに投入し、振とう器(YS−LD:(株)ヤヨイ製)で、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうし、各トナー粒子の二成分現像剤とした。
【0165】
該二成分現像剤を、常温常湿環境(23℃/60%)の環境下で1昼夜放置した。その後3分間かけて450回振とうさせる。次いで前述に記載の手段で摩擦帯電量を測定し、得られた帯電量を帯電量N(mC/kg)とした。
【0166】
また、同様にして調製した二成分現像剤10gを50ccのポリ容器に入れ、高温高湿環境(30℃/80%)の環境下で1昼夜放置した。その後3分間かけて450回振とうさせ、同様の方法で測定した帯電量を帯電量H(mC/kg)とした。
【0167】
得られた帯電量Nと帯電量Hから
帯電保持率(%)=100×帯電量H(mC/kg)/帯電量N(mC/kg)
として高温環境下における帯電保持率(%)を計算し、以下の基準で帯電性の環境安定性評価を行なった。
【0168】
(評価基準)
A:帯電保持率(%)が70%以上。
B:帯電保持率(%)が60%以上70%未満。
C:帯電保持率(%)が50%以上60%未満。
D:帯電保持率(%)が40%以上50%未満。
E:帯電保持率(%)が40%未満。
【0169】
結果を表4に示した。
【0170】
【表4】
図1
図2
図3