特許第6797699号(P6797699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797699補強パネルおよびコンクリート構造物の補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797699
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】補強パネルおよびコンクリート構造物の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   E04G23/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-5395(P2017-5395)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115435(P2018-115435A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】新藤 竹文
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康訓
(72)【発明者】
【氏名】菅野 道昭
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−328319(JP,A)
【文献】 特開2006−161407(JP,A)
【文献】 特開2011−179249(JP,A)
【文献】 特開2014−070474(JP,A)
【文献】 特開平10−331438(JP,A)
【文献】 特開2013−019138(JP,A)
【文献】 特許第3839446(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E01D 22/00
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一板材と、繊維シートと、第二板材とが順に積層されてなる補強パネルであって、
前記第一板材に開口部が形成されているとともに、前記繊維シートが前記開口部において裏面側に露出しており、
前記第一板材および前記繊維シートが、前記第二板材よりも側方に張り出していることを特徴とする、補強パネル。
【請求項2】
前記第一板材が、枠状であることを特徴とする、請求項1に記載の補強パネル。
【請求項3】
前記第一板材に複数の開口部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の補強パネル。
【請求項4】
複数の請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の補強パネルをコンクリートに接着するコンクリート構造物の補強方法であって、
隣り合う補強パネルの第一板材の端面同士を突き合わせた状態で、両補強パネルを前記コンクリートに固定する作業と、
前記第一板材の前記第二板材から張り出した部分の表面において、前記繊維シート同士を連結する作業と、
前記隣り合う補強パネルの前記第二板材同士の間に接合部材を接着する作業と、
前記開口部に充填材を注入する作業と、を備えていることを特徴とする、コンクリート構造物の補強方法。
【請求項5】
前記第二板材に注入孔が形成されており、前記注入孔から前記開口部に前記充填材を注入することを特徴とする、請求項4に記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項6】
前記第一板材と前記コンクリートとの間にシール材を介設することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のコンクリート構造物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強パネルおよびこの補強パネルを利用したコンクリート構造物の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設コンクリート構造物の補強方法として、フレキシブルボード(板材)と繊維シートとが接着剤によって一体化された補強パネルを、既設コンクリート構造物の表面に接着剤により貼り付ける方法が知られている。例えば、特許文献1には、板材と板材の一方の面に接着された繊維シートとで構成された補強パネルを、繊維シート側の面をコンクリート構造物の表面に対向させた状態で固定するとともに、隣り合う補強パネル同士の接合部を塞ぐ接合部材を取り付けた後、コンクリート構造物の表面と補強パネルとの隙間に注入材を注入する補強方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、上層板材と、上層板材よりも張り出した下層板材と、上層板材と下層板材との間に介設されているとともに上層板材よりも側方に張り出した繊維シートとが固着されてなる補強パネルを利用した補強方法が開示されている。この補強方法では、隣り合う補強パネルの下層板材同士を突き合わせた状態で、当該下層板材の表面において繊維シート同士を重ね合わせることで、補強パネル同士を接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3839446号公報
【特許文献2】特開2014−70474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の補強方法は、コンクリート構造物の表面の平滑度によっては、コンクリート表面と補強パネルとが接してしまい、注入材の充填が阻害されるおそれがある。また、隣り合う補強パネル同士の接合部では、繊維シートに予め樹脂含浸させておくことができないため、施工に手間がかかる。また、特許文献1の補強パネルは、地組することができなかった。また、特許文献2の補強方法では、繊維シートをコンクリート表面に直接接着させることができなかった。
このような観点から、本発明は、繊維シートとコンクリート構造物との一体性を確保するとともに、隣り合う補強パネルの繊維シート同士の連続性を確保することを可能とした補強パネルおよびコンクリート構造物の補強方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の補強パネルは、第一板材と、繊維シートと、第二板材とが順に積層されてなるものであって、前記第一板材に開口部が形成されているとともに前記繊維シートが前記開口部において露出しており、前記第一板材および前記繊維シートが前記第二板材よりも側方に張り出していることを特徴とする。前記第一板材は、枠状であってもよいし複数の開口部が形成されたものであってもよい。
【0007】
また、本発明のコンクリート構造物の補強方法は、前記補強パネルの第一板材の端面を隣接する他の補強パネルの第一板材の端面と突き合わせた状態で両補強パネルをコンクリート表面に固定する作業と、前記第一板材の前記第二板材から張り出した部分の表面において前記繊維シート同士を連結する作業と、前記隣り合う補強パネルの前記第二板材同士の間に接合部材を接着する作業と、前記開口部に充填材を注入する作業とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の補強パネルおよびコンクリート構造物の補強方法によれば、第一板材に形成された開口部において繊維シートが露出しているため、繊維シートをコンクリート表面に接着することができる。第一板材の第二板材から張り出した部分を隣り合う補強パネル同士の接合部に使用すれば、繊維シートと接合部材との密着性を確保することができ、ひいては、補強パネル同士の連続性を確保することができる。
なお、開口部への充填材の注入は、予め前記第二板材に形成しておいた注入孔から注入するのが望ましい。また、前記第一板材と前記コンクリートとの間にシール材、セメント系材料、接着剤等を介設しておけば、開口部に注入した充填材が四散することを防ぐことができるので、第一板材をアンカーや充填材によりコンクリート部材により確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補強パネルおよびコンクリート構造物の補強方法によれば、繊維シートとコンクリート構造物との一体性を確保するとともに、隣り合う補強パネルの繊維シート同士の連続性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本実施形態の補強パネルを表面側から見た斜視図、(b)は同補強パネルを裏面側から見た斜視図である。
図2図1の補強パネルの分解斜視図である。
図3】本実施形態のコンクリート構造物の補強方法の作業状況を示す断面図であって、(a)は固定作業、(b)および(c)は連結作業である。
図4図3に続くコンクリート構造物の補強方法の作業状況を示す断面図であって、(a)は接合作業、(b)は接着作業である。
図5】(a)〜(c)は、他の形態に係る補強パネルの第一板材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、補強パネル1を既設コンクリート構造物の表面に接着するコンクリート構造物の補強方法について説明する。本実施形態の補強パネル1は、図1(a)および(b)に示すように、第一板材2、繊維シート3および第二板材4が一体に積層された板状部材である。第一板材2、繊維シート3および第二板材4は、コンクリート構造物側から順に積層されている。
第一板材2には、図2に示すように、開口部21が形成された枠状板材である。本実施形態の第一板材2は、繊維強化セメント板(いわゆるフレキシブルボード)である。第一板材2には、複数のアンカー孔22が形成されている。本実施形態では、第一板材2には、一対の長辺に沿ってそれぞれ3つ(計6カ所)のアンカー孔22が等間隔に形成されている。なお、アンカー孔22の配置、数および直径等は、限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、アンカー孔22は、補強パネル1の固定方法に応じて形成すればよく、省略してもよい。また、第一板材2を構成する材料は、繊維強化セメント板に限定されるものではなく、例えば、鉄板や高強度の繊維強化セメント板(曲げ強度が約50N/mm)を使用してもよい。
【0012】
繊維シート3は、第一板材2の外形と同等の外形を有したシート材である。なお、繊維シート3を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維等を使用すればよい。繊維シート3は、図1(b)に示すように、開口部21において裏面側(コンクリート構造物との接着面側)に露出している。繊維シート3は、既設コンクリート構造物の構造性能レベル、劣化の進行具合、作用応力等に応じて炭素繊維量を適宜設定する。なお、繊維シート3は、複数枚積層されていてもよい。
【0013】
第二板材4は、第一板材2の外形よりも小さな外形を有した平板である。そのため、第一板材2および繊維シート3は、第二板材4よりも側方に張り出している。本実施形態の第二板材4は、繊維強化セメント板(いわゆるフレキシブルボード)である。第二板材4には、角部と長辺の中央部(計6カ所)にそれぞれアンカー孔41が形成されている。なお、第二板材4のアンカー孔41の位置、数および直径は、第一板材2のアンカー孔22の位置、数および直径に対応している。また、アンカー孔41は、補強パネル1の固定方法に応じて形成すればよく、省略してもよい。第二板材4には、第一板材2の開口部21の位置に対応して、注入孔42および空気抜き孔43が形成されている。本実施形態では、開口部21の対角に配置された一対の角部に対応する位置に、注入孔42と空気抜き孔43がそれぞれ形成されている。なお、注入孔42および空気抜き孔43の配置、数、形状等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0014】
補強パネル1を利用したコンクリート構造物の補強方法は、固定作業、連結作業、接合作業および接着作業を備えている。
固定作業は、図3(a)に示すように、隣り合う補強パネル1の第一板材2の端面同士を突き合わせた状態で、両補強パネル1をコンクリート構造物に固定する作業である。このとき、第一板材2とコンクリート面との間にシール材5を介設する。補強パネル2は、アンカー孔22,41に挿通したアンカー6を介してのコンクリート構造物に固定する。このとき、第一板材2は、シール材5を介してコンクリート面Cに密着させる。なお、補強パネル2の固定方法は限定されるものではなく、例えば、第一板材2をコンクリート面Cに接着してもよい。また、シール材5は、必要に応じて介設すればよく、省略してもよい。また、シール材5は、第一板材2の周縁のみに配置してもよい。さらに、シール材5に代えて、セメント系材料や接着剤等を介設してもよい。
【0015】
連結作業は、図3(b)に示すように、第一板材2の第二板材4から張り出した部分の突き合わせ部(以下、当該突き合わせ部を「接合部」という)23の表面において、繊維シート3同士を連結する作業である。まず、隣り合う補強パネル1の接合部23に跨って、接合シート7を配設する。次に、図3(c)に示すように、接合シート7の表面に、両補強パネル2の繊維シート3の端部を重ねる。接合シート7は、接合部23の表面に接着するとともに、繊維シート3の端部と接着する。なお、補強パネル2に複数枚の繊維シート3が積層されている場合には、複数の接合シート7を積層することで、積層された繊維シート3同士の間に接合シート7を介設させるのが望ましい。ここで、接合シート7を構成する材料は、繊維シート3と同質のシート材とする。
【0016】
接合作業は、図4(a)に示すように、隣り合う補強パネル1の第二板材4同士の間に接合部材8を接着する作業である。接合部材8は、隣り合う補強パネル1の第二板材4同士の間に形成された隙間と同じ形状の板材であり、第二板材4と同じ材質からなる。接合部材8は、第二板材4同士の間において、両接合部23の表面を覆うように、繊維シート3の表面に接着する。なお、接合部材8の固定方法は限定されるものではなく、例えば、接合部材8および第一板材2を貫通するアンカーにより固定してもよい。
【0017】
接着作業は、図4(b)に示すように、開口部21に接着剤(充填材)9を注入する作業である。接着剤9は、第二板材4の注入孔42に接続した注入パイプから注入する。接着剤9の注入作業は、空気抜き孔43から接着剤9が流出して、開口部21内への接着剤9の充填が確認されるまで行う。なお、開口部21へ接着剤9を充填する際のコンクリート面Cは、湿潤状態であってもよいし、乾燥していてもよい。なお、開口部21に注入する充填材は、接着剤に限定されるものではなく、例えば、ポリマーセメントモルタルやグラウト等を使用してもよい。
【0018】
以上、本実施形態の補強パネル1を利用したコンクリート構造物の補強方法によれば、第一板材2に形成された開口部21において繊維シート3がコンクリート面C側に露出しているため、繊維シート3をコンクリート面Cに直接接着することができる。そのため、繊維シート3とコンクリート構造物との一体性をより確実にし、ひいては、繊維シート3による補強効果を十分に発揮できる。
【0019】
また、開口部21に接着剤9を充填することで、繊維シート3とコンクリート面Cとの接着をより確実に実施することができる。また、第一板材2とコンクリート面Cとの間にシール材5が設けられているため、シール材5によって、開口部21に注入した接着剤9が四散することを防ぐことができ、かつ、接着剤9を充填する範囲を補強パネル1毎に区切ることができる。そのため、接着剤9の未充填箇所が発生するリスクを最小限に抑えることが可能となり、より確実に施工することができる。さらに、第一板材2が、スペーサーとして機能するため、接着剤9を注入するためのスペース(開口部21)を確実に確保することができる。すなわち、コンクリート面Cに凹凸がある場合であっても、接着剤を確実に充填することができる。
【0020】
第二板材4がアンカー固定されているため、接着剤9の注入圧によって繊維シート3の変形を小さくすることができる。したがって、確実な施工を可能にすることができる。
第一板材2のうち、第二板材4から張り出した部分で隣り合う補強パネル1同士の接合部23を形成することで、繊維シート3と接合部材8との密着性を確保することができ、ひいては、補強パネル1同士の連続性を確保することができる。
第一板材2に開口部21が形成されているため、補強パネル1の軽量化が実現されることで、補強パネルの取扱い性が向上する。その結果、作業性が向上し、ひいては、工期短縮化を図ることができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、第一板材2が、1つの矩形状の開口部21を有した枠状部材である場合について説明したが、開口部21の形状は限定されるものではなく、例えば、小判形(図5(a)参照)、円形、楕円形、矩形以外の多角形であってもよい。また、第一板材2には、図5(b)または(c)に示すように、複数の開口部が形成されていてもよい。なお、この場合における複数の開口部21の形状は限定されるものではなく、矩形状(図5(b)参照)、その他の多角形状、円形(図5(c)参照)、楕円形、小判形等であってもよい。
【0022】
前記実施形態では、固定作業において、第一板材2をコンクリート面Cに当接させる場合について説明したが、第一板材2とコンクリート面Cとの間に隙間をあけておき、接着工程において第一板材2をコンクリート面Cに接着してもよい。また、補強パネル1を設置するコンクリート面Cには、目荒らしにより凹凸を形成しておいてもよい。
繊維シート3の接合部23の位置に対応する部分には、予め樹脂を含浸させておいてもよいし、樹脂が未含浸であってもよい。
【0023】
前記実施形態では、補強パネル1同士を、コンクリート面Cに設置した状態で連結する場合について説明したが、複数の補強パネル1を予め連結(地組)してから、コンクリート面Cに設置してもよい。
前記実施形態では、接合部23に接合シート7を配設する場合について説明したが、少なくとも一方の補強パネル1の繊維シート3が第一板材2よりも側方に張り出している場合には、補強パネル1の繊維シート3同士を重ねることで、連結してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 補強パネル
2 第一板材
21 開口部
22 アンカー孔
3 繊維シート
4 第二板材
41 アンカー孔
42 注入孔
43 空気抜き孔
5 シール材
6 アンカー
7 接合シート
8 接合部材
9 接着剤(充填材)
C コンクリート面
図1
図2
図3
図4
図5