【文献】
ARUNA S.T. et al,Nanostructured Materials,1998年,Vol.10、No.6,p.955-964
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とチタン硝酸塩と親水性有機化合物とを溶媒中で混合し、得られた混合物を熱処理することにより、溶液燃焼合成によって請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする酸素貯蔵材料の製造方法。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンなどの内燃機関から排出される排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化すると同時に、窒素酸化物(NOx)を還元できる排ガス浄化触媒としていわゆる三元触媒が知られている。
【0003】
そして、排ガス浄化触媒を用いて排ガスを浄化するにあたって、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときに酸素を吸蔵でき、排ガス中の酸素濃度が低いときに酸素を放出できる酸素貯蔵能(Oxygen Storage Capacity(OSC))を有する材料を、排ガス浄化触媒の担体や助触媒として用いることが知られている。
【0004】
このようなOSCを有する酸素貯蔵材料としては、従来からセリアが好適に用いられており、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究され、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法などによって得られる種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物が開発されている。
【0005】
例えば、特開2015−182931号公報(特許文献1)には、セリウムとジルコニウムとこれら以外の鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属元素とを含み結晶構造としてパイロクロア相を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物をいわゆる熔融法により製造する方法が開示されている。
【0006】
また、特開2016−8168号公報(特許文献2)には、水溶性セリウム塩と水溶性ジルコニウム塩と錯化剤とジルコニア、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物粒子とを含む水溶液を用いていわゆる水熱合成法により、金属酸化物粒子の表面にパイロクロア相を含むセリア−ジルコニア複合酸化物が担持された酸素吸蔵材料を製造する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、より優れた酸素貯蔵能(OSC)を有しており理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料が求められるようになっており、前記特許文献に記載のような従来の酸素貯蔵材料では必ずしも十分なものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた酸素貯蔵能(OSC)を有しており理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素としてチタンを選択し、かつ、いわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及びチタンを含む複合酸化物を製造することによって、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法などの他の方法ではセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることができなかったチタンをセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることが可能となり、それによって得られる複合酸化物の酸素貯蔵能(OSC)が著しく向上して理論限界に迫るOSCを発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の酸素貯蔵材料は、
セリウム、ジルコニウム及びチタンを含むセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物であって、
前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記チタンの少なくとも一部が固溶しており、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)が以下の条件(1):
2≦{(I
111/I
222)×100}≦15 (1)
を満たす前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなるものであることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法は、セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とチタン硝酸塩と親水性有機化合物とを溶媒中で混合し、得られた混合物を熱処理することにより、溶液燃焼合成によって前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする方法である。
【0013】
本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物が以下の化学式(2):
Ce
xZr
yTi
zO
2 (2)
(化学式(
2)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7、y=0.2〜0.69、z=0.01〜0.3、x+y+z=1の条件を満たす数である。)
で表される組成を有するものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物の平均結晶子径が10〜100nmであり、比表面積が1〜50m
2/gであることが好ましい。
【0015】
なお、本発明におけるX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークとは、測定対象のセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物における規則相の(222)面に帰属する回折線のピークであり、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が28.5°〜30.5°(好ましくは29°〜29.5°)に現れるピークを(222)面に帰属する回折線のメインピークとすることができる。
【0016】
また、本発明におけるX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(111)面に帰属する回折線の超格子ピークとは、測定対象のセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物における規則相の(111)面に帰属する回折線のピークであり、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14°〜15°(好ましくは14.5°〜14.6°)に現れるピークを(111)面に帰属する回折線の超格子ピークとすることができる。このような(111)面に帰属する回折線のピークは、セリウムとジルコニウムとの複合酸化物にチタンが固溶することによって金属カチオン(具体的には、セリウムカチオン、ジルコニウムカチオン及びチタンカチオン)が秩序配列した超格子構造であるカチオン秩序構造が形成されていることを示すものである。
【0017】
したがって、本発明における(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)は、測定対象のセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においてカチオン秩序構造が形成されている程度(全結晶相におけるカチオン秩序構造の存在率)を示す指標として規定され、セリウムとジルコニウムとの複合酸化物に固溶しているチタンの量が増えると比率(I
111/I
222)の値も高くなる。
【0018】
なお、前記X線回折測定の方法としては、測定装置として理学電機社製の商品名「RINT−Ultima」を用いて、CuKα線を用い、40KV、40mA、2θ=5°/minの条件で測定する方法を採用する。また、回折線のピーク強度を求める際、各回折線のピーク強度の値から、バックグラウンド値(ベースライン)として2θ=16°〜24°の平均回折線強度を差し引いて計算する。さらに、回折線の「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
【0019】
このような本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素としてチタンを選択し、かつ、いわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及びチタンを含む複合酸化物を製造することによって、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法などの他の方法ではセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることができなかったチタンをセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることが可能となる。そのため、本発明の酸素貯蔵材料を構成するセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、セリウムとジルコニウムとの複合酸化物に、セリウムやジルコニウムよりもイオン半径が小さいチタンが固溶されることにより、それらの相対的なイオン半径の差から金属カチオンの秩序化が生じ、超格子構造であるカチオン秩序構造が形成される。そして、そのようなカチオン秩序構造においては比較的結合の弱い酸素サイトが効率的に形成されるため、本発明の酸素貯蔵材料においては酸素貯蔵能(OSC)が著しく向上して理論限界に迫るOSCを発揮することが可能となると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた酸素貯蔵能(OSC)を有しており理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明の酸素貯蔵材料について説明する。すなわち、本発明の酸素貯蔵材料は、セリウム、ジルコニウム及びチタンを含むセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなるものである。そして、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物(セリア−ジルコニア複合酸化物)に前記チタンの少なくとも一部が固溶しており、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)が以下の条件(1):
2≦{(I
111/I
222)×100}≦15 (1)
を満たすものである。
【0024】
本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物は、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む複合酸化物である。セリア−ジルコニア複合酸化物にチタンを添加しても、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法などの他の方法ではセリア−ジルコニア複合酸化物にチタンを固溶させることができず、チタンの添加は酸素貯蔵能(OSC)の向上に寄与しないのに対し、本発明においては、後述するようにいわゆる溶液燃焼合成法によりセリウム、ジルコニウム及びチタンを含む複合酸化物を製造することによって、チタンをセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることが可能となり、それによって得られる複合酸化物のOSCが著しく向上する。
【0025】
したがって、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、セリア−ジルコニア複合酸化物にチタンの少なくとも一部が固溶していることが必要がある。このようにセリア−ジルコニア複合酸化物にチタンの少なくとも一部が固溶していることとその固溶量は、
(i)(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)がチタンの固溶量の増加に伴って大きくなること、
(ii)格子定数がベガード則に従ってチタンの固溶量の増加に伴って小さくなること、
によって確認することができる。
【0026】
本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、添加されたチタンのうちの80〜100at%が固溶していることが好ましく、90〜100at%が固溶していることがより好ましく、ほぼ全量である95〜100at%が固溶していることが特に好ましい。固溶しているチタンの比率が前記下限未満では、チタンの添加によるOSCの向上が十分に得られにくくなる傾向にある。
【0027】
このような本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物の組成は、以下の化学式(2):
Ce
xZr
yTi
zO
2 (2)
(化学式(
2)中、x、y及びzはそれぞれ、x=0.3〜0.7(より好ましくは0.4〜0.6)、y=0.2〜0.69(より好ましくは0.3〜0.5)、z=0.01〜0.3(より好ましくは0.05〜0.25)、x+y+z=1の条件を満たす数である。)
で表される組成であることが好ましい。Ceの含有量が前記下限未満では十分なOSCが得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる傾向にある。また、Zrの含有量が前記下限未満では単相ではあるが超格子ができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる傾向にある。さらに、Tiの含有量が前記下限未満ではチタンの添加によるOSCの向上が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる傾向にある。
【0028】
また、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、TiとZrとの原子比{Ti/(Ti+Zr)}が、以下の条件:
0.02≦{Ti/(Ti+Zr)}≦0.5 (3)
を満たすことが好ましく、
0.05≦{Ti/(Ti+Zr)}≦0.4 (3)’
を満たすことがより好ましい。前記原子比が前記下限未満ではチタンの添加によるOSCの向上が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる傾向にある。
【0029】
さらに、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)が以下の条件(1):
2≦{(I
111/I
222)×100}≦15 (1)
を満たしていることが必要である。前記強度比(I
111/I
222)が前記下限未満ではチタンの固溶により形成されたカチオン秩序構造によるOSCの向上が十分に得られず、他方、前記上限を超えるとOSCを測定するための温度域(400〜600℃)において分相してしまう。また、OSCの向上がより十分に得られるという観点から、前記強度比{(I
111/I
222)×100}が2.5以上であることがより好ましく、他方、OSCを測定するための温度域(400〜600℃)における分相がより十分に防止されるという観点から、前記強度比(I
111/I
222)が12.5以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物の平均結晶子径は、特に制限されないが、10〜100nmであることが好ましく、20〜50nmであることがより好ましい。このような平均結晶子径が前記下限未満ではOSCを測定するための温度域(400〜600℃)において分相しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとOSCの向上が十分に得られにくくなる傾向にある。なお、このような平均結晶子径は、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから市販の解析ソフト(例えば、リートベルト解析ソフト「Jana2006」)を用いて算出することができる。
【0031】
また、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物の比表面積は、特に制限されないが、1〜50m
2/gであることが好ましく、5〜20m
2/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満ではOSCの向上が十分に得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとOSCを測定するための温度域(400〜600℃)において分相しやすくなる傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができ、例えば、市販の全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製、マイクロソープ MODEL−4232)を用いて得ることができる。
【0032】
また、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物においては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有していてもよい。このような元素を含有させることで、本発明にかかるセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物を排ガス浄化用触媒の担体として用いた場合に、より高い排ガス浄化能が発揮される傾向にある。このようなセリウム以外の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、La、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Y、Ndがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Mg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低いセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、排ガス浄化の際の活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる傾向にある。
【0033】
さらに、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有する場合においては、前記元素の含有量が、セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物中に1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。このような元素の含有量が前記下限未満では、得られた複合酸化物に貴金属を担持させた場合に、貴金属との相互作用を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸素貯蔵能が低下してしまう傾向にある。
【0034】
本発明の酸素貯蔵材料は、前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなるものであり、優れた酸素貯蔵能(OSC)を有しており理論限界に迫るOSCを発揮する。そのため、本発明の酸素貯蔵材料は、排ガス浄化触媒の担体や助触媒として好適に用いられる。このような本発明の酸素貯蔵材料を用いた好適な例としては、前記本発明の酸素貯蔵材料からなる担体と、前記担体に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、銀等が挙げられる。また、他の例としては、他の触媒担体微粒子に貴金属が担持された排ガス浄化触媒の周囲に、前記本発明の酸素貯蔵材料を配置してなるものが挙げられる。
【0035】
次に、前記本発明の酸素貯蔵材料を製造するための本発明の方法について説明する。
【0036】
本発明の酸素貯蔵材料の製造方法は、セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とチタン硝酸塩と親水性有機化合物とを溶媒中で混合し、得られた混合物を熱処理することにより、溶液燃焼合成によって前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする方法である。目的とするセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物にセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有させる場合は、その元素の硝酸塩を更に添加して混合してもよい。
【0037】
本発明で採用する溶液燃焼合成法は、金属硝酸塩を酸化剤、親水性有機化合物を還元剤(溶液燃焼合成法においては「燃料」という)とする液相酸化還元反応の一種である。具体的には、原料(酸化剤及び燃料)を水などの溶媒中で混合し、得られた混合物(溶液又はゲル)を加熱すると酸化剤と燃料との間で急激な発熱反応が生じ、そのまま所定温度で熱処理することによって用いた金属の複合酸化物の微粉体が得られる。
【0038】
本発明においては、溶液燃焼合成法における酸化剤として、セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とチタン硝酸塩とを用いる。セリウム硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばCe(NH
4)
2(NO
3)
6が好ましい。また、ジルコニウム硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばZrO(NO
3)
2・2H
2Oが好ましい。さらに、チタン硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばTiO(NO
3)
2が好ましい。
【0039】
また、溶液燃焼合成法における還元剤(燃料)として用いる親水性有機化合物としては、特に制限されないが、グリシン、グルコース、尿素、アラニン、オキサリルヒドラジンなどが好ましい。さらに、溶液燃焼合成法における溶媒としては、水が一般的に好適に用いられるが、硝酸イオンを含む水溶液やエタノールなどの親水性有機溶媒であってもよい。
【0040】
本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、先ず、前記酸化剤と前記還元剤(燃料)とを前記溶媒中で混合する。その際、目的とするセリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物の組成(ターゲット組成)に応じて金属原子が化学量論比となるように、酸化剤として用いる金属硝酸塩(セリウム硝酸塩、ジルコニウム硝酸塩及びチタン硝酸塩)を混合することが好ましい。
【0041】
また、溶液燃焼合成法においては、酸化剤と還元剤(燃料)の割合は重要である。一般に、酸化剤である硝酸塩が還元されて金属又は金属酸化物とN
2ガスになり、燃料が酸化されてCO
2やH
2Oまで還元されると仮定した化学量論での酸化剤と還元剤(燃料)のモル比([酸化剤]/[還元剤])が1つの指標となる。この化学量論的モル比は用いる酸化剤や還元剤の種類によって異なる。溶液燃焼合成のために供給される原料のモル比(酸化還元反応に関与する酸化剤と還元剤(燃料)のモル比([酸化剤]/[還元剤])が化学量論的モル比に近くなるように酸化剤と還元剤とを混合することが好ましいが、還元剤(燃料)が過剰な状態で反応させて未反応物は熱処理の際に除去するようにしてもよい。
【0042】
さらに、前記酸化剤及び前記還元剤(燃料)を混合する前記溶媒の量は、特に制限されないが、前記酸化剤と前記還元剤とを溶解させることが可能な最少量以上の量であればよく、最少量に近い(最少量の1〜2倍程度)ことが好ましい。
【0043】
次に、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、前記酸化剤と前記還元剤(燃料)とを前記溶媒中で混合して得られた混合物を熱処理することにより、溶液燃焼合成によって前記セリア−ジルコニア−チタニア系複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料が得られる。その際、熱処理される混合物は、用いた金属硝酸塩と親水性有機化合物とが溶媒に溶解した溶液であることが好ましいが、酸化還元反応の中間生成物が生成したゲルであってもよい。また、熱処理の温度及び時間は、特に制限されないが、200〜600℃の温度範囲で1〜5時間程度の熱処理が施されることが好ましい。さらに、熱処理の際の雰囲気は、特に制限されず、大気中であってもよいが、アルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性雰囲気であってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
試薬としては以下のものを用いた。
(1)セリウム硝酸塩:Ce(NH
4)
2(NO
3)
6(純度99.5%、和光純薬工業社製)
(2)ジルコニウム硝酸塩:ZrO(NO
3)
2・2H
2O(純度97%、和光純薬工業社製)
(3)チタン硝酸塩:TiO(NO
3)
2の7M水溶液{TiO[(CH
3)
2CHO]
4(和光純薬工業社製)を加水分解し、蒸留水で3回洗浄して調製したTiO(OH)
2を最少量のHNO
3(濃度65%、和光純薬工業社製)に溶解して調製した。}
(4)親水性有機化合物:グリシン(C
2H
5NO
2)(純度99%、和光純薬工業社製)。
【0046】
(実施例1)
ターゲット組成をCe
0.5Zr
0.45Ti
0.05O
2として以下のようにして溶液燃焼合成法により前記組成を有するセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物を得た。
【0047】
すなわち、先ず、前記ターゲット組成となるように化学量論比のセリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とチタン硝酸塩とを表1に示す仕込み量で表1に示す最少量の純水に常温下にて溶解し、溶液が透明になったことを確認した後、全力チオン量に対して2当量に相当する表1に示す量のグリシンを溶解して混合液(溶液)を得た。次に、得られた混合液をアルミナるつぼに移し、脱脂炉にて400℃で2時間大気中で焼成して前記組成を有するセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物の粉末を得た。得られた粉末の平均粒子径は50μm程度であった。
【0048】
(実施例2)
ターゲット組成をCe
0.5Zr
0.4Ti
0.1O
2とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物の粉末を得た。
【0049】
(実施例3)
ターゲット組成をCe
0.5Zr
0.3Ti
0.2O
2とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物の粉末を得た。
【0050】
(比較例1)
ターゲット組成をCe
0.5Zr
0.5O
2とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
【0051】
【表1】
【0052】
(比較例2)
ターゲット組成をCe
0.5Zr
0.5O
2として以下のようにして逆共沈法により前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。
【0053】
すなわち、先ず、前記ターゲット組成となるようにCe(NO
3)
3の28.0質量%水溶液49gとZrO(NO
3)
2の18.0質量%水溶液55gとの混合液にH
2O
2水溶液を55g混合してCe
3+をCe
4十に酸化せしめた後、NH
3の25.0質量%水溶液33gに加えてゲルを形成させた。次いで、ゲルを含む分散液をガラスビーカーに移し、脱脂炉にて150℃で7時間大気中で仮焼成した後、400℃で5時間大気中で本焼成して前記組成を有するセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末を得た。
【0054】
(比較例3)
ターゲット組成をCe
0.5Zr
0.4Ti
0.1O
2として以下のようにして逆共沈法により前記組成を有するセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物を得た。
【0055】
すなわち、先ず、前記ターゲット組成となるようにCe(NO
3)
3の28.0質量%水溶液49gとZrO(NO
3)
2の18.0質量%水溶液44gとTiO(NO
3)
2の7M水溶液2.3mlとの混合液にH
2O
2水溶液を55g混合してCe
3+をCe
4十に酸化せしめた後、NH
3の25.0質量%水溶液33gに加えてゲルを形成させた。次いで、ゲルを含む分散液をガラスビーカーに移し、脱脂炉にて150℃で7時間大気中で仮焼成した後、400℃で5時間大気中で本焼成して前記組成を有するセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物の粉末を得た。
【0056】
<X線回折(XRD)測定>
実施例及び比較例で得られた複合酸化物の結晶相をX線回折法により測定した。なお、X線回折装置として理学電機社製の商品名「RINT−Ultima」を用いて、CuKα線を用い、40KV、40mA、2θ=5°/minの条件でX線回折パターンを測定した。
【0057】
得られたX線回折パターンを
図1及び
図2に示す。
図1及び
図2において、(a)はXRDの全角パターン、(b)は(222)面に帰属する回折線のメインピーク(2θ=29.4°)、(c)は(111)面に帰属する回折線の超格子ピーク(2θ=14.6°)であり、無機結晶構造データベース(ICSD)のCe
0.5Zr
0.5O
2のXRD全角パターンを併せて示している。
【0058】
得られたX線回折パターンから(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)を求めた結果を表2に示す。なお、比較例2及び比較例3で得られた複合酸化物においても超格子ピークは確認されず、比率(I
111/I
222)は0%であった。
【0059】
また、得られたX線回折パターンからリートベルト解析ソフト「Jana2006」をを用いて格子定数(Lattice parameter)の解析と平均結晶子径(Crystal size)の算出をし、得られた結果を表3、
図3及び
図4に示す。なお、
図3(a)及び
図4は空間群が蛍石構造であるFm−3mの場合、
図3(b)は空間群がカチオン秩序構造であるP312の場合の格子定数であり、表3中の格子定数の欄における「*」は構造を仮定した場合の数値であり、また、カッコ内の数字は標準誤差である。
【0060】
<比表面積の測定>
実施例及び比較例で得られた複合酸化物について、全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製、マイクロソープ MODEL−4232)を用いてBET1点法により比表面積(SSA)を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
<酸素吸放出量(OSC)の測定>
実施例及び比較例で得られた複合酸化物について以下のようにして酸素吸放出量を測定した。すなわち、測定装置として熱重量測定装置「TGA‐50」(島津製作所社製)を用い、実施例及び比較例で得られた複合酸化物0.030gに対して600℃の条件下においてリーンガス(O
2(10容量%)+N
2(残量))とリッチガス(H
2(10容量%)+N
2(残量))とを5分毎に交互に切り替えて流し、複合酸化物の質量上昇値の3回平均から酸素吸放出量を求めた。さらに、複合酸化物に含有されるセリウム量に基づくOSCの理論値に対するOSCの実測値の割合からCe利用効率(%)を算出した。得られた結果を表4及び
図5に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
<複合酸化物の評価結果>
図1及び表2に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られた実施例1〜3で得られた本発明のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においては、カチオン秩序構造が形成されていることを示す(111)面に帰属する回折線の超格子ピークが確認され、(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I
222)に対する超格子ピークの強度(I
111)の比率(I
111/I
222)が2〜15の範囲内であることが確認された。
【0066】
また、
図3に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られた実施例1〜3で得られた本発明のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においては、超格子のある空間群(P312)を仮定した場合に格子定数変化がより良い直線性を示したことから、空間群は蛍石構造であるFm−3mからカチオン秩序構造であるP312に変化しており、その格子定数はベガード則に従って変化していることが確認された。さらに、
図1及び表2に示した結果から明らかなように、カチオン秩序構造の存在率に関する超格子ピーク強度の比率(I
111/I
222)がチタンの含有量の増加に伴って大きくなることが確認されており、これらの知見から、本発明のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においてはチタンが十分に固溶していることが確認された。また、本発明のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においてはチタンの含有量の増加に伴って格子定数が小さくなっているが、それはZrに比べてイオン半径が小さいTiが固溶してカチオン秩序構造が形成されていることに起因しており、その知見からもチタンが十分に固溶していることが明らかである。
【0067】
それに対して、
図1及び
図2に示した結果から明らかなように、チタンを含有しない比較例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物や、逆共沈法で得られた比較例2のセリア−ジルコニア複合酸化物及び比較例3のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においては、超格子ピークは確認されなかった。この知見から、これらの複合酸化物においては、カチオン秩序構造は形成されていないことが確認された。さらに、
図4に示した結果から明らかなように、逆共沈法で得られた比較例2のセリア−ジルコニア複合酸化物及び比較例3のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においては、空間群は蛍石構造であるFm−3mのままであり、その格子定数はチタンの含有量の増加に伴って大きくなっていることが確認された。このように格子定数がチタンの含有量の増加に伴って大きくなるという現象は、チタンの固溶は進行せずにCeとZrとの比率が変化したことによってZrよりもイオン半径が大きいCeの量が相対的に増加したことに起因しており、その知見からも逆共沈法で得られた比較例3のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においてはチタンの固溶は進行していないことが確認された。
【0068】
さらに、
図5び表4示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られた実施例1〜3で得られた本発明のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物においては、チタンを含有しない比較例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物や逆共沈法で得られた比較例2のセリア−ジルコニア複合酸化物及び比較例3のセリア−ジルコニア−チタニア複合酸化物に比べて、600℃において非常に優れた酸素貯蔵能(OSC)を有しており、理論限界に迫るOSCが発揮されることが確認された。