(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリスチレン系樹脂のビーズ法発泡体の層(A)と、前記(A)層の一方の面に設けられたポリスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の非発泡樹脂層(B)と、前記(A)層と前記(B)層との間に設けられたポリスチレン系樹脂の発泡シートの層(C)と、前記(B)層と前記(C)層との間に設けられたポリスチレン系樹脂の非発泡樹脂層(D)とを備え、
前記(B)層が表面に位置し、前記(B)層と前記(D)層との間に前記(B)層と前記(D)層とを接着する接着層が設けられ、
前記(B)層の表面の算術平均粗さ(Ra)が1.0以下である、複合発泡体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ポリスチレン系樹脂のビーズ法発泡体の層(A)と、前記(A)層の一方の面に設けられたポリスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の非発泡樹脂層(B)と、前記(A)層と前記(B)層との間に設けられたポリスチレン系樹脂の発泡シートの層(C)と、前記(B)層と前記(C)層との間に設けられたポリスチレン系樹脂の非発泡樹脂層(D)とを備え、前記(B)層が表面に位置する、複合発泡体である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る複合発泡体の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の複合発泡体1は、(A)層10と(C)層20と(D)層30と(B)層50とがこの順序で設けられ、(B)層50が複合発泡体1の表面に位置している。(A)層10と(C)層20、(C)層20と(D)層30とは、熱融着され、(D)層30と(B)層50とは、接着層40を介して接着されている。
【0012】
(A)層10は、ポリスチレン系樹脂のビーズ法発泡体(EPS)の層である。複合発泡体1は、(A)層10を備えることで断熱性能に優れる。
(A)層10を構成するポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体、スチレン系単量体と他の単量体との共重合体が挙げられる。
本明細書において、ポリスチレン系樹脂とは、樹脂成分のうちスチレン系単量体を50モル%以上含有する樹脂のことをいう。
【0013】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
スチレン系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。
スチレン系単量体と共重合可能な単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(A)層10の厚さは、1〜99mmが好ましく、5〜50mmがより好ましく、10〜30mmがさらに好ましい。(A)層10の厚さが前記下限値以上であると、断熱性能をより向上しやすい。(A)層10の厚さが前記上限値以下であると、複合発泡体1を成形しやすい。なお、(A)層10の厚さは、ノギスにより測定された任意の10点の厚さの平均値である。
【0016】
(A)層10の密度は、16〜50kg/m
3が好ましく、20〜45kg/m
3がより好ましく、25〜40kg/m
3がさらに好ましい。(A)層10の密度が前記下限値以上であると、圧縮強度をより向上しやすい。前記上限値以下であると、断熱性能をより向上しやすい。
【0017】
(A)層10の発泡倍率は、20〜60倍が好ましく、20〜50倍がより好ましく、25〜40倍がさらに好ましい。(A)層10の発泡倍率が前記下限値以上であると、断熱性能をより向上しやすい。前記上限値以下であると、圧縮強度をより向上しやすい。
なお、(A)層10の発泡倍率は、以下のようにして求める。
(A)層10を所定の大きさに切り出して試料とする。その試料の大きさ(平面視面積:S)と厚さ(t)とを測定する。試料の大きさと厚さとを乗じて試料の見掛け上の体積(V=S×t(cm
3))を求める。求めた体積と該試料の質量(M(g))とから、(A)層10の見掛け密度(d=M/V(g/cm
3))を算出する。
そして、(A)層10を形成しているポリスチレン系樹脂の密度(例えば、ρ:1.05g/cm
3とする)を、(A)層10の見掛け密度(d)で除して、(A)層10の発泡倍率(倍)を求める。
発泡倍率(倍)=ポリスチレン系樹脂の密度(ρ)÷(A)層10の見掛け密度(d)
【0018】
(A)層10におけるビーズの平均発泡粒径は、1.0〜5.0mmが好ましく、1.5〜4.5mmがより好ましく、2.0〜4.0mmがさらに好ましい。ビーズの平均発泡粒径が前記下限値以上であると、断熱性能を向上しやすい。前記上限値以下であると、表面強度を向上しやすい。
【0019】
(B)層50は、(A)層10の一方の面に設けられたポリスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の非発泡樹脂層である。複合発泡体1は、表面に(B)層50を備えることで、耐薬品性及び撥水性に優れる。また、複合発泡体1は、表面に(B)層50を備えることで、(A)層10の表面の凹凸を隠蔽し(隠蔽性)、美粧性を向上しやすい。
(B)層50としては、ポリオレフィン系樹脂の非発泡樹脂層、ポリエチレンテレフタレート(PET)の非発泡樹脂層、ポリアクリル系樹脂の非発泡樹脂層等が挙げられる。(B)層50としては、耐薬品性及び撥水性に優れるポリオレフィン系樹脂の非発泡樹脂層が好ましく、その中でもポリエチレンの非発泡樹脂層、ポリプロピレンの非発泡樹脂層がより好ましく、ポリプロピレンの非発泡樹脂層が特に好ましい。
(B)層50としては、例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)等の非発泡フィルムが用いられる。
【0020】
(B)層50の厚さは、0.01〜0.1mmが好ましく、0.02〜0.08mmがより好ましく、0.03〜0.06mmがさらに好ましい。(B)層50の厚さが前記下限値以上であると、隠蔽性、耐薬品性及び撥水性を向上しやすい。前記上限値以下であると、より成形性に優れる。(B)層50の厚さは、(A)層10の厚さと同様の方法で求められる。
【0021】
(B)層50の表面は、美粧性の観点から平滑であることが好ましい。表面の平滑性を表す指標としては、算術平均粗さ(Ra)を用いることができ、Raは、1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。Raが前記上限値以下であると、表面が平滑であるため、表面の美粧性に優れる。Raの下限値は特に設けられていないが、0以上であるとされる。
【0022】
(C)層20は、(A)層10と(B)層50との間に設けられたポリスチレン系樹脂の発泡シート(PSP)の層である。複合発泡体1は、(C)層20を備えることで(A)層10の表面の凹凸を隠蔽し、美粧性を向上できる。
【0023】
(C)層20を構成するポリスチレン系樹脂としては、(A)層10を構成するポリスチレン系樹脂と同様の樹脂を用いることができる。(C)層20を構成するポリスチレン系樹脂は、(A)層10を構成するポリスチレン系樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
(C)層20は、(A)層10と熱融着により積層されるため、(C)層20を構成するポリスチレン系樹脂は、(A)層10を構成するポリスチレン系樹脂と同じであることが好ましい。
【0024】
(C)層20の厚さは、0.5〜5.0mmが好ましく、1.0〜4.0mmがより好ましく、1.5〜3.0mmがさらに好ましい。(C)層20の厚さが前記下限値以上であると、隠蔽性を向上し美粧性を向上しやすい。(C)層20の厚さが前記上限値以下であると、複合発泡体1を成形しやすい。(C)層20の厚さは、(A)層10の厚さと同様の方法で求められる。
【0025】
(C)層20の坪量は、100〜500g/m
2が好ましく、200〜450g/m
2がより好ましく、300〜400g/m
2がさらに好ましい。(C)層20の坪量が前記下限値以上であると、隠蔽性を向上し美粧性を向上しやすい。前記上限値以下であると、複合発泡体1を成形しやすい。(C)層20の坪量は、以下のようにして求めた。
(C)層20の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m
2当たりの質量に換算した値を、(C)層20の坪量(g/m
2)とした。
【0026】
(C)層20の発泡倍率は、2〜10倍が好ましく、3〜9倍がより好ましく、4〜8倍がさらに好ましい。(C)層の発泡倍率が前記下限値以上であると、断熱性能をより向上しやすい。前記上限値以下であると、(C)層20の表面の凹凸を小さくしやすい。(C)層20の発泡倍率は、(A)層10の発泡倍率と同様の方法で求められる。
【0027】
(D)層30は、(C)層20と(B)層50との間に設けられたポリスチレン系樹脂の非発泡樹脂層である。複合発泡体1は、(D)層30を備えることで、(C)層20と(B)層50とを接着しやすくできる。加えて、複合発泡体1は、(D)層30を備えることで、(C)層20と熱融着により積層可能となる。さらに、複合発泡体1は、(D)層30を備えることで、(C)層20の表面の凹凸を隠蔽し、複合発泡体1の表面の美粧性をより向上させることができる。
(D)層30を構成するポリスチレン系樹脂としては、(A)層10及び(C)層20を構成するポリスチレン系樹脂と同様の樹脂を用いることができる。(D)層30を構成するポリスチレン系樹脂は、(A)層10及び(C)層20を構成するポリスチレン系樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、(D)層30を構成するポリスチレン系樹脂には、ブタジエンゴム、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、グラフト共重合体などを適宜混合することができる。なお、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)は、耐衝撃性ポリスチレンともいう。
【0028】
(D)層30の質量に対するHIPSの含有量は、30質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。(D)層30におけるHIPSの含有量が前記下限値以上であると、複合発泡体1の表面の表面強度をより向上しやすい。(D)層30としては、例えば、HIPS90質量%、汎用ポリスチレン(GPPS)10質量%の混合フィルム等が用いられる。
(D)層30は、(C)層20と熱融着されている。(D)層30と、(B)層50とは、後述する接着層40を介して接着される。
【0029】
(D)層30の厚さは、0.1〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましく、0.1〜0.3mmがさらに好ましい。(D)層30の厚さが前記下限値以上であると、隠蔽性を向上し美粧性を向上しやすい。前記上限値以下であると、複合発泡体1を成形しやすい。(D)層30の厚さは、(A)層10の厚さと同様の方法で求められる。
【0030】
(B)層50はポリスチレン系樹脂を除く熱可塑性樹脂、(D)層30はポリスチレン系樹脂で構成されているため、(B)層50と(D)層30とは、それぞれを構成する樹脂の種類が異なる。このため、(B)層50と(D)層30との間に、両者に接着性を有する接着性フィルムを挟んで熱融着させることが好ましい。あるいは、(B)層50と(D)層30との間に、接着剤を塗布して両者を接着させることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、(B)層50と(D)層30との間に接着剤で構成される接着層40が設けられている。接着層40を構成する接着剤としては、(B)層50と(D)層30とを接着することができるものであればよく、樹脂フィルムに通常使用される公知の接着剤を使用できる。接着層40を構成する接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤、エマルジョン系接着剤、ホットメルト接着剤等が挙げられ、耐久性に優れる熱硬化性樹脂系接着剤、環境負荷の少ないホットメルト接着剤が好ましい。
熱硬化性樹脂系接着剤としては、例えば、2液反応型ウレタン系接着剤(例えば、東洋モートン社製、品番:TM329)が挙げられる。
ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ポリオレフィン系ホットメルト接着剤としては、例えば、商品名「X−2300」(クラボウ社製)等が挙げられる。ポリエステル系ホットメルト接着剤としては、例えば、商品名「PES−111EE」(東亞合成社製)等が挙げられる。
ホットメルト接着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
接着層40の厚さは、10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。接着層40の厚さが前記下限値以上であると、(B)層50と(D)層30とを充分に接着しやすい。前記上限値以下であれば、貼り合わせ時にかける熱量を低く抑えることができることで寸法変化を小さくでき、貼り合わせ加工を安定化することが出来る。
【0033】
複合発泡体1の製造方法は、特に限定されず、公知の発泡樹脂積層体の製造方法や、特許文献1に記載の複合多層発泡成形品の製造方法を用いることができる。
複合発泡体1は、例えば、以下のような方法で製造することができる。
まず、(C)層20を製造する。(C)層20の製造方法は、例えば、ポリスチレン系樹脂を発泡剤と押出機内で混練し、押出機から溶融樹脂を押出し、発泡させて冷却することで発泡シートを製造する方法が挙げられる。(C)層20の製造に用いられる発泡剤としては、プロパン、i−ブタン、n−ブタン、i−ペンタン、n−ペンタン、あるいはこれらの混合物、そして、N
2、CO
2、N
2/CO
2、水、水と−OH、−COOH、−CN、−NH
3、−OSO
3H、−NH、CO、NH
2、−CONH
2、−COOR、−CHSO
3H、−SO
3H、−COONH
4、の基を持つ化合物との混合物などが挙げられる。これらの中でi−ブタン、n−ブタンは特に好ましい。
【0034】
次に、(C)層20の一方の面に、(D)層30を重ね、さらにその上に接着剤を介して(B)層50を重ねて積層体を得る。この積層体を、加熱圧着した後に冷却して、(C)層20と(D)層30と接着層40と(B)層50とが、この順序で設けられた積層シート60を得る。加熱圧着するときの加熱温度、加熱時間は、(C)層20の材質、厚さに応じて適宜決定される。
【0035】
積層シート60の坪量は、200〜1000g/m
2が好ましく、350〜850g/m
2がより好ましく、500〜700g/m
2がさらに好ましい。積層シート60の坪量が前記下限値以上であると、複合発泡体1の強度を充分に保ちやすい。前記上限値以下であると、複合発泡体1の軽量化に繋がる。積層シート60の坪量は、(C)層20の坪量と同様の方法で求められる。
積層シート60の密度は、100〜500kg/m
3が好ましく、150〜400kg/m
3がより好ましく、200〜300kg/m
3がさらに好ましい。積層シート60の密度が前記下限値以上であると、複合発泡体1の表面強度をより向上しやすい。積層シート60の密度が前記上限値以下であると、複合発泡体1の断熱性能をより向上しやすい。
積層シート60の発泡倍率は、2〜8倍が好ましく、2〜7倍がより好ましく、3〜5倍がさらに好ましい。積層シート60の発泡倍率が前記下限値以上であると、複合発泡体1の断熱性能をより向上しやすい。積層シート60の発泡倍率が前記上限値以下であると、積層シート60の表面の凹凸を小さくしやすい。積層シート60の発泡倍率は、(A)層10の発泡倍率と同様の方法で求められる。
【0036】
本実施形態の複合発泡体1は、例えば、以下の方法(1)〜(3)によって作製することができる。方法(1)では、
図3に示す金型2が用いられる。
図3に示すように、金型2は、雄型100と雌型200とから概略構成される。雄型100と雌型200とで囲まれた空間をキャビティ(成形型)300と呼ぶ。雄型100は、雌型200と対面する表面に、無数の小さな蒸気流通孔110を備える。雌型200は、雄型100と対面する表面に、無数の小さな蒸気流通孔210を備える。雌型200は、発泡性樹脂ビーズQを成形型300内に供給できる原料供給口220を備える。
図3では、成形型300内の雄型100の側に、積層シート60を収容してある。積層シート60は、(B)層50が雄型100の側に、(C)層20が成形型300の側になるように収容される。図中の矢印X、矢印Yは、加熱時に熱が加えられる方向を表す。
方法(1):金型2の成形型300内に、積層シート60と発泡性樹脂ビーズQとを収容する。発泡性樹脂ビーズQを加熱して、発泡性樹脂ビーズQ同士を熱融着して、ビーズ法発泡体の層(A)10を形成しつつ、該ビーズ法発泡体の層(A)10と積層シート60とを熱融着させる方法。
方法(2):積層シート60と、ビーズ法発泡体の層(A)10とを予め個別に作製する。その後、ビーズ法発泡体の層(A)10と、積層シート60との少なくとも一方の表面を加熱して、ビーズ法発泡体の層(A)10と積層シート60とを熱融着可能な状態にした上で、これらを圧接させて熱融着させる方法。
方法(3):樹脂の溶融混練物を押出発泡させて積層シート60を作製する。押出機から押出された当該積層シート60が冷え切らずに表面温度が高温となっている間に、予め作製しておいたビーズ法発泡体の層(A)10の上に被せ、これらを圧接させて熱融着させる方法。
【0037】
本実施形態の複合発泡体1は、ビーズ法発泡体の層(A)10と積層シート60とが強固に接着されていることが好ましい。ビーズ法発泡体の層(A)10の表面に凹凸を形成させ、該凹凸の凸部を積層シート60に食い込ませることで、ビーズ法発泡体の層(A)10と積層シート60との間に強固な接着性が発揮される。
そのため、上記の方法(1)や方法(2)では、ビーズ法発泡体との熱融着前に積層シート60を加熱して軟化させておくことが好ましい。
また、上記の方法(1)においては、発泡性樹脂ビーズの膨張力を、積層シート60に凸部を食い込ませるための圧力として利用できる。このため、本実施形態の複合発泡体1を作製する方法としては、上記の方法(1)が好適である。
【0038】
上記の方法(1)についてさらにくわしく説明する。本実施形態の複合発泡体1は、例えば、ポリスチレン系樹脂製の発泡性樹脂ビーズQが型内成形されてビーズ法発泡体の層(A)10が作製される
図3に示す成形型300を備えた金型2を用いて実施することができる。金型2を用いて下記工程(s)〜(u)を順に実施して、本実施形態の複合発泡体1を作製することができる。
工程(s):成形型300に熱可塑性樹脂製の積層シート60及び発泡性樹脂ビーズQを(C)層20と発泡性樹脂ビーズQとを接触させて収容する収容工程。
工程(t):成形型300内に過熱水蒸気などの加熱媒体を導入して発泡性樹脂ビーズQを発泡させ、発泡性樹脂ビーズQによってビーズ法発泡体の層(A)10を形成させるとともに、ビーズ法発泡体の層(A)10と(C)層20とを熱融着させて複合発泡体1を得る成形工程。
工程(u):複合発泡体1を金型2ごと冷却して成形型300から取り出す工程。
【0039】
複合発泡体1の形状、寸法は特に限定されない。複合発泡体1の用途としては、例えば、ユニットバスの天井材、浴槽の蓋等の住宅設備用部材、容器、緩衝材、内装材、壁面材等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
複合発泡体1は、表面に耐薬品性に優れる非発泡フィルムとして(B)層50を備え、その下に耐衝撃性に優れるHIPSを含有する(D)層30を備え、さらにその下に表面の凹凸が小さい(C)層20を備え、最下層にポリスチレン系樹脂のビーズ法発泡体の(A)層10を配した構成なので、表面の凹凸が吸収され、凹凸形状がなく美粧性に優れた表面を有する。
加えて、表面の耐薬品性及び撥水性が良好であるため、ユニットバスの天井材等に好適に用いることができる。
【0041】
なお、本発明の複合発泡体は、前記した複合発泡体1には限定されない。例えば、本発明の複合発泡体は、(B)層と(D)層との間に、第三の非発泡樹脂層を有するものであってもよく、(C)層と(D)層との間に、第三の非発泡樹脂層を有するものであってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0043】
[撥水性の評価]
複合発泡体の表面の撥水性の評価は、水の接触角を測定することにより行った。
水の接触角は、固液界面解析装置DropMaster300(協和界面科学社製)を使って、液滴法により測定した。滴下液は蒸留水、液量は1.0μLとし、接触角の計算はθ/2法により算出した。
測定に用いる試験片は、試験環境20±2℃、相対湿度65±5%雰囲気下、24時間以上放置した試料で測定を行った。測定する場所は、複合発泡体の表面((B)層)とし、10点測定した平均値を水の接触角とした。撥水性は、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:接触角85度以上 水滴がつき難いため良好。
×:接触角85度未満 水滴がつき易いため不良。
【0044】
[表面粗さ評価]
表面粗さ(算術平均粗さRa:平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、基準長さで割って平均した値)は、JIS B0601−2001に準じて、以下の手法で測定した。測定装置として(株)キーエンス製の「ダブルスキャン高精度レーザー測定器LT−9500、LT−9010M」を用い、データ処理ソフトとしてコムス(株)製の「非接触輪郭形状 粗さ測定システムMAP−2SD」を用いた。測定条件は、以下の通りであった。
≪測定条件≫
・測定範囲:5600μm。
・測定ピッチ:1μm。
・測定速度:500μm/秒。
・評価長さ(ln):4.0mm。
・基準長さ(l):0.8mm。
・光量:40。
・平均フィルター:4。
・ノイズフィルター:1。
試験片3箇所の測定結果の平均値をRaとし、以下の評価基準に従って評価した。Raが1.0以下で、表面の美粧性が良好であるとした。
(評価基準)
○:Raが1.0以下 表面粗さが小さく、表面の美粧性が良好。
×:Raが1.0超 表面粗さが大きく、表面の美粧性が不良。
【0045】
[耐薬品性の評価]
耐薬品性の評価(ストレスクラック)は、1/4楕円法の試験治具を用いて以下のように評価した。
図2に示すような長軸(a)160mm、短軸(b)75mmの1/4楕円の試験治具70に、幅15mm×長さ200mm×厚さ2.0mm(試験片の各厚み)の大きさに採取した短冊形の試験片Pを、試験治具70の曲率に沿って押さえ板72、74で挟み、留め具80を用いて固定した。この試験片Pの表面に薬液(商品名「バスピカ」(登録商標、(株)バスクリン製)、「バスマジックリン」(登録商標、花王(株)製)、「カビキラー」(登録商標、ジョンソン(株)製)、「ビオレパーフェクトオイル」(花王(株)製)、「ビオレU」(花王(株)製))を染み込ませた不織布のガーゼを張り付け、初期と24時間後の計2回薬液を塗布し、23±2℃、湿度50±5%RHの環境下で48時間放置した。48時間後の試験片Pの表面を目視で確認し、以下の評価基準に従って、耐薬品性を評価した。
(評価基準)
○:上記薬液の全てに対して、クレーズ(亀裂(ひび割れ)状態)及びクラック(亀裂の中に空隙が存在する状態)が発生していない。
×:上記薬液のいずれか一つに対して、クレーズ又はクラックが発生している。
【0046】
[曲げ強度、曲げ弾性率]
幅75mm×長さ350mm×厚さ25mmの大きさに切り抜いた試験片を用いて、以下の条件にて曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
≪試験条件≫
測定装置:テンシロン万能試験機 UCT−10T(オリエンテック社製)。
n数:3。
試験速度:20mm/分。
支点間距離:250mm。
先端治具:加圧くさび 10R。
支持台:10R。
得られた曲げ強度、曲げ弾性率の相加平均した値を各々曲げ強度(MPa)、曲げ弾性率(MPa)とし、表中に示す。曲げ強度及び曲げ弾性率の値が大きいほど複合発泡体は剛直であり、強度に優れる。
【0047】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
積層シートとビーズ法発泡体の層(A)とによる複合発泡体の作製条件を表1に示す。なお、金型は、例えば、
図3に示したものを用いて、大きさが縦1700mm、横900mm、総厚み25mmの平板形状の複合発泡体を作製した。成形時には成形型内に収容した積層シートや発泡性樹脂ビーズを3段階に分けて加熱した後、表1に示すように50秒から250秒の冷却時間を設けた。表1に示した第1回から第3回の3段階の加熱の方法についての略号は、以下に
図3を用いて説明するとおりである。
(実施例1〜5、比較例1〜2)
・X:発泡性樹脂ビーズ(雌型200)側からの加熱。蒸気流通孔210を通じて成形型300内に過熱水蒸気を導入した。
・Y:上記Xとは逆(雄型100)側からの加熱。蒸気流通孔110を通じて成形型300内に過熱水蒸気を導入した。
・XY:上記Xによる加熱と、上記Yによる加熱との両方を実施。
(比較例3)
・x:上記Xと同方向からの加熱。但し、積層シート60が収容されていない、発泡性樹脂ビーズQだけが収容されている成形型300内に蒸気流通孔210を通じて過熱水蒸気を導入した。
・y:上記xと逆方向からの加熱。但し、積層シート60が収容されていない、発泡性樹脂ビーズQだけが収容されている成形型300内に蒸気流通孔110を通じて過熱水蒸気を導入した。
・xy:上記xによる加熱と、上記yによる加熱との両方を実施。
ここで型内成形に用いた過熱水蒸気は、表1に示すとおり蒸気圧(ゲージ圧)を0.07MPa(約115℃)とした。
作製条件のクラッキング量(mm)は、成形型300の容量の目安を表す。成形型300の完全な閉型状態を100%としたとき、成形型300の容量は、101〜140%から適宜決定され、本発明の各例では、表1に示すとおり2mm(108%)とした。
得られた各例の複合発泡体を用いて各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1中、(C)層におけるPS(G800)、PS(G700)、PS(3503H)、PS(G500SU)は、積水化成品工業(株)製の発泡シートの品名を表す。
表1中、(A)層における使用樹脂、PS(HDSA)は、積水化成品工業(株)製の発泡ビーズの品名を表す。
【0050】
本発明を適用した実施例1〜5は、撥水性、表面粗さ、耐薬品性いずれの評価も「○」であった。一方、表面にCPPフィルムを用いなかった比較例1は、撥水性と耐薬品性が「×」であった。ポリスチレン系樹脂の非発泡樹脂層((D)層)を含有しない比較例2は、表面粗さが「×」であった。ポリスチレン系樹脂のビーズ法発泡体の層((A)層)単層の比較例3は、耐薬品性が「×」であった。
【0051】
これらの結果から、本発明によれば、表面の美粧性に優れ、かつ、耐薬品性及び撥水性に優れる複合発泡体及びその製造方法を提供することができることが分かった。