(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が100℃以上であるアクリル系の第1モノマーと、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃以下であるアクリル系の第2モノマーと、前記第1モノマーおよび前記第2モノマーの共重合体でありガラス転移温度(Tg)が80〜120℃であるアクリル系のポリマーと、を含有し、紫外線硬化性を有し、且つ、液状である、粘着剤組成物の製造方法であって、
前記第1モノマーおよび前記第2モノマーの混合物に紫外線を照射しながらバルク重合することによって前記ポリマーを得る、粘着剤組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<粘着剤組成物>
以下、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物について詳細に説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーを含有し、紫外線(Ultra Violet:以下、「UV」ということがある。)の照射によって硬化するUV硬化性を有し、且つ、液状である。
【0010】
(第1モノマー)
第1モノマーは、主として粘着剤組成物を液状にする成分として機能する。第1モノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が100℃以上、好ましくは100〜180℃であるアクリル系のモノマーである。ガラス転移温度(Tg)は、後述する実施例に記載の測定方法で測定して得られる値である。
【0011】
第1モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。例示した第1モノマーは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例示した第1モノマーのうちアクリロイルモルフォリンは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が145℃である。
【0012】
粘着剤組成物における第1モノマーの含有量は、第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーの合計100重量%に対して、例えば、30〜60重量%である。
【0013】
(第2モノマー)
第2モノマーは、主として第1モノマーとともに粘着剤組成物を液状にする成分として機能する。第2モノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が30℃以下、好ましくは−80〜30℃であるアクリル系のモノマーである。
【0014】
第2モノマーとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。例示した第2モノマーは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例示した第2モノマーのうちn−ブチルアクリレートは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−55℃である。
【0015】
粘着剤組成物における第2モノマーの含有量は、第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーの合計100重量%に対して、例えば、30〜60重量%である。
【0016】
(ポリマー)
ポリマーは、主として固定力を発揮する成分として機能する。ポリマーは、第1モノマーおよび第2モノマーの共重合体であり、且つ、ガラス転移温度(Tg)が80〜120℃、好ましくは80〜105℃であるアクリル系のポリマーである。ポリマーは、第1モノマーおよび第2モノマーの共重合体であることから、第1モノマーおよび第2モノマーに対して優れた相溶性を発揮する。
【0017】
粘着剤組成物におけるポリマーの含有量は、第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーの合計100重量%に対して、例えば、10〜40重量%である。
【0018】
ポリマーは、第1モノマーおよび第2モノマーのバルク重合体であってもよい。言い換えれば、第1モノマーおよび第2モノマーの共重合は、バルク重合で行ってもよい。また、バルク重合は、UVを照射しながら行ってもよい。これにより、比較的短時間でポリマーを得ることができる。
【0019】
バルク重合の重合条件は、次のような条件に設定できる。重合温度は、例えば、10〜80℃である。重合時間は、例えば、30秒〜5分である。UVの強度は、例えば、1〜100mW/cm
2(365nm)である。なお、重合条件は、第1、第2モノマーを共重合して上述したガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを得ることができる限り、例示した条件に限定されるものではない。
【0020】
バルク重合は、光重合開始剤(光ラジカル開始剤)の存在下で行ってもよい。光重合開始剤の添加量は、第1モノマーおよび第2モノマーの合計100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部である。
【0021】
光重合開始剤の組成は、特に限定されるものではない。また、光重合開始剤は、市販品を用いることができる。市販の光重合開始剤としては、例えば、いずれもチバ・ジャパン社製の「IRGACURE 184」、「IRGACURE 500」などが挙げられる。
【0022】
ポリマーの重量平均分子量は、例えば、150万以上、好ましくは200万〜400万である。重量平均分子量は、ポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0023】
ここで、上述した第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーを含有する本実施形態の粘着剤組成物は、上述のとおり、UV硬化性を有し、且つ、液状である。したがって、粘着剤組成物は、まず、液状の形態で使用することができる。それゆえ、粘着剤組成物を被加工物に塗工すれば、被加工物の表面に存在する微細な凹凸形状に粘着剤組成物が追従する。具体例を挙げると、粘着剤組成物は、後述する
図2に示すように、セラミックグリーンシート積層体100が有する溝101に対して優れた凹凸追従性を発揮する。そして、被加工物の表面に存在する微細な凹凸形状に追従した状態の粘着剤組成物にUVを照射して硬化物にすると、いわゆるアンカー効果が発現し、その結果、被加工物を高い固定力で仮固定することができる。このとき、硬化物は、主として上述したポリマーに起因して、高温においても高い固定力を発揮する。さらに、硬化物は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度で軟化する。したがって、硬化物をポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度にすれば、硬化物の固定力を低下させることができるので、被加工物を加工することで得られる加工物を硬化物から容易に剥離することができる。
【0024】
液状とは、粘着剤組成物の23℃における粘度が、100〜10000mPa・sであることを意味するものとする。粘度は、UV硬化前の値であって、後述する実施例に記載の方法で測定して得られる値である。
【0025】
一方、第1モノマーおよび第2モノマーの合計含有量は、ポリマーの含有量よりも多くてもよい。このような構成によれば、粘着剤組成物が第1モノマーおよび第2モノマーを主成分として含有するようになり、結果として優れた塗工性を発揮する。
【0026】
硬化物の貯蔵弾性率G’は、例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)未満の温度で1×10
6Pa以上、好ましくは1×10
6〜1×10
9Paである。このような構成によれば、硬化物が高温においても高い弾性率を維持することができるので、被加工物を高温においても高い固定力で仮固定することができる。
【0027】
硬化物の貯蔵弾性率G’は、例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度で9×10
5Pa以下、好ましくは1×10
4〜9×10
5Paである。このような構成によれば、硬化物をポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度にすれば、硬化物による固定力を十分に低下させることができるので、加工物を容易に剥離することができる。
【0028】
貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性測定装置を使用して、1Hz、5℃/分、0〜200℃の昇温過程で測定して得られる値である。貯蔵弾性率G’は、例えば、ポリマーの組成などを変えることによって調整することができる。
【0029】
第1モノマーおよび第2モノマーのうち少なくとも一方が、UV硬化性官能基を有していてもよい。UV硬化性官能基とは、UV照射によって硬化する官能基のことを意味するものとする。第1モノマーおよび第2モノマーのうち少なくとも一方が、UV硬化性官能基を有しているときは、粘着剤組成物が、UV硬化性を有するようになる。UV硬化性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、グリシジル基などが挙げられる。例えば、第1モノマーで例示したアクリロイルモルフォリンは、UV硬化性官能基を有している。したがって、第1モノマーとしてアクリロイルモルフォリンを採用すれば、粘着剤組成物が、UV硬化性を有するようになる。
【0030】
粘着剤組成物は、多官能(メタ)アクリレートをさらに含有していてもよい。多官能(メタ)アクリレートは、UVが照射されることによって硬化する性質を有する硬化性化合物であり、分子内にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する(メタ)アクリレートである。粘着剤組成物が、多官能(メタ)アクリレートをさらに含有しているときは、粘着剤組成物が、UV硬化性を有するようになる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートのことを意味するものとする。
【0031】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーの合計100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部である。
【0032】
多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、例えば、200〜1200である。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2官能(メタ)アクリレートまたは3官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートの具体的な組成としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。例示した多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上述した多官能(メタ)アクリレートは、市販品を用いることができる。市販の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、いずれも新中村化学工業社製の「NKエステルA−HD−N」、「NKエステルA−BPE−10」、「NKエステルA−9300−1CL」、「NKエステルA−9300−6CL」などが挙げられる。
【0035】
本実施形態の粘着剤組成物は、一度固定した被着体を再剥離する必要性のある仮固定用として好適に使用することができる。具体例を挙げると、本実施形態の粘着剤組成物は、例えば、セラミック部品製造用の仮固定材として使用することができる。セラミック部品としては、例えば、積層セラミックコンデンサ、セラミックインダクタ、セラミックバリスタなどが挙げられる。
【0036】
粘着剤組成物の使用形態は、特に限定されず、例えば、そのまま使用してもよいし、粘着テープなどの形態で使用してもよい。
【0037】
<被加工物の加工方法>
次に、本発明の一実施形態に係る被加工物の加工方法について、被加工物がセラミックグリーンシート積層体である場合を例にとって、
図1および
図2を参照して詳細に説明する。
【0038】
本実施形態の被加工物の加工方法は、上述した粘着剤組成物を使用するとともに、以下の(i)〜(iv)の工程を備えている。
(i)粘着剤組成物を介して被加工物を台座に貼り合わせる工程。
(ii)粘着剤組成物に紫外線を照射して硬化物にし、被加工物を台座に仮固定する工程。
(iii)被加工物を加工して加工物を得る工程。
(iv)硬化物をポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度にして軟化させ、加工物を硬化物から剥離する工程。
【0039】
具体的に説明すると、(i)の工程では、
図1(a)に示すように、粘着剤組成物1を介して被加工物であるセラミックグリーンシート積層体100を台座200に貼り合わせる。
【0040】
ここで、本実施形態のセラミックグリーンシート積層体100は、
図2に示すように、粘着剤組成物1と接触する領域Sに溝101を複数有する。溝101は、後述する(iii)の工程において、セラミックグリーンシート積層体100を複数の生チップ110にカットするときのガイドとして機能する部位である。溝101の深さDは、例えば、300μm以下、好ましくは50〜300μm、より好ましくは50〜100μmである。溝101の幅Wは、例えば、2000μm以下、好ましくは20〜2000μmである。液状である粘着剤組成物1は、優れた凹凸追従性を発揮することから、粘着剤組成物1と溝101との間に空隙が発生するのを抑制しつつ、粘着剤組成物1を介してセラミックグリーンシート積層体100を台座200に貼り合わせることができる。
【0041】
セラミックグリーンシート積層体100は、例えば、セラミック粉末のスラリーをドクターブレードで薄く延ばしてセラミックグリーンシートを形成し、このセラミックグリーンシートの表面に複数の電極を印刷した後、複数のセラミックグリーンシートを積層一体化して得られる。
【0042】
(ii)の工程では、粘着剤組成物1にUVを照射し、粘着剤組成物1を硬化物2にする。その結果、セラミックグリーンシート積層体100を台座200に仮固定することができる。UV照射量は、例えば、1000〜10000mJ/cm
2である。
【0043】
(iii)の工程では、セラミックグリーンシート積層体100を加工して加工物を得る。加工方法としては、例えば、切削加工、研磨加工などが挙げられる。本実施形態の(iii)の工程は、
図1(b)に示すように、いわゆるナイフカットである。具体的に説明すると、本実施形態の(iii)の工程では、セラミックグリーンシート積層体100をナイフ300でカットし、加工物として複数の生チップ110を得る。
【0044】
本実施形態では、
図2に示すように、粘着剤組成物1と溝101との間に空隙が発生するのを抑制しつつ粘着剤組成物1を介してセラミックグリーンシート積層体100を台座200に貼り合わせている。したがって、矢印a方向にナイフ300を動かしてセラミックグリーンシート積層体100を溝101に沿ってカットするとき、バリの発生を抑制することができる。また、粘着剤組成物1にUVを照射して硬化させた硬化物2は、高温においても高い弾性率を維持することができ、高い固定力を発揮することができる。それゆえ、高温になりやすいナイフカットにおいても優れたカット精度でセラミックグリーンシート積層体100をカットすることができる。
【0045】
(iii)の工程では、セラミックグリーンシート積層体100をポリマーのガラス転移温度(Tg)未満の温度で加工するのがよい。これにより、硬化物2が高い固定力を発揮している状態で、セラミックグリーンシート積層体100をカットすることができる。
【0046】
(iv)の工程では、硬化物2をポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度にして軟化させる。その結果、硬化物2の固定力が低下するので、
図1(c)に示すように、複数の生チップ110を硬化物2から容易に剥離することができ、歩留りよく複数の生チップ110を得ることができる。硬化物2をポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度にするには、例えば、ヒータなどの加熱手段を使用すればよい。
【0047】
得られた生チップ110を焼成すると、セラミックチップを得ることができる。また、得られたセラミックチップの端面に外部電極を形成すると、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0048】
以上、本発明に係る実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【0049】
例えば、上述の実施形態における被加工物の加工方法では、被加工物がセラミックグリーンシート積層体100であるが、本実施形態の被加工物の加工方法は、セラミックグリーンシート積層体100の他、例えば、セラミックインダクタ、セラミックバリスタなどの他のセラミック部品を製造するときの被加工物に対しても適用することができる。
【0050】
また、被加工物の加工方法における(iii)の工程では、ナイフ300によるカットに代えて、例えば、回転刃によるカットにしてもよい。
【0051】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
<合成例>
まず、フラスコ上部に窒素導入管、温度計、冷却管およびUV照射ヘッドを備える500mlのフラスコに、第1モノマーとしてアクリロイルモルフォリンを75g、第2モノマーとしてn−ブチルアクリレートを25g、および光重合開始剤としてBASFジャパン社製の「IRGACURE 500」を2gの割合で投入し、混合液を得た。
【0053】
次に、フラスコを湯浴に浸けて混合液を40℃に加温し、150rpmで撹拌しながら30分間窒素バブリングし、混合液内の酸素を除去した。そして、混合液に対してフラスコ上部のUV照射ヘッドからUVを照射しながらモノマーをバルク重合した。
【0054】
バルク重合の条件は、以下のとおりである。
重合温度:40℃
重合時間:2分
UVの強度:40mW/cm
2(365nm)
【0055】
バルク重合後、フラスコにn−ブチルアクリレートを100gの割合でさらに投入し、第1モノマーであるアクリロイルモルフォリンと、第2モノマーであるn−ブチルアクリレートと、アクリロイルモルフォリンおよびn−ブチルアクリレートの共重合体であるアクリル系のポリマーと、を含有し、UV硬化性を有し、且つ、液状である、粘着剤組成物を得た。
【0056】
得られた粘着剤組成物について、ポリマーのガラス転移温度(Tg)および重量平均分子量、含有量(ポリマーの含有量および第1、第2モノマーの合計含有量)、粘着剤組成物の粘度を測定した。各々の測定結果および測定方法は、以下のとおりである。
【0057】
ポリマーのガラス転移温度(Tg):100℃
ポリマーの重量平均分子量:200万
ポリマーの含有量:18重量%
第1、第2モノマーの合計含有量:82重量%
粘着剤組成物の粘度:800mPa・s
【0058】
(ガラス転移温度(Tg))
サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)社製の動的粘弾性測定装置「HAAKE MARSIII」を使用して、20Hz、5℃/分、−100〜400℃の昇温過程でtanδを測定し、得られたtanδのピーク温度からガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0059】
(重量平均分子量)
GPCによって測定し、得られた測定値を標準ポリスチレン換算して得た。GPCの測定溶媒には、THFを使用した。
【0060】
(含有量)
上述した重量平均分子量の測定結果において、ポリマー分とモノマー分との検出面積比から算出した。
【0061】
(粘度)
以下の測定条件で測定した。
測定装置:B型粘度計
ローター:No.3
回転数:12rpm
測定温度:23℃
【0062】
得られた粘着剤組成物に多官能アクリレートを添加した。添加した多官能アクリレートの組成および添加量は、以下のとおりである。
組成:新中村化学工業社製の1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「NKエステルA−HD−N」
添加量:第1モノマー、第2モノマーおよびポリマーの合計100重量部に対して、1重量部
【0063】
<比較合成例>
アクリロイルモルフォリンの割合を75gに代えて25gにし、n−ブチルアクリレートの割合を25gに代えて75gにした以外は、上述した合成例と同様にしてモノマーをバルク重合した。
【0064】
バルク重合後、フラスコにn−ブチルアクリレートを100gの割合でさらに投入し、第1モノマーであるアクリロイルモルフォリンと、第2モノマーであるn−ブチルアクリレートと、アクリロイルモルフォリンおよびn−ブチルアクリレートの共重合体であるアクリル系のポリマーと、を含有し、UV硬化性を有し、且つ、液状である、粘着剤組成物を得た。
【0065】
得られた粘着剤組成物について、上述した合成例と同様にして、ポリマーのガラス転移温度(Tg)および重量平均分子量、含有量(ポリマーの含有量および第1、第2モノマーの合計含有量)、粘着剤組成物の粘度を測定した。各々の測定結果は、以下のとおりである。
【0066】
ポリマーのガラス転移温度(Tg):30℃
ポリマーの重量平均分子量:200万
ポリマーの含有量:20重量%
第1、第2モノマーの合計含有量:80重量%
粘着剤組成物の粘度:1000mPa・s
【0067】
得られた粘着剤組成物に上述した合成例と同様にして多官能アクリレートを添加した。
【実施例】
【0068】
合成例で得た多官能アクリレートを添加した粘着剤組成物を使用して、80℃固定性、120℃剥離性および凹凸追従性を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0069】
<80℃固定性>
まず、粘着剤組成物をフィルム状の基材の片面にアプリケーターを使用して厚さ5milで塗工した。
【0070】
使用したフィルム状の基材は、以下のとおりである。
基材:片面をコロナ処理したユニチカ社製の厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「エンブレットSB−100」
【0071】
次に、塗膜の表面にフィルム状の被着体を積層し、被着体の上方からUVを照射して第1試験片を得た。
【0072】
使用したフィルム状の被着体は、以下のとおりである。
被着体:表面未処理の厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
【0073】
UV照射条件は、以下のとおりである。
UV照射装置:アズワン社製の「HLR100T−2/HB100A−1」
UV照射量:1500mJ/cm
2
【0074】
得られた第1試験片について、80℃の雰囲気温度における180°剥離強度をJIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、第1試験片を80℃の雰囲気温度で20分間静置した後、ロードセルを用いて300mm/分の速度で被着体を180°剥離した。そして、この測定結果から、80℃固定性を評価した。評価基準は、以下のように設定した。
○:180°剥離強度が、1.0N/25mm以上である。
△:180°剥離強度が、0.5N/25mm以上1.0N/25mm未満である。
×:180°剥離強度が、0.5N/25mm未満である。
【0075】
<120℃剥離性>
まず、上述した80℃固定性の評価と同様にして第1試験片を得た。次に、第1試験片を80℃に代えて120℃の雰囲気温度で20分間静置した以外は、上述した80℃固定性の評価と同様にして被着体を180°剥離した。そして、この測定結果から、120℃剥離性を評価した。評価基準は、以下のように設定した。
○:180°剥離強度が、0.3N/25mm以下である。
△:180°剥離強度が、0.3N/25mmよりも大きく、かつ1.0N/25mm以下である。
×:180°剥離強度が、1.0N/25mmよりも大きい。
【0076】
<凹凸追従性>
まず、表面に深さ280μmおよび幅1000μmの溝を有するガラス板を準備した。次に、粘着剤組成物をガラス板の表面における溝およびその周辺に滴下し、その上に80℃固定性の評価で使用したのと同じ被着体を積層し、被着体の上方から80℃固定性の評価と同じ条件でUVを照射して第2試験片を得た。
【0077】
得られた第2試験片を150℃の雰囲気温度で20分間静置した後、ロードセルを用いて硬化物とガラス板との界面で180°剥離した。そして、硬化物に転写された溝の形状を電子顕微鏡(倍率:500倍)で観察し、粘着剤組成物の凹凸追従性を評価した。評価基準は、以下のように設定した。
○:溝と実質的に同じ形状が硬化物に転写されている。
×:溝と実質的に同じ形状が硬化物に転写されていない。
【0078】
[比較例]
比較合成例で得た多官能アクリレートを添加した粘着剤組成物を使用した以外は、上述した実施例と同様にして80℃固定性、120℃剥離性および凹凸追従性を評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から明らかなように、実施例は、80℃固定性、120℃剥離性および凹凸追従性に優れているのがわかる。