特許第6797747号(P6797747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000004
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000005
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000006
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000007
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000008
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000009
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000010
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000011
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000012
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000013
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000014
  • 特許6797747-接眼光学系及びそれを有する観察装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797747
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】接眼光学系及びそれを有する観察装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 25/00 20060101AFI20201130BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G02B25/00 A
   G02B13/18
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-93784(P2017-93784)
(22)【出願日】2017年5月10日
(65)【公開番号】特開2018-189879(P2018-189879A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】匠 藍
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−068129(JP,A)
【文献】 特開2016−224239(JP,A)
【文献】 特開昭61−285418(JP,A)
【文献】 特開平05−313073(JP,A)
【文献】 特開平11−133316(JP,A)
【文献】 特開2002−048985(JP,A)
【文献】 特開2007−264179(JP,A)
【文献】 特開2014−074814(JP,A)
【文献】 特開2014−074816(JP,A)
【文献】 特開2016−224238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から観察側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、第3レンズ、正の屈折力の第4レンズより構成される接眼光学系であって、
前記第1レンズ乃至前記第4レンズの各レンズの材料のd線における屈折率の平均値をNda、前記第1レンズの観察側のレンズ面の曲率半径をL1R2、前記第2レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をL2R1、前記第3レンズと前記第4レンズの合成焦点距離をf34、前記接眼光学系の焦点距離をf、前記第1レンズと前記第2レンズの光軸上の間隔をd3、前記第2レンズと前記第3レンズの光軸上の間隔をd5とするとき、
1.559≦Nda≦1.730
5.2≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0
0.68≦f34/f≦1.25
0.00≦d5/d3≦0.75
なる条件式を満たすことを特徴とする接眼光学系。
【請求項2】
0.80≦f34/f≦1.25
0.0≦d5/d3≦0.6
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の接眼光学系。
【請求項3】
物体側から観察側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、第3レンズ、正の屈折力の第4レンズより構成される接眼光学系であって、
前記第1レンズ乃至前記第4レンズの各レンズの材料のd線における屈折率の平均値をNda、前記第1レンズの観察側のレンズ面の曲率半径をL1R2、前記第2レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をL2R1、前記第3レンズと前記第4レンズの合成焦点距離をf34、前記接眼光学系の焦点距離をf、前記第1レンズと前記第2レンズの光軸上の間隔をd3、前記第2レンズと前記第3レンズの光軸上の間隔をd5とするとき、
1.520≦Nda≦1.730
−5.2≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0
0.77≦f34/f≦1.30
0.00≦d5/d3≦0.75
なる条件式を満たすことを特徴とする接眼光学系。
【請求項4】
0.0≦d5/d3≦0.6
なる条件式を満足することを特徴とする請求項に記載の接眼光学系。
【請求項5】
前記第3レンズは正の屈折力であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の接眼光学系。
【請求項6】
前記第1レンズは両凸形状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の接眼光学系。
【請求項7】
前記第2レンズは物体側に凹面を向けたメニスカス形状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の接眼光学系。
【請求項8】
前記第3レンズは物体側に凹面を向けたメニスカス形状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の接眼光学系。
【請求項9】
前記第4レンズは物体側に凹面を向けたメニスカス形状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の接眼光学系。
【請求項10】
画像を表示する画像表示素子と、該画像表示素子の画像表示面に表示される画像を観察するために用いられる請求項1乃至のいずれか一項に記載の接眼光学系を有することを特徴とする観察装置。
【請求項11】
前記画像表示素子の画像表示面の対角線長の半分をPNとするとき、
0.25<PN/f<0.55
なる条件式を満たすことを特徴とする請求項10に記載の観察装置。
【請求項12】
前記画像表示面から前記第1レンズの画像表示面側のレンズ面までの光軸上の距離をd1とするとき、
0.0≦d1/f<0.8
なる条件式を満たすことを特徴とする請求項10又は11に記載の観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接眼光学系及びそれを有する観察装置に関し、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、放送用カメラに用いられる電子ビューファインダーにおいて、画像表示素子の画像表示面に表示される画像を観察するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラ、スチルカメラ等の撮像装置(カメラ)に用いられている電子ビューファインダー(観察装置)においては、液晶画面等に表示した画像を拡大観察する為に接眼光学系が用いられている。電子ビューファインダーにおいて、画像表示面を視認性が良く、見やすくするには、観察倍率が高く、しかもアイレリーフが長いこと等が必要になってくる。
【0003】
更に観察装置の小型化の要望より、観察装置に用いる画像表示素子は小さな寸法(例えば対角長で20mm以下)であることが要求されている。
【0004】
従来、観察倍率の高い接眼光学系が種々と提案されている(特許文献1乃至3)。
【0005】
特許文献1では、画像表示素子側より観察側に向かって、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、正又は負の屈折力の第3レンズ、正の屈折力の第4レンズよりなる接眼光学系を開示している。
【0006】
特許文献1では、全系の小型化を図りつつ、諸収差を良好に補正するために、少なくとも2枚の正の屈折力のレンズ、少なくとも1枚の負の屈折力のレンズ、そして回折光学素子を用いている。
【0007】
また、特許文献2では、負の屈折力のレンズ群と、正の屈折面のレンズ群よりなる内視鏡用接眼レンズを開示している。
【0008】
また、特許文献3では、画像表示素子側より観察側へ順に、両凸形状で、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、正の屈折力の第3レンズと、正の屈折力の第4レンズからなる接眼光学系を開示している。特許文献3では高い観察倍率を有しつつ、諸収差が良好に補正された接眼光学系を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−066522号公報
【特許文献2】特開平05−313073号公報
【特許文献3】特開2015−075713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
観察装置に用いられる接眼光学系において、観察倍率が高く、しかもアイレリーフを長く確保するには、接眼光学系のレンズ構成及び各レンズの屈折力等を適切に設定することが重要になってくる。この他、小型の画像表示面を用いるときは、画像表示面の大きさに対する接眼光学系の屈折力の比等を適切に設定することが重要になってくる。
【0011】
特許文献1に開示された画像表示装置用の接眼レンズは、曲面パネルや回折光学素子、高屈折率材料を使用することによって、高い観察倍率を確保しつつ、諸収差を補正している。そのため光学性能や仕様は確保しやすいが、製造が困難になる傾向があった。
【0012】
特許文献2に開示されている内視鏡用接眼レンズは、高屈折率材料のレンズと非球面レンズを使用することによってレンズ枚数を減らし、高い観察倍率を確保している。しかしながら、高屈折率の材料を多用しているため、製造が難しくなる傾向があった。
【0013】
特許文献3に開示された接眼光学系では比較的低屈折率の材料を使用し、高い観察倍率を確保している。しかし、高倍率化のために光線を跳ね上げる第1レンズ面と第2レンズ面のレンズ面の曲率がきつくなり、急激に光線が変化する形状をしている。このために像面湾曲が発生しやすい。
【0014】
また、非球面を多用することで諸収差の補正を容易にしているため、製造が複雑になる傾向があった。
【0015】
本発明は、諸収差を良好に抑え高い光学性能を確保しつつ、製造が容易でしかも高視野の観察が容易な接眼光学系の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の接眼光学系は、物体側から観察側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、第3レンズ、正の屈折力の第4レンズより構成される接眼光学系であって、前記第1レンズ乃至前記第4レンズの各レンズの材料のd線における屈折率の平均値をNda、前記第1レンズの観察側のレンズ面の曲率半径をL1R2、前記第2レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をL2R1、前記第3レンズと前記第4レンズの合成焦点距離をf34、前記接眼光学系の焦点距離をf、前記第1レンズと前記第2レンズの光軸上の間隔をd3、前記第2レンズと前記第3レンズの光軸上の間隔をd5とするとき、
1.559≦Nda≦1.730
5.2≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0
0.68≦f34/f≦1.25
0.00≦d5/d3≦0.75
なる条件式を満たすことを特徴としている。
また、本発明の他の接眼光学系は、物体側から観察側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、第3レンズ、正の屈折力の第4レンズより構成される接眼光学系であって、前記第1レンズ乃至前記第4レンズの各レンズの材料のd線における屈折率の平均値をNda、前記第1レンズの観察側のレンズ面の曲率半径をL1R2、前記第2レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をL2R1、前記第3レンズと前記第4レンズの合成焦点距離をf34、前記接眼光学系の焦点距離をf、前記第1レンズと前記第2レンズの光軸上の間隔をd3、前記第2レンズと前記第3レンズの光軸上の間隔をd5とするとき、
1.520≦Nda≦1.730
−5.2≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0
0.77≦f34/f≦1.30
0.00≦d5/d3≦0.75
なる条件式を満たすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、諸収差を良好に抑え高い光学性能を確保しつつ、製造が容易でしかも高視野の観察が容易な接眼光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る接眼光学系のレンズ構成を示す断面図
図2】本発明の実施例1に係る接眼光学系の各収差図
図3】本発明の実施例2に係る接眼光学系のレンズ構成を示す断面図
図4】本発明の実施例2に係る接眼光学系の各収差図
図5】本発明の実施例3に係る接眼光学系のレンズ構成を示す断面図
図6】本発明の実施例3に係る接眼光学系の各収差図
図7】本発明の実施例4に係る接眼光学系のレンズ構成を示す断面図
図8】本発明の実施例4に係る接眼光学系の各収差図
図9】本発明の実施例5に係る接眼光学系のレンズ構成を示す断面図
図10】本発明の実施例5に係る接眼光学系の各収差図
図11】本発明の実施例6に係る接眼光学系のレンズ構成を示す断面図
図12】本発明の実施例6に係る接眼光学系の各収差図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の接眼光学系及びそれを有する観察装置について説明する。本発明の接眼光学系は、画像表示面に表示された画像を観察するための接眼光学系である。接眼光学系は画像表示面側から観察側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ、負の屈折力の第2レンズ、第3レンズ、正の屈折力の第4レンズより構成されている。
【0020】
図1は本発明の接眼光学系の実施例1のレンズ断面図である。図2は本発明の接眼光学系の実施例1の視度が−1.0ディオプター(標準視度)における収差図である。
【0021】
図3は本発明の接眼光学系の実施例2のレンズ断面図である。図4は本発明の接眼光学系の実施例2の視度が−1.0ディオプターにおける収差図である。
【0022】
図5は本発明の接眼光学系の実施例3のレンズ断面図である。図6は本発明の接眼光学系の実施例3の視度が−1.0ディオプターにおける収差図である。
【0023】
図7は本発明の接眼光学系の実施例4のレンズ断面図である。図8は本発明の接眼光学系の実施例4の視度が−1.0ディオプターにおける収差図である。
【0024】
図9は本発明の接眼光学系の実施例5のレンズ断面図である。図10は本発明の接眼光学系の実施例5の視度が−1.0ディオプターにおける収差図である。
【0025】
図11は本発明の接眼光学系の実施例6のレンズ断面図である。図12は本発明の接眼光学系の実施例6の視度が−1.0ディオプターにおける収差図である。
【0026】
各実施例の接眼光学系は、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置の電子ビューファインダー(観察装置)に用いられる。レンズ断面図において左方は画像表示面側、右方は観察側(射出瞳側)である。レンズ断面図においてL0は接眼光学系である。Liは第iレンズである。IPは液晶又は有機EL等よりなる画像表示素子の画像表示面である。EPは観察のための観察面(アイポイント)(射出瞳)である。CG1はカバーガラスである。
【0027】
各収差図のうち球面収差図において、実線のdはd線(波長587.6nm)、点線のFはF線(波長486.1nm)を示す。非点収差図においてΔSdはd線のサジタル像面、ΔMdはd線のメリディオナル像面を示す。ΔSFはF線のサジタル像面、ΔMFはF線のメリディオナル像面を示す。歪曲はd線について示している。倍率色収差はF線について示している。Hは画像表示面の対角線長の半分(最大像高)である。数値は後述する数値データをmm単位で表したときの値である。
【0028】
画像表示素子の画像表示面の対角線長が約20mm以下の小型の画像表示面(表示パネル)を大きな観察視野(視野角約30度以上)で観察するためには、接眼光学系全体で強い正の屈折力(パワー)を持つ必要がある。そのためには、接眼光学系を構成する各レンズに強い正の屈折力、負の屈折力が必要になる。そうすると多く場合、像面湾曲、倍率色収差が増大し、これらの諸収差の補正が難しくなる。
【0029】
そこで、各実施例に係る接眼光学系では、各レンズ断面図に示すように、画像表示面IP側(物体側)より観察面(アイポイント)EP側に順に、4つのレンズ群より構成している。具体的には、正の屈折力の第1レンズL1、負の屈折力の第2レンズL2、正または負の屈折力の第3レンズL3、正の屈折力の第4レンズL4によって構成している。
【0030】
各実施例において観察面EPは、画像表示面IPの最周辺からの光線が観測者の瞳を通過する範囲内であれば光軸方向に移動しても良い。また、レンズ最終面(第4レンズL4の観察側の面)から観察面EPまでの距離をアイレリーフとする。カバーガラスは画像表示面IPやレンズを保護するプレートであり、画像表示面IPからレンズの間やレンズと観察面EPの間に設けても良いし、また必ずしも設置しなくても良い。
【0031】
本発明の接眼レンズL0において、第1レンズL1乃至第4レンズL4の各レンズの材料のd線における屈折率の平均値をNdaとする。第1レンズL1の観察側のレンズ面の曲率半径をL1R2、第2レンズL2の画像表示面側のレンズ面の曲率半径をL2R1とする。第3レンズL3と第4レンズL4の合成焦点距離をf34とする。接眼光学系の焦点距離をfとする。
【0032】
このとき、
1.520≦Nda≦1.730 ・・・(1)
−15.0≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0 ・・・(2)
0.68≦f34/f≦1.30 ・・・(3)
なる条件式を満たす。
【0033】
次に前述の各条件式の技術的意味について説明する。
【0034】
条件式(1)は、第1レンズL1乃至第4レンズL4の各レンズの材料のd線における屈折率の平均値を規定している。条件式(1)の上限を超えて、各レンズの材料の屈折率が高くなると、全系のパワーを強くすることが出来、高い観察倍率を得るのが(高視野角化)容易になる。しかしながら、高い屈折率の材料としては、例えばガラス等を多用しなければならず、製造が難しくなる。また、下限値を下回り各レンズの材料の屈折率が低くなると、全系の屈折力が弱くなり、高視野角化するのが困難になる。
【0035】
条件式(2)は、第1レンズL1と第2レンズL2との間で形成される空気レンズの形状を規定している。条件式(2)は高い観察倍率を保ちつつ像面湾曲を良好に補正する為のものである。各実施例では高い観察倍率を得るために第1レンズL1から射出される光線を、第2レンズL2で跳ね上げている。この条件式(2)の、下限値を下回ると第1レンズL1と第2レンズL2間で光線の曲がりが急になりすぎる為、諸収差の補正、特に像面湾曲の収差が困難になる。上限値を上回ると光線の跳ね上げが不十分になり、高い観察倍率を得るのが困難になる。
【0036】
条件式(3)は、第3レンズL3と第4レンズL4とからなる合成系の合成焦点距離と全系の焦点距離を規定している。条件式(3)の上限を越えると合成系の正の屈折力が弱くなり高い観察倍率を得るのが困難になる。条件式(3)の下限値を下回ると、合成系の正の屈折力が強くなり、十分な長さのアイレリーフを確保するのが困難になり、画像表示面の良好なる観察が困難になる。
【0037】
好ましくは条件式(1)乃至(3)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
1.550≦Nda≦1.730 ・・・(1a)
−12.0≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0・・・(2a)
0.68≦f34/f≦1.25 ・・・(3a)
更に好ましくは条件式(1a)乃至(3a)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
1.550≦Nda≦1.700 ・・・(1b)
−10.0≦(L2R1+L1R2)/(L2R1−L1R2)≦0.0・・・(2b)
0.70≦f34/f≦1.25 ・・・(3b)
以上のように、本発明によれば高い観察倍率で高い光学性能を有した電子ビューファインダーに最適な接眼光学系を得ることができる。
【0038】
各実施例において更に好ましくは次の条件式のうち1つ以上を満足するのが良い。第1レンズL1と第2レンズL2の光軸上の間隔をd3、第2レンズ群L2と第3レンズL3の光軸上の間隔をd5とする。画像を表示する画像表示素子と、画像表示素子の画像表示面IPに表示される画像を観察するために用いられる接眼光学系を有する観察装置においては、画像表示素子の画像表示面の対角線長の半分をPNとする。画像表示面IPから第1レンズL1の画像表示面側のレンズ面までの光軸上の距離をd1とする。
【0039】
このとき次の条件式のうち1つ以上を満足するのが良い。
0.00≦d5/d3≦0.75 ・・・(4)
0.25<PN/f<0.55 ・・・(5)
0.0≦d1/f<0.8 ・・・(6)
次に前述の各条件式の技術的意味について説明する。条件式(4)は第2レンズL2と第3レンズL3の間隔に対する第1レンズL1と第2レンズL2の間隔の比を規定している。条件式(4)は大きな観察倍率を得つつ、倍率色収差を良好に補正するためのものである。
【0040】
条件式(4)の上限値を超えて、第2レンズL2と第3レンズL3の間隔が大きくなると、倍率色収差の補正が困難になる。また、第1レンズL1と第2レンズL2の間隔が狭くなると第2レンズL2へ入射する光束の光線角がきつくなり、特に像高の高いところでの像面湾曲が増大してくる。下限値を下回り、第1レンズL1と第2レンズL2の間隔が広がると、第2レンズに入射する光線高さが低くなる為、光線を跳ね上げ高い観察視野倍率を得ることが困難になる。
【0041】
条件式(5)は、画像表示素子の画像表示面の対角線長の半分と全系の焦点距離の比を規定している。条件式(5)は長いアイレリーフを確保しつつ、高い観察倍率を確保するためのものである。この条件式(5)の上限を超えて全系の焦点距離が短くなると、高い観察倍率には有利だが、高い光学性能の確保が難しくなる。条件式(5)の下限値を下回ると、全系の屈折力が弱くなり、高い観察倍率を確保することが難しくなる。
【0042】
条件式(6)は、画像表示素子の画像表示面から第1レンズL1の画像表示面側のレンズ面までの光軸上の長さと、全系の焦点距離を規定する。上限を越えると、画像表示面から第1レンズの画像表示面側のレンズ面までの間隔が広がるため、全系の小型化が困難になる。
【0043】
好ましくは条件式(4)乃至(6)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.0≦d5/d3≦0.6 ・・・(4a)
0.25<PN/f<0.50 ・・・(5a)
0.00≦d1/f<0.60 ・・・(6a)
更に好ましくは条件式(4a)乃至(6a)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.0≦d5/d3≦0.5 ・・・(4b)
0.25<PN/f<0.45 ・・・(5b)
0.00≦d1/f<0.55 ・・・(6b)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0044】
以下に本発明の各実施例に対応する数値データを示す。数値データにおいて、ωは視度が−1ディオプター(標準視度)時の見かけ視野(半画角)を示す。画像表示面IPから観察側EPへ順に「ri」は第i番目の面の近軸曲率半径を示す。「di」は画像表示面IPから順に第i番目の面と第i+1番目の面との間の軸上面間隔を示す。さらに、「Ndi」は第i番目の材料のd線(波長=578.6nm)に対する屈折率を示し、「νdi」は第i番目の材料のd線に対するアッベ数を示す。r0は画像表示面IP、r9、r10はカバーガラスである。
【0045】
なお、数値データでは、記載されている長さの単位は、特記の無い場合[mm]が使われている。ただし、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は[mm]に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが出来る。なお、数値データにおいて近軸曲率半径の欄に「*」の添え字が書かれている面は次の数1式によって定義される非球面形状である。
【0046】
【数1】
【0047】
なお、(数1式)において、xはレンズ面の頂点からの光軸方向の距離、hは光軸と垂直な方向の高さ、Rはレンズ面の頂点での近軸曲率半径、kは円錐定数、c2、c4、c6は多項式係数である。非球面係数において、「E−i」は10を底とする指数表現、すなわち「10−i」を表している。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0049】

[数値データ1]

全体緒元
焦点距離 画像表示面対角長 2ω[°]
18.97 12.6 35.0

レンズデータ
面 近軸曲率半径 軸上面間隔 屈折率(Nd) アッベ数(νd)
r0 表示パネル d1 可変
r1 553.90 d2 3.30 1.821 42.7
*r2 -14.37 d3 2.84
*r4 -7.18 d4 1.65 1.636 23.9
r5 -50.31 d5 0.62
*r6 -31.65 d6 2.63 1.592 67.0
r7 -16.79 d7 0.22
r8 50.42 d8 6.50 1.535 55.7
*r9 -13.05 d9 可変
r10 0.00 d10 0.80 1.492 57.4
r11 0.00 d11 23.00
EP

非球面係数
k C2 C4 C6 C8
r2 0.00E+00 0.00E+00 3.88E-05 3.65E-08 0.00E+00
r3 -8.22E-01 0.00E+00 -9.72E-05 -9.34E-07 0.00E+00
r5 0.00E+00 0.00E+00 1.10E-05 0.00E+00 0.00E+00
r8 -2.30E+00 0.00E+00 -4.87E-05 2.14E-07 -2.73E-10

可変間隔
視度[dpt] 0 -3 +1 -1
d1 7.76 6.66 8.15 7.42
d9 1.51 2.60 1.12 1.85


[数値データ2]

全体緒元
焦点距離 画像表示面対角長 2ω[°]
13.37 9.9 40.6

レンズデータ
面 近軸曲率半径 軸上面間隔 屈折率(Nd) アッベ数(νd)
r0 表示パネル d1 可変
*r1 13.421 d2 6.14 1.535 56.0
*r2 -8.334 d3 2.15
*r3 -5.637 d4 1.48 1.636 23.9
r4 -15.213 d5 0.17
r5 -34.833 d6 2.11 1.535 56.0
r6 -17.151 d7 0.15
r7 -152.436 d8 3.31 1.535 56.0
*r8 -11.013 d9 可変
r9 0.000 d10 0.70 1.492 57.4
r10 0.000 d11 18.00
EP

非球面係数
k C2 C4 C6
r1 -6.34E+00 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
r2 -1.68E+00 0.00E+00 -9.39E-05 0.00E+00
r3 -9.67E-01 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
r8 -2.34E+00 0.00E+00 3.69E-06 3.31E-07

可変間隔
視度[dpt] 0 -3 +1 -1
d1 5.74 5.14 5.91 5.55
d9 0.67 1.26 0.50 0.86


[数値データ3]

全体緒元
焦点距離 画像表示面対角長 2ω[°]
17.96 9.9 29.1

レンズデータ
面 近軸曲率半径 軸上面間隔 屈折率(Nd) アッベ数(νd)
r0 表示パネル d1 可変
r1 24.08 d2 4.02 1.532 55.8
*r2 -9.64 d3 3.62
*r3 -5.70 d4 1.50 1.636 23.9
r4 -35.58 d5 1.30
r5 -16.99 d6 3.32 1.532 55.8
*r6 -9.80 d7 0.33
r7 39.45 d8 3.23 1.532 55.8
*r8 -16.38 d9 可変
r9 0.00 d10 1.00 1.516 64.1
r10 0.00 d11 21.00
EP

非球面係数
k C2 C4 C6
r2 0.00E+00 0.00E+00 2.28E-04 0.00E+00
r3 -4.72E-01 0.00E+00 1.67E-04 0.00E+00
r6 0.00E+00 0.00E+00 1.67E-05 0.00E+00
r8 0.00E+00 0.00E+00 6.95E-05 5.15E-08

可変間隔
視度[dpt] 0 -3 +1 -1
d1 5.95 4.88 6.24 5.59
d9 0.79 1.86 0.50 1.15


[数値データ4]

全体緒元
焦点距離 画像表示面対角長 2ω[°]
16.50 9.9 32.0

レンズデータ
面 近軸曲率半径 軸上面間隔 屈折率(Nd) アッベ数(νd)
r0 表示パネル d1 可変
r1 21.75 d2 4.95 1.535 55.7
*r2 -10.27 d3 2.39
*r3 -5.62 d4 1.75 1.636 23.9
r4 -18.39 d5 0.22
*r5 -22.78 d6 2.62 1.535 55.7
r6 -11.84 d7 0.22
r7 105.20 d8 3.87 1.535 55.7
*r8 -13.85 d9 可変
r9 0.00 d10 0.80 1.492 57.4
r10 0.00 d11 21.00
EP

非球面係数
k C2 C4 C6 C8
r2 0.00E+00 0.00E+00 1.57E-04 8.64E-07 0.00E+00
r3 -7.62E-01 0.00E+00 8.52E-05 0.00E+00 0.00E+00
r5 0.00E+00 0.00E+00 -7.94E-05 0.00E+00 0.00E+00
r8 0.00E+00 0.00E+00 1.27E-04 -3.08E-07 3.21E-09

可変間隔
視度[dpt] 0 -3 +1 -1
d1 7.10 6.25 7.35 6.83
d9 1.05 1.90 0.80 1.32


[数値データ5]

全体緒元
焦点距離 画像表示面対角長 2ω[°]
25.22 16.8 35.1

レンズデータ
面 近軸曲率半径 軸上面間隔 屈折率(Nd) アッベ数(νd)
r0 表示パネル d1 可変
r1 49.56 d2 6.43 1.535 55.7
*r2 -17.25 d3 4.39
*r3 -8.84 d4 1.95 1.636 23.9
r4 -30.05 d5 0.22
r5 266.69 d6 5.26 1.531 55.9
r6 -27.75 d7 0.22
r7 235.81 d8 5.82 1.535 55.7
*r8 -18.98 d9 可変
r9 0.00 d10 0.80 1.492 57.4
r10 0.00 d11 30.00
EP

非球面係数
k C2 C4 C6
r1 0.00E+00 0.00E+00 2.91E-05 0.00.E+00
r2 -1.33E+00 0.00E+00 -1.12E-04 0.00.E+00
r8 -2.17E+00 0.00E+00 1.01E-05 1.04E-08

可変間隔
視度[dpt] 0 -3 +1 -1
d1 10.39 8.38 11.02 9.74
d9 2.04 4.05 1.41 2.69



[数値データ6]

全体緒元
焦点距離 画像表示面対角長 2ω[°]
20.46 12.6 33.1

レンズデータ
面 近軸曲率半径 軸上面間隔 屈折率(Nd) アッベ数(νd)
r0 表示パネル d1 可変
r1 59.97 d2 5.95 1.694 53.2
*r2 -11.68 d3 2.38
*r3 -6.74 d4 1.67 1.636 23.9
r4 -28.97 d5 0.00
r5 -28.97 d6 3.09 1.535 56.0
r6 -35.80 d7 0.25
r7 61.73 d8 5.49 1.535 56.0
*r8 -12.03 d9 可変
r9 0.00 d10 0.80 1.492 57.4
r10 0.00 d11 24.00
EP

非球面係数
k C2 C4 C6
r2 0.00E+00 0.00E+00 1.15E-04 2.75E-07
r3 -9.93E-01 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
r8 -5.80E-01 0.00E+00 6.48E-05 8.67E-08

可変間隔
視度[dpt] 0 -3 +1 -1
d1 9.47 8.06 9.85 9.01
d9 0.87 2.28 0.50 1.34
【0050】
【表1】
【符号の説明】
【0051】
L0 接眼光学系 L1 第1レンズ L2 第2レンズ L3 第3レンズ
L4 第4レンズ IP 画像表示面 EP 観察面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12