【実施例1】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施例について図を用いて説明する。
【0017】
図1は本実施形態における加湿装置の一例を示す外観斜視図であり、
図2は加湿装置の一例を示す縦断面図である。本体1の外装を構成する本体ケース2の天面には、加湿空気を吹き出す吹出口3、操作ボタンを備えるとともに運転状態を表示する操作表示部4、給水タンク(図示せず)を本体1に着脱する際に開閉するタンクカバー6が設けられている。
【0018】
本体1側面の下部には挿入口7が設けられ、この挿入口7を介して本体1の下部には水槽部8を収容する空間となる水槽収容部9が形成されており、水槽部8は挿入口7から水槽収容部9に挿脱自在に装着される。水槽部8には給水タンクから供給された水を吸水して湿潤する気化フィルタ10が設けられている。
【0019】
気化フィルタ10の上部には、モータ11とシロッコファン12からなる送風機13が設けられており、送風機13の駆動により本体1背面の吸込口14から気化フィルタ10を通って本体1天面の吹出口3にいたる通風路15に送風が行われる。この送風により、吸込口14から取り込まれた室内の空気は、水槽部8内の水を吸い上げて湿潤している気化フィルタ10を通過する際に加湿空気となり、吹出口3より室内に放出されることで空気が加湿される。また、気化フィルタ10を挟んで挿入口7と相対する通風路15には、気化フィルタ10に送風される空気を加熱する温風用ヒータ16が配置されている。
【0020】
通風路15において、吸込口14から本体1内に取り入れられる空気は本体1に対して略水平方向に流入し、温風用ヒータ16に向かって通風路15を下方に流下する。つまり、吸込口14における空気の流れと、温風用ヒータ16における空気の流れとが異なる方向となっており、空気の流れは通風路15において屈曲している。
【0021】
図3は気化フィルタを設置した状態における水槽部の上面図である。水槽部8は、底面より立設する仕切板17によって、気化フィルタ10が設置される気化フィルタ収容部18と、給水タンクが装着される給水タンク収容部19とに区画されている。
【0022】
図4は加湿装置の背面側における内部斜視図である。仕切板17は、水槽部8が本体1に装着されると本体ケース2の内側部材2aと当接するようになっており、これにより通風路15を規定する風路規定部材として作用する。
【0023】
水槽部8を本体1から取り外した状態においては、水槽収容部9が挿入口7を介して本体1の外部と連通しているため、通風路15は本体1内で閉じられた経路にはなっていない。水槽部8を本体1に装着すると、挿入口7が閉塞され、さらに仕切板17が本体ケース2の内側部材2aに当接して通風路15が形成される。そして、仕切板17によって区画された水槽部8のうち、気化フィルタ収容部18が通風路15の一部を構成する。
【0024】
給水タンク収容部19には、水槽部8の水位に応じて回動するフロート20が設けられ、水槽部8の壁面を挟んでフロート20に対向する位置には、フロート20を検知してON/OFFの信号を出力するリードスイッチ(図示せず)が設けられている。水槽部8の水位が所定量以下となると、リードスイッチの出力がOFFとなり、送風機13と温風用ヒータ16への通電が停止される。また、水槽部8を本体1から取り外したときにもリードスイッチの出力がOFFとなるため、運転を行うことができないようになっている。
【0025】
図5は本実施形態における温風用ヒータ16の一例を示す構造図である。温風用ヒータ16は、通電によって発熱するコイル状の電熱線30と、この電熱線30を保持するヒータケース31を備えている。そして、ヒータケース31は、電熱線30を巻き回して固定する絶縁体32と、絶縁体32の外郭に設けられた金属製のヒータ枠33から構成されており、ヒータ枠33は通風路15における通風方向(
図2では上下方向)が開放されている。また、絶縁体32は、ヒータ枠33の長手方向に伸びる1枚の横絶縁板32aと、横絶縁板32aと交差しヒータ枠33の短手方向に伸びる複数の縦絶縁板32bを備えており、電熱線30の異常高温を検知する安全装置が横絶縁板32aに取り付けられている。なお、本実施形態の加湿装置においては、安全装置として、サーモスタット22と温度ヒューズ23を備えている。
【0026】
電熱線30の長さは、必要とされる発熱量やヒータ枠33の大きさに合わせて適宜設定される。ただし、電熱線30を短くするとワット密度が高くなり、電熱線30は表面温度が高くなることで赤熱して寿命が短くなってしまうため、電熱線30にはある程度の長さと太さが必要となる。電熱線30を長くしたり、太くしたりすることで電熱線30の表面積が増えるため、ワット密度が低くなり、耐久性を向上させることができる。
【0027】
電熱線30は、絶縁体32に巻き付けられて固定されており、ヒータ枠33内に収めるため複数段に巻き回されている。そのため、温風用ヒータ16には、他と比べて電熱線30が巻き付けられる段数が多い箇所が発生し、この部分は電熱線30の密集度が高い電熱線密集部34となる。安全装置であるサーモスタット22と温度ヒューズ23は、この電熱線密集部34に対向する位置に配設されている。
【0028】
次に、通風路15における空気の流れと温風用ヒータ16の配置について
図6および
図7をもとに説明する。
図6は通風路における空気の流れを示す図であり、
図7は加湿装置内の温風用ヒータの配置を示す上面図である。
【0029】
図6に白矢印で示すように、吸込口14から本体1内に取り入れられる空気は本体1に対して略水平方向に流入し、温風用ヒータ16に向かって通風路15を下方に流下する。つまり、吸込口14に流入する空気の流れと、温風用ヒータ16を通過する空気の流れとが異なる方向となっており、空気の流れは通風路15において屈曲している。図では屈曲部分の内側の空気流をA1、外側の空気流をA2で示している。屈曲部分では内側ほど剥離抵抗が大きく、この剥離抵抗の影響を受けることで内側の空気流A1の流速が遅くなり、外側の空気流A2の流速が速くなる。つまり、通風路15内において空気の流れる方向が変わることで空気の速度が均一ではなくなり、この速度の違いにより温風用ヒータ16を通過する通風量に変化が生じ、通風量はA1<A2となる。
【0030】
温風用ヒータ16は、先に述べたように電熱線密集部34を有している。そして、
図7に示すように、電熱線密集部34が本体1内において吸込口14に対して本体の奥側となるように配置される。図においては、吸込口14と平行な平面F1で温風用ヒータ16を二分割した際に、吸込口14に近い領域(紙面において平面F1の右側)をS1、吸込口14から遠い領域(紙面において平面F1の左側)をS2としているが、「吸込口14に対して本体1の奥側」とは吸込口14から遠い領域S2のことを指す。
【0031】
本実施形態における加湿装置の通風路15は、吸込口14に対して本体1の奥側である領域S2が、空気流の屈曲する部分の外側となるため、内側に比べて空気の流速が速く、通風量が多くなる。したがって、電熱線密集部34を吸込口14に対して本体1の奥側に配置することにより、電熱線密集部34を通過する通風量が低下することが防止され、局部的なヒータ温度の上昇を抑えられることで、安全且つ安定した加湿を行うことができる。
【0032】
ところで、領域S2においても通風路15の端面15a(本体1の内部側の面)付近は通風量が少ないため、電熱線30が端面15aに近づき過ぎると電熱線密集部34の通風量が低下して、電熱線密集部34の周囲の温度が上昇してしまうおそれがある。これを防止するためには、電熱線30と端面15aの間にはある程度の間隔をあけて配置することができ、本実施形態においては、ヒータ枠33と端面15aとの間に間隙15bが設けられている。
【0033】
さらに、電熱線密集部34は風路規定部材(仕切板17)と通風路15を挟んで対向する本体ケース2の側面側に配置することができる。
図7においては、吸込口14と直交する平面F2で温風用ヒータ16を二分割した際に、仕切板17に近い領域(紙面において平面F2の下側)をR1、仕切板17から遠い領域(紙面において平面F2の上側)をR2としているが、「風路規定部材と通風路15を挟んで対向する本体ケース2の側面側」とは、仕切板17から遠い領域R2のことを指す。
【0034】
水槽部8が正しく本体に1装着されていれば、仕切板17が本体ケース2内の内側部材2aに当接し、吸込口14から温風用ヒータ16、気化フィルタ10を通って吹出口3に至る通風路15が形成される。しかし、水槽部8の装着が不完全な状態のまま運転が開始されてしまうと、仕切板17と本体ケース2との間に隙間が生じる。なお、ここでいう不完全な状態とは、リードスイッチ(図示せず)がフロート20を検知しているため、運転を行うことができるものの、水槽部8がわずかに曲がって挿入されたり、水槽部8と本体ケース2との間に異物等が挟まってしまっているために、本体ケース2と仕切板17の間に隙間が生じている状態のことを言う。
【0035】
この隙間から通風路15内に空気が流れ込むことで、温風用ヒータ16を通過する通風量が減少し、通風量の減少によって温風用ヒータ16の温度が上昇してしまうおそれがある。これに対し、電熱線密集部34を仕切板17(風路規定部材)から離れた位置に配置することで、電熱線密集部34が隙間から流れ込む空気による風量の変化を受けにくくなるため、局部的なヒータ温度の上昇をより効果的に抑えることができる。
【0036】
また、上記の理由以外にも、吸込口14がカーテン等で閉塞されたり、気化フィルタ10が目詰まりすることによって、通風量が低下したり、通風量にバラツキが生じたりする。通風量が低下すると本体1内部、特に温風用ヒータ16周辺の温度が高温になり、本体ケース2や気化フィルタ10の変形、変色を引き起こすおそれがあるため、加湿装置には温風用ヒータ16の異常高温を検知する安全装置が設けられている。本実施形態においては、安全装置(サーモスタット22と温度ヒューズ23)は電熱線密集部34と対向して設けられている。電熱線密集部34は他の部分に比べ温度が高くなりやすいため、この部分に対向して安全装置を設けることで、何らかの原因によって通風量が低下した場合に、素早く異常を検知することができ安全性に優れることとなる。
【0037】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、改良等が可能である。例えば、本実施例の加湿装置は通風路内に温風用ヒータを一つ備えているが、温風用ヒータを複数備える構成としてもよく、さらには通風路を複数備え、夫々の通風路に温風用ヒータを備える構成とすることもできる。温風用ヒータを複数備える場合は、少なくとも一つが上記構造を有していればよい。