特許第6797779号(P6797779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797779
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20060101AFI20201130BHJP
   C25B 11/03 20060101ALI20201130BHJP
   C25B 1/10 20060101ALI20201130BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20201130BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20201130BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20201130BHJP
【FI】
   C25B9/00 A
   C25B11/03
   C25B1/10
   C25B15/08 302
   H01M8/02
   H01M4/86 U
   H01M8/04 J
   H01M8/0656
   !H01M8/12 101
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-211275(P2017-211275)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-81939(P2019-81939A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甚目 靖明
(72)【発明者】
【氏名】田中 正幸
(72)【発明者】
【氏名】赤石 直也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】中田 慎二
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/034835(WO,A1)
【文献】 特開2010−065276(JP,A)
【文献】 特表2012−512520(JP,A)
【文献】 特開2012−059694(JP,A)
【文献】 特開平03−053091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−15/08
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、第2の面と、を有し、イオンが移動可能な絶縁性の固体電解質層と、
前記第1の面上に設けられ、ガスが通過可能な流路が内部に設けられ、前記流路の一方の開口端が開く第3の面と、前記流路の他方の開口端が開く第4の面と、前記流路を形成する内壁面と、を有する、陽極及び陰極のうち一方の第1の電極と、
前記第2の面上に設けられた、前記陽極及び前記陰極のうち他方の第2の電極と、
を具備し、
前記流路は、同一又は相似の形状を有するとともに、互いに直交する三方向に互いに連通される、複数の単位通路を有する、
電気化学セル。
【請求項2】
前記流路は、前記複数の単位通路が連続する波形に形成される、請求項1の電気化学セル。
【請求項3】
前記第1の電極は、互いに直交する前記三方向に互いに接続され、前記内壁面の少なくとも一部を含み、前記複数の単位通路を形成する、複数の単位壁を有し、
前記複数の単位通路は、前記複数の単位壁が互いに接続されることで、互いに直交する前記三方向に互いに連通され、
前記複数の単位壁は、互いに同一又は相似の形状を有し、ジャイロイド形状を有する、
請求項1又は請求項2の電気化学セル。
【請求項4】
前記第1の電極は、前記第1の面と交差する第1の方向に積層された複数の層を有し、
前記第1の方向と直交する第2の方向における前記複数の層のうち少なくとも一つの端部は、前記流路の内部へ突出する凸部を形成する、
請求項1の電気化学セル。
【請求項5】
前記第3の面は、前記第1の面が向く方向と交差する第3の方向に向き、
前記第4の面は、前記第1の面が向く方向と交差する第4の方向に向く、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの電気化学セル。
【請求項6】
前記第3の面は、前記第4の面の反対側に位置し、
前記流路は、前記第3の面から前記第4の面に向かう第5の方向に前記第3の面を見た場合に前記第1の電極の向こう側を視認可能とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの電気化学セル。
【請求項7】
前記第1の電極は、互いに結合された複数の粒子を有し、前記複数の粒子の間に形成された空隙が内部に設けられ、
前記流路の平均断面積は、前記空隙の平均断面積よりも大きい、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの電気化学セル。
【請求項8】
前記空隙は、前記ガスが通過可能である、請求項7の電気化学セル。
【請求項9】
前記第1の電極は、積層された複数の層を有し、
前記流路の直径は、前記複数の層のそれぞれの厚さよりも長い、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの電気化学セル。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一つの電気化学セルと、
前記流路に前記ガスを供給する供給部と、
を具備する電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気化学セル及び電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、例えば、電気化学反応により、電気エネルギーを取り出し、又は電気分解を行うために用いられる。電気化学反応は、電気化学セルの電極において生じる。例えば、造孔材や溶射法を用いて電極を形成することで、電極の粒子間に、燃料ガスのようなガスが通過可能な空隙が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−214574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気化学反応の効率が向上すれば、電気化学セルにおける電力の取り出しや電気分解の効率が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態に係る電気化学セルは、絶縁性の固体電解質層と、第1の電極と、第2の電極とを備える。前記固体電解質層は、第1の面と、第2の面と、を有し、イオンが移動可能である。前記第1の電極は、前記第1の面上に設けられ、ガスが通過可能な流路が内部に設けられ、前記流路の一方の開口端が開く第3の面と、前記流路の他方の開口端が開く第4の面と、前記流路を形成する内壁面と、を有する、陽極及び陰極のうち一方である。前記第2の電極は、前記第2の面上に設けられた、前記陽極及び前記陰極のうち他方である。前記流路は、同一又は相似の形状を有するとともに、互いに直交する三方向に互いに連通される、複数の単位通路を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一つの実施形態に係る電力システムを概略的に示すブロック図である。
図2図2は、一つの実施形態のSOECの一部を示す断面図である。
図3図3は、一つの実施形態の単位セルを分解して示す斜視図である。
図4図4は、一つの実施形態の第1の側面の周辺における単位セルの一部を模式的に示す断面図である。
図5図5は、一つの実施形態の第2の側面の周辺における単位セルの一部を模式的に示す断面図である。
図6図6は、一つの実施形態の単位セルの他の一部を模式的に示す断面図である。
図7図7は、一つの実施形態の水素極の一部を示す斜視図である。
図8図8は、一つの実施形態の水素極の内部を微視的且つ模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、一つの実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
【0008】
図1は、一つの実施形態に係る電力システム10を概略的に示すブロック図である。電力システム10は、電気化学装置の一例である。本実施形態における電力システム10は、水素電力貯蔵システムである。なお、電気化学装置はこの例に限られない。
【0009】
図1に示すように、電力システム10は、固体酸化物型電解セル(SOEC)11と、固体酸化物形燃料電池(SOFC)12と、水素貯蔵部13と、蓄熱部14と、配管15,16,17,18,19,20とを有する。SOEC11及びSOFC12は、例えば、電気化学装置と称されても良い。配管19は、供給部の一例である。
【0010】
SOEC11は、配管15により水素貯蔵部13に接続されるとともに、配管16により蓄熱部14に接続される。SOFC12は、配管17により水素貯蔵部13に接続されるとともに、配管18により蓄熱部14に接続される。
【0011】
SOEC11は、水蒸気W及び電力を供給されることで、水蒸気Wを水素H及び酸素に電気分解する。水蒸気Wは、ガスの一例である。例えば、800℃まで昇温された水蒸気Wが、配管19から、SOEC11に供給される。水蒸気Wは、殆どが気相の状態であるが、液相の水を含んでも良い。なお、SOEC11に供給される水蒸気Wは、この例に限られない。
【0012】
電力システム10は、太陽光発電機、風力発電機、及び水力発電機のような電源を有しても良い。当該電源から、SOEC11に電力が供給される。外部電源からSOEC11に電力が供給されても良い。例えば、余剰電力がSOEC11に供給される。
【0013】
電気分解により生成された水素Hは、SOEC11から、配管15を通って水素貯蔵部13に供給される。水素貯蔵部13は、当該水素Hを貯蔵する。電力システム10は、電気分解により生成された酸素を貯蔵する酸素貯蔵部を有しても良い。電気分解により生成された酸素は、空気中に放出されても良い。
【0014】
水素貯蔵部13の水素Hが、配管17を通ってSOFC12に供給される。さらに、上記酸素貯蔵部の酸素、又は空気に含まれる酸素が、SOFC12に供給される。SOFC12は、水素H及び酸素を用いて発電する。SOFC12における発電で発生した水Wは、配管20から排出される。
【0015】
蓄熱部14は、配管16を通して、吸熱反応である電解を行うSOEC11に熱を供給する。発熱反応である発電を行うSOFC12は、配管18を通して、蓄熱部14に熱を供給する。
【0016】
図2は、一つの実施形態のSOEC11の一部を示す断面図である。図2に示すように、SOEC11は、セルスタック21を有する。セルスタック21は、複数の単位セル22を有する。
【0017】
図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、単位セル22の幅に沿う。Y軸は、単位セル22の長さ(奥行き)に沿う。Z軸は、単位セル22の厚さに沿う。
【0018】
複数の単位セル22は、Z軸に沿う方向に積層される。セルスタック21は、熱交換器をさらに含んでも良い。当該熱交換機は、積層された複数の単位セル22との間で熱交換を行い、単位セル22の温度分布を制御する。
【0019】
図3は、一つの実施形態の単位セル22を分解して示す斜視図である。図3に示すように、単位セル22は、電気化学セル31と、ホルダ32と、二つのセパレータ33と、二つの集電材34と、第1のシール35と、第2のシール36とを有する。なお、集電材34は、省略されても良い。セパレータ33は、隣り合う二つの単位セル22により共有される。
【0020】
電気化学セル31は、例えば、X−Y平面上に広がる略矩形の板状に形成される。なお、電気化学セル31は、円盤状のような他の形状に形成されても良い。電気化学セル31は、固体電解質層41と、水素極42と、酸素極43と、支持体44とを有する。水素極42は、第1の電極の一例である。酸素極43は、第2の電極の一例である。水素極42が第2の電極の一例、酸素極43が第1の電極の一例であっても良い。なお、支持体44は、省略されても良い。
【0021】
固体電解質層41、水素極42、酸素極43、及び支持体44はそれぞれ、X−Y平面上に広がる略矩形の板状に形成される。固体電解質層41、水素極42、酸素極43、及び支持体44はそれぞれ、円盤状のような他の形状に形成されても良い。固体電解質層41、水素極42、酸素極43、及び支持体44は、Z軸に沿う方向に積層される。
【0022】
図2に示すように、固体電解質層41は、第1の主面41aと、第2の主面41bとを有する。第1の主面41aは、第1の面の一例である。第2の主面41bは、第2の面の一例である。
【0023】
第1の主面41aは、Z軸に沿う正方向(Z軸の矢印が向く方向)に向く、略平坦な面である。第2の主面41bは、Z軸に沿う負方向(Z軸の矢印の反対方向)に向く、略平坦な面である。第2の主面41bは、第1の主面41aの反対側に位置する。
【0024】
水素極42は、第1の主面41a上に設けられる、電気化学セル31の陰極である。水素極42は、第1の主面41aに接合される。酸素極43は、第2の主面41b上に設けられる、電気化学セル31の陽極である。酸素極43は、第2の主面41bに接合される。酸素極43は、固体電解質層41、水素極42、及び支持体44より小さくても良い。
【0025】
固体電解質層41は、水素極42と酸素極43との間に位置する。支持体44は、水素極42に重ねられる。このため、水素極42は、固体電解質層41と支持体44との間に位置する。
【0026】
固体電解質層41は、電子絶縁性及びイオン伝導性を有する固体酸化物によって作られる。すなわち、固体電解質層41は絶縁性を有し、固体電解質層41でイオンが移動可能である。本実施形態において、固体電解質層41は、ジルコニア系酸化物によって作られる。固体電解質層41の材料は、他の固体電解質であっても良い。
【0027】
固体電解質は、例えば、サマリウム、ガドリニウム等がドープされたセリア系酸化物、ストロンチウム、マグネシウムがドープされたランタン・ガレード系酸化物、スカンジウム、イットリウムがドープされたジルコニア系酸化物のような、イオン伝導性を有するセラミックスである。
【0028】
固体電解質層41は、ガスリークが実質的に無視できる程度の稠密性を有する。言い換えると、固体電解質層41は、ガスの移動を制限する。
【0029】
水素極42は、例えば、金属触媒とイオン伝導性を有するセラミックス材料との混合物によって作られる。本実施形態において、水素極42は、ニッケルとジルコニア系酸化物との混合物によって作られる。水素極42の材料は、金属触媒や、他の水素極材料であっても良い。
【0030】
水素極42の材料として用いられる金属触媒は、例えば、還元性雰囲気中で安定であり且つ水素酸化活性を有する、ニッケル、鉄、コバルト、又は貴金属である。貴金属は、例えば、白金、ルテニウム、パラジウムである。
【0031】
水素極42の材料として用いられるイオン伝導性を有するセラミックス材料は、例えば、蛍石型の構造を有するサマリウム、ガドリニウム等がドープされたセリア系酸化物、スカンジウム、イットリウムがドープされたジルコニア系酸化物、又はペロブスカイト型の構造を有するストロンチウム、マグネシウムがドープされたランタン・ガレード系酸化物である。
【0032】
本実施形態において、酸素極43は、ランタン・ストロンチウム酸化物によって作られる。酸素極43の材料は、他の酸素極材料であっても良い。酸素極材料は、例えば、(Sm,Sr)CoO、(La,Sr)MnO、(La,Sr)CoO、(La,Sr)(Fe,Co)O、(La,Sr)(Fe,Co,Ni)Oである。
【0033】
支持体44は、例えば、水素極42の材料と同一又は類似する材料によって作られる。支持体44は、他の材料によって作られても良い。支持体44は、電気化学セル31の機械的強度を向上させる。支持体44は、内部を水蒸気W及び水素Hのようなガスが通過可能に形成される。なお、支持体44は、ガスの通過を制限する稠密性を有しても良い。
【0034】
ホルダ32は、例えば、金属、ガラス、又はセラミックスによって作られ、反応ガスや他の部材に対する耐性を有する。ホルダ32は、略矩形の枠状に形成され、上面32aと、下面32bとを有する。上面32aは、Z軸に沿う正方向に向く略平坦な面である。下面32bは、Z軸に沿う負方向に向く略平坦な面である。
【0035】
図3に示すように、ホルダ32に、収容口51と、二つの第1の供給路52と、二つの第2の供給路53とが設けられる。収容口51、第1の供給路52、及び第2の供給路53は、ホルダ32をZ軸に沿う方向に貫通し、上面32a及び下面32bに開く。
【0036】
収容口51は、ホルダ32の略中央に設けられる。電気化学セル31は、収容口51の内部に保持される。なお、図2に示すように、電気化学セル31の一部が収容口51の外部に位置しても良い。
【0037】
収容口51に収容された電気化学セル31と、ホルダ32との間に、例えば、ガラスや無機粉末を含む充填材が設けられても良い。当該ガラスは、例えば、800℃以下で固体の高融点結晶化ガラスである。無機粉末は、例えば、セラミックスやガラスである。
【0038】
図3に示すように、第1の供給路52は、Y軸に沿う方向に延びる。二つの第1の供給路52の間に、収容口51が位置する。二つの第1の供給路52はそれぞれ、接続部52aを有する。接続部52aは、ホルダ32の上面32aに開くとともに、収容口51に連通される。すなわち、上面32aの近傍において、収容口51と第1の供給路52とが連通される。
【0039】
第2の供給路53は、X軸に沿う方向に延びる。二つの第2の供給路53の間に、収容口51が位置する。二つの第2の供給路53はそれぞれ、接続部53aを有する。接続部53aは、ホルダ32の下面32bに開くとともに、収容口51に連通される。すなわち、下面32bの近傍において、収容口51と第2の供給路53とが連通される。
【0040】
セパレータ33は、例えば、X−Y平面上に広がる略矩形の板状に形成される。なお、セパレータ33は、他の形状に形成されても良い。セパレータ33は、導電性を有し、反応ガスや他の部材に対する耐性を有する材料によって作られる。
【0041】
セパレータ33に、二つの第1の供給路55と、二つの第2の供給路56とが設けられる。第1の供給路55と第2の供給路56とは、セパレータ33をZ軸に沿う方向に貫通する。
【0042】
集電材34は、例えば、X−Y平面上に広がる略矩形の板状に形成される。なお、集電材34は、他の形状に形成されても良い。集電材34は、例えば、ニッケル、金、銀、白金を含む材料によって作られ、導電性を有する。
【0043】
電気化学セル31の水素極42は、支持体44と一方の集電材34とを介して一方のセパレータ33に電気的に接続される。電気化学セル31の酸素極43は、他方の集電材34を介して他方のセパレータ33に電気的に接続される。なお、他方の集電材34は、耐酸化性を有する。
【0044】
二つのセパレータ33の間に、電気化学セル31と、二つの集電材34が位置する。当該二つの集電材34の間に、電気化学セル31が位置する。電気化学セル31、集電材34、及びセパレータ33は、互いに接触するように積層される。
【0045】
集電材34は、例えば、メッシュ状、フェルト状、又はパンチングメタルを積層した、多孔質体である。このため、集電材34の内部を、水蒸気W及び水素Hのようなガスが通過可能である。なお、集電材34は、ガスの通過を制限する稠密性を有し、薄く形成されても良い。
【0046】
第1のシール35は、例えば、ガラスを含む材料によって作られ、略矩形の枠状に形成される。第1のシール35に、収容口61と、二つの第1の供給路62と、二つの第2の供給路63とが設けられる。収容口61、第1の供給路62、及び第2の供給路63は、第1のシール35をZ軸に沿う方向に貫通する。
【0047】
収容口61は、第1のシール35の略中央に設けられる。一方の集電材34と、電気化学セル31の一部とは、収容口61の内部に保持される。第1の供給路62は、Y軸に沿う方向に延びる。二つの第1の供給路62の間に、収容口61が位置する。本実施形態において、収容口61と第1の供給路62とは互いに連通され、一つの開口を形成する。第2の供給路63は、X軸に沿う方向に延びる。二つの第2の供給路63の間に、収容口61が位置する。
【0048】
第1のシール35は、ホルダ32の上面32aと、一方のセパレータ33との間に介在する。第1のシール35は、例えば、電気化学セル31とセパレータ33との間の気密性を向上させる。
【0049】
第2のシール36は、例えば、ガラスを含む材料によって作られ、略矩形の枠状に形成される。第2のシール36に、収容口65と、二つの第1の供給路66と、二つの第2の供給路67とが設けられる。収容口65、第1の供給路66、及び第2の供給路67は、第2のシール36をZ軸に沿う方向に貫通する。
【0050】
収容口65は、第2のシール36の略中央に設けられる。他方の集電材34は、収容口65の内部に保持される。第1の供給路66は、Y軸に沿う方向に延びる。二つの第1の供給路66の間に、収容口65が位置する。第2の供給路67は、X軸に沿う方向に延びる。二つの第2の供給路67の間に、収容口65が位置する。本実施形態において、収容口65と第2の供給路67とは互いに連通され、一つの開口を形成する。
【0051】
第2のシール36は、ホルダ32の下面32bと、他方のセパレータ33との間に介在する。第2のシール36は、例えば、電気化学セル31とセパレータ33との間の気密性を向上させる。
【0052】
ホルダ32、セパレータ33、第1のシール35、及び第2のシール36の第1の供給路52,55,62,66は、互いに連通される。SOEC11において、連通された第1の供給路52,55,62,66は、水蒸気W及び水素Hが通る流路を形成する。
【0053】
ホルダ32、セパレータ33、第1のシール35、及び第2のシール36の第2の供給路53,56,63,67は、互いに連通される。SOEC11において、連通された第2の供給路53,56,63,67は、酸素が通る流路を形成する。
【0054】
以下、水素極42について詳しく説明する。図2に示すように、水素極42は、第1の接触面71と、第2の接触面72と、第1の側面73と、第2の側面74とを有する。第1の側面73は、第3の面の一例である。第2の側面74は、第4の面の一例である。
【0055】
第1の接触面71は、Z軸に沿う正方向に向く略平坦な面である。第1の接触面71は、支持体44に接触する。このため、水素極42は、支持体44及び集電材34を介して、セパレータ33に電気的に接続される。
【0056】
第2の接触面72は、Z軸に沿う負方向に向く略平坦な面である。第2の接触面72は、第1の接触面71の反対側に位置する。第2の接触面72は、固体電解質層41の第1の主面41aに接触する。このため、固体電解質層41と水素極42との間で、イオンが移動可能となる。
【0057】
第1の側面73は、X軸に沿う正方向(X軸の矢印が向く方向)に向く、略平坦な面である。X軸に沿う正方向は、第1の主面41aが向く方向と交差する方向であり、第3の方向の一例である。
【0058】
第2の側面74は、X軸に沿う負方向(X軸の矢印の反対方向)に向く、略平坦な面である。X軸に沿う負方向は、第1の主面41aが向く方向と交差する方向であり、第4の方向の一例である。第2の側面74は、第1の側面73の反対側に位置する。
【0059】
図4は、一つの実施形態の第1の側面73の周辺における単位セル22の一部を模式的に示す断面図である。図5は、一つの実施形態の第2の側面74の周辺における単位セル22の一部を模式的に示す断面図である。図6は、一つの実施形態の単位セル22の他の一部を模式的に示す断面図である。
【0060】
図4及び図5は、Y軸沿う方向における同一位置において単位セル22の断面を示す。図6は、Y軸に沿う方向において、図4及び図5と異なる位置における単位セル22の断面を示す。
【0061】
図4乃至図6に示すように、水素極42の内部に、流路81が設けられる。流路81の断面積は、水蒸気W及び水素Hのようなガスが通過可能な大きさを有する。言い換えると、水蒸気W及び水素Hのようなガスは、水素極42の内部を通過可能である。
【0062】
水素極42は、壁部83を有する。壁部83は、流路81を形成する内壁面84を有する。言い換えると、流路81は、内壁面84により区画(規定)される空間である。別の表現によれば、内壁面84は、流路81の内部に向く面である。
【0063】
図7は、一つの実施形態の水素極42の一部を示す斜視図である。壁部83は、複数の単位壁86を含む。本実施形態において、単位壁86は、ジャイロイド形状を有する。言い換えると、単位壁86は、三方向に無限に連結可能な三次元の周期極小曲面を形成する。複数の単位壁86は、互いに同一又は相似の形状を有する。複数の単位壁86が互いに同一又は相似の形状を有する、とは、複数の単位壁86の形状が製造上の誤差により互いに異なる場合も含まれる。
【0064】
複数の単位壁86は、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZ軸に沿う方向に、互いに接続される。なお、複数の単位壁86は、少なくとも一つの方向に互いに接続されれば良い。
【0065】
複数の単位壁86に含まれる内壁面84の一部は、流路81の一部である単位通路88の少なくとも一部を形成する。単位通路88は、互いに同一又は相似の形状を有する。複数の単位壁86が互いに接続されることで、複数の単位通路88が、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZ軸に沿う方向に、互いに連通される。なお、図4乃至図6は流路81及び壁部83を模式的に示すため、図4乃至図6における流路81及び壁部83の形状は、図7における単位壁86及び単位通路88が互いに接続された形状と異なる。
【0066】
上記のように、流路81は、同一又は相似の形状を有するとともに互いに連通される複数の単位通路88を有する。言い換えると、流路81において、同一又は相似の形状の単位通路88がX軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZ軸に沿う方向に繰り返し設けられる。なお、複数の単位通路88は、少なくとも一つの方向に互いに連通されれば良い。
【0067】
本実施形態において、複数の単位通路88は、同一又は相似の形状を有する単位通路88が繰り返し設けられるように互いに連通される。しかし、例えば、二つの単位通路88が、互いに鏡面対称となるように連通されても良い。さらに、互いに相似の形状を有する二つの単位通路88が互いに連通されることで、単位通路88が設けられる間隔(ピッチ)が変化しても良い。複数の単位壁86も同様に、互いに鏡面対称となるように接続されても良いし、単位壁86が設けられる間隔が変化するように接続されても良い。
【0068】
図4に示すように、流路81の開口端81aは、第1の側面73に開く。図5に示すように、流路81の開口端81bは、第2の側面74に開く。図6に示すように、流路81の開口端81cは、第1の接触面71に開く。開口端81dは、第2の接触面72に開く。さらに、流路81の他の開口端が、水素極42のY軸に沿う方向に向く側面に開く。なお、流路81は、例えば、二つの開口端81a,81bのみを有しても良い。
【0069】
図4及び図5に示すように、流路81は、第1の側面73と第2の側面74との間を直線的に貫通する第1の直線部91を含む。第1の直線部91は、流路81の一部であって、X軸に沿う方向に直線的に延びる部分である。このため、例えばX軸に沿う方向に第1の側面73又は第2の側面74を見た場合、水素極42の向こう側が視認可能となる。
【0070】
図6に示すように、流路81は、第1の接触面71と第2の接触面72との間を直線的に貫通する第2の直線部92を含む。第2の直線部92は、流路81の一部であって、Z軸に沿う方向に直線的に延びる部分である。このため、例えばZ軸に沿う方向に第1の接触面71又は第2の接触面72を見た場合、水素極42の向こう側が視認可能となる。
【0071】
水素極42は、例えば、複数の層94を有する。複数の層94は、Z軸に沿う方向に積層されることで、水素極42を形成する。Z軸に沿う方向は、第1の主面41aと交差する方向であり、第1の方向の一例である。なお、複数の層94は、他の方向に積層されても良い。複数の層94は、互いに略同一の厚さを有する。層94の厚さは、水素極42の材料の粒子の直径よりも大きい。
【0072】
水素極42は、例えば、光造形法による積層造形(付加製造、AM)を行う3Dプリンタによって製造される。なお、水素極42は、他の手段により製造されても良い。3Dプリンタは、例えば、水素極42の材料が混入された光硬化樹脂が供給される液槽と、当該液槽に紫外レーザー光を照射可能な光学装置とを有する。
【0073】
光学装置は、液槽の樹脂の表面に、水素極42の断面形状に応じて紫外レーザー光を照射する。これにより、樹脂が硬化し、一つの層94が形成される。複数の層94を積層することで、水素極42が製造される。層94に含まれる樹脂は、例えば、水素極42を焼結する際に蒸発させられ、層94から除去される。
【0074】
内壁面84は、複数の凸部95を有する。複数の凸部95は、流路81の内部に突出する、略円弧状の断面を有する突起である。複数の凸部95は、例えば、光造形法により層94が作られることで、X軸に沿う方向及びY軸に沿う方向における層94の端部に設けられる。X軸に沿う方向及びY軸に沿う方向は、第1の主面41aに沿う方向であって、第2の方向の一例である。
【0075】
複数の凸部95は、複数の層94が積層される方向と交差する方向に突出する。さらに、複数の凸部95は、複数の層94が積層される方向に並んで配置される。なお、複数の凸部95はこの例に限らず、他の方法によって作られても良い。
【0076】
流路81の断面は、略円形に形成される。流路81の直径は、複数の層94のそれぞれの厚さ(積層ピッチ)よりも長い。本実施形態における流路81の直径は、例えば、Z軸に沿う方向における流路81の一方の端と他方の端との間の長さである。
【0077】
図8は、一つの実施形態の水素極42の内部を微視的且つ模式的に示す図である。図8に示すように、水素極42は、複数の粒子97を有する。粒子97は、水素極42の材料の粒子である。本実施形態において、複数の粒子97は、ニッケルの粒子97と、ジルコニア系酸化物の粒子97とを含む。なお、図8において、ニッケルの粒子97もジルコニア系酸化物の粒子97も、同一のハッチングによって示される。
【0078】
複数の粒子97は、例えば、焼結によって互いに結合される。ニッケルの粒子97が互いに結合することで、水素極42は導電性を有する。さらに、ジルコニア系酸化物の粒子97が互いに結合することで、水素極42はイオン伝導性を有する。
【0079】
複数の粒子97の間に、空隙98が形成される。言い換えると、空隙98が、水素極42の内部に設けられる。空隙98は、例えば、空間、隙間、流路、又は通路とも称され得る。
【0080】
空隙98は、第1の接触面71、第2の接触面72、第1の側面73、及び第2の側面74のような水素極42の表面に開く開気孔を含む。さらに、空隙98の開気孔は、流路81に連通する。なお、空隙98は、閉気孔を含んでも良い。
【0081】
流路81の平均断面積は、空隙98の平均断面積よりも大きい。本実施形態において、空隙98の少なくとも一部の断面積は、水蒸気W及び水素Hのようなガスが通過可能な大きさを有する。なお、水素極42の複数の粒子97は、ガスの通過を制限する稠密性を有しても良い。
【0082】
流路81が設けられることで、水素極42の開気孔率は、例えば40%より大きくなる。例えば、本実施形態における水素極42の開気孔率は、約80%とすることができる。水素極42の開気孔率が大きい場合も、水素極42の壁部83は、重力や、水蒸気Wや水素Hのようなガス、及びセパレータ33のような他の部材から受ける外力に耐え得る稠密性を有する。
【0083】
以上、水素極42について説明したが、酸素極43も、水素極42と略同一の形状を有する。すなわち、酸素極43も、第1の接触面71、第2の接触面72、第1の側面73、第2の側面74、壁部83、複数の層94、及び複数の粒子97を有する。酸素極43において、第1の接触面71は、固体電解質層41の第2の主面41bに接触する。第2の接触面72は、集電材34に接触する。酸素極43の粒子97は、ランタン・ストロンチウム酸化物の粒子97である。さらに、酸素極43の内部にも、流路81及び空隙98が設けられる。
【0084】
なお、酸素極43は、水素極42と異なる形状を有しても良い。例えば、酸素極43は、造孔材や溶射法を用いて製造された多孔質体であっても良い。この場合、酸素のようなガスが、酸素極43の粒子間の空隙を通過可能である。
【0085】
図2に示すように、連通された一方の第1の供給路52,55,62,66に、水蒸気Wが供給される。当該第1の供給路52,55,62,66は、例えば、図1の配管16を介して、蓄熱部14に接続される。
【0086】
図4に示すように、水蒸気Wは、例えば、第1の供給路52の接続部52aを通って、水素極42の第1の側面73に到達する。水蒸気Wは、第1の側面73に開く開口端81aから、流路81に流入する。なお、水蒸気Wの一部は、第1の側面73に開く空隙98の開気孔に流入しても良い。また、図6に示すように、水蒸気Wの一部は、支持体44や集電材34を通って、第1の接触面71に開く開口端81cから、流路81に流入しても良い。
【0087】
流路81に流入した水蒸気Wは、流路81に沿って、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZ軸に沿う方向に拡散する。流路81において、水蒸気Wは、内壁面84を形成する粒子97に接触する。
【0088】
セパレータ33、集電材34、及び支持体44を介して水素極42に電力が供給されることで、ニッケルの粒子97と、ジルコニア系酸化物の粒子97と、水蒸気Wとの三相界面において電気化学反応が生じる。当該電気化学反応により、水蒸気Wは、水素Hと、酸素イオンとに分解される。粒子97は、内壁面84を形成するような稠密性を有するように焼結されるため、より多くの電子が複数のニッケルの粒子97を通ることができ、電気化学反応が促進される。
【0089】
図5に示すように、水素Hは、流路81を通り、第2の側面74に開く開口端81bから、流路81の外に流出する。水素Hは、他方の第1の供給路52の接続部52aを通って、連通された他方の第1の供給路52,55,62,66に供給される。なお、水素Hと共に、未反応の水蒸気Wが、他方の第1の供給路52,55,62,66に供給されても良い。
【0090】
水素Hは、他方の第1の供給路52,55,62,66から、図1の配管15を介して、水素貯蔵部13に供給される。水素Hに混入した水蒸気Wは、例えば、凝縮器によって水素Hから分離される。
【0091】
酸素イオンは、互いに結合された複数のジルコニア系酸化物の粒子97を通り、固体電解質層41へ移動する。粒子97は、内壁面84を形成するような稠密性を有するように焼結されるため、より多くの酸素イオンが複数のジルコニア系酸化物の粒子97を通ることができ、電気化学反応が促進される。酸素イオンは、固体電解質層41を通って酸素極43に到達し、酸素極43において解離する。
【0092】
酸素極43で生じた酸素は、酸素極43の流路81を通って、酸素極43の外に流出する。酸素は、第2の供給路53の接続部53aを通って、連通された第2の供給路53,56,63,67に供給される。酸素は、第2の供給路53,56,63,67を通って、酸素貯蔵部に供給され、又は空気中に放出される。
【0093】
以上のように、水素極42の流路81を通る水蒸気Wは、内壁面84を形成するニッケルの粒子97及びジルコニア系酸化物の粒子97に接触することで、水素Hと酸素に電気分解される。さらに、水素極42の空隙98を通る水蒸気Wが、ニッケルの粒子97及びジルコニア系酸化物の粒子97に接触することで電気分解されても良い。
【0094】
以上、SOEC11のセルスタック21について説明したが、SOFC12も、SOEC11と同じセルスタック21を有する。すなわち、SOEC11も、電気化学セル31を有する。
【0095】
SOEC11において、水素極42の流路81に、図1の配管17を介して、水素貯蔵部13から水素Hが供給される。さらに、酸素極43の流路81に、酸素が供給される。これにより、電気化学セル31は、発電するとともに、水素極42において水(水蒸気W)を生じる。
【0096】
以上説明された一つの実施形態に係る電力システム10において、水素極42の内部に、第1の側面73及び第2の側面74に開口端81a,81bが開き、水蒸気W及び水素Hが通過可能な流路81が設けられる。すなわち、水素極42の内部の流路81に水蒸気W及び水素Hを直接流すことができる。このため、例えば、水素極42がSOEC11の水素極42又はSOFC12の水素極42である場合、流路81に供給される水蒸気W又は水素Hが水素極42の内部で拡散しやすく、水蒸気W又は水素Hと水素極42との接触面積を確保しやすい。さらに、内壁面84を形成するように、ニッケルの粒子97とジルコニア系酸化物の粒子97とが、例えば焼結により凝集される。複数のジルコニア系酸化物の粒子97が凝集して面接触することで、酸素イオンが移動可能な経路が増大し、水素極42で酸素イオンが移動しやすくなる。複数のニッケルの粒子97が凝集して面接触することで、水素極42で電子が移動しやすくなる。以上により、電気化学セル31における電気化学反応の効率が向上する。
【0097】
流路81は、同一又は相似の形状を有するとともに互いに連通される複数の単位通路88を有する。言い換えると、流路81は、規則的に延びる。例えば、一般的に、造孔材や溶射を用いて電極を作ることで、粒子間に無作為な形状の通路が形成されることがある。しかし、閉気孔を含んだり、水蒸気W及び水素Hの通過を制限するほど断面積が小さくなったりする当該通路に比べ、規則的に延びる本実施形態の流路81では、水蒸気W及び水素Hが拡散しやすい。従って、電気化学セル31における電気化学反応の効率が向上する。
【0098】
内壁面84は、流路81の内部に突出する複数の凸部95を有する。これにより、内壁面84の表面積が増える。例えば、水素極42がSOEC11の水素極42又はSOFC12の水素極42である場合、流路81に供給される水蒸気W又は水素Hと水素極42の内壁面84との接触面積(反応面積)が増え、電気化学セル31における電気化学反応の効率が向上する。
【0099】
凸部95は、第1の主面41aに沿うX軸に沿う方向及びY軸に沿う方向における層94の端部に設けられる。例えば、光造形法により、複数の層94を形成することで水素極42を製造することができる。光造形法において、層94の端部は略円弧状の凸な形状を呈する。すなわち、内壁面84は、光造形法のような複数の層94の形成を伴う手段により容易に形成可能な複数の凸部95を有する。従って、複数の凸部95を容易に形成することができる。
【0100】
第1の側面73はX軸に沿う正方向に向き、第2の側面74はX軸に沿う負方向に向く。X軸に沿う正方向及び負方向は、第1の主面41aが向く方向と交差する。これにより、水蒸気W及び水素Hが、第1の側面73に開く流路81の一方の開口端81aから流入し、第2の側面74に開く流路81の他方の開口端81bから流出することができる。従って、水蒸気W及び水素Hに水素極42の内部の流路81を通過させやすく、例えば、水素極42がSOEC11の水素極42又はSOFC12の水素極42である場合、流路81に供給される水蒸気W又は水素Hが水素極42の内部で拡散しやすい。また、セパレータ33に流路を形成する必要が無くなり、電気化学セル31を薄型化できる。
【0101】
流路81は、第1の側面73と第2の側面74との間を直線状に貫通する第1の直線部91を含む。これにより、水蒸気W及び水素Hが、第1の側面73に開く流路81の一方の開口端81aと、第2の側面74に開く流路81の他方の開口端81bとの間で、直進性を持って流れやすくなる。従って、例えば、水素極42がSOEC11の水素極42又はSOFC12の水素極42である場合、流路81に供給される水蒸気W又は水素Hが水素極42の内部で拡散しやすい。
【0102】
水素極42において、流路81の平均断面積は、粒子97間の空隙98の平均断面積よりも大きい。このため、水蒸気W及び水素Hが流路81を通過しやすくなり、流路81に供給される水蒸気W又は水素Hが水素極42の内部で拡散しやすい。従って、電気化学セル31における電気化学反応の効率が向上する。
【0103】
空隙98は、水蒸気W及び水素Hが通過可能な大きさを有する。これにより、例えば、水素極42がSOEC11の水素極42又はSOFC12の水素極42である場合、流路81に供給される水蒸気W及び水素Hと水素極42との接触面積が増え、電気化学セル31における電気化学反応の効率が向上する。
【0104】
複数の層94が積層された方向における流路81の一方の端と他方の端との間の長さは、複数の層94のそれぞれの長さよりも長い。このため、水蒸気W及び水素Hが流路81を通過しやすくなり、流路81に供給される水蒸気W又は水素Hが水素極42の内部で拡散しやすい。従って、電気化学セル31における電気化学反応の効率が向上する。
【0105】
上記実施形態において、流路81は、複数の単位通路88が連続する波形に形成される。しかし、流路81は、直線状のような他の形状に形成されても良い。さらに、上記実施形態において、流路81は、固体電解質層41に隣接する。しかし、流路81は、例えば壁部83によって、固体電解質層41から隔てられても良い。
【0106】
さらに、上記実施形態において、支持体44は水素極42に重ねられる。しかし、支持体44は、例えば、酸素極43に重ねられても良い。この場合、支持体44は、例えば、酸素極43の材料と同一又は類似する材料によって作られ、耐酸化性を有する。酸素極43は、固体電解質層41と支持体44との間に位置する。支持体44は、内部を酸素のようなガスが通過可能に形成されても良いし、ガスの通過を制限する稠密性を有しても良い。
【0107】
以上説明された一つの実施形態によれば、第1の電極の内部に、ガスが通過可能な流路が内壁面により形成される。このため、電気化学セルにおける電気化学反応の効率が向上する。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の内容を付記する。
[1]
第1の面と、第2の面と、を有し、イオンが移動可能な絶縁性の固体電解質層と、
前記第1の面上に設けられ、ガスが通過可能な流路が内部に設けられ、前記流路の一方の開口端が開く第3の面と、前記流路の他方の開口端が開く第4の面と、前記流路を形成する内壁面と、を有する、陽極及び陰極のうち一方の第1の電極と、
前記第2の面上に設けられた、前記陽極及び前記陰極のうち他方の第2の電極と、
を具備する電気化学セル。
[2]
前記流路は、同一又は相似の形状を有するとともに互いに連通される複数の単位通路を有する、[1]の電気化学セル。
[3]
前記内壁面は、前記流路の内部に突出する複数の凸部を有する、[1]の電気化学セル。
[4]
前記第1の電極は、前記第1の面と交差する第1の方向に積層された複数の層を有し、
前記凸部は、前記第1の面に沿う第2の方向における前記複数の層の端部に設けられる、
[3]の電気化学セル。
[5]
前記第3の面は、前記第1の面が向く方向と交差する第3の方向に向き、
前記第4の面は、前記第1の面が向く方向と交差する第4の方向に向く、
[1]の電気化学セル。
[6]
前記第3の面は、前記第4の面の反対側に位置し、
前記流路は、前記第3の面と前記第4の面との間を直線状に貫通する部分を含む、
[1]の電気化学セル。
[7]
前記第1の電極は、互いに結合された複数の粒子を有し、前記複数の粒子の間に形成された空隙が内部に設けられ、
前記流路の平均断面積は、前記空隙の平均断面積よりも大きい、
[1]の電気化学セル。
[8]
前記空隙は、前記ガスが通過可能である、[7]の電気化学セル。
[9]
前記第1の電極は、積層された複数の層を有し、
前記複数の層が積層された方向における前記流路の一方の端と他方の端との間の長さは、前記複数の層のそれぞれの厚さよりも長い、
[1]の電気化学セル。
[10]
[1]乃至[9]のいずれか一つの電気化学セルと、
前記流路に前記ガスを供給する供給部と、
を具備する電気化学装置。
【符号の説明】
【0109】
10…電力システム、11…SOEC、12…SOFC、19…配管、21…セルスタック、22…単位セル、31…電気化学セル、41…固体電解質層、41a…第1の主面、41b…第2の主面、42…水素極、43…酸素極、71…第1の接触面、72…第2の接触面、73…第1の側面、74…第2の側面、81…流路、81a,81b,81c,81d…開口端、84…内壁面、88…単位通路、91…第1の直線部、94…層、95…凸部、97…粒子、98…空隙、W…水蒸気、H…水素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8