(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797785
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】加熱調理食品用練り込み油脂組成物及び加熱調理食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/36 20060101AFI20201130BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
A23L3/36 A
A23D9/00 506
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-238747(P2017-238747)
(22)【出願日】2017年12月13日
(62)【分割の表示】特願2013-75483(P2013-75483)の分割
【原出願日】2013年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-38430(P2018-38430A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年12月13日
【審判番号】不服2019-14640(P2019-14640/J1)
【審判請求日】2019年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今村 陽子
(72)【発明者】
【氏名】尾森 仁美
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
大熊 幸治
【審判官】
黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−81868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36- 3/54
A23D 7/00- 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で8〜15%、20℃で5〜10%、30℃で8%以下である油脂組成物を食品に練り込み、加熱調理後、冷凍する調理済み冷凍食品の製造方法。
【請求項2】
調理済み冷凍食品が、自然解凍調理冷凍食品である請求項1に記載の調理済み冷凍食品の製造方法。
【請求項3】
油脂組成物が、不活性ガスを5〜20容量%含有するものである、請求項1又は請求項2に記載の調理済み冷凍食品の製造方法。
【請求項4】
油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で8〜15%、20℃で5〜10%、30℃で8%以下である油脂組成物を食品に練り込み、加熱調理後、冷凍することを特徴とする、調理済み冷凍食品の食感改良方法。
【請求項5】
油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で8〜15%、20℃で5〜10%、30℃で8%以下である油脂組成物を食品に練り込み、加熱調理後、冷凍することを特徴とする、自然解凍調理冷凍食品の食感改良方法。
【請求項6】
(B/A)≧0.15(A:10℃でのSFC、B:30℃でのSFC)である、請求項4又は請求項5に記載の食感改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理食品用練り込み油脂組成物及び加熱調理食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の変化に伴い、最近の食生活において、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、トンカツ、メンチカツ、唐揚げ、焼き鳥、シュウマイ、餃子、春巻などの食肉調理品や食肉惣菜類などの調理品の消費量が増大している。
【0003】
従来、家庭で作られることが多かったこれら惣菜類は、核家族化や専業主婦の減少あるいは中高年男性における単身世帯の増加など社会環境の変化に伴い、調理されたものを、デパートやスーパーの食品売り場で購入し、いわゆる「中食」として消費される需要が拡大している。
【0004】
これらデパートやスーパーで販売される惣菜類は、店舗のバックヤードにおいて調理され、惣菜売り場に並べられるが、調理後時間が経つにつれて、作りたての美味しさや食感が失われていき、商品価値を損ねるといった問題がある。
【0005】
また、調理後、チルド状態で販売され、電子レンジやオーブン加熱により、簡単に調理できる惣菜類についても、作りたての美味しさや食感が維持されることは少ない。
【0006】
さらに、最近ではこれら惣菜類は、冷凍食品として、長期保存を目的に冷凍状態で製造・流通・販売されている。これら冷凍食品は、電子レンジやオーブン等による解凍・加熱により簡便に、調理できることから、外食市場をはじめとする飲食店から一般家庭に至るまで広く普及している。
【0007】
また、一般家庭における冷凍食品の利用において、近年急速に製造・販売数量が増えているものに、弁当用の冷凍食品が挙げられる。
例えば、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、トンカツ、メンチカツ、唐揚げ、焼き鳥、シュウマイ、餃子、春巻など、様々なメニューが弁当用冷凍食品としてスーパーの冷凍食品コーナーに並べられている。
これら弁当用冷凍食品は必要な量だけを冷凍状態から取り出し、電子レンジやオーブン等で加熱するだけで、すぐに調理することができ、忙しい朝の弁当作りには欠かせないものとなっている。
【0008】
一方、さらに多忙を極める現代社会おいては、冷凍食品に求められる機能はさらに高度なものとなり、最近では、電子レンジやオーブン等による解凍・加熱すら必要のない、自然解凍調理冷凍食品も普及し始めている。
自然解凍調理冷凍食品とは、例えば冷凍状態から取り出した調理食品を、朝そのままお弁当箱に入れておくことにより、室温の目安である20℃程度で約2時間30分から3時間くらいで自然解凍されることにより、お昼ごろにはちょうど食べごろとなる調理済み冷凍食品であり、忙しい朝の弁当作りのさらなる時間短縮を可能とするものである。
【0009】
しかしながら、これら加熱調理食品は常温、チルド、冷凍いずれの状態であっても、作りたての美味しさや食感を維持させることは困難であった。
【0010】
加熱調理食品の作りたての美味しさや食感を維持させるために、例えば特許文献1には、油ちょう用冷凍食品について、保存と流通により所定期間経過後に油ちょうしたとしても、中種がジューシーさを充分保ちながら衣がカラッと揚がるようにするとともに、油ちょう後時間が経過しても、できるだけ衣に中種の水分が移行せず衣のクリスピー感が失われない冷凍食品とその製造方法を得ることを目的に、油ちょう用に調整処理した中種の表面に、オリゴ糖、水、食用油脂および食用界面活性剤で構成される乳化物を付着または被覆し表面を衣材で被覆したうえ、凍結したことを特徴とする油ちょう用冷凍食品が例示されている。
【0011】
あるいは、特許文献2には、冷凍保存しても衣のサクサク感が十分に維持されるようにした冷凍フライ食品を提供することを目的に、5重量%水溶液を25℃にてB型粘度計で回転数60rpmで測定した粘度が10〜20cpsとなるように分解されたグアガム分解物、又は、このグアガム分解物と、5重量%水溶液を25℃にてB型粘度計で回転数60rpmで測定した粘度が5〜20cpsとなるように分解されたヘミセルロース分解物との混合物を含有する衣材を用い、具材にこの衣材を付着させ、そのまま冷凍するか、あるいは油ちょうした後、冷凍して冷凍フライ食品を得る方法が記載されている。
【0012】
さらに、特許文献3には、衣の付きが均一で、冷凍した揚げ物を電子レンジや自然解凍などの手段で解凍しても、衣のサクサク感が損なわれず、かつ解凍後も衣のふんわり感を維持できる揚げ衣組成物を提供することを目的に、結晶セルロースを50質量%を超え、99質量%以下、アルギン酸プロピレングリコールエステルを1質量%以上50質量%未満含有する結晶セルロース複合化物と、衣材を含むことを特徴とする揚げ衣組成物などが例示されている。
【0013】
しかしながら、いずれの方法もフライした衣の食感は維持させることができるものの、調理食品自体の食感の維持を目的するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−224587号公報
【特許文献2】特開平10−75728号公報
【特許文献3】特開2011−152087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、調理済みの総菜類などの加熱調理食品の作りたての美味しさや食感を維持させることができる方法を提供することである。
また、油脂組成物を練り込んだ際の成型性、作業性が良く、加熱調理後、冷凍し、再度、解凍・加熱した際にも、ソフトな食感が得られ、さらに自然解凍であっても、ソフト感が維持された調理食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで本発明者らは、加熱調理食品に配合される油脂組成物に着目し、鋭意検討を重ねた結果、油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で5〜20%、20℃で3〜15%、30℃で10%以下である油脂組成物を加熱調理食品に用いることにより、油脂組成物を練り込んだ際の成型性、作業性が良く、加熱調理食品の作りたての美味しさやソフトな食感を維持させることができるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、
(1)油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で5〜20%、20℃で3〜15%、30℃で10%以下であることを特徴とする加熱調理食品用練り込み油脂組成物、
(2)(B/A)≧0.15(A:10℃でのSFC、B:30℃でのSFC)である(1)記載の加熱調理食品用練り込み油脂組成物、
(3)不活性ガスを5〜20容量%含有する、(1)または(2)記載の加熱調理食品用練り込み油脂組成物、
(4)(1)〜(3)いずれか1項に記載の加熱調理用練り込み油脂組成物を配合し、加熱調理する加熱調理食品の製造方法、
(5)(1)〜(3)いずれか1項に記載の加熱調理用練り込み油脂組成物を配合し、加熱調理後、冷凍する調理済み冷凍食品の製造方法、
(6)(1)〜(3)いずれか1項に記載の加熱調理用練り込み油脂組成物を配合し、加熱調理後、冷凍する自然解凍調理冷凍食品の製造方法、である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物を用いることにより、惣菜類などの加熱調理食品の作りたての美味しさや食感を維持させることができ、また、油脂組成物を練り込んだ際の成型性、作業性が良く、加熱調理後、冷凍し、再度、解凍・加熱した際にも、ソフトな食感が得られ、さらに自然解凍であっても、ソフト感が維持された調理食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物は、油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で5〜20%、20℃で3〜15%、30℃で10%以下であることを特徴とし、10℃から30℃での温度域において、適度な結晶量が存在する油脂を用いることにより、油脂組成物を練り込んだ際の成型性、作業性が良く、加熱調理後の食感の経時変化を抑制し、ソフトな食感を維持することができる。
【0021】
本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物において、より好ましい油脂のSFCは10℃で8〜15%、20℃で5〜10%、30℃で8%以下であり、上記SFCが上限を超えると、加熱調理後の経時変化において、食感が硬くなる傾向になり、また下限未満であると、室温において、液状となり、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、トンカツ、メンチカツなどに練り込むと生地粘度が低下し、成型性が悪くなるといった作業性の面で問題となる場合がある。
【0022】
本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物は、さらに、上記SFCが(B/A)≧0.15(A:10℃でのSFC、B:30℃でのSFC)となることが好ましく、10〜30℃でのSFCの変化が少ない横型の油脂であることにより、加熱調理食品の食感の経時変化を抑制する効果が高くなり、さらに冷凍後の解凍・加熱後や自然解凍後においても、食感が硬くならず、ソフトな食感を保つことができる。
【0023】
本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物において、使用できる油脂としては、特に限定はなく、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヒマワリ油、ゴマ油、コメ油、綿実油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、パーム油、ラード等およびこれらの分別油脂、硬化油、エステル交換油脂の単独あるいは任意の混合物により、上記SFCとなるように適宜配合することができる。
【0024】
また、本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物は、油脂組成物中に不活性ガスを5〜20容量%含有することが好ましく、不活性ガスを含有させることにより、油脂組成物がペースト状となり、本発明の結晶量の比較的少ない油脂組成物においては、ペースト状の物性により、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、トンカツ、メンチカツなどに練り込んでも、成型性が良いため、練り込み作業時の作業性を向上させることができる。本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物において、不活性ガスを、好ましくは8〜17容量%、最も好ましくは12〜15%容量配合することが好ましく、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素及びこれら不活性ガスの混合物を使用することができる。
【0025】
本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物は、上記油脂を混合、溶融したものを混捏しながら冷却し、必要であれば、混捏中に窒素などの不活性ガスを吹き込むことにより、得ることができる。
また、上記の油脂をオンレーター、ボテーター、パーフェクター、コンプレクター等で急冷練り込み処理をすることにより製造することもできる。
【0026】
上記方法により得られた本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物は、油脂組成物を練り込んだ際の成型性、作業性が良く、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、トンカツ、メンチカツ、唐揚げ、焼き鳥、シュウマイ、餃子、春巻などの食肉調理品や食肉惣菜類などの調理品において、他の食材と混合し使用することで、加熱調理後時間が経っても、作りたての食感を維持することができる。
【0027】
また、本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物を用いた加熱調理食品を冷凍することで、調理済み冷凍食品として、長期の保存、流通・販売が可能であり、これら調理済み冷凍食品は、電子レンジやオーブン等による解凍・加熱により、作り立てと同様なソフトな食感が維持されている。
【0028】
さらに、本発明の加熱調理食品用練り込み油脂組成物を用いた加熱調理食品を冷凍した、調理済み冷凍食品は、電子レンジやオーブン等による解凍・加熱がなくとも、室温の目安である20℃程度で約2時間30分から3時間くらいで自然解凍されても、ソフトな食感が付与されているため、自然解凍調理冷凍食品として、弁当用冷凍食品に最適である。
【0029】
以下、本発明について実施例を示し、より詳細に説明する。なお、例中の%及び部はいずれも重量基準を意味する。なおSFC:SoIid Fat Content/固体脂含量の測定は、AOCS OfficiaI Method 第5版 Cd16−81に準じて行った。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
菜種油85部、パーム油のエステル交換油脂10部、菜種極度硬化油5部のブレンド油をコンビネーターを用いて急冷混捏処理し、加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。
【0031】
(実施例2)
コーン油35部、硬化コーン油65部のブレンド油をコンビネーターを用いて窒素ガスを注入しながら急冷混捏処理して加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。得られた油脂組成物の窒素ガス容量は10容量%であった。
【0032】
(実施例3)
コーン油58部、パーム低融点画分のエステル交換油脂40部、菜種極度硬化油2部のブレンド油をコンビネーターを用いて窒素ガスを注入しながら急冷混捏処理して加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。得られた油脂組成物の窒素ガス容量は13容量%であった。
【0033】
(比較例1)
菜種油からなる加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。
【0034】
(比較例2)
パーム中融点画分をコンビネーターを用いて急冷混捏処理し、加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。
【0035】
(比較例3)
パーム低融点画分80部、パーム油10部、パーム極度硬化油10部のブレンド油をコンビネーターを用いて急冷混捏処理し、加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。
【0036】
(比較例4)
精製ラードをコンビネーターを用いて急冷混捏処理し、加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。
【0037】
(比較例5)
パーム低融点画分43部、パーム油50部、大豆極度硬化油7部のブレンド油をコンビネーターを用いて窒素ガスを注入しながら急冷混捏処理して加熱調理食品用練り込み油脂組成物を試作した。得られた油脂組成物の窒素ガス容量は14容量%であった。
【0038】
実施例、比較例のSFCを表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例、比較例の油脂組成物を用い、以下の配合で食材を混ぜ合わせ、成型後、パン粉を付け、175℃で5分間フライし、メンチカツを作成した。
【0041】
実施例、比較例の油脂組成物を用い、得られたメンチカツをフライ後室温にて5時間放置後、試食しメンチカツのソフト感を10段階で評価した。また、フライ後、−20℃にて7日間冷凍保存し、その後室温にて3時間自然解凍したメンチカツのソフト感についても試食し、同様に10段階で評価した。
結果を表2に示す(※数値が高いほどソフトであることを示す)。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例、比較例の油脂組成物を用い、得られたメンチカツをフライ後、−20℃にて7日間冷凍保存し、その後室温にて3時間自然解凍後、2×4×6cmにカットしたメンチカツの硬さについて、クリープメーター(株式会社山電製)を用いて、くさび型プランジャーNo.49を使用し、破断強度測定により測定した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】