特許第6797794号(P6797794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6797794レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1に対する抵抗性を含んでなるレタス植物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797794
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1に対する抵抗性を含んでなるレタス植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 5/00 20180101AFI20201130BHJP
   A01H 5/12 20180101ALI20201130BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20201130BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20201130BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   A01H5/00 ZZNA
   A01H5/12
   A01H5/10
   C12Q1/68
   !C12N15/11
【請求項の数】14
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2017-523205(P2017-523205)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2017-532056(P2017-532056A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2015075127
(87)【国際公開番号】WO2016066748
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】14191135.4
(32)【優先日】2014年10月30日
(33)【優先権主張国】EP
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB 42086
(73)【特許権者】
【識別番号】517030099
【氏名又は名称】ヌンヘムス、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】NUNHEMS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、テオドルス、ゲラルドゥス、シャーレマン
(72)【発明者】
【氏名】バンサン、ピエール、アンドレ、トマ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアヌス、イェー.エム.ファン、デア、アーレント
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、ヨハンネス、マルティヌス、ラエッドツ
(72)【発明者】
【氏名】オルガ、ユリアン、ロドリゲス
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0289883(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0144513(US,A1)
【文献】 特表2013−510565(JP,A)
【文献】 特表2013−544093(JP,A)
【文献】 CID M,NEW SOURCES OF RESISTANCE TO LETTUCE APHIDS IN LACTUCA SPP.,ARTHROPOD-PLANT INTERACTIONS,SPRINGER,2012年 7月27日,VOL:6, NR:4,,PAGE(S):655 - 669,URL,http://dx.doi.org/10.1007/s11829-012-9213-4
【文献】 EENINK A H,RESISTANCE OF LETTUCE (LACTUCA) TO THE LEAF APHID NASONOVIA RIBIS NIGRI. 1. TRANSFER OF RESISTANCE FROM L. VIROSA TO L. SATIVA BY INTERSPECIFIC CROSSES AND SELECTION OF RESISTANT BREEDING LINES,EUPHYTICA,NL,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1982年,VOL:31, NR:2,,PAGE(S):291 - 299,URL,http://dx.doi.org/10.1007/BF00021643
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 5/00−5/12
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1(Nr:1)に対する抵抗性を付与する、NCIMB42086として寄託された種子から入手可能である、それぞれQTL6.1およびQTL7.1と命名された量的形質遺伝子座を含んでなる6番染色体上および/または7番染色体上のワイルドレタス(Lactuca virosa)由来遺伝子移入断片を含んでなるレタス(Lactuca sativa)植物であって、
前記6番染色体上遺伝子移入断片が、以下のマーカー:
a) 配列番号23内の一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号2内の一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号24内の一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;および
d) 配列番号3内の一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型
を含み
7番染色体上遺伝子移入断片が、以下のマーカー:
a) 配列番号17内の一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号25内の一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
c) 配列番号18内の一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;および
d) 配列番号19内の一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型
を含む、植物。
【請求項2】
6番染色体上の遺伝子移入断片および7番染色体上の遺伝子移入断片の両方を含んでなる、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記6番染色体上遺伝子移入断片が、以下分子マーカー:
a) 配列番号26内(もしくは配列番号26に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP1のGGもしくはGT遺伝子型、または
b) 配列番号27内(もしくは配列番号27に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP3のAAもしくはAC遺伝子型
をさらに含む、請求項1または2に記載の植物
【請求項4】
前記7番染色体上遺伝子移入断片が、以下分子マーカー:
a) 配列番号28内の、もしくは配列番号28に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーVSP2のCCもしくはCA遺伝子型、または
b) 配列番号29内の、もしくは配列番号29に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーVSP4のGGもしくはGA遺伝子型
をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物
【請求項5】
自由選択試験条件および非選択試験条件の両方の下でレタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1に対する抵抗性を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物。
【請求項6】
同一条件下で育成された場合に、植物上のバイオタイプ1のアブラムシの平均数が、レタス品種Mafalda等のNr:1感受性対照植物上に見られるバイオタイプ1のアブラムシの平均数の多くとも50%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物。
【請求項7】
同一条件下で育成された場合に、植物上のバイオタイプ1のアブラムシの平均数が10匹未満であり、一方、Mafalda品種等のNr:1感受性対照植物上のバイオタイプ1のアブラムシの平均数が少なくとも100匹である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の植物。
【請求項8】
レタス(Lactuca sativa)植物が、ルーズリーフレタス、ロメインレタス、クリスプヘッドレタス、バターヘッドレタス、バタビアレタスおよびステムレタスからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の植物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の植物に成長可能な、種子。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の植物の、葉または結球。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載のレタス植物の子孫植物であって、QTL6.1を含んでなる6番染色体および/またはQTL7.1を含んでなる7番染色体上に遺伝子移入断片を保持する、子孫植物。
【請求項12】
6番染色体および/または7番染色体上の前記遺伝子移入断片を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載のレタス植物の細胞または請求項11に記載の子孫植物の細胞。
【請求項13】
QTL6.1および/またはQTL7.1を含んでなる野生レタス(Lactuca virosa)植物を特定するための方法であって、
a) 1つの野生レタス(Lactuca virosa)植物または複数の野生レタス(Lactuca virosa)植物を用意する工程;
b) 所望により、前記野生レタス(Lactuca virosa)植物または複数の植物を、Nr:1抵抗性アッセイにおいてNr:1抵抗性について試験する工程;
c) a)の前記植物もしくは複数の植物の、または所望によりb)で特定されたNr:1抵抗性植物もしくは複数の植物のみのゲノムDNAを、QTL6.1を示す、および/またはQTL7.1を示す、一つまたは複数のマーカーの存在について、スクリーニングする工程であって、
QTL6.1を示すマーカーが、
− 配列番号23内の一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
− 配列番号2内の一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
− 配列番号24内の一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;および
− 配列番号3内の一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型
であり、
QTL7.1を示すマーカーが、
− 配列番号17内の一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
− 配列番号25内の一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
− 配列番号18内の一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;および
− 配列番号19内の一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型
である、工程;並びに
d) 前記c)のマーカーのうちの一つまたは複数を含んでなる植物を特定する工程;
e) 所望により、d)の植物を、Nr:1抵抗性アッセイにおいてNr:1抵抗性について試験する工程
を含んでなる、方法。
【請求項14】
NCIMB42086として寄託された種子から入手可能であるQTL6.1および/またはQTL7.1の存在について、レタス(Lactuca sativa)系統または品種をスクリーニングするための方法であって、
a) 1つのレタス(Lactuca sativa)植物または複数のレタス(Lactuca sativa)植物を用意する工程;
b) 所望により、前記レタス(Lactuca sativa)植物または複数の植物を、Nr:1抵抗性アッセイ(例えば自由選択および/または非選択)においてNr:1抵抗性について試験する工程;
c) a)の前記植物もしくは複数の植物の、または所望によりb)で特定されたNr:1抵抗性植物もしくは複数の植物のみのゲノムDNAを、QTL6.1を示す、および/またはQTL7.1を示す、一つまたは複数のマーカーの存在について、スクリーニングする工程であって、
QTL6.1を示すマーカーが、
− 配列番号23内の一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
− 配列番号2内の一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
− 配列番号24内の一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;および
− 配列番号3内の一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型
であり、
QTL7.1を示すマーカーが、
− 配列番号17内の一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
− 配列番号25内の一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
− 配列番号18内の一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;および
− 配列番号19内の一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型
である、工程;並びに
d) 前記c)のマーカーのうちの一つまたは複数を含んでなる植物を特定する工程;
e) 所望により、d)の植物を、Nr:1抵抗性アッセイにおいてNr:1抵抗性について試験する工程
を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6番染色体および/または7番染色体上にワイルドレタス(Lactuca virosa)等の野生レタス由来の一つまたは複数の遺伝子移入断片を含んでなり、前記遺伝子移入断片が、QTL6.1(6番染色体上のQTLについて)並びにQTL7.1および7.2(7番染色体上の2つのQTLについて)と称される、レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1(本明細書ではNr:1またはバイオタイプNr:1とも称される)に対する抵抗性のための量的形質遺伝子座(QTL)を含んでなる、栽培レタス(レタス(Lactuca sativa))種子、植物および植物部分に関する。また本発明は、QTL6.1および/またはQTL7.1(および/またはQTL7.2)を含んでなるワイルドレタス(L. virosa)由来の遺伝子移入断片の存在により、レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1に対して抵抗性である、栽培レタス(レタス(Lactuca sativa))種子、前記種子から成長した植物および植物部分、並びに、前記植物の子孫および前記植物を生産するための繁殖材料に関する。本発明はさらに、Nr:1抵抗性レタス植物の育種で使用するための抵抗性付与QTLの野生レタス供給源に関する。
【背景技術】
【0002】
レタスヒゲナガアブラムシ(lettuce aphid)(レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri (Mosley)))は、世界中でレタスに発生する主な害虫である。この問題は北西ヨーロッパにおける1970年台のレタス生産において深刻になり始め、ヨーロッパの至る所へと急速に拡大した。その後、1980年台に、前記アブラムシはカナダにおいて検出された。やがて、この問題は米国(カリフォルニア州およびアリゾナ州)において報告された。つい最近になって、レタスヒゲナガアブラムシはニュージーランドおよびオーストラリアにおいて発見された。
【0003】
レタスヒゲナガアブラムシは、あらゆる植物段階でレタス植物に定着することができ、より若い葉から摂食することを好む。植物上の大量のアブラムシは、植物成長を低減し、結球の形状を変形させ得るが、その結果、レタス結球は市場性が無くなる。レタス結球における大量のアブラムシの存在は、小売業者が栽培者からレタスの購入を拒む理由となる。若い植物時期に、殺虫剤を用いてレタスヒゲナガアブラムシを防除することが可能である。いくつかの製品がアブラムシ集団の防除に効果的であると報告された。しかし、化学薬品に対する抵抗性がいくつかのアブラムシ集団において報告された。さらに、より遅い発生段階になると、殺虫剤を用いてアブラムシを防除することはできず、化学製品もレタス結球に進入することができない。
【0004】
2007以来、レタスヒゲナガアブラムシの2つのバイオタイプがヨーロッパにおいて知られており、これらはバイオタイプNr:0およびNr:1と命名された。レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプNr:0に対する完全および部分的な抵抗性が、レタスの近縁野生種であるワイルドレタス(Lactuca virosa)において見出された(Eenink and Dieleman, Euphytica 32(3), 691-695 (1982))。完全抵抗性はNr遺伝子と称される1つの優性遺伝子によるものであった。Nr遺伝子がワイルドレタス(L. virosa)アクセッションIVT280から栽培レタス(L. sativa)に導入されたところ、非常に効果的であった(Arend et al. 1999, Eucarpia Leafy Vegetables ’99. Palacky University, Olomouc, Czech Republic, p149-157)。
【0005】
しかし、レタスヒゲナガアブラムシに対して抵抗性の品種の発売(release)が容易なものではないことを、育種家は経験している。Nr耐性遺伝子が、強力な負の副作用を付与する劣性遺伝子に強固に連結していることが分かった。Nr遺伝子についてホモ接合性の植物は、成長遅延、より薄い緑色および古い葉における葉緑素の分解加速を示した。この負の表現型は、「小型成長および急速老化(Compact Growth and Rapid Ageing)」表現型または「CRA表現型」とも称された。Nr遺伝子がホモ接合型で存在するが、CRA表現型が発現されない組換えレタス植物を発見することができた(例えば、欧州特許第0921720B1号参照)。Nr遺伝子および連結した劣性遺伝子の間で組換え現象(すなわち減数分裂乗換え)が起こったこれらの組換え植物は、負の副作用表現型に関連していないNr耐性遺伝子の供給源としての役割を果たした。
【0006】
IVT280(CGN04683)由来のNr耐性遺伝子は、市販のレタス栽培品種、例えば、栽培品種「Barcelona」、「Mafalda」(共にニュンヘムズB.V.(Nunhems B.V.)社)および他の多くの栽培品種で広く使用されている。
【0007】
単一の耐性遺伝子の大規模な使用は抵抗性崩壊の恐れに直面することから、バイオタイプNr:0抵抗性の他の供給源が今なお探索中である。異なる抵抗性機構を有する遺伝子はこのような場合に効果的に採用することができる。例えば、新たなバイオタイプNr:0耐性遺伝子が、ラクツカ・セリオラ(L. serriola)アクセッションPI491093およびワイルドレタス(L. virosa)アクセッションPI274378において発見された(Mc Creight 2008 HortScience 43:1355-1358; McCreight and Liu (2012), HortScience 47(2):179-184)。PI274378で発見された抵抗性は、完全抵抗性であり、IVT280由来のNr遺伝子の対立形質であることが分かった。PI49093では、部分的な抵抗性が見出され、前記著者らは、この抵抗性対立遺伝子をNr0と命名すると提唱した(PI274378で見出された完全抵抗性対立遺伝子に対するNr0とは対照をなす)。前記著者らは、Nr抵抗性に打ち克つアブラムシバイオタイプの発生を遅延または防止するために、この部分的抵抗性対立遺伝子を、完全抵抗性対立遺伝子がまだ広く採用されていない地域で使用することを提唱した。
【0008】
また、レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプNr:1に対する抵抗性も必要とされている。耐性遺伝子の使用を延長させるために、Nr:1に関して、異なる耐性遺伝子および抵抗性機構も求められている。大規模使用ある種の抵抗性機構を有する1つの耐性遺伝子でできている場合、新たなレタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプNr:1が出現した際、ヨーロッパにおいてNr遺伝子に対し2007年に起こったように、抵抗性がアブラムシ集団によって克服される確率は高い。従って、現状、アブラムシバイオタイプNr:0は、IVTワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来の単一のNr遺伝子によってまだ防除可能である(例えば、バイオタイプNr:1がまだ発生していない米国において)が、この遺伝子はヨーロッパで見られるアブラムシバイオタイプNr:1に対しては無効である。Nr:1バイオタイプは最初は中央ヨーロッパでのみ見られたが、今では他の地域に広がっており、2010年にはスペインの圃場でも見つかった(Cid et al. 2012, Arthropod-Plant Interactions 6: 655-669)。
【0009】
いくつかの刊行物に、レタスヒゲナガアブラムシバイオタイプNr:1に対する抵抗性遺伝子を含有することが示唆される供給源が記載されている。例えば、3つのアクセッション(CGN13361、CGN16266、CGN16272)が、アブラムシバイオタイプNr:0およびNr:1の両方に対して抵抗性であると記載され(匿名、4. Nov. 2008, IP.COM document 000176078)、複合型Nr:0およびNr:1抵抗性レタスの育種に使用されることが提唱された。この論文では、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションCGN16272およびCGN16266が、それぞれ栽培品種Daguan(シンジェンタ社(Syngenta))および栽培品種Funly(シンジェンタ社)(これらの栽培品種は共にナソノビア属(Nasonovia)耐性遺伝子を欠く)との戻し交雑計画に使用されるといわれ、その子孫はドナーアクセッションの抵抗性と類似した抵抗性を示すといわれる。また、CGN16272の耐性遺伝子のマーカーが、CGN16272と栽培品種Cobham Greenとの交雑から開発されるといわれる(匿名、4. Nov. 2008、上記)。また、これら3つのアクセッションはCid et al.(2012、上記)において解析され、高度なNr:0抵抗性を含んでなるが、バイオタイプNr:1抵抗性は部分的にしか含んでならないことが分かった。
【0010】
Cid et al.(2012、上記)はまた、バイオタイプNr:1およびNr:0の両方に対していくらかの抵抗性を有する3つのワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、すなわちCGN16274、CGN21399およびCGN05148、を特定した。この研究において、前記著者らの目的は、単一の野生アキノノゲシ属(Lactuca)アクセッションにおいて、レタスヒゲナガアブラムシバイオタイプNr:0およびNr:1の両方に対する抵抗性を発見することであった。しかし、バイオタイプNr:1のアブラムシは、感受性対照上よりも低い程度ではあるが、これらの野生アクセッション上で摂食および繁殖することが可能である(図4参照)。
【0011】
国際公開第2011/058192号は、ラクツカ・セリオラ(L. serriola)10G.913571がバイオタイプNr:1に対して抵抗性であると報告しているが、この主張を実証するデータは提供されておらず、抵抗性のレベルの表示もこれを測定する方法も与えられていない。
【0012】
国際公開第2012/066008号および国際公開第2012/065629号も、ラクツカ・セリオラ(L. serriola)アクセッション由来のNr:1抵抗性が、10G.913569と命名されたバルク種子試料に導入されることを報告している。同じく、データは提供されておらず、抵抗性レベルの表示も抵抗性を測定する方法も与えられていない。
【0013】
このように、匿名2008(上記)およびCid et al. 2012(上記)等の先行技術では、Nr:1アブラムシの量がある程度減少される野生アクセッションはほんの少ししか特定されておらず、遺伝学的根拠も提供されていない。
【0014】
Nr:1抵抗性を含んでなる栽培レタスを開発するために、バイオタイプNr:1に対する抵抗性を付与することができる遺伝子の特定が、依然として必要とされている。本発明者らは、バイオタイプNr:0のアブラムシに対して感受性であると考えられたアクセッションを、これらのアクセッションにおいてバイオタイプNr:1に対する(新たな)耐性遺伝子を特定するために、探索した。さらに、本発明者らは、自由選択抵抗性および非選択抵抗性の両方を付与することができる遺伝子の特定も求めた。本発明者らは、自由選択条件および非選択条件の両方の下でバイオタイプNr:1に対する高レベルの抵抗性を含んでなるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション(その代表的な種子試料はNCIMB42086として寄託された)を見出し、いくつの、およびどのワイルドレタス(L. virosa)ゲノム領域がNr:1抵抗性付与に関与するかを特定するために、抵抗性のマッピングを試みることを決定した。
【0015】
抵抗性のマッピングを試みる際、本発明者らは、QTLマッピングに使用可能な植物集団(すなわち、レタス(L. sativa)ゲノムとワイルドレタス(L. virosa)ゲノムとの間で染色体減数分裂性組換えを起こした個体からなるマッピング集団)の作製において、深刻な問題に遭遇した。2つの異なる種であるワイルドレタス(L. virosa)およびレタス(L. sativa)の染色体が全く異なっており、これにより、交雑障害および生殖不能、並びに減数分裂および乗換え中の潜在的な問題が引き起こされ得るためである。使用可能なF2集団を作製することができず、様々な反復親と多くの交雑をして初めて、本発明者らは、マッピング研究に使用可能な十分に大きな戻し交雑ファミリーを作製することに成功した。これらのマッピング集団は、分子マーカーおよび表現型検査を用いた解析も容易ではなかった。すなわち、本発明者らが、反復親とワイルドレタス(L. virosa)アクセッションとの間で多型性であるSNPマーカーを含む遺伝子地図を首尾よく作成し、ナソノビア属(Nasonovia)Nr:1抵抗性をその地図上にマッピングすることもできたことは、実に驚くべきことであった。
【0016】
驚くべきことに、最初のQTLマッピング研究(BC1集団を使用)において、本発明者らは、単一の遺伝子ではなく、Nr:1抵抗性に寄与する、ワイルドレタス(L. virosa)の2つの異なる染色体上の3つのゲノム領域(そのうち2つのみが後に異なる戻し交雑集団においても発見された)を発見した。制御環境下接種(自由選択および非選択)並びに圃場データ(自由選択および非選択)の両方が、3つの地理的に異なるNr:1バイオタイプ(ドイツ、フランスおよびスペイン)に対する高レベルのNr:1抵抗性を示した。実際に、スペイン(ムルシア)における圃場評価では、アクセッションNCIMB42086の半成体および成体植物は、自由選択試験および非選択試験の両方において、それらの葉上にいかなるNr:1アブラムシも有さなかった。
【0017】
後のマッピング研究において、2つのQTL(QTL6.1およびQTL7.1)が再度発見され、QTL領域を絞ることができた。この第二のマッピング研究は第一の研究の結果を無効にするものではなく、3つ全てのQTLが本明細書に包含される。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、バイオタイプNr:1に対する抵抗性を含んでなる栽培レタス植物を作製するために使用することができる、ワイルドレタス(L. virosa)由来の3つのQTL(QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2と命名)を提供することである。
【0019】
また、ワイルドレタス(L. virosa)等の野生レタスからレタス(L. sativa)ゲノムに遺伝子移入された1つまたは2つまたは3つのQTL(QTL6.1および/またはQTL7.1および/またはQTL7.2)を含んでなり、遺伝子移入によってバイオタイプNr:1に対する抵抗性が付与された、栽培レタス植物を提供することも、本発明の目的である。
【0020】
従って、様々な栽培レタス植物が本明細書に包含される:a)QTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2から選択される、Nr:1抵抗性を付与する1つのみのQTLを含んでなる栽培レタス植物;b)QTL6.1およびQTL7.1およびQTL7.2から選択される、Nr:1抵抗性を付与する2つのQTLを含んでなる栽培レタス植物(一つの態様においては、QTL6.1およびQTL7.1の両方を含んでなる植物が、特定の実施態様である);c)QTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2から選択される、Nr:1抵抗性を付与する3つのQTLを含んでなる栽培レタス植物。
【0021】
また、ワイルドレタス(L. virosa)等の野生レタスからレタス(L. sativa)ゲノムに遺伝子移入された、QTL6.1およびQTL7.1から選択される1つまたは2つのQTLを含んでなり、遺伝子移入によってバイオタイプNr:1に対する抵抗性が付与された、栽培レタス植物を提供することも、本発明の目的である。
【0022】
一つの態様において、前記QTLは、受入番号NCIMB42086として寄託された種子から入手可能である(その中に存在する)。前記QTLを含んでなる遺伝子移入断片は、少なくとも1、2、3、4つ、またはそれ以上のマーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である。別の態様では、前記QTLは、他のNr:1抵抗性野生レタスアクセッション、特にワイルドレタス(L. virosa)アクセッションから入手可能であり(その中に存在し)、遺伝子移入断片は、少なくとも1、2、3、4つ、またはそれ以上の(すなわち5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上の)本明細書で開示されるマーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である。一つの態様において、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションは、2種類のアクセッションのうちの一方であり、遺伝子移入断片は、あるワイルドレタス(L. virosa)アクセッションに対して共に特異的であるVSP1およびVSP2、並びに、別のワイルドレタス(L. virosa)アクセッションに対して共に特異的であるVSP3およびVSP4から選択される、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的SNPマーカー(ワイルドレタス特異的(Virosa Specific)からVSPと命名)を含んでなる。
【0023】
上記の種間QTLマッピングには不妊症、分離ひずみ等のような問題があるが、本来見られるQTL領域(6番染色体上の60〜240Mb;およびQTL7.1については7番染色体上の170〜235Mb;並びにQTL7.2については70〜150Mbに亘る物理的領域に本来はマッピングされた)は、(QTL6.1を含んでなる)6番染色体上の77Mb〜161MbおよびQTL7.1を含んでなる7番染色体上の203Mb〜219Mbに亘る領域にマッピングすることができた。
【0024】
そのため、一つの態様において、それぞれホモ接合型またはヘテロ接合型の6番染色体(QTL6.1を含んでなる)上および/または7番染色体(QTL7.1を含んでなる)上の遺伝子移入断片を含んでなり、前記遺伝子移入断片がレタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1(Nr:1)に対する抵抗性を付与する、栽培レタス(Lactuca sativa)植物が提供される。一つの態様において、遺伝子移入断片は、6番染色体上の77Mbから開始し6番染色体上の161Mbで終結する領域の全てもしくは一部を含んでなり、および/または、遺伝子移入断片は、7番染色体上の203Mbから開始し7番染色体上の219Mbで終結する領域の全てまたは一部を含んでなる。例えば、抵抗性付与QTLであるQTL6.1およびQTL7.1、またはその異型を含んでなる、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション(例えばNCIMB42086)等の野生Nr:1抵抗性アクセッション由来の遺伝子移入断片が灰色の棒によって図示されている、レタス(L. sativa)の6番および7番染色体を示す図3Bを参照されたい。一つの態様において、QTL7.2を含んでなる遺伝子移入断片が、所望により、栽培レタス植物に存在していてもよい。
【0025】
QTL6.1(または異型)を保持するより小さな遺伝子移入断片(すなわち、6番染色体の77Mb〜161Mbに亘る上記領域の抵抗性付与部分を含んでなる)は、80Mb、70Mb、60Mb、50Mb、40Mb、30Mb、20Mb、10Mb、5Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、100kb、50kbまたはそれ以下のサイズを有し、QTL6.1またはその異型を含んでなる断片であり得ると理解される。一つの態様において、前記部分は少なくとも5kb、10kb、20kbまたはそれ以上のサイズである。
【0026】
さらに、QTL7.1(または異型)を保持するより小さな遺伝子移入断片(すなわち、7番染色体の203Mb〜219Mbに亘る上記領域の抵抗性付与部分を含んでなる)は、15Mb、10Mb、5Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、100kb、50kbまたはそれ以下のサイズを有し、QTL7.1またはその異型を含んでなる断片であり得ると理解される。一つの態様において、前記部分は少なくとも5kb、10kb、20kbまたはそれ以上のサイズである。
【0027】
一つの態様において、6番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2または3または4または5つ(またはそれ以上)を検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号23内の(または配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号24内の(または配列番号24に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;
配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) SNP1.23およびSNP_03の間(例えばSNP1.23およびSNP2.24、SNP1.23およびSNP_02の間);またはSNP_02およびSNP_03の間(例えばSNP_02およびSNP2.24の間);またはSNP2.24およびSNP_03の間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー;
e) SNP1.23、SNP_02、SNP2.24、またはSNP_03から選択されるあらゆるマーカーの10Mbの距離内、好ましくは5Mb以内に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特にワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0028】
所望により、一つの態様において、遺伝子移入断片は、配列番号26内(または配列番号26に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP1のGGまたはGT遺伝子型および配列番号27内(または配列番号27に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP3のAAまたはAC遺伝子型から選択されるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカーを含んでなる(且つ、それによって検出可能である)。SNPマーカーVSP1およびVSP3を用いることで、2つの異なるワイルドレタス(L. virosa)型アクセッション由来のQTL6.1を含んでなる遺伝子移入断片を区別することができる。
【0029】
別の態様では、(7番染色体の203Mb〜219Mbの物理的位置に)QTL7.1を含んでなる7番染色体の遠端における遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2または3または4または5つ(またはそれ以上)を検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a. 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b. 配列番号25内の(または配列番号25に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP17.25のTTまたはTC遺伝子型;
c. 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
d. 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
e. SNP_17とSNP_19との間、またはSNP_17とSNP_18との間、またはSNP_17とSNP17.25との間、またはSNP17.25とSNP_19との間、またはSNP17.25とSNP_18との間、またはSNP_18とSNP_19との間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー;
f. SNP_17、SNP_17.25、SNP_18およびSNP_19から選択されるあらゆるマーカーの12Mb、10Mbの距離内、好ましくは5Mb以内に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特にワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0030】
所望により、一つの態様において、遺伝子移入断片は、配列番号28内(または配列番号28に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP2のCCまたはAC遺伝子型および配列番号29内(または配列番号29に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP4のGGまたはGA遺伝子型から選択されるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカーを含んでなる(且つ、それによって検出可能である)。SNPマーカーVSP2およびVSP4を用いることで、2つの異なる種類のワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来のQTL7.1を含んでなる遺伝子移入断片を区別することができる。
【0031】
一つまたは複数のマーカー「を検出する分子マーカーアッセイによって検出可能」である遺伝子移入断片に言及する場合、これは、遺伝子移入断片がそのマーカーの抵抗性遺伝子型を含んでなることを意味する。
【0032】
さらなる態様において、QTL6.1および/またはQTL7.1(および所望によりQTL7.2)を含んでなる野生レタス由来の、例えばワイルドレタス(L. virosa)由来の遺伝子移入断片を含んでなり、前記遺伝子移入断片によってレタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプNr:1に対する抵抗性が付与される、種子、植物および植物部分または栽培レタスが提供される。一つの態様において、遺伝子移入断片は、ワイルドレタス(L. virosa)由来、特に、本明細書に記載の自由選択試験および非選択試験の両方におけるNr:1抵抗性を含んでなるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来である。一つの態様において、遺伝子移入断片は、アクセッションNCIMB42086由来であり、あるいは、アクセッションNCIMB42086、またはその子孫(progeny)もしくは子孫(descendant)から入手可能である。
【0033】
別の態様において、遺伝子移入断片は、以下のワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的SNPマーカーを含んでなるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来である:VSP1マーカーと命名された、配列番号26の(または配列番号26に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)ヌクレオチド71における、GG遺伝子型(ホモ接合性)またはGT遺伝子型(ヘテロ接合性);並びに、VSP2と命名された、配列番号28の(または配列番号28に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)ヌクレオチド71における、CC遺伝子型(ホモ接合性)またはAC遺伝子型(ヘテロ接合性)。VSP1およびVSP2は、NCIMB42086等のNr:1抵抗性アクセッションに見られる。
【0034】
別の態様において、遺伝子移入断片は、以下のワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的SNPマーカーを含んでなるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来である:VSP3マーカーと命名された、配列番号27の(または配列番号27に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)ヌクレオチド71における、AA遺伝子型(ホモ接合性)またはAC遺伝子型(ヘテロ接合性);並びに、VSP4と命名された、配列番号29の(または配列番号29に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)ヌクレオチド71における、GG遺伝子型(ホモ接合性)またはAG遺伝子型(ヘテロ接合性)。VSP3およびVSP4は、Nr:1抵抗性アクセッションに見られる。
【0035】
また、6番染色体(QTL6.1を含んでなる)および/または7番染色体(QTL7.1および/またはQTL7.2を含んでなる)上に野生レタス由来、例えばワイルドレタス(L. virosa)由来、の遺伝子移入を含んでなる栽培レタス植物を作製および/または特定および/または選抜するための方法も提供され、QTLを異なる栽培レタス植物系統または品種に、特にNr:1感受性レタス系統または品種に導入するための方法も提供される。
【0036】
定義
不定冠詞「a」または「an」は、文脈が1つの要素が存在することおよび1つのみの要素が存在することを明白に要求していない限り、2つ以上の前記要素が存在する可能性を排除しない。従って、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つの」を意味する。
【0037】
「植物品種(plant variety)」は、(植物育種者権の承認条件が満たされているか否かにかかわらず)ある特定の遺伝子型または遺伝子型の組合せからもたらされる特徴の発現に基づいて定義可能であり、それらの特徴のうちの少なくとも1つの発現によって他のあらゆる植物と区別可能であり、いかなる変化も無しに繁殖可能であるため、独立体として認識可能である、既知の最下位の同一植物分類群内の植物群である。従って、用語「植物品種」は、植物が同じ種類であったとしても、全てが1つまたは2つまたは3つの遺伝子座または遺伝子(またはこれらの特定の遺伝子座もしくは遺伝子による表現型的特徴)の存在を特徴とするが、ゲノム内のその他の遺伝子座または遺伝子に関しては著しく互いに異なり得る場合、植物群を表すのに使用することはできない。
【0038】
「レタス」または「栽培レタス」または「栽培レタス(Lactuca sativa)」は、本明細書において、ヒトにより食用に育種され、良好な農学的特徴を有する、レタス(Lactuca sativa L.)種の植物(または前記植物に成長可能な種子)、およびそのような植物の一部を指す。これには、あらゆる種類の育種系統(例えば、戻し交雑系統、近交系)、栽培品種および品種等の、あらゆる栽培レタスが包含される。一般的に、レタスの結球型と非結球型とが区別される。結球型としては例えばクリスプヘッド型、バターヘッド型およびロメイン(コス)型が挙げられ、一方、非結球型としてはリーフ型が挙げられる。栽培レタス植物は、「野生レタス」植物または「野生アキノノゲシ属(Lactuca)」植物、すなわち、栽培植物よりもかなり乏しい生産量および乏しい農学的特徴を一般的に有し、例えば野生集団において天然に生育する植物、ではない。
【0039】
「野生レタス」または「野生アキノノゲシ属(Lactuca)」アクセッションは、ワイルドレタス(Lactuca virosa)、ラクツカ・セリオラ(Lactuca serriola)、ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)、ラクツカ・ペレニス(Lactuca perennis)等の、栽培レタス(Lactuca sativa)以外の植物種を指す。このような野生レタスは、所望により、胚救出法(Maisonneuve 1987, Agronomique 7: 313-319およびMaisonneuve et al. 1995, Euphytica 85:281-285を参照)および/もしくは染色体倍加法(Thompson and Ryder 1961, US Dept Agric Tech Bul. 1224)、またはラクツカ・セリオラ(L. serriola)等の橋渡し種を介して遺伝子をレタス(L. sativa)に導入可能な方法(Eenink et al. 1982、上記)を用いて、レタス(L. sativa)と他花受精可能な、アキノノゲシ属(Lactuca)種を含んでなる、またはそれらからなることが好ましい。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「植物」には、種子(前記植物に成長可能)、植物全体またはあらゆる部分、例えば、それが得られる植物と同じ遺伝子構造(または非常に似た遺伝子構造)を有することが好ましい、植物器官(例えば、収穫された、または収穫されていない葉等)、植物細胞、植物プロトプラスト、植物細胞もしくは組織の培養物、植物カルス、植物細胞集塊、植物移植片、実生、植物内で無処置の植物細胞、植物クローンもしくはマイクロプロパゲーション、または植物の一部(例えば、収穫された組織または器官)、例えば、植物の挿穂、栄養繁殖、胚、花粉、胚珠、花、葉、結球、種子(自家受精または他家受精の後に植物上に生み出される)、クローン増殖植物(clonally propagated plant)、根、茎、柄、根端、移植片、これらのいずれかの一部等、またはこれらの誘導体が包含される。また、実生、発根前もしくは発根後の挿穂、成熟したおよび/もしくは未成熟な植物または成熟したおよび/もしくは未成熟な葉等の、あらゆる発生段階も包含される。「植物の種子」が言及される場合、これらは、前記植物に成長可能な種子または自家受精または他家受精後に前記植物上に生み出される種子を指す。
【0041】
「体細胞(somatice cell)」および「生殖細胞」は区別可能であり、体細胞は配偶子(例えば胚珠および花粉)、生殖細胞および生殖母細胞以外の細胞である。配偶子、生殖細胞および生殖母細胞は「生殖細胞」である。
【0042】
「組織培養物」または「細胞培養物」は、同一もしくは異なる種類の単離細胞を含んでなるインビトロ組成物または植物組織に組織化されたそのような細胞の集合を指す。レタスの組織培養物および細胞培養物、並びにそれからのレタス植物の再生は、周知であり、広く公表されている(例えば、Teng et al., HortScience. 1992, 27(9): 1030-1032 Teng et al., HortScience. 1993, 28(6): 669-1671, Zhang et al., Journal of Genetics and Breeding. 1992, 46(3): 287-290を参照)。
【0043】
「収穫された植物材料」は、本明細書において、さらなる貯蔵および/またはさらなる使用のために集められた植物部分(例えば、植物全体から脱離した葉、葉の一部または結球)を指す。
【0044】
「収穫された種子」は、系統または品種から収穫された、例えば、自家受精または他家受精後に生み出され、収集された、種子を指す。
【0045】
「収穫された葉」または「収穫された結球」は、本明細書で使用される場合、レタスの葉、または葉の一部または結球、すなわち、根系が無い植物、例えば、実質的に全ての(収穫された)葉、を指す。葉は全体であってもコマ切れであってもよい。
【0046】
「子孫(progeny)」または「子孫(progenies)」または「子孫(descendants)」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の、ホモ接合型もしくはヘテロ接合型の一つもしくは複数のNr:1抵抗性を付与するQTLおよび/またはNr:1抵抗性表現型を含んでなる(保持する)、子孫(offspring)、すなわち、本発明の植物に由来する(それから入手される)(それに由来し得る、またはそれから入手され得る)第一および全てのさらなる子孫、を指す。子孫は、細胞培養物もしくは組織培養物、もしくは植物の一部の再生によって、または植物の自家受粉によって、または植物の種子の生産によって、発生し得る。さらなる実施態様では、子孫には、少なくとも1つのレタス植物と、同一もしくは別の品種もしくは(育種)系統の別のレタス植物、もしくは野生アキノノゲシ属(Lactuca)植物との交雑、戻し交雑、植物への遺伝子座の挿入、または変異から得られるレタス植物も包含され得る。子孫は、例えば、第一世代の子孫である。すなわち、子孫は、例えば、伝統的な育種法(自家受粉および/または交雑)または再生または形質転換によって親植物から直接的に由来する、入手される、入手可能である、または由来し得る。しかし、用語「子孫」は、一般的には、第二、第三、第四、第五、第六、第七またはそれ以降の世代等のさらなる世代、すなわち、例えば伝統的な育種法、再生または遺伝子形質転換法によって、前の世代から由来する、入手される、入手可能である、または派生し得る植物の世代も包含する。例えば、第二世代の子孫は、上記の方法のいずれかによって第一世代の子孫から生み出すことができる。また、倍加半数体植物も子孫である。
【0047】
「植物系統」または「育種系統」とは、植物表現型において高度に均一な植物およびその子孫を指す。本明細書で使用される場合、用語「近交系」とは、繰り返し同系繁殖された、全ての対立遺伝子がほとんどホモ接合性のである植物系統を指す。従って、「近交系」または「親系統」とは、数世代(例えば、少なくとも4、5、6、7またはそれ以上)の同系交配を経て、その結果高度な均一性を有する植物系統を得た植物を指す。
【0048】
「F1、F2、F3等」は、2つの親植物間または親系統間の交雑後の連続的な近縁世代を指す。2つの植物または系統を交雑することにより生産された種子から成長した植物はF1世代と称される。F1植物の自家受粉により、F2世代等がもたらされる。
【0049】
「雑種」とは、ある植物系統または品種と別の植物系統または品種との交雑から収穫された種子、および前記種子から成長した植物または植物部分を指す。
【0050】
「F1雑種」植物(またはF1雑種種子)は、2つの非同質遺伝子近交系親系統の交雑から得られる世代である。従って、F1雑種種子は、F1雑種植物に成長する種子である。
【0051】
「種間雑種」とは、ある種の植物(例えばレタス(L. sativa))と、別の種の植物(例えばワイルドレタス(L. virosa))との交雑からつくられた雑種を指す。
【0052】
「交雑」とは、2つの親植物の交配を指す。同様に「他家受粉」とは、異なる親からの2つの配偶子の合体による受精を指す。
【0053】
「自家受粉(selfing)」とは、植物の自家受粉(self-pollination)、すなわち、同一の親からの配偶子の合体を指す。
【0054】
「戻し交雑」とは、一つまたは複数のNr:1抵抗性付与QTL等の形質を下位の遺伝的背景(例えば、野生レタス;「ドナー」とも称される)から上位の遺伝的背景(「反復親」とも称される)(例えば、栽培レタス)に導入することができる育種法を指す。交雑種(例えば、野生のNr:1抵抗性レタスと栽培されたNr:1感受性レタスとの交雑によって得られたF1植物;またはF1の自家受粉から得られたF2植物もしくはF3植物等)の子孫は、上位の遺伝的背景を有する親に対して、例えば栽培されたNr:1感受性の親に対して、「戻し交雑」される。反復的な戻し交雑の後、下位の遺伝的背景の形質が上位の遺伝的背景に組み込まれる。これに関連して、用語「遺伝子変換した(gene converted)」または「変換植物(conversion plant)」または「一/二/三遺伝子座変換体(single /double/ triple locus conversion)」とは、供与親から導入された一つまたは複数のQTL(例えば、Nr:1抵抗性を付与するQTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2)に加えて、反復親の所望の形態的および/または生理的特徴の本質的に全てが戻された、戻し交雑によって生じた植物を指す。
【0055】
本明細書では、用語「伝統的育種法」には、例えば、本明細書においてQTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2と称される一つまたは複数のNr:1抵抗性付与QTLを入手、同定、選択、および/または導入することができる、育種家に公知の、交雑、戻し交雑、自家受粉、選抜、染色体倍加、倍加半数体作出、胚救出、橋渡し種の使用、原形質融合、マーカー支援選抜、突然変異育種等(すなわち、遺伝子改変/形質転換/遺伝子導入法以外の方法)が包含される。
【0056】
「再生」とは、インビトロ細胞培養または組織培養または栄養繁殖からの植物の発達を指す。
【0057】
「栄養繁殖」、「栄養生殖」または「クローン繁殖」は、本明細書において同義的に使用され、植物の一部を取り、その植物部分に少なくとも根を形成させる方法を意味し、ここで、植物部分は、例えば、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、細胞、プロトプラスト、分裂組織細胞、根、根端、雌ずい、葯、花、茎頂、苗条、茎、果実、および葉柄と定義される、またはそれらに由来する(例えば切り取りによって)。植物全体が栄養繁殖によって再生された場合、それは「栄養繁殖体」または「栄養繁殖植物」とも称される。
【0058】
「一(または二または三)遺伝子座変換(converted)(変換(conversion)))植物」とは、例えば戻し交雑法を介して植物に導入された1つの遺伝子座(または2つもしくは3つの遺伝子座)の特徴に加えて、レタス植物の所望の形態的および/または生理的特徴の本質的に全てが戻される、戻し交雑を含んでなる、または戻し交雑からなる植物育種法によって生じた植物を指す。
【0059】
「導入遺伝子」または「キメラ遺伝子」とは、形質転換によってレタス植物のゲノムに導入されたDNA配列を含んでなる遺伝子座を指す。そのゲノムに安定に組み込まれた導入遺伝子を含んでなる植物は「遺伝子導入植物」と称される。
【0060】
「実質的に等価な」または「有意に異なっていない」または「統計的に有意に異なっていない」とは、例えば2つの植物系統または品種の間で比較した場合に等価またはほぼ同一である特徴を指す。言い換えれば、2つの植物系統または品種の間で「実質的に等価な」特徴は、前記特徴の平均値が10%未満(例えば9、8、7、6、5、4、3、2、1%またはそれ未満)異なること、およびANOVAを用いたこの差異の統計的有意性が0.05以上のpを有さないことを意味する。
【0061】
「平均値」とは、本明細書では、相加平均を指す。用語「平均値(mean)」は、いくつかの測定値の相加平均を指す。植物系統または品種の表現型がある程度生育条件に依存すること、および、それ故、少なくとも10、15、20、30、40、50またはそれ以上の植物の相加平均が、好ましくは、何回かの反復実験および同一実験における同一条件下で育成された適切な対照植物を伴う無作為化された実験計画において測定されることが、当業者によって理解される。
【0062】
「統計的に有意な」または「統計的に有意に」異なる、または「有意に」異なるとは、適切な対照(例えば、本明細書においては、QTLを欠く遺伝的対照系統、またはNr:1感受性対照品種、例えばMafalda)と比較した場合に、その特徴において対照(の平均値)と統計的に有意な差異(例えば、p値が0.05未満、p<0.05、ANOVA使用)を示す、Nr:1抵抗性等の植物系統または品種の特徴を指す。そのため、例えば、平均して対照よりも「統計的に有意により少ない」アブラムシまたは「有意により少ない」アブラムシを有する植物系統または品種または遺伝子型は、平均アブラムシ数における差異が対照植物から統計的に有意である植物である。
【0063】
「レタスヒゲナガアブラムシ」とは、レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)種のアブラムシを指す。
【0064】
「バイオタイプNr:0」とは、IVT280由来のNr遺伝子によって抵抗性を与えられたレタスヒゲナガアブラムシのバイオタイプを指し、すなわち、このバイオタイプのレタスヒゲナガアブラムシはMafalda(ニュンヘムズ社(Nunhems))、Barcelona(ニュンヘムズ社)等のNr遺伝子を含んでなる品種上で摂食および繁殖することができない。
【0065】
「バイオタイプNr:1」とは、IVT280由来のNr遺伝子によって抵抗性を与えられていないレタスヒゲナガアブラムシのバイオタイプを指す。従って、このバイオタイプのレタスヒゲナガアブラムシは、Mafalda(ニュンヘムズ社)、Barcelona(ニュンヘムズ社)等のNr遺伝子を含んでなる品種および系統上で摂食および繁殖することができる。
【0066】
制御された環境条件下(例えばクライメイトセル(climate cell)内)で実行される抵抗性試験に言及する場合、バイオタイプNr:0またはNr:1の単一の選択されたアブラムシのクローンコロニーが言及されることが好ましい。これらは本明細書ではアブラムシ「単離物」とも称される。
【0067】
野生または栽培レタス植物系統、品種またはアクセッションは、バイオタイプNr:0の繁殖(バイオタイプNr:0のアブラムシによる外寄生の後、例えば約7、14、21、28、35日および/またはそれ以上の日数後に、周期的に計数された、植物当たりのアブラムシの平均数)が、感受性品種Salinas(異名Saladin;育種家Ryder E.J.、米国農務省、農業調査局、カリフォルニア、米国、が最初に開発)等の、レタスヒゲナガアブラムシ耐性遺伝子を欠く対照植物と比較して、統計的に有意に減少している場合、「Nr:0抵抗性植物」、または「バイオタイプNr:0に対して抵抗性の植物」、または「Nr:0抵抗性」を有する植物、または「Nr:0抵抗性表現型」であると言われる。バイオタイプNr:0の繁殖の有意な減少は、当該技術分野において公知の、例えばMcCreight and Liu, 2012, HortScience 47(2)の材料と方法等の記載される、例えば温室試験または囲い圃場試験(caged field test)を用いて、決定することができる。温室試験または囲い圃場試験は、自由選択試験(free-choice test)(アブラムシがいくつかの植物系統または品種上で摂食および繁殖することが可能)および/または非選択試験(non-choice test)(アブラムシが1つの植物系統または品種上でのみ摂食および繁殖することが可能)であり得る。あるいは、品種Salinas(異名Saladin)等の感受性対照の天然の外寄生がモニターされ、対照上の外寄生が多数である場合に、アブラムシが試験植物および対照上で計数される、開放圃場試験が実行され得る。前記用語は、「部分的Nr:0抵抗性」(McCreight and Liu, 2012に記載のPI491093におけるような)および「完全Nr:0抵抗性」(IVT280におけるような、McCreight and Liu 2012(同上)を参照)の両方を包含する。完全Nr:0抵抗性植物上では、バイオタイプNr:0のアブラムシは、接種後または外寄生後に測定される週1回の時点において、実質的に摂食および繁殖しない。
【0068】
野生または栽培レタス植物系統、品種またはアクセッションは、バイオタイプNr:1のアブラムシによる外寄生後に(例えば、圃場への実生の移植から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14週もしくはそれ以上の週数後;および/または、植物が3〜4本葉期以降に達した後、すなわち、最終成体サイズの30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%に達した際に)一つまたは複数の時点において計数された植物当たりのバイオタイプNr:1のアブラムシの平均数が、レタスヒゲナガアブラムシ耐性遺伝子を欠く対照植物(例えば、品種Salinas(異名Saladin))と比較して、並びに/または、Nr耐性遺伝子を有する対照植物、例えば、品種Mafalda(ニュンヘムズ社)、および/もしくは前記遺伝子移入断片を欠くが、その他の点では遺伝子移入断片を含んでなる植物と遺伝的に同一もしくは遺伝的に非常に類似した遺伝的対照と比較して、統計的に有意に減少している場合、「Nr:1抵抗性植物」、または「バイオタイプNr:1に対して抵抗性の植物」、または「Nr:1抵抗性」を有する植物、または「Nr:1抵抗性表現型」、または「有意に低減した感受性を有する植物」、または「有意に増強された抵抗性」であると言われる。一つの態様において、有意な減少とは、Nr:1抵抗性植物上のアブラムシの平均数が、同一条件下で育成された場合の、品種Mafalda等のNr:1感受性品種(またはNr遺伝子を含んでなる他のNr:1感受性品種)上に、または遺伝的対照上に見られるアブラムシの平均数の、多くとも50%、49%、48%、47%、45%、好ましくは多くとも40%、好ましくは多くとも30%、20%または10%、より好ましくは多くとも5%、3%、2%、または1%であることを指す。一つの実施態様では、植物は、Nr:1アブラムシを含まない、または実質的に含まない(植物系統または品種につき平均10、9、8、7、6、5、4、3未満のアブラムシ)。Nr:1抵抗性は、実施例において定義および記載されるNr:1抵抗性アッセイで決定することができる。
【0069】
「Nr:1抵抗性アッセイ」は、例えば実施例に記載される、非選択試験(アブラムシが1つの植物系統または品種上でのみ摂食および繁殖することが可能)および/または(自由)選択試験であり得る。選択試験または非選択試験は、クライメイトセル等の制御された環境内であるか、または圃場内(選択試験に対する開放圃場、または、非選択試験に対する囲い圃場)であり得る。抵抗性についての選択試験は、アブラムシが摂食および繁殖のために様々な植物遺伝子型の中から選択をすることができる試験を指す。一般的に、選択試験は、抗生性(antixenosis)(非選好性(non-preference))抵抗性、すなわち、植物遺伝子型を魅力のないものにする要素によって引き起こされる抵抗性、を特定するために使用される。抵抗性についての非選択試験は、アブラムシが摂食および繁殖のために様々な植物遺伝子型の中から選択をすることができず、1つの遺伝子型上でのみ摂食および繁殖することが許された、試験を指す。これにより抗生作用の検出が可能になる。Mafalda等のNr:1感受性対照植物上で、アブラムシは、約50、100、150、200、250、300匹またはそれ以上まで繁殖することができる。非選択条件下で有効な抵抗性は昆虫それ自体に影響を与え、例えば、昆虫は死ぬか、より少ない子孫を産むか、またはよりゆっくりと成長する。
【0070】
形質を付与する遺伝因子、遺伝子座、遺伝子移入断片または遺伝子または対立遺伝子(例えば、レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)バイオタイプNr:1に対する抵抗性を付与する一つまたは複数のQTL)は、前記遺伝因子、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子によって付与される形質(Nr:1抵抗性)の追加を除いて、受容植物の表現型変化をもたらすこと無く、伝統的育種法を用いて、それが存在する植物または種子から、それが存在しない別の植物または種子(例えば、系統または品種)に、導入可能である場合に、植物または種子「から入手可能」である、または「から入手され」得る、または「由来し得る」、または「由来し」得る、または「に存在する」または「に見られる」と言われる。前記用語は同義的に使用され、前記遺伝因子、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子は、従って、前記形質を欠く他のあらゆる遺伝的背景に導入することができる。寄託され、前記遺伝因子、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子を含んでなる種子のみが使用可能であるだけでなく、寄託された種子またはその子孫から開発された市販の品種等の、前記遺伝因子、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子を保持するよう選抜された係る種子に由来する子孫(progeny)/子孫(descendant)も使用可能であり、本明細書に包含される。植物(または植物のゲノムDNA、細胞もしくは組織)が、寄託された種子から入手可能なものと同じ遺伝因子、遺伝子座、遺伝子移入断片、遺伝子または対立遺伝子を含んでなるかどうかは、当該技術分野において公知の一つまたは複数の手法、例えば、表現型アッセイ、全ゲノム配列決定、分子マーカー解析(例えば、本明細書で開示されるマーカーの一つまたは複数または全てを使用)、形質マッピング、染色体彩色、対立性検定等、または手法の組合せを用いて、当業者により、決定することができる。
【0071】
用語「対立遺伝子」は、特定の遺伝子座の遺伝子の一つまたは複数の別形態のいずれかを意味し、これらの対立遺伝子は全て、特定の遺伝子座における1つの形質または特徴に関連している。生物の二倍体細胞では、所与の遺伝子の対立遺伝子は、染色体上の特定の位置、すなわち遺伝子座(locus)(複数形ではloci)に位置している。1つの対立遺伝子が、相同染色体対の各染色体上に存在している。二倍体植物種は、特定の遺伝子座に多数の異なる対立遺伝子を含み得る。これらは、遺伝子の同一対立遺伝子(ホモ接合性)または2つの異なる対立遺伝子(ヘテロ接合性)であり得る。
【0072】
用語「遺伝子」は、細胞内でメッセンジャーRNA分子(mRNA)に転写される領域(転写領域)、および機能的に連結された調節領域(例えば、プロモーター)を含んでなる(ゲノム)DNA配列を意味する。従って、ある遺伝子の異なる対立遺伝子は、例えば、ゲノムDNA配列(例えばプロモーター配列、エクソン配列、イントロン配列等)、mRNAおよび/またはコードされるタンパク質のアミノ酸配列の一つまたは複数のヌクレオチドにおける差異の形態であり得る、前記遺伝子の異なる別の形態である。
【0073】
「対立性検定」とは、2つの植物系統または品種に見られる2つの表現型(例えば2つのNr:1抵抗性)が、同じ遺伝子によって決定されるか、異なる遺伝子によって決定されるかを検定することができる、遺伝子検査を指す。例えば、試験される植物が互いに交雑され、F1が同系繁殖され、F2子孫の中での表現型の分離が決定される。分離比は、その細胞が対立形質であるかどうかを示す。
【0074】
用語「遺伝子座(locus)」(複数形ではloci)は、例えば遺伝子または遺伝子マーカーが存在する、染色体上の特定の1つもしくは複数の場所または部位を意味する。Nr:1抵抗性遺伝子座(またはNr1抵抗性付与遺伝子座)は、従って、野生レタス、特にワイルドレタス(Lactuca virosa)アクセッション、例えば(限定はされないが)NCIMB42086、のゲノム内の場所であり、Nr:1抵抗性付与QTLは、6番染色体上(QTL6.1)および/または7番染色体上(QTL7.1および/またはQTL7.2)に見られる。本発明の栽培レタスでは、Nr:1抵抗性を付与する一つまたは複数のQTLが、該QTLのうちの一つまたは複数を含んでなる野生レタスアクセッション、例えば、受入番号NCIMB42086で寄託された野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、から遺伝子移入される。
【0075】
「量的形質遺伝子座」、または「QTL」は、連続的に分布した(定量的な)表現型の発現度に影響を与える一つまたは複数の対立遺伝子をコードする染色体座である。抵抗性を付与する量的形質遺伝子座は、本明細書では、QTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2と称される。
【0076】
「レタスゲノム」および「レタスゲノム上の物理的位置」および「6番染色体上の物理的位置」および/または「7番染色体上の物理的位置」とは、栽培レタスの物理的なゲノム、ワールドワイドウェブlgr.genomecenter.ucdavis.edu(6番染色体、指定Lsat_1_v4_lg6、および7番染色体、指定Lsat_1_v4_lg7、を含んでなる、Lettuce version 3.2データベース)、および物理的な染色体、並びに染色体上の物理的位置を指す。そのため、例えばSNP_01は、0〜244.7Mbの物理的サイズを有する、6番染色体のヌクレオチド60,688,939に物理的に位置するヌクレオチド(または「塩基」)に位置する。同様に、SNP_08は、0〜242.9Mbの物理的サイズを有する、7番染色体の72,772,104に位置するヌクレオチド(または「塩基」)に位置する。
【0077】
同一染色体上の遺伝子座間(例えば分子マーカー間および/または表現型マーカー間)の「物理的距離」は、実際には、ベースもしくは塩基対(bp)、キロベースもしくはキロ塩基対(kb)またはメガベースもしくはメガ塩基対(Mb)で表される物理的距離である。
【0078】
同一染色体上の遺伝子座間(例えば分子マーカー間および/または表現型マーカー間)の「遺伝的距離」は、乗換えの頻度、すなわち組み換え頻度(RF)、によって測定され、センチモルガン(cM)で示される。1cMは1%の組み換え頻度に相当する。組換えを見つけることができない場合、RFはゼロであり、遺伝子座は物理的に互いに極度に近接しているか、あるいは同一のものである。2つの遺伝子座が離れているほど、RFはより高くなる。
【0079】
「遺伝子移入断片」または「遺伝子移入セグメント」または「遺伝子移入領域」とは、交雑または伝統的育種法(例えば、戻し交雑)によって同一または近縁種の別の植物に導入された染色体断片(または染色体部分または領域)を指し、すなわち、遺伝子移入された断片は、動詞「遺伝子移入する」で言及される伝統的な育種法(例えば、戻し交雑)の結果である。レタスにおいて、野生レタスアクセッションは、野生ゲノム(例えばワイルドレタス(L. virosa))の断片を栽培レタス、レタス(L. sativa)のゲノムに遺伝子移入するのに使用され得る。このような栽培レタス植物は、従って、「栽培レタス(L. sativa)のゲノム」を有するが、ゲノム内に、1つの野生レタスの断片(または2つもしくは3つの断片)、例えば、ワイルドレタス(L. virosa)等の近縁野生アキノノゲシ属(Lactuca)ゲノムの1つの遺伝子移入断片(または2つもしくは3つ)を含んでなる。用語「遺伝子移入断片」は、染色体全体を決して包含せず、染色体の一部のみを包含すると理解される。遺伝子移入断片は、巨大(例えば染色体の半分)な場合があるが、より小さいことが好ましく、例えば、約80Mb、74Mb、73Mb、70Mb、50Mb、30Mb、20Mb、15Mb以下、例えば、約10Mb以下、約9Mb以下、約8Mb以下、約7Mb以下、約6Mb以下、約5Mb以下、約4Mb以下、約3Mb以下、約2Mb以下、約1Mb(=1,000,000塩基対)以下、または約0.5Mb(=500,000塩基対)以下、例えば約200,000bp(=200キロ塩基対)以下、約100,000bp(100kb)以下、約50,000bp(50kb)以下、約25,000bp(25kb)以下が好ましい。
【0080】
「均一性」または「均一な」は、植物系統または品種の遺伝的特徴および表現型的特徴に関する。近交系は、数世代の同系交配によって生み出されるため、遺伝的に高度に均一である。
【0081】
用語「Nr:1対立遺伝子」または「Nr:1抵抗性対立遺伝子」とは、本発明の一つの態様において、野生レタスから、特にワイルドレタス(L. virosa)アクセッションから、栽培レタスに(栽培レタス(L. sativa)の6番染色体および/または7番染色体上に)遺伝子移入される、遺伝子座QTL6.1またはQTL7.1またはQTL7.2に見られる対立遺伝子を指す。用語「Nr:1対立遺伝子」は、従って、異なる野生レタスアクセッションから入手可能なNr:1対立遺伝子も包含する。1つまたは2つのNr:1対立遺伝子がゲノム内の特定の遺伝子座に存在する場合(すなわち、それぞれヘテロ接合型またはホモ接合型で)、植物系統または品種は、前記QTLを欠く遺伝的対照と比較して有意に増強されたNr:1抵抗性を有する。前記遺伝子移入断片を欠く栽培レタス植物において、6番染色体および/または7番染色体上の同一遺伝子座に見られるレタス(L. sativa)対立遺伝子は、本明細書では「野生型」対立遺伝子(wt)と称される。従って、Nr:1に対し感受性であり6番染色体および7番染色体上のQTLを欠く栽培レタスはwt/wtと名付けられ、一方、QTL6.1/wt植物および/またはQTL7.1/wt植物および/またはQTL7.2/wt植物、並びにQTL6.1/QTL6.1植物および/またはQTL7.1/QTL7.1植物および/またはQTL7.2/QTL7.2植物は、それぞれヘテロ接合型またはホモ接合型でQTLを保有する栽培レタス植物である。また、本明細書において提供されるSNPマーカーの遺伝子型は、野生型遺伝子型、またはホモ接合型もしくはヘテロ接合型であるQTLを含んでなる遺伝子移入断片を示すものである。例えば、QTL6.1を示すSNP_01の遺伝子型は「AT」(QTL6.1/wtを示す)または「AA」(QTL6.1/QTL6.1を示す)であり、一方、野生型を示す遺伝子型は「TT」(wt/wt)である。他の全てのSNPについては本明細書の別の場所を参照されたい。従って、本明細書において、SNPマーカーまたはSNP遺伝子型に対する言及が為される場合、Nr:1抵抗性を付与するQTLを含んでなる遺伝子移入断片を示すマーカーの遺伝子型が言及される(ホモ接合型またはヘテロ接合型で)。
【0082】
「異型」もしくは「オルソロガス」配列または「異型QTL6.1、QTL7.1もしくはQTL7.2」は、NCIMB42086に存在するQTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2(およびこれらを含んでなるゲノム領域)とは異なる野生レタス植物(特に、異なるワイルドレタス(L. virosa)植物またはアクセッション)に由来し、QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2に連結されたSNPの一つまたは複数または全てを含んでなり、異型ゲノム配列がSNP(配列番号1〜22、SNP1.23、SNP2.24、SNP17.25、VSP1〜VSP4のいずれか1つ)を含んでなる配列番号に対する実質的な配列同一性、すなわち、少なくとも85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含んでなる、QTL(QTL6.1、QTL7.1またはQTL7.2)、またはこれらを含んでなる遺伝子移入断片を指す。従って、特定のゲノム配列におけるある特定のSNP遺伝子型(配列番号1〜配列番号22、SNP1.23、SNP2.24、SNP17.25、VSP1〜VSP4から選択)に対して言及が為される場合、これは、前記ゲノム配列の異型におけるSNP遺伝子型、すなわち、言及された配列(配列番号1〜配列番号22、SNP1.23、SNP2.24、SNP17.25、VSP1〜VSP4から選択)に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含んでなるゲノム配列におけるSNP遺伝子型も包含する。従って、配列番号1〜22、SNP1.23、SNP2.24、SNP17.25、VSP1〜VSP4のいずれか1つに対する本明細書におけるあらゆる言及は、一つの態様においては、配列番号1〜22、SNP1.23、SNP2.24、SNP17.25、VSP1〜VSP4のいずれか1つの異型も包含し、前記異型は、前記配列に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含んでなる。
【0083】
「遺伝的対照」は、6番染色体および7番染色体上の遺伝子移入を欠く、すなわち、6番染色体および7番染色体が「野生型」(wt/wt)、すなわち栽培レタスゲノムであることを除き、6番染色体上(QTL6.1)および/または7番染色体上(QTL7.1および/またはQTL7.2)の遺伝子移入を含んでなる栽培レタス植物と同一または非常に類似した栽培ゲノム(cultivated genome)を有する、レタスの系統、品種または雑種である。
【0084】
用語「マーカーアッセイ」は、栽培レタス(L. sativa)の6番染色体および/または7番染色体上に、Nr:1抵抗性付与QTL(QTL6.1および/もしくはQTL7.1および/もしくはQTL7.2、またはこれらの異型)を含んでなる野生レタス由来の遺伝子移入が存在するかどうか(あるいは、野生レタスがそれらのゲノム内にQTL6.1および/もしくはQTL7.1および/もしくはQTL7.2またはこれらの異型を含んでなるかどうか)の、以下による検査のために使用することができる、分子マーカーアッセイを指す:
QTL6.1(または異型)に連結されたあらゆる一つまたは複数のマーカーの遺伝子型、例えば、SNP_01〜SNP_07、並びに/または、SNPマーカーSNP_01とSNP_07との間の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.1Mb、50kb、20kb以下以内のあらゆる野生レタス(特に、ワイルドレタス(L. virosa))ゲノム特異的マーカーから選択される、一つまたは複数のSNPマーカーの遺伝子型の決定;
あるいはQTL6.1(または異型)に連結されたあらゆる一つまたは複数のマーカーの遺伝子型、例えば、SNP1.23、SNP_02、SNP2.24およびSNP_03(所望によりVSP1またはVSP3も)、並びに/またはSNPマーカーSNP1.23、SNP_02、SNP2.24およびSNP_03(所望によりVSP1またはVSP3も)の間の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの12Mb、10Mb、5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.1Mb、50kb、20kb以下以内のあらゆる野生レタス(特に、ワイルドレタス(L. virosa))ゲノム特異的マーカーから選択される、一つまたは複数のSNPマーカーの遺伝子型;
並びに/または、QTL7.1(または異型)に連結されたあらゆる一つまたは複数のマーカーの遺伝子型、例えば、SNP_15〜SNP_22、並びに/またはSNPマーカーSNP_15とSNP_22との間の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.1Mb、50kb、20kb以下以内のあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカーから選択される、一つまたは複数のSNPマーカーの遺伝子型の決定;
あるいは、QTL7.1(または異型)に連結されたあらゆる一つまたは複数のマーカーの遺伝子型、例えば、SNP_17、SNP_17.25、SNP_18およびSNP_19(所望によりVSP2またはVSP4も)、並びに/または、SNPマーカーSNP_17、SNP_17.25、SNP_18およびSNP_19(所望によりVSP2またはVSP4も)の間の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの12Mb、10Mb、5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.1Mb、50kb、20kb以下以内のあらゆる野生レタス(特に、ワイルドレタス(L. virosa))ゲノム特異的マーカーから選択される、一つまたは複数のSNPマーカーの遺伝子型;
並びに/または、QTL7.2(または異型)に連結されたあらゆる一つまたは複数のマーカーの遺伝子型、例えば、SNP_08〜SNP_14、並びに/または、SNPマーカーSNP_08とSNP_14との間の、および/もしくはこれらのマーカーのいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/またはこれらのマーカーのいずれか1つの5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.1Mb、50kb、20kb以下以内のあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカーから選択される、一つまたは複数のSNPマーカーの遺伝子型の決定。2つのマーカー「の間の」マーカーは、染色体上のこれらのマーカーの間に物理的に位置する。
【0085】
「組換え染色体」とは、相同染色体間の乗換えを通じて生じた新たな遺伝子構造を有する染色体、例えば、「組換え6番染色体」または「組換え7番染色体」、すなわち、親植物のいずれにも存在せず、それぞれ6番または7番染色体対の相同染色体間の稀な乗換えイベントを通じて生じる6番染色体または7番染色体、を指す。本明細書においては、例えば、それぞれNr:1抵抗性QTLを含んでなる、組換えレタス6番および7番染色体が提供される。
【0086】
「マーカー支援選抜」または「MAS」は、特定の遺伝子座または特定の染色体領域(例えば遺伝子移入断片)に遺伝的に連結された分子マーカーの存在を利用して、特定の遺伝子座または領域(遺伝子移入断片)の存在について植物を選抜する方法である。例えば、Nr:1QTLに遺伝的に連結された分子マーカーを用いて、6番および/または7番染色体上にNr:1QTLを含んでなるレタス植物を検出および/または選抜することができる。遺伝子座に対する分子マーカーの遺伝子連鎖が近いほど(例えば、約7cM、6cM、5cM、4cM、3cM、2cM、1cM、0.5cMまたはそれ以下)、マーカーが減数分裂性組換えを通じて遺伝子座から分離しにくくなる。同様に、2つのマーカーが互いにより近く連結されているほど(例えば、7cMまたは5cM、4cM、3cM、2cM、1cMまたはそれ以下以内)、2つのマーカーは互いに分離しにくくなる(且つ、ユニットとして同時分離し易くなる)。
【0087】
別のマーカーの「7cM以内または5cM以内の」マーカーは、マーカー(すなわちマーカーのいずれかの端)に隣接する7cMまたは5cM領域内に遺伝的に位置するマーカーを指す。同様に、別のマーカーの10Mb、5Mb、3Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.4Mb、0.3Mb、0.2Mb、0.1Mb、50kb、20kb、10kb、5kbまたはそれ以下以内のマーカーは、マーカー(すなわちマーカーのいずれかの端)に隣接するゲノムDNA領域の5Mb、3Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.4Mb、0.3Mb、0.2Mb、0.1Mb、50kb、20kb、10kb、5kbまたはそれ以下以内に物理的に位置するマーカーを指す。
【0088】
「ロッドスコア」(オッズの対数(底10))は、動物集団および植物集団における連鎖解析にしばしば使用される統計検定を指す。ロッドスコアは、2つの遺伝子座(分子マーカー遺伝子座および/または表現型形質遺伝子座)が実際に連鎖している場合の試験データを得る尤度を、全く偶然に同一データを得る尤度と比較する。正のロッドスコアは連鎖の存在を裏付け、3.0より大きいロッドスコアは連鎖の証拠と見なされる。+3のロッドスコアは、観察中の連鎖が偶然に生じなかったことの、1000:1のオッズを示す。
【0089】
「単離核酸配列」または「単離DNA」とは、それが単離された天然環境、例えば、細菌宿主細胞内の、または植物の核内ゲノムもしくは色素体ゲノム内の核酸配列、の中にはもはや存在しない、核酸配列を指す。
【0090】
「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」または「形質転換細胞」は、少なくとも1つの核酸分子が前記細胞に導入された結果として生じる、新たな個々の細胞(または生物)を指す用語である。宿主細胞は植物細胞またはバクテリア細胞であることが好ましい。宿主細胞は、核酸を染色体外(エピソーム)複製分子として含有していてもよく、あるいは、宿主細胞の核ゲノムもしくは色素体ゲノムに組み込まれた、または導入された染色体(例えばミニ染色体)としての、核酸を含んでなってもよい。
【0091】
「配列同一性」および「配列類似性」は、包括的または局所的なアラインメントアルゴリズムを用いる、2つのペプチド配列または2つのヌクレオチド配列のアラインメントによって決定することができる。配列は、例えばGAPプログラムまたはBESTFITプログラムまたはEmbossプログラム「Needle」(初期パラメータを使用、下記参照)によって最適にアラインメントされ、少なくともある特定の最小パーセンテージの配列同一性(以下で詳述)を共有する場合に、「実質的に同一な」または「実質的に類似した」と称され得る。これらのプログラムは、NeedlemanおよびWunschの包括的アラインメントアルゴリズムを使用して、2つの配列をそれらの全長に亘ってアラインメントし、一致数を最大化し、ギャップ数を最小化する。一般的には初期パラメータが使用され、ギャップ生成ペナルティーは10であり、ギャップ伸長ペナルティーは0.5である(ヌクレオチドアラインメントおよびタンパク質アラインメントの両方で)。ヌクレオチドにおいては、使用される初期スコア行列はDNAFULLであり、タンパク質においては、初期スコア行列はBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 10915-10919)。配列アラインメントおよび配列同一性パーセントのスコアは、例えば、ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/)においてワールドワイドウェブ上で利用可能なEMBOSS等のコンピュータプログラムを用いて決定され得る。あるいは、配列類似性または配列同一性は、FASTA、BLAST等のデータベースに対して検索をかけることによって決定され得るが、ヒットを回収し、ペアワイズアラインメントにかけて、配列同一性を比較するべきである。2つのタンパク質または2つのタンパク質ドメイン、または2つの核酸配列は、配列同一性パーセントが少なくとも85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上(例えば、少なくとも99.1、99.2 99.3 99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9またはそれ以上である場合に(Emboss「needle」によって決定、初期パラメータ、すなわち、ギャップ生成ペナルティー=10、ギャップ伸長ペナルティー=0.5、を使用、核酸にはスコア行列DNAFULL、タンパク質にはBlosum62を使用)、「実質的な配列同一性」を有する。
【0092】
参照配列「に対する実質的な配列同一性」を有する、または参照配列に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.9%の核酸配列同一性の配列同一性を有する、核酸配列(例えばDNAまたはゲノムDNA)に対して言及が為される場合、一つの実施態様では、前記ヌクレオチド配列は、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一であると見なされ、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて特定され得る。別の実施態様では、核酸配列は、所与のヌクレオチド配列と比較して一つまたは複数の変異を含むが、それでもなお、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて特定され得る。
【0093】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」を用いることで、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を特定することができる。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる環境下では異なってくる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の融解温度(thermal melting point)(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全一致プローブにハイブリダイズする(規定のイオン強度およびpH下での)温度である。典型的には、塩濃度がpH7において約0.02モル濃度であり、温度が少なくとも60℃である、ストリンジェントな条件が選択されることとなる。塩濃度の低下および/または温度の上昇はストリンジェンシーを増加させる。RNA−DNAハイブリダイゼーション(例えば100ntのプローブを使用するノーザンブロット)のストリンジェントな条件は、例えば、63℃で20分間の0.2×SSC中での少なくとも1回の洗浄を含む条件、または等価条件である。DNA−DNAハイブリダイゼーション(例えば100ntのプローブを使用するサザンブロット)のストリンジェントな条件は、例えば、少なくとも50℃の温度、通常は約55℃で、20分間の0.2×SSC中での少なくとも1回の洗浄(通常2回)を含む条件、または等価条件である。Sambrook et al. (1989)およびSambrook and Russell (2001)も参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】A.接種の7、14、21、28および35日後の、非選択試験における、感受性対照品種Mafalda上およびNCIMB42086上のアブラムシ(Nr:1のドイツ単離物(German isolate))の平均数を示すグラフ。BはAと同じであるが、より詳細なスケールのグラフを示す。
図2】接種の7、14、21、28および35日後の、自由選択試験における、NCIMB42086上のアブラムシの平均数を示すグラフ。Aはファルツ地域由来のドイツNr:1単離物に関し、一方、Bはペルピニャン地域由来のフランスNr:1単離物に関する。
図3A】6番染色体上のワイルドレタス(L. virosa)アクセッションNCIMB42086由来の遺伝子移入断片(太棒で例示、本明細書に描かれるものよりも長いまたは短い場合がある)(QTL6.1を含んでなる)、および7番染色体上のワイルドレタス(L. virosa)アクセッションNCIMB42086由来の2つの遺伝子移入断片(QTL7.1およびQTL7.2を含んでなる)、並びに、遺伝子移入断片およびレタスゲノム上のそれらの物理的位置を示すSNPマーカーを含んでなる、レタス(L. sativa)の6番染色体および7番染色体の模式的なグラフ(縮尺なし)。星()の数は、ロッドスコアが有意(星1つ)または高度に有意(星2つまたは3つ)であることを示す。
図3B】6番染色体上(QTL6.1またはその異型を含んでなる)および7番染色体上(QTL7.1またはその異型を含んでなる)の野生ワイルドレタス(L. virosa)由来(例えば、アクセッションNCIMB42086由来)の遺伝子移入断片(灰色の棒)を含んでなる、レタス(L. sativa)の6番染色体および7番染色体の模式的なグラフ(縮尺なし)。は、2つの野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションに対して特異的なSNPマーカー、6番染色体上のSNPマーカーVSP1およびVSP3並びに7番染色体上のVSP2およびVSP4を示す(よって、VSP1およびVSP2は前記アクセッションの1つに対して特異的であり、VSP3およびVSP4はその他のアクセッションに対して特異的である 。
図4】Nr:0抵抗性品種Mafalda上の300匹超のアブラムシと比較した、NCIMB42086上のゼロ匹のアブラムシを示す、スペインのムルシアで行われた非選択圃場アッセイの結果。
【発明の具体的説明】
【0095】
本発明は、野生レタスから遺伝子移入された1つまたは2つまたは3つのQTLを含んでなる栽培レタス植物、レタス(Lactuca sativa)に関し、前記QTLは、レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)バイオタイプ1(Nr:1)に対する抵抗性を付与する。特に、Nr:1抵抗性は、栽培レタス6番染色体(QTL6.1を含んでなる)および/または7番染色体(QTL7.1および/またはQTL7.2を含んでなる)上の遺伝子移入断片によって付与され、前記遺伝子移入断片は野生レタス植物、具体的にはワイルドレタス(Lactuca virosa)種の植物に由来する。
【0096】
従って、一つの態様において、6番染色体上および/または7番染色体上の野生レタス植物由来の遺伝子移入断片を含んでなるレタス(Lactuca sativa)植物が提供され、前記6番染色体上遺伝子移入断片はQTL6.1と称される量的形質遺伝子座(QTL)を含んでなり、前記7番染色体上遺伝子移入断片はQTL7.1および/またはQTL7.2と称される量的形質遺伝子座を含んでなり、前記6番染色体および/または7番染色体上遺伝子移入断片はレタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1(Nr:1)に対する抵抗性を付与する。遺伝子移入断片のそれぞれはホモ接合型であってもヘテロ接合型であってもよい。一つの態様において、遺伝子移入断片はホモ接合型である。一つの態様において、植物が2つ以上の遺伝子移入断片、すなわち2つまたは3つの断片、を含んでなる場合、これらは同一の野生レタスアクセッションに由来する。本発明の一つの実施態様において、この野生レタスアクセッションはワイルドレタス(L. virosa)アクセッション(例えば、NCIMB42086またはその子孫)である。一つの態様において、野生アクセッションは、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカーVSP1およびVSP2を含んでなるアクセッション;またはワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカーVSP3およびVSP4を含んでなるアクセッションから選択されるワイルドレタス(L. virosa)アクセッションである。
【0097】
本明細書において、Nr:1抵抗性付与QTLを有する6番染色体および/または7番染色体上の遺伝子移入断片が言及される場合、これには様々なサイズの遺伝子移入断片、例えば、全てのSNPマーカー(6番染色体(QTL6.1を含んでなる)上の断片については、SNP_01〜SNP_07、または選択的にSNP1.23、SNP_02、SNP2.24およびSNP_03、またはこれらの間にあるあらゆるマーカーを含んでなる断片;7番染色体(QTL7.2を含んでなる)上の断片については、SNP_08〜SNP_14、またはこれらの間にあるあらゆるマーカー;QTL7.1を含んでなる7番染色体上の断片については、SNP_15〜SNP_22、または選択的にSNP_17、SNP17.25、SNP_18およびSNP_19、またはこれらの間にあるあらゆるマーカー)が包含され、より小さな遺伝子移入断片(例えば前記SNPマーカーのうちの1、2、3または4つを含んでなる)も包含されるが、遺伝子移入断片が栽培レタスゲノムにおいてヘテロ接合型またはホモ接合型である場合、前記断片はNr:1抵抗性を付与するのに充分に巨大なままである。
【0098】
本明細書において遺伝子移入断片(および遺伝子移入断片上に存在するNr:1QTL)の存在を示すSNPマーカーに言及する場合、遺伝子移入断片の存在を示すSNP遺伝子型、すなわち、表1、2および3、または表4、5、6および7、並びに本明細書の以下に提供されるSNP遺伝子型が言及されると理解される。なお、SNPマーカー遺伝子型は、これらの表に示されるように、ホモ接合型またはヘテロ接合型である遺伝子移入断片を区別することができる。ホモ接合型ではヌクレオチドは同一であり、一方、ヘテロ接合型ではヌクレオチドは同一でない。遺伝子移入断片を欠く「野生型」染色体のSNP遺伝子型は他の遺伝子型であり、また、表1〜3および表4〜7(レタス(L. sativa)親の遺伝子型の下)に列挙される。そのため、例えば、QTL6.1を含んでなる遺伝子移入断片を示すSNP_01の遺伝子型は「AT」(QTL6.1/wt、すなわち、抵抗性付与QTLについてヘテロ接合性)または「AA」(QTL6.1/QTL6.1、すなわち、抵抗性付与QTLについてホモ接合性)であり、一方、野生型/遺伝的対照(遺伝子移入断片を欠く)を示すSNP遺伝子型は「TT」(wt/wt)である。従って、ホモ接合型またはヘテロ接合型で遺伝子移入断片を含んでなる植物または植物部分(例えば細胞)に言及する場合、遺伝子移入断片に連結されたSNPマーカーは対応するSNP遺伝子型を有すると理解される。例えば、QTL6.1を含んでなる遺伝子移入断片についてホモ接合性である本発明の植物は、SNPマーカーをホモ接合型で含んでなる。
【0099】
そのため、一つの態様において、ホモ接合型またはヘテロ接合型の6番染色体上および/または7番染色体上の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス(L. sativa)植物が提供され、前記遺伝子移入断片はバイオタイプNr:1に対する抵抗性を付与する。好ましい態様では、遺伝子移入断片の1つ、2つまたは3つ全てがホモ接合型である(且つ、QTLを示すSNPマーカーは言及されたヌクレオチドについてホモ接合性である)。
【0100】
Nr:1に対する抵抗性は、表現型的に、同じ環境下で育成された場合の、6番染色体および7番染色体上の遺伝子移入断片を欠く対照系統または品種と比較して、ホモ接合型またはヘテロ接合型の6番染色体(QTL6.1を含んでなる)および/または7番染色体(QTL7.1および/または7.2を含んでなる)上の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物系統または品種の植物上の(統計的に)有意により少ないバイオタイプNr:1のアブラムシの平均数として表される。対照系統または品種は、Nr:1に対して感受性の栽培レタス系統または品種である。一つの態様においては、対照系統または品種は、Nr:0およびNr:1に対して感受性の(すなわち、レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)抵抗性を欠く)品種から選択される。別の好ましい態様では、対照系統または品種は、優性のNr遺伝子によって付与されるNr:0抵抗性を含んでなる系統または品種、例えば品種Mafalda(またはその他、例えば、Susana、Sylvesta、Veronique、および多くの他の品種、ワールドワイドウェブat nunhems.nlを参照、Nr:0抵抗性を有する品種は「HR」として表される)である。さらに別の態様では、対照系統または品種は、遺伝的対照系統または品種である。
【0101】
従って、ホモ接合型もしくはヘテロ接合型の6番染色体(QTL6.1もしくはその異型を含んでなる)上の遺伝子移入断片を含んでなる;またはホモ接合型もしくはヘテロ接合型の7番染色体(QTL7.1もしくはその異型を含んでなる)上の遺伝子移入断片を含んでなる;またはホモ接合型もしくはヘテロ接合型の7番染色体(QTL7.2もしくはその異型を含んでなる)上の遺伝子移入断片を含んでなる;または2つの遺伝子移入断片(QTL6.1およびQTL7.1もしくはこれらのいずれかの異型;もしくはQTL6.1およびQTL7.2もしくはこれらのいずれかの異型;もしくはQTL7.1およびQTL7.2もしくはこれらのいずれかの異型;ここで、2つのQTLは互いに独立してホモ接合型またはヘテロ接合型であり得る)もしくは3つ全ての遺伝子移入断片(QTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2もしくはこれらのいずれかの異型)(これらの3つのQTLのいずれか1つは独立してホモ接合型またはヘテロ接合型である)を含んでなる、様々な栽培レタス植物が本明細書において提供される。
【0102】
従って、本発明の植物は、1つもしくは2つの組換え6番染色体および/または1つもしくは2つの組換え7番染色体を有する、栽培レタスのゲノムを含んでなる。組換え染色体は、分子マーカー解析(例えば本明細書において提供されるマーカーを使用)、全ゲノム配列決定、染色体彩色および同様の手法によって栽培レタスゲノムと容易に区別可能である、野生レタス(特にワイルドレタス(L. virosa);一つの態様においては、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションNCIMB42086もしくはその子孫、または別のワイルドレタス(L. virosa)、例えば、VSP1およびVSP2を含んでなる、もしくはVSP3およびVSP4を含んでなるアクセッション)の断片を含んでなる。
【0103】
一つの態様において、植物または植物細胞または植物組織のゲノム(またはそれから抽出されたDNA)内の6番染色体および/または7番染色体上の遺伝子移入断片の存在は、遺伝子移入断片の一つまたは複数の分子マーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である。しかし、上記のように、他の手法が使用されてもよく、例えば、マーカーのSNP遺伝子型は、配列決定によって、または、本明細書において提供されるSNPマーカーの間もしくは本明細書において提供されるマーカーの7cM以内、もしくは5cM以内;もしくは本明細書において提供されるマーカーの10Mb、5Mb、3Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.4Mb、0.3Mb、0.2Mb、0.1Mb、50kb、20kb、10kb、5kbもしくはそれ以下以内に位置する別のマーカーの使用によって、決定されてもよい。
【0104】
6番染色体上の遺伝子移入断片(QTL6.1またはその異型を含んでなる)を含んでなるレタス植物
第一のQTLマッピングの結果に基づくと、以下の栽培レタス植物が本明細書に包含される。
【0105】
一つの態様において、6番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3つ、または少なくとも4、5、6、もしくは7つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号1内の(または配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_01のAAまたはAT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) 配列番号4内の(または配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型;
e) 配列番号5内の(または配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_05のTTまたはTC遺伝子型;
f) 配列番号6内の(または配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_06のCCまたはCA遺伝子型;
g) 配列番号7内の(または配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_07のGGまたはGT遺伝子型;
h) SNP_01およびSNP_07の間(例えばSNP_01およびSNP_06、SNP_01およびSNP_05、SNP_01およびSNP_04、SNP_01およびSNP_03、SNP_01およびSNP_02の間);またはSNP_02およびSNP_07の間(例えばSNP_02およびSNP_06、SNP_02およびSNP_05、SNP_02およびSNP_04、SNP_02およびSNP_03の間);またはSNP_03およびSNP_07の間(例えばSNP_03およびSNP_06、SNP_03およびSNP_05、SNP_03およびSNP_04の間);またはSNP_04およびSNP_7の間(例えばSNP_04およびSNP_06、SNP_04およびSNP_05の間);またはSNP_05およびSNP_07の間(例えばSNP_05およびSNP_06の間);またはSNP_06およびSNP_07の間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0106】
上記のように、当業者は、マーカーSNP_01とSNP_07との間の、および/またはSNP_01〜SNP_07のいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/またはSNP_01〜SNP_07のいずれか1つの5Mb、3Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.4Mb、0.3Mb、0.2Mb、0.1Mb、50kb、20kb、10kb、5kbもしくはそれ以下以内の、他の分子マーカー、例えば、野生ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカーを開発することもできる。このようなマーカーは、一続きのヌクレオチド、CAPSマーカー、INDEL等であってもよい。当業者は、例えば、遺伝子移入断片またはQTL領域を配列決定し、その配列情報を使用して、新たなマーカーおよびマーカーアッセイを開発することができる。
【0107】
別の態様では、(QTL6.1または異型を含んでなる)6番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3つ、または少なくとも4、5、6、もしくは7つ全てを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号1内の(または配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_01のAAまたはAT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) 配列番号4内の(または配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型;
e) 配列番号5内の(または配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_05のTTまたはTC遺伝子型;
f) 配列番号6内の(または配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_06のCCまたはCA遺伝子型;
g) 配列番号7内の(または配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_07のGGまたはGT遺伝子型。
【0108】
別の態様において、ホモ接合型またはヘテロ接合型の6番染色体上の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス(L. sativa)植物が提供され、前記遺伝子移入断片はNr:1抵抗性を付与し、前記遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択される少なくとも2、3または4つ(または少なくとも5、6もしくは7つ全ての)連続したマーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号1内の(または配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_01のAAまたはAT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) 配列番号4内の(または配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型;
e) 配列番号5内の(または配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_05のTTまたはTC遺伝子型;
f) 配列番号6内の(または配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_06のCCまたはCA遺伝子型;
g) 配列番号7内の(または配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_07のGGまたはGT遺伝子型。
【0109】
SNPマーカーSNP_01〜SNP_07は、遺伝子移入断片上に所与の順番で位置する。連続したマーカーとは、同一の連続した順番のマーカーを指し、そのため、例えば、2つの連続したマーカーはSNP_01およびSNP_02;SNP_02およびSNP_03;SNP_03およびSNP_04等であり得、3つの連続したマーカーはSNP_01およびSNP_02およびSNP_03;SNP_02およびSNP_03およびSNP_04;等であり得る。
【0110】
断片は、従って、より小さく、前記マーカーのうちの1、2、3、4、5またはさらには6つを欠く場合があるが、それでもなお、栽培レタス植物に対してNr:1抵抗性を付与し得る、すなわち、それでもなお、Nr:1対立遺伝子を含んでなり得る。このようなより小さな遺伝子移入断片は本発明の1つの実施態様である。
【0111】
より小さな遺伝子移入断片を有する植物は、例えば、大きな遺伝子移入断片を含んでなる植物から開始して、そのような植物を別の栽培レタス植物と交雑し、前記交雑種の子孫を自家受粉して、6番染色体上のより小さな遺伝子移入断片を有する組換え体を含有し得る植物集団を作製することによって、作製することができる。マーカーアッセイを使用することで、より小さな遺伝子移入断片のサイズを決定することができる。SNPマーカーSNP_01〜SNP_07のうちの一つまたは複数は欠損していてもよい(すなわち、前記植物は前記SNPマーカーのうちの1、2、3、4、5、6つのみを含んでなり得る)。次いで、このようなより小さな遺伝子移入断片を含んでなる植物のNr:1抵抗性表現型は、本明細書に記載のように(すなわち、遺伝子移入断片を欠く適切な対照植物と一緒に、制御された環境または圃場実験においてより小さな遺伝子移入断片を含んでなる複数の植物を育成する)、決定することができる。本明細書において特定される抵抗性は両タイプの抵抗性を付与するため、前記アッセイは自由選択アッセイであっても非選択アッセイであってもよい。対照植物は、遺伝的対照または感受性品種、例えばMafalda、が好ましい。Nr:1抵抗性が対照においてよりも有意に高いままである場合、より小さな遺伝子移入断片はQTL6.1(またはその異型)を保持している。
【0112】
あるいは、同一または異型QTL(QTL6.1または異型QTL6.1)が異なる野生供給源から遺伝子移入されてもよく、これによって、所望により、本明細書で開示される全てのSNPマーカーが存在していなくてもよい。このような代替的な野生供給源はワイルドレタス(L. virosa)アクセッションであることが好ましい。これらは、マーカーSNP_01〜SNP_07またはSNP_01とSNP_07との間のあらゆるマーカーの遺伝子型を検出するためのマーカーアッセイを用いて、野生生殖質(例えばワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)をスクリーニングすることによって、本明細書において提供されるSNPマーカーを用いて、特定することができる。あるいは、このような野生供給源は、表現型によって特定することができ、所望により、記載されたマーカーのうちの一つまたは複数の存在について後期にスクリーニングされ得、あるいは、所望により、このようなアクセッションとの交雑からの子孫が、前記マーカーについてスクリーニングされ得る。他の供給源由来の同一または異型QTL6.1を含んでなる植物も、本発明の1つの実施態様である。前記SNPのうちの少なくとも1、2、3、4、5、6つまたはそれ以上、好ましくはSNP_01〜SNP_07のうちの少なくとも2、3、4、5、6またはそれ以上の連続したSNPマーカーが前記QTLを示すSNP遺伝子型も有する限り、植物はQTL6.1(またはその異型)を含んでなる。当業者は、本明細書に記載のNr:1抵抗性を付与するために、QTL6.1(またはその異型)を栽培レタスに遺伝子移入することができる。
【0113】
特定の実施態様において、本発明の植物は、SNPマーカーの少なくとも一部、すなわち、以下からなる群から選択される以下のマーカーのうちの少なくとも1、2、3、4、または5つ全てを含んでなる遺伝子移入断片を含んでなる:
a) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
c) 配列番号4内の(または配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型;
d) 配列番号5内の(または配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_05のTTまたはTC遺伝子型;
e) 配列番号6内の(または配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_06のCCまたはCA遺伝子型;および所望により、
f) SNP_02とSNP_06との間の、あらゆる野生レタス、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0114】
本発明の植物は、少なくともSNPマーカーSNP_03、SNP_04、SNP_05および/またはSNP_06(またはこれらのいずれかの間にあるあらゆるマーカー)、特に、少なくともSNP_04、SNP_05および/またはSNP_06(またはこれらのいずれかの間にあるあらゆるマーカー)を含んでなる遺伝子移入断片を含んでなることが好ましい。
【0115】
従って、遺伝子移入断片(および遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物または植物部分、例えば、細胞)は、マーカーアッセイにおいて、上記マーカーのうちの一つまたは複数または全ての遺伝子移入断片の(すなわち、野生レタス、例えばワイルドレタス(L. virosa)生殖質の)SNP遺伝子型を検出することによって、検出することができる。
【0116】
さらなる別の態様において、本発明の植物は、少なくともSNP_04を含んでなる遺伝子移入断片を含んでなり、すなわち、遺伝子移入断片が、配列番号4内の一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型を検出するマーカーアッセイにおいて検出される。また、所望により、隣接マーカー、SNP_03および/またはSNP_05が検出され、すなわち、遺伝子移入断片が、少なくともSNP_04および所望により以下のマーカーのうちの少なくとも1つも検出するマーカーアッセイにおいて検出される:
配列番号5内の(または配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_05のTTまたはTC遺伝子型;および/または
配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;および所望により
SNP_03とSNP_05との間の、あらゆる野生レタス、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0117】
6番染色体上の遺伝子移入断片(QTL6.1またはその異型を含んでなる)を含んでなるレタス植物
後のQTLマッピングデータに基づいて、QTL領域を特定することができ、遺伝子移入断片がQTL6.1(またはその異型)を含んでなり、これにより遺伝子移入断片が6番染色体上の77Mbから開始して6番染色体上の161Mbで終結する領域の全てまたは一部を含んでなる、ワイルドレタス(Lactuca virosa)由来の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物が提供される。
【0118】
従って、一つの態様において、レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1(Nr:1)に対する抵抗性を付与する量的形質遺伝子座を含んでなり、6番染色体上の遺伝子移入断片が6番染色体の77Mbから開始し161Mbで終結する領域の全てまたは一部を含んでなる、6番染色体上のワイルドレタス(Lactuca virosa)由来の遺伝子移入断片を含んでなるレタス(Lactuca sativa)植物が提供される。
【0119】
QTL6.1(または異型)を保持するより小さな遺伝子移入断片(すなわち、6番染色体の77Mb〜161Mbに亘る上記領域の抵抗性付与部分を含んでなる)は、80Mb、70Mb、60Mb、50Mb、40Mb、30Mb、20Mb、10Mb、5Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、100kb、50kbまたはそれ以下のサイズを有し、QTL6.1またはその異型を含んでなる断片であり得ると理解される。一つの態様において、前記部分は少なくとも5kb、10kb、20kbまたはそれ以上のサイズである。
【0120】
一つの態様において、6番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2または3または4または5つ(またはそれ以上)を含んでなり、それを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号23内の(または配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号24内の(または配列番号24に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;
配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) SNP1.23およびSNP_03の間(例えばSNP1.23およびSNP2.24、SNP1.23およびSNP_02の間);またはSNP_02およびSNP_03の間(例えばSNP_02およびSNP2.24の間);またはSNP2.24およびSNP_03の間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー;
e) SNP1.23、SNP_02、SNP2.24、またはSNP_03から選択されるあらゆるマーカーの10Mbの距離内、好ましくは5Mb以内に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特にワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0121】
所望により、一つの態様において、遺伝子移入断片は、配列番号26内(または配列番号26に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP1のGGまたはGT遺伝子型および配列番号27内(または配列番号27に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP3のAAまたはAC遺伝子型から選択されるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカーを含んでなる(且つ、それによって検出可能である)。SNPマーカーVSP1およびVSP3を用いることで、様々なワイルドレタス(L. virosa)型アクセッション由来のQTL6.1を含んでなる遺伝子移入断片を区別することができる。
【0122】
遺伝子移入断片は、SNP遺伝子型によって示されるように、ヘテロ接合型であってもホモ接合型であってもよい。そのため、一つの態様において、遺伝子移入断片はホモ接合型であり、SNPマーカー遺伝子型はホモ接合性遺伝子型である。
【0123】
上記の通り、QTL6.1の異型が、種々のNr:1抵抗性ワイルドレタス(Lactuca virosa)アクセッションから、特定および遺伝子移入され得る。このような異型は、本明細書において提供される配列に対して100%同一でないが、同一長のゲノム配列がアラインメントされた場合に実質的な配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%またはそれ以上)をなお有し得る、ゲノム配列を含んでなり得る。QTL6.1が位置するQTL領域に差異があることは、アクセッション特異的SNPマーカーが、共に抵抗性付与QTL6.1を含んでなる、2つの異なるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来のQTL6.1の遺伝子移入において特定することができたという事実から、理解することができる。そのため、VSP1を含んでなる遺伝子移入断片は、VSP3を含んでなるものとは異なる遺伝子移入断片であるが、共にQTL6.1を含んでなる。QTL6.1を含んでなる野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション内には、従って、6番染色体上の77Mb〜161Mbに亘る領域におけるゲノム変動が存在し得る。しかし、このようなアクセッションは、本発明の植物を作製するために、6番染色体の77Mbから開始し161Mbで終結する領域の全てまたは一部をNr:1感受性栽培レタスに遺伝子移入するのに等しく使用され得る。前記領域がQTLを含んでなるという、本発明の知識を用いて、当業者は同一の領域またはより小さな抵抗性付与部分を栽培レタスに遺伝子移入することができる。
【0124】
一つの態様において、6番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3もしくは4つを含んでなり、それを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号23内の、または配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号2内の、または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) c) 配列番号24内の、または配列番号24に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;
d) 配列番号3内の、または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型。
【0125】
一つの態様において、遺伝子移入断片はNCIMB42086として寄託された種子またはその子孫に由来し得る。
【0126】
一つの態様において、遺伝子移入断片は、別のNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、例えば、配列番号27内(または配列番号27に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP3のAAまたはAC遺伝子型を含んでなるアクセッション、に由来する。
【0127】
別の態様において、遺伝子移入断片は、別のNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、例えば、配列番号26内(または配列番号26に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP1のGGまたはGT遺伝子型を含んでなるアクセッション、に由来する。
【0128】
第一のQTL解析およびマーカーSNP_01〜SNP_07に基づいて本明細書の別の場所に記載される他の態様は、同様に、この後の解析で特定されるマーカーおよび遺伝子移入に適用される。そのため、例えば、QTL6.1は、例えば戻し交雑によって、あらゆる栽培レタス、特にNr:1感受性系統または品種に遺伝子移入することができる。QTL6.1は、栽培レタスにおいて、QTL7.1および/またはQTL7.2を含んでなる組換え7番染色体とも組み合わせることができる。
【0129】
7番染色体上の遺伝子移入断片(QTL7.1および/もしくはQTL7.2またはこれらの異型)を含んでなるレタス植物
第一のQTLマッピングの結果に基づくと、以下の栽培レタス植物が本明細書に包含される。
【0130】
一つの態様において、7番染色体上のQTL7.2またはその異型を含んでなる遺伝子移入断片(および前記遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物または植物部分)は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3つ、または少なくとも4、5、6、もしくは7つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号8内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号9内の(または配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号10内の(または配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
d) 配列番号11内の、または配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;
e) 配列番号12内の(または配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_12のCCまたはCT遺伝子型;
f) 配列番号13内の(または配列番号13に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_13のGGまたはGA遺伝子型;
g) 配列番号14内の(または配列番号14に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型;
h) SNP_08およびSNP_14の間(例えばSNP_08およびSNP_13、SNP_08およびSNP_12、SNP_08およびSNP_11、SNP_08およびSNP_10、SNP_08およびSNP_09の間);またはSNP_09およびSNP_14の間(例えばSNP_09およびSNP_13、SNP_09およびSNP_12、SNP_09およびSNP_11、SNP_09およびSNP_10の間);またはSNP_10およびSNP_14の間(例えばSNP_10およびSNP_13、SNP_10およびSNP_12、SNP_10およびSNP_11の間);またはSNP_11およびSNP_14の間(例えばSNP_11およびSNP_13、SNP_11およびSNP_12の間);またはSNP_12およびSNP_14の間(例えばSNP_12およびSNP_13の間);またはSNP_13およびSNP_14の間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0131】
上記のように、当業者は、マーカーSNP_08とSNP_14との間の、および/またはSNP_08〜SNP_14のいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/またはSNP_08〜SNP_14のいずれか1つの5Mb、3Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.4Mb、0.3Mb、0.2Mb、0.1Mb、50kb、20kb、10kb、5kbもしくはそれ以下以内の、他の分子マーカー、例えば、野生レタスゲノム特異的マーカー、例えば、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカーを開発することもできる。このようなマーカーは、一続きのヌクレオチド、CAPSマーカー、INDEL等であってもよい。
【0132】
別の態様では、(QTL7.2または異型を含んでなる)7番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3つ、または少なくとも4、5、6、もしくは7つ全てを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号8内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号9内の(または配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号10内の(または配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
d) 配列番号11内の、または配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;
e) 配列番号12内の(または配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_12のCCまたはCT遺伝子型;
f) 配列番号13内の(または配列番号13に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_13のGGまたはGA遺伝子型;
g) 配列番号14内の(または配列番号14に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型。
【0133】
別の態様において、ホモ接合型またはヘテロ接合型の7番染色体上の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物が提供され、前記遺伝子移入断片はNr:1抵抗性を付与するQTL7.2を含んでなり、前記遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択される少なくとも2、3または4つ(または少なくとも5、6、7つ)の連続したマーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号8内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号9内の(または配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号10内の(または配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
d) 配列番号11内の、または配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;
e) 配列番号12内の(または配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_12のCCまたはCT遺伝子型;
f) 配列番号13内の(または配列番号13に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_13のGGまたはGA遺伝子型;
g) 配列番号14内の(または配列番号14に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型。
【0134】
SNPマーカーSNP_08〜SNP_14は、遺伝子移入断片上に所与の順番で位置する。連続したマーカーとは、同一の連続した順番のマーカーを指し、そのため、例えば、2つの連続したマーカーはSNP_08およびSNP_09;SNP_09およびSNP_10;SNP_10およびSNP_11等であり得、3つの連続したマーカーはSNP_08およびSNP_09およびSNP_10;SNP_09およびSNP_10およびSNP_11;等であり得る。
【0135】
断片は、従って、より小さく、前記マーカーのうちの1、2、3、4、5、6つを欠く場合があるが、それでもなお、栽培レタス植物に対してNr:1抵抗性を付与し得る、すなわち、それでもなお、Nr:1対立遺伝子を含んでなり得る。このようなより小さな遺伝子移入断片は本発明の1つの実施態様である。より小さな遺伝子移入断片を有する植物は、例えば、大きな遺伝子移入断片を含んでなる植物から開始して、そのような植物を別の栽培レタス植物と交雑し、前記交雑種の子孫を自家受粉して、7番染色体上のより小さな遺伝子移入断片を有する組換え体を含有し得る植物集団を作製することによって、作製することができる。マーカーアッセイを使用することで、より小さな遺伝子移入断片のサイズを決定することができる。SNPマーカーSNP_08〜SNP_14のうちの一つまたは複数は欠損していてもよい(すなわち、前記植物は前記SNPマーカーのうちの1、2、3、4、5、または6つのみを含んでなり得る)。次いで、このようなより小さな遺伝子移入断片を含んでなる植物のNr:1抵抗性は、本明細書に記載の、すなわち、遺伝子移入断片を欠く適切な対照植物と一緒に、圃場実験においてより小さな遺伝子移入断片を含んでなる複数の植物を育成する、Nr:1アッセイにおいて、決定することができる。対照植物は、遺伝的対照または感受性対照、例えばMafalda、が好ましい。Nr:1抵抗性が対照においてよりも有意に高いままである場合、より小さな遺伝子移入断片はQTL7.2(または異型)を保持している。
【0136】
あるいは、同一または異型QTL(QTL7.2または異型QTL7.2)が異なる野生供給源、例えば異なるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、から遺伝子移入されてもよく、これによって、所望により、本明細書で開示される全てのSNPマーカーが存在していなくてもよい。このような代替的な野生供給源は、マーカーSNP_08〜SNP_14またはこれらの間のマーカーの遺伝子型を検出するためのマーカーアッセイを用いて、野生生殖質、例えばワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、をスクリーニングすることによって、本明細書において提供されるSNPマーカーを用いて、特定することができる。あるいは、このような野生供給源は、表現型によって特定することができ、所望により、記載されたマーカーのうちの一つまたは複数の存在について後期にスクリーニングされ得、あるいは、所望により、このようなアクセッションとの交雑からの子孫が、前記マーカーについてスクリーニングされ得る。他の供給源由来のQTL7.2または異型QTL7.2を含んでなる植物も、本発明の1つの実施態様である。前記SNPのうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、もしくは7またはそれ以上、好ましくはSNP_08〜SNP_14のうちの少なくとも2、3、4、5、6、もしくは7つの連続したSNPマーカーが前記QTLを示すSNP遺伝子型も有する限り、植物はQTL7.2(またはその異型)を含んでなる。当業者は、本明細書に記載のNr:1抵抗性を生み出すために、QTL7.2(またはその異型)を栽培レタスに遺伝子移入することができる。
【0137】
特定の実施態様において、本発明の植物は、SNPマーカーの少なくとも一部、すなわち、以下からなる群から選択される以下のマーカーのうちの少なくとも1、2、3、4または5つ全てを含んでなる遺伝子移入断片を含んでなる:
a) 配列番号8内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号9内の(または配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号10内の(または配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
d) 配列番号11内の、または配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;
e) 配列番号12内の(または配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_12のCCまたはCT遺伝子型;および所望により、
f) マーカーSNP_08とSNP_12との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0138】
特に、一つの態様において、本発明の栽培レタス植物は、以下からなる群から選択される少なくとも1、2または3つのマーカーを含んでなる:
a) 配列番号9内の(または配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号10内の(または配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
c) 配列番号11内の、または配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;および所望により、
d) マーカーSNP_09とSNP_11との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0139】
従って、遺伝子移入断片(および遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物または植物部分、例えば、細胞)は、マーカーアッセイにおいて、上記マーカーのうちの一つまたは複数または全ての遺伝子移入断片の(すなわち、野生レタス生殖質の)SNP遺伝子型を検出することによって、検出することができる。
【0140】
一つの態様において、7番染色体上のQTL7.1を含んでなる遺伝子移入断片(および前記遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物または植物部分)は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3つ、または少なくとも4、5、6、7もしくは8つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号15内の(または配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_15のTTまたはTA遺伝子型;
b) 配列番号16内の(または配列番号16に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_16のGGまたはGA遺伝子型;
c) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
d) ) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC 遺伝子型;
e) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
f) 配列番号20内の(または配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
g) 配列番号21内の(または配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;
h) 配列番号22内の(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_22のCCまたはCT遺伝子型;
i) SNP_15およびSNP_22の間(例えば、SNP_15およびSNP_21、SNP_15およびSNP_20、SNP_15およびSNP_19、SNP_15およびSNP_18、SNP_15およびSNP_17、SNP_15およびSNP_16の間);またはSNP_16およびSNP_22の間(例えばSNP_16およびSNP_21、SNP_16およびSNP_20、SNP_16およびSNP_19、SNP_16およびSNP_18、SNP_16およびSNP_17の間);またはSNP_17およびSNP_22の間(例えばSNP_17およびSNP_21、SNP_17およびSNP_20、SNP_17およびSNP_19、SNP_17およびSNP_18の間);またはSNP_18およびSNP_22の間(例えばSNP_18およびSNP_21、SNP_18およびSNP_20、SNP_18およびSNP_19の間);またはSNP_19およびSNP_22の間(例えばSNP_19およびSNP_21、SNP_19およびSNP_20の間);またはSNP_20およびSNP_22の間;またはSNP_21およびSNP_22の間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0141】
上記のように、当業者は、マーカーSNP_15とSNP_22との間の、および/またはSNP_15〜SNP_22のいずれか1つの7cM以内もしくは5cM以内の、および/またはSNP_15〜SNP_22のいずれか1つの5Mb、3Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、0.4Mb、0.3Mb、0.2Mb、0.1Mb、50kb、20kb、10kb、5kbもしくはそれ以下以内の、他の分子マーカー、例えば、野生レタスゲノム特異的マーカー、例えば、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカーを開発することもできる。このようなマーカーは、一続きのヌクレオチド、CAPSマーカー、INDEL等であってもよい。
【0142】
別の態様では、(QTL7.1または異型を含んでなる)7番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3つ、または少なくとも4、5、6、7もしくは8つ全てを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号15内の(または配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_15のTTまたはTA遺伝子型;
b) 配列番号16内の(または配列番号16に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_16のGGまたはGA遺伝子型;
c) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
d) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
e) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
f) 配列番号20内の(または配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
g) 配列番号21内の(または配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;
h) 配列番号22内の(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_22のCCまたはCT遺伝子型。
【0143】
別の態様において、ホモ接合型またはヘテロ接合型の7番染色体上の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物が提供され、前記遺伝子移入断片はNr:1抵抗性を付与するQTL7.1を含んでなり、前記遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択される少なくとも2、3または4つ(または少なくとも5、6、7、8つ)の連続したマーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号15内の(または配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_15のTTまたはTA遺伝子型;
b) 配列番号16内の(または配列番号16に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_16のGGまたはGA遺伝子型;
c) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
d) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
e) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
f) 配列番号20内の(または配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
g) 配列番号21内の(または配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;
h) 配列番号22内の(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_22のCCまたはCT遺伝子型。
【0144】
SNPマーカーSNP_15〜SNP_22は、遺伝子移入断片上に所与の順番で位置する。連続したマーカーとは、同一の連続した順番のマーカーを指し、そのため、例えば、2つの連続したマーカーはSNP_12およびSNP_13;SNP_13およびSNP_14;SNP_14およびSNP_15等であり得、3つの連続したマーカーはSNP_12およびSNP_13およびSNP_14;SNP_13およびSNP_14およびSNP_15;等であり得る。
【0145】
断片は、従って、より小さく、前記マーカーのうちの1、2、3、4、5、6または7つを欠く場合があるが、それでもなお、栽培レタス植物に対してNr:1抵抗性を付与し得る、すなわち、それでもなお、Nr:1対立遺伝子を含んでなり得る。このようなより小さな遺伝子移入断片は本発明の1つの実施態様である。より小さな遺伝子移入断片を有する植物は、例えば、大きな遺伝子移入断片を含んでなる植物から開始して、そのような植物を別の栽培レタス植物と交雑し、前記交雑種の子孫を自家受粉して、(QTL7.1または異型を含んでなる)7番染色体上のより小さな遺伝子移入断片を有する組換え体を含有し得る植物集団を作製することによって、作製することができる。マーカーアッセイを使用することで、より小さな遺伝子移入断片のサイズを決定することができる。SNPマーカーSNP_15〜SNP_22のうちの一つまたは複数は欠損していてもよい(すなわち、前記植物は前記SNPマーカーのうちの1、2、3、4、5、6または7つのみを含んでなり得る)。次いで、このようなより小さな遺伝子移入断片を含んでなる植物のNr:1抵抗性は、本明細書に記載の、すなわち、遺伝子移入断片を欠く適切な対照植物と一緒に、圃場実験においてより小さな遺伝子移入断片を含んでなる複数の植物を育成する、Nr:1アッセイにおいて、決定することができる。対照植物は、遺伝的対照または感受性対照、例えばMafalda、が好ましい。Nr:1抵抗性が対照においてよりも有意に高いままである場合、より小さな遺伝子移入断片はQTL7.1(または異型)を保持している。
【0146】
あるいは、同一または異型QTL(QTL7.1または異型QTL7.1)が異なる野生供給源、例えば異なるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、から遺伝子移入されてもよく、これによって、所望により、本明細書で開示される全てのSNPマーカーが存在していなくてもよい。このような代替的な野生供給源は、マーカーSNP_15〜SNP_22またはこれらの間のマーカーの遺伝子型を検出するためのマーカーアッセイを用いて、野生生殖質、例えばワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、をスクリーニングすることによって、本明細書において提供されるSNPマーカーを用いて、特定することができる。あるいは、このような野生供給源は、表現型によって特定することができ、所望により、記載されたマーカーのうちの一つまたは複数の存在について後期にスクリーニングされ得、あるいは、所望により、このようなアクセッションとの交雑からの子孫が、前記マーカーについてスクリーニングされ得る。他の供給源由来のQTL7.1または異型QTL7.1を含んでなる植物も、本発明の1つの実施態様である。前記SNPのうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7もしくは8またはそれ以上、好ましくはSNP_15〜SNP_22のうちの少なくとも2、3、4、5、6、7もしくは8つの連続したSNPマーカーが前記QTLを示すSNP遺伝子型も有する限り、植物はQTL7.1(またはその異型)を含んでなる。当業者は、本明細書に記載のNr:1抵抗性を生み出すために、QTL7.1(またはその異型)を栽培レタスに遺伝子移入することができる。
【0147】
特定の実施態様において、本発明の植物は、SNPマーカーの少なくとも一部、すなわち、以下からなる群から選択される以下のマーカーのうちの少なくとも1、2、3、4または5つ全てを含んでなる遺伝子移入断片を含んでなる:
a) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
c) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
d) 配列番号20内の(または配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
e) 配列番号21内の(または配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;および所望により、
f) マーカーSNP_19とSNP_21との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0148】
特に、一つの態様において、本発明の栽培レタス植物は、以下からなる群から選択される少なくとも1、2または3つのマーカーを含んでなる:
a) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
b) 配列番号20内の(または配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
c) 配列番号21内の(または配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;および所望により、
d) マーカーSNP_19とSNP_21との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0149】
従って、遺伝子移入断片(および遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物または植物部分、例えば、細胞)は、マーカーアッセイにおいて、上記マーカーのうちの一つまたは複数または全ての遺伝子移入断片の(すなわち、野生レタス生殖質の)SNP遺伝子型を検出することによって、検出することができる。
【0150】
7番染色体上の遺伝子移入断片(QTL7.1またはその異型)を含んでなるレタス植物
後のQTLマッピングデータに基づいて、QTL7.1領域を特定することができ、遺伝子移入断片がQTL7.1(またはその異型)を含んでなり、これにより遺伝子移入断片が7番染色体上の203Mbから開始して7番染色体上の219Mbで終結する領域の全てまたは一部を含んでなる、ワイルドレタス(Lactuca virosa)由来の遺伝子移入断片を含んでなる栽培レタス植物が提供される。
【0151】
従って、一つの態様において、レタスヒゲナガアブラムシ(Nasonovia ribisnigri)バイオタイプ1(Nr:1)に対する抵抗性を付与する量的形質遺伝子座を含んでなり、7番染色体上の遺伝子移入断片が7番染色体の203Mbから開始し7番染色体の219Mbで終結する領域の全てまたは一部を含んでなる、7番染色体上のワイルドレタス(Lactuca virosa)由来の遺伝子移入断片を含んでなるレタス(Lactuca sativa)植物が提供される。
【0152】
QTL7.1(または異型)を保持するより小さな遺伝子移入断片(すなわち、7番染色体の203Mb〜219Mbに亘る上記領域の抵抗性付与部分を含んでなる)は、15Mb、10Mb、5Mb、2.5Mb、2Mb、1Mb、0.5Mb、100kb、50kbまたはそれ以下のサイズを有し、QTL7.1またはその異型を含んでなる断片であり得ると理解される。一つの態様において、前記部分は少なくとも5kb、10kb、20kbまたはそれ以上のサイズである。
【0153】
一つの態様において、7番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2または3または4または5つ(またはそれ以上)を含んでなり、それを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号25内の(または配列番号25に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
c) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
d) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
e) SNP_17およびSNP_19の間(例えばSNP_17およびSNP_18の間、SNP_17およびSNP17.25の間;またはSNP17.25およびSNP_19の間、またはSNP17.25およびSNP_18の間、またはSNP_18およびSNP_19の間)に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー;
f) SNP_17、SNP_17.25、SNP_18およびSNP_19から選択されるあらゆるマーカーの12Mbまたは10Mbの距離内、好ましくは5Mb以内に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特にワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0154】
所望により、一つの態様において、遺伝子移入断片は、配列番号28内(または配列番号28に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP2のCCまたはAC遺伝子型および配列番号29内(または配列番号29に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP4のGGまたはGA遺伝子型から選択されるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカーを含んでなる(且つ、それによって検出可能である)。SNPマーカーVSP2およびVSP4を用いることで、2つの異なる種類のワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来のQTL7.1を含んでなる遺伝子移入断片を区別することができる。
【0155】
遺伝子移入断片は、SNP遺伝子型によって示されるように、ヘテロ接合型であってもホモ接合型であってもよい。そのため、一つの態様において、遺伝子移入断片はホモ接合型であり、SNPマーカー遺伝子型はホモ接合性遺伝子型である。
【0156】
上記の通り、QTL7.1の異型が、種々のNr:1抵抗性ワイルドレタス(Lactuca virosa)アクセッションから、特定および遺伝子移入され得る。このような異型は、本明細書において提供される配列に対して100%同一でないが、同一長のゲノム配列がアラインメントされた場合に実質的な配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%またはそれ以上)をなお有し得る、ゲノム配列を含んでなり得る。QTL7.1が位置するQTL領域に差異があることは、アクセッション特異的SNPマーカーが、共に抵抗性付与QTL7.1を含んでなる、2つの異なるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション由来のQTL7.1の遺伝子移入において特定することができたという事実から、理解することができる。そのため、VSP2を含んでなる遺伝子移入断片は、VSP4を含んでなるものとは異なる遺伝子移入断片であるが、共にQTL7.1を含んでなる。QTL7.1を含んでなる野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション内には、従って、7番染色体上の203Mb〜219Mbに亘る領域におけるゲノム変動が存在し得る。しかし、このようなアクセッションは、本発明の植物を作製するために、7番染色体の203Mbから開始し219Mbで終結する領域の全てまたは一部をNr:1感受性栽培レタスに遺伝子移入するのに等しく使用され得る。前記領域がQTLを含んでなるという、本発明の知識を用いて、当業者は同一の領域またはより小さな抵抗性付与部分を栽培レタスに遺伝子移入することができる。
【0157】
一つの態様において、7番染色体上の遺伝子移入断片は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2もしくは3もしくは4つを含んでなり、それを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号25内の(または配列番号25に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
c) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
d) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
【0158】
一つの態様において、遺伝子移入断片はNCIMB42086として寄託された種子またはその子孫に由来し得る。
【0159】
一つの態様において、遺伝子移入断片は、別のNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、例えば、配列番号29内(または配列番号29に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP4のGGまたはGA遺伝子型を含んでなるアクセッション、に由来する。
【0160】
別の態様において、遺伝子移入断片は、別のNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、例えば、配列番号28内(または配列番号28に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内)の一塩基多型マーカーVSP2のCCまたはCA遺伝子型を含んでなるアクセッション、に由来する。
【0161】
QTL7.1の第一のQTL解析およびマーカーSNP_15〜SNP_22に基づいて本明細書の別の場所に記載される他の態様は、同様に、この後の解析で特定されるマーカーおよび遺伝子移入に適用される。そのため、例えば、QTL7.1は、例えば戻し交雑によって、あらゆる栽培レタス、特にNr:1感受性系統または品種に遺伝子移入することができる。QTL7.1は、栽培レタスにおいて、QTL6.1を含んでなる組換え6番染色体と、および/または7番染色体上の第二QTL、すなわちQTL7.2と、組み合わせることもできる。
【0162】
従って、一つの態様において、栽培レタス品種または育種系統に別々にまたは組み合わせて導入(遺伝子移入)された場合に、およびヘテロ接合型またはホモ接合型で存在する場合に、栽培レタス植物にNr:1抵抗性を付与する、3つの量的形質遺伝子座(QTL6.1および/またはQTL7.1および/またはQTL7.2)が、野生レタス(特に、ワイルドレタス(L. virosa)、例えばアクセッションNCIMB42086)の6番染色体および7番染色体上に存在することが分かった。一つの態様において、栽培レタス植物は、6番染色体および/または7番染色体の一方のみに遺伝子移入断片を含んでなり、一方、前記対の相同染色体6および7は、遺伝子移入断片を欠く栽培レタスの非組換え6番染色体および/または7番染色体であり得る。別の態様では、栽培レタス植物は、相同対の6番染色体および/または7番染色体の両方に遺伝子移入断片を含んでなる(遺伝子移入がホモ接合型である)。栽培レタス植物の遺伝子型は、従って、単一の遺伝子移入断片を含んでなる植物の遺伝子型:QTL6.1/wt、QTL6.1/QTL6.1、QTL7.1/wt、QTL7.1/QTL7.1、QTL7.2/wt、QTL7.2/QTL7.2;2つの遺伝子移入断片(6番染色体上の1つおよび7番染色体上の1つ)を含んでなる植物の遺伝子型:QTL6.1/wt+QTL7.1/wt、QTL6.1/QTL6.1+QTL7.1/wt、QTL6.1/QTL6.1+QTL7.1/QTL7.1、QTL6.1/wt+QTL7.1/QTL7.1;QTL6.1/wt+QTL7.2/wt、QTL6.1/QTL6.1+QTL7.2/wt、QTL6.1/QTL6.1+QTL7.2/QTL7.2、QTL6.1/wt+QTL7.2/QTL7.2;7番染色体上に2つの遺伝子移入断片を含んでなる植物の遺伝子型:QTL7.2/wt+QTL7.1/wt、QTL7.2/QTL7.2+QTL7.1/wt、QTL7.2/QTL7.2+QTL7.1/QTL7.1、QTL7.2/wt+QTL7.1/QTL7.1であり得る。上記の2つの遺伝子移入断片(6番染色体上の1つおよび7番染色体上の1つ)を含んでなる植物は、さらに、ヘテロ接合型またはホモ接合型の7番染色体上の第三のQTLを含んでなり得る。
【0163】
遺伝子移入断片は、同一のアクセッション由来であってよいが、異なるアクセッション由来であってもよい。一つの態様において、6番染色体上の遺伝子移入断片は、7番染色体上の遺伝子移入断片と同じアクセッション由来である。しかし、異なるアクセッション由来の遺伝子移入断片を組み合わせることも可能であり、例えば、6番染色体上の遺伝子移入断片があるアクセッション由来であり、7番染色体上の遺伝子移入断片が別のアクセッション由来であってもよい。例えば、マーカーVSP1およびVSP2はあるアクセッション由来であり、一方、マーカーVSP3およびVSP4は異なるアクセッション由来である。一つの態様において、6番染色体上の遺伝子移入断片はVSP1マーカーを含んでなり、7番染色体上の遺伝子移入断片はVSP2マーカーを含んでなる。別の態様では、6番染色体上の遺伝子移入断片はVSP3マーカーを含んでなり、7番染色体上の遺伝子移入断片はVSP4マーカーを含んでなる。しかし、6番染色体および7番染色体上の遺伝子移入断片は、異なるアクセッション由来であってもよく、そのため、例えば、6番染色体上の遺伝子移入断片がVSP1を含んでなり、一方7番染色体上の遺伝子移入断片がVSP4を含む場合があり、あるいは、6番染色体上の断片がVSP3マーカーを含んでなり、7番染色体上の断片がVSP2マーカーを含む場合がある。同様に、例えばQTL6.1を含んでなる遺伝子移入断片についてホモ接合性の植物は、同じ断片をホモ接合型で含有し得るが、2つの異なる遺伝子移入断片を含有する場合もある。
【0164】
本発明の3つのQTLの供給源は特定の野生供給源であるが、これらは、6番染色体および/または7番染色体上の同一の遺伝子座にQTL6.1および/またはQTL7.1および/またはQTL7.2を含んでなる他の野生レタスアクセッション(特に、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)である可能性がある。このような遺伝子座は、わずかに異なるヌクレオチド配列を有するNr:1対立遺伝子、すなわち、この中に見られる対立遺伝子の異型(QTL)を含んでなり得る。このような異型QTLを、本明細書に記載のように、特定し、栽培レタスに遺伝子移入して、栽培レタス(L. sativa)のゲノム並びに組換え6番染色体および/または7番染色体を含んでなる栽培レタス植物を作製することもでき、それにより、組換え6番染色体および/または7番染色体は、ホモ接合型またはヘテロ接合型で存在する場合に栽培レタス植物にNr:1抵抗性を付与する、野生アキノノゲシ属(Lactuca)種遺伝子移入断片(特に、ワイルドレタス(L. virosa))を含んでなる。
【0165】
QTL6.1および/またはQTL7.1および/またはQTL7.2(または異型QTL)を含んでなるそのような野生レタス植物を特定するために、野生アクセッションが、例えば、マーカーアッセイにおいて、または配列比較もしくは他の方法によって、本明細書において提供されるSNPマーカーのうちの一つまたは複数の存在について、スクリーニングされ得る。推定上のNr:1抵抗性付与QTL(または異型QTL)を次に、例えば、所望によりMAS(マーカー支援選抜)を用いて、すなわち、本明細書において提供されるSNPマーカー(またはこれらの間のマーカー)の一つまたは複数(または全て)を用いて、栽培レタスに遺伝子移入することにより、組換え6番染色体および/または7番染色体を含んでなる子孫植物(例えば戻し交雑植物)を検出および/または選抜することができる。選抜された植物、すなわち、6番染色体および/または7番染色体上の遺伝子移入断片を含んでなり、6番染色体上の遺伝子移入断片がSNPマーカーSNP_01〜SNP_07のうちの一つもしくは複数、もしくはSNPマーカーSNP1.23、SNP_02、SNP2.24もしくはSNP_03、もしくはこれらのいずれかの間にあるマーカーのうちの一つもしくは複数(本明細書の別の場所に記載)によって検出可能であり、並びに/または、7番染色体上の遺伝子移入断片が、QTL7.2もしくはその異型を検出するSNPマーカーSNP_08〜SNP_14、もしくはこれらの間にあるマーカーのうちの一つまたは複数(本明細書の別の場所に記載)、および/もしくは、QTL7.1もしくはその異型を検出するSNPマーカーSNP_15〜SNP_22、もしくはSNP_17、SNP17.25、SNP_18もしくはSNP_19、もしくはこれらのいずれかの間にあるマーカーのうちの一つまたは複数(本明細書の別の場所に記載)によって検出可能である、栽培レタス植物は次に、遺伝子移入断片が実際にNr:1抵抗性を付与しているかどうかを判定するために、適切な対照植物、好ましくは少なくとも遺伝的対照および/またはMafalda等のNr:1感受性植物と共に、Nr:1抵抗性について表現型決定され得る。記述された一つまたは複数のNr:1抵抗性アッセイが使用され得る。
【0166】
ワイルドレタス(L. virosa)等の、野生レタスのアクセッションは、USDA国立植物遺伝資源システムコレクションまたはヴァーヘニンゲンのCGN等の他の種子コレクションから入手可能であり、従って、例えば本明細書に記載のマーカーアッセイを用いて、QTL6.1(もしくは異型)および/またはQTL7.1(もしくは異型)および/またはQTL7.2(もしくは異型)の存在についてスクリーニングされ得、QTL6.1もしくは異型を示すSNPマーカーのうちの一つもしくは複数を含んでなる;および/またはQTL7.2もしくは異型を示すSNPマーカーのうちの一つもしくは複数を含んでなる;および/またはQTL7.1もしくは異型を含んでなるSNPマーカーのうちの一つもしくは複数を含んでなるアクセッションが、正常な野生型の非組換え6番染色体および7番染色体を有する栽培レタス植物と交雑され得る。F2世代(またはさらなる世代、例えばF3、または好ましくは戻し交雑世代、例えばBC1、BC2、BC3もしくはBC1S1等)が次に、本明細書に記載の分子マーカーアッセイを用いて、遺伝子移入断片またはその抵抗性付与部分を有する組換え植物についてスクリーニングされ得る。あるいは、野生アクセッションが、Nr:1抵抗性アッセイを用いて表現型についてスクリーニングされ得、係る野生アクセッションとの交雑から得られた子孫植物のみがマーカー(および遺伝子移入断片)の存在についてスクリーニングされ得る。このような子孫植物も本発明の範囲に含まれる。
【0167】
特定の実施態様において、Nr:1抵抗性付与QTL6.1および/またはNr:1抵抗性付与QTL7.1および/またはNr:1抵抗性付与QTL7.2を含んでなる遺伝子移入断片は、受入番号NCIMB42086として寄託された代表試料である種子から、またはその子孫から、由来し得る(または由来する)または入手可能である(または入手される;またはその中に存在する)。前記子孫は、上記のQTLを示す一つまたは複数(または全て)のSNPマーカーを保持するあらゆる子孫であり得る。従って、子孫は寄託物のF1またはF2子孫に限定されず、自家受粉によって得られるか、および/または別のレタス植物との交雑によって得られるかにかかわらず、あらゆる子孫であり得る。
【0168】
一つの実施態様では、遺伝子移入断片は、本明細書の別の場所に記載されるマーカー、特に、以下のうちの一つまたは複数によって同定可能である:6番染色体上の遺伝子移入断片(QTL6.1または異型)については、マーカーSNP_01〜SNP_07(もしくはこれらの間にあるあらゆるマーカー)、またはSNP1.23、SNP_02、SNP2.24および/もしくはSNP_03(もしくはこれらの間にあるあらゆるマーカー)、また所望によりVSP1もしくはVSP3;および、QTL7.2(または異型)と称される7番染色体上の遺伝子移入断片については、SNP_08〜SNP_14(またはこれらの間にあるあらゆるマーカー)、および、QTL7.1(または異型)と称される7番染色体上の遺伝子移入断片については、SNP_15〜SNP_22(もしくはこれらの間にあるあらゆるマーカー)、またはSNP_17、SNP17.25、SNP_18および/もしくはSNP_19(もしくはこれらの間にあるあらゆるマーカー)、所望によりVSP2もしくはVSP4。
【0169】
一つの態様において、本発明は、レタス(L. sativa)のゲノムを有する栽培レタス植物系統または品種を提供し、前記系統または品種はNr:1抵抗性を含んでなり、Nr:1抵抗性は栽培レタスの6番染色体および/または7番染色体上の遺伝子移入断片によって付与され、前記遺伝子移入断片は、Nr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)植物(QTLに連結された、本明細書で開示される一つまたは複数のマーカーを含んでなる)を栽培レタス植物と交雑することにより、入手される(または入手可能である)。
【0170】
さらなる態様において、本発明は、レタス(L. sativa)のゲノムを有する栽培レタス植物系統または品種を提供し、前記系統または品種はNr:1抵抗性を含んでなり、Nr:1抵抗性は栽培レタスの6番染色体および/または7番染色体上の遺伝子移入断片によって付与され、前記遺伝子移入断片は、NCIMB42086として寄託された種子から育成された植物またはこの植物の子孫(QTLに連結された、本明細書で開示される一つまたは複数のマーカーを含んでなる)を栽培レタス植物と交雑することにより、入手される(または入手可能である)。
【0171】
さらに別の実施態様では、本発明は、本発明の植物、すなわち、ホモ接合型またはヘテロ接合型の6番染色体および/または7番染色体上の野生レタス由来の遺伝子移入断片を含んでなり、前記遺伝子移入断片が、番号NCIMB42086として寄託された種子に見られるQTLを含んでなるゲノム配列の異型である、すなわち、Nr:1QTLを含んでなるが、ゲノム配列は異なっていてもよい、栽培レタス(L. sativa)植物に関する。野生アクセッションは遺伝的に多岐にわたるため、他の野生レタスアクセッション(例えば、受入番号NCIMB42086として寄託されたもの以外の、他のワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)由来のQTL6.1またはQTL7.1またはQTL7.2(これらのQTLは本明細書においてQTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2の異型またはオルソログとも称される)を含んでなる遺伝子移入断片のゲノム配列は、前記ゲノム配列と同一でない可能性が高く、Nr:1抵抗性付与遺伝子(プロモーター、イントロンおよびエクソンを含んでなる)でさえヌクレオチド配列において多岐にわたり得るが、機能は同一であり得る、すなわちNr:1抵抗性を付与する。(異型)QTL6.1および/または(異型)QTL7.1および/または(異型)QTL7.2に連結されたある特定のSNPマーカーは様々なアクセッションに一般に存在し得るが、一方で、他のSNPマーカーは特定のアクセッションにのみ存在し得ることが、相違として見て取れる。そのため、例えば、SNP_01〜SNP_7のどれも、または、SNP1.23、SNP_02、SNP2.24もしくはSNP_03、および/もしくはSNP_08〜SNP_14および/もしくはSNP_15〜SNP_22、もしくはSNP_17、SNP17.25、SNP_18もしくはSNP_19のどれも、他のNr:1抵抗性野生レタス(例えばワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)に存在せず、一方で、これらのアクセッションが同一領域にQTL異型を含んでなる場合がある。同様に、前記SNPマーカーのそれぞれを含んでなるゲノム配列は、本明細書において提供される配列と100%同一でなくてもよく、本明細書において提供される配列に対して、すなわち配列番号1〜配列番号22および配列番号23〜29のいずれか1つに対して、(少なくとも)85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有していればよい。しかし、Nr:1抵抗性付与QTL6.1(または異型)およびQTL7.1(または異型)およびQTL7.2(または例えばNr:1対立遺伝子の異型もしくはオルソログを含んでなる異型)が、このような野生アクセッションに存在する場合がある。当業者は、過度の負担無く、他の野生レタスアクセッション(特に、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション;具体的には、Nr:1に対する自由選択抵抗性および非選択抵抗性の両方を含んでなるワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)に見られる領域を含んでなる(異型)QTL6.1および/または(異型)QTL7.1および/または(異型)QTL7.2を、特定し、栽培レタスに遺伝子移入することができる。
【0172】
一つの実施態様において、QTL6.1(または異型)を含んでなる遺伝子移入断片、または6番染色体領域(または異型もしくはオルソロガス6番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、またはそれ以上(または7つ全て)の一塩基多型(SNP)マーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号1内の(または配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_01のAAまたはAT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) 配列番号4内の(または配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型;
e) 配列番号5内の(または配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_05のTTまたはTC遺伝子型;
f) 配列番号6内の(または配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_06のCCまたはCA遺伝子型;
g) 配列番号7内の(または配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_07のGGまたはGT遺伝子型;
h) マーカーSNP_01とSNP_07との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0173】
従って、一つの実施態様において、本発明の植物は以下を含んでなる:配列番号1(SNP_01と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのアデニン(A)(すなわち、AAもしくはAT遺伝子型);および/または、配列番号2(SNP_02と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型);および/または、配列番号3(SNP_03と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのアデニン(A)(すなわち、AAもしくはAC遺伝子型);および/または、配列番号4(SNP_04と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGまたはGA遺伝子型);および/または、配列番号5(SNP_05と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTC遺伝子型);および/または、配列番号6(SNP_06と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCA遺伝子型);および/または、配列番号7(SNP_07と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGT遺伝子型)。
【0174】
別の実施態様において、QTL6.1(または異型)を含んでなる遺伝子移入断片、または6番染色体領域(または異型もしくはオルソロガス6番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択される一塩基多型(SNP)マーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3または4つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号23内の、または配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号2内の、または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号24内の、または配列番号24に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;
d) 配列番号3内の、または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
e) マーカーSNP1.23とSNP_03との間のあらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0175】
従って、一つの実施態様において、本発明の植物は以下を含んでなる:配列番号23(SNP1.23と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型);および/または、配列番号2(SNP_02と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型);および/または、配列番号24(SNP2.24と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号24に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはCT 遺伝子型);および/または、配列番号3(SNP_03と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのアデニン(A)(すなわちAAもしくはAC遺伝子型)。
【0176】
一つの実施態様において、QTL7.2(または異型)を含んでなる遺伝子移入断片、または7番染色体領域(または異型もしくはオルソロガス7番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、またはそれ以上(または7つ全て)の一塩基多型(SNP)マーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号8内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号9内の(または配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号10内の(または配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
d) 配列番号11内の、または配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;
e) 配列番号12内の(または配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_12のCCまたはCT遺伝子型;
f) 配列番号13内の(または配列番号13に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_13のGGまたはGA遺伝子型;
g) 配列番号14内の(または配列番号14に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型;
h) マーカーSNP_08とSNP_14との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0177】
従って、一つの実施態様において、本発明の植物は以下を含んでなる:配列番号8(SNP_08と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTC遺伝子型);および/または、配列番号9(SNP_09と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型);および/または、配列番号10(SNP_10と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのグアニン(GG)ではなく、少なくとも1つのアデニン(A)(すなわち、AAもしくはAG遺伝子型);および/または、配列番号11(SNP_11と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCA遺伝子型);および/または、配列番号12(SNP_12と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型);および/または、配列番号13(SNP_13と称される)のヌクレオチド136における、もしくは配列番号13に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGA遺伝子型);および/または、配列番号14(SNP_14と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号14に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型)。
【0178】
一つの実施態様において、QTL7.1(または異型)を含んでなる遺伝子移入断片、または7番染色体領域(または異型もしくはオルソロガス7番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7またはそれ以上(または8つ全て)の一塩基多型(SNP)マーカーを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号15内の(または配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_15のTTまたはTA遺伝子型;
b) 配列番号16内の(または配列番号16に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_16のGGまたはGA遺伝子型;
c) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
d) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
e) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
f) 配列番号20内の(または配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
g) 配列番号21内の(または配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;
h) 配列番号22内の(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_22のCCまたはCT遺伝子型;
i) マーカーSNP_15とSNP_22との間の、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、例えばワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0179】
従って、一つの実施態様において、本発明の植物は以下を含んでなる:配列番号15(SNP_15と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTA遺伝子型);および/または、配列番号16(SNP_16と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号16に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGA遺伝子型);および/または、配列番号17(SNP_17と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTC遺伝子型);および/または、配列番号18(SNP_18と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGC遺伝子型);および/または、配列番号19(SNP_19と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGA遺伝子型);および/または、配列番号20(SNP_20と称される)のヌクレオチド72における、もしくは配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTC遺伝子型);および/または、配列番号21(SNP_21と称される)のヌクレオチド41における、もしくは配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCA遺伝子型);および/または、配列番号22(SNP_22と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのチミン(TT)ではなく、少なくとも1つのシトシン(C)(すなわち、CCもしくはCT遺伝子型)。
【0180】
さらなる実施態様において、QTL7.1(または異型)を含んでなる遺伝子移入断片、または7番染色体領域(または異型もしくはオルソロガス7番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択される一塩基多型(SNP)マーカーのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、4つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号25内の(または配列番号25に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
c) 配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
d) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
e) SNP_17とSNP_19との間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0181】
従って、一つの実施態様において、本発明の植物は以下を含んでなる:配列番号17(SNP_17と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTC遺伝子型);配列番号25(SNP17.25と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号25に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのチミン(T)(すなわち、TTもしくはTC遺伝子型);および/または、配列番号18(SNP_18と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのシトシン(CC)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGC遺伝子型);および/または、配列番号19(SNP_19と称される)のヌクレオチド71における、もしくは配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチドにおける、2つのアデニン(AA)ではなく、少なくとも1つのグアニン(G)(すなわち、GGもしくはGA遺伝子型)。
【0182】
SNP遺伝子型とは、2つのヌクレオチド、および各々の6番染色体(SNP_01〜SNP_07またはSNP1.23、SNP_02、SNP2.24もしくはSNP_03の場合)または7番染色体(SNP_08〜SNP_14およびSNP_15〜SNP_22またはSNP_17、SNP17.25、SNP_18もしくはSNP_19の場合)上に、これら2つのヌクレオチドの一方を含んでなるゲノム配列を指す。そのため、SNP_22についてCC遺伝子型を有する植物は両方の染色体上で同一のヌクレオチド(C)を有し、一方、SNP_22についてCT遺伝子型を有する植物は、配列番号22のヌクレオチド71(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチド)にCを有する1つの染色体、および、配列番号22のヌクレオチド71(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなるゲノム配列の等価なヌクレオチド)にTを有する1つの染色体を有する。本明細書において提供されるSNPマーカーの周囲のゲノム配列は他の野生レタスアクセッション由来の遺伝子移入断片においてわずかに異なり得るため(すなわち、異型またはオルソロガス6番染色体または7番染色体領域)、SNPの前後のヌクレオチド配列が本明細書において提供される配列と100%同一でない場合があることは明らかである。従って、本明細書において提供される配列に対して実質的な配列同一性を有するが、同一のSNPを含んでなる配列が、本明細書に包含される。また、ある態様において、遺伝子移入がホモ接合型であると、SNPマーカー遺伝子型が該QTLについてホモ接合性の遺伝子型になることは明らかである。
【0183】
遺伝子移入断片は、Nr:1抵抗性付与部分が保持されている限り、染色体の半分ほども巨大であってもよく、または小さくてもよい。一つの態様において、6番染色体および/または7番染色体上の遺伝子移入断片は、120Mb、100Mb、84Mb、80Mb、75Mb、74Mb、73Mb、60Mb、50Mb、40Mb、30Mb、20Mb、16Mb、15Mb、10Mbのサイズ以下、好ましくは8Mbのサイズ以下、より好ましくは6、5、4、3または2.5Mbのサイズ以下、例えば2Mb以下である。一つの態様において、遺伝子移入断片は、少なくとも0.2Mb、0.5Mb、1.0Mb、1.5Mb、1.9Mb、2.0Mb、2.5Mbまたは3Mbのサイズである。従って、様々な範囲の遺伝子移入サイズが本明細書に包含される。サイズは、例えばQi et al. 2013 (Nature Genetics December 2013, Vol 45, No. 12, pages 1510-1518)またはHuang et al. 2009 (Nature Genetics, Volume 41, Number 12, p1275-1283)に記載される、例えば全ゲノムシークエンシングまたは次世代シークエンシングによって、容易に決定することができる。特に、遺伝子移入領域内には大量の遺伝的変異(SNP、INDEL等)があるため、遺伝子移入領域は栽培(cultivated)ゲノム領域と容易に区別可能である。
【0184】
本明細書に記載のQTLまたはオルソログまたは異型のいずれか1つの存在について、野生レタス、例えばワイルドレタス(L. virosa)、をスクリーニングおよび特定する方法は、当業者に公知である。例えば、種々のワイルドレタス(L. virosa)アクセッションが、まず、それらのNr:1抵抗性、特に自由選択抵抗性および/または非選択抵抗性をアッセイすることにより表現型によって選抜され、一つの態様においては、自由選択抵抗性および非選択抵抗性の両方を含んでなるアクセッションが選抜され得る。あるいは、種々のワイルドレタス(L. virosa)アクセッションが、本明細書に記載のSNPマーカー(またはSNPマーカーの間にあるマーカー)のうちの一つまたは複数の存在について、直接的にスクリーニングされ得る。候補野生レタス、例えばワイルドレタス(L. virosa)、が特定された後の、伝統的育種法を用いる、本発明のQTLのうちの1つ、2つまたは3つ全てを野生レタスから栽培レタスに導入する方法は、当業者に公知である。例えば、寄託された種子(NCIMB42086)から成長した植物等の、野生アクセッションから成長した植物を、栽培レタス植物と交雑することで、F1種子を得ることができる。F1植物を一回または複数回自家受粉することで、F2もしくはF3植物(もしくはさらなる自家受粉世代)が作製され得、および/または、F1、F2植物もしくはF3植物等が栽培レタス親に戻し交雑され得る。QTLを含んでなる組換え6番染色体および/または7番染色体を含んでなる植物を特定するために、QTL6.1(もしくは異型)および/またはQTL7.1(もしくは異型)および/またはQTL7.2(もしくは異型)を含んでなる子孫植物が、上記SNPマーカー(またはそれらのマーカーのいずれかの間にあるマーカー)の一つまたは複数または全ての存在によって、スクリーニングおよび選抜され得る。種間交雑(例えば、レタス(L. sativa)およびワイルドレタス(L. virosa))から子孫を得るのに、胚救出等の手法の使用が必要である場合がある。
【0185】
本発明のさらに別の実施態様において、QTL6.1(または異型)を含んでなる、栽培レタス植物内の遺伝子移入断片、または6番染色体領域(またはオルソロガス6番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号1内の(または配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_01のAAまたはAT遺伝子型;
b) 配列番号7内の(または配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_07のGGまたはGT遺伝子型;
c) マーカーSNP_01とSNP_07との間のあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー;
d) マーカーSNP_01〜SNP_07のいずれか1つの7cM、5cM、3cMまたはそれ以下以内に遺伝的に連結されたあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー;および
e) マーカーSNP_01〜SNP_07のいずれか1つの5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mbもしくは0.2Mbまたはそれ以下以内に物理的に連結されたあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー。
【0186】
一つの態様において、c)のマーカーは、SNP_02〜SNP_06のうちの一つまたは複数である。
【0187】
一つの態様では、上記のa)、b)および/またはc)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。別の態様では、上記のa)、b)、c)、d)および/またはe)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの実施態様では、少なくともa)および/またはb)のマーカーが検出され、所望により、c)、d)および/またはe)の少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの態様では、c)の少なくとも1、2、または3つのマーカーが検出され、特に、少なくともSNP_04、SNP_05および/またはSNP_06が検出される。
【0188】
a)およびb)のマーカーの間にあるあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー(例えば、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的)は、マーカーSNP_01とSNP_07との間の6番染色体領域に遺伝的に位置し、且つ/または、マーカーSNP_01とSNP_07との間に物理的に位置し、且つ、野生レタス6番染色体領域を示す、あらゆる分子マーカーを指す。これは、マーカーが栽培レタスゲノムと野生レタスゲノムとの間で多型であることを意味する。一つの態様では、マーカーは一塩基多型(SNP)であるが、他の分子マーカー、例えばRFLP、AFLP、RAPD、DNA塩基配列決定法等は同様に使用され得る。
【0189】
本発明の別の実施態様において、QTL6.1(または異型)を含んでなる、栽培レタス植物内の遺伝子移入断片、または6番染色体領域(またはオルソロガス6番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号23内の(または配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号3内の、または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
c) マーカーSNP1.23とSNP_03との間に物理的に位置するあらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
d) マーカーSNP1.23〜SNP_03のいずれか1つの10Mb、5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mbもしくは0.2Mbまたはそれ以下以内に物理的に連結されたあらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0190】
一つの態様において、c)のマーカーは、SNP_02、SNP2.24、所望によりVSP1および/またはVSP3のうちの一つまたは複数である。
【0191】
一つの態様では、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが、上記のa)、b)および/またはc)のマーカーから検出される。別の態様では、上記のa)、b)、c)および/またはd)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの実施態様では、少なくともa)および/またはb)のマーカーが検出され、所望により、c)および/またはd)の少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの態様では、c)の少なくとも1、2、または3つのマーカーが検出され、特に、少なくともSNP_02および/またはSNP2.24が検出される。
【0192】
あらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカーとは、マーカーが遺伝子移入断片およびワイルドレタス(L. virosa)ゲノムの存在を示すこと、すなわち、マーカーが栽培レタスゲノムと野生ワイルドレタス(L. virosa)レタスゲノムとの間で多型であること、を示す。一つの態様では、マーカーは一塩基多型(SNP)であるが、他の分子マーカー、例えばRFLP、AFLP、RAPD、DNA塩基配列決定法等は同様に使用され得る。
【0193】
同様に、本発明の一つ実施態様において、QTL7.2(または異型)を含んでなる、栽培レタス植物内の遺伝子移入断片、または7番染色体領域(またはオルソロガス7番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号8内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号14内の(または配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型;
c) マーカーSNP_08とSNP_14との間のあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー;
d) マーカーSNP_08〜SNP_14のいずれか1つの7cM、5cM、3cMまたはそれ以下以内に遺伝的に連結されたあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー;および
e) マーカーSNP_08〜SNP_14のいずれか1つの5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mbもしくは0.2Mbまたはそれ以下以内に物理的に連結されたあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー。
【0194】
一つの態様において、c)のマーカーは、SNP_09〜SNP_13のうちの一つまたは複数である。
【0195】
一つの態様では、上記のa)、b)および/またはc)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。別の態様では、上記のa)、b)、c)、d)および/またはe)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの実施態様では、少なくともa)および/またはb)のマーカーが検出され、所望により、c)、d)および/またはe)の少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの態様では、c)の少なくとも1、2、または3つのマーカーが検出され、特に、SNP_09、SNP_10および/またはSNP_11が検出される。
【0196】
a)およびb)のマーカーの間にあるあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー(例えば、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的)は、マーカーSNP_08とSNP_14との間の6番染色体領域に遺伝的に位置し、且つ/または、マーカーSNP_08とSNP_14との間に物理的に位置し、且つ、野生レタス7番染色体領域を示す、あらゆる分子マーカーを指す。これは、マーカーが栽培レタスゲノムと野生レタスゲノムとの間で多型であることを意味する。一つの態様では、マーカーは一塩基多型(SNP)であるが、他の分子マーカー、例えばRFLP、AFLP、RAPD、DNA塩基配列決定法等は同様に使用され得る。
【0197】
同様に、本発明の一つ実施態様において、QTL7.1(または異型)を含んでなる、栽培レタス植物内の遺伝子移入断片、または7番染色体領域(またはオルソロガス7番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号15内の(または配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTA遺伝子型;
b) 配列番号22内の(または配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型;
c) マーカーSNP_15とSNP_22との間のあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー;
d) マーカーSNP_15〜SNP_22のいずれか1つの7cM、5cM、3cMまたはそれ以下以内に遺伝的に連結されたあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー;および
e) マーカーSNP_15〜SNP_22のいずれか1つの5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mbもしくは0.2Mbまたはそれ以下以内に物理的に連結されたあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー。
【0198】
一つの態様において、c)のマーカーは、SNP_16〜SNP_21のうちの一つまたは複数である。
【0199】
一つの態様では、上記のa)、b)および/またはc)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。別の態様では、上記のa)、b)、c)、d)および/またはe)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの実施態様では、少なくともa)および/またはb)のマーカーが検出され、所望により、c)、d)および/またはe)の少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの態様では、c)の少なくとも1、2、または3つのマーカーが検出され、特に、SNP_19、SNP_20および/またはSNP_21が検出される。
【0200】
a)およびb)のマーカーの間にあるあらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー(例えば、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的)は、マーカーSNP_15とSNP_22との間の6番染色体領域に遺伝的に位置し、且つ/または、マーカーSNP_15とSNP_22との間に物理的に位置し、且つ、野生レタス7番染色体領域を示す、あらゆる分子マーカーを指す。これは、マーカーが栽培レタスゲノムと野生レタスゲノムとの間で多型であることを意味する。一つの態様では、マーカーは一塩基多型(SNP)であるが、他の分子マーカー、例えばRFLP、AFLP、RAPD、DNA塩基配列決定法等は同様に使用され得る。
【0201】
本発明の別の実施態様において、QTL7.1(または異型)を含んでなる、栽培レタス植物内の遺伝子移入断片、または7番染色体領域(またはオルソロガス7番染色体領域)の存在は、以下からなる群から選択されるマーカーのうちの少なくとも1つを検出する分子マーカーアッセイによって検出可能である:
a) 配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
b) 配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
c) マーカーSNP17とSNP_19との間に物理的に位置するあらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
d) マーカーSNP17〜SNP_19のいずれか1つの12Mb、10Mb、5Mb、3Mb、2Mb、1Mb、0.5Mbもしくは0.2Mbまたはそれ以下以内に物理的に連結されたあらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0202】
一つの態様において、c)のマーカーは、SNP17.25、SNP_18、所望によりVSP4のうちの一つまたは複数である。
【0203】
一つの態様において、d)のマーカーはVSP2またはSNP_16である。
【0204】
一つの態様では、上記のa)、b)および/またはc)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。別の態様では、上記のa)、b)、c)および/またはd)のマーカーから、少なくとも1つ、2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの実施態様では、少なくともa)および/またはb)のマーカーが検出され、所望により、c)および/またはd)の少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のマーカーが検出される。一つの態様では、c)の少なくとも1、2、または3つのマーカーが検出され、特に、少なくともSNP17.25および/またはSNP18が検出される。
【0205】
あらゆるワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカーとは、マーカーが遺伝子移入断片およびワイルドレタス(L. virosa)ゲノムの存在を示すこと、すなわち、マーカーが栽培レタスゲノムと野生ワイルドレタス(L. virosa)レタスゲノムとの間で多型であること、を示す。一つの態様では、マーカーは一塩基多型(SNP)であるが、他の分子マーカー、例えばRFLP、AFLP、RAPD、DNA塩基配列決定法等は同様に使用され得る。
【0206】
本発明の植物に成長可能である種子も提供され、本発明の植物から収穫され、それらのゲノム内に組換え6番染色体および/または7番染色体を含んでなる、レタスの葉(またはその一部)および結球も同様に提供される。同様に、少なくとも1つの組換え6番染色体および/または7番染色体を含んでなり、前記組換え6番染色体および/または7番染色体が野生レタス由来の遺伝子移入断片を含んでなり、前記遺伝子移入断片がNr:1抵抗性を付与するQTLを含んでなる、植物または種子の植物細胞、組織または植物部分が提供される。
【0207】
本明細書に記載の分子マーカーは、標準方法によって検出され得る。例えば、SNPマーカーは、KASPアッセイ(www.kpbioscience.co.uk参照)または他のアッセイを用いて容易に検出することができる。KASPアッセイを開発するために、例えば、SNPの70塩基対上流および70塩基対下流が選択され得、2つの対立遺伝子特異的フォワードプライマーおよび1つの対立遺伝子特異的リバースプライマーが設計され得る。KASPアッセイ法については、例えば、Allen et al. 2011, Plant Biotechnology J. 9, 1086-1099、特にp097-1098を参照されたい。
【0208】
従って、一つの態様においては、SNPマーカーおよびQTLに関連するマーカーの存在/非存在は、KASPアッセイを用いて決定されるが、他のアッセイも同様に使用することができる。例えば、所望により、DNA塩基配列決定法を使用してもよい。
【0209】
遺伝子移入断片の物理的サイズは、物理的マッピング、配列決定または蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)画像を用いた遺伝子移入の可視化(Verlaan et al. 2011, Plant Journal 68: 1093-1103)等の、様々な方法によって決定することができる。
【0210】
6番染色体および/または7番染色体上に様々なサイズの遺伝子移入断片を有する植物は、栽培レタス植物(遺伝子移入を欠く)とNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)植物との間の、または栽培レタスと本発明の植物(組換え6番染色体および/または7番染色体を含んでなる栽培レタス)との間の交雑種に由来する植物集団から組換え植物を作製し、様々な遺伝子移入サイズを有する子孫を選抜することによって、作製することができる。
【0211】
方法
本明細書において特定されるマーカーおよびゲノム領域は様々な方法で使用することができ、QTLが同一であるために、これは、特定される第一の領域およびマーカー(例えば図3A参照)並びに特定される後の領域およびマーカー(例えば図3B参照)に当てはまる。本発明はいくつかの方法、すなわち:
1)QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)のうちの一つまたは複数を含んでなる野生レタス植物、特にワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、を特定するための方法;
2)QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を、野生レタス植物(例えば、ワイルドレタス(L. virosa))から栽培レタス(レタス(L. sativa))に導入して、Nr:1抵抗性栽培レタスを作製するための方法;
3) QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数の存在について、栽培レタス系統または品種をスクリーニングするための方法;並びに
4)QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を、栽培レタス(レタス(L. sativa))から別の栽培レタスに、例えばNr:1感受性レタス植物系統または品種に導入するための方法;
5)Nr:1抵抗性栽培レタスを作製するために、受入番号NCIMB42086として寄託された種子、またはその子孫を使用するための方法;
6)レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)バイオタイプNr:1が存在する地域において、本発明の植物、すなわち、QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を含んでなる、Nr:1抵抗性レタス(L. sativa)植物を栽培するための方法、を提供する。
【0212】
QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)のうちの一つまたは複数を含んでなる野生レタスを特定するための方法
一つの態様において、QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)のうちの一つまたは複数を含んでなる野生レタス植物を特定するための方法が提供され、前記方法は、以下の段階を含んでなる:
a) 1つの野生レタス植物または複数の野生レタス植物を用意する段階;
b) 所望により、前記野生レタス植物または複数の植物を、Nr:1抵抗性アッセイにおいて、Nr:1抵抗性について試験する段階;
c) a)の前記植物もしくは複数の植物の、または所望によりb)で特定されたNr:1抵抗性植物もしくは複数の植物のみのゲノムDNAを、QTL6.1もしくはその異型を示す、および/またはQTL7.1もしくはその異型を示す、および/またはQTL7.2もしくはその異型を示す、一つまたは複数のマーカーの存在について、スクリーニングする段階;並びに
d) 前記c)のマーカーのうちの一つまたは複数を含んでなる植物を特定する段階;
e) 所望により、d)の植物を、Nr:1抵抗性アッセイにおいて、Nr:1抵抗性について試験する段階;
f) 所望により、d)の野生レタス植物を栽培レタス植物と交雑する段階。
【0213】
所望により、前記方法はさらに、QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)を、栽培レタス、特にNr:1感受性レタス、に遺伝子移入し、遺伝子移入断片のうちの一つまたは複数によって付与されるNr:1抵抗性を含んでなるレタス(L. sativa)植物を作製することを含んでなる。これは例えば、戻し交雑によって行うことができる。所望により、マーカー支援選抜を使用してもよい。
【0214】
段階a)の植物または複数の植物は、例えば異なる地理的領域に由来する、ワイルドレタス(L. virosa)であることが好ましい。
【0215】
段階b)またはe)において、Nr:1に対して抵抗性であることから、推定的にQTLのうちの一つまたは複数を含んでなる植物を選抜するために、表現型Nr:抵抗性アッセイ(例えば、圃場試験または制御環境試験)を行うことができる。Nr:1抵抗性アッセイは、自由選択アッセイおよび/または非選択アッセイであり得る。
【0216】
前記方法によって得られるNr:1抵抗性レタス(L. sativa)植物も、本発明の実施態様である。
【0217】
段階c)のゲノムDNAは、上記でさらに説明されるように、例えば、以下からなる群から選択される一つまたは複数のマーカーの存在を判定することにより、QTL6.1またはその異型を示す一つまたは複数のマーカーの存在についてスクリーニングされ得る:
a) 配列番号1内の、もしくは配列番号1に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_01のAAもしくはAT遺伝子型;および/または
b) 配列番号2内の、もしくは配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_02のCCもしくはCT遺伝子型;および/または
c) 配列番号3内の、もしくは配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_03のAAもしくはAC遺伝子型;および/または
d) 配列番号4内の、もしくは配列番号4に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_04のGGまたはGA遺伝子型;および/または
e) 配列番号5内の、もしくは配列番号5に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_05のTTもしくはTC遺伝子型;および/または
f) 配列番号6内の、もしくは配列番号6に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_06のCCもしくはCA遺伝子型;および/または
g) 配列番号7内の、もしくは配列番号7に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_07のGGもしくはGT遺伝子型;および/または
h) SNP_01とSNP_07との間に、例えばSNP_01〜SNP_07のうちのいずれか2つのマーカーの間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0218】
あるいは、段階c)のゲノムDNAは、上記でさらに説明されるように、例えば、以下からなる群から選択される一つまたは複数のマーカーの存在を判定することにより、QTL6.1またはその異型を示す一つまたは複数のマーカーの存在についてスクリーニングされ得る:
a) 配列番号23内の(または配列番号23に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP1.23のCCまたはCT遺伝子型;
b) 配列番号2内の(または配列番号2に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_02のCCまたはCT遺伝子型;
c) 配列番号24内の(または配列番号24に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP2.24のTTまたはCT遺伝子型;
配列番号3内の(または配列番号3に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_03のAAまたはAC遺伝子型;
d) SNP1.23およびSNP_03の間(例えばSNP1.23およびSNP2.24、SNP1.23およびSNP_02の間);またはSNP_02およびSNP_03の間(例えばSNP_02およびSNP2.24の間);またはSNP2.24およびSNP_03の間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー;
e) SNP1.23、SNP_02、SNP2.24、またはSNP_03から選択されるあらゆるマーカーの10Mbの距離内、好ましくは5Mb以内に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特にワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0219】
また所望により、ワイルドレタス(L. virosa)特異的マーカー(VSP1またはVSP3)をスクリーニングすることで、QTLを含んでなるアクセッションタイプを特定および/または区別することができる。
【0220】
段階c)のゲノムDNAは、上記でさらに説明されるように、例えば、以下からなる群から選択される一つまたは複数のマーカーの存在を判定することにより、QTL7.2またはその異型を示す一つまたは複数のマーカーの存在についてスクリーニングされ得る:
a) 配列番号8内の、もしくは配列番号8に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_08のTTまたはTC遺伝子型;
b)配列番号9内の、もしくは配列番号9に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_09のCCまたはCT遺伝子型;
c)配列番号10内の、もしくは配列番号10に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_10のAAまたはAG遺伝子型;
d)配列番号11内の、もしくは配列番号11に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_11のCCまたはCA遺伝子型;
e)配列番号12内の、もしくは配列番号12に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_12のCCまたはCT遺伝子型;
f)配列番号13内の、もしくは配列番号13に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_13のGGまたはGA遺伝子型;
g)配列番号14内の、もしくは配列番号14に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_14のCCまたはCT遺伝子型;
h) SNP_08とSNP_14との間に、例えばSNP_08〜SNP_14のうちのいずれか2つのマーカーの間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0221】
段階c)のゲノムDNAは、上記でさらに説明されるように、例えば、以下からなる群から選択される一つまたは複数のマーカーの存在を判定することにより、QTL7.1またはその異型を示す一つまたは複数のマーカーの存在についてスクリーニングされ得る:
i. 配列番号15内の、もしくは配列番号15に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_15のTTまたはTA遺伝子型;
ii. 配列番号16内の、もしくは配列番号16に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_16のGGまたはGA遺伝子型;
iii. 配列番号17内の、もしくは配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
iv. 配列番号18内の、もしくは配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
v. 配列番号19内の、もしくは配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
vi. 配列番号20内の、もしくは配列番号20に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_20のTTまたはTC遺伝子型;
vii. 配列番号21内の、もしくは配列番号21に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_21のCCまたはCA遺伝子型;
viii. 配列番号22内の、もしくは配列番号22に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の、一塩基多型マーカーSNP_22のCCまたはCT遺伝子型;
ix. SNP_15とSNP_22との間に、例えばSNP_15〜SNP_22のうちのいずれか2つのマーカーの間に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0222】
あるいは、段階c)のゲノムDNAは、上記でさらに説明されるように、例えば、以下からなる群から選択される一つまたは複数のマーカーの存在を判定することにより、QTL7.1またはその異型を示す一つまたは複数のマーカーの存在についてスクリーニングされ得る:
配列番号17内の(または配列番号17に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17のTTまたはTC遺伝子型;
配列番号25内の(または配列番号25に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_17.25のTTまたはTC遺伝子型;
配列番号18内の(または配列番号18に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_18のGGまたはGC遺伝子型;
配列番号19内の(または配列番号19に対する実質的な配列同一性を含んでなる配列内の)一塩基多型マーカーSNP_19のGGまたはGA遺伝子型;
SNP_17およびSNP_19の間(例えばSNP_17およびSNP_18の間、SNP_17およびSNP17.25の間;またはSNP17.25およびSNP_19の間、またはSNP17.25およびSNP_18の間、またはSNP_18およびSNP_19の間)に物理的に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特に、ワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー;
SNP_17、SNP_17.25、SNP_18およびSNP_19から選択されるあらゆるマーカーの12Mb、10Mbの距離内、好ましくは5Mb以内に位置する、あらゆる野生レタスゲノム特異的マーカー、特にワイルドレタス(L. virosa)ゲノム特異的マーカー。
【0223】
また所望により、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション特異的マーカー(VSP2またはVSP4)をスクリーニングすることで、QTLを含んでなるアクセッションタイプを区別することができる。
【0224】
マーカースクリーニングは、当業者に公知の、例えばPCRに基づく手法、配列決定に基づく手法等の、あらゆる適切な手法または手法の組合せによって、行うことができる。ゲノムDNAのスクリーニングは、植物、植物部分、種子に対して、またはそれから単離されたゲノムDNAに対して、行うことができると理解される。
【0225】
前記方法の段階d)において、マーカーのうちの一つまたは複数、例えば、SNP_01〜SNP_07のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7つ全て、および/もしくは、SNP_01とSNP_07との間にあるあらゆるマーカー;または、SNP1.23、SNP_02、SNP2.24もしくはSNP_03(および所望によりVSP1もしくはVSP3)のマーカーのうちの一つまたは複数、および/もしくは、SNP1.23とSNP_03との間にあるあらゆるマーカー;少なくとも、SNP_08〜SNP_14のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7つ全て、および/もしくは、SNP_08とSNP_14との間にあるあらゆるマーカー;SNP_15〜SNP_22のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7もしくは8つ全て、および/もしくは、SNP_15とSNP_22との間にあるあらゆるマーカー;または、SNP_17、SNP17.25、SNP_18もしくはSNP_19(および所望によりVSP2もしくはVSP4)、もしくは、SNP_17とSNP_19との間にあるあらゆるマーカーを含んでなる植物が特定される。
【0226】
従って、一つの態様において、Nr:1抵抗性を含んでなる栽培レタス植物を作製するための方法が提供され、前記方法は以下の段階を含んでなる:
a) QTL6.1(もしくは異型)を示す1、2、3、4、5、もしくはそれ以上のSNPマーカー;および/または、QTL7.2(もしくは異型)を示す1、2、3、4、5、もしくはそれ以上のSNPマーカー、および/またはQTL7.1(もしくは異型)を示す1、2、3、4、5、もしくはそれ以上のSNPマーカーを含んでなる、野生レタス、特にワイルドレタス(Lactuca virosa)植物、を用意する段階;
b) 前記野生レタス、特に前記ワイルドレタス(Lactuca virosa)植物を、レタスヒゲナガアブラムシNr:1に対して感受性の栽培レタス植物と交雑して、F1種子を生産する段階;
c) 所望により、F1種子から成長した植物を一回または複数回自家受粉させて、F2、F3またはさらなる世代の自家受粉子孫を生産する段階;
d) 前記F1またはさらなる世代の自家受粉子孫を段階b)の栽培レタス植物に対して交雑して、戻し交雑子孫を生産する段階;
e) バイオタイプNr:1に対する抵抗性を含んでなる戻し交雑子孫を選抜する段階。
【0227】
前記方法によって生産されるレタス植物も、本明細書に包含される。
【0228】
QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を、野生レタス(例えば、ワイルドレタス(L. virosa))から栽培レタス(レタス(L. sativa))に導入して、Nr:1抵抗性栽培レタスを作製するための方法
別の態様において、QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を、野生レタス(例えば、ワイルドレタス(L. virosa))から栽培レタス(レタス(L. sativa))に導入して、Nr:1抵抗性栽培レタスを作製するための方法が提供され、前記方法は以下を含んでなる:
a) QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)を含んでなる野生レタス植物を用意すること;
b) a)の野生レタス植物を栽培レタス植物と交雑してF1を作製すること;
c) 所望により、F1を一回または複数回自家受粉させてさらなる自家受粉子孫を作製すること;
d) F1またはさらなる自家受粉子孫を一回または複数回、段階b)の栽培レタス植物(反復親)に対して戻し交雑すること;
e) 6番染色体上および/または7番染色体上にa)の野生レタス植物(供与親)由来の遺伝子移入断片を含んでなる段階b)の栽培レタス植物(反復親)のゲノムを含んでなる戻し交雑子孫を特定および/または選抜すること。
【0229】
一つの態様において、a)の野生レタス植物はワイルドレタス(L. virosa)である。一つの態様において、ワイルドレタス(L. virosa)は、Nr:1抵抗性アッセイで試験された場合に、Nr:1抵抗性である。一つの態様において、a)のワイルドレタス(L. virosa)親は、NCIMB42086、または自家受粉および/もしくは交雑によって得られるその子孫であり、前記子孫はQTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2を含んでなる。別の態様では、a)の植物は、ビロサ(virosa)特異的マーカーVSP1および/もしくはVSP2を含んでなる、または、ビロサ(virosa)特異的マーカーVSP3および/もしくはVSP4を含んでなる、ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションである(表6および7に示される)。
【0230】
上記の方法(および本発明のあらゆる他の方法)における段階b)の栽培レタスは、近交系または品種等のあらゆるレタス(L. sativa)であり得る。前記栽培レタスは、リーフまたはルーズリーフレタス、バターヘッドまたはビッブレタス、ロメインまたはコスレタス、クリスプヘッドまたはアイスバーグレタス、セルタスまたはステムレタスレタス等の、あらゆる種類のレタスであり得る。1つの植物系統または品種にNr:1抵抗性遺伝子座を積み重ねるために、前記栽培レタスは、異なる遺伝子座によって付与されるNr:1抵抗性を含んでなる植物であってもよいが、Nr:1感受性植物であることが好ましい。前記栽培レタスは、Nr:0抵抗性植物であり得る。前記栽培レタスは、優性のNr遺伝子を含んでなり得る。
【0231】
戻し交雑および戻し交雑子孫に言及する場合、これは、戻し交雑(BC)および自家受粉(S)によって得られる子孫、例えばBC1S1、BC1S2、BC2S1等、も包含し得る。
【0232】
段階e)では、本明細書に記載のマーカーおよびマーカーアッセイのいずれも使用可能である。
【0233】
前記方法によって得られる植物も、本明細書の別の場所に記載されるように、本発明の一つの実施態様である。これらの植物は従って、ホモ接合型またはヘテロ接合型で、6番染色体(QTL6.1もしくは異型)および/または7番染色体(QTL7.1および/もしくはQTL7.2もしくは異型)上に、本発明のQTLのうちの一つまたは複数を含んでなる、(あらゆる種類の)栽培レタス(L. sativa)植物である。
【0234】
レタス(L. sativa)とワイルドレタス(L. virosa)等の野生レタス植物との間には生殖不能障壁(sterility barrier)が存在し得るため、ワイルドレタス(L. virosa)植物(例えば、受入番号NCIMB42086を有する種子から成長した植物または他のワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)がラクツカ・セリオラ(L. serriola)等の橋渡し種と交雑されることで(Eenink et al. 1982, Euphytica 31:291-299)、および/または、四倍体化等の他の方法が使用されることで、生殖不能障壁が克服され得る。Thompson and Ryder(1961;米国農務省、Tech. Bulletin no. 1244)は、例えば、ワイルドレタス(L. virosa)を(ラクツカ・セリオラ(L. serriola)×レタス(L. sativa))雑種と交雑して、不稔性のF1種間雑種を生産した。しかし、F1の四倍体化、並びにその後の交雑および二倍体化によって、ワイルドレタス(L. virosa)からレタス(L. sativa)への形質の遺伝子移入が可能となった。また、胚救出を用いることで、種間交雑から生存可能な胚が回収され得る(Maisonneuve et al. 1995, Euphytica 85: 281-285)。従って、本明細書のあらゆる場所において、ワイルドレタス(L. virosa)植物を栽培レタス植物と交雑することにより入手可能な、Nr:1抵抗性を付与する一つまたは複数のQTLを含んでなる栽培レタス植物(レタス(L. sativa))が言及される場合、これは、橋渡し種、胚救出および/またはコルヒチン処理(染色体倍加)の使用等の、生殖不能障壁を克服する段階を含んでなり得る(ただし限定はされない)。
【0235】
QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数の存在について、栽培レタス系統または品種をスクリーニングするための方法
この方法は、前記QTLのうちの一つまたは複数を含んでなる野生レタス植物を特定するための方法と類似しているが、本明細書においては、栽培レタス植物、すなわちレタス(L. sativa)植物、がスクリーニングされる。
【0236】
前記方法は従って、以下の段階を含んでなる:
a) 1つの栽培レタス植物または複数の栽培レタス植物を用意する段階;
b) 所望により、前記栽培レタス植物または複数の植物を、Nr:1抵抗性アッセイ(例えば自由選択および/または非選択)において、Nr:1抵抗性について試験する段階;
c) a)の前記植物もしくは複数の植物の、または所望によりb)で特定されたNr:1抵抗性植物もしくは複数の植物のみのゲノムDNAを、QTL6.1もしくはその異型を示す、および/またはQTL7.1もしくはその異型を示す、および/またはQTL7.2もしくはその異型を示す、一つまたは複数のマーカーの存在について、スクリーニングする段階;並びに
d) 前記c)のマーカーのうちの一つまたは複数を含んでなる植物を特定する段階;
e) 所望により、d)の植物を、Nr:1抵抗性アッセイにおいて、Nr:1抵抗性について試験する段階。
【0237】
この方法を用いて、例えば市販の競合品種を、それらが本発明のQTLのうちの一つまたは複数を含有するかどうかを判定するために、スクリーニングすることができる。
【0238】
QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を、栽培レタス(レタス(L. sativa))から別の栽培レタスに、例えばNr:1感受性レタス植物系統または品種に導入するための方法
当然ながら、本発明のQTLは、Nr:1抵抗性である様々な種類および様々な品種のレタスを作製するために、ある栽培レタス(L. sativa)植物から別の栽培レタス(L. sativa)植物に導入することもできる。
【0239】
この方法は以下の段階を含んでなる:
a) QTL6.1、QTL7.1および/もしくはQTL7.2またはこれらのうちのいずれかの異型の一つまたは複数または全てを含んでなるレタス(L. sativa)植物を用意する段階;
b) a)のレタス(L. sativa)植物を第二のレタス(L. sativa)植物と交雑する段階;
c) 前記交雑種からF1種子を収集し、所望により、前記F1植物を一回または複数回自家受粉させて、F2またはF3またはさらなる自家受粉集団を生産する段階、
d) 所望により、F1植物またはF2またはF3またはさらなる自家受粉植物をb)の第二のレタス(L. sativa)植物に対して戻し交雑して、戻し交雑集団を生産する段階、
e) 所望により、戻し交雑集団を一回または複数回自家受粉させる段階、
f) 6番染色体上の遺伝子移入断片(QTL6.1)を示す、および/または、7番染色体上の遺伝子移入断片(QTL7.1および/またはQTL7.2)を示す、SNPマーカー遺伝子型の一つまたは複数または全てを含んでなる、F1、F2、F3、さらなる自家受粉植物または戻し交雑植物を特定する段階。
【0240】
QTL6.1、QTL7.1およびQTL7.2(またはこれらのうちのいずれかの異型)を含んでなる遺伝子移入断片は、全て一緒に、または個別に、別の栽培レタス植物に導入することができる。
【0241】
一つの態様において、b)の第二の栽培レタス植物は、Nr:1感受性レタス植物、または少なくとも、a)のドナーから受け取るQTLを欠く植物である。
【0242】
生産される新たなレタス植物は、繰り返しになるが、あらゆる種類およびあらゆる系統または品種であり得る。従って、QTLは、伝統的な育種によって、ある栽培レタスから別の栽培レタスに、例えば、バターヘッドからロメインに、ステムレタスからビッブに、ロメインからルーズリーフに等、導入され得る。導入中に、遺伝子移入断片のサイズは組換えによって減少する場合があり、それにより、マーカーのいくつかが得られる植物に存在しない場合がある。
【0243】
この方法によって生産される植物も、一つの本発明の実施態様である。
【0244】
従って、Nr:1抵抗性を含んでなる栽培レタス植物を作製するための方法が提供され、前記方法は以下の段階を含んでなる:
a) QTL6.1(もしくは異型)を示す1、2、3、4、5、もしくはそれ以上のSNPマーカー;;および/または、QTL7.2(もしくは異型)を示す1、2、3、4、5、もしくはそれ以上のSNPマーカー、および/またはQTL7.1(もしくは異型)を示す1、2、3、4、5、もしくはそれ以上のSNPマーカーを含んでなる、栽培レタス植物を用意する段階;
b) 前記栽培レタス植物を、レタスヒゲナガアブラムシNr:1に対して感受性の別の栽培レタス植物と交雑して、F1種子を生産する段階;
c) 所望により、F1種子から成長した植物を一回または複数回自家受粉させて、F2、F3またはさらなる世代の自家受粉子孫を生産する段階;
d) Nr:1抵抗性表現型を有する、且つ/または遺伝子移入断片もしくは遺伝子移入断片の抵抗性付与部分を含んでなる、F1、F2、F3またはさらなる世代の自家受粉子孫から成長したレタス植物を特定する段階;
e) 所望により、前記特定されたF1子孫または自家受粉子孫を段階b)の栽培レタス植物と交雑して、戻し交雑子孫を生産する段階;
f) 所望により、バイオタイプNr:1に対する抵抗性を含んでなる、且つ/または遺伝子移入断片もしくは遺伝子移入断片の抵抗性付与部分を含んでなる、戻し交雑子孫を選抜する段階。
【0245】
段階d)および/またはf)では、本明細書に記載のマーカーを使用することができる。
【0246】
前記方法によって生産されるレタス植物も、本明細書に包含される。
【0247】
Nr:1抵抗性栽培レタスを作製するために、受入番号NCIMB42086として寄託された種子、またはその子孫を使用するための方法
NCIMB42086は、3つ全てのQTLをホモ接合型で含んでなり、従って、既に記載されたように、前記QTLのうちの一つまたは複数を含んでなる栽培レタス系統または品種を作製するのに使用することができる。同様に、前記QTLのうちの一つまたは複数を保持するNCIMB42086の子孫も、前記QTLのうちの一つまたは複数を含んでなる栽培レタス系統または品種を作製するのに使用することができる。
【0248】
レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)バイオタイプNr:1が存在する地域において、本発明の植物、すなわち、QTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2(またはその異型)から選択されるQTLのうちの一つまたは複数を含んでなる、Nr:1抵抗性レタス(L. sativa)植物を栽培するための方法
本発明の植物は、天然のNr:1外寄生地域において栽培することができる。本明細書において特定されるQTLは、自由選択条件下だけでなく、非選択条件下においても、レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)バイオタイプNr:1に対する抵抗性を与えるため、前記昆虫が摂食および繁殖のための別の選択肢を有さない場合であっても良好な収量を期待できることから、前記抵抗性は圃場において非常に有効である。自由選択条件下でのみ存在する抵抗性の使用は、アブラムシが、他の好ましい選択肢が利用可能でない場合に、摂食および繁殖のために該植物を選択する場合があるため、危険である。
【0249】
さらに、本発明のQTLは、ドイツ、フランスおよびスペイン等の様々な国に由来する、様々なバイオタイプNr:1単離物に対する抵抗性を与えることが示された。従って、前記抵抗性は、ドイツ、フランス、スペイン、英国および他のヨーロッパの国々、並びにバイオタイプNr:1が発見され得る世界の他の国々において、有効であり、且つ持続的であると期待される。
【0250】
一つの態様において、本発明のQTLは、バイオタイプNr:0に対する、少なくともヨーロッパのバイオタイプNr:0に対する(すなわち、少なくともドイツ、フランスおよびスペインのバイオタイプNr:1に対する)抵抗性も与える。従って、一つの態様において、本発明の(前記QTLのうちの一つまたは複数を含んでなる)栽培レタス植物は、Nr:1に対して、且つ少なくともヨーロッパのバイオタイプNr:0に対しても、抵抗性である。一つの態様において、これはまだ試験されていないが、前記植物は米国またはカリフォルニアのバイオタイプNr:0に対して感受性である。
【0251】
バイオタイプNr:1に対する本発明の(前記QTLのうちの一つまたは複数を含んでなる)植物の圃場抵抗性は、Mafalda等の感受性対照よりも、有意により高い(すなわち、有意により少ないアブラムシ平均数によって測定可能)。これは、例えば、天然Nr:1外寄生地域における(例えば、ムルシア、スペインにおける)開放圃場試験で、ゲノム内に前記遺伝子移入断片のうちの一つまたは複数を含んでなる系統または品種のレタス植物を、圃場に、感受性品種Mafaldaおよび/または遺伝的対照系統等の適切な対照と一緒に、播種または栽培することによって、試験することができる。系統または品種当たり少なくとも約10、15、20またはそれ以上の植物が含まれること、および、少なくとも2回または好ましくは3回反復することが好ましい。植物は毎週監視され得、十分な外寄生が感受性対照上に見られた後(例えば、少なくとも100匹またはそれ以上のアブラムシ)、各系統または品種の代表数の植物上のレタスヒゲナガアブラムシの数が計数され得る。圃場条件において、バイオタイプNr:1のアブラムシの平均数は、Mafalda等の感受性対照と比較して、本発明の植物上で有意により少ないことが好ましい。アブラムシの平均数は、稚苗(3〜4本葉期未満)上では測定されないことが好ましいが、というのも、そのような若い植物上では、抵抗性がまだ十分に期待されないと実施例において判明したためである。
【0252】
NCIMB42086の(3つ全てのQTLをホモ接合型で含んでなる)植物は、スペインで行われた自由選択および非選択の圃場試験においてNr:1アブラムシを完全に含まないと判明したが、(推測には限定されないが)前記QTL(または異型)のうちの1つのみもしくは2つのみ、または前記QTL(もしくは異型)を含んでなる3つ全てでない遺伝子移入をホモ接合型で含んでなる栽培レタス植物は、Nr:1に対して完全には抵抗性でない場合があり得る。従って、一つの態様において、前記QTL(QTL6.1、QTL7.1および/もしくはQTL7.2またはこれらのうちのいずれかの異型)のうちの一つまたは複数をホモ接合型またはヘテロ接合型で含んでなる本発明の栽培レタス植物は、同一条件下で育成された場合の、品種Mafalda(もしくは異なるNr:1感受性品種、好ましくはNr遺伝子を含んでなる)、または遺伝的対照上に見られるアブラムシの平均数の、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%または1%以下である、バイオタイプNr:1のアブラムシの平均数を含んでなる。本発明の植物上および対照植物上のNr:1アブラムシの平均数を決定するために、例えば自由選択試験または非選択試験が、実施例に記載されるように、圃場において行われ得る。
【0253】
一つの態様において、本発明の栽培レタス植物は、平均50匹以下のレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)バイオタイプNr:1アブラムシ、または平均40、30、20、もしくは10匹以下のNr:1アブラムシを含んでなる。別の態様では、本発明の栽培レタス植物は、圃場で育成された場合に、(平均して)ゼロ匹のNr:1アブラムシまたは本質的にゼロ匹のNr:1アブラムシ(平均5匹以下のアブラムシ)を含んでなり、一方、Mafalda等の対照植物は、かなりの数のバイオタイプNr:1アブラムシを含んでなる。かなりの数とは、平均して少なくとも100匹のアブラムシ、150、200、250匹またはそれ以上のアブラムシである。
【0254】
別の態様では、本発明の栽培レタス植物は、平均50匹以下のレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)アブラムシ(あらゆるバイオタイプの、すなわち、バイオタイプNr:0およびバイオタイプNr:1の)、または平均40、30、20、もしくは10匹以下のレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)アブラムシを含んでなる。別の態様では、本発明の栽培レタス植物は、圃場で育成された場合に、(平均して)ゼロ匹のレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)または本質的にゼロ匹のアブラムシ(平均5匹以下のアブラムシ)を含んでなり、一方、Mafalda等の対照植物はかなりの数のバイオタイプNr:1アブラムシを含んでなり、さらに一方、Nr:0感受性品種はかなりの数のバイオタイプNr:0を含んでなる。かなりの数とは、平均して少なくとも100匹のアブラムシ、150、200、250匹またはそれ以上のアブラムシである。
【0255】
本発明の栽培レタス植物はあらゆる種類の栽培レタス植物であり得る。本発明の栽培レタス植物は、緑色レタスまたは赤色レタス、緑色および赤色レタス(例えばまだらの)、ベビーリーフ、リトルジェムレタス、ルーズリーフレタス(カッティング(cutting)レタスまたはバンチング(bunching)レタスとも称される)、バターヘッドレタス、ビッブレタス、バタビア(またはサマークリスプ)レタス、ヘッディングレタス、ロメイン(またはコス)レタス、クリスプヘッド(またはアイスバーグ)レタス、マルチリーフレタス、グレートレイクスグループレタス、バンガードグループレタス、サリナスグループレタス、イースタン(イサカ)グループレタス、セルタスまたはステムまたはラテンレタス等の種類であり得る。本発明の栽培レタス植物はまた、市場間取引タイプのレタス、例えば、アイスバーグレタスの特徴を有するコスレタス、またはコスレタスの特徴を有するアイスバーグ等であり得る。本発明の栽培レタス植物は、近交系、F1雑種、倍加半数体、遺伝子導入植物、変異植物等であり得る。
【0256】
一つの態様において、QTL6.1、7.1および/もしくは7.2(または異型)のうちの一つまたは複数を含んでなる遺伝子移入断片は、本発明の栽培レタス植物においてホモ接合型である。一回または複数回の自家受粉は、遺伝子移入断片がホモ接合型となり、SNPマーカーもホモ接合性の遺伝子型を示すことを確実にする。
【0257】
さらなる態様において、本発明の栽培レタス植物は、良好な繁殖性を有し、他の栽培レタス系統または品種と容易に交雑可能である。前記QTLと同時に導入され、低い繁殖力および/または矮性成長等の栽培植物におけるあらゆる負の特徴を付与するあらゆる野生ゲノム断片(例えばワイルドレタス(L. virosa))が、取り除かれることが好ましい。これは、より短い遺伝子移入断片を有するが、Nr:1抵抗性付与部分を保持する組換え体を選抜することによって、実行することができる。
【0258】
本発明の植物を用いることで、前記QTL(または異型)およびNr:1抵抗性表現型を有するまたは保持する子孫(progeny)(または子孫(descendant))を作製することができる。子孫を作製するために、本発明の栽培レタスは、別のレタス植物と一回または複数回、自家受粉および/または交雑され、種子が収集され得る。
【0259】
また、本発明の植物のいずれかに成長可能な種子も提供される。
【0260】
一つの実施態様では、Nr:1抵抗性栽培レタス植物を作製するための、その代表的な種子が受入番号NCIMB42086として寄託されたレタス植物、またはその子孫(例えば自家受粉によって得られる)の使用が提供される。
【0261】
別の実施態様では、Nr:1抵抗性栽培レタス植物を作製するための、受入番号NCIMB42086として寄託された種子またはその子孫(例えば自家受粉によって得られる)に存在する/から入手可能な一つまたは複数のQTLによって付与されるNr:1抵抗性表現型を含んでなる栽培レタス植物の使用が、提供される。
【0262】
種子
また、本発明の植物のいずれかに成長可能な種子も提供され、そのような種子を含有するまたは含んでなる容器またはパッケージも提供される。種子は、一つまたは複数のQTLの存在(本明細書に記載の分子マーカー試験を用いて試験可能)によって、および表現型的に、他の種子と区別可能である。
【0263】
一つの態様において、種子は小型容器および/または大型容器(例えば、袋、ボール箱、缶等)内に詰められる。種子は、パッケージング前にペレッティング(pelleted)(ピルまたはペレットを形成)してもよく、および/または、種々の化合物で処理してもよい(例えば種子粉衣)。
【0264】
種子ペレッティング(seed pelleting)は、フィルムコーティングと組み合わせることができる(Halmer, P. 2000. Commercial seed treatment technology. In: Seed technology and its biological basis. Eds: Black, M. and Bewley, J. D., pages 257-286)。ペレッティングは、現代の種蒔き機で容易に播種される、丸いまたは丸められた形状を作り出す。ペレッティング混合物は、典型的には、種子および少なくとも接着剤(glue)および充填剤を含有する。後者は、例えば、粘土、雲母、白亜またはセルロースであり得る。さらに、ある種の添加剤を含ませることで、ペレットの特定の特性を向上させることができ、例えば、少なくとも1つの殺虫性、殺ダニ性、殺線虫性または殺真菌性の化合物を含んでなる種子処理製剤が、ペレッティング混合物に直接、または別々の層状に、添加され得る。種子処理製剤は、これらの種類の化合物のうちの1つのみ、2つ以上の同じ種類の化合物の混合物、または、一つもしくは複数の同じ種類の化合物と、少なくとも1つの他の殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤もしくは殺真菌剤との混合物を含み得る。
【0265】
種子処理としての適用に特に適した製剤は、ペレット中またはペレット上のコーティングの使用の可能性も含めて、並びに、ペレット混合物中への直接的な種子処理製剤を含めて、フィルムコーティングの形態で種子に加えることができる。特徴として、フィルムコーティングは均一、無塵、透水性のフィルムであり、全ての個々の種子の表面を均等に被覆する(Halmer, P. 2000. Commercial seed treatment technology. In: Seed technology and its biological basis. Eds: Black, M. and Bewley, J. D., pages 257-286)。前記製剤に加え、コーティング混合物は一般的に、水、接着剤(典型的には重合体)、充填剤、顔料および特定のコーティング特性を向上させるためのある種の添加剤等の、他の成分も含有する。いくつかのコーティングを単一の種子上で組み合わせることができる。
【0266】
さらに、フィルムコーティングとのいくつかの組合せが可能であり:フィルムコーティングは、ペレットの外側に、ペレッティング材の2層の間に、およびペレッティング材が加えられる前に種子上に直接、加えることができる。また、1より多いフィルムコーティング層を単一のペレットに組み込むことができる。特殊なタイプのペレッティングとしてエンクラスティングがある。この手法はより少ない充填剤を使用し、結果として生じるものは「ミニペレット」である。
【0267】
種子はプライミングしてもよい。全ての商業的に栽培された野菜種子の中で、レタスは最も頻繁にプライミングされる。プライミングは、土壌からの発芽および出芽(emergence)の均一性を増加させることで、野菜スタンドの確立を増進するための、種子上に行われる水性工程(water-based process)である。プライミングは、第一実生および最終実生の出芽間の期間を減少させる。レタス種子をプライミングする方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Hill et al HortScience 42(6): 1436, 2007を参照)。
【0268】
植物部分および栄養生殖
さらなる態様において、本発明の植物から得られる(から入手可能な)植物部分、および前記植物部分を含んでなる容器またはパッケージが、本明細書において提供される。あらゆる植物部分は、組換え6番および/または7番染色体の存在によって、すなわち、6番染色体および/または7番染色体上の、野生レタス由来の、例えばワイルドレタス(L. virosa)由来の、遺伝子移入断片の存在によって、他のレタス植物部分と区別可能である。これは、本明細書に記載のマーカーのうちの一つまたは複数または全ての存在によって、容易に試験することができる。
【0269】
好ましい実施態様では、植物部分は、本発明の栽培レタス植物の葉もしくは結球、好ましくは収穫された葉もしくは結球、またはこれらの一部である。
【0270】
本発明の植物の他の植物部分としては、茎、挿穂、葉柄、子葉、花、葯、花粉、子房、根、根端、プロトプラスト、カルス、小胞子、柄、胚珠、苗条、種子、胚、胚嚢、細胞、分裂組織、芽等が挙げられる。種子には、例えば、自家受粉後または別のレタス植物由来の花粉との受粉後に本発明の植物上に生産される種子が含まれる。
【0271】
さらなる態様において、植物部分は植物細胞または植物組織である。さらに別の態様において、植物部分は、非再生可能細胞または再生可能細胞である。別の態様において、植物細胞は体細胞である。さらなる態様において、植物細胞は、胚珠または花粉等の生殖細胞である。これらの細胞は一倍体である。それらが植物全体に再生した場合、それらは開始植物の1倍体ゲノムを含んでなる。染色体倍加が起こる場合(例えば、化学的処理を通じて)、倍加半数体植物が再生され得る。一つの態様において、本発明の植物は、一倍体または倍加半数体のレタス植物である。
【0272】
さらに、例えば、限定はされないが、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、分裂組織細胞、根、根端、葯、花、種子または茎、体細胞、生殖細胞等の上記の植物部分に由来する、本発明のレタス植物のインビトロ細胞培養物または組織培養物が提供される。例えば、葉、胚軸または茎の挿穂が組織培養に使用され得る。
【0273】
特定の態様において、本発明のレタス植物のインビトロ細胞培養物または組織培養物が提供され、前記細胞培養物または組織培養物は上記の植物部分に由来し、そのような植物部分は生殖細胞を含んでならない。別の実施態様では、細胞培養物または組織培養物は再生可能な細胞を含んでならない。一つの態様において、本発明の非増殖性細胞が提供され、本発明の非増殖性細胞を含む、またはそれからなる細胞培養物または組織培養物が提供される。
【0274】
また、前述の植物部分から再生される、または前述の細胞培養物もしくは組織培養物から再生されるレタス植物が提供され、前記再生された植物はNr:1抵抗性を有し、すなわち、Nr:1抵抗性を付与する遺伝子移入断片を保持する。これらの植物も、本発明の植物の栄養繁殖と称され得る。
【0275】
また、本発明の植物の収穫された葉および/または結球、並びに本発明の植物の複数の葉および/または結球、例えば、1、2、3、4、5、10、12、20個の結球、を含んでなるパッケージが提供される。
【0276】
本発明はまた、本明細書に記載の植物部分を含んでなる、またはそれからなる、食品または飼料製品を提供する。食品または飼料製品は、新鮮なものであってもよく、あるいは加工されたもの、例えば、缶詰にした、蒸した、ボイルした、揚げた、湯通しした、および/または冷凍したもの等であってもよい。例としては、本発明の植物の葉または葉の一部を含んでなるサラダまたはサラダミックスがある。
【0277】
Nr:1抵抗性表現型および遺伝子移入断片を保持する本発明のレタス植物またはその子孫、および上述の植物の一部は、例えば、輸送および/または新鮮なままの販売のために適切にパッケージングされ得る。そのような一部は、限定はされないが、結球、挿穂、花粉、葉、葉の一部等の、実生または植物から入手可能なあらゆる細胞、組織および器官を包含する。結球および葉は、ベビーリーフとして、またはそれ以後に、収穫され得る。植物、複数の植物(plants)またはその一部は、単独で、または他の植物または物質と一緒に、容器(例えば、袋、ボール箱、缶等)内にパッケージングされ得る。一部は、貯蔵および/またはさらに加工され得る。従って、本発明の植物、その子孫および上述の植物の一部から入手可能な、そのような一部、そのような葉またはその一部のうちの一つまたは複数を含んでなる食品または飼料製品も包含される。本発明の(新鮮および/または加工された)植物の植物部分を含んでなる、例えば、缶、箱、木箱、袋、ボール箱、調整雰囲気包装、フィルム(例えば生分解性フィルム)等の容器もまた、本明細書において提供される。
【0278】
植物および子孫(progeny)(子孫(descendant))
別の実施態様において、例えば、種子から育成された、有性生殖もしくは栄養生殖によって生産された、前述の植物部分から再生された、または細胞もしくは組織培養から再生された、本発明のレタス植物の植物および一部、並びに本発明のレタス植物の子孫が提供され、繁殖された(種子繁殖または栄養生殖された)植物は、Nr:1抵抗性表現型(および従って、Nr:1抵抗性を付与する遺伝子移入断片)を含んでなる。
【0279】
上記のように、植物、子孫または栄養繁殖がNr:1抵抗性表現型を含んでなるかどうかは、表現型によって、例えば、上記のように、もしくは実施例におけるように、選択試験および/もしくは非選択試験、圃場試験または制御環境試験を用いて、並びに/または、分子マーカー解析(本明細書に記載のマーカーの一つもしくは複数もしくは全てを使用)、DNA塩基配列決定法(例えば、ワイルドレタス(L. virosa)遺伝子移入を特定するための全ゲノム配列決定)、染色体彩色等の分子技法を用いて、試験することができる。
【0280】
一つの実施態様では、NCIMB42086または他の野生レタス(例えば他のNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション)から入手可能な(から入手される)Nr:1抵抗性QTLは、他のNr:1耐性遺伝子(例えば、異なる染色体上の単一遺伝子もしくはQTL)等の他の遺伝子と、Nr:0耐性遺伝子(例えばNr遺伝子)と、または、べと病、菌核病、ボトリチス属(Botrytis)、ウドンコ病、炭疽病、尻腐病、褐色根腐病(corky root rot)、レタスモザイクウイルス、ビッグベイン、レタスヒゲナガアブラムシ、テンサイ西部萎黄病およびアスター萎黄病に対する抵抗性等の他の形質と、組み合わせることができる。以下の有害生物のうちの一つまたは複数に対する抵抗性も、本発明の植物に、存在し得る、または導入され得る:スクレロティニア・ミノル(Sclerotinia minor)(落葉病)、スクレロティニア・スクレロティオルム(Sclerotinia sclerotiorum)(落葉病)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)(根元落下(bottom drop))、エリシフェ・キコラケアルム(Erysiphe cichoracearum)(ウドンコ病)、フザリウム・オキシスポーラム・フォルマ・スペシャリス・ラクチュケ(Fusarium oxysporum f. sp. lactucae)(フザリウム属凋枯症)抵抗性。病原性ウイルス(例えば、レタス伝染性黄斑ウイルス(LIYV)、レタスモザイクウイルス(LMV)、キュウリモザイクウイルス(CMV)、ビート西部萎黄ウイルス(BWYV)、アルファルファモザイクウイルス(AMV))、真菌、細菌またはレタス有害生物に対する他の耐性遺伝子も、導入され得る。
【0281】
さらに、本発明は、例えば、一回もしくは複数回の自家受粉、および/または、本発明の植物の、異なる品種もしくは育種系統の別のレタス植物との、もしくは本発明のレタス植物との、一回または複数回の他家受粉によって得られる子孫等の、本発明のNr:1抵抗性付与QTLを含んでなる、または保持する子孫(progeny)(または子孫(descendant))を提供する。具体的には、本発明は、NCIMB42086に見られるQTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2を保持する子孫を提供する。一つの態様において、本発明は、自家受粉、交雑、変異、倍加半数体作出または形質転換からなる群から選択される一つまたは複数の方法によって、Nr:1抵抗性を含んでなる本発明の栽培レタス植物から生産される子孫植物等の、Nr:1抵抗性を含んでなる子孫植物を提供する。
【0282】
変異は、自然突然変異または人為的変異または体細胞繁殖系変異であり得る。例えば、Mou 2011, Mutations in lettuce improvement, International Journal of Plant Genomics Volume 2011, Article ID 723518を参照されたい。
【0283】
一つの実施態様では、植物の一つまたは複数の特徴を変化させるために、本発明の植物または種子が(例えば、照射、化学的突然変異誘発、加熱処理、TILLING等によって)変異され得、および/または、変異された種子または植物が選抜され得る(例えば、天然変異体、体細胞繁殖系変異体等)。同様に、本発明の植物が形質転換および再生され得、これにより、一つまたは複数のキメラ遺伝子が植物に導入される。形質転換は、標準方法、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)介在性形質転換または微粒子銃、それに続く、形質転換細胞の選択および植物への再生、を用いて行うことができる。所望の形質(例えば、有害生物または病気に対する抵抗性、除草剤、殺真菌剤または殺虫剤に対する抵抗性等を付与する遺伝子)は、本発明の植物またはその子孫を所望の形質を付与する導入遺伝子で形質転換することによって、植物またはその子孫に導入することができ、形質転換された植物はNr:1抵抗性付与遺伝子移入を保持し、所望の形質を含有する。
【0284】
Nr:1抵抗性付与QTLは、さらなる育種によって子孫に、特に他の栽培レタス植物に、導入され得る。一つの態様において、子孫は、本発明の栽培レタス植物を別の植物と交雑することによって得られたF子孫、または本発明の植物を自家受粉させることによって得られたS1子孫である。また、一つまたは複数のQTLを保持する、F1植物の自家受粉によって得られたF2子孫、自家受粉および/または戻し交雑によって得られたF3、F4またはさらなる子孫も包含される。「さらなる育種」には、伝統的育種法(例えば、自家受粉、交雑、戻し交雑)、マーカー支援育種、および/または突然変異育種が包含される。一つの実施態様では、子孫は、NCIMB42086に存在するQTL6.1、QTL7.1および/またはQTL7.2を含んでなる。
【0285】
一つの態様において、本発明の植物の一倍体植物および/または倍加半数体植物が本明細書に包含される。一倍体および倍加半数体(DH)植物は、例えば、葯または小胞子の培養および植物全体への再生によって、生産することができる。DH生産において、染色体倍加は、コルヒチン処理等の公知の方法を用いて誘導され得る。そのため、一つの態様において、倍加半数体植物である、上記の一つまたは複数のNr:1抵抗性付与QTLを含んでなる栽培レタス植物が提供される。
【0286】
別の実施態様において、本発明は、本発明の栽培レタス植物をそれ自体または他のレタス植物と交雑し、得られる種子を収穫することを含んでなる、レタス種子を生産するための方法に関する。さらなる実施態様において、本発明は、この方法に従って生産された種子、および/または、そのような種子を育成することによって生産されたレタス植物に関する。
【0287】
従って、一つの態様において、本発明の栽培レタス植物の子孫が提供され、前記子孫植物は自家受粉、交雑、変異、倍加半数体作出または形質転換によって生産され、前記子孫は本明細書に記載のNr:1抵抗性を保持する。
【0288】
さらにまた別の態様において、本発明は、植物のゲノムにおいて、少なくとも第一の多型性(例えば、本明細書に記載のマーカーのうちの一つまたは複数)を検出することを含んでなる、本発明の植物の遺伝子型を決定する方法を提供する。前記方法は、ある実施態様では、植物のゲノム内の複数の多型性(例えば、QTL6.1、QTL7.1、QTL7.2またはこれらのうちのいずれかの異型を示す、本明細書に記載のマーカーのうちの2つ以上)を検出することを含み得る。例えば、核酸の試料が植物から得られ、前記核酸において1つの多型性または複数の多型性が検出される。前記方法はさらに、複数の多型性を検出する段階の結果をコンピューター可読媒体上に保存することを含んでなり得る。
【0289】
本明細書において提供されるSNPマーカーとは別に、より多くの分子マーカー、例えば、本明細書において提供されるマーカーの間にあるマーカー、または他の新たなマーカー、例えば、QTL6.1、QTL7.1および/もしくはQTL7.2の異型に連結したマーカーが、当業者によって開発され得る。分子マーカーを開発する方法は当業者に公知である。例えば、これは、本発明のNr:1抵抗性レタス植物(栽培レタスまたは野生レタス、例えばNCIMB42086)をNr:1感受性レタス植物と交雑し、その交雑種から分離集団(例えば、F2または戻し交雑集団)を発生させることによって、行うことができる。分離集団は、次に、Nr:1抵抗性について表現型決定され、例えば、SNP(一塩基多型)、AFLP(増幅断片長多型(Amplified Fragment Length Polymorphism);例えば、EP534858を参照)等の分子マーカーを用いて遺伝子型決定され得、ソフトウェア解析によって、分離集団においてNr:1抵抗性表現型と同時分離する分子マーカーが特定され得る。
【0290】
一つの態様において、それに由来するQTL6.1もしくは異型、QTL7.1もしくは異型および/またはQTL7.2もしくは異型のいずれかのQTLが栽培レタスに遺伝子移入される、野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションは、以下のアクセッションではない:CGN13361、CGN16266、CGN16272、CGN04757、CGN04930、CGN04973、CGN16274、CGN21399またはCGN05148。
【0291】
寄託情報
本発明のQTLは、ドイツ(バーデン=ヴュルテンベルク)に由来する、野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッション、PI273597(供給源は米国NGRP;国立遺伝資源プログラム(National Genetic Resource Program)、www.ars-grin.gov)の試料の子孫において特定され、それから得られた。下記の実施例で特定されたNr:1抵抗性植物は育成および繁殖せられ、種子の代表試料が、受入番号NCIMB42086として2012年12月5日にニュンヘムズB.V.社によって寄託された。このようにして、ワイルドレタス(L. virosa)NCIMB42086の合計2500個の種子が、NCIMB社(NCIMB Ltd.)(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen AB21 9YA、連合王国(NCIMB))において、2012年12月5日にニュンヘムズB.V.社によって寄託された。寄託物へのアクセスは、請求に応じて権利を有すると米国特許庁長官が定めた人物が、本願の係属中は利用可能である。特許が付与された際は、米国特許法施行規則§1.808(b)に従って、寄託された材料の公衆への利用可能性に対して寄託者により課される全ての制限は、変更不能に取り除かれる。寄託物は、30年間、または最終請求の後5年間、またはいずれか長い方の特許の権利行使可能期間、維持され、その期間中に生育不能になった場合は置き換えられる。出願人は、本願の本発明に基づきまたは植物品種保護法(7 USC 2321 et seq.)に基づき付与されたいかなる権利も放棄しない。
【0292】
本発明の範囲および精神から逸脱しない、記載された本発明の製品および方法の様々な変更形態および変形形態は、当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい実施態様と関連付けて記述されたが、特許請求された発明がそのような特定の実施態様に不当に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際に、植物育種、化学、生物学、植物病理学または関連分野における当業者には明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な変更形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内であると意図される。
【0293】
本発明は以下の実施例においてさらに説明されるが、実施例は、説明のみを目的として与えられ、本発明を限定することを決して意図していない。
【実施例】
【0294】
実施例1:自由選択試験におけるNr:1抵抗性
1.1 植物材料
種子をプラスチックトレー(4×7の鉢)に播種した。プラスチックトレーに2つの異なるピート供給源から構成される土壌混合物を充填した。播種後、トレーをプラスチック製の箱の中に配置する。次に、これらの箱をクライメイトセル内の棚上に配置した(蛍光灯を用いて16/8時間の昼/夜サイクル;光強度はおよそ50μmol.m−2.s−1PAR(光合成有効放射)であった;昼/夜期の温度は20/16℃であった;相対湿度は80%一定に設定した)。播種中、1〜2個の種子をそれぞれの鉢に設置した。発芽のおよそ1週間後、発芽した小植物を必要に応じて間引き、すなわち、鉢当たり1つのみの小植物を維持した。前記植物を実験終了までクライメイトセル(試験全体を通じて上記の環境条件を維持)内で維持した。灌水は必要な場合に行った。
【0295】
1.2:繁殖性(multiplier)植物材料
繁殖性植物は、試験に必要とされるアブラムシ集団を生産するために使用される植物である。繁殖性植物は1週目に播種した。種子を発芽させ、植物を試験植物材料と同様に維持した。開放圃場バターヘッド品種Mafalda(ニュンヘムズ社/バイエル・クロップ・サイエンス・ベジタブル・シード社(Bayer CropScience Vegetable Seeds))を繁殖性植物として使用したが、他のNr:0抵抗性植物も同様に使用可能であった。
【0296】
1.3:試験設計
クライメイトセルは最大6つの可搬性棚ユニット(MSU)を収容可能であった。各ユニットは3つの棚/プラトー(plateau)から構成されていた。それぞれ最大28の植物を含有する最大3つのプラスチック製の箱を1つの棚上に保管することができた。
【0297】
野生アクセッションNCIMB42086を、13の他の野生アクセッションと一緒に、バイオタイプNr:1に対するそれらの抵抗性レベルについて比較した。クライメイトセル内で、36個の箱を使用した。それぞれの箱は各植物系統/アクセッションの2つの植物を含有した(それぞれの箱内での植物の位置は無作為化した)。次に、36個の箱を、6つのMSUのうちの下から2つのプラトーに配置した。既知の感受性候補は含まれなかった。
【0298】
1.4:昆虫
1つのNr:1アブラムシ単離物は、本来、ドイツのファルツ地方のレタス圃場に由来するものであった。他のNr:1アブラムシ単離物は、本来、フランスのペルピニャン付近のレタス圃場に由来するものであった。
【0299】
アブラムシが試験目的に必要でなかった場合、昆虫の小コロニーを、クライメイトセル内のMafalda「維持系統(maintainer)」植物(5〜10の個々の植物)上に保持した。前記植物は1つの箱内に維持した。
【0300】
1.5:接種材料生産
試験に使用されるアブラムシ集団(すなわち、「接種材料」)の飼育は計画の第4週目に開始された。飼育は、若虫および成体(無翅)アブラムシを3週齢Mafalda植物の頂部に落すことにより開始された。28の植物を含有する箱に対しておよそ500匹のアブラムシを使用した。植物およびアブラムシを箱内に保管し、上記の環境条件を用いて、クライメイトセル内の棚上で開いたままにした。接種後、アブラムシ集団を3週間、すなわち試験の接種に必要とされるまで、前記繁殖性植物上で発育させた。
【0301】
1.6:試験接種
第7週、すなわち植物が3週齢になった際に、試験植物に接種した。
【0302】
正確に20匹のアブラムシをそれぞれの試験植物の頂部に移した。これは、絵筆を用いて、昆虫を繁殖性植物から拾い、それらを試験植物の芯に置くことにより達成された。不確定の若虫および成体のみを使用した。明白に有翅であったアブラムシは含まれなかった。
【0303】
1.7:試験計画
【表1】
【0304】
1.8:結果の収集および解析
それぞれの植物上に存在するアブラムシの数を計数した。計数は接種後の5週間、毎週行った(上記の試験計画を参照)。
【0305】
1.9:自由選択試験の結果
(自由)選択試験の結果を図2Aおよび図2Bに示す。結果は、ドイツ(図2A)およびフランス(図2B)Nr:1単離物の両方において、NCIMB42086の植物は非常に少数のアブラムシを有し、従って、より高いレベルのNr:1抵抗性を有したことを示している。NCIMB42086上の平均アブラムシ数は最初増加したが、22(ドイツ単離物)および22.5(フランス単離物)の平均数までである。アブラムシ数の最初の増加の後、数は着実に減少し、やがて、NCIMB42086上で5週間後に1.95(ドイツ単離物)および2.79(フランス単離物)の平均値に達した。
【0306】
このように、約8週齢の若い植物において、Nr:1アブラムシは自由選択条件下でNCIMB42086上に実質的に見つからなかった。
【0307】
実施例2:非選択試験におけるNr:1抵抗性
2.1:Nr:1非選択試験のプロトコルの説明
非選択試験中に使用したプロトコルは、実施例1における選択試験の1つとほぼ同じであった。それでもなお、試験された植物材料の設定、クライメイトセルおよび試験それ自体の設計には差異があった。
【0308】
選択試験とは異なり、非選択試験では、箱はビニール製テント内に個々に入れられた。
【0309】
さらに、それぞれの箱/ケージユニットには単一の植物遺伝子型(単一の系統/アクセッション)を使用し:言い換えれば、箱は組み合わされた試験植物系統を含まなかった。
【0310】
NCIMB42086および3つの他のアクセッションに存在する抵抗性レベルを非選択試験において比較した。品種Mafaldaを負の対照として使用した。
【0311】
それぞれの植物系統において、4つのケージを使用した。単一系統の18の植物を含有する箱をケージ内に設置した。次に、ケージを半無作為的にクライメイトセル内に設置した。合計20のケージおよび360の植物を使用した(系統またはアクセッション当たり72の植物)。
【0312】
ドイツNr:1単離物のみを試験したこと以外は実施例1に記載の通りに、アブラムシ接種および結果の収集を行った。
【0313】
2.2:非選択試験の結果
非選択試験の結果を、図1A、およびより大きな尺度を示す図1Bに示す。
【0314】
図から分かるように、NCIMB42086はバイオタイプNr:1に対する抵抗性を有し、すなわち、アブラムシの平均数が感受性対照品種Mafaldaにおけるよりも有意により少ない。平均アブラムシ数は、最初僅かに増加したが、30匹を超えず(NCIMB42086においては、平均アブラムシ数は2週間後に28匹であった)、その後、ゼロ匹まで持続的に減少した。
【0315】
このように、約8週齢の若い植物において、Nr:1アブラムシは非選択条件下でNCIMB42086上に見つからなかった。
【0316】
実施例2:半成体および成体植物の圃場試験(自由選択および非選択)
2.1:自由選択圃場試験
2.1.1:植物成長
それぞれの試験において、種子を、個々の混合型混合土/ピート「プラグ(plug)」に播種し、無加温温室内で発芽させた。播種からおよそ7〜9週間後、発芽した小植物を圃場内の揚床に移した。圃場はスペインのムルシア州に位置した。灌水は、植物の列の間に、揚床の上部に配置された灌水用管を用いて行った。植物は試験終了までこの位置に維持した。
【0317】
2.1.2:試験設計
2つの独立した試験を、第1年度および第2年度(それぞれYおよびY)と称される、連続した2年の間に実施した。同じ試験設計を両試験に対して使用した。前記試験設計を以下に詳述する。
【0318】
5つの異なる植物系統を圃場内で試験した。これらのうち、NCIMB42086並びに対照品種MafaldaおよびScala(共にニュンヘムズ社/バイエル・クロップサイエンス・ベジタブル・シード社(Bayer CropScience Vegetable Seeds)の品種)。MafaldaおよびScalaは共に、Nr:0抵抗性であるが、Nr:1感受性である。Scalaはコス/ロメイン種である。
【0319】
揚床をそれぞれの試験に使用した。それぞれの揚床上に、植物を16植物のレプリケートで播種し、揚床当たり5つのレプリケートを播種した。試験を部分的に無作為化し、すなわち、植物系統のそれぞれがそれぞれの揚床上に現れ、ただしそれぞれの揚床において、レプリケートの順番が無作為化されるように、試験を移転した。
【0320】
2.1.3:昆虫および接種
試験の目的は、圃場条件下でレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)Nr:1抵抗性を調べることであった。植物には意図的な接種を行わず、自然発生的なNr:1アブラムシ集団を外寄生させた。顕微鏡下の同定のために、昆虫の試料を試験終了時に採取した。
【0321】
2.1.4:結果の収集および解析
試験された様々な植物系統の抵抗性を、それぞれの植物上に存在するアブラムシの数を計数することにより評価した。計数は、試験Y中の移植の14週間後および試験Y中の移植の11週間後に行った。
【0322】
2.1.5:第1年度および第2年度の自由選択圃場試験の結果
両試験において、NCIMB42086の成体植物(18〜20週齢)はアブラムシを全く有さなかったが、一方、対照品種MafaldaおよびNr:1感受性品種Scalaは共にかなりの数のバイオタイプNr:1のアブラムシを有した。
【0323】
2.2:非選択圃場試験
2.2.1:植物成長
第2年度の間、非選択ケージ試験を上記の自由選択試験と一緒に圃場で行った。上記と同様に、植物を無加温温室内で発芽させ、その後、播種の約7〜9週間後に圃場内の揚床に移した。また、揚床の上部に植物の間に配置された管を介して、水を供給した。しかし、自由選択試験とは異なり、防虫網(網目の寸法はアザミウマの進入を防ぐのに十分な寸法)と共に組み立てられたケージ(それぞれおよそ10m)内に植物を囲い込んだ。
【0324】
2.2.2:試験設計
2つの個々のケージを圃場内で使用した。それぞれのケージで2つの揚床を使用した。それぞれの揚床に20の植物、すなわちケージ当たり40の植物、を使用した。
【0325】
単一の植物系統、すなわちNCIMB42086またはMafaldaのいずれか、をそれぞれのケージ内に移植した。
【0326】
2.2.3:昆虫および接種
試験植物材料の接種に必要とされるレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)は、近くの圃場で成長しているMafalda植物の小区画地で生じたものである。前記小区画地は、自然発生的なNr:1アブラムシ集団に受動的に外寄生された。
【0327】
接種の当日に(植物は約8週齢であった)、無翅成体をMafalda植物から採集した。次に、採集したアブラムシを、絵筆を用いてそれぞれの試験植物の頂部に個々に移した。正確に10匹の昆虫をそれぞれの試験植物上に置いた。
【0328】
2.2.4:データの収集および解析
試験された様々な植物系統の抵抗性を、それぞれの植物上に存在するアブラムシの数を計数することにより評価した。計数は接種のおよそ3週間後に行った。
【0329】
2.2.5:半成体植物(約11週齢植物)の非選択圃場試験の結果
結果を図4に示す。NCIMB42086はアブラムシを全く有さなかったが、一方、対照品種Mafaldaはかなりの数のバイオタイプNr:1のアブラムシを有した(300匹超)。
【0330】
2.2.6:半成体および成体植物の自由選択圃場試験および非選択圃場試験の結論
前記結果は、クライメイトセル内のNCIMB42086の若い植物(実施例1、およそ8週齢植物)で見られたNr:1抵抗性が、半成体および成体植物の自由選択試験および非選択試験の両方で、圃場において非常に効果的であることを示している。圃場における抵抗性は、自由選択条件および非選択条件の両方の下で、完全(アブラムシが全くいない)であると思われる。NCIMB42086は従って、異なるNr:1集団(ドイツ、フランスおよびスペイン)に対して抵抗性である。
【0331】
実施例3:Nr:1抵抗性のQTLマッピング
いくつの遺伝子座およびその遺伝子座がNCIMB42086のNr:1抵抗性に関与しているかを特定するために、NCIMB42086をレタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri)感受性レタス栽培品種と交雑した。F1をレタス(L. sativa)親に対して戻し交雑して、BC1集団を作製し、それをQTLマッピングに用いた。
【0332】
表現型検査データ(植物当たりのバイオタイプNr:1のアブラムシの総数)を、バイオタイプNr:1のアブラムシとの、接種後の2つの時点、接種の2週間後および3週間後に収集した。
【0333】
結果
以下および図3に示されるように、3つのQTLを、1つは6番染色体上で、2つは7番染色体上で、特定した。染色体上の物理的位置は、公開されたレタスゲノム(lgr.genomecenter.ucdavis.edu)に基づく。
【0334】
【表2】
【0335】
【表3】
【0336】
【表4】
【0337】
実施例4:Nr:1抵抗性のQTLマッピング
2つの戻し交雑集団において新たな遺伝子型検査およびマーカー解析を行い、Nr:1抵抗性をマッピングした。遺伝子型検査は上記と同様に行った。
【0338】
有意なロッドスコアを有する2つのQTLを、QTL6.1およびQTL7.1を含んでなる6番染色体および7番染色体番染色体上でマッピングした。結果は図3Bにも示される。
【0339】
【表5】
【0340】
【表6】
【0341】
QTL6.1およびQTL7.1を2つの異なるNr:1抵抗性ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションタイプにおいて特定し、遺伝子移入および遺伝子移入の起源を識別可能なアクセッション特異的マーカーを特定した。マーカーVSP1およびVSP2はNCIMB42086によって代表される1つのアクセッションタイプで特定され、マーカーVSP3およびVSP4は別のアクセッションタイプで特定される。
【0342】
【表7】
【0343】
【表8】
【0344】
実施例5:クリップ・オン・ケージ(clip-on cage)実験
上記の2つの野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションは、同様に高レベルのNr:1抵抗性を含んでなるが、クリップ・オン・ケージ実験で判明したように、他のワイルドレタス(L. virosa)アクセッションと比較して、Nr:1の若虫の発生がNCIMB42086の植物上で早期に止まることから、NCIMB42086はさらにより良好な抵抗性を有する。
【0345】
前記実験は1日齢の若虫を用いて行った。植物当たり、少なくとも3匹の成体アブラムシを含有する1つのケージを配置した。接種の1日後、全ての成体を取り除き、ケージ当たり3匹のみの若虫を残した。成体の除去から12日後、成体の数(生存)、新たな若虫および外皮の数を計数した。前記実験は、28のレプリカ(1ケージ/植物)を伴う、完全無作為化設計において行った。変数を変換し、ANOVAで解析し、後にLSD試験を行った。
【0346】
生存および新たな若虫の数は、両方の野生ワイルドレタス(L. virosa)アクセッションにおいてゼロであり、一方、感受性対照においては0.86(平均生存)および17.57(新たな若虫の平均数)であった。しかし、野生アクセッションは脱皮された外皮の平均数において異なり(NCIMB42086における平均数は0.85であり、一方、他のアクセッションにおける平均数は2.11であり、感受性対照においては5.85であった)、NCIMB42086は有意により少ない脱皮外皮の平均数を有し、これは、若虫発生がNCIMB42086において早期に止められたことを示している。
図1
図2
図3A
図3B
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]