(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のプレエッチング凸部の少なくとも2つが、前記インプリントレジストの複数の不連続部分のうちの2つの間の境界に対応する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記複数のプレエッチング凸部のそれぞれが前記ナノインプリントリソグラフィー基板の寸法に沿って5nm〜100μmの範囲の幅を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記複数のプレエッチング凸部が、前記ナノインプリントリソグラフィー基板の寸法に沿って最大50mmの線形寸法に対応する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記複数のプレエッチング凸部のエッチングが、該複数の凸部を酸素又はハロゲン含有プラズマに曝すことを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記インプリントレジストの複数の不連続部分のうちの2つの間の境界が、前記インプリントレジストと前記前処理組成物との不均質混合物で形成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記プレエッチング高さの平均が前記ポストエッチング高さの平均より少なくとも1nm高い、請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記プレエッチング高さ及び前記ポストエッチング高さを、前記ナノインプリントリソグラフィー基板の寸法に沿って1μm〜50μmの範囲の間隔で評定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記プレエッチング高さ及び前記ポストエッチング高さを、原子間力顕微鏡検査、反射率測定、偏光解析法、又はプロフィロメトリーによって評定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記前処理組成物と空気との界面エネルギーが、前記インプリントレジストと空気との界面エネルギー、又は前記インプリントレジストの少なくとも1つの成分と空気との界面エネルギーよりも大きい、請求項1〜11のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記前処理組成物と空気との界面エネルギーと、前記インプリントレジストと空気との界面エネルギーとの差が、0.5mN/m〜25mN/m、0.5mN/m〜15mN/m、又は0.5mN/m〜7mN/mの範囲であり、前記インプリントレジストと空気との界面エネルギーが、20mN/m〜60mN/m、28mN/m〜40mN/m、又は32mN/m〜35mN/mの範囲であり、前記前処理組成物と空気との界面エネルギーが、30mN/m〜45mN/mの範囲である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
前記前処理組成物の粘度が、23℃で1cP〜200cP、1cP〜100cP、又は1cP〜50cPの範囲であり、前記インプリントレジストの粘度が、23℃で1cP〜50cP、1cP〜25cP、又は5cP〜15cPの範囲である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のナノインプリントリソグラフィー方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、基板102上のレリーフパターンに用いられる種類のインプリントリソグラフィーシステム100を示すものである。基板102には、基層と基層に密着する密着層とが含まれ得る。基板102は基板チャック104に連結することができる。図示されるように、基板チャック104は真空チャックである。しかしながら、基板チャック104は、真空、ピン型、グルーブ型、電磁、及び/又は同様のものを含むが、これらに限定されない任意のチャックとすることができる。チャックの例は、米国特許第6,873,087号(引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。基板102及び基板チャック104はステージ106によって更に支持することができる。ステージ106により、x軸、y軸及びz軸に対する動きが与えられ得る。ステージ106、基板102及び基板チャック104が基層上に置かれていてもよい。
【0024】
テンプレート108は基板102と離間している。テンプレート108は一般にテンプレートの表面から基板102に向かっていくらか離れた矩形又は方形のメサ110を備える。メサ110の表面はパターニングすることができる。場合によっては、メサ110はモールド110又はマスク110と称されることもある。テンプレート108、モールド110又はその両方は、ヒュームドシリカ、石英、ケイ素、窒化ケイ素、有機ポリマー、シロキサンポリマー、ホウケイ酸ガラス、フッ化炭素ポリマー、金属(例えばクロム、タンタル)、硬化サファイア等、又はそれらの組合せを含むが、これらに限定されないこのような材料から形成することができる。図示されるように、表面112のパターニングは複数の離間した凹部114及び凸部116により規定された特徴を含むが、実施形態はこのような配置に限定されない。表面112のパターニングは基板102上に形成されるパターンの基となる任意のオリジナルパターンを規定し得る。
【0025】
テンプレート108はチャック118に連結している。チャック118は通例、限定するものではないが、真空、ピン型、グルーブ型、電磁、又は他の同様のチャック型として構成されている。チャックの例は米国特許第6,873,087号(引用することにより本明細書の一部をなす)に更に記載されている。さらに、チャック118はインプリントヘッド120に連結することができ、このようにしてチャック118及び/又はインプリントヘッド120がテンプレート108の動きを円滑にするように構成され得る。
【0026】
システム100には流体ディスペンスシステム122が更に含まれ得る。流体ディスペンスシステム122を用いることで、インプリントレジスト124を基板102上に堆積させることができる。インプリントレジスト124は、ドロップディスペンス、スピンコート法、ディップコート法、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、薄膜堆積、厚膜堆積等の技法を用いて基板102上に吐出することができる。ドロップディスペンス法では、
図1に示されるように、インプリントレジスト124は離間した不連続な液滴の形で基板102上に配置される。
【0027】
システム100にはパス128に沿ってエネルギーを指向させるように連結されたエネルギー源126が更に含まれ得る。インプリントヘッド120及びステージ106は、テンプレート108と基板102とがパス128と重なって位置付けられるように構成され得る。システム100は、ステージ106、インプリントヘッド120、流体ディスペンスシステム122、及び/又はエネルギー源126に連通しているプロセッサ130により制御することができ、メモリ132に保存されたコンピュータ可読プログラムにて動作させることができる。
【0028】
インプリントヘッド120は、モールド110がインプリントレジスト124と接触するようにテンプレート108に力を加えることができる。インプリントレジスト124が所望の量充填された後に、エネルギー源126からエネルギー(例えば、電磁放射エネルギー又は熱エネルギー)を生じさせ、インプリントレジスト124が固化(例えば、重合及び/又は架橋)することで、基板102の表面134及びパターニング表面112の形状に適合する。インプリントレジスト124を固化して、基板102上に重合体層を得た後に、重合体層からモールド110を分離する。
【0029】
図2は、インプリントレジスト124を固化して、基板102上にパターニングした重合体層202を得ることにより形成されるナノインプリントリソグラフィー積層体200を示すものである。パターニングした層202には、残膜204と凸部206及び凹部208として示される複数の特徴とが含まれ得る。凸部206の厚さはt
1であり、残膜204の厚さはt
2である。ナノインプリントリソグラフィーでは、基板102に対して平行な1つ以上の凸部206、凹部208又はその両方の長さは、100nm未満、50nm未満、又は25nm未満である。場合によっては、1つ以上の凸部206、凹部208又はその両方の長さは、1nm〜25nm又は1nm〜10nmである。
【0030】
上記のシステム及びプロセスは、米国特許第6,932,934号、同第7,077,992号、同第7,197,396号及び同第7,396,475号(それらは全て引用することにより本明細書の一部をなす)に言及されるようなインプリントリソグラフィープロセス及びシステムにて更に実行することができる。
【0031】
図1に示されるようなインプリントレジスト124が不連続部分(「液滴」)として基板102上に配置されるドロップオンデマンド又はドロップディスペンスナノインプリントリソグラフィープロセスでは、インプリントレジスト滴は通例、モールド110がインプリントレジストと接触する前後にて、基板102上に広がる。インプリントレジスト124の液滴の広がりが基板102を覆う又はモールド110の凹部114を満たすのに不十分である場合、重合体層202は空隙という形で欠陥を伴って形成される可能性がある。そのため、ドロップオンデマンドナノインプリントリソグラフィープロセスは通例、インプリントレジスト124の液滴の吐出を開始することと、基板102上のインプリントレジストに向けたモールド110の移動を開始することで基板とテンプレートとの間の空間を埋めることとの間に遅れを含むものである。そのことから、自動ナノインプリントリソグラフィープロセスのスループットは一般に、基板上でのインプリントレジストの広がり及びテンプレートの充填の速度により制限される。したがって、ドロップオンデマンド又はドロップディスペンスナノインプリントリソグラフィープロセスのスループットは、「充填時間」(すなわち、テンプレートと基板との間の空間を空隙なく完全に埋めるのに要する時間)を短縮することで改善することができる。充填時間を短縮する方法の一つは、基板に向けたモールドの移動を開始する前に、インプリントレジスト滴の広がり速度及びインプリントレジストによる基板の被覆を増大させることである。インプリントレジストの広がり速度及び基板の被覆の均一性は、インプリントレジストの不連続部分の迅速かつ均等な広がりを促し、パターニングされた層の形成中にインプリントレジストと重合する液体にて基板を前処理することにより改善することができる。
【0032】
第1液上での第2液の不連続部分の広がりは、
図3A〜
図3Dを参照して理解することができる。
図3A〜
図3Dは、基板304上にあり、ガス306(例えば、空気、ヘリウム若しくは窒素等の不活性ガス、又は不活性ガスの組合せ)に接している第1液300及び第2液302を示している。第1液300は本明細書にて区別なく使用されるコーティング又は層の形で基板304上に存在する。場合によっては、第1液300は数ナノメートル(例えば、1nm〜15nm又は5nm〜10nm)の厚さの層として存在する。第2液302は不連続部分(「液滴」)の形で存在する。第1液300及び第2液302の特性は互いに対して変化し得る。例えば場合によっては、第1液300は第2液302よりも粘性かつ高密度であることもある。
【0033】
第2液302と第1液300との界面エネルギー又は表面張力をγ
L1L2と表す。第1液300とガス306との界面エネルギーをγ
L1Gと表す。第2液302とガス306との界面エネルギーをγ
L2Gと表す。第1液300と基板304との界面エネルギーをγ
SL1と表す。第2液302と基板304との界面エネルギーをγ
SL2と表す。
【0034】
図3Aは、第1液300上に配置された液滴として第2液302を示している。第2液302は第1液300を変形させておらず、基板304には触れていない。示されているように、第1液300と第2液302とは混ざり合っておらず、第1液と第2液との界面は平らに描かれている。平衡状態では、第1液300上の第2液302の接触角はθであり、接触角はヤング式:
【数1】
により界面エネルギーγ
L1G、γ
L2G及びγ
L1L2と関連付けられている。
【数2】
であり、θ=0度である場合、第2液302は第1液300上に完全に広がる。これらの液を混ぜ合わせることができる場合、或る程度時間が経過すると、
【数3】
となる。この場合、第1液300上に第2液302が完全に広がる条件は、
【数4】
である。第1液300の薄膜及び第2液302の小滴については、混ざり合いは拡散現象により制限され得る。そのため、第2液302が液滴の形で第1液300上に配置されている場合に第2液302を第1液300上に広げるには、不等式(2)を広がりの初期段階にてより適用可能である。
【0035】
図3Bは、第1液300の下層が厚い場合の第2液302の液滴についての接触角形成を示している。この場合、液滴は基板304には触れていない。第2液302の液滴と第1液300の層とが角度α、β及びθにて交差し、
【数5】
である。各界面に即した力平衡には、3つの条件がある:
【数6】
【数7】
【数8】
第1液300と第2液302とを混ぜ合わせることができる場合、
【数9】
となり、方程式(6)〜(8)は、
【数10】
【数11】
【数12】
となる。方程式(10)及び(12)により、
【数13】
及び
【数14】
が与えられる。第2液302が第1液300を湿らせる場合、
【数15】
【数16】
及び方程式(11)により、
【数17】
が与えられる。この結果を方程式(5)及び(15)と組み合わせることで、
【数18】
【数19】
が与えられる。このようにして、方程式(15)、(18)及び(19)により、角度α、β及びθについて解法が得られる。
【数20】
である場合、界面間での平衡は起こらない。方程式(12)はα=πであっても不等式となり、第2液302は第1液300上に広がり続ける。
【0036】
図3Cは、基板304に触れながら、第1液300との界面も保持している第2液302の液滴についてのより複雑な幾何学配置を示している。第1液300と第2液302とガス306との界面領域(角度α、β及びθ
1により規定される)及び第1液300と第2液302と基板304との界面領域(θ
2により規定される)を、第1液上での第2液の広がり挙動を求めるのに考慮しなければならない。
【0037】
第1液300と第2液302とガス306との界面領域は方程式(6)〜(8)に支配される。第1液300と第2液302とを混ぜ合わせることができるため、
【数21】
となる。角度αについての解法は方程式(14)により得られる。この場合、
【数22】
及び
【数23】
【数24】
となる。
【数25】
である場合、第2液302の液滴と第1液300との間に平衡は起こらず、他の物理的制限(例えば、体積保存及び混ぜ合わせ)により制限されるまで、第2液とガスとの間の界面に沿って液滴が広がり続ける。
【0038】
第1液300と第2液302と基板304との界面領域については、方程式(1)と同様の方程式:
【数26】
を考える。
【数27】
である場合、液滴は完全に広がり、θ
2=0となる。さらに、混ぜ合わせることができる液については、第2項γ
L1L2=0であり、不等式(27)は、
【数28】
へと単純化される。液滴の広がりについての複合条件は、広がりの前後のエネルギーを考慮すると、
【数29】
と表される。エネルギー的に優位な遷移(すなわち、システムのエネルギーを最小限に抑える遷移)が起こるものとする。
【0039】
不等式(29)における4つの項間の異なる関係性から、液滴の広がり特性が求められる。不等式(25)が有効であり、不等式(28)が有効でない場合、第2液302の液滴は初めに第1液300の表面に沿って広がることができる。代替的には不等式(28)が保持され、不等式(25)が保持されない場合、液滴が液固界面に沿って広がり始める場合がある。最終的に第1液300と第2液302とが混ぜ合わされることにより、より大きな複雑性が導入される。
【0040】
図3Dは、基板304に触れながら、第1液300との界面も保持している第2液302の液滴についての幾何学配置を示している。
図3Dに示されるように、第2液302の液滴の各側に対象となる界面領域が2つ存在する。第1界面領域は角度α、β及びθ
1で示される、第1液300と第2液302とガス306とが接する場所である。対象となる第2界面領域は角度θ
2で示される、第1液300と第2液302と基板304とが接する場所である。ここで、第2液302と基板304との界面の表面張力が第1液300と基板との界面の表面張力より大きい(γ
SL2≧γ
SL1)場合、液滴が広がるにつれて、θ
1が0度に近づき、θ
2が180度に近付く。すなわち、第2液302の液滴が第1液300と第2液との界面に沿って広がり、第2液と基板304との界面に沿っては広がらない。
【0041】
第1液300と第2液302とガス306との界面については、方程式(6)〜(8)が適用可能である。第1液300と第2液302とを混ぜ合わせることができることから、
【数30】
となる。角度αについての解法は方程式(14)により得られる。
【数31】
であれば、方程式(11)により、
【数32】
及び
【数33】
【数34】
が与えられる。
【数35】
である場合、第2液302の液滴と液300との間に平衡は起こらず、他の物理的制限(例えば、体積保存及び混ぜ合わせ)により制限されるまで、第2液とガスとの間の界面に沿って液滴が広がり続ける。
【0042】
第2液302と基板304との界面領域では、
【数36】
【数37】
となる。
【数38】
であり、液を混ぜ合わせることができる場合、すなわち、
【数39】
【数40】
である場合、角度θ
2は180度に近付いた後、未定となる。すなわち、第2液302は基板界面に沿って縮小し、第1液300とガス306との界面に沿って広がる傾向がある。
【0043】
第1液300上での第2液302の広がりは、完全な広がりに関する表面エネルギーの関係性に併せて3つの異なる事例にまとめることができる。第1の事例では、第2液302の液滴が第1液300の層上に配置され、第2液の液滴は基板304と接触していない。第1液300の層は厚くても又は薄くてもよく、第1液300と第2液302とを混ぜ合わせることができる。理想的な条件下において、ガス306中の第1液300の表面エネルギーがガス中の第2液302の表面エネルギー以上である場合(γ
L1G≧γ
L2G)、第2液302の液滴の完全な広がりが第1液300の層上で起こる。第2の事例では、第2液302の液滴が第1液300の層上に配置されると同時に、基板304上にも触れており、広がっている。第1液と第2液302とを混ぜ合わせることができる。理想的な条件下において、(i)ガス中の第1液300の表面エネルギーがガス中の第2液302の表面エネルギー以上であり(γ
L1G≧γ
L2G)、(ii)第1液と基板304との界面の表面エネルギーが第2液と基板との界面の表面エネルギーより大きい(γ
SL1≧γ
SL2)場合に完全な広がりが起こる。第3の事例では、第2液302の液滴が、基板304に触れながら、第1液300の層上に配置される。広がりは第2液302と第1液300との界面又は第2液と基板304との界面に沿って起こり得る。第1液と第2液302とを混ぜ合わせることができる。理想的な条件下において、ガス中の第1液300の表面エネルギーと第1液と基板304との界面の表面エネルギーとの合計が、ガス中の第2液302の表面エネルギーと第2液と基板との界面の表面エネルギーとの合計以上であり(γ
L1G+γ
SL1≧γ
L2G+γ
SL2)、ガス中の第1液300の表面エネルギーがガス中の第2液302の表面エネルギー以上であるか(γ
L1G≧γ
L2G)、又は(ii)第1液と基板304との界面の表面エネルギーが第2液と基板との界面の表面エネルギーより大きい(γ
SL1≧γ
SL2)場合に完全な広がりが起こる。
【0044】
周囲雰囲気(例えば、空気又は不活性ガス)において表面エネルギーがインプリントレジストの表面エネルギーより大きくなるように選択された液を用いてナノインプリントリソグラフィー基板を前処理することにより、ドロップオンデマンドナノインプリントリソグラフィープロセスにおいてインプリントレジストが基板上に広がる速度を増大させることができ、インプリントレジストをテンプレートと接触させる前に、基板上でのインプリントレジストのより均一な厚さを確保することができ、それによりナノインプリントリソグラフィープロセスにおけるスループットが促進される。前処理組成物がインプリントレジストと混ぜ合わせることが可能な重合性成分を含んでいる場合、このことが不要な成分を添加することなく得られる重合体層の形成に有益に寄与し、より均一な硬化がもたらされることにより、より均一な機械特性及びエッチング特性を得ることができる。
【0045】
図4は、ドロップオンデマンドナノインプリントリソグラフィーにおけるスループットを促進するプロセス400を示すフローチャート図である。プロセス400は操作402〜410を含む。操作402では、前処理組成物をナノインプリントリソグラフィー基板上に配置し、基板上に前処理コーティングを形成する。操作404では、インプリントレジストの不連続部分(「液滴」)を前処理コーティング上に配置し、各液滴で基板の標的域を覆う。前処理組成物と空気との界面エネルギーがインプリントレジストと空気との界面エネルギーより大きくなるように、前処理組成物及びインプリントレジストを選択する。
【0046】
操作406では、インプリントレジストの各液滴がその標的域を超えて広がることで、複合重合性コーティング(「複合コーティング」)を基板上に形成する。複合コーティングには前処理組成物とインプリントレジストとの均質又は不均質混合物が含まれる。操作408では、複合コーティングをナノインプリントリソグラフィーテンプレート(「テンプレート」)と接触させ、広げて、テンプレートと基板との間の全体積に充填させる。操作410では、複合コーティングを重合して、基板上に重合体層を得る。複合コーティングの重合後、テンプレートを重合体層から分離し、ナノインプリントリソグラフィー積層体とする。本明細書で使用される場合、「ナノインプリントリソグラフィー積層体」は概して、基板及び基板に密着する重合体層を表し、それらのそれぞれ又は両方が、1つ以上の更なる(例えば、介在)層を含んでいてもよい。一例では、基板には、基層と基層に密着する密着層とが含まれ得る。
【0047】
プロセス400では、前処理組成物及びインプリントレジストは、例えば米国特許第7,157,036号及び米国特許第8,076,386号、並びにChou et al. 1995, Imprint of sub-25 nm vias and trenches in polymers. Applied Physics Letters 67(21):3114-3116、Chou et al. 1996, Nanoimprint lithography. Journal of Vacuum Science Technology B 14(6): 4129-4133、及びLong et al. 2007, Materials for step and flash imprint lithography (S-FIL(商標)). Journal of Materials Chemistry 17:3575-3580(それらは全て引用することにより本明細書の一部をなす)に記載される成分の混合物を含んでいてもよい。好適な組成物としては、重合性単量体(「単量体」)、架橋剤、樹脂、光重合開始剤、界面活性剤、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。単量体の種類としては、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル及びエポキシド、並びにそれらの多官能性誘導体が挙げられる。場合によっては、前処理組成物、インプリントレジスト又はその両方は実質的にケイ素を含まない。他の場合、前処理組成物、インプリントレジスト、又はその両方はケイ素を含有している。ケイ素含有単量体としては例えば、シロキサン及びジシロキサンが挙げられる。樹脂はケイ素含有(例えば、シルセスキオキサン)及びケイ素非含有(例えば、ノボラック樹脂)とすることができる。前処理組成物、インプリントレジスト又はその両方は1つ以上の重合開始剤又はフリーラジカル発生剤を含んでいてもよい。重合開始剤の種類としては例えば、光重合開始剤(例えば、アシロイン、キサントン及びフェノン)、光酸発生剤(例えば、スルホン酸塩及びオニウム塩)、及び光塩基発生剤(例えば、オルト−ニトロベンジルカルバメート、オキシムウレタン及びO−アシルオキシム)が挙げられる。
【0048】
好適な単量体としては、単官能性、二官能性又は多官能性アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル及びエポキシドが挙げられ、ここで単−、二−及び多−はそれぞれ指定の官能基が1つ、2つ及び3つ以上であることを指す。単量体の一部又は全てがフッ素化(例えば、全フッ素化)されていてもよい。アクリレートの場合、例えば前処理材、インプリントレジスト又はその両方は1つ以上の単官能性アクリレート、1つ以上の二官能性アクリレート、1つ以上の多官能性アクリレート、又はそれらの組合せを含み得る。
【0049】
好適な単官能性アクリレートの例としては、イソボルニルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、4−シアノベンジルアクリレート、ペンタフルオロベンジルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、及びメトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレートが挙げられる。
【0050】
好適なジアクリレートの例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、平均Mn=575)、1,2−プロパンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、2−ブテン−1,4−ジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1H,1H,6H,6H−ペルフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,2−アダマンタンジオールジアクリレート、2,4−ジエチルペンタン−1,5−ジオールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)(400)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)(300)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(EO)
2ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(EO)
5ジアクリレート及びアルコキシル化脂肪族ジアクリレートエステルが挙げられる。
【0051】
好適な多官能性アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(例えば、n 約1.3、3、5)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレートが挙げられる。
【0052】
好適な架橋剤の例としては、本明細書に記載されるような二官能性アクリレート及び多官能性アクリレートが挙げられる。
【0053】
好適な光重合開始剤の例としては、IRGACURE 907、IRGACURE 4265、651、1173、819、TPO及びTPO−Lが挙げられる。
【0054】
界面活性剤は、インプリントリソグラフィーテンプレートのパターニングされた表面に塗布するか、インプリントリソグラフィーレジストに加えるか、又はその両方により、固化レジストとテンプレートとの間の分離力を低減することで、インプリントリソグラフィープロセスにおいて形成されたインプリントパターンの分離欠陥を減らし、インプリントリソグラフィーテンプレートを用いて作製することができる連続インプリントの数を増やすことができる。インプリントレジスト用の剥離剤を選択する際の要素としては例えば、表面との親和性及び処理表面の所望の表面特性が挙げられる。
【0055】
好適な界面活性剤の例としては、フッ素化界面活性剤及び非フッ素化界面活性剤が挙げられる。フッ素化界面活性剤及び非フッ素化界面活性剤はイオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であってもよい。好適な非イオン性のフッ素化界面活性剤としては、フルオロ脂肪族ポリマーエステル、ペルフルオロエーテル界面活性剤、ポリオキシエチレンのフッ素系界面活性剤、ポリアルキルエーテルのフッ素系界面活性剤、フルオロアルキルポリエーテル等が挙げられる。好適な非イオン性の非フッ素化界面活性剤としては、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーが挙げられる。
【0056】
例示的な市販の界面活性剤成分としては、デラウェア州ウィルミントン所在のE.I. du Pont de Nemours and Company製のZONYL(商標) FSO及びZONYL(商標) FS−300;ミネソタ州メープルウッド所在の3M製のFC−4432及びFC−4430;オハイオ州シンシナティ所在のPilot Chemical Company製のMASURF(商標) FS−1700、FS−2000及びFS−2800;テキサス州マンスフィールド所在のChemguard製のS−107B;株式会社ネオス(日本国神戸市中央区)製のFTERGENT 222F、FTERGENT 250、FTERGENT 251;オハイオ州アクロン所在のOMNOVA Solutions Inc.製のPolyFox PF−656;ニュージャージー州フローラムパーク所在のBASF製のPluronic L35、L42、L43、L44、L63、L64等;ニュージャージー州エジソン所在のCroda Inc.製のBrij 35、58、78等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの例では、インプリントレジストは、0重量%〜80重量%(例えば、20重量%〜80重量%又は40重量%〜80重量%)の1つ以上の単官能性アクリレートと、90重量%〜98重量%の1つ以上の二官能性若しくは多官能性アクリレート(例えば、インプリントレジストは単官能性アクリレートを実質的に含んでいなくてもよい)又は20重量%〜75重量%の1つ以上の二官能性若しくは多官能性アクリレート(例えば、1つ以上の単官能性アクリレートが存在する場合)と、1重量%〜10重量%の1つ以上の光重合開始剤と、1重量%〜10重量%の1つ以上の界面活性剤とを含む。一例では、インプリントレジストは、約40重量%〜約50重量%の1つ以上の単官能性アクリレートと、約45重量%〜約55重量%の1つ以上の二官能性アクリレートと、約4重量%〜約6重量%の1つ以上の光重合開始剤と、約3重量%の界面活性剤とを含む。別の例では、インプリントレジストは、約44重量%の1つ以上の単官能性アクリレートと、約48重量%の1つ以上の二官能性アクリレートと、約5重量%の1つ以上の光重合開始剤と、約3重量%の界面活性剤とを含む。更に別の例では、インプリントレジストは、約10重量%の第1の単官能性アクリレート(例えば、イソボルニルアクリレート)と、約34重量%の第2の単官能性アクリレート(例えば、ベンジルアクリレート)と、約48重量%の二官能性アクリレート(例えば、ネオペンチルグリコールジアクリレート)と、約2重量%の第1の光重合開始剤(例えば、IRGACURE TPO)と、約3重量%の第2の光重合開始剤(例えば、DAROCUR 4265)と、約3重量%の界面活性剤とを含む。好適な界面活性剤の例としては、X−R−(OCH
2CH
2)
nOH(式中、R=アルキル、アリール、又はポリ(プロピレングリコール)であり、X=H又は−(OCH
2CH
2)
nOHであり、nは整数(例えば、2〜20、5〜15、又は10〜12)である(例えば、X=−(OCH
2CH
2)
nOHであり、R=ポリ(プロピレングリコール)であり、n=10〜12である));Y−R−(OCH
2CH
2)
nOH(式中、R=アルキル、アリール、又はポリ(プロピレングリコール)であり、Y=フッ素化鎖(全フッ素化アルキル又は全フッ素化エーテル)、又はフッ素化鎖でキャッピングされたポリ(エチレングリコール)であり、nは整数(例えば、2〜20、5〜15、又は10〜12)である(例えば、Y=全フッ素化アルキル基でキャッピングされたポリ(エチレングリコール)であり、R=ポリ(プロピレングリコール)であり、n=10〜12である));及びそれらの組合せが挙げられる。インプリントレジストの粘度は通例、23℃で0.1cP〜25cP又は5cP〜15cPである。インプリントレジストと空気との界面エネルギーは通例、20mN/m〜36mN/mである。
【0058】
一例では、前処理組成物は、0重量%〜80重量%(例えば、20重量%〜80重量%又は40重量%〜80重量%)の1つ以上の単官能性アクリレートと、90重量%〜100重量%の1つ以上の二官能性若しくは多官能性アクリレート(例えば、前処理組成物は単官能性アクリレートを実質的に含まない)又は20重量%〜75重量%の1つ以上の二官能性若しくは多官能性アクリレート(例えば、1つ以上の単官能性アクリレートが存在する場合)と、0重量%〜10重量%の1つ以上の光重合開始剤と、0重量%〜10重量%の1つ以上の界面活性剤とを含む。
【0059】
前処理組成物は通例、インプリントレジストと相溶性である。前処理組成物は通例、蒸気圧が低く、そのため複合コーティングが重合されるまで、基板上に薄膜として残存する。一例では、前処理組成物の蒸気圧は25℃で1×10
−4mmHg未満である。前処理組成物は通例、粘度も低く、基板上での前処理組成物の急速な広がりを促進する。一例では、前処理組成物の粘度は23℃で90cP未満である。前処理組成物と空気との界面エネルギーは通例、30mN/m〜45mN/mである。前処理組成物は通例、使用中に分解が起こらず化学的に安定するように選択される。
【0060】
前処理組成物は、単一の重合性成分(例えば、単官能性アクリレート、二官能性アクリレート又は多官能性アクリレート等の単量体)、2つ以上の重合性成分の混合物(例えば、2つ以上の単量体の混合物)、又は1つ以上の重合性成分と1つ以上の他の成分との混合物(例えば、単量体の混合物;2つ以上の単量体と界面活性剤、光重合開始剤又はその両方との混合物等)とすることができる。いくつかの例では、前処理組成物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−アダマンタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0061】
重合性成分の混合物が相乗効果を生み、単一の重合性成分を含む前処理組成物よりも有益に特性(例えば、低粘度、良好なエッチング耐性及び膜安定性)を兼ね備えた前処理組成物が得られる可能性がある。一例では、前処理組成物は1,12−ドデカンジオールジアクリレートとトリシクロデカンジメタノールジアクリレートとの混合物である。別の例では、前処理組成物はトリシクロデカンジメタノールジアクリレートとテトラエチレングリコールジアクリレートとの混合物である。前処理組成物は概して、複合重合性コーティングの重合中に、前処理組成物の1つ以上の成分がインプリントレジストの1つ以上の成分と重合する(例えば、共有結合する)ように選択される。場合によっては、前処理組成物はインプリントレジストと同じ(also in)重合性成分又はインプリントレジストの1つ以上の重合性成分と共通する官能基(例えば、アクリレート基)を有する重合性成分を含む。前処理組成物の好適な例としては、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートを含む、本明細書に記載されるような多官能性アクリレートが挙げられる。
【0062】
前処理組成物は、前処理組成物と空気との界面での界面エネルギーが前処理組成物とともに用いられるインプリントレジストと空気との界面エネルギーより大きくすることで、液体前処理組成物上での液体インプリントレジストの急速な広がりを促し、複合コーティングをテンプレートと接触させる前に基板上に均一な複合コーティングを形成するように選択されるのが通例である。前処理組成物と空気との界面エネルギーは通例、インプリントレジストと空気との間又はインプリントレジストの少なくとも1つの成分と空気との間の界面エネルギーよりも少なくとも0.5mN/m又は少なくとも1mN/mから最大25mN/m(例えば、0.5mN/m〜25mN/m、0.5mN/m〜15mN/m、0.5mN/m〜7mN/m、1mN/m〜25mN/m、1mN/m〜15mN/m又は1mN/m〜7mN/m)大きいが、これらの範囲は、前処理組成物及びインプリントレジストの化学的特性及び物理的特性、並びにこれら2つの液体間で得られる相互作用に基づき変動し得る。表面エネルギーの差が小さすぎると、インプリントレジストの広がりが制限され、液滴が球冠状の形状を保持し、前処理組成物により隔てられたままとなる。表面エネルギー間の差が大きすぎると、インプリントレジストが過度に広がり、インプリントレジストのほとんどが隣接滴に向かって移動し、液滴の中心が空となり、それにより複合コーティングが液滴の中心の上に凸領域を備えることとなる。そのため、表面エネルギー間の差が小さすぎたり又は大きすぎたりすると、得られる複合コーティングは顕著な凸凹領域のある不均一なものとなる。表面エネルギーの差を適切に選択することで、インプリントレジストが急速に広がり、実質的に均一な複合コーティングが得られる。前処理組成物及びインプリントレジストの有益な選択により、充填時間を50%〜90%短縮することが可能となり、そうすることで充填を僅か1秒ほどで又は場合によっては僅か0.1秒足らずで達成することができる。
【0063】
前処理組成物とインプリントレジストとの間の表面張力勾配に伴うスループットの改善に関するこれらの利益を達成するため、前処理組成物及びインプリントレジストの表面エネルギー、したがって組成は異なるものとする。ハイスループット処理にはインプリントレジストの広がり時間が短い必要があることを考慮すると、前処理組成物とインプリントレジストとの完全な混合を達成するのは難しい。そのため、インプリントフィールドに亘る前処理組成物及びインプリントレジストの分布は通例、不均一である(すなわち、前処理組成物は通例、広がり機構の性質から液滴境界域へと押される)。単量体の種類、単官能性及び多官能性の単量体の相対量、並びに光重合開始剤及び/又は他の添加剤(例えば、感光剤又は界面活性剤)の濃度が不均一な分布になり得る。これらの不均一性が組成だけでなく、硬化の程度にも影響を及ぼすことがあり、ともに結果として複合コーティングのエッチング速度に影響することになる。
【0064】
複合コーティングの重合後、不均一な組成又は硬化の程度が、そのフィールドに亘って不均一なエッチングを引き起こすことにより、限界寸法均一性の不良又は不完全なエッチングが起こる場合がある。本明細書に記載のように、エッチング均一性は、前処理組成物及びインプリントレジストで形成される複合重合体層に亘るエッチング速度の変動を最小限に抑えることにより(例えば、「エッチング速度を適合させる」ことにより)、増進させることができる。本明細書で使用される場合、「エッチング速度」は概して、エッチングした材料の厚さをエッチング時間で除算したものを指す(通例、単位はnm/sである)。エッチング速度の適合の評価尺度は、ナノインプリントプロセスで形成された複合重合体層におけるプレエッチング高さの変動とポストエッチング高さの変動とを比較することを含む。一例では、複合重合体層に亘るポストエッチング高さの変動は、複合重合体層に亘るプレエッチング高さの変動以下である。場合によっては、プレエッチング高さの変動が複合重合体層のプレエッチング高さの平均の±20%又は±10%であり、ポストエッチング高さの変動が複合重合体層のポストエッチング高さの平均の±10%である。いくつかの場合、プレエッチング高さの変動が複合重合体層のプレエッチング高さの平均の±5%であり、ポストエッチング高さの変動が複合重合体層のポストエッチング高さの平均の±5%である。
【0065】
本明細書で使用される場合、エッチングは、反応性イオンエッチング又は高密度エッチング(例えば、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング、磁気強化型反応性イオンエッチング、伝送結合プラズマエッチング等)を使用する酸素又はハロゲン含有プラズマ化学を含む当該技術分野で既知の多くのプロセスのいずれによっても達成することができる。エッチング均一性を達成するために、前処理組成物のエッチング速度と、インプリントレジストのエッチング速度との差が最小となるように、前処理組成物及びインプリントレジストの組成を選択することができる。前処理組成物とインプリントレジストとは、いくつかの所望の特性(例えば、低粘度、急速な硬化、機械的強度)を共有し得るが、前処理組成物及びインプリントレジストについての様々な制約が、エッチング速度の適合を難しくしている。特に、所望の前処理組成物は、低揮発性であり、インプリントレジストよりも表面張力が高い。前処理組成物の低揮発性は通例、インプリンティングまで比較的長い期間に及ぶ基板上での安定性をもたらす。これに対して、インプリントレジストは、施与して1秒足らずで、インプリントするのが通例であるため、低揮発性に対する要求は通例、前処理組成物に比べてインプリントレジストでは緩和される。
【0066】
通例、高分子質量及び大きい分子間力の少なくとも一方を有する単量体が低揮発性を示す。このため、前処理組成物は概して、高分子質量の多官能性単量体(例えば、多官能性アクリレート)を含み、インプリントレジストに見られる揮発性の高い単官能性アクリレートは含まないのが通例である。本明細書で使用される場合、「高分子質量」は通例、少なくとも250Da又は少なくとも300Daの分子質量を指す。前処理組成物において多官能性単量体の割合が高いことで、通常のインプリントレジストで見られるよりも広範な架橋が起こり、より広範な架橋がより高いエッチング耐性、ひいてはより低いエッチング速度をもたらし得る。
【0067】
分子間力が比較的大きい単量体も低揮発性を伴う。極性が大きい単量体、特に水素結合することが可能な単量体は概して、分子間力が大きく、したがって低揮発性を示す。極性が大きい単量体は有益なことに、表面張力の上昇を促し得る。場合によっては、極性の増大の少なくとも一部は、分子内におけるより多くの酸素原子(例えば、エチレングリコール単位、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の形態)の存在によるものである。酸素原子の存在は、大きい分子間力及び高い表面張力に寄与することが多いが、エッチング耐性を低減する、ひいてはエッチング速度を高める傾向もある。したがって、前処理組成物は通例、インプリントレジストの単量体よりもエッチング耐性が低く、エッチング速度が高い単量体を含む。
【0068】
粘度については、インプリントレジストが通例、インクジェットによって吐出されることから、インプリントレジストは概して、前処理組成物よりも多くの制約を受ける。この塗布方法では、インプリントレジストの粘度に対する上限が定められ得る。低粘度を達成するために、インプリントレジストは、前処理組成物より大量の小さい低分子量単量体(例えば、単官能性アクリレート)を含むのが通例である。前処理組成物が低粘度であることが有益なこともあるが、他の制約(例えば、低揮発性)によって、通例インプリントレジストよりも前処理組成物で粘度が高くなる。表面張力及び揮発性と同様に、粘度も分子間力と密接に関係しており、分子間力の増大は粘度の上昇に寄与する。その一方で、前処理組成物はスピンコーティングによって塗布することができ、このためインプリントレジストよりも粘度に対する上限が緩和される。結果として、前処理組成物の粘度は、インプリントレジストの粘度の少なくとも1.5倍、2倍、10倍、又は50倍とすることができる。
【0069】
したがって、前処理組成物及びインプリントレジストの揮発性、表面張力、及び粘度に関する制約により、化学組成の点からインプリントレジストのエッチング速度が前処理組成物よりも低くなるのが通例である。しかしながら、前処理組成物とインプリントレジストとのエッチング速度差は、前処理組成物における多官能性単量体(架橋剤)の割合を増やす(すなわち、前処理組成物のエッチング速度を低くする)ことによって低減することができる。前処理組成物とインプリントレジストとのエッチング速度差を最小限に抑えるために、1つ以上の高エッチング耐性単量体、高い割合の多官能性単量体、又はそれらの組合せを含むように前処理組成物を選択することができる。
【0070】
高エッチング耐性単量体の例としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,3−アダマンタンジオールジアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、p−キシリレンジアクリレート、2−フェニル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、フェニルエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。各材料のエッチング耐性又はエッチング速度の推定は、大西パラメータ(Ohnishi number)又は環パラメータ等の組成又は構造に基づくパラメータを用いて行うことができる。大西パラメータは、ポリマー反復単位における原子の総数を炭素原子の数と酸素原子の数との差で除算したものに等しい:大西パラメータ=N
総数/(N
炭素−N
酸素)。環パラメータは、環構造に炭素原子として存在するレジストの質量M
CRを総レジスト質量M
TOTで除算したものに等しい:環パラメータr=M
CR/M
TOT。
【0071】
異なる前処理組成物について算出された大西パラメータの比を表2に挙げる。しかしながら、これらのパラメータは経験則に基づくものであり、正確さに限りがあり、エッチング速度のより正確な値は実験によって得るのが通例である。実験によって求められた前処理組成物についてのエッチング速度は通例、大西パラメータに基づく予測よりも低い。そのため、前処理組成物のエッチング速度に適合させるために、インプリントレジストのエッチング耐性を増大させるか、又はエッチング速度を低くすることが有益であり得る。インプリントレジストの低粘度の制約のために、低粘度を保ちながら、エッチング耐性を増大させるか、又はエッチング速度を低くするのには、小さい芳香族単量体が好適であり得る。低粘度、高エッチング耐性の単量体の例としては、ベンジルアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、p−キシリレンジアクリレート、2−フェニル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、及びフェニルエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0072】
プロセス400の操作402を参照して、
図5Aは、基層500と密着層502とを備える基板102を示している。基層500は通例シリコンウエハである。基層500に適した他の材料としては、フュームドシリカ、石英、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素及びリン化インジウムが挙げられる。密着層502は、重合体層と基層500との密着性を向上させることにより、複合コーティングの重合後、テンプレートを重合体層から分離する際の重合体層の欠陥の形成を低減する働きがある。密着層502の厚さは通例、1nm〜10nmである。密着層502に適した材料の例としては、米国特許第7,759,407号、同第8,361,546号、同第8,557,351号、同第8,808,808号、及び同第8,846,195号(それらは全て引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されるものが挙げられる。一例では、密着層は、ISORAD 501、CYMEL 303ULF、CYCAT 4040又はTAG 2678(第四級アンモニウムによってブロックされたトリフルオロメタンスルホン酸)と、PMアセテート(テネシー州キングスポートのEastman Chemical Companyから入手可能な2−(1−メトキシ)プロピルアセテートからなる溶媒)とを含む組成物から形成される。場合によっては、基板102は、基層500と密着層502との間に1つ以上の更なる層を備える。いくつかの場合では、基板102は密着層502上に1つ以上の更なる層を備える。簡略化のために、基板102は基層500及び密着層502のみを備えるものとして示している。
【0073】
図5Bは、前処理組成物を基板102上に配置し、前処理コーティング506を形成した後の前処理組成物504を示している。
図5Bに示されるように、前処理コーティング506は基板102の密着層502上に直接形成される。場合によっては、前処理コーティング506は基板102の別の表面上に(例えば、基層500上に直接)形成される。前処理コーティング506は、スピンコート法、ディップコート法、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)等の技法を用いて基板102上に形成される。例えば、スピンコート法又はディップコート法等の場合、前処理組成物を1つ以上の溶媒(例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等)に溶解して、基板に塗布した後、溶媒を蒸発させることで、前処理コーティングを残すことができる。前処理コーティング506の厚さt
pは通例、1nm〜100nm(例えば、1nm〜50nm、1nm〜25nm又は1nm〜10nm)である。
【0074】
さらに
図4を参照して、プロセス400の操作404は、インプリントレジストの各液滴が基板の標的域を覆うように、インプリントレジスト滴を前処理コーティング上に配置することを含む。インプリントレジスト滴の体積は通例、0.6pL〜30pLであり、液滴の中心間の距離は通例、35μm〜350μmである。場合によっては、インプリントレジストと前処理コーティングとの体積比は1:1〜15:1である。操作406では、インプリントレジストの各液滴がその標的域を超えて広がることで、複合コーティングが形成されるように、複合コーティングを基板上に形成する。本明細書で使用される場合、「前広がり(prespreading)」は液滴が初めに前処理コーティングと接触し、標的域を超えて広がる時点と、テンプレートが複合コーティングと接触する時点との間に起こるインプリントレジスト滴の自然な広がりを指す。
【0075】
図6A〜
図6Dは、液滴を標的域上に配置した時点での前処理コーティング上でのインプリントレジスト滴、並びに液滴が広がる前、広がっている最中、及び広がりきった後での複合コーティングを上から見た図を示している。液滴は正方格子に示されているが、液滴パターンは正方又は幾何学パターンに限定されない。
【0076】
図6Aに、液滴が標的域602を覆うが、標的域602を超えて広がらないような、液滴を初めに前処理コーティング上に配置した時点での前処理コーティング506上の液滴600を上から見た図を示す。液滴600を前処理コーティング506上に配置した後、標的域よりも大きい基板の表面積を覆うように、液滴が自然に広がることにより、基板上に複合コーティングが形成される。
図6Bに、前広がり中(標的域602を超えて液滴600がいくらか広がった後)、通例インプリントレジストと前処理コーティングとがいくらか混ぜ合わされた後の複合コーティング604を上から見た図を示す。図示されるように、複合コーティング604は液体前処理組成物と液体インプリントレジストとの混合物であり、領域606はインプリントレジストの大部分を含み(インプリントレジストに「富んでおり」)、領域608は前処理組成物の大部分を含んでいる(前処理組成物に「富んでいる」)。前広がりが進行するにつれて、複合コーティング604は前処理組成物とインプリントレジストとのより均質な混合物を形成することができる。
【0077】
1つ以上の領域606が1つ以上の隣接する領域606と接触するまで、広がりを進行させることができる。
図6C及び
図6Dに、広がりきった後の複合コーティング604を示す。
図6Cに示されるように、領域606のそれぞれが互いに隣接する領域606に境界610で接触するように広がっており、領域608は領域606間の不連続(非連続)部分まで縮小している。他の場合、
図6Dに示されるように、領域608が識別不能となるように、領域606が広がり、連続層を形成している。
図6Dでは、複合コーティング604は前処理組成物とインプリントレジストとの均質混合物とすることができる。
【0078】
図7A〜
図7Dは、
図6A〜
図6Dのw−w、x−x、y−y及びz−z線それぞれに沿った断面図である。
図7Aは、標的域602に対応する基板102の表面積を覆うインプリントレジストの液滴600を示す、
図6Aのw−w線に沿った断面図である。各標的域(及び初めに配置された各液滴)にはc−c線に示されるように中心があり、b−b線は2つの標的域602の中心から等しく離れた位置を示す。簡略化のために、液滴600は基板102の密着層502に接するように示されており、インプリントレジストと前処理組成物との混ざり合いは示されていない。
図7Bは、領域606が標的域602を超えて広がった後の領域608が領域606間に露出している複合コーティング604を示す、
図6Bのx−x線に沿った断面図である。
図7Cは、前処理組成物とインプリントレジストとの均質混合物として複合コーティング604を示す、前広がり終了時の
図6Cのy−y線に沿った断面図である。図示されるように、領域606は
図7Bより広い基板表面を覆うように広がっており、それに応じて領域608は縮小している。液滴600を基とする領域606は凸部として示されているが、複合コーティング604は略平板であるか、又は凹部領域を含み得る。或る特定の場合、前広がりが
図7Cに示されるものを超えて続いて、インプリントレジストが前処理コーティング上に連続層を形成することがある(混ざり合わないか、又は完全に若しくは部分的に混ざり合う)。
図7Dは、広がりきった後の前処理組成物とインプリントレジストとの均質混合物として複合コーティング604を示す、
図6Dのz−z線に沿った断面図であり、液滴の中心c−cについての複合コーティングの凹部領域同士が境界610で接しており、そのため液滴境界での重合性コーティングの厚さは液滴の中心の複合コーティングの厚さより大きい。
図7C及び
図7Dに示されるように、複合コーティングをナノインプリントリソグラフィーテンプレートと接触させる際、2つの標的域の中心から等しく離れた位置にある複合コーティング604の厚さは2つの標的域の一方の中心の複合コーティングの厚さとは異なり得る。
【0079】
さらに
図4を参照して、プロセス400の操作408及び410は、ナノインプリントリソグラフィー基板上に複合重合体層を備えるナノインプリントリソグラフィー積層体を得るために、複合コーティングをテンプレートと接触させること及び複合コーティングを重合することをそれぞれ含む。
【0080】
場合によっては、
図7C及び
図7Dに示されるように、複合コーティング604は、前広がり終了時の(すなわち、複合コーティングをテンプレートと接触させる直前の)均質混合物又は実質的に均質な混合物(例えば、空気−複合コーティング界面での)である。このようにして、テンプレートは均質混合物と接触して、混合物の大部分は通例、インプリントレジストに由来したものとなる。そのため、インプリントレジストの剥離特性は概して、複合コーティングとテンプレートとの相互作用と、テンプレートと重合体層との間の分離力に起因する欠陥の形成(又は欠陥がないこと)を含むテンプレートからの重合体層の分離とに影響を及ぼすことになる。
【0081】
しかしながら、
図8A及び
図8Bに示されるように、複合コーティング604は、テンプレート110が物理的特性及び化学的特性が異なる複合コーティング604の領域と接触するように、それぞれ前処理組成物に富む領域608とインプリントレジストに富む領域606とを備えていてもよい。簡略化のために、領域606におけるインプリントレジストは前処理コーティングに置き換えて示されており、そのため領域606は基板と直接接しており、混ざり合いは示されていない。したがって、領域608における前処理組成物は厚さが不均一である。
図8Aでは、テンプレート110が主に領域606と接するように、領域606の最大高さpは前処理組成物の最大高さiよりも大きい。
図8Bでは、テンプレート110が主に領域608と接するように、領域608の最大高さiはインプリントレジストの最大高さpよりも大きい。したがって、得られた複合重合体層からのテンプレート110の分離及びそれに伴う欠陥密度は不均一であり、これはテンプレートとインプリントレジストとの相互作用とテンプレートと前処理組成物との相互作用とが異なることに基づいている。そのため、或る特定の前処理組成物(例えば、単一の単量体又は2つ以上の単量体の混合物を含むが、界面活性剤は含まない前処理組成物)では、複合コーティングによって、テンプレートが複合コーティングと接する気液界面にて均質混合物又は少なくとも実質的に均質な混合物が形成されることが有益な場合がある。
【0082】
図9A〜
図9C及び
図10A〜
図10Cは、複合コーティングをテンプレートと接触させる前、接触させている最中、及び複合重合体層からテンプレートを分離し、ナノインプリントリソグラフィー積層体を得た後の基層500と密着層502とを備える基板102上にあるテンプレート110及び複合コーティング604を示す断面図である。
図9A〜
図9Cでは、複合コーティング604は前処理組成物とインプリントレジストとの均質混合物として示されている。
図10A〜
図10Cでは、複合コーティング604は前処理組成物とインプリントレジストとの不均質混合物として示されている。
【0083】
図9Aに、基板102上でのテンプレート110と均質複合コーティング900との初期接触の断面図を示す。
図9Bでは、テンプレート110は、複合コーティング900がテンプレート110の凹部に充填されるように基板102に向かって前進している。複合コーティング900を重合して、基板102上に均質な重合体層を得た後、重合体層からテンプレート110を分離する。
図9Cに、均質な複合重合体層904を備えるナノインプリントリソグラフィー積層体902の断面図を示す。
【0084】
図10Aに、基板102上でのテンプレート110と複合コーティング604との初期接触の断面図を示す。不均質な複合コーティング1000は領域606と領域608とを備える。図示されるように、領域606のインプリントレジストと領域608の前処理組成物との間で混ざり合いはほとんど又は全く起こっていない。
図10Bでは、テンプレート110は、複合コーティング1000がテンプレート110の凹部に充填されるように基板102に向かって前進している。複合コーティング1000を重合して、基板102上に不均質な重合体層を得た後、重合体層からテンプレート110を分離する。
図10Cに、不均一な複合コーティング1000の領域606及び領域608にそれぞれ対応する領域1006及び領域1008を含む不均質な重合体層1004を備えるナノインプリントリソグラフィー積層体1002の断面図を示す。そのため、複合重合体層1002は化学組成が不均質又は不均一であり、インプリントレジストに富んだ混合物に由来する組成を有する領域1006と、前処理組成物に富む混合物に由来する組成を有する領域1008とを備える。領域1006及び領域1008の相対サイズ(例えば、露出する表面積、覆われるテンプレートの表面積、又は体積)は、複合コーティングとテンプレートとの接触前の前広がり又はテンプレートとの接触に起因する広がりの程度に少なくとも一部応じて変動し得る。場合によっては、複合重合体層が境界によって隔てられた複数の中心領域を備えるように、領域1006は領域1008と隔てられていても又は結合していてもよく、境界での複合重合体層1004の化学組成は中心領域の内部での複合重合体層の化学組成とは異なる。
【実施例】
【0085】
下記実施例において、インプリントレジストと空気との界面にて報告された界面エネルギーを最大泡圧法により測定した。測定はドイツのハンブルグにあるKruess GmbH製のBP2泡圧張力計を用いて行った。最大泡圧法では、毛細管を用いて液中に形成される気泡の最大内圧を測定する。径が既知の毛細管を用いて、表面張力をヤング−ラプラスの式から算出することができる。前処理組成物のいくつかには、前処理組成物と空気との界面での界面エネルギーについて製造業者からの報告値が与えられる。
【0086】
粘度は23℃に設定した温度制御浴を用いて小型サンプルアダプタを備えるBrookfieldのDV−II+ Proを使用して測定した。報告される粘度値は5つの測定値の平均である。
【0087】
密着層は、約77gのISORAD 501と、約22gのCYMEL 303ULFと、約1gのTAG 2678とを合わせて、この混合物をおよそ1900グラムのPMアセテートに入れることにより作製された密着組成物を硬化することで形成し、基板上に調製した。厚さが均一な平板層とはいかないまでも、実質的に平滑となるように、密着組成物を毎分500回転〜4000回転の回転速度にて基板(例えば、シリコンウエハ)上にスピンオンした。スピンオン組成物を160℃の熱化学線エネルギーにおよそ2分間曝した。得られた密着層は約3nm〜約4nmの厚さであった。
【0088】
比較例1及び実施例1〜実施例3では、空気/インプリントレジスト界面での表面張力が33mN/mであるインプリントレジストを用いて、様々な表面上でのインプリントレジストの広がりを明らかにした。インプリントレジストは、約45重量%の単官能性アクリレート(例えば、イソボルニルアクリレート及びベンジルアクリレート)と、約48重量%の二官能性アクリレート(例えば、ネオペンチルグリコールジアクリレート)と、約5重量%の光重合開始剤(例えば、TPO及び4265)と、約3重量%の界面活性剤(例えば、X−R−(OCH
2CH
2)
nOH(式中、R=アルキル、アリール又はポリ(プロピレングリコール)であり、X=H又は−(OCH
2CH
2)
nOHであり、nは整数(例えば、2〜20、5〜15又は10〜12)である(例えば、X=−(OCH
2CH
2)
nOHであり、R=ポリ(プロピレングリコール)であり、n=10〜12である)の混合物)と、フッ素系界面活性剤(ここでX=全フッ素化アルキル)とを含む重合性組成物とした。
【0089】
比較例1では、インプリントレジストをナノインプリントリソグラフィー基板の密着層上に直接配置した。
図11は、格子パターンでの液滴の吐出を開始して1.7秒後における基板の密着層1102上でのインプリントレジスト滴1100の画像である。画像に見られるように、液滴1100は基板上の標的域から外側に向かって広がっている。しかしながら、標的域を超えた広がりは制限され、露出密着層1102の面積は液滴1100の面積を超えていた。この及び他の画像に見ることができるリング、例えばリング1104はニュートン干渉リングであり、ニュートン干渉リングは液滴の様々な領域における厚さの差を示すものである。レジスト滴のサイズはおよそ2.5pLであった。
図11では、液滴の2×7(ピッチ)
2インターリーブ格子(例えば、水平方向に2単位、ライン間3.5単位)である。次のラインをそれぞれ水平方向に1単位動かした。
【0090】
実施例1〜実施例3では、前処理組成物A〜前処理組成物Cをそれぞれナノインプリントリソグラフィー基板上に配置し、前処理コーティングを形成した。インプリントレジスト滴を前処理コーティング上に配置した。
図12〜
図14は、インプリントレジスト滴の吐出を開始した後の複合コーティングの画像を示している。これらの実施例では前処理組成物とインプリントレジストとの間で混ざり合いが起こるが、簡略化のために、混ざり合いは全く考慮せずにインプリントレジスト滴及び前処理コーティングを以下に記載する。前処理組成物はスピンオンコート法を介してウエハ基板上に配置した。より具体的には、前処理組成物はPGMEA(0.3重量%の前処理組成物/99.7重量%のPGMEA)に溶解し、ウエハ基板上にスピンオンした。溶媒を蒸発させるにあたり基板上で得られる前処理コーティングの典型厚さは5nm〜10nmの範囲(例えば、8nm)であった。レジスト滴のサイズは
図12〜
図14でおよそ2.5pLであった。
図12及び
図14は、液滴の2×7(ピッチ)
2インターリーブ格子(例えば、水平方向に2単位、ライン間3.5単位)である。次のラインをそれぞれ水平方向に1単位動かした。
図13は、液滴の2×6(ピッチ)
2インターリーブ格子を示している。ピッチ値は84.5μmであった。レジストと前処理層との体積比は1〜15(例えば、6〜7)の範囲であった。
【0091】
表1に実施例1〜実施例3に用いられる前処理組成物A〜前処理組成物C及びインプリントレジストについての表面張力(気液界面)を挙げている。
【表1】
【0092】
実施例1では、インプリントレジスト滴を前処理組成物A(Sartomer 492又は「SR492」)のコーティングを備える基板上に配置した。Sartomer, Inc.(米国、ペンシルバニア州)から入手可能なSR492はプロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(多官能性アクリレート)である。
図12は、インターリーブ格子パターンでの不連続部分の吐出を開始して1.7秒後における前処理コーティング1202及び得られた複合コーティング1204上でのインプリントレジスト滴1200の画像を示している。本実施例では、液滴が球冠状の形状を保持し、インプリントレジストの広がりは制限される。
図12に見られるように、液滴1200は比較例1での密着層上でのインプリントレジストを超えて広がるが、液滴は前処理コーティング1202により隔てられたままとなり、液滴周りに境界1206を形成する。インプリントレジストの或る特定の成分が液滴の中心を越えて広がり、液滴1200周りに領域1208を形成する。領域1208は前処理コーティング1202により隔てられている。広がりの制限は前処理組成物Aとインプリントレジストとの間の表面張力の差が小さいこと(1mN/m)に少なくとも一部寄与するものであり、そのため液滴の広がりには顕著なエネルギーの利点はない。摩擦等の他の要素も広がりの程度に影響を及ぼすことが理解される。
【0093】
実施例2では、インプリントレジスト滴を前処理組成物B(Sartomer 351HP又は「SR351HP」)のコーティングを備える基板上に配置した。Sartomer, Inc.(米国、ペンシルバニア州)から入手可能なSR351HPはトリメチロールプロパントリアクリレート(多官能性アクリレート)である。
図13は、正方格子パターンでの液滴の吐出を開始して1.7秒後における前処理コーティング1302及び得られた複合コーティング1304上でのインプリントレジスト滴1300の画像を示している。1.7秒後、液滴1300が基板の表面積の大部分を覆い、前処理コーティング1302により隔てられ、液滴周りに境界1306を形成する。液滴1300は実施例1の液滴1200よりも均一であるため、実施例1の広がりに対する顕著な改善が観察される。より大きい広がりの程度は実施例1の前処理組成物Aとインプリントレジストとの間の表面張力の差よりも前処理組成物Bとインプリントレジストとの間の表面張力の差が大きいこと(3.1mN/m)に少なくとも一部寄与する。
【0094】
実施例3では、インプリントレジスト滴を前処理組成物C(Sartomer 399LV又は「SR399LV」)のコーティングを備える基板上に配置した。Sartomer, Inc.(米国、ペンシルバニア州)から入手可能なSR399LVはジペンタエリスリトールペンタアクリレート(多官能性アクリレート)である。
図14は、三角格子パターンでの液滴の吐出を開始して1.7秒後における前処理コーティング1402及び得られた複合コーティング1404上でのインプリントレジスト滴1400の画像を示している。
図14に見られるように、液滴1400は前処理コーティング1402により境界1406にて隔てられている。しかしながら、インプリントレジストのほとんどが液滴境界に集積し、そのため重合性材料のほとんどが液滴境界にあり、液滴の中心は実質的に空となる。広がりの程度は前処理組成物Cとインプリントレジストとの間の表面張力の差が大きいこと(6.9mN/m)に少なくとも一部寄与する。
【0095】
欠陥密度は実施例1〜実施例3のインプリントレジスト及び実施例2の前処理組成物Bについての前広がり時間に応じて測定した。
図15は、テンプレートの非充填に起因する欠陥密度(空隙)を示している。プロット1500にて、28nmのライン/スペースパターン領域(line/space pattern regions)についての広がり時間(秒)に応じた欠陥密度(1cm
2当たりの欠陥数)を示す。欠陥密度は0.9秒で0.1/cm
2近くになる。プロット1502にて、特徴のサイズが或る範囲にあるフィールド全体に亘る広がり時間(秒)に応じた欠陥密度(1cm
2当たりの欠陥数)を示す。欠陥密度は1秒で0.1/cm
2近くになる。比較として、前処理を行わないと、通例0.1/cm
2に近い欠陥密度は、2.5秒〜3.0秒の広がり時間にてフィールド全体で達成される。
【0096】
前処理組成物PC1〜PC9の特性を表2に示す。PC1〜PC9の重要な特性(key)を以下に示す。粘度は23℃の温度にて本明細書に記載のように測定した。表2に示されるように500msでの直径比(Diam.Ratio)を算出するために、インプリントレジスト滴(液滴サイズ約25pL)を、密着層の最上部に前処理組成物(約8nm〜10nmの厚さ)がコートされた基板上に広げ、液滴径を500msの経過時間にて記録した。500msにて各前処理組成物を用いたインプリントレジスト滴径を、前処理組成物を用いない密着層上でのインプリントレジスト滴径で除算した。表2に示されるように、500msにおけるPC1上でのインプリントレジスト滴径は前処理コーティングを用いない密着層上でのインプリントレジスト滴径よりも60%大きかった。
図16は、前処理組成物PC1〜PC9についての時間(ms)に応じた液滴径(μm)を示すものである。相対エッチング耐性は各前処理組成物の大西パラメータをインプリントレジストの大西パラメータで除算したものである。PC1〜PC9の相対エッチング耐性(前処理組成物のエッチング耐性とインプリントレジストのエッチング耐性との比)を表2に示す。
【表2】
PC1:トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer)
PC2:トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、n 約1.3(大阪有機化学工業株式会社)
PC3:1,12−ドデカンジオールジアクリレート
PC4:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、平均Mn=575(Sigma-Aldrich)
PC5:テトラエチレングリコールジアクリレート(Sartomer)
PC6:1,3−アダマンタンジオールジアクリレート
PC7:ノナンジオールジアクリレート
PC8:m−キシリレンジアクリレート
PC9:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Sartomer)
【0097】
前処理組成物PC3と前処理組成物PC9とを様々な重量比にて合わせて、表3に示される重量比の前処理組成物PC10〜前処理組成物PC13を得た。PC3及びPC9とそれらから形成される混合物との特性の比較から相乗効果が明らかとなった。例えば、PC3は粘度が比較的低く、比較的早いテンプレートの充填が可能であるが、エッチング耐性が比較的低い。これに対して、PC9はエッチング耐性及び膜安定性が比較的良好である(蒸発損失が低い)が、比較的粘性であり、比較的遅いテンプレートの充填を呈する。しかしながら、PC3とPC9とを合わせることで、比較的低い粘性、比較的早いテンプレートの充填及び比較的良好なエッチング耐性を含む有益な特性を兼ね備えた前処理組成物が得られた。例えば、30重量%のPC3と70重量%のPC9とを含む前処理組成物は表面張力が37.2mN/mであり、直径比が1.61であり、大西パラメータが3.5であることが見出された。
【表3】
【0098】
図17Aに、様々な比のPC3及びPC9(すなわち、100重量%のPC3から100重量%のPC9まで)を含む前処理組成物についての粘度のプロットを示している。
図17Bに、PC3、PC13、PC12、PC11、PC10及びPC9についての液滴径(表2に関して記載されているように測定)を示す。
図17Cに、PC3及びPC9の画分に対する表面張力(mN/m)を示す。
【0099】
図18は、表2に言及されるPC3、PC9、PC3とPC9との混合物、及びインプリントレジストについての前処理組成物のエッチング速度と、インプリントレジストのエッチング速度との比を示すものである。前処理組成物PC9(1800)、25重量% PC3+75重量% PC9(1802)、30重量% PC3+70重量% PC9(1804)、PC12(1806)、PC3(1808))の硬化薄膜をシリコン基板上に作製した。同じ厚さのインプリントレジストの硬化薄膜も作製した。フッ化炭素エッチング化学を用いてプラズマエッチャーにて試料をエッチングした。エッチングプロセスは、75WのRIE電力及び150WのICP電力、120mTorrで5sccmのCF
4及び30sccmのアルゴン、並びに90秒のプロセス時間にてTrion Technology製の反応性イオンエッチングツールを使用して行った。エッチング前後の各薄膜試料の厚さを反射率測定によって測定した。
【0100】
PC3(1,12−ドデカンジオールジアクリレート)及びPC9(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)はともに二官能性アクリレートである。PC9は、環状炭化水素骨格を有しており、比較的高いエッチング耐性をもたらすと予測された。大西パラメータに基づき、PC9は、インプリントレジストよりもエッチング耐性が高い(エッチング速度が低い)と予測され、PC3は、インプリントレジストよりもエッチング耐性が低い(エッチング速度が高い)と予測された。
図18に示される結果から、PC3が実際には、同程度ではあるものの、インプリントレジストよりも僅かに高いエッチング耐性(低いエッチング速度)を有することが分かる。PC9は、インプリントレジストよりも更に高いエッチング耐性(低いエッチング速度)を有し、エッチング速度はインプリントレジストの約70%である。大西パラメータに基づき予測されたものよりもPC3及びPC9のエッチング耐性が高いことは、インプリントレジストよりもPC3及びPC9での架橋度が大きいことに少なくとも一部、関係し得る。
【0101】
別の例では、表2に言及されるPC1を、インプリントレジストを用いた標準的なインプリントプロセスに使用した。広がり時間は、PC1とインプリントレジストとが完全に混合する時間がないよう十分短くし、そのため、インプリントフィールドに亘りPC1とインプリントレジストとが不均一に分布し、PC1が液滴境界域に集まった。酸素エッチング化学を用いたエッチング前後のインプリント形状の高さの原子間力顕微鏡(AFM)による測定を行い、液滴中心と液体境界域との間に何らかのエッチング速度の差を検出することができるかを確認した。酸素エッチングは、70W、15mTorrで5sccmの酸素及び20sccmのアルゴン、並びに20秒のプロセス時間にてTrion Technology製の反応性イオンエッチングツールを使用して行った。
図19Aのプロット1900は、インプリントフィールド上の160μmの水平距離に沿って5μm間隔で測定されたインプリント形状の高さ(nm)を示す。液滴中心及び液滴境界の位置を目視で確認することは難しい場合があるため、測定設定に少なくとも1つの液滴境界が含まれるように液滴ピッチに等しい距離に亘って測定を行った。これらの試料の液滴ピッチは、水平方向に約158μmであった。プロット1900は、特徴のプレエッチング高さの平均が約±1.5nmの範囲で約58.1nmであることを示している。
図19Bのプロット1910は、インプリントフィールド上の320μmの水平距離に沿って5μm間隔で測定したインプリント形状のポストエッチング高さを示す。形状のポストエッチング高さの平均は、約±1.5nmの範囲で約46.4nmであった。したがって、少なくとも2つの液滴境界域に及ぶこのスキャン長さに沿ったエッチング速度には有意差は観察されず、通常のインプリント条件下では2つの物質間でエッチング速度が密接に適合されていることが示された。大西パラメータに基づくと、PC1は、エッチング速度がレジストよりもおよそ30%大きいと予測される。しかしながら、PC1(トリメチロールプロパントリアクリレート)が三官能性アクリレートであることから、レジストより高い架橋度は、エッチング耐性の増大に寄与し得るため、PC1のエッチング速度とインプリントレジストのエッチング速度とは、2つの物質で同程度であることが分かった。
【0102】
多くの実施形態が記載されている。それでも、様々な変更を本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができることが理解される。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲内である。