(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1.構成
図1〜
図4に、本実施形態のウェアラブル装置100の構成例を示す。
図1は、ウェアラブル装置100の斜視図である。
図2は、ユーザーの頭部70に装着された状態でのウェアラブル装置100の斜視図である。
図3は、ユーザーの頭部70に装着された状態でのウェアラブル装置100の側面視図である。
図4は、ユーザーの頭部70に装着された状態でのウェアラブル装置100の上面視図である。
【0014】
図1〜
図4において、方向DX、DY、DZは互いに直角な(広義には交差する)方向である。方向DXはユーザーから見て右方向(頭部70中央から右側頭部へ向かう方向)であり、方向DYはユーザーから見て上方向(頭部70中央から頭頂部へ向かう方向)であり、方向DZはユーザーから見て正面方向(頭部70中央から顔正面へ向かう方向)である。
【0015】
ウェアラブル装置100は、第1当接部10(第1接触部)、第2当接部20(第2接触部)、ヘッドバンド30、第1連結部40、第2連結部50を含む。またウェアラブル装置100は、アーム130、表示部140(表示装置)、連結部110、回動機構120を含むことができる。
【0016】
第1当接部10は、ユーザー(装着者)の側頭部のうち一方の側頭部に当接する部材(部品)である。第2当接部20は、ユーザーの側頭部のうち他方の側頭部に当接する部材である。即ち、各当接部10、20は、ユーザーがウェアラブル装置100を着用した場合において側頭部に接触する部材である。ここで「当接する」とは、当たり接することである。例えば
図2〜
図4では、第1当接部10がユーザーから見て右側の側頭部に当接し、第2当接部20がユーザーから見て左側の側頭部に当接する。
【0017】
各当接部10、20は、ウェアラブル装置100がユーザーの頭部70に装着された状態において頭部70の前後方向を長手方向とする弾性部材で構成され、側頭部の前後方向での湾曲形状に沿った湾曲を有する。
図1〜
図4では、頭部70の前後方向は方向DZ(及び−DZ)に相当する。側頭部の前後方向での湾曲形状は、当接部10、20が当接する部分における側頭部の湾曲形状であり、例えば
図4のように頭頂側から頭部70を見た場合における頭部70外周の側頭部の形状である。なお、当接部10、20の湾曲は、頭部70側に凹となる湾曲であればよく、例えば頭部70側を中心とする円弧(略円弧を含む)である。この湾曲は、完全に側頭部の湾曲形状に沿っている必要はなく、例えば頭部形状の個人差等を考慮して決定すればよい。
【0018】
当接部10、20を頭部70の横方向(DX)から見た形状は、頭部70の前後方向に延びた形状である。即ち、頭部70の前後方向(DZ)での長さが上下方向(DY)での長さ(幅)よりも長い形状である。例えば、当接部10、20は、長方形や楕円形、それらに類似する形状である。例えば長方形に類似する形状は、長方形の角を丸めた形状等である。例えば、上下方向(短手方向)の長さは、前後方向(長手方向)の長さの1/10〜1/3である。
【0019】
ヘッドバンド30は、第1当接部10と第2当接部20とを連結し、第1当接部10及び第2当接部20を側頭部に向かって付勢する。ここで「付勢する」とは、ある方向に力を加えることである。即ち、ヘッドバンド30は、ユーザーがウェアラブル装置100を着用した場合において、連結部40、50を介して当接部10、20を側頭部に押しつける方向に力を加えるように構成されている。
【0020】
具体的には、ヘッドバンド30は弾性を有するバンド状(ベルト状)の部材である。ユーザーがウェアラブル装置100を着用しておらずヘッドバンド30に力が加えられていない自然な状態での当接部10、20の間の距離が、ユーザーがウェアラブル装置100を着用した状態での当接部10、20の間の距離(つまり頭部70の左右幅)よりも小さくなるように、ヘッドバンド30が構成されている。そして、当接部10、20の間を押し広げつつ頭部70に装着することによって、ヘッドバンド30の弾性により当接部10、20が側頭部に押しつけられる。なお、ヘッドバンド30にはヘッドバンド30の長さを調節するスライド機構等が設けられてもよい。
【0021】
第1連結部40は、第1当接部10とヘッドバンド30とを連結する。第2連結部50は、第2当接部20とヘッドバンド30とを連結する。連結部40、50は、当接部10、20とヘッドバンド30との間を少なくとも一軸で回動可能に接続する回動機構を有する。その一軸は、頭部70の左右方向(DX)に平行な軸である。即ち、
図3に示すように頭部70横方向から見て、ヘッドバンド30が時計回り又は反時計回りに回動可能となっている。なお、連結部40、50は、この一軸に限らず更に回動の自由度を有してもよい。
【0022】
アーム130は、連結部110を介して第1当接部10に連結(接続)され、表示部140をユーザーの所望の位置(例えばユーザーの眼前)に保持する。例えばアーム130の一端に回動機構120を介して表示部140が連結(接続)され、アーム130の他端に連結部110を介して第1当接部10の連結部110に接続される。なお、連結部110はアーム130の端に設けられる必要はなく、アーム130の端から離れた部分に設けられてもよい。なお、アーム130の長さを調整するスライド機構等が更に設けられてもよい。
【0023】
連結部110及び第1当接部10のデバイス装着部11は、第1当接部10に対してアーム130を回動可能に保持する機構であり、例えば3軸で自由に回動可能な機構(例えばボールジョイント)等である。但し、これに限定されず、連結部110及びデバイス装着部11は表示部140の位置をユーザーの所望の位置に調整できる機構であればよい。
【0024】
回動機構120は、アーム130に対して表示部140を回動可能に保持する機構であり、例えば表示画像の水平走査方向に平行な軸で回動可能である。或いは、その軸に直角な(広義には交差する)軸で回動可能であってもよい。例えば表示部140をユーザーの眼前に調整し、表示画像の水平走査方向に平行な軸を方向DXに平行にした場合において、方向DYに平行な軸で回動可能である。或いは、方向DZに平行な軸で回動可能であってもよい。或いは、これら3軸で自由に回動可能であってもよい。
【0025】
表示部140は、表示装置が出力する画像の光を光学系により接眼窓に導き、接眼窓から眼球の瞳に向けて(眼球の視線に対向して(視軸方向に))射出し、画像の拡大虚像を視界に表示する(網膜に画像を投影する)。光学系は、例えばプリズムや鏡、レンズ等で構成される。
【0026】
表示部140は、例えば瞳分割シースルー光学系方式を採用する。瞳分割シースルー光学系方式は、接眼レンズ(接眼窓)の付近に光学系の射出瞳が設定されており、それによって接眼レンズを小さくすることが可能である。接眼レンズが小さいので、外界視界の光が接眼レンズの外側を通って目の瞳に入射し、シースルーを実現できる。この光学系を用いた場合、例えば表示部140の先端部(接眼窓が設けられている部分)の幅は4mm以下である。なお、表示部140としては、瞳分割シースルー光学系方式に限らず種々の形式の光学系を用いたタイプの表示部を採用できる。
【0027】
なお、上記ではウェアラブル装置100が保持するデバイスが表示部140である場合を例に説明したが、これに限定されない。例えばウェアラブル装置100が保持するデバイスはカメラ等であってもよい。
【0028】
以上の実施形態によれば、当接部10、20が頭部70の前後方向(DZ)を長手方向とする形状である。これにより、個々のユーザーの装着条件の違いに幅広く対応できる。即ち、頭部70に接触する当接部10、20の上下方向の幅が短く、前後方向に長い形状となっていることで、個々のユーザーの頭部形状や髪型の違い、ウェアラブル装置以外の装着物の有無等の違いの影響を受けにくくなる。例えば、
図2のようにユーザーが眼鏡をかけている場合であっても、当接部10、20が眼鏡のテンプルに平行な方向が長手方向となっているため、テンプルに干渉することなく当接部10、20を側頭部に当接できる。同様に、耳にかけるタイプの補聴器等をユーザーが装着している場合にも、補聴器に干渉することなく当接部10、20を側頭部に当接できる。
【0029】
また本実施形態によれば、当接部10、20は、側頭部の前後方向(DZ)での湾曲形状に沿った湾曲を有する弾性部材である。これにより、ウェアラブル装置100を個々のユーザーの装着条件の違いに幅広く対応しつつ、安定してデバイスを保持することが可能となる。即ち、当接部10、20の湾曲によって当接部10、20の大部分が側頭部に接触する。そして、当接部10、20がヘッドバンド30で付勢されることによって、当接部10、20の弾性によって更に当接部10、20の側頭部への密着性が高まる。このようにして、当接部10、20が側頭部に対して安定して当接するようになり、デバイスを安定して保持することが可能となる。また、当接部10、20が弾性部材であることによって、個々のユーザーの頭部形状が違う場合であっても、その頭部形状に合わせて当接部10、20が変形し、当接部10、20が側頭部に対して安定して当接する。
【0030】
2.詳細構成
以下、ウェアラブル装置100の各部の詳細な構成例を説明する。
【0031】
図4に示すように、各当接部10、20の長手方向における長さLは、頭部70の前後方向(DZ)における幅TWの1/4以上1/2以下である。
【0032】
幅TWは、頭部70を上方向(DY)から見た場合において、当接部10、20が接する部分での頭部70外周の前後方向の幅である。この幅TWは、実際には個人差があるが、例えば統計上の(人間工学的な)頭部70の前後方向(DZ)における幅を採用する。なお、
図4では、第1当接部10の長手方向における長さLのみを図示しているが、第2当接部20の長手方向における長さも同様にLである。
【0033】
当接部10、20が頭部70の前後方向に短すぎると、ウェアラブル装置100を頭部70に安定して保持することが難しくなる。一方、当接部10、20が頭部70の前後方向に長すぎると、当接部10、20の前側先端がユーザーの目周辺に接触し、ユーザーに不快感を与える、或いは当接部10、20がウェアラブル装置100以外の装着物や髪型等に干渉しやすくなる等の不都合がある。この点、本実施形態によれば、頭部70の前後方向での当接部10、20の長さが適切な範囲となる。これにより、デバイスを安定して保持できると共に、ユーザーに不快感を与える可能性や、ウェアラブル装置100以外の装着物や髪型等に干渉する可能性を低減できる。
【0034】
また本実施形態では、
図4に示すように、第1連結部40は、長手方向における第1当接部10の中央よりも、頭部70の前側に設けられる。第2連結部50は、長手方向における第2当接部20の中央よりも、頭部70の前側に設けられる。
【0035】
頭部70の上方向(DY)から見た場合において、第1連結部40から第1当接部10の前端までの距離をL1とし、第1連結部40から第1当接部10の後端までの距離をL2とした場合に、L1<L2である。例えば距離L1は、第1当接部10の長さLの1/4以上で1/2未満である。望ましくは、L1/L=1/3である。ここで、第1連結部40の位置は、例えば上述したヘッドバンド30の回動軸(頭部70の左右方向(DX)に平行な軸)と第1当接部10とが交差する位置である。なお、第1連結部40を例に説明したが、第2連結部50についても同様である。
【0036】
このように、連結部40、50が当接部10、20の中央より前側に設けられることで、当接部10、20の長さLを確保しつつ、連結部40、50から当接部10、20の前端までの距離L1を短くできる。これにより、当接部10、20の前側先端がユーザーの目周辺(例えばこめかみ部分)に接触する可能性を低減すると共に、当接部10、20の長さLによって安定したデバイス保持が可能となる。
【0037】
また本実施形態では、各当接部10、20に力(例えば側頭部に押し当てる力)が加えられていない自然な状態において、各当接部10、20は、側頭部の湾曲形状の曲率よりも大きい曲率の湾曲を有する。
【0038】
ここで、曲率とは、曲線や曲面の曲がり度合いを表す量であり、曲線や曲面の半径の逆数に相当する。即ち、側頭部の湾曲形状や当接部10、20の湾曲を円弧と近似した場合における、その円弧の半径の逆数が本実施形態での曲率に相当する。側頭部の湾曲形状の曲率は、実際には個人差があるが、例えば統計上において(人間工学的に)大多数の人の側頭部の曲率よりも、当接部10、20の曲率の方が大きくなるように、当接部10、20の曲率を設定しておく。
【0039】
このようにすれば、当接部10、20がヘッドバンド30により側頭部に押し当てられたときに、当接部10、20の弾性によって当接部10、20の湾曲が開くようにして(湾曲の曲率が小さくなって)側頭部の湾曲形状に沿った形状となる。これにより、当接部10、20と側頭部の密着性が高くなり、デバイス保持の安定度を高めることができる。
【0040】
また本実施形態では、
図3に示すように、各連結部40、50は、ウェアラブル装置100がユーザーの頭部70に装着された状態において、ユーザーの耳の上方(DY)に配置される。
【0041】
ここで「耳の上方」とは、頭部70を横方向(DX)から見たときに、耳介(耳の外観として見えている部分)よりも上方向(DY)ということである。このとき、頭部70の前後方向(DZ)における連結部40、50の位置は、例えば耳介の前後幅の範囲内である。
【0042】
耳の上方では、側頭部の湾曲形状の接線がおおよそ頭部70の前後方向に平行となっている。そのため、連結部40、50をユーザーの耳の上方(DY)に配置するようにウェアラブル装置100を装着することで、当接部10、20が位置ずれを起こしにくくなり、当接部10、20を安定して側頭部に当接させることができる。
【0043】
また、
図5に示すように、ユーザーが眼鏡(又は補聴器等)を装着している場合には、眼鏡を装着していない場合に比べて更に上方に連結部40、50を配置するようにウェアラブル装置100を装着することが可能である。即ち、当接部10、20が頭部70の前後方向に長い形状なので、連結部40、50の位置を上下に調整することで当接部10、20が上下に平行移動される。これにより、眼鏡等の装着物に干渉しない位置で且つ安定して側頭部に当接できる位置に、当接部10、20の位置を調整できる。
【0044】
図6〜
図8(B)に、連結部40、50の回動軸についての説明図を示す。なお、
図8(A)、
図8(B)では、便宜的にアーム130や表示部140の図示を省略している。
【0045】
第1連結部40は、第1軸〜第3軸を含む自由度でヘッドバンド30を(ヘッドバンド30の端部と当接部10との間を)回動可能な第1の回動機構である。第2連結部50は、第4軸〜第6軸を含む自由度でヘッドバンド30を(ヘッドバンド30の端部と当接部20との間を)回動可能な第2の回動機構である。ここで、第1軸〜第3軸を含む自由度で回動可能であるとは、第1軸での回動、第2軸での回動、第3軸での回動のみが可能な場合と、例えばボールジョイント等のような任意の軸で回動可能な場合とを含む。
【0046】
図6に示すように、第1軸及び第4軸は、第1連結部40と第2連結部50とを結ぶ方向(DX)に沿った回動軸である。即ち、第1軸及び第4軸は、第1連結部40と第2連結部50とを結ぶ方向に平行(略平行を含む)な軸である。
【0047】
図7(A)、
図7(B)に示すように、第2軸は、第1当接部10の長手方向(DZ)に沿った回動軸であり、第5軸は、第2当接部20の長手方向(DZ)に沿った回動軸である。即ち
図7(A)に示すように、ヘッドバンド30の端部は当接部10、20に対して、第2軸、第5軸で方向RC又は方向RDに回動可能である。
図7(B)には、当接部10、20がヘッドバンド30に対して方向RCに回動する(つまりヘッドバンド30の端部が当接部10、20に対して方向RDに回動する)場合を例に示している。
【0048】
図8(A)、
図8(B)に示すように、第3軸は、第1当接部10の短手方向(DY)に沿った回動軸である。第6軸は、第2当接部20の短手方向(DY)に沿った回動軸である。即ち
図8(A)に示すように、ヘッドバンド30の端部は当接部10、20に対して、第3軸、第6軸で方向RA又は方向RBに回動可能である。
図8(B)には、当接部10、20がヘッドバンド30に対して方向RAに回動する(つまりヘッドバンド30の端部が当接部10、20に対して方向RBに回動する)場合を例に示している。
【0049】
連結部40、50が上記のような軸での回動を行うことで、種々の頭部形状や髪型等に対応することが可能となる。例えば、
図6で説明した左右方向(DX)に平行な第1軸、第4軸でヘッドバンド30が回動することで、ヘッドバンド30を自由な位置(例えば前頭部、頭頂部、後頭部等)に調整できる。これにより、種々の髪型や装着物(例えばヘアアクセサリ等)に対応できる。また、
図7(A)〜
図8(B)で説明した前後方向(DZ)に平行な第2軸、第4軸、上下方向(DY)に平行な第3軸、第6軸でヘッドバンド30が回動することで、種々の頭部形状に対応できる。例えば、
図7(B)に示すように頭頂部に向かって側頭部が細くなるような形状や、
図8(B)に示すように後頭部に向かって側頭部が細くなるような形状のように、頭部70の形状は様々である。この点、上記第2軸、第3軸、第5軸、第6軸でヘッドバンド30と当接部10、20の間が回動することで、当接部10、20は色々な角度で側頭部に接することが可能となる。
【0050】
また本実施形態では、
図6に示すように、第1軸及び第4軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲θは、ヘッドバンド30が頭部70の上方に配置される場合の角度、及びヘッドバンド30が頭部70の後方に配置される場合の角度を含む120度以上の角度範囲である。
【0051】
ここで、頭部70の上方とは、頭部70中央から頭頂部へ向かう方向であり、
図6では方向DYに対応する。また頭部70の後方とは、頭部70中央から後頭部へ向かう方向であり、
図6では方向DZの反対方向(−DZ)に対応する。
【0052】
このように、頭頂部及び後頭部を含む120度以上の広い角度範囲でヘッドバンド30の位置を調整できることで、種々の髪型や装着物(例えばヘアアクセサリ等)に対応できる。
【0053】
また本実施形態では、第2軸及び第3軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲(方向RA、RB、RC、RDでの回動範囲)は、第1軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲θよりも小さい。同様に、第5軸及び第6軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲(方向RA、RB、RC、RDでの回動範囲)は、第4軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲θよりも小さい。
【0054】
これら第2軸、第3軸、第5軸、第6軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲は、例えば第1軸におけるヘッドバンド30の回動可能な角度範囲θ(≧120度)の1/5以下である。望ましくは、その角度範囲は5度〜20度である。
【0055】
当接部10、20が側頭部に当たる角度に応じたヘッドバンド30の回動(
図7(A)〜
図8(B)で説明した回動)が広い角度で自由に生じてしまうと、ウェアラブル装置100を外している際に当接部10、20がその重さ等によってヘッドバンド30端部に対して自由な角度に傾いてしまう。そのため、ウェアラブル装置100を装着する際に当接部10、20が適切に側頭部に当接せず、ユーザーが煩わしいと感じる可能性がある。この点、上述のような角度範囲となっていることで、ウェアラブル装置100を外している際にも第2軸、第3軸、第5軸、第6軸での回動がある程度制限され、ウェアラブル装置100を装着する際に当接部10、20が適切に側頭部に当接するようになる。
【0056】
また本実施形態では、
図9(A)に示すように、ウェアラブル装置100の形状が上下対称となるように構成されている。
【0057】
具体的には、頭部70の左右方向(DX)から見た場合において、ヘッドバンド30を後頭部側に配置してヘッドバンド30と各当接部10、20とが頭部70の前後方向(DZ)に沿って直線的に並ぶように配置したとする。この場合に、各当接部10、20及びヘッドバンド30は、頭部70の前後方向(DZ)に沿った対称軸SAで線対称(上下対称)である。
【0058】
より具体的には、連結部40、50は対称軸SA上に中心(上述の第1軸、第4軸と当接部10、20との交点)が配置される。また、アーム130についても同様に上下対称である。即ち、頭部70の左右方向(DX)から見た場合において、表示部140を顔正面側に配置してアーム130と各当接部10、20とが頭部70の前後方向(DZ)に沿って直線的に並ぶように配置したとする。この場合に、アーム130は、頭部70の前後方向(DZ)に沿った対称軸SAで線対称(上下対称)である。
【0059】
このような構成とすることで、
図9(A)に示すようにユーザーの右目に表示画像を表示させることもできるし、
図9(B)に示すようにウェアラブル装置100を左右反転させて装着し(表示画像も180度回転させ)、ユーザーの左目に表示画像を表示させることもできる。即ち、ユーザーの利き目に応じて自由に左右を反転できる。そして、ウェアラブル装置100が上下対称であるため、いずれの装着状態でも差異なく安定したデバイス保持が可能である。
【0060】
なお、ヘッドバンド30は上述の第1軸、第4軸(頭部70の左右方向に沿った軸)で180度以上回動できることが望ましい。このようにすれば、利き目対応が可能であると共に種々の髪型等に対応した自由なヘッドバンド30の配置が可能となる。例えばヘッドバンド30が頭頂部に配置されている場合、ウェアラブル装置100を左右反転させてヘッドバンド30を180度回すことで、右目と左眼が入れ替わると共に再びヘッドバンド30が頭頂部に配置される。
【0061】
また本実施形態では、
図10(A)に示すように、第1当接部10は、第1連結部40よりも頭部70の前側(DZ側)に設けられ、アーム130を第1当接部10に連結するデバイス装着部11を有する。アーム130の一端には表示部140(広義にはデバイス)が保持される。そして、デバイス装着部11は、アーム130の一端を、第1当接部10の長手方向のうち頭部70の前側方向(DZ)及び後側方向(−DZ)のいずれにも回動可能である。
【0062】
なお、
図10(A)はアーム130の一端を頭部70の後側方向(−DZ)に配置した場合を図示している。アーム130の一端を頭部70の前側方向(DZ)に配置した場合、例えば
図4のようになる。デバイス装着部11とアーム130(連結部110)とは着脱不能に連結されてもよいし、後述のように着脱可能に連結されてもよい。
【0063】
アーム130の一端を頭部70の後側方向(−DZ)に回動した場合、
図10(A)のようにアーム130がヘッドバンド30に沿った状態となる。これにより、ウェアラブル装置100の収納時や持ち運び時においてウェアラブル装置100をコンパクトにすることが可能である。
【0064】
また
図10(B)に示すように、更にヘッドバンド30を半分に折りたためるように構成してもよい。即ち、ヘッドバンド30を、第1当接部10に連結される第1バンドと、第2当接部20に連結される第2バンドとの左右対称な半分ずつに分離する。そして、その第1、第2バンドを、頭部70の前後方向(DZ)に平行でヘッドバンド30の中央を通る軸SBで回動可能な回動機構31で接続する。
【0065】
このようにすれば、アーム130の一端を頭部70の後側方向(−DZ)に回動すると共に、更にヘッドバンド30を半分に折りたたむことが可能となり、更にウェアラブル装置100をコンパクトに収納(或いは持ち運び)できる。
【0066】
また本実施形態では、
図11に示すように、第1当接部10は、第1連結部40よりも頭部70の前側(DZ側)に設けられ、アーム130(及び表示部140。広義にはデバイス)を着脱可能なデバイス装着部11を有する。アーム130がデバイス装着部11に装着された状態においてアーム130は第1当接部10に対して回動可能である。
【0067】
例えば、デバイス装着部11はボールジョイントのボールであり、アーム130の連結部110がボールジョイントのボール受け(ボールが嵌まり合う穴)である。そして、そのボールをボール受けに対して嵌める、ボールをボール受けから抜くことによって、アーム130の着脱が可能となる。ボールがボール受けに嵌まった状態では、ボールがボール受けの内部で自在に回動できる。
【0068】
このように、第1当接部10がデバイス装着部11を有することで、種々のデバイスをウェアラブル装置100に着脱可能となる。例えば、必要に応じて表示部140とカメラを取り替えながらユーザーが作業を行うことが可能となる。
【0069】
また本実施形態では、
図11に示すように、デバイス装着部11のアーム130が装着される位置から、第1当接部10の側頭部に接する面までの距離HAは、5mm以上15mm以下である。
【0070】
ここで、第1当接部10の側頭部に接する面は、第1当接部10においてデバイス装着部11が設けられている付近での側頭部に接する面である。そして、デバイス装着部11のアーム130が装着される位置から、その面に対して下ろした垂線の長さが、距離HAに相当する。デバイス装着部11のアーム130が装着される位置は、例えば回動中心である。即ち、アーム130がデバイス装着部11に対して自在に回動できる場合(例えばボールジョイント)、その自在な回動の回動中心(ボールの中心)が、デバイス装着部11のアーム130が装着される位置である。
【0071】
このようにすれば、アーム130をデバイス装着部11に装着した状態において、アーム130と第1当接部10との間の距離を確保できる。これにより、ウェアラブル装置100以外の装着物に干渉しないようにデバイスを取り付けることが可能となる。例えば
図12に示すように、ユーザーが眼鏡を着用している場合、表示部140をユーザーの眼前に位置させるとアーム130と眼鏡150のテンプルとが干渉する恐れがある。この点、本実施形態ではアーム130が第1当接部10から離れているため、アーム130と眼鏡150のテンプルとの間に距離を確保し、干渉の可能性を低減できる。
【0072】
なお、距離HAを15mm以下としているのは、距離HAが大きすぎるとアーム130が第1当接部10から離れすぎる、或いはデバイス装着部11が第1当接部10から大きく出っ張るためである。即ち、距離HAを15mm以下とすることで、アームが当接部10から離れすぎて不安定になることを回避できる。また、外観が自然になる。また、余計な出っ張りもなく、障害物等にアーム130等がぶつかる危険も少なくなる。
【0073】
3.第1、第2連結部
図13〜
図14(C)に、第1連結部40の詳細な構成例を示す。なお、第2連結部50についても同様に構成される。
【0074】
図13に示すように、第1連結部40は、部材(部品)41〜48を含む。例えば部材41〜46は樹脂で形成され、部材47、48は金属で形成される。なお、各部材を形成する材料はこれに限定されない。
【0075】
部材41は、第1当接部10に接する基部であり、直方体状の形状をしている。直方体の底面側が第1当接部10に接しているが、その底面と第1当接部10とは固定されていない。
【0076】
部材41の直方体の上面には円盤状の部材42が固定されている。部材42には、オスネジである部材43が設けられており、部材42の円盤と部材43のオスネジは同軸(中心線が一致)である。部材42と部材43は、例えば一体形成されている。
【0077】
部材45は円盤状であり、円筒状の部材46が設けられている。部材45の円盤と部材46の円筒は同軸であり、部材45の円盤の中心には、部材46の円筒の内径と同じ大きさの穴が開けられている。また部材46の円筒の内側曲面にはメスネジが加工されている。部材45と部材46は、例えば一体形成されている。
【0078】
部材44は円筒状であり、ヘッドバンド30の一端に設けられる。部材44の円筒の内径は、部材46の円筒の外径と同じか少し大きくなっている。そして、部材46の円筒を部材44の円筒の内側に通し、部材43のオスネジと部材46のメスネジとが嵌合されることで、第1連結部40にヘッドバンド30が接続される。
【0079】
図13及び
図14(A)に示すように、部材41の直方体の底面と第1当接部10とは部材47で接続される。部材47は線状の弾性部材であり、長方形の外周に沿った形状をしている。その長方形の短辺は頭部70の上下方向(DY)に沿っており、長辺は第1当接部10の湾曲に沿って湾曲している。そして一方の短辺は部材41の直方体の底面に固定され、他方の短辺(及び長辺の一部)は第1当接部10に固定される。
【0080】
図6〜
図8(B)で説明したように、第1連結部40はヘッドバンド30を第1軸〜第3軸で回動可能に保持する。
図13では、頭部70の左右方向(DX)に沿った第1軸をAX1で示し、頭部70の前後方向(DZ)に沿った第2軸をAX2で示し、頭部70の上下方向(DY)に沿った第3軸をAX3で示す。
【0081】
第1軸AX1での回動は、部材42〜46によって実現されている。即ち、部材43のオスネジと部材46のメスネジとが嵌合された状態で、部材44の円筒内側曲面と部材46の円筒外側曲面とが擦り合いながら部材44の円筒が回動することで、ヘッドバンド30が第1軸AX1で回動する。
【0082】
第2軸AX2、第3軸AX3での回動は、部材41、48で実現されている。その説明図を
図14(A)〜
図14(C)に示す。
【0083】
部材48は、線状の部材であり、長方形の外周に沿った形状をしている。その長方形の一辺は頭部70の上下方向(DY)に沿っており、その一辺は、部材41の直方体に設けられた貫通穴49に挿入されている。貫通穴49に挿入された一辺に対向する一辺は、第1当接部10に固定されている。
【0084】
図14(B)に示すように、貫通穴49は直方体状であり、貫通穴49の開口は、頭部70の左右方向(DX)を長手方向とする長方形となっている。貫通穴49の第1当接部10側(−DX側)の内面は貫通穴49内側(DX側)に向かって凸の曲面SDになっている。そして、
図14(B)、
図14(C)に示すように、曲面SDに沿って部材48が接しながら回動することで、前後方向(DZ)に沿った第2軸AX2での回動が実現される。この回動の角度範囲は、貫通穴49の開口のサイズ(開口の長手方向での幅)によって制限される。
【0085】
上下方向(DY)に沿った第3軸AX3での回動は、部材48を中心として部材41が回動することで実現される。この回動の角度範囲は、部材47が部材41を第1当接部10に押しつける力によって制限される。
【0086】
本実施形態では、第1連結部40は、第1軸AX1でヘッドバンド30を回動可能な第1軸回動機構と、第1軸回動機構と第1当接部10との間に設けられ、第2軸AX2及び第3軸AX3でヘッドバンド30を回動可能な第2軸及び第3軸回動機構と、を有する。
図13〜
図14(C)において、第1軸回動機構は、部材42〜46で構成される回動機構に対応し、第2軸及び第3軸回動機構は、部材41、48で構成される回動機構に対応する。
【0087】
同様にして、第2連結部50は、第4軸でヘッドバンド30を回動可能な第4軸回動機構と、第4軸回動機構と第2当接部20との間に設けられ、第5軸及び第6軸でヘッドバンド30を回動可能な第5軸及び第6軸回動機構と、を有する。
【0088】
ウェアラブル装置100を頭部に装着する際、ヘッドバンド30が当接部10、20を側頭部に押しつけ、当接部10、20が側頭部に合わせて向きを変えようとする。このとき、第2軸及び第3軸回動機構、第5軸及び第6軸回動機構によって当接部10、20が側頭部に合わせて向きを変え、当接部10、20が側頭部に当接できる。そして、第1軸回動機構、第4軸回動機構は、第2軸及び第3軸回動機構、第5軸及び第6軸回動機構よりも外側にあるので、左右方向(DX)の回動軸の向きが保たれる。即ち、
図6のような左右方向(DX)の回動軸でのヘッドバンド30の回動において、回動軸が傾くとヘッドバンド30の回動が妨げられるが、本実施形態では左右方向(DX)の回動軸の方向が保たれる。これにより、側頭部の形状が個人差で様々であっても、それに影響されることなくヘッドバンド30の回動軸の方向が維持され、ヘッドバンド30の自由な回動が保たれる。
【0089】
また本実施形態では、
図15(A)に示すように、ウェアラブル装置100を装着していない自然な状態において、当接部10、20が前開き(DZ側が−DZ側よりも開く)ように付勢されてもよい。或いは、
図15(B)に示すように、ウェアラブル装置100を装着していない自然な状態において、当接部10、20が後ろ開き(−DZ側がDZ側よりも開く)ように付勢されてもよい。
【0090】
このような付勢は、
図13、
図14(A)で説明した部材47の形状や、部材47の弾性による付勢、部材47と部材41の接続状態によって実現される。例えば、第1当接部10前端側(DZ側)を方向DXに引っ張るように部材47が第1当接部10に対して付勢すれば、当接部10、20は前開きとなる。一方、第1当接部10前端側(DZ側)を方向−DXに押すように部材47が第1当接部10に対して付勢すれば、当接部10、20は後ろ開きとなる。
【0091】
当接部10、20が前開きとなっている場合には、ウェアラブル装置100を後頭部側から装着することが容易になる。一方、当接部10、20が後ろ開きとなっている場合には、ウェアラブル装置100を前頭部側から装着することが容易になる。
【0092】
以上、本発明を適用した実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。