特許第6797931号(P6797931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797931遺伝子配列決定構造、チップ、システムおよび遺伝子配列決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797931
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】遺伝子配列決定構造、チップ、システムおよび遺伝子配列決定方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20201130BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20201130BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20201130BHJP
【FI】
   C12M1/34 Z
   C12M1/00 A
   C12Q1/6869 Z
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-548384(P2018-548384)
(86)(22)【出願日】2018年2月11日
(65)【公表番号】特表2019-524051(P2019-524051A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】CN2018076265
(87)【国際公開番号】WO2019015315
(87)【国際公開日】20190124
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】201710580687.4
(32)【優先日】2017年7月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】蔡 佩芝
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ ▲鳳▼春
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲華▼哲
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第106497774(CN,A)
【文献】 特開2005−218310(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105861294(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/00
C12Q 1/00− 3/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間される第1の電極と第2の電極、半導体層、センス電極、絶縁層、及び感応膜層を含む遺伝子配列決定構造であって、
前記第1の電極は前記半導体層を介して前記第2の電極に接続され、前記センス電極は前記感応膜層と接触し、前記絶縁層は前記感応膜層と前記センス電極とのそれぞれを前記第1の電極と、前記第2の電極と、前記半導体層とのそれぞれから離隔させ、前記感応膜層は、遺伝子配列決定における塩基配対によって発生するイオンを接受することに応じて電荷を発生させる、
遺伝子配列決定構造
【請求項2】
前記感応膜層の上に位置する微孔層をさらに含み、遺伝子配列決定で使用される原材料を収容するための微孔が前記微孔層に形成され、前記微孔の底面は前記感応膜層の上面になる、請求項1に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項3】
前記感応膜層の材料は、水素イオンを接受することに応じて電荷を発生させる材料を含む、請求項1または2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項4】
前記感応膜層の材料は窒化ケイ素を含む、請求項3に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項5】
前記第1の電極と前記第2の電極は前記遺伝子配列決定構造の同じ層に位置し、前記半導体層は前記第1の電極の一部と前記第2の電極の一部を覆う、請求項1または2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項6】
前記半導体層は、それぞれ前記第1の電極の上面の一部及び前記第2の電極の上面の一部を覆い、前記絶縁層は、前記半導体層の前記第1の電極及び前記第2の電極から離れた側に配置される、請求項1または2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項7】
前記センス電極は、前記絶縁層の前記半導体層から離れた側に配置され、前記センス電極の水平面上の正投影は、前記半導体層の水平面上の正投影と少なくとも部分的に重なる、請求項6に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項8】
前記感応膜層は、前記センス電極の前記絶縁層から離れた側に配置される、請求項7に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項9】
前記第1の電極と前記第2の電極は、同じ形状を有し、互いに鏡面対称に配置される、請求項1または2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項10】
前記第1の電極と前記第2の電極は、水平面と平行な断面がL字形であり、前記第1の電極及び前記第2の電極のL字形の開口部は互いに対向して配置される、請求項9に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項11】
前記第1の電極および前記第2の電極の端部には、テスト信号を導入するように接続線がそれぞれ設けられている、請求項1または2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項12】
前記センス電極の水平面に平行な断面形状は、前記半導体層の水平面に平行な断面形状と同じであり、前記半導体層の水平面上の正投影は、前記センス電極の水平面上の正投影内に収まる、請求項1または2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項13】
前記微孔のサイズの範囲は1〜100μmである、請求項2に記載の遺伝子配列決定構造
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の複数の遺伝子配列決定構造を含む、遺伝子配列決定チップ。
【請求項15】
前記複数の遺伝子配列決定構造は、ガラス基板の上にアレイとして配置される、請求項14に記載の遺伝子配列決定チップ。
【請求項16】
各遺伝子配列決定構造の前記第1の電極と前記第2の電極の端部には、テスト信号を導入するための接続線がそれぞれ設けられており、同じ行または同じ列に位置する前記遺伝子配列決定構造の前記第1の電極の前記接続線は前記遺伝子配列決定構造のアレイの周辺にある第1のテストパッドにそれぞれ接続され、同じ行または同じ列に位置する前記遺伝子配列決定構造の前記第2の電極の前記接続線は前記遺伝子配列決定構造のアレイの周辺にある第2のテストパッドにそれぞれ接続される、請求項15に記載の遺伝子配列決定チップ。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1つに記載の遺伝子配列決定チップおよび前記遺伝子配列決定チップに取り外し可能に接続されるテスト機器を含む、遺伝子配列決定システム。
【請求項18】
前記テスト機器は、フレキシブルプリント基板を介して前記遺伝子配列決定チップの前記第1の電極と前記第2の電極にテスト信号を加える、または前記テスト機器のプローブによって前記遺伝子配列決定チップの前記第1の電極と前記第2の電極にテスト信号を加えるように、構成される、請求項17に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項19】
請求項2〜13のいずれか1つに記載の遺伝子配列決定構造物を使用した遺伝子配列決定方法であって、
検出すべきDNA一本鎖を前記微孔の底部に置くことと、
前記第1の電極または前記第2の電極に電圧を加えることと、
前記微孔に4種類のデオキシリボヌクレオチドを順次に添加することと、
前記第1の電極、前記半導体層及び前記第2の電極を含む回路に電流が生じるか否かを検出し、電流が生じるときに添加されたデオキシリボヌクレオチドにより前記検出すべきDNA一本鎖上の塩基型を決定することと、を含む、
遺伝子配列決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遺伝子配列決定および生物検出の分野に属し、具体的には、遺伝子配列決定構造、遺伝子配列決定チップ、遺伝子配列決定システムおよび遺伝子配列決定方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は2017年7月17日に出願された出願番号が201710580687.4である中国特許出願の優先権を主張するものであり、上記の中国特許出願に開示された内容を引用して本願の一部とする。
【背景技術】
【0003】
遺伝子配列決定(Gene sequencing)技術は、現代の分子生物学の研究に一般的に用いられる技術である。遺伝子配列決定によって、血液または唾液において遺伝子の完全な配列を分析し、癌または白血病などの複数の疾病の罹患の可能性を予測することができる。今迄、遺伝子配列決定技術はかなり進歩した。現在の遺伝子配列決定技術は、第1世代のサンガー(sanger)配列決定技術と、第2世代のハイスループット配列決定技術と、第3世代の単一分子配列決定技術とを含む。現在、市場において主流の配列決定技術は、依然として第2世代のハイスループット配列決定技術によって支配される一方、単一分子配列決定技術はまだ研究開発段階にあり、商業化の大きな進展がない。
【0004】
第2世代のハイスループット配列決定技術は、合成による配列決定技術、イオン半導体(semiconductor)配列決定技術、ライゲーション配列決定技術、及びパイロ配列決定技術などを主に含み、特に、合成による配列決定技術が主流となり、市場の主要な地位を占めている。その中で、合成による配列決定技術とライゲーション配列決定技術の両者は、塩基の蛍光標識、ならびに複雑なレーザー光源および光学システムを必要とすることにより、配列決定のためのシステムが複雑になると共に、標識試薬が特に高価であるので、配列決定のコストが高くなり、配列決定の時間も長くなる。パイロ配列決定技術はレーザー光源や光学システムを必要としないが、蛍光標識を必要とする。イオン半導体配列決定技術では、1つのイオンセンサーと2つの電界効果トランジスタをCMOSプロセスで製作する必要があるので、プロセスが複雑になると共に製造が困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施例は、先行技術に存在する上記の問題を緩和または軽減するように、遺伝子配列決定構造、遺伝子配列決定チップ、遺伝子配列決定システムおよび遺伝子配列決定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定構造は、互いに離間される第1の電極と第2の電極、半導体層、センス電極、絶縁層、及び感応膜層を含む。前記第1の電極は前記半導体層を介して前記第2の電極に接続され、前記センス電極は前記感応膜層と接触し、前記絶縁層は前記感応膜層と前記センス電極とのそれぞれを前記第1の電極と、前記第2の電極と、前記半導体層とのそれぞれとを離隔し、前記感応膜層は、遺伝子配列決定における塩基配対によって発生するイオンを接受することに応じて電荷を発生させる。
【0007】
本開示の実施例では、遺伝子配列決定構造は、前記感応膜層の上に位置する微孔層をさらに含み、遺伝子配列決定で使用される原材料を収容するための微孔が前記微孔層に形成され、前記微孔の底面は前記感応膜層の上面になる。
【0008】
さらに、いくつかの実施例では、感応膜層の材料は、水素イオンを接受することに応じて電荷を発生させる材料を含む。一例では、感応膜層の材料は窒化ケイ素を含む。
【0009】
いくつかの実施例では、前記第1の電極と前記第2の電極は前記遺伝子配列決定構造の同じ層に位置し、前記半導体層は前記第1の電極の一部と前記第2の電極の一部を覆う。
【0010】
いくつかの実施例では、前記半導体層は、それぞれ前記第1の電極の上面の一部及び前記第2の電極の上面の一部を覆い、前記絶縁層は、前記半導体層の前記第1の電極及び前記第2の電極から離れた側に配置される。
【0011】
いくつかの実施例では、前記センス電極は、前記絶縁層の前記半導体層から離れた側に配置され、前記センス電極の水平面上の正投影は、前記半導体層の水平面上の正投影と少なくとも部分的に重なる。
【0012】
いくつかの実施例では、前記感応膜層は、前記センス電極の前記絶縁層から離れた側に配置される。
【0013】
いくつかの実施例では、前記第1の電極と前記第2の電極は、同じ形状を有し、互いに鏡面対称に配置される。
【0014】
いくつかの実施例では、前記第1の電極と前記第2の電極は、水平面と平行な断面がL字形であり、前記第1の電極及び前記第2の電極のL字形の開口部は互いに対向して配置される。
【0015】
いくつかの実施例では、前記第1の電極および前記第2の電極の端部には、テスト信号を導入するように接続線がそれぞれ設けられている。
【0016】
いくつかの実施例では、前記センス電極の水平面に平行な断面形状は、前記半導体層の水平面に平行な断面形状と同じであり、前記半導体層の水平面上の正投影は、前記センス電極の水平面上の正投影内に収まる。
【0017】
いくつかの実施例では、微孔のサイズの範囲は1〜100μmである。
【0018】
本開示のさらなる実施例は、上述の実施例のいずれか1つに記載の複数の遺伝子配列決定構造を含む遺伝子配列決定チップを提供する。
【0019】
いくつかの実施例では、前記複数の遺伝子配列決定構造は、ガラス基板の上にアレイとして配置される。
【0020】
いくつかの実施例では、各遺伝子配列決定構造の前記第1の電極と前記第2の電極の端部には、テスト信号を導入するための接続線がそれぞれ設けられており、同じ行または同じ列に位置する前記遺伝子配列決定構造の前記第1の電極の前記接続線は前記遺伝子配列決定構造のアレイの周辺にある第1のテストパッドにそれぞれ接続され、同じ行または同じ列に位置する前記遺伝子配列決定構造の前記第2の電極の前記接続線は前記遺伝子配列決定構造のアレイの周辺にある第2のテストパッドにそれぞれ接続される。
【0021】
本開示のさらなる実施例は、上述の実施例に記載の遺伝子配列決定チップおよび前記遺伝子配列決定チップに取り外し可能に接続されるテスト機器を含む遺伝子配列決定システムを提供する。
【0022】
いくつかの実施例では、前記テスト機器は、フレキシブルプリント基板を介して前記遺伝子配列決定チップの前記第1の電極と前記第2の電極にテスト信号を加える、または前記テスト機器のプローブによって前記遺伝子配列決定チップの前記第1の電極と前記第2の電極にテスト信号を加えるように、構成される。
【0023】
本開示の別の実施例は、本開示の前記遺伝子配列決定構造の実施例のいずれか1つに記載のものに基づく遺伝子配列決定方法を提供し、該方法は、検出すべきDNA一本鎖を前記微孔の底部に置くことと、前記第1の電極または前記第2の電極に電圧を加えることと、前記微孔に4種類のデオキシリボヌクレオチドを順次に添加することと、前記第1の電極、前記半導体層及び前記第2の電極を含む回路に電流が生じるか否かを検出し、電流が生じるときに添加されたデオキシリボヌクレオチドにより前記検出すべきDNA一本鎖上の塩基型を決定することと、を含む。
【0024】
本開示の実施例に提供された遺伝子配列決定構造によれば、配対反応を行うときに、デオキシリボヌクレオチドが蛍光標識を必要としなく、レーザー光源や光学システムも必要としない。そして、該遺伝子配列決定構造は、既存の薄膜トランジスタの製造プロセスによって全体的に製作でき、チップのコストがさらに低くなる。従って、該遺伝子配列決定システムおよび対応する遺伝子配列決定方法について、配列決定の時間およびコストを大幅に低減し、効率を改善しながら配列決定のための設備を簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定構造の断面図である。
図2図1に示す遺伝子配列決定構造の部分平面図である。
図3】本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定チップの平面図である。
図4】本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定方法のフロー図である。
図5A】本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定方法の原理を図示するための図である。
図5B】本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定方法の原理を図示するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者が本開示の実施例の構成をよりよく理解できるように、本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定構造、遺伝子配列決定チップ、遺伝子配列決定システムおよび遺伝子配列決定方法を添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0027】
以下の説明において、以下の符号を用いる:
1 ガラス基板;2 第1の電極;3 第2の電極;4 半導体層;5 絶縁層;6 センス電極;7 感応膜層;8 微孔層;9 微孔;10 検出すべきDNA一本鎖;11 配対塩基;101 遺伝子配列決定構造;102 接続線。
【0028】
本開示の実施例は、現在の遺伝子配列決定方式に光学システムと塩基蛍光標識が一般に必要であり、遺伝子配列決定のコストが高くなる問題に鑑みて、簡単な構造であり、遺伝子配列決定のコストの低減に有利な遺伝子配列決定構造を提供する。
【0029】
本開示の一実施例によれば、遺伝子配列決定構造は、互いに離間される第1の電極と第2の電極、半導体層、絶縁層、センス電極、および感応膜層を含む。前記第1の電極は前記半導体層を介して前記第2の電極に接続され、前記センス電極と前記感応膜層は前記絶縁層に接触し、前記絶縁層は前記感応膜層と前記センス電極とのそれぞれを前記第1の電極と、前記第2の電極と、前記半導体層とのそれぞれとを離隔する。前記感応膜層は、遺伝子配列決定における塩基配対によって発生するイオンを接受することに応じて電荷を発生させるように構成される。
【0030】
本開示の実施形態によって提供される遺伝子配列決定構造は、遺伝子テストチップまたは遺伝子テスト素子中の最小の機能ユニットであるとよい。遺伝子配列決定において、対応するイオンが一般的に生じる。例えば、サンプルの遺伝子が添加されたヌクレオチドと配対するとき、水素イオンを放出することができ、これら水素イオンが感応膜層の表面に電荷を誘導してセンス電極上に電位を発生させることができる。センス電極の電位がない場合、遺伝子テスト構造における(P型ドープ半導体とN型ドープ半導体を含む)半導体層は実質的に非導電状態にあり、センス電極が遺伝子配列決定において発生するイオンを接受することに応じて電位を有するとき、当該電位の影響で半導体層を導電させることができる。このとき、第1の電極と第2の電極とにテスト信号を加えることにより、半導体層がセンス電極の電位の影響を受けて導電されることを検出でき、サンプル遺伝子が添加されたヌクレオチドと配対したと判断し、遺伝子テストを達成する。
【0031】
以下、本開示の実施例によって提供される遺伝子配列決定構造について、具体例を挙げて詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、遺伝子配列決定構造は、離間して配置される第1の電極2と第2の電極3と、第1の電極2と第2の電極3にそれぞれ接触して第1の電極と第2の電極3とを接続する半導体層4と、半導体層4の第1の電極と第2の電極から離れた側に配置される絶縁層5と、絶縁層5の上に配置され、塩基配対によって発生するイオンを接受することに応じて電荷を発生させる感応材料を少なくとも含む感応膜層7と、を含む。遺伝子配列決定構造は、感応膜層7と接触すると共に絶縁層5を介して第1の電極、第2の電極、および半導体層から離隔されるセンス電極6をさらに含む。センス電極6は、絶縁層5の第1の電極と第2の電極から離れた側に配置されてもよい。
【0033】
遺伝子配列決定構造は、ガラス基板1の上に全体的に配置して、遺伝子配列決定構造における感応膜層7により塩基配対を検出することができ、遺伝子配列決定構造が簡単になり、遺伝子配列決定のコストを低減するのに有利である。
【0034】
図1の例では、遺伝子配列決定構造は、感応膜層7の上に位置する微孔層8をさらに含んでもよい。微孔層8に遺伝子配列決定で使用される原材料を収容するための微孔9が形成されている。微孔9の底面は感応膜層7の上面になる。これにより、遺伝子配列決定を行うとき、微孔9にサンプル遺伝子や各種ヌクレオチドなどの遺伝子配列決定に用いられる原料を添加することができる。
【0035】
いくつかの実施例では、第1の電極2と第2の電極3は同じ形状を有し、互いに鏡面対称である。ここで、第1の電極2と第2の電極3は同じ構造と機能を有するため、遺伝子配列決定を行う際に機能を区別する必要がなく、テストに便利である。
【0036】
いくつかの実施例では、図2に示すように、第1の電極2と第2の電極3の水平面に平行な断面形状がL字形であり、第1の電極2と第2の電極3のL字形の断面の開口部が互いに対向して配置される。このようにして、遺伝子テスト構造からテスト信号を加えるためのテスト線を導出することが便利になる。
【0037】
半導体層4は、a-Si材料やポリシリコン材料等を含んでいてもよく、半導体層4は、正方形、長方形、円形のいずれかの断面形状を有し、感応膜層上のイオンの存在を検出することに利するようになる。勿論、遺伝子配列決定構造における半導体層4の断面形状は、他の形状であってもよく、本明細書の例に限定されない。図1および図2に示す遺伝子配列決定構造において、第1の電極2、第2の電極3、センス電極6および半導体層4は、トップゲート型の薄膜トランジスタと同様の構造を形成し、半導体層4が適当に導電性チャネルを形成することができる。例えば、感応膜層が遺伝子配列決定に発生したイオンを接受することに応じて電荷を発生させ、センス電極に電位が発生すると、半導体層4が導電状態になり、第1の電極2、半導体層4及び第2の電極3が導電性回路を形成することができる。
【0038】
いくつかの実施例では、センス電極6の水平面に平行な断面形状は、半導体層4の水平面に平行な断面形状と同じであり、半導体層4の水平面上の正投影は、センス電極6の水平面上の正投影内に収まる。すなわち、センス電極6の水平面上の正投影面積は、半導体層4の水平面上の正投影面積以上であってもよい。これにより、遺伝子配列決定構造の製作においてセンス電極6と半導体層4との位置合わせにわずかなずれがあっても、センス電極6により半導体層4をできるだけ覆うことができ、半導体層4の機能を十分に発揮し、最もよいテスト結果を得るようになる。
【0039】
いくつかの本実施例では、感応膜層7を形成する材料は、水素イオン(H+)に敏感なもの、すなわち、水素イオンを接受することに応じて電荷を発生させるものを含むが、本発明は、塩基配対に発生するイオンをセンスしてから電圧を変化させるほかの感応材料により感応膜層を形成することを排除するものではない。一例では、感応膜層7は窒化シリコンを含む。
【0040】
図1の例では、遺伝子配列決定構造の上部に微孔9が規則的にエッチングされる。微孔層8の微孔9はマイクロメートルオーダーであり、微孔9のサイズの範囲は1〜100μmである。微孔の形状は、本明細書に限定されず、微孔のサイズは、微孔のエッジ上の各点の間の最大距離を指すものである。
【0041】
実施例では、第1の電極2と第2の電極3の端部には、テスト信号を導入するように接続線がそれぞれ設けられている。すなわち、第1の電極2と第2の電極3は、テスト線に接続され、テスト線を介して外部のテスト機器に接続される。実施例では、第1の電極2と第2の電極3とは、金属リードを用いてテストパッド(pad)にそれぞれ接続され、テスト電気信号は、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit,略語FPC)を用いて加えられてもよいし、直接に設備プローブを用いて加えられてもよい。
【0042】
上記の実施例で説明された遺伝子配列決定構造に基づいて、塩基配対が発生すると、感応膜層にイオン(例えばH+)を放出させることができ、感応膜層はH+の存在をセンスしてから電荷を発生させ、センス電極の電位を変化させ、その時点で半導体層の導電性能が変化される(非導電性から導電性に変化される)。これにより、第1の電極と第2の電極の回路に電流の変化が生じるか否かに基づいて、塩基配対の有無を判定することができる。
【0043】
遺伝子配列決定構造によって塩基配対の検出を行う場合、デオキシリボヌクレオチドが蛍光標識を必要としなく、レーザー光源および光学システムも必要としない。そして、該遺伝子配列決定構造は、薄膜トランジスタの製造プロセスによって製作できる。したがって、遺伝子配列決定のコストおよび遺伝子配列決定製品の製作コストは低くなる。
本開示の別の実施例は、上述の実施例のいずれか1つに記載の複数の遺伝子配列決定構造を含む遺伝子配列決定チップを提供する。該遺伝子配列決定チップは、感応膜層を用いて塩基配対を検出するので、遺伝子配列決定チップの構造は簡単になり、遺伝子配列決定のコストは低減される。
【0044】
図3に示すように、いくつかの実施例では、複数の遺伝子配列決定構造101は、ガラス基板にアレイとして配置されている。複数の遺伝子配列決定構造101は、ガラス基板の上に均一に分布してもいい。勿論、複数の遺伝子配列決定構造101は、他の方式で分布してもよく、本明細書に限定されない。
【0045】
複数の遺伝子配列決定構造101を有する遺伝子テストチップの実施例では、同じ行または同じ列に位置する遺伝子配列決定構造101の第1の電極2の接続線102は遺伝子配列決定構造のアレイの周辺にある第1のテストパッドにそれぞれ接続され、同じ行または同じ列に位置する遺伝子配列決定構造101の第2の電極3の接続線102は遺伝子配列決定構造のアレイの周辺にある第2のテストパッドにそれぞれ接続される。外部の測定機器は、第1のテストパッドおよび第2のテストパッドを介して、第1の電極または第2の電極にテスト電気信号を加えることができる。このようにして、遺伝子配列決定チップのスペースを減らし、最も良いテスト効率を得ることに利する。
【0046】
本開示のさらに別の実施例は、遺伝子配列決定の時間およびコストを大幅に低減し、遺伝子配列決定の効率を改善することができる遺伝子配列決定システムを提供する。
【0047】
該遺伝子配列決定システムは、遺伝子配列決定チップおよび遺伝子配列決定チップに取り外し可能に接続されるテスト機器を含み、遺伝子配列決定チップは、上記実施例に記載の遺伝子配列決定チップとすることができる。
【0048】
テスト機器は、フレキシブルプリント基板を介して遺伝子配列決定チップの第1の電極と第2の電極にテスト信号を加え、またはテスト機器のプローブによって遺伝子配列決定チップの第1の電極と第2の電極にテスト信号を加えることができる。ここで、信号を加える方式は、本開示の実施例によって制限されない。
【0049】
本開示の実施例は、遺伝子配列決定構造に基づく遺伝子配列決定方法をさらに提供する。該方法は、本開示の上述の実施例に記載の遺伝子配列決定構造に基づき、遺伝子配列決定のコストが大幅に低減されるようになる。
【0050】
図4に示すように、遺伝子配列決定方法は、以下のステップを含む。
【0051】
ステップS1):検出すべきDNA一本鎖を微孔の底部に置く。図5(A)に示すように、検出すべきDNA一本鎖10は微孔9の底部に固定されている。
【0052】
ステップS2):第1の電極または第2の電極に電圧を加える。例えば、第1の電極2に0.5〜20Vの電圧を加えてもよい。感応膜層に電荷を発生させない場合、半導体層4は実質的に絶縁状態にあり、第1の電極2と第2の電極3との間の電流はほぼゼロである。センス電極6が電位を有する場合、半導体層4の導電性能が大幅に向上し、このとき、第1の電極2と第2の電極3との間に一定の電流を検出することができる。
【0053】
ステップS3):微孔に4種類のデオキシリボヌクレオチドを順次に添加する。
DNA配列決定を行うとき、微孔にA、T、C、Gの4種類の配対塩基11を順次に添加してもよい。その中で、A、T、C、GはDNA鎖中の4種類のヌクレオチドであり、Aはアデニンであり、Tはチミンであり、Cはシトシンであり、Gはグアニンである。
【0054】
ステップS4):第1の電極、半導体層及び第2の電極を含む回路に電流が生じるか否かを検出し、電流が生じるときに添加されたデオキシリボヌクレオチドにより検出すべきDNA一本鎖上の塩基型を決定する。
【0055】
一例では、図5Bに示すように、配対塩基11と検出すべきDNA鎖10との間に配対反応が起こるとき、水素イオン(H+)が放出され、微孔9のpH値が変化される。微孔9の底部の感応膜層7は、このような変化をセンスすると、電荷を発生させて、センス電極6の電位の上昇を引き起こす。センス電極6の電位が上昇した後、半導体層4の導電性能が変化され(例えば絶縁状態から導電状態になり)、第1の電極2と第2の電極3との間に外部から電圧が加えられる場合、第1の電極、半導体層及び第2の電極の回路に電流が発生する。したがって、電流の変化が検出されると、塩基配対反応が起こったと判断し、未知のDNA配列を検出することができる。
【0056】
本発明の実施例によって提供される遺伝子配列決定システム及び対応する遺伝子配列決定方法において、塩基の蛍光標識が必要ではなく、複雑なレーザー光源及び光学システムも必要ではなく、配列決定の時間及びコストを大幅に低減し、効率を改善しながら配列決定のための設備を簡単化することができる。
【0057】
上記実施例は、本開示の原理を説明するための例示的な実施形態であり、本願発明はそのままの構成に限定されないことと理解されるであろう。当業者にとって、本開示の要旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変を行うことができる。これら変更及び改変も本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0058】
当業者は、図面、開示内容及び特許請求の範囲を検討することにより、特許請求の範囲に係る発明を実施するとき、開示された実施例に対する他の変形態様も理解し実施できる。請求項において、「含む」という用語は、他の素子又はステップを排除するものではない。また、「a」又は「an」という不定冠詞は、複数形を排除するものではない。特定の特徴が相互に異なる従属請求項に記載されていても、本願発明はこれらの特徴の組み合わせを含む実施例に係る。特許請求の範囲内の符号は限定的であると解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラス基板
2 第1の電極
3 第2の電極
4 半導体層
5 絶縁層
6 センス電極
7 感応膜層
8 微孔層
9 微孔
10 鎖
10 一本鎖
11 配対塩基
101 遺伝子配列決定構造
102 接続線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B