【実施例1】
【0016】
図1は本発明の金融取引サービスシステム12の概略図である。
図2はサービス機関14や金融機関(送金側)16の具体的な機能ブロック図である。
図に示すように、銀行を含む任意の金融機関とネットワークを通じて接続して、金融取引サービスを提供するために、サービス機関14が設けられている。サービス機関14は、利用者24に対して通常のネットバンキングサービスを提供するとともに、金融機関(送金側)16にある利用者24の口座から金融機関(出金側)20に振込をさせて現金を出金させるといったサービスを提供する。
【0017】
図の例では、サービス機関14にはオープンAPI18を介して任意の多数の金融機関(送金側)16が接続されている。また、サービス機関14にはIBネットワーク22を介して金融機関(出金側)20が接続されている。なお、
図1に示したネットワークは、いずれもセキュリティの高い任意の閉域ネットワークあるいは広域ネットワークでよい。
【0018】
図1に示すように、金融機関(出金側)20の管理コンピュータ19は、預貯金の入出金取引を実行する自社のATM32とATMネットワーク21を介して接続されている。この例では、サービス機関14は、金融機関(出金側)20のATM32の監視サービスを提供している。
【0019】
サービス機関14の管理コンピュータ15は、IBネットワーク22を介してATM32と通信を行い、ATM32の一部の動作を直接制御することができる。このサービス機関14が監視サービスを提供する金融機関は、この金融機関(出金側)20以外に任意の数あって構わない。
【0020】
図2に示した通り、サービス機関14の管理コンピュータ15には、バンキング処理手段36と現金引き出し処理制御手段38と振込制御手段40と出金管理手段42と認証コード生成手段48といった、機能処理プログラムモジュールが組み込まれている。また、金融機関(送金側)16の管理コンピュータ17には、預金者の預金口座30と口座情報46とが記憶されている。
【0021】
認証コード生成手段48が生成する認証コードは、出金処理で認証に使用されるものである。認証コードは、インターネットバンキング処理中に自動的に生成される任意の記号や番号等である。認証コードは利用者24が入力して決めたものでも構わない。
【0022】
図2において、サービス機関14のバンキング処理手段36は、サービス機関14に接続された金融機関(送金側)16等に自己の預金口座30を持つ利用者24に対して、ネットバンキングサービスを提供する機能を持つ。即ち、サービス機関14は、地方銀行等の様々な金融機関のために広くネットバンキングサービスを提供することで、これらの金融機関のシステム負荷を軽減するサービスを提供している。
【0023】
現金引き出し処理制御手段38は、利用者24が上記の自己の預金口座30から希望する金額の現金引き出し処理をしたとき、利用者24に対して、その現金の引き出しに利用する金融機関の指定を求める機能を持つ。図の例では、利用者24は、ATM32を備えた金融機関(出金側)20を指定する。この金融機関(出金側)20は、金融機関(送金側)16と提携をしていない銀行等である。
【0024】
振込制御手段40は、上記の現金引き出し処理が正常に終了したときには、金融機関(送金側)16に、上記の利用者24の預金口座30から、現金の引き出しに利用する指定された金融機関(出金側)20の専用口座44に対して、指定された金額の振込を要求する機能を持つ。金融機関(送金側)16は、金融機関(出金側)20の専用口座44への振込電文に、利用者の口座情報と認証コードとを含める。
【0025】
出金管理手段42は、利用者の携帯端末装置26に対して上記専用口座への振込が正常に完了した旨の通知と認証コードを送信する機能を持つ。なお、従来より、金融機関には送金先や取扱が未定の入金を受け付けることができる専用口座が設けられている。この専用口座を振込先に利用することで、金融機関の既存のシステムを変更することなく本発明を実現できる。
【0026】
引き出し操作をして送金を依頼するのは、携帯端末を使用していつどこで行っても構わない。例えば、家を出る前に引き出し操作をして、その後目的のATMのある金融機関を訪れて出金操作をすることができる。利用者が、金融機関(出金側)20のATM32を使用して出金をするときに、利用者24の携帯端末装置26からサービス機関14に対して出金要求が送信されたとき、出金管理手段42は、金融機関(出金側)20を通じてATM32に対して出金処理の依頼を送信する機能を持つ。
【0027】
(フローチャート)
図3は上記のシステムの処理動作フローチャートである。
図1中には上記のシステムにおける送受信処理の内容を示した。
図3は、その動作手順をフローチャートで表したものである。このフローチャートにより、処理動作を説明する。
【0028】
まず、ステップS1では、利用者24が携帯端末装置26を操作してサービス機関14に接続をして、現金引き出しのための振込依頼をする。ステップS2では、サービス機関14からオープンAPI18を経由して、金融機関(送金側)16に対して振込指図を送信する。
【0029】
ステップS3では、金融機関(送金側)16が銀行間ネットワーク23を経由して金融機関(出金側)20の専用口座44に対して振込処理を実行する。ステップS4では、金融機関(送金側)16がオープンAPI18を経由してサービス機関14に対して振込指図の結果報告をする。これを受けてサービス機関14は、ステップS5で、携帯端末装置26に対して振込結果の報告をする。
【0030】
次に、ステップS6で、利用者24はATM32の前で、携帯端末装置26を操作してサービス機関14に対して出金要求をする。これに応じてサービス機関14が、ステップS7で、IBネットワーク22を経由して金融機関(出金側)20に対して振込支払依頼をする。このとき振込支払依頼には、口座番号や認証コード等のATM出金情報が付加される。
【0031】
ステップS8では、金融機関(出金側)20の管理コンピュータ19がATM32に対して出金処理の依頼をする。ステップS9では、ATM32が出金応答と出金処理をする。
【0032】
(シーケンス)
図4は、上記の処理のシーケンスを示す説明図である。
上記のシステムで、サービス機関14が本発明のようなビジネスをするには、できるだけ多くの金融機関と、様々なネットワークを通じて接続して、金融取引サービスを提供することが好ましい。このサービスにより、利用者24は、預貯金を安価な手数料で、どこのATM32からでも引き出せる。
【0033】
利用者24のスマートフォン等の携帯端末装置26には、専用のアプリをインストールしておく。このアプリを起動すると、サービス機関14を経由してネットワークを通じて利用者24の預金口座30のある金融機関(送金側)16にログインできる。通常どおり本人確認処理を行えば、バンキング処理手段36の制御により、ネットバンキング等の処理ができる。
【0034】
しかし、ネットバンキングだけでは現金の引き出しができない。しかも、利用者24の預金口座30のある金融機関(送金側)16が遠方にある場合には、利用者24が手軽にその金融機関(送金側)16のATM32を利用できない。こうした場合に、利用者24は次のようにして、サービス機関14と提携している最寄りの金融機関(出金側)20のATM32を利用することができる。
【0035】
なお上記のアプリはサービス機関14がクラウドコンピューテイングサービスにより提供することができる。従ってサービス機関14の管理コンピュータ15が上記の処理を制御することになる。
【0036】
図4には、上から下に向かってその処理の経過を順に示した。さらに各処理で送受信されるデータを示した。利用者24は、まず、携帯端末装置26のアプリを操作して、自己の預金口座30から希望する金額の現金引き出し処理をする。この現金引き出し処理で、利用者24は口座情報を入力し、その現金の引き出しに利用する金融機関を指定する。既に利用者24が操作したいATM32の前にいるときは、そのATM32を特定する識別コード(機械番号等)などを送信すれば、自動的に利用する金融機関を指定できる。
【0037】
即ち、携帯端末装置26の操作画面で出金金額と金融機関の指定を要求して、その入力を受け付けると、金融取引サービスシステム12の現金引き出し処理制御手段38は、ネットワークを通じて金融機関(送金側)16に接続をして、該当する預金口座が存在し、かつ、正常に現金引き出し処理が可能かどうかを判断する。
【0038】
金融機関(送金側)16からの正常応答により正常に現金引き出し処理が可能と判断されると、振込制御手段40が、利用者24の預金口座30から、該当する金融機関(出金側)20の専用口座44に対して、指定された金額の振込をするように振込指図をする。
【0039】
このとき、振込と同時に、該当する金融機関(出金側)20に送信される通信電文には、利用者24の口座情報46と上記の認証コードとが含められる。利用者24の携帯端末装置26にも、振込処理が完了した旨のメッセージと認証コードが送信される。
【0040】
認証コードは、出金処理のためだけにサービス機関14あるいは金融機関(送金側)16により一時的に発行されるもので、振込結果が真正なもので、口座情報46で特定される利用者に対して出金処理がされるべきものであることを保証するデータである。出金処理のときには予め利用者の本人確認処理を行う。認証データはこの処理に使用される。
【0041】
金融機関(送金側)16からの振込処理が正常に完了すると、金融機関(送金側)16からサービス機関14に対して、該当する金額の利用者24の指定した金融機関(出金側)20の専用口座44への振込の完了情報と、認証コードとを通知する。
【0042】
サービス機関14の振込制御手段40は、利用者24の携帯端末装置26の操作画面に、該当する金額が利用者24の指定した金融機関(出金側)20の専用口座44に振込された旨と、その引き出し処理に必要な認証コードを表示する。
【0043】
図4の例では、利用者はその後、携帯端末装置26を操作して、サービス機関14に対して出金処理を要求する。サービス機関14は、金融機関(出金側)20に対して、該当する振込みについて口座情報を送信し、利用者への支払依頼をする。金融機関(出金側)20は専用口座44への入金記録と電文を参照して、該当する口座から振込みのあったことを確認する。その後金融機関(出金側)20はATM32を通じて、認証コードを用いて利用者の本人確認処理を実行する。本人確認ができれば出金処理を実行する。
【実施例2】
【0044】
図5は、銀行カードを使用した出金処理例を示している。
金融機関(送金側)16に対する処理は
図4の例と変わらない。利用者がATM32に対して銀行カードを投入すると、銀行カードから読み取られた口座情報がATM32から金融機関(出金側)20に送信される。金融機関(出金側)20は専用口座44への入金記録と電文を参照して、該当する口座から振込みのあったことを確認する。
【0045】
金融機関(出金側)20はATM32を通じて、認証コードを用いて利用者の本人確認処理を実行する。その後の処理は
図4の例と同様である。銀行カードは、利用者24の預金口座30のある金融機関が発行したものである。このときは、ATM32の操作画面により、利用者に認証コードの入力を求めることができる。その後の出金のための操作にも、ATM32の操作画面を使用することが可能である。
【0046】
図5に示すように、銀行カードだけでなく、携帯端末装置26とATM32とを直接近接通信等で接続して、口座情報の入力と本人確認ができる。従来から、セキュリティの高いSMSを利用し、本人の携帯電話からの応答を受けて本人確認を行う方法も多用されている。例えば、携帯端末装置26からATM32に口座情報を入力すると、ATM32は、例えば、認証コードに含まれた携帯電話番号を使用して、SMSで携帯端末装置26に発信し使用者の本人確認をすることもできる。また、携帯電話番号を使用した本人確認をサービス機関14に依頼することもできる。
【0047】
なお、認証コードが専用口座44への入金記録や電文に含まれていれば、金融機関(出金側)20は、利用者の携帯端末装置26やATM32の操作画面から入力された認証コードと、入金記録や電文を照合するだけでよい。従って、サービス機関14に認証コードを記憶させておく必要は無い。
【0048】
一方、金融機関(送金側)16から金融機関(出金側)20の専用口座44への振込処理時に、金融機関(出金側)20へ認証コードを送信せずに、サービス機関14にのみ記憶させておいて、ATM32からサービス機関14に照合依頼をするようにしてもよい。
【0049】
上記のような認証コードの発生や本人確認等の機能をサービス機関14側に設けることにより、金融機関(送金側)16も金融機関(出金側)20も、既存の金融システムの改変を極力少なくして新たなサービスの拡大が可能になる。専用口座を利用したことも併せて、金融機関の金融システムに負荷をかけすに新たなサービスを開始できる。
【0050】
また、銀行カードを使用する場合には、ATM32が、サービス機関14の出金管理手段42に照会を求めたとき、その応答により、サービス機関14から、利用者24の口座情報と認証コードが金融機関(出金側)20に通知されてもよい。
【0051】
ATM32が、利用者24の銀行カードを読み取って取得した口座情報46を用いて、該当する利用者24の預金口座30のある金融機関(送金側)16と直接通信をして、該当する口座の存在を確認しても構わない。
【0052】
以上の方法によれば、利用者24の預金口座30がある金融機関(送金側)16と提携をしていない金融機関(出金側)20のATM32を使って預金の現金化をすることができる。小規模な銀行等は、このシステムを利用することによって、広く利用者24の便宜を図ることができる。
【0053】
また、このシステムによる現金の引き出し手数料を、既存のATM相互利用システムを採用するよりも安価に設定しておけば、利用者24の便宜を図ることができる。
【0054】
金融機関(送金側)16は正常に現金引き出し処理がされて、振込が完了すれば、その後の出金処理の結果を監視する必要はない。即ち、振込み処理以後の管理は不要である。また、金融機関(出金側)20は、振込まれた金額を出金すればよいから、その結果を金融機関(送金側)16に報告する必要がない。従って、双方の金融機関の処理負荷が小さいという効果がある。
【0055】
さらに、金融機関(出金側)20は、サービス機関14を利用して上記のようなサービスを実現できるから、低コストでATM32の利用拡大を図ることができる。こうして、多くの金融機関がそれぞれ相互にATM32を共同利用して設備コストや管理コストの低減を図ることができる。
【実施例4】
【0060】
図7は、電子マネーのチャージのためのシーケンス説明図である。
上記のように、本発明のシステムでは、利用者が自己の銀行口座に預けられている現金を、その銀行以外の、例えばその銀行とは提携関係の無い銀行のATMから簡単に引き出せるようにしている。そのために、これらの金融機関とは独立した、広く多数の金融機関とネットワークを通じて接続して金融サービスを提供するサービス機関14を設けている。
【0061】
このシステムは、利用者の携帯端末装置26への電子マネーのチャージにも利用できる。
図7に示すように、サービス機関14が、電子マネー管理機関50とも、ネットワークを通じて接続されていればよい。即ち、あらかじめ、利用者は金融機関(送金側)16の自己の銀行口座から、電子マネー管理機関50に対して、チャージに必要な金額の振込を依頼する。この手順は実施例1等と同様である。
【0062】
電子マネー管理機関50の専用口座に振込がされていることの確認を、サービス機関14が確認して支援する。利用者は、電子マネー管理機関50が運用する電子マネーのチャージ機52を使用して、携帯端末装置26に電子マネーをチャージできる。なお、ATMに電子マネーのチャージ機能があれば、ATMもチャージ機52として利用できる。
【0063】
具体的には、
図7に示すように、始めに利用者が上記の自己の預金口座から希望する金額の現金引き出し処理をしたとき、サービス機関14の現金引き出し処理制御手段38(
図2)が、その現金の金額に相当する電子マネーを管理する電子マネー管理機関50の指定を求める。
【0064】
そして、口座の存在確認処理を経て現金引き出し処理が正常に終了したとき、サービス機関14の振込制御手段40(
図2)は、上記の利用者の預金口座から、電子マネー管理機関50の専用口座に対して、指定された金額の振込指図をする。なお、電子マネー管理機関50もここでは広義の金融機関に含めている。また、この電子マネー管理機関50にも、取り扱いが未定の専用口座が設けられているものとする。
【0065】
金融機関(送金側)16に電子マネー管理機関50の口座が無いような場合でも、サービス機関14の制御により、電子マネー管理機関50の専用口座への振込で、目的を達成できる。振込記録と電文には認証コードを含めておく。この場合も、電子マネー管理機関50に、チャージ先や取扱が未定の入金を受け付けることができる専用口座が設けられていれば、既存のシステムをそのまま利用して、新しいサービスが開始できる。
【0066】
利用者が電子マネー管理機関50にチャージ要求をするときは、チャージをするカードか、あるいは携帯端末装置26から、チャージ要求と認証コードとをチャージ機52に送信する。電子マネー管理機関50はこの情報を取得して専用口座への振込みを確認後、チャージ機にチャージ依頼をする。チャージ機は認証コードの入力を要求して本人確認処理を実行する。これで利用者のカードや携帯端末装置へのチャージが出来る。その他の処理は他の実施例と同様である。