【実施例】
【0034】
実施例1:顆粒内製剤の評価
[0050] 「顆粒内」は、上記成分が乾燥顆粒構造内に見出されることを意味する。「顆粒外」は、該材料が顆粒構造の外側に存することを意味する。表1は、すでに評価された顆粒内製剤を要約する。製剤1と製剤2は、最良と最悪の製剤例シナリオであって、製剤1は、純度100%のカンシル酸ルカパリブAPIであって、製剤2は、120mgA製剤を製造するために使用される。製剤3と製剤4を設計したのは、延性充填剤と脆性充填剤の様々なレベルに注目するためであって、製剤5では、負荷の影響について評価するために錠剤サイズを増やした。製剤3〜製剤5には、いずれもコロイド状二酸化ケイ素(Cab−O−Sil)を加えて、この顆粒内混和物の流動性を促進した。
【0035】
表1.顆粒内製剤
【0036】
【表1】
【0037】
[0051]
図1は、所与の圧縮応力に対して到達可能な引張強度に注目した、各製剤の関係を示す。ロータリー式タブレットプレスでの正常範囲内とみなされる最大許容力は、ほぼ250MPaである。錠剤についての一般的な目標引張強度は、2MPaであり;そのような錠剤は、一般に、低い摩損度を有して、下流の取扱い及びフィルムコーティングに適している。従って、所与の製剤を250MPa未満の圧縮応力で2MPaの引張強度まで圧縮することができれば、それは、許容される圧縮性を有するとみなされる。製剤3〜製剤5は、許容される圧縮性を有して、API単独に優る改善製剤であった。圧縮性が許容された諸製剤を製造することが可能である場合、好ましいのは、目標の引張強度を達成することが依然として可能である一方で、より低い圧縮力を維持することである。なぜなら、それにより、API、原料、及び環境変化への頑健性(robustness)が提供され、打錠機器及び設備をより長持ちさせるからである。製剤3〜製剤5は、この均衡を達成する。
【0038】
[0052]
図2と
図3は、カンシル酸ルカパリブの製剤の固相率に関する情報を提供する。流体が錠剤の中へ有効に移動して崩壊を活性化するための機会を有するような有効空隙率を錠剤が有することを確実にすることが重要である。検査したすべての製剤が、目標の引張強度に対して許容される固相率を有して、APIと賦形剤を含有する錠剤の範囲内にある。
【0039】
実施例2:高投与量製剤の崩壊及び溶解
[0053] 製剤3〜製剤5由来の錠剤の小スケールバッチを製造して、崩壊と溶解について検査した。該錠剤は、小スケールのスラッギングベースの乾燥造粒法と錠剤圧縮技術を
使用して作製した。最終錠剤の圧縮性に対する潜在的な影響を最小にするために、ほぼ0.3MPaという比較的低い引張強度でスラグを圧密化し、乳鉢/乳棒と20メッシュ篩い技術を使用して粉砕して、顆粒外賦形剤として添加する0.5% Cab−O−Sil及び0.25%ステアリン酸マグネシウムと最終混和した。表2は、錠剤へ製造した製剤と対応する引張強度及び硬度の要約である。
【0040】
表2.引張強度と硬度の相関性を評価した製剤
【0041】
【表2】
【0042】
[0054] 表3は、0.01N HCl(pH=2.0)を崩壊媒体としたUSP崩壊装置からの崩壊結果を示す。
図4は、USP II型溶解装置において実施した、錠剤製剤3〜錠剤製剤5についての溶解結果グラフを示す。溶解条件は:0.01N HCl(pH=2.0)、USP IIパドル法、75rpm(Japanese Sinkers)である。製剤3〜製剤5は、迅速かつ完全に崩壊して溶解した。表4は、15分、30分、及び60分での表形式の溶解結果を示す。
【0043】
表3.製剤3〜製剤5の崩壊結果(USP崩壊装置、0.01N HCl(pH=2.0)媒体)。
【0044】
【表3】
【0045】
表4.製剤3〜製剤5の溶解百分率
【0046】
【表4】
【0047】
実施例3:最終錠剤混和物及びフィードフレーム試料の粒径分布
[0055]
図5は、製剤4の300mg最終錠剤混和物とフィードフレーム試料(最終作業時)の粒径分布を示す。この粒径分布は、材料の取扱いとフローに望ましい。錠剤プレスのフィードフレームは、加工処理の間に、最終混和物の粒径を著しくは変化させなかった。
【0048】
実施例4:圧縮性に対する滑沢剤レベルの影響
[0056]
図6A〜
図6Cは、顆粒内ステアリン酸マグネシウムレベルの評価を示す。多様なレベルのステアリン酸マグネシウムとともに作製された顆粒内混和物の圧縮プロフィールは、いずれも許容される挙動を有する。実線のボックスは、ローラー圧密化に典型的な目標引張強度の範囲と、相関する圧縮応力及び固相率を表す。点線のボックスは、打錠に典型的な目標引張強度の範囲と、相関する圧縮応力及び固相率を表す。ステアリン酸マグネシウムのレベルが異なるいずれの顆粒内混和物も、150MPa未満の圧縮応力で、許容される達成可能な引張強度値を有す。
【0049】
実施例5:錠剤Aの製法
[0057] 表6〜表8の条件を使用して、表5の処方に従って、10kgバッチを作製した。この混和物を、表6に収載したパラメータを使用して、Gerteis Mini Pactor でのローラー圧密によって圧密化した。次いで、表7に収載したパラメータを使用して、この圧密化された混和物を造粒した。次いで、表8に収載したパラメータを使用して、この造粒された混和物を錠剤プレスで約700mgの目標重量へ打錠した。
【0050】
表5.錠剤Aの組成
【0051】
【表5】
【0052】
表6
【0053】
【表6】
【0054】
表7
【0055】
【表7】
【0056】
表8
【0057】
【表8】
【0058】
実施例6:ルカパリブのカンシル酸塩とマレイン酸塩の錠剤圧縮特性を評価すること
[0058] 低用量のルカパリブ錠剤を用いた試験は、カンシル酸ルカパリブとマレイン酸ルカパリブが固体剤形において有用であり得る物理化学特性の組合せを保有することを示した。しかしながら、かつての研究では、32% APIより高い用量負荷は、不可能ではないとしても、達成することが難しいと示唆されてきた。本実施例は、高API負荷錠剤の製造のための乾燥造粒法に関する圧縮特性について、ルカパリブのカンシル酸塩とマレイン酸塩を評価するものである。その目的は、乾燥造粒錠剤の圧縮のための高用量形態(formats)に適した特性のあるルカパリブの塩型を同定することであった。
【0059】
[0059] 異なる製剤(及び異なるAPI塩)の圧縮性評価を判断するための最も適切で広く受容されているアプローチは、圧密化シミュレータを使用して、圧縮応力、固相率、及び引張強度の相互関連性を測定することによる。これらのパラメータは、圧縮性、打錠性、及び圧密性のプロフィール(即ち、CTCプロフィール)と言及される関連性のセットにおいて相互に関連している(Tye, Sun, Amidon, J. Pharm. Sci, 94: 465-472 (2005
))。
【0060】
[0060] 最終混和物ではなくて顆粒内混和物に注目したのは、ほとんどすべてのリード製剤が乾燥造粒により処理されて、顆粒外にあるものはごく一部でしかないからである。加えて、小スケールでの顆粒外潤滑化工程は、下流のパイロット加工処理も業務用加工処理も代表せず、固有の圧縮特性を覆い隠す危険性がある。それぞれの塩型の提供ロットについて、100%、90%、75%、及び60%の最終錠剤製剤で製剤を評価した(このことは、100%、90.68%、75.57%、及び60.45%の顆粒内成分に相関する)。
【0061】
[0061] 表10は、評価した製剤を要約する。ルカパリブの2つの塩型を、それぞれにつき純粋なAPIについて検査した1つの製剤を含めて、APIの様々な負荷で評価した。
【0062】
[0062] 線鋸ひずみ(linear sawtooth strain)プロフィールを5mm/秒の速度で使用して、四分円平面型の100mg圧密体(compacts)を、ローラー圧密化と打錠圧縮の応力範囲(例えば、約240MPaまで)が含まれる4つの予めプログラムされたピーク力まで同一3検体で圧縮する(Texture Technologies モデル、TA.XT Plus Texture Analyzer)ことによって、各APIと各製剤のCTCプロフィールを決定した。次いで、この圧密体について、物理的寸法、重量、及び硬度を評価した。これらのデータと測定した真の密度(Micromeritics Accypyc 1340 ヘリウム比重瓶)より、圧縮応力、引張強度、及び固相率の値を計算して、それぞれのCTCプロフィールを作成した。
【0063】
[0063] 市販のロータリー式タブレットプレスの正常範囲内とみなされる最大許容圧縮力は、ほぼ250MPaである。同様に、錠剤についての典型的な目標引張強度は、2MPaであり;そのような錠剤は、一般に、低い摩損度を有して、下流の取扱い及びフィルムコーティングに適している。従って、所与の製剤を250MPa未満の圧縮応力で2MPaの引張強度まで圧縮することができれば、それは、許容される圧縮性を有するとみなされる。
【0064】
[0064] 塩圧縮性についての最も直接的な比較物は、賦形剤の無い純粋なAPIであろう。しかしながら、純粋なマレイン酸塩の圧密体は、生成することができなかった。ごく高い力で、そして減少された90%の負荷でも、圧密体を創出しようとする試みは、薄片が剥がれて覆いになって(capped)、それ故に、引張強度も他の圧密変数も評価することができない圧密体をもたらした。この結果は、マレイン酸塩のAPIがより高い負荷の錠剤製剤での圧縮へ適応し得ないことを初めて示したものである。驚くべきことに、カンシル酸塩のAPIは、純粋なAPIを含めて、評価したすべての製剤で良好な打錠特性を示す、良好な圧密体を生成した。
【0065】
[0065] 打錠性は、ロータリー式タブレットプレスで錠剤を生成する能力を例証するCTCプロフィールと最も直接的に関連するものである。
図7と表9は、予測される300mg(非塩ベース)錠剤力価(60%と75%のAPI負荷)についての2種の最も重要な製剤の打錠性(「圧縮応力」対「引張強度」)の比較を示す。
【0066】
表9 表形式のデータ
【0067】
【表9】
【0068】
[0066] カンシル酸塩製剤は、マレイン酸塩よりずっと低い圧縮力で、錠剤圧縮へ適応可能な(amendable)優れた引張強度値を示す。実際、マレイン酸塩製剤は、250MP
aでも、2MPaの目標引張強度に達しない;さらに、200MPaより高い所でこの曲線の漸近的なプラトーが出現することは、極端な圧縮力でも、許容される引張強度の錠剤が決して実現し得ないことを示唆する。別の言い方をすれば、マレイン酸塩の打錠性は、カンシル酸塩よりほぼ2〜2.5倍低くて、打錠に許容される閾値未満に該当する。従って、乾燥造粒打錠には、カンシル酸塩と比較した場合、実質的により低い負荷のマレイン酸塩製剤が必要とされるだろう。
【0069】
[0067] 60〜100%負荷したカンシル酸塩製剤のすべてが穏当な圧縮応力で少なくとも2.0MPaの達成可能な引張強度を示す(
図8を参照のこと)ので、打錠性の視点からは、すべての製剤が許容されるという一般的な結論を導くことができる。逆に、60〜100%マレイン酸塩製剤のいずれも、2.0MPaの引張強度を達成しなかった(
図7と
図11)。
【0070】
[0068] 図面8〜図面10に示すデータは、カンシル酸塩で分析した4つの製剤についてのCTCプロフィールである。同様に、
図11〜
図13に示すデータは、マレイン酸塩について分析することが可能であった3つの製剤についてのCTCプロフィールである。純粋なマレイン酸塩は、90%と100%のAPI製剤でインタクトな圧密体を生成し得ないことに基づいて、分析に適応し得なかった。
【0071】
[0069] 作成されたCTCプロフィールは、評価したカンシル酸塩が乾燥造粒法と錠剤圧縮法へ(マレイン酸塩)よりずっと適応可能であることを示す。付言すると、マレイン酸塩の圧縮性は、カンシル酸塩に劣るので、下流のコーティング、包装、及び/又は出荷工程のために十分な強度がある錠剤を入手するには、マレイン酸塩の薬物負荷を70%より高い目標から推定される50%未満へ減少させることが求められよう。
【0072】
[0070] 最後に、60〜100%にわたるカンシル酸塩API負荷に対するCTCプロフィールがAPI負荷に対してさほど影響されないことは、注目に値する。従って、ごく高負荷の(用量:錠剤サイズ比が高い)錠剤でも、圧縮性が制限要因になるはずはない。むしろ、300mgより多いカンシル酸ルカパリブの錠剤力価を可能にする上限は、おそらくは、崩壊性、溶解性、粉末の流動又は付着といった、他の品質又は加工属性であろう。
【0073】
表10 ルカパリブ塩型について評価した初期の顆粒内製剤
【0074】
【表10】