(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加熱媒体の蒸気を生成する吸収ヒートポンプでは、吸収器内を通過する被加熱媒体の流路中で液体が蒸発する際に発生する気泡によって、液位が大きく上昇する場合があり、被加熱媒体の蒸気の供給先に液滴が持ち出される場合があった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、被加熱媒体の蒸気の供給先に向けて被加熱媒体の液滴が持ち出されることを抑制する吸収ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルにより、導入した熱源hの熱を汲み上げて、被加熱媒体の蒸気Wvを生成する吸収ヒートポンプ1であって;吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収したときに生じた吸収熱で被加熱媒体Wqを加熱する吸収器10と;吸収器10において加熱された被加熱媒体Wmを導入し、導入した被加熱媒体Wmを蒸気Wvと液Wqとに分離する気液分離器80と;気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqを吸収器10に導く被加熱媒体液導入流路81、82と;気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqを直接又は間接的に吸収ヒートポンプ1の外に放出するブロー弁98と;気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqの液位を検出する液位検出器87と;気液分離器80に被加熱媒体の液Wqを直接又は間接的に供給する被加熱媒体液供給装置86と;被加熱媒体液供給装置86の起動及び停止、並びにブロー弁98の開閉を制御する制御装置90とを備え;制御装置90は、液位検出器87が高液位を検出した時間が第1の所定の時間継続したときに、気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqの液位が高液位未満のあらかじめ決められた排出停止液位に低下するまでブロー弁98を開にする。
【0007】
このように構成すると、気液分離器の内部の液位が上昇しすぎることを抑制することができ、被加熱媒体の蒸気の供給先に向けて被加熱媒体の液滴が持ち出されることを抑制することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、制御装置90は、ブロー弁98を開にしているときに、所定の間隔で第2の所定の時間ブロー弁98を閉にする。
【0009】
このように構成すると、ブロー弁に夾雑物が挟まった場合に夾雑物を除去することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、熱源hの熱で冷媒の液Vfを加熱して吸収器10に供給する冷媒の蒸気Veを生成する蒸発器20と;吸収器10において冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した吸収液Swを吸収器10から直接又は間接的に導入し、導入した吸収液Swを熱源hの熱で加熱して冷媒Vgを離脱させる再生器30とを備え;制御装置90は、吸収ヒートポンプ1の起動後、被加熱媒体液供給装置86を起動してから停止した回数が、第1の所定の回数以上の場合と第1の所定の回数未満の場合とで、又は、気液分離器80の内部の圧力及び温度、吸収器10の出口における吸収液wの温度及び濃度、再生器30の出口における吸収液Saの温度及び濃度、蒸発器20の内部の冷媒の温度、吸収器10の内部の圧力のうちの少なくとも1つの値又はこれと相関を有する値が所定の値に到達する前と到達した後とで、第1の所定の時間及び第2の所定の時間の少なくとも一方を変更する。
【0011】
このように構成すると、吸収ヒートポンプの状態に応じて適切にブロー弁の開閉操作を行うことができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプ1において、制御装置90は、被加熱媒体液供給装置86を起動してから停止した回数が第2の所定の回数に到達したときに、所定の条件を充足している間ブロー弁98を開にして、第2の所定の回数についての被加熱媒体液供給装置86を起動してから停止した回数の計数をゼロに戻す。
【0013】
このように構成すると、被加熱媒体液供給装置の起動停止回数に基づいてブロー弁を制御するので、簡便な制御で被加熱媒体液の濃縮を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルにより、導入した熱源hの熱を汲み上げて、被加熱媒体の蒸気Wvを生成する吸収ヒートポンプ1であって;吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収したときに生じた吸収熱で被加熱媒体Wqを加熱する吸収器10と;吸収器10において加熱された被加熱媒体Wmを導入し、導入した被加熱媒体Wmを蒸気Wvと液Wqとに分離する気液分離器80と;気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqを吸収器10に導く被加熱媒体液導入流路81、82と;気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqを直接又は間接的に吸収ヒートポンプ1の外に放出するブロー弁98と;気液分離器80の内部の被加熱媒体の液Wqの液位を検出する液位検出器87と;気液分離器80に被加熱媒体の液Wqを直接又は間接的に供給する被加熱媒体液供給装置86と;被加熱媒体液供給装置86の起動及び停止、並びにブロー弁98の開閉を制御する制御装置90とを備え;制御装置90は、被加熱媒体液供給装置86を起動してから停止した回数が第2の所定の回数に到達したときに、所定の条件を充足している間ブロー弁98を開にして、第2の所定の回数についての被加熱媒体液供給装置86を起動してから停止した回数の計数をゼロに戻す。
【0015】
従来、被加熱媒体蒸気の生成に伴ってシリカ等の不純物の濃度が上昇することを抑制するために、被加熱媒体液の不純物濃度を測定し、不純物濃度が高くなったときにブローを行っていた。しかし、上記本発明の第5の態様に係る吸収ヒートポンプのように構成すると、被加熱媒体液供給装置の起動停止回数に基づいてブロー弁を制御するので、簡便な制御で被加熱媒体液の濃縮を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第4の態様又は第5の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、熱源hの熱で冷媒の液Vfを加熱して吸収器10に供給する冷媒の蒸気Veを生成する蒸発器20と;吸収器10において冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した吸収液Swを吸収器10から直接又は間接的に導入し、導入した吸収液Swを熱源hの熱で加熱して冷媒Vgを離脱させる再生器30とを備え;制御装置90は、吸収ヒートポンプ1の起動後、被加熱媒体液供給装置86を起動してから停止した回数が、第1の所定の回数以上の場合と第1の所定の回数未満の場合とで、又は、気液分離器80の内部の圧力及び温度、吸収器10の出口における吸収液wの温度及び濃度、再生器30の出口における吸収液Saの温度及び濃度、蒸発器20の内部の冷媒の温度、吸収器10の内部の圧力のうちの少なくとも1つの値又はこれと相関を有する値が所定の値に到達する前と到達した後とで、第2の所定の回数及び所定の条件の少なくとも一方を変更する。
【0017】
このように構成すると、吸収ヒートポンプの状態に応じて適切にブロー弁の開閉操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、気液分離器の内部の液位が上昇しすぎることを抑制することができ、被加熱媒体の蒸気の供給先に向けて被加熱媒体の液滴が持ち出されることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1を説明する。
図1は、吸収ヒートポンプ1の模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1は、吸収液S(Sa、Sw)と冷媒V(Ve、Vg、Vf)との吸収ヒートポンプサイクルが行われる主要機器を構成する吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40を備え、さらに、気液分離器80と、制御装置90とを備えている。
【0022】
本明細書においては、吸収液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H
2O)が用いられている。また、被加熱媒体Wは、吸収器10に供給される液体の被加熱媒体Wである被加熱媒体液Wq、気体の被加熱媒体である被加熱媒体蒸気Wv、液体と気体とが混合した状態の被加熱媒体である混合被加熱媒体Wm、吸収ヒートポンプ1外から補充された被加熱媒体である補給液体としての補給水Wsの総称である。本実施の形態では、被加熱媒体Wとして水(H
2O)が用いられている。
【0023】
吸収器10は、被加熱媒体Wの流路を構成する伝熱管12と、濃溶液Saを散布する濃溶液散布ノズル13とを内部に有している。吸収器10は、濃溶液散布ノズル13から濃溶液Saが散布され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが受熱して、被加熱媒体Wが加熱されるように構成されている。
【0024】
蒸発器20は、熱源流体としての熱源温水hの流路を構成する熱源管22を、蒸発器缶胴21の内部に有している。蒸発器20は、蒸発器缶胴21の内部に冷媒液Vfを散布するノズルを有していない。このため、熱源管22は、蒸発器缶胴21内に貯留された冷媒液Vfに浸かるように配設されている(満液式蒸発器)。吸収ヒートポンプでは、吸収冷凍機よりも蒸発器内の圧力が高いので、熱源管が冷媒液に浸かる構成でも所望の冷媒蒸気を得ることが可能となる。蒸発器20は、熱源管22周辺の冷媒液Vfが熱源管22内を流れる熱源温水hの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。蒸発器缶胴21の下部には、蒸発器缶胴21内に冷媒液Vfを供給する冷媒液管45が接続されている。
【0025】
吸収器10と蒸発器20とは、相互に連通している。吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
【0026】
再生器30は、希溶液Swを加熱する熱源流体としての熱源温水hを内部に流す熱源管32と、希溶液Swを散布する希溶液散布ノズル33とを有している。熱源管32内を流れる熱源温水hは、本実施の形態では熱源管22内を流れる熱源温水hと同じ流体となっているが、異なる流体であってもよい。再生器30は、希溶液散布ノズル33から散布された希溶液Swが熱源温水hに加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが生成されるように構成されている。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40に移動するように構成されている。
【0027】
凝縮器40は、冷却媒体としての冷却水cが流れる冷却水管42を凝縮器缶胴41の内部に有している。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これを冷却水cで冷却して凝縮させるように構成されている。再生器30と凝縮器40とは、相互に連通するように、再生器の缶胴と凝縮器缶胴41とが一体に形成されている。再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。
【0028】
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液散布ノズル13とは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、濃溶液Saを圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。吸収器10の希溶液Swが貯留される部分と希溶液散布ノズル33とは、希溶液Swを流す希溶液管36で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管36には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。凝縮器40の冷媒液Vfが貯留される部分と蒸発器缶胴21の下部(典型的には底部)とは、冷媒液Vfを流す冷媒液管45で接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを圧送する冷媒ポンプ46が配設されている。
【0029】
蒸発器20の熱源管22の一端には、熱源温水hを熱源管22に導入する熱源温水導入管51が接続されている。熱源管22の他端と再生器の熱源管32の一端とは、熱源温水連絡管52で接続されている。熱源管32の他端には、熱源温水hを吸収ヒートポンプ1の外に導く熱源温水流出管53が接続されている。熱源温水流出管53には、内部を流れる熱源温水hの流量を調節可能な熱源温水切替弁53vが配設されている。熱源温水切替弁53vよりも下流側の熱源温水流出管53と熱源温水導入管51との間には、熱源温水バイパス管55が設けられている。熱源温水バイパス管55には、流路を開閉可能なバイパス弁55vが配設されている。
【0030】
気液分離器80は、吸収器10の伝熱管12を流れて加熱された被加熱媒体Wを導入し、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとを分離する機器である。気液分離器80には、分離された被加熱媒体液Wqを気液分離器80から流出する分離液管81が下部(典型的には底部)に接続されている。分離液管81の他端には、被加熱媒体液Wqを伝熱管12に導く被加熱媒体液管82が接続されている。本実施の形態では、分離液管81と被加熱媒体液管82とで、被加熱媒体液導入流路を構成している。伝熱管12の他端と気液分離器80の気相部とは、加熱された被加熱媒体Wを気液分離器80に導く加熱後被加熱媒体管84で接続されている。また、気液分離器80には、分離された被加熱媒体蒸気Wvを需要先に向けて吸収ヒートポンプ1の外に導く供給蒸気管としての被加熱媒体蒸気管89が上部(典型的には頂部)に接続されている。また、主に蒸気として吸収ヒートポンプ1の外に供給された分の被加熱媒体Wを補うための補給水Wsを吸収ヒートポンプ1の外から導入する補給水管85が設けられている。補給水管85は、分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されており、分離液管81を流れてきた被加熱媒体液Wqに補給水Wsを合流させるように構成されている。補給水管85には、吸収器10に向けて補給水Wsを圧送する補給水ポンプ86が配設されている。補給水ポンプ86は、被加熱媒体液供給装置に相当する。
【0031】
気液分離器80の近傍の被加熱媒体蒸気管89には、気液分離器80の内部の圧力を検知する圧力検知部としての圧力計93が設けられている。また、圧力計93よりも下流側の被加熱媒体蒸気管89には、吸収ヒートポンプ1の外に供給する被加熱媒体蒸気Wvの圧力を調節する圧力制御弁99が設けられている。圧力計93と圧力制御弁99との間の被加熱媒体蒸気管89には、安全弁88が設けられている。安全弁88は、気液分離器80の内部が目標運転圧力を超えて高すぎる圧力(例えば、気液分離器80の最高使用圧力)になったときに機械的に弁を開放して圧力の上昇を抑制するものである。
【0032】
気液分離器80には、また、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位を検出する液位検出器87が設けられている。液位検出器87は、高液位及び高液位付近の任意の液位を検出する高位電極87Hと、低液位及び低液位付近の任意の液位を検出する低位電極87Lと、高位電極87H及び低位電極87Lを収容する液位制御筒87cとを有している。液位制御筒87cは、概ね気液分離器80と同じ高さを有し、概ね気液分離器80と同じ高さに配置され、少なくとも上部及び下部の2箇所で連通していて、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位を液位制御筒87cの内部に現すことができるように構成されている。また、気液分離器80の下部(典型的には底部)には、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを吸収ヒートポンプ1の外に導くブロー管95が接続されている。ブロー管95には、止め弁96、ストレーナ97、ブロー弁98が、気液分離器80から外部に向けてこの順で配設されている。ブロー弁98は、開にすることにより、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを吸収ヒートポンプ1の外に排出する弁である。ブロー弁98は、典型的には開閉動作(ON−OFF動作)をするものが用いられるが、開度を調節することができるものが用いられてもよい。
【0033】
制御装置90は、吸収ヒートポンプ1の動作を制御する装置である。制御装置90は、溶液ポンプ35p、冷媒ポンプ46、補給水ポンプ86とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、各ポンプ35p、46、86の発停を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、熱源温水切替弁53v及びバイパス弁55vと信号ケーブルで接続されており、各弁53v、55vの開度を調節することができるように構成されている。また、制御装置90は、液位検出器87と信号ケーブルで接続されており、液位検出器87が検出した液位を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置90は、圧力計93と信号ケーブルで接続されており、圧力計93が検知した圧力を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置90はブロー弁98と信号ケーブルで接続されており、ブロー弁98の開閉を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、圧力制御弁99と信号ケーブルで接続されており、圧力制御弁99の開度を調節することができるように構成されている。
【0034】
引き続き
図1を参照して、吸収ヒートポンプ1の作用を説明する。通常、熱源温水切替弁53v及び圧力制御弁99が開、バイパス弁55v及びブロー弁98が閉となっている。まず、冷媒側のサイクルを説明する。凝縮器40では、再生器30で蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、冷却水管42を流れる冷却水cで冷却して凝縮し、冷媒液Vfとする。凝縮した冷媒液Vfは、冷媒ポンプ46で蒸発器缶胴21に送られる。蒸発器缶胴21に送られた冷媒液Vfは、熱源管22内を流れる熱源温水hによって加熱され、蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなる。蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veは、蒸発器20と連通する吸収器10へと移動する。
【0035】
次に溶液側のサイクルを説明する。吸収器10では、濃溶液Saが濃溶液散布ノズル13から散布され、この散布された濃溶液Saが蒸発器20から移動してきた蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器10では、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが加熱される。吸収器10で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなり、吸収器10の下部に貯留される。貯留された希溶液Swは、吸収器10と再生器30との内圧の差により再生器30に向かって希溶液管36を流れ、溶液熱交換器38で濃溶液Saと熱交換して温度が低下して、再生器30に至る。
【0036】
再生器30に送られた希溶液Swは、希溶液散布ノズル33から散布され、熱源管32を流れる熱源温水h(本実施の形態では約80℃前後)によって加熱され、散布された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して濃溶液Saとなり、再生器30の下部に貯留される。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40へと移動する。再生器30の下部に貯留された濃溶液Saは、溶液ポンプ35pにより、濃溶液管35を介して吸収器10の濃溶液散布ノズル13に圧送される。濃溶液管35を流れる濃溶液Saは、溶液熱交換器38で希溶液Swと熱交換して温度が上昇してから吸収器10に流入し、濃溶液散布ノズル13から散布される。濃溶液Saは、溶液ポンプ35pで昇圧されて吸収器10に入り、吸収器10内で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収することに伴い温度が上昇する。吸収器10に戻った濃溶液Saは蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し、以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0037】
吸収液S及び冷媒Vが上記のような吸収ヒートポンプサイクルを行う過程で、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱で被加熱媒体液Wqが加熱されて湿り蒸気(混合被加熱媒体Wm)となり、気液分離器80に導かれる。気液分離器80に流入した混合被加熱媒体Wmは、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとに分離される。気液分離器80で分離された被加熱媒体蒸気Wvは、被加熱媒体蒸気管89に流出し、吸収ヒートポンプ1の外部の蒸気利用場所(需要先)に供給される。つまり、吸収ヒートポンプから被加熱媒体蒸気Wvが取り出される。このように、吸収ヒートポンプ1は、駆動熱源の温度以上の被加熱媒体Wを取り出すことができる第2種の吸収ヒートポンプとして構成されている。他方、気液分離器80で分離された被加熱媒体液Wqは、分離液管81に流出し、被加熱媒体液管82を流れ、伝熱管12内に供給される。このとき、補給水Wsが補給水管85を流れてきた場合は、分離液管81から被加熱媒体液管82に流入する被加熱媒体液Wqに補給水Wsが合流し、被加熱媒体液Wqとして伝熱管12内に供給される。典型的には、被加熱媒体蒸気Wvとして外部に供給された分及びブロー管95から排出された分の被加熱媒体Wが、補給水Wsとして吸収ヒートポンプ1の外部から供給される。気液分離器80内の被加熱媒体液Wqは、後述する要領でブロー弁98の開閉が行われることにより、ブロー管95を介して吸収ヒートポンプ1の外部に排出される。本実施の形態では、液位検出器87が低液位を検出したときに補給水ポンプ86を起動し(低液位検出が補給水ポンプ86の起動条件)、液位検出器87が高液位を検出したときに補給水ポンプ86を停止することとしている(高液位検出が補給水ポンプ86の停止条件)。なお、上述した吸収ヒートポンプ1を構成する各機器は、制御装置90で制御される。
【0038】
上述のように作用する吸収ヒートポンプ1において、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が高すぎると、被加熱媒体蒸気管89を流れる被加熱媒体蒸気Wvに被加熱媒体液Wqの液滴が随伴し、被加熱媒体蒸気Wvの供給先に被加熱媒体液Wqの液滴が持ち出される(キャリーオーバー)場合がある。本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1では、このような不都合が生じることを回避するため、以下のような制御を行うこととしている。
【0039】
図2は、気液分離器80における液位が高いことに起因するキャリーオーバーを抑制する制御を説明するフローチャートである。以下の制御の説明において、吸収ヒートポンプ1の構成に言及しているときは、適宜
図1を参照することとする。この制御では、まず、制御装置90は、液位検出器87が高液位を検出したか否かを判断する(S1)。高液位は、上限液位よりも下方の任意の液位であり、ブロー弁98の開閉頻度や補給水ポンプ86の発停頻度を低減する観点からは上限液位に近いことが好ましく、液位が不安定な場合に液位の変動を吸収する観点からは上限液位から遠いことが好ましい。上限液位は、それ以上高いとキャリーオーバーが発生する可能性が高くなる液位である。液位検出器87が高液位を検出したか否かを判断する工程(S1)において、高液位を検出しない場合は、再び液位検出器87が高液位を検出したか否かを判断する工程(S1)に戻る。
【0040】
液位検出器87が高液位を検出したか否かを判断する工程(S1)において、高液位を検出した場合、制御装置90は、高液位が第1の所定の時間継続したか否かを判断する(S2)。第1の所定の時間は、液位検出器87が高液位を検出してから上限液位に到達する可能性が高まる任意の時間であり、高液位の設定値に関連する。第1の所定の時間を0秒としてもよく、その場合は、実質的に高液位を検出した時点で第1の所定の時間が継続したこととなる。高液位が第1の所定の時間継続したか否かを判断する工程(S2)において、第1の所定の時間継続していない場合は再び液位検出器87が高液位を検出したか否かを判断する工程(S1)に戻る。他方、第1の所定の時間継続した場合、制御装置90は、ブロー弁98を開にする(S3)。ブロー弁98が開くと、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqがブロー管95に流出して吸収ヒートポンプ1外に排出され、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が低下する。液位が低下すると、キャリーオーバーが発生する可能性が低くなる。
【0041】
ブロー弁98を開にしているとき(S3)、制御装置90は、ブロー弁98を第2の所定の時間閉にすることを所定の間隔で行うことが好ましい。このようにブロー弁98を繰り返し開閉することで、ブロー弁98に夾雑物が挟まった場合に夾雑物を除去することができる。このような趣旨に鑑みて、第2の所定の時間及び所定の間隔は、ブロー弁98に夾雑物が挟まった場合に夾雑物を除去することができる程度にブロー弁98を開閉するように決定すればよい。ブロー弁98を第2の所定の時間閉にすることを所定の間隔で行うことは、ブロー弁98を開にしている状態で副次的に行うものであり、ブロー弁98を開にしている工程に含まれる。
【0042】
ブロー弁98を開にしたら(S3)、制御装置90は、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が第1の所定の液位を検出したか否かを判断する(S4)。第1の所定の液位は、高液位未満の任意の液位であって、ブロー弁98を介してブローされる被加熱媒体液Wqの量を抑制する観点からは高液位に近い方が好ましく、ブロー弁98の開閉頻度を低減する観点からは低液位に近い方が好ましい。第1の所定の液位は、あらかじめ決められた排出停止液位に相当する。第1の所定の液位は、液位検出器87で検出することとするとよく、高位電極87Hが検出する高液位未満の液位か、高位電極87Hが高液位未満の液位をあらかじめ決められた時間だけ連続して検出したときの液位としてもよい。なお、第1の所定の液位を、液位検出器87で検出した液位に代えて、ブロー弁98を開にしてからあらかじめ決められた時間が経過したときの液位としてもよい。気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が第1の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S4)において、第1の所定の液位を検出していない場合、すなわち第1の所定の液位よりも高い液位である場合は、再び気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が第1の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S4)に戻る。他方、被加熱媒体液Wqの液位が低下して第1の所定の液位を検出した場合、すなわち第1の所定の液位以下である場合は、ブロー弁98を閉にする(S5)。ブロー弁98を閉にしたら、液位検出器87が高液位を検出したか否かを判断する工程(S1)に戻り、以降、上述のフローを繰り返す。このように、液位検出器87が高液位を検出した時間が第1の所定の時間継続したときにブロー弁98を開け、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が第1の所定の液位になったときにブロー弁98を閉じることで、キャリーオーバーを回避することができる。
【0043】
図2に示すフローにおいて、第1の所定の時間及び/又は第2の所定の時間は、補給水ポンプ86が起動してから停止した回数(以下「作動回数」という。)が第1の所定の回数以上の場合と第1の所定の回数未満の場合とで変更してもよい。典型的には、補給水ポンプ86の作動回数が第1の所定の回数以上の場合は吸収ヒートポンプ1の定常運転時であり、第1の所定の回数未満の場合は吸収ヒートポンプ1の起動段階である。つまり、第1の所定の時間及び/又は第2の所定の時間は、吸収ヒートポンプ1の起動段階と定常運転時とで変更してもよい。吸収ヒートポンプ1の起動段階は、伝熱管12内に被加熱媒体液Wqを供給し、各熱源管22、32に熱源温水hを導入して入熱し始め、被加熱媒体液Wqが加熱され沸騰し始めて圧力を高めて被加熱媒体液Wqの状態が変化していく段階であり、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が不安定になりがちな状態である。液位が不安定であると、突発的に上限液位を超えることが考えられるため、第1の所定の時間を短めに設定して早めにブロー弁98を開けて液位を下げると共に、第2の所定の時間を短めに設定してブロー弁98を開けている状態を長くするとよい。逆に液位が安定する定常運転時は、突発的に上限液位を超える可能性が低いため、第1の所定の時間及び第2の所定の時間を長めに設定して、ブロー弁98の開閉頻度を少なくするとよい。なお、被加熱媒体蒸気Wvの発生圧力が定常運転時の圧力から所定の圧力だけ低下した場合には、吸収ヒートポンプ1が停止動作に入ったと判断して、補給水ポンプ86の作動回数が第1の所定の回数に到達したか否かを判断する際の作動回数の計数をリセットすると、次の吸収ヒートポンプ1の運転ではこの計数がゼロから始まるので好適である。
【0044】
上述のように、気液分離器80におけるキャリーオーバーを抑制する制御を行っている最中にも、前述のように、被加熱媒体蒸気Wvとして外部に供給された分及びブロー管95から排出された分の被加熱媒体Wが、補給水ポンプ86の作動により、補給水Wsとして吸収ヒートポンプ1の外部から供給される。一般に、補給水Wsが吸収ヒートポンプ1内に導入されると、補給水Wsと共にシリカ、カルシウム、マグネシウム等の不純物も吸収ヒートポンプ1内に持ち込まれる。外部に供給される被加熱媒体蒸気Wvには、通常、不純物は含まれないため、被加熱媒体蒸気Wvの積算発生量が増加すると、気液分離器80内の被加熱媒体液Wq中の不純物濃度が上昇(被加熱媒体液Wqが濃縮)して被加熱媒体液Wqの不純物濃度に起因するキャリーオーバーが発生したり、吸収器10の伝熱管12の内面に不純物によるスケールが析出したりする場合がある。このような不都合の発生を回避するために、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1では、被加熱媒体液Wq中における不純物濃度を所定の規準濃度範囲内に維持することとする。ブロー管95から被加熱媒体液Wqが排出されると不純物も一緒に排出されるが、
図2に示すキャリーオーバーを抑制する制御では、起動時は、被加熱媒体液Wqには不純物が多く含まれていない場合が多いので排出される不純物も多くはなく、定常運転時は、液位が安定している場合が多いのでブロー弁98が作動する(開になる)ことが多くはなく、ブロー管95から不純物が排出される量も多くはない。そこで、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1では、被加熱媒体液Wqの濃縮を抑制して、被加熱媒体液Wq中における不純物濃度を規準濃度範囲内に維持するため、以下のような制御を行うこととしている。
【0045】
図3は、気液分離器80における被加熱媒体液Wqの濃縮を抑制する制御を説明するフローチャートである。以下の制御の説明において、吸収ヒートポンプ1の構成に言及しているときは、適宜
図1を参照することとする。この制御では、まず、制御装置90は、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したか否かを判断する(S11)。第2の所定の回数は、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの濃縮回避のために被加熱媒体液Wqを気液分離器80から排出するのが好ましい程度の補給水Wsの積算量が供給される回数であり、補給水Wsの積算量は概ね被加熱媒体蒸気Wvの積算発生量に応じた量となる。補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したか否かを判断する工程(S11)において、第2の所定の回数に到達していない場合は、再び補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したか否かを判断する工程(S11)に戻る。
【0046】
補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したか否かを判断する工程(S11)において、第2の所定の回数に到達した場合、制御装置90は、液位検出器87が第2の所定の液位を検出したか否かを判断する(S12)。第2の所定の液位は、低液位以上の任意の液位であって、ブロー弁98を介してブローされる被加熱媒体液Wqの量を抑制する観点からは高液位又は高液位に近い方が好ましく、ブロー弁98の開閉頻度を低減する観点からは低液位に近い方が好ましい。あるいは、第2の所定の液位は、
図2に示す制御に対して競合状態となる確率を低下させる観点から、第1の所定の液位以下としてもよい。第2の所定の液位は、液位検出器87で検出することとするとよく、低位電極87Lが検出する低液位以上の液位、あるいは低位電極87Lが低液位以上の液位をあらかじめ決められた時間だけ連続して検出したときの液位としてもよく、高位電極87Hが検出する高液位又は高液位以上の液位としてもよい。第2の所定の液位を検出していない場合、すなわち第2の所定の液位より低い液位である場合、制御装置90は、ブロー弁98が開状態であるか否かを判断する(S13)。ブロー弁98が開状態でない場合は、再び液位検出器87が第2の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S12)に戻る。他方、ブロー弁98が開状態である場合、制御装置90はブロー弁98を閉にし(S14)、その後、液位検出器87が第2の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S12)に戻る。なお、
図2に示す制御に対してブロー弁98の開閉が競合状態となった場合(例えば、
図2の制御でブロー弁98開(S3)、
図3に示す制御でブロー弁98閉(S14))は、ブロー量の不足を回避する観点から、ブロー弁98開の動作を優先させることにするとよい。
【0047】
液位検出器87が第2の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S12)において、第2の所定の液位を検出した場合、すなわち第2の所定の液位以上の高い液位である場合、制御装置90は、ブロー弁98を開にする(S15)。ブロー弁98を開にしている間は、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqがブロー弁98を介して吸収ヒートポンプ1の外に排出される。ここで、
図2に示すフローの場合と同様に、ブロー弁98を開にしているとき、制御装置90は、ブロー弁98を所定の時間閉にすることを所定の間隔で行うことが好ましい。ブロー弁98を開にしたら、制御装置90は、液位検出器87が第3の所定の液位を検出したか否かを判断する(S16)。第3の所定の液位は、第2の所定の液位よりも低い液位であり、例えば、第2の所定の液位を高液位以上とした場合は第3の所定の液位を高液位未満とすることができ、第2の所定の液位を低液位を超える液位とした場合は第3の所定の液位を低液位とすることができる。第3の所定の液位は、第1の所定の液位と同じ液位に設定してもよい。液位検出器87が第3の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S16)において、第3の所定の液位を検出していない場合、すなわち第3の所定の液位より高い液位である場合は、ブロー弁98を開にする工程(S15)に戻り、ブロー弁98が開の状態を維持する。他方、第3の所定の液位を検出した場合、すなわち第3の所定の液位以下の低い液位である場合、制御装置90は、ブロー弁98を閉にする(S17)。
【0048】
次いで、制御装置90は、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達してからブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達したか否かを判断する(S18)。第3の所定の時間は、ブロー弁98を開にして気液分離器80内の被加熱媒体液Wqをブローした後で被加熱媒体液Wqが気液分離器80内に補充されたときに気液分離器80内の被加熱媒体液Wq中における不純物濃度を規準濃度範囲にすることができるまで希釈される程度に、被加熱媒体液Wqを排出するのに要する時間である。第2の所定の液位を検出してから第3の所定の液位を検出するまでブロー弁98を開にし、ブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達するまでとすることが所定の条件に相当する。運転の状況によっては、液位検出器87で検出した液位が第2の所定の液位から第3の所定の液位まで低下するまでブロー弁98を開けておくと、ブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達する場合もある。ブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達していない場合は、液位検出器87が第2の所定の液位を検出したか否かを判断する工程(S12)に戻る、他方、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達してからブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達したか否かを判断する工程(S18)において第3の所定の時間に到達した場合、制御装置90は、第2の所定の回数についての作動回数の計数をリセットする(S19)。これにより、液位検出器87が第2の所定の液位を検出したときにブロー弁98を開にする契機となる、補給水ポンプ86の作動回数の計数が、0から行われることとなる。第2の所定の回数についての作動回数の計数をリセットしたら(S19)、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したか否かを判断する工程(S11)に戻り、以降、上述のフローを繰り返す。
【0049】
このように、
図3に示す制御は、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したときに、到達した補給水ポンプ86の作動回数に相当する補給水Wsの積算量、すなわち、被加熱媒体蒸気Wvの相当する積算量に対して、被加熱媒体液Wq中の不純物濃度を所定の規準濃度範囲内に維持するために必要充分なブロー量を排出することを目的としている。液位検出器87が第2の所定の液位以上の高い液位を検出してから第3の所定の液位を検出するまでブロー弁98を開にし、ブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達するまでとすることで、濃縮した被加熱媒体液Wqの一部を排出して気液分離器80内の被加熱媒体液Wq中の不純物濃度の上昇を抑制し、不純物濃度を所定の規準濃度範囲内に維持することができる。ここで、被加熱媒体液Wqの濃縮回避のためのブロー弁98の開動作を、補給水ポンプ86の作動回数に基づいて開始させているため、ブロー弁98を開にするときの被加熱媒体液Wq中の不純物濃度が常に同じにはならない可能性がある。この点、第2種の吸収ヒートポンプは、被加熱媒体の蒸発量に対する保有液量が、通常の蒸気ボイラよりも数倍大きいので、被加熱媒体液の濃縮速度は蒸気ボイラよりも数倍緩慢となり、水質変化も緩慢となる。したがって、ブロー弁98の開動作を補給水ポンプ86の作動回数に基づいて開始させても差し支えなく、このようにすることで制御を簡便にすることができる。
【0050】
図3に示すフローにおいて、第2の所定の回数及び/又は第3の所定の時間及び/又は第3の所定の液位は、補給水ポンプ86の作動回数が第1の所定の回数以上の場合と第1の所定の回数未満の場合とで変更してもよい。つまり、第2の所定の回数及び/又は第3の所定の時間及び/又は第3の所定の液位は、吸収ヒートポンプ1の起動段階と定常運転時とで変更してもよい。前述のように、吸収ヒートポンプ1の起動段階は、被加熱媒体蒸気Wvの発生量がないか少ないので被加熱媒体液Wq内の不純物濃度が低い場合が多く、また、被加熱媒体液Wqの状態が変化する段階であることから気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が不安定になりがちな状態である。液位が不安定であると、突発的に高液位及び低液位を検出する場合があり、補給水ポンプ86の作動間隔が短くなって作動回数が定常運転時よりも増加する場合がある。したがって、起動段階では、第2の所定の回数を大きく設定してブロー弁98が開になる頻度を少なくし、及び/又は、第3の所定の時間を短く及び/又は第3の所定の液位を高く設定してブロー管95から排出される被加熱媒体液Wqの流量を少なくするとよい。なお、第3の所定の時間を0秒に設定してもよく、第3の所定の液位を第2の所定の液位と同じ高さに設定してもよく、これらの場合はブロー弁98が実質的に開かないこととなる。また、定常運転時は、被加熱媒体蒸気Wvの発生量が多く被加熱媒体液Wq内の不純物濃度が濃くなるので、第2の所定の回数を小さく、第3の所定の時間を長く及び/又は第3の所定の液位を低く設定して、ブロー弁98から排出される被加熱媒体液Wqの流量を比較的多くするとよい。
図3に示すフローにおいても、被加熱媒体蒸気Wvの発生圧力が定常運転時の圧力から所定の圧力だけ低下した場合には、吸収ヒートポンプ1が停止動作に入ったと判断して、補給水ポンプ86の作動回数が第1の所定の回数に到達したか否かを判断する際の作動回数の計数をリセットすると、次の吸収ヒートポンプ1の運転ではこの計数がゼロから始まるので好適である。
【0051】
また、
図3に示すフローにおいて、工程(S12)、工程(S13)、及び工程(S14)を省略し、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したか否かを判断する工程(S11)において、第2の所定の回数に到達した場合に、直ちにブロー弁98を開にする工程(S15)に進んだ後に、工程(S16)に進むこととしてもよい。そして、ブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達していない場合には(工程S18でNO)、再びブロー弁98を開にする工程(S15)に戻るが、この場合は既にブロー弁98が開になっているため、ブロー弁98が開になっていることを確認して次工程(S16)に進む。他方、ブロー弁98を開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達した場合には(工程S18でYES)、第2の所定の回数についての作動回数の計数をリセットする(S19)。以降の工程は、
図3に示すフローと同様である。第2の所定の回数を小さくし、ブロー弁98を開状態とする第3の所定の時間を短くして、ブロー弁98の開動作を頻繁に行い、被加熱媒体液Wq中における不純物濃度の変動を小さくして、不純物濃度を規準濃度範囲内に維持する場合には、このようにしてもよい。
【0052】
また、
図3に示すフローの制御を行っている際、制御装置90は、第2の所定の回数とは別に、補給水ポンプ86の作動回数が第3の所定の回数に到達したか否かを判断し、第3の所定の回数に到達したときに、気液分離器80、吸収器10の伝熱管12、分離液管81、被加熱媒体液管82、加熱後被加熱媒体管84の各内部にある被加熱媒体液Wqをすべて取り替えることを勧める全ブロー勧告を知らせるようにしてもよい。第3の所定の回数は、第2の所定の回数よりも多い回数であり、吸収ヒートポンプ1が保有する被加熱媒体液Wqをすべて入れ替えることが好ましいほどの、発生した被加熱媒体蒸気Wvの積算量に相当する補給水Wsの積算量が吸収ヒートポンプ1に供給される、補給水ポンプ86の作動回数である。第3の所定の回数の計数は、典型的には、全ブローが行われたときにリセットされる。
【0053】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1によれば、液位検出器87が高液位を検出した時間が第1の所定の時間継続したときにブロー弁98を開け、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの液位が第1の所定の液位以下に低下したときにブロー弁98を閉じることで、キャリーオーバーを回避することができる。この状況でブロー弁98を開にしているとき、ブロー弁98を第2の所定の時間閉にすることを所定の間隔で行うので、ブロー弁98に夾雑物が挟まった場合に夾雑物を除去することができる。また、補給水ポンプ86の作動回数が第2の所定の回数に到達したときに、ブロー弁98を、液位検出器87が第2の所定の液位以上の液位を検出してから第3の所定の液位を検出するまで開にし、開状態としている積算時間が第3の所定の時間に到達するまでとするので、気液分離器80内の被加熱媒体液Wq中の不純物濃度の上昇を抑制することができる。
【0054】
以上の説明では、ブロー管95が気液分離器80の下部に接続されていて気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを直接吸収ヒートポンプ1の外に放出することとしたが、ブロー管95が分離液管81、被加熱媒体液管82、吸収器10の伝熱管12の少なくとも1つ、あるいはこれらに加熱後被加熱媒体管84や液位制御筒87cをも含めた被加熱媒体液Wqが存在する部分の少なくとも1つに接続されていて気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを間接的に吸収ヒートポンプ1の外に放出することとしてもよい。ブロー管95が伝熱管12に接続される場合は、伝熱管12内で生じた蒸発残留物の排出効果を期待できる。しかしながら、ブロー管95が気液分離器80又は分離液管81に接続されていると、補給水Wsと混合する前の濃縮度が濃い被加熱媒体液Wqを排出できるため好ましい。
【0055】
以上の説明では、ブロー弁98がブロー管95に配設されていることとしたが、ブロー弁98が、ブロー管95を介さずに、気液分離器80に直接接続されていてもよい。あるいは、気液分離器80のほか、分離液管81や被加熱媒体液管82等を含めた被加熱媒体液Wqが存在する部分の少なくとも1つに直接接続されていてもよい。
【0056】
以上の説明では、補給水管85が分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されて補給水Wsが被加熱媒体液導入流路に供給されることで補給水Wsが間接的に気液分離器80に供給されることとしたが、補給水管85が気液分離器80に接続されて補給水Wsが直接気液分離器80に供給されることとしてもよく、補給水管85が吸収器10の伝熱管12あるいは加熱後被加熱媒体管84等の被加熱媒体Wが存在する部分に接続されて補給水Wsが間接的に気液分離器80に供給されることとしてもよい。
【0057】
以上の説明では、吸収ヒートポンプ1の起動段階と定常運転時との区別を、補給水ポンプ86の作動回数に基づいて行うこととしたが、これに代えて、気液分離器80内の圧力及び温度、吸収器10の出口における吸収液(希溶液Sw)の温度及び濃度、再生器30の出口における吸収液(濃溶液Sa)の温度及び濃度、蒸発器20の内部の冷媒Vの温度、吸収器10の内部の圧力、のうちの少なくとも1つの値又はこれと相関を有する値(以下、「装置内状態物性値」という。)に基づいて行うこととしてもよい。装置内状態物性値は、起動段階では、定常運転時の値よりも小さい(圧力や温度の場合は低く濃度の場合は薄い)ので、装置内状態物性値が定常運転における値よりも小さい状態にある段階を起動段階とし、定常運転における値に到達した時点以降を定常運転時とするように区別してもよい。気液分離器80内の圧力や温度は、吸収器10内の伝熱管12内や気液分離器80内の被加熱媒体液Wqの状態を反映しており、吸収器10の出口及び再生器30の出口における吸収液の温度及び濃度並びに蒸発器20内の冷媒Vの温度及び吸収器10の内部の圧力は、吸収器10の伝熱管12内の被加熱媒体液Wqを加熱する吸収液の状態を反映しているので、起動段階と定常運転時との区別を的確に行うことができる。あるいは、補給水ポンプ86の作動回数と組み合わせて、装置内状態物性値が定常運転時の値に到達してから数回の補給水ポンプ86の作動を行った時点をもって起動段階と定常運転時とを区別してもよい。
【0058】
以上の説明では、補給水ポンプ86が起動した後の停止する条件が、液位検出器87が高液位を検出したときとしたが、補給水ポンプ86が起動してからあらかじめ決められた時間が経過したとき、あるいは液位検出器87が高液位を検出したときと補給水ポンプ86が起動してからあらかじめ決められた時間が経過したときのいずれかの条件が充足したとき等、液位検出器87が高液位を検出したとき以外の条件としてもよい。また、以上の説明では、液位検出器87が、低液位を検出したときに補給水ポンプ86を起動し、高液位を検出したときに補給水ポンプ86を停止することとしたが、液位検出器87が、低液位を検出している間は補給水ポンプ86を連続運転し、低液位と高液位との間の液位を検出している間は補給水ポンプ86の所定時間の運転と所定時間の停止とを繰り返し、高液位を検出している間は補給水ポンプ86を停止することとしてもよい。このようにすると、気液分離器80内の液位が低液位と高液位との間にある時間を拡大することができる。また、第1の所定の時間、第2の所定の時間、第1の所定の回数、第2の所定の回数、第3の所定の時間、第3の所定の回数、第1の所定の液位、第2の所定の液位、第3の所定の液位は、補給水Ws中の不純物濃度、被加熱媒体液Wq中の不純物規準濃度、被加熱媒体蒸気Wvの発生量及び蒸気発生圧、補給水ポンプ86の吐出性能と制御方式、薬液注入装置(不図示)により補給水Wsに注入される水処理薬品の注入量等を総合的に勘案して、吸収ヒートポンプ1の運転中の被加熱媒体液Wq中の不純物濃度が規準濃度範囲内に収まるようにあらかじめ設定するとよい。
【0059】
以上の説明では、被加熱媒体液供給装置が補給水ポンプ86であるとしたが、以下のように構成してもよい。
図4は変形例に係る補給水系統の部分系統図である。
図4に示す変形例では、補給水管85が補給水タンク285の下部に接続されている。補給水タンク285には補給水Wsが貯留されている。補給水ポンプ86よりも下流側の補給水管85には、補給水制御弁186が配設されている。補給水ポンプ86と補給水制御弁186との間の補給水管85には、補給水Wsを補給水タンク285に戻すミニマムフローライン185が接続されている。ミニマムフローライン185は、補給水ポンプ86が作動している状態で補給水制御弁186が全閉となっても補給水ポンプ86が締切運転とならない程度の最小限の補給水Wsを流すことができるサイズになっている。
図4に示す変形例では、補給水ポンプ86を運転したままにして補給水制御弁186を開閉することで、吸収ヒートポンプ1への補給水Wsの供給の有無を制御することができる。このとき、補給水ポンプ86と補給水制御弁186とで被加熱媒体液供給装置が構成される。あるいは、
図4に示す変形例から、補給水ポンプ86、ミニマムフローライン185、補給水タンク285を省略し、外部の元圧から補給水Wsが供給されてくる場合は、補給水制御弁186を被加熱媒体液供給装置とすることができる。
【0060】
以上の説明では、蒸発器20が満液式であるとしたが、散布式であってもよい。蒸発器を散布式とする場合は、蒸発器缶胴の上部に冷媒液Vfを散布する冷媒液散布ノズルを設け、満液式の場合に蒸発器缶胴21の下部に接続することとしていた冷媒液管45の端部を、冷媒液散布ノズルに接続すればよい。また、蒸発器缶胴の下部の冷媒液Vfを冷媒液散布ノズルに供給する配管及びポンプを設けてもよい。
【0061】
以上の説明では、吸収ヒートポンプ1が単段であるとして説明したが、多段でもよい。
図5に、二段昇温型の吸収ヒートポンプ1Aの構成を例示する。吸収ヒートポンプ1Aは、
図1に示されている吸収ヒートポンプ1における吸収器10及び蒸発器20が、高温側の高温吸収器10H及び高温蒸発器20Hと、低温側の低温吸収器10L及び低温蒸発器20Lとに分かれている。高温吸収器10Hは低温吸収器10Lよりも内圧が高く、高温蒸発器20Hは低温蒸発器20Lよりも内圧が高い。高温吸収器10Hと高温蒸発器20Hとは、高温蒸発器20Hの冷媒Vの蒸気を高温吸収器10Hに移動させることができるように上部で連通している。低温吸収器10Lと低温蒸発器20Lとは、低温蒸発器20Lの冷媒Vの蒸気を低温吸収器10Lに移動させることができるように上部で連通している。被加熱媒体液Wqは、高温吸収器10Hで加熱される。熱源温水hは、低温蒸発器20Lに導入される。低温吸収器10Lは低温蒸発器20Lから移動してきた冷媒Vの蒸気を吸収液Sが吸収する際の吸収熱で高温蒸発器20H内の冷媒液Vfを加熱して高温蒸発器20H内に冷媒Vの蒸気を発生させ、発生した高温蒸発器20H内の冷媒Vの蒸気は高温吸収器10Hに移動して高温吸収器10H内の吸収液Sに吸収される際の吸収熱で被加熱媒体液Wqを加熱するように構成されている。