(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798082
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】吊り橋の主ケーブルの取替方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20201130BHJP
E01D 11/02 20060101ALI20201130BHJP
E01D 19/16 20060101ALI20201130BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D11/02
E01D19/16
E01D21/00 A
E01D21/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-134700(P2016-134700)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-3526(P2018-3526A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592242822
【氏名又は名称】株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100091591
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 秀人
(72)【発明者】
【氏名】泊 良一
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第96/031658(WO,A1)
【文献】
米国特許第05850652(US,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0969005(KR,B1)
【文献】
国際公開第2013/179549(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0052694(US,A1)
【文献】
特開平08−060617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主塔間に掛け渡された主ケーブルに垂下されたハンガーロープに補剛桁が保持された吊り橋の前記主ケーブルの取替方法において、
前記補剛桁に配された床版を交換し、
前記主塔と補剛桁とに斜吊りケーブルを架け渡して補剛桁を保持させ、
前記ハンガーロープを取り外し、
既設の主ケーブルを新設の主ケーブルに取り替えて、
新規のハンガーロープを取り付けて、新設の主ケーブルによって前記補剛桁を保持させ、
前記斜吊りケーブルを取り外してなることを特徴とする吊り橋の主ケーブルの取替方法。
【請求項2】
前記主塔の外側に斜吊り用鉄塔を設置し、前記主塔に替えて該斜吊り用鉄塔と前記補剛桁とに前記斜吊りケーブルを掛け渡したことを特徴とする請求項1に記載の吊り橋の主ケーブルの取替方法。
【請求項3】
前記補剛桁の下部にアウターケーブルを配設し、該アウターケーブルに前記斜吊りケーブルを連繋させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吊り橋の主ケーブルの取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、山間部の渓谷や河口湾の断崖の間等に掛け渡されている吊り橋の主ケーブルを交換する吊り橋の主ケーブルの取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
渓谷の両岸や河口湾を挟んだ断崖の間を通行するために掛け渡される橋梁では、橋脚を設置できずに長支間となることから、吊り橋が架設されている。吊り橋には列車や自動車の通行を目的とする大型のものから人の往来を目的とする小型のものまで種々のものが設置されている。特に、山間部等で人の往来を目的とする歩道橋の場合には、大きな幅員の交通路を要しないため、吊り橋が多用される。
【0003】
吊り橋は、主として、渓谷の両岸等に設置された主塔の塔頂を経由させた主ケーブルと、この主ケーブルに垂下させたハンガーロープの下端に支持させた補剛桁からなり、前記主ケーブルの端部をアンカーブロック等に固定する。補剛桁の両端部を両岸等に設置した橋脚に支持させる。この補剛桁に床版が設置されて歩行路が設けられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、主ケーブルを利用する摺動ビームを用いた吊橋補剛桁の引出し架設工法に用いる架設装置が開示されている。また、特許文献2には、ホーリングロープ長並びに駆動装置台数を最小限に抑え、且つ作業効率を向上し、工期の短縮と工事費の低減を図り得る吊橋用主ケーブルの架設方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−22805号公報
【特許文献2】特開平10−237819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吊り橋の前記主ケーブルは載荷重を前記アンカーブロックに伝達させるよう作用するが、この主ケーブルが老朽化して十分な強度を維持できなくなった場合には、力の伝達を果たせず、繰り返し荷重を受けること等により破損してしまうおそれが生じるから、該主ケーブルを取り替える必要が生じる。
【0007】
主ケーブルを取り替える場合には、既設の主ケーブルを外すことになるが、前記補剛桁を支持させる必要がある。吊り橋の構造では主ケーブルに垂下させた前記ハンガーロープの下端に補剛桁を支持させてあるから、既設の主ケーブルの撤去に先立ってこのハンガーロープを保持させる必要があり、主ケーブルに沿って仮ケーブルを架設し、この仮ケーブルにハンガーロープを保持させる。また、この仮ケーブルを支持するための仮鉄塔を前記主塔の外側に設置する。仮ケーブルにハンガーロープを保持させて補剛桁を支持させた状態で、既設の主ケーブルを撤去する。撤去した主ケーブルに替えて新たに主ケーブルを架設し、これに新たなハンガーロープを垂下させて補剛桁を保持させる。その後、仮ケーブルと仮鉄塔とを撤去する。上述の仮ケーブルの架設施工と新たな主ケーブルの架設施工には、例えば特許文献2に開示された架設方法によることができる。
【0008】
しかしながら、仮ケーブルと新たな主ケーブルとのそれぞれについて架設施工を行うことになるため、煩雑な作業を要する。また、工期が長くなってしまい、その間の吊り橋の使用が制限される期間が長期になってしまうおそれがある。
【0009】
そこで、この発明は、煩雑な作業を極力なくして、工期の短縮化を図れる吊り橋の主ケーブルの取替方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る吊り橋の主ケーブルの取替方法は、主塔間に掛け渡された主ケーブルに垂下されたハンガーロープに補剛桁が保持された吊り橋の前記主ケーブルの取替方法において、
前記補剛桁に配された床版を交換し、前記主塔と補剛桁とに斜吊りケーブルを架け渡して補剛桁を保持させ、
前記ハンガーロープを取り外し、既設の主ケーブルを新設の主ケーブルに取り替えて、新規のハンガーロープを取り付けて、新設の主ケーブルによって前記補剛桁を保持させ、前記斜吊りケーブルを取り外してなることを特徴としている。
【0011】
前記斜吊りケーブルで主塔に補剛桁を保持させることによって、主ケーブルを補剛桁の保持状態から解放できるようにしたものである。
また、主ケーブルの取り替えと共に、床版等の他の構造要素の取り替えを行うものである。
すなわち、補剛桁から既設の床版を取り外した後に、新たな床版を設置し、斜吊りケーブルを架け渡して補剛桁を保持させる。ハンガーロープを取り外して既設の主ケーブルを撤去する。新たな主ケーブルを架設して新たなハンガーロープを取り付け、これらに補剛桁を支持させる。次いで、斜吊りケーブルを撤去する。
【0014】
また、
請求項2の発明に係る吊り橋の主ケーブルの取替方法は、前記主塔の外側に斜吊り用鉄塔を設置し、前記主塔に替えて該斜吊り用鉄塔と前記補剛桁とに前記斜吊りケーブルを掛け渡したことを特徴としている。
【0015】
既設の主塔に斜吊りケーブルを取り付けて補剛桁を保持させた場合に、該主塔に十分な強度を得られないおそれがある場合には、斜吊りケーブルを取り付けるための斜吊り用鉄塔を設置することで、主塔に負担をかけないようにしたものである。
【0016】
また、
請求項3の発明に係る吊り橋の主ケーブルの取替方法は、前記補剛桁の下部にアウターケーブルを配設し、該アウターケーブルに前記斜吊りケーブルを連繋させたことを特徴としている。
【0017】
斜吊りケーブルの本数や補剛桁への取付位置によっては安定して補剛桁を保持できない場合には、補剛桁の下部にアウターケーブルを配設して、これに斜吊りケーブルを連繋させることで、斜吊りケーブルにかかる力を分散させて、補剛桁を安定して保持できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る吊り橋の主ケーブルの取替方法によれば、主ケーブルの交換に先立って、斜吊りケーブルによって補剛桁を保持させるから、主ケーブルの架設施工が一度でよい。このため、仮ケーブルを架設施工する煩雑な作業を行うことがなく、取り替え作業に要する工期の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】主ケーブルを取り替える状態にある吊り橋の側面図である。
【
図2】補剛桁に設置されている床版を取り替える状態を示す吊り橋の側面図である。
【
図3】主塔と補剛桁とに斜吊りケーブルを架け渡す状態を示す吊り橋の側面図である。
【
図4】ハンガーロープを取り外す状態を示す吊り橋の側面図である。
【
図5】主ケーブルを取り替える状態を示す吊り橋の側面図である。
【
図6】ハンガーロープを取り付ける状態を示す吊り橋の側面図である。
【
図7】斜吊りケーブルを取り外す際の状態を示す吊り橋の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図示した実施の形態に基づいてこの発明に係る吊り橋の主ケーブルの取替方法を具体的に説明する。
【0021】
図1に示すように、吊り橋1は両側に設けられた主塔2、2に主ケーブル3が架設され、この主ケーブル3にハンガーロープ4が取り付けられて垂下され、該ハンガーロープ4によって補剛桁5が支持されている。また、補剛桁5には床版6が載置されて通行路が設置されている。
【0022】
主ケーブル3を取り外すのに先立って、床版6や高欄を取り外す。このとき、これらの荷重が取り除かれることにより補剛桁5等が主ケーブル3の張力により浮き上がるおそれがある。この場合には、補剛桁5と橋脚7との間に仮受8を介在させて、浮き上がった状態の補剛桁5を支承させる。
【0023】
次いで、
図2に示すように、補剛桁5に新たな床版9を設置する。この場合、例えば、既設の吊り橋1の床版6にコンクリート床版が設置されている構造では、これを鋼床版に変更することで橋体の軽量化を図ることも可能である。また、床版9を設置する場合には、重機10により片押し架設によることができる。
【0024】
床版9が設置された状態で、
図3に示すように、主塔2と補剛桁5とに斜吊りケーブル11を掛け渡して補剛桁5を主塔2に保持させる。この場合、斜吊りケーブル11は補剛桁5の下弦材部に固定することが好ましい。また、必要に応じて補剛桁5の下部にアウターケーブル12を張設してこれに斜吊りケーブル11を連繋させて、斜吊りケーブル11にかかる力を分散させる。さらに、主塔2の外側に斜吊り用鉄塔13を設置して、主塔2に替えて該斜吊り用鉄塔13に斜吊りケーブル11を支持させることもできる。
【0025】
斜吊りケーブル11が掛け渡された状態で、
図4に示すように、ハンガーロープ4を解体する。このとき、高所作業車15と引付け用仮ロープ16を使用して負荷状態で解体する。なお、橋体の死荷重にトラスの強度が十分に対抗するように、必要に応じて補強する。
【0026】
ハンガーロープ4を解体した後、主ケーブル3を取り替える。この取付作業は、
図5に示すように、ウィンチ14を用いて既設の主ケーブル3を解体すると共に、新設の主ケーブル3を架設する。
【0027】
架設された新規の主ケーブル3に、
図6に示すように、新たなハンガーロープ4を垂下させ、その下端部に補剛桁5を支持させる。この際、新設された前記床版9の荷重に応じてハンガーロープ4の仕様を適合させる。
【0028】
その後、前記斜吊りケーブル11を撤去し、必要に応じて設置した斜吊り用鉄塔13を撤去する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明に係る吊り橋の主ケーブルの取替方法によれば、既設の主ケーブルに沿って架設する仮ケーブルに替えて斜吊りケーブルを設けて新設の主ケーブルを架設するため、仮ケーブルの架設作業がなく、煩雑な作業を減じて主ケーブルの取替施工を行えるので、工期の短縮化を図れると共に、取替施工に要する費用を削減できて、吊り橋の主ケーブルの取替の促進を図ることに寄与する。
【符号の説明】
【0030】
1 吊り橋
2 主塔
3 主ケーブル
4 ハンガーロープ
5 補剛桁
6 床版
7 橋脚
8 仮受
9 床版
10 重機
11 斜吊りケーブル
12 アウターケーブル
13 斜吊り用鉄塔
14 ウィンチ