(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798083
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】金属鋳型反応の低下に適したバインダーシステム
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20201130BHJP
C08G 18/54 20060101ALI20201130BHJP
C08G 18/18 20060101ALI20201130BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
B22C1/22 P
C08G18/54
C08G18/18
C08G18/38 093
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-558740(P2017-558740)
(86)(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公表番号】特表2018-522737(P2018-522737A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】US2016032668
(87)【国際公開番号】WO2016183570
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】62/161,923
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/161,603
(32)【優先日】2015年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517387317
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シェンピン
(72)【発明者】
【氏名】スタンクリフ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】プリエーベ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クロカー,ヨルク
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−011149(JP,A)
【文献】
特表2015−508023(JP,A)
【文献】
特表2013−544191(JP,A)
【文献】
特開2002−143983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00−3/02,9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳込みプロセスにおける金属−鋳型反応を低下させるための方法であって、下記ステップ:
有機バインダーシステムおよび耐火性成形材料を用意するステップであって、前記有機バインダーシステムは使用時まで組み合わされない、ポリオール構成材料である第1の構成材料、ポリイソシアネート構成材料である第2の構成材料、ならびにアルキルシリケートおよびオルトギ酸アルキルのうちの少なくとも1つを含む第3の構成材料の3つの構成材料として用意されるステップ;
賦形可能な鋳物用混合物を得るため、少なくとも前記第1の構成材料および前記第2の構成材料を前記耐火性成形材料と混合するステップ;
前記賦形可能な鋳物用混合物を鋳型または中子に成形するステップ;および
成形された前記鋳型または中子を硬化させるステップ
を含み、
前記第3の構成材料を除く前記有機バインダーシステムの前記第1の構成材料および前記第2の構成材料は、前記耐火性成形材料に混合される前に組み合わされる方法。
【請求項2】
前記有機バインダーシステムの前記第3の構成材料は前記成形された鋳型または中子に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の構成材料は、前記金属鋳込みプロセス中に溶融金属に曝される前記鋳型または中子の表面のみに前記第3の構成材料をスプレーすることにより塗布される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の構成材料および前記第2の構成材料は、前記第3の構成材料なしで組み合わされ、アミン触媒で硬化されたときに、フェノール系ウレタンポリマーが生じるものであり、
前記第1の構成材料は、1分子あたり少なくとも2つのヒドロキシ基を有するフェノール系ベース樹脂を含むポリオール構成材料であり、前記ポリオール構成材料はポリイソシアネートを含まず;
前記第2の構成材料は、1分子あたり少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート構成材料であり、前記イソシアネート構成材料はポリオールを含まない;
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の構成材料の前記アルキルシリケートは、存在する場合、オルトケイ酸テトラエチル(「TEOS」)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記オルトギ酸アルキルは、存在する場合、オルトギ酸トリメチル(「TMOF」)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オルトギ酸アルキルは、存在する場合、オルトギ酸トリエチル(「TEOF」)である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の構成材料は、前記第1の構成材料および前記第2の構成材料の組み合わせの重量の4〜6%を占める量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月14日に出願された米国特許仮出願第62/161603号、および2015年5月15日に出願された同62/161923号の非仮出願である。各出願に対する優先権の主張を行い、各出願を本明細書にすべて記載されているように援用する。
【0002】
本発明は、コールドボックスまたはノーベイクプロセスに使用される3パートポリウレタン系バインダーシステムであって、第1および第2パートは従来のバインダー構成材料を含み、第3パートはオルトケイ酸テトラエチル(「TEOS:tetraethyl orthosilicate」)などのアルキルシリケート、オルトギ酸トリメチル(TMOF:trimethyl orthoformate)もしくはオルトギ酸トリエチル(TEOF:triethyl orthoformate)などのオルトギ酸アルキル、またはこれらの組み合わせを含む3パートポリウレタン系バインダーシステムに関する。バインダーシステムは、一部の金属の鋳込みの際に観察される金属−鋳型反応の量を低下させる。
【背景技術】
【0003】
イングランドのバーミンガム大学(University of Birmingham)のジョンキャンベル(John Campbell)教授は、信頼できる鋳物を製造するための一連の規則を作成した。彼が指摘した問題の1つは、非鉄金属鋳物の表面近くに生じる欠陥に関係する。これらの欠陥について提唱されている説明として、反応性アルミニウム表面による大気水の還元の結果、液体金属に水素が溶解することがある。金属が凝固するにつれ、金属中の水素の溶解度が低下し、固体金属中に水素のバブルが生じる。これらは、早期破損を起こし得る。本出願では、この作用を、部分品が形成される鋳型と金属の界面で起こる反応であるため「金属鋳型反応」という。
【0004】
スコグルンド(Skoglund)に対する米国特許第6288139号(「スコグルンド’139」)には、鋳物用バインダーシステムであって、パートIフェノール樹脂構成材料およびパートIIポリイソシアネート構成材料が使用され、パートII構成材料は0.1〜5重量%のオルトエステルを含む、鋳物用バインダーシステムが開示されている。この重量%はパートII構成材料の重量に対するものである。典型的には、これらのバインダーシステムは、55/45重量比でパートIおよびIIを使用する。スコグルンド’139には、オルトエステルは、有機イソシアネートを安定化することで知られていることが認識されているが、スコグルンド’139以前に教示された使用は、鋳物用バインダーおよび鋳物用混合物にまで及んではいなかった。パートII構成材料に使用される場合、オルトエステルは、鋳物用型の引張強さを改善させることが観察され、パートII構成材料は、使用時により低い濁度を有することが観察された。
【0005】
ポリオールおよびポリイソシアネート構成材料の具体的な詳細は、当該技術分野において十分に論じられており、したがって本明細書にこれ以上記載しない。しかしながら、本構成材料の少なくとも1つと共に利用される溶剤が存在し、一般には、構成材料の両方と共に溶剤が使用される。ポリオールおよびポリイソシアネート構成材料はどちらも、液体形態で使用される。液体ポリイソシアネートは無希釈形態で使用できるけれども、固体または粘稠なポリイソシアネートは、有機溶剤に溶かした溶液の形態で使用してもよい。場合によっては、溶剤はポリイソシアネート溶液の最大80重量%を占めてもよい。第1の構成材料に使用されるポリオールが固体または高粘稠液体である場合、好適な溶剤を使用して適切な応用特性を可能にすべく粘度を調整する。
【0006】
特に本明細書に定義したような金属鋳型反応は、金属が注入されるとき鋳型から水分を除去することが主提案である、進行中の問題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの従来技術の欠点は、金属鋳込みプロセスにおける金属−鋳型反応を低下させるための方法である本発明により少なくとも一部克服される。本方法は、下記ステップ:
有機バインダーシステムおよび耐火性成形材料を用意するステップであって、有機バインダーシステムは使用時まで組み合わされない3つの構成材料として用意され、第3の構成材料はアルキルシリケートおよびオルトギ酸アルキルの少なくとも1つを含むステップ;
賦形可能な鋳物用混合物を得るため、有機バインダーシステムの少なくとも最初の2つの構成材料を耐火性成形材料と混合するステップ;
賦形可能な鋳物用混合物を鋳型または中子に成形するステップ;および
成形された鋳型または中子を硬化させるステップ
を有する。
【0008】
本方法の一部では、有機バインダーシステムの3つのすべての構成材料は耐火性成形材料と混合される前に組み合わされる。
【0009】
本発明の概念を含む他の方法では、有機バインダーシステムの第1および第2の構成材料のみが、耐火性成形材料と混合される前に組み合わされる。これらの方法の一部では、有機バインダーシステムの第3の構成材料は、成形された鋳型または中子に塗布される。これらの後者の方法の一部では、第3の構成材料は、金属鋳込みプロセス中に溶融金属に曝される鋳型または中子の表面のみに第3の構成材料をスプレーすることにより塗布される。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1および第2の構成材料が第3の構成材料とともにあるいはなしで組み合わされ、アミン触媒で硬化されると、フェノール系ウレタンポリマーが生じるように、第1の構成材料は、1分子あたり少なくとも2つのヒドロキシ基を有するフェノール系ベース樹脂を含むポリオール構成材料であって、ポイオール構成材料はポリイソシアネートを含まないポリオール構成材料であり;第2の構成材料は、1分子あたり少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート構成材料であって、前記イソシアネート構成材料はポリオールを含まないポリイソシアネート構成材料である。
【0011】
本発明の概念を含む方法の多くでは、第3の構成材料のアルキルシリケートは、存在する場合、オルトケイ酸テトラエチル(「TEOS」)である。
【0012】
本方法の多くでは、オルトギ酸アルキルは、存在する場合、オルトギ酸トリメチル(「TMOF」)である。これらの方法の一部ではオルトギ酸アルキルは、存在する場合、時にTEOSを含まなくてもオルトギ酸トリエチル(「TEOF」)をさらに含む。
【0013】
本発明の概念の方法では、第3の構成材料は、第1および第2の構成材料を合わせた重量の4〜6%に相当する量で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らにより行われた他の研究からは、高い相対湿度の存在下で維持される、鋳物用型に引張強さを与えるため、鋳物用バインダーシステムに第3のパートを供給することが有用であることが示された。こうした研究では、パートIII構成材料を与えると、各パートが使用時まで別々に維持されることを可能にする。
【0015】
これらの金属鋳型反応の問題に対する1つの解決策は、ポリウレタンコールドボックス(PUCB:polyurethane cold box)バインダーシステムを得るため、3構成材料アプローチを使用するバインダー組成物に明らかに見出されてきた。こうしたシステムでは、パートI構成材料は、ポリオールベース樹脂および一連の好適な補足物を含み、パートII構成材料は、ポリイソシアネートを一連の好適な補足物を伴って含み、パートIII構成材料は、オルトケイ酸テトラエチル(「TEOS」)などのアルキルシリケートと、オルトギ酸トリメチル(「TMOF」)およびオルトギ酸トリエチル(「TEOF」)が個別に使用してもあるいは組み合わせて使用してもよい例示的化合物であるアルキルオルトエステルとの少なくとも1つ含む。
【0016】
オルトギ酸トリメチルは、トリメトキシメタンとも呼ばれ、CAS番号149−73−5でも識別される。構造的には、オルトギ酸トリメチルは炭素原子に結合した3つのメトキシ基を有する。炭素原子の4つ目の結合は水素原子への結合である。TMOFは、シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)および他の供給先から市販されている。
【0017】
オルトギ酸トリエチルは、ジエトキシメトキシエタンおよび1,1,1−トリエトキシメタンとも呼ばれ、CAS番号122−51−0でも識別される。構造的には、オルトギ酸トリエチルは、炭素原子に結合した3つのエトキシ基を有する。炭素原子の4つ目の結合は水素原子への結合である。TEOFは、98%純度でシグマアルドリッチおよび他の供給先から市販されている。
【0018】
オルトケイ酸テトラエチルは、テトラエトキシシランとも呼ばれ、CAS番号78−10−4で識別される。構造的には、オルトケイ酸テトラエチルは、オルトシリケート核の酸素原子に結合した4つのエチル基を有する。TEOSは、シグマアルドリッチおよび他の供給先から99.999%純度で市販されている。
【0019】
フェノール樹脂およびポリイソシアネートは、コールドボックスプロセスまたはノーベイクプロセスに使用されていることが従来から知られている化合物からなる群から選択することができる。本発明の概念は本組成物のこれらの部分に内在しないと考えられるためである。
【0020】
より詳細にフェノール樹脂に言及すると、フェノール樹脂は一般に、アルデヒド、特にRが水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル部分である式RCHOのアルデヒドとフェノールの縮合生成物から選択される。縮合反応は、典型的には130℃未満の温度で液相において行われる。多くのこうしたフェノール樹脂が市販されており、容易に分かるであろう。
【0021】
好ましいフェノール樹脂構成材料は、ベンジルエーテル型のフェノール樹脂を含むと考えられる。フェノール樹脂の調製には、アルキルフェノール、たとえばo−クレゾール、p−ノニルフェノールまたはp−tert−ブチルフェノールを、特にフェノールとの混合物において使用することが、個々の場合に好都合であり得る。任意に、これらの樹脂は、ヒドロキシメチレン基をメチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基のようなアルキル基でキャップすることにより得られるアルコキシル化末端基を特徴としてもよい。
【0022】
高分子イソシアネートに関しては、多くの市販されている高分子イソシアネートがこの特定市場を対象としているけれども、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むポリイソシアネート構成材料を使用することが好ましいこともある。コールドボックスまたはポリウレタンノーベイクプロセスのための2構成材料バインダーシステムのイソシアネート構成材料(第2の構成材料)は通常、好ましくは2〜5つのイソシアネート基を有する脂肪族、環状脂肪族または芳香族のポリイソシアネートを含む。さらにこうしたポリイソシアネートの混合物を使用してもよい。脂肪族ポリイソシアネートの中で特に好適なポリイソシアネートは、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、脂環式ポリイソシアネートの中で特に好適なものは、たとえば、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであり、芳香族ポリイソシアネートの中で特に好適なものは、たとえば、2,4’−および2,6’−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびそれらのジメチル誘導体である。好適なポリイソシアネートのさらなる例として、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシレンジイソシアネートおよびそれらのメチル誘導体、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(高分子MDI)等がある。すべてのポリイソシアネートがフェノール樹脂と反応して架橋ポリマー構造を形成するけれども、実際は芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(高分子MDI)およびそれらの混合物は特に好ましい。
【0023】
ポリイソシアネートは、フェノール樹脂の硬化を行うのに十分な濃度で使用される。一般に、使用される(無希釈)フェノール樹脂の質量に対して10〜500重量%、好ましくは20〜300重量%のポリイソシアネートが利用される。ポリイソシアネートは液体形態で使用される。液体ポリイソシアネートは無希釈形態で使用でき、固体または粘稠なポリイソシアネートは、有機溶剤に溶かした溶液の形態で使用され、溶剤は、ポリイソシアネート溶液の最大80重量%を占めることが可能である。
【0024】
いくつかの溶剤が、パートIおよびパートII構成材料に使用できる。1つは二塩基性エステルであり、一般にはジカルボン酸のメチルエステルである。シグマアルドリッチは、nが整数2〜4である構造式CH
3O
2C(CH
2)
nCO
2CH
3を有すると考えられる商品名DBEでこの種の二塩基性エステルを販売している。別の溶剤は、150〜275℃の範囲の沸点を有する石油留分の一般名であると理解されるケロシンである。
【0025】
有用である他の溶剤は、さらにそれぞれSOLVESSO 100、SOLVESSO 150およびSOLVESSO 200としても知られるAROMATIC SOLVENT 100、AROMATIC SOLVENT 150およびAROMATIC SOLVENT 200として商業的に販売されている。これらは、それぞれCAS登録番号64742−95−6、64742−95−5および64742−94−5を有する。SOLVESSOは、エクソン(Exxon)の存続期間満了登録商標であるが、溶剤は、他の供給先から出るときでもそれらの名称で呼ばれる。
【0026】
配合物のそれぞれのパートには性能添加剤も含まれる。パートI構成材料において、特に好ましい性能添加剤は、フッ化水素酸(49%水溶液として一般に使用されるが、異なる希釈度でまたは別の希釈剤と共に使用してもよい)である。さらに脂肪酸に基づくカップリング剤および添加剤を使用してもよい。パートII構成材料において、好ましい性能添加剤は、ホスホロキシトリクロリドおよびベンジルホスホロキシジクロリドを含むと考えられる変性脂肪油および可使時間延長剤を含むと考えられる。
【0027】
1つの特定の配合物では、パートI構成材料は重量ベースで下記表からなると考えられる。
【0029】
対応するパートII構成材料は、重量ベースで以下の表からなると考えられる。
【0031】
同じ配合物において、パートIII構成材料は、TMOFおよびTEOFを100/0〜0/100の任意の重量比で含むと考えられる。
【0032】
ガスポロシティが生じる傾向を、ステップコーン中子の円筒状鋳物を使用することにより評価した。この方法では、標準的な混砂機を用いてパートIおよびパートII構成材料を砂と3分間混合した。パートIII構成材料は砂上で予備混合してもよいし、あるいはパートIおよびパートII構成材料と同時に加えてもよい。構成材料と砂の混合後、混合された砂をステップコーンパターンに手込めし、標準アミン、特に、ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA、CAS 996−35−0)で4秒間ガス処理し、20秒間空気でパージした。
【0033】
使用されるステップコーン中子および試験方法の図は、「テスト・キャスティング・エバリュエーティング・オブ・ケミカル・バインダー・システムズ(Test Casting Evaluating of Chemical Binder Systems)」、トードフ(Tordoff)ら著、エーエフエス・トランスアクションズ(AFS Transactions)、第80−74巻、p.149−158の
図1〜4に図示される。その刊行物の
図5は、表面下ポロシティ欠陥を明らかにする切断されたステップコーン鋳物を示す。
【0034】
トードフ試験に従って、溶融アルミニウム(700℃)を鋳型アセンブリに注入し、凝固させる。鋳型からステップコーン鋳物を取り出し、ステップコーン中子の表面近傍の表面下ポロシティの量を評価するため切断する。ポロシティの激しさは、数値評価:1=極めて良い、2=良い、3=ふつう、4=不良、5=非常に不良を割り当てることにより示される。数値評価は、ポロシティの数および大きさ、それらの位置、ならびに対応する金属/砂比に基づき割り当てられる。1または2の評価は一般に、表面下のポロシティ欠陥がほとんど、あるいはまったくないことを意味し、これは実際の鋳物工場の現場において極めて良い。4またはそれを超える評価は、激しい表面下のポロシティ欠陥の存在を示し、実際の鋳物工場の現場において許容可能な品質を有する鋳物を製造するため何らかの措置(すなわち、コーティングの塗布またはガス抜きの改善)が必要とされる。表面下のポロシティが特に激しい一部の試験では、5+の評価を与え、評価区間外のガスポロシティを示してもよい。
【0035】
パートIII構成材料により生じた、表面下のポロシティに対するプラスの作用を立証するため、異なる砂混合物を用いて製造したステップコーン中子でステップコーン鋳物試験を行った。いずれの場合も、パートIおよびIIは、55/45重量比のASKケミカルズ(ASK Chemicals)から入手可能な市販のバインダーシステムであり、パートIはISOCURE FOCUS 100およびパートIIはISOCURE FOCUS 201であった。すべての場合において、バインダーを、パートIおよびパートIIを合わせて1重量%の割合で、市販されているWEDRON 410砂に塗布した。
【0036】
実施例Aでは、パートIII構成材料は存在しなかった、すなわち、実施例Aはベースラインケースであった。
【0037】
実施例Bでは、パートIII構成材料は全部が、バインダーに対して4重量%で存在するTEOS(オルトケイ酸テトラエチル、CAS 78−10−4)であった。パートIII構成材料をバインダーと同時に砂に加えた。
【0038】
実施例Cでは、パートIII構成材料は全部が、バインダーに対して4重量%のTEOFであった。パートIII構成材料をバインダーと同時に加えた。
【0039】
実施例Dでは、パートIII構成材料は全部が、バインダーに対して6重量%のTEOFであった。しかしながら、パートIII構成材料を砂混合物に加える代わりに、製造された直後のステップコーン中子の外表面にスプレーした。
【0040】
本試験が終了したとき、実施例Aで得られた切断されたステップコーン鋳物を検査し、パートIII構成材料がないベースラインケースに4.5(「不良」)の評価を割り当てた。
【0041】
パートIII構成材料(TEOSのみ)を、バインダー(パートIおよびIIの組み合わせ)と同時に砂に加えた実施例Bで得られた切断されたステップコーン鋳物の検査に3(「改善」)の評価を割り当てた。
【0042】
パートIII構成材料としてTEOSの代わりにTEOFを用い、バインダー(パートIおよびIIの組み合わせ)と同時に砂に加えた実施例Cで得られた切断されたステップコーン鋳物に2.5(「良い」)の評価を割り当てた。
【0043】
より多くの量のTEOFを使用したが、今回TEOFを砂混合物に加えるのではなく成形されたステップコーン中子の表面にスプレーした実施例Dの切断されたステップコーン鋳物の検査にも、2.5(「良い」)の評価を割り当てた。
【0044】
これらの実施例から、特にパートIII構成材料がTEOS、TEOFまたはおそらくTEOSとTEOFの組み合わせである場合、パートIII構成材料を切り離して使用すると、パートIII構成材料を使用しない方法よりも改善があることが立証される。さらにTMOFをTEOFの代わりに、あるいはTEOFと組み合わせて使用し得ることも予想される。これは、砂とバインダーの混合物を硬化した中子または鋳型に成形するまでパートIII構成材料を塗布しない場合にも当てはまる。