特許第6798092号(P6798092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6798092内燃エンジンのバルブの可変的な作動のためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798092
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】内燃エンジンのバルブの可変的な作動のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20201130BHJP
   F01L 9/02 20060101ALI20201130BHJP
   F01L 1/38 20060101ALI20201130BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   F01L13/00 301Y
   F01L9/02 A
   F01L13/00 301N
   F01L1/38
   F02D13/02 A
   F02D13/02 H
   F01L13/00 301C
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-164790(P2016-164790)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-115851(P2017-115851A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】15202663.9
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513318515
【氏名又は名称】シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルカテッロ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッタネオ フランセスコ
(72)【発明者】
【氏名】ドリア ヴィットリオ
【審査官】 坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−513092(JP,A)
【文献】 特開2000−170545(JP,A)
【文献】 特開昭58−152139(JP,A)
【文献】 特開平05−321620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00−1/46,9/00−9/04,
13/00−13/08,
F02D 13/00−28/00,
F02B 61/00−79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンのエンジンバルブの可変的な作動のためのシステムであって、前記システムは、
油圧装置を備え、前記油圧装置は、
マスターピストンと、
スレーブピストンであって、前記マスターピストンと前記スレーブピストンとの間に配置された流体体積によって前記マスターピストンによって駆動され得るスレーブピストンと、 前記スレーブピストンの動きを前記マスターピストンの動きから独立した状態にすべく、前記流体体積が前記油圧装置の排出口と連通して配置される状態を実現するためのソレノイドバルブと、を含み、前記システムは、
前記マスターピストンを駆動して運動させるように設計されたカムシャフトと、
フト時間および開閉時間のうち少なくとも1つに従っ前記エンジンバルブを4行程エンジン動作モード内で調節するように前記ソレノイドバルブを制御するための制御ユニットと、をさらに備え、
前記リフト時間および前記開閉時間は、前記内燃エンジンの少なくとも1つの動作条件を示す少なくとも1つのパラメータに応じて可変的であり、
前記システムは、
前記カムシャフトが前記マスターピストンを介して、少なくとも4行程エンジン動作モードで前記エンジンバルブを調節するための第1の部分によって画定され、少なくとも2行程エンジン動作モードで前記エンジンバルブを調節するための第2の部分によってさらに画定される複合輪郭が設けられたカムを有し、
前記制御ユニットは、予め定められたエンジン負荷閾値よりも大きいと判断されるエンジン負荷に基づいて前記2行程エンジン動作モードを選択し、前記予め定められたエンジン負荷閾値以下と判断される前記エンジン負荷に基づいて前記4行程エンジン動作モード選択し、前記カムの前記複合輪郭の前記第2の部分および前記カムの前記複合輪郭の前記第1の部分のうち少なくとも1つに沿前記マスターピストンの動きから前記スレーブピストンの動きを独立した状態にするように、選択された前記エンジン動作モードに基づいて前記ソレノイドバルブを制御する、
システム。
【請求項2】
前記エンジンバルブの開放の瞬間を変化させることが可能であるように、クランクシャフトに対して前記カムシャフトの角度位置を調整するように設計された位相可変装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御ユニットは選択された前記エンジン動作モードに基づいて前記位相可変装置を調節する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記2行程エンジン動作モードで前記エンジンバルブの開放の前記瞬間を遅らせる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、中に格納された基準値を、前記エンジン負荷を示す測定されたパラメータと比較する、請求項1から4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記複合輪郭の前記第1の部分および前記第2の部分は、前記2行程エンジン動作モードにおいて前記エンジンバルブを調節するように予め構成され、前記制御ユニットは前記第1の部分および前記第2の部分に沿前記マスターピストンの動きから前記スレーブピストンの動きを独立した状態にして、前記第1の部分および前記第2の部分とは異なるリフト輪郭に従って前記エンジンバルブを調節するように前記ソレノイドバルブを制御する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記4行程エンジン動作モードにおいて、前記制御ユニットは前記複合輪郭前記第2の部分に沿前記マスターピストンの動きから前記スレーブピストンの動きを独立した状態にすることで前記エンジンバルブのリフトを無効にするように前記ソレノイドバルブを制御
前記エンジンバルブの前記リフトは、前記独立した状態になっていないとしたら前記第2の部分によって引き起こされる、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
内燃エンジンのエンジンバルブの可変的な作動のためのシステムを制御するための方法であって、前記システムは、
油圧装置を備え、前記油圧装置は、
カムシャフトによって作動させられるマスターピストンと、
スレーブピストンであって、前記マスターピストンによって、前記マスターピストンと前記スレーブピストンとの間に配置された流体体積によって駆動させられ得る、スレーブピストンと、
前記スレーブピストンの動きを前記マスターピストンの動きから独立した状態にすべく、前記流体体積が前記油圧装置の排出口と連通して配置される状態を実現するためのソレノイドバルブと、を含み、
前記システムは、
前記カムシャフトが前記マスターピストンを介して、少なくとも4行程エンジン動作モードで前記エンジンバルブを調節するための第1の部分によって画定され、少なくとも2行程エンジン動作モードで前記エンジンバルブを調節するための第2の部分によってさらに画定される複合輪郭が設けられたカムと、
フト時間および開閉時間のうち少なくとも1つに従っ前記エンジンバルブを調節すべく、前記ソレノイドバルブを制御するための制御ユニットをさらに備え、
前記リフト時間および前記開閉時間は、前記内燃エンジンの少なくとも1つの動作条件を示す少なくとも1つのパラメータに応じて可変的であり、
前記方法は、
予め定められたエンジン負荷閾値よりも大きいと判断されるエンジン負荷に基づいて前記2行程エンジン動作モードを選択し、前記予め定められたエンジン負荷閾値以下と判断される前記エンジン負荷に基づいて前記4行程エンジン動作モード選択する段階と、
選択された前記動作モードで前記エンジンバルブを調節すべく、前記選択された動作モードに基づいて前記ソレノイドバルブを制御する段階と、
2つの前記エンジン動作モードのうち少なくとも1つに対して、前記リフト時間および前記開閉時間のうち少なくとも1つに従っ前記エンジンバルブを調節すべく、前記ソレノイドバルブを制御する段階と
を備える、方法。
【請求項9】
前記方法は、前記複合輪郭の前記第2の部分および前記第1の部分のうち少なくとも1つに沿前記マスターピストンの動きから前記スレーブピストンの動きを独立した状態にするように、選択された前記動作モードに基づいて前記ソレノイドバルブを制御する段階を更に備える
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記システムは、クランクシャフトに対して前記カムシャフトの角度位置を調整するように設計された位相可変装置を備え、前記方法は、選択された前記動作モードに基づいて、前記エンジンバルブの開放の瞬間を変化させることが可能であるように前記位相可変装置を制御する段階を更に備える、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記システムにおいて、前記複合輪郭の前記第1の部分および前記第2の部分は、前記2行程エンジン動作モードにおいて前記エンジンバルブを調節するように事前に計画され、
前記方法は、前記2行程エンジン動作モードにおいて前記スレーブピストンの動きを、前記複合輪郭の前記第1の部分および前記第2の部分に沿前記マスターピストンの動きから独立した状態にして、前記第1の部分および前記第2の部分とは異なるリフト輪郭に従って前記エンジンバルブを調節するように前記ソレノイドバルブを制御する段階を更に備える
請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記4行程エンジン動作モードにおいて前記スレーブピストンの動きを、前記複合輪郭前記第2の部分に沿前記マスターピストンの動きから独立した状態にすることで前記エンジンバルブのリフトを無効にするように前記ソレノイドバルブを制御する段階を更に備え、
前記エンジンバルブのリフトは、前記独立した状態になっていないとしたら前記第2の部分によって引き起こされる、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンのエンジンバルブの可変的な作動のためのシステムに関し、
マスターピストンと、
スレーブピストンであって、上記マスターピストンと上記スレーブピストンとの間に配置された流体体積によって、上記マスターピストンで駆動され得る、スレーブピストンと、
上記スレーブピストンを上記マスターピストンの動作から独立した状態にすべく、上記流体体積が排出口と連通して配置された状態を想定しているように構成された、ソレノイドバルブと、を含む油圧装置と、
上記マスターピストンを駆動して運動させるように設計されたカムシャフトと、
動作条件を示す1または複数のパラメータに応じて可変的である、リフト時間および/またはエンジンの開閉時間に従って、上記4行程エンジン動作モードにある上記エンジンバルブを調節すべく、上記ソレノイドバルブを制御するように構成された、制御ユニットと、を備えるタイプの内燃エンジンのエンジンバルブの可変的な作動のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、上述の複数の特性を有し、「Multiair」という商標で市場において販売されている複数のエンジン吸気バルブの可変的な作動のためのシステムが設けられた内燃エンジンをしばらくの間、開発してきた。本出願人は、上で特定されたタイプのシステムおよびこのシステムの複数の構成要素が設けられたエンジンに関する多数の特許および特許出願の保持者である。
【0003】
添付された複数の図の図1は、内燃エンジンのシリンダの2つの吸気バルブ7の作動のために使用される、当該システムの例を示す。示された例において、当該システムは、カム4によって動かされるマスターピストン2を備え、スレーブピストン6とマスターピストン2との間にそれ自体を配置する流体体積Vによって、後者を開放状態にもってくるべく、2つの吸気バルブ7のそれぞれのスレーブピストン6を駆動させる。
【0004】
ソレノイドバルブ8は、油圧回路の複数のチャンバの連通を制御し、様々なピストンが流体蓄圧器と接続された排出口12と共に油圧回路内を移動する。ソレノイドバルブが閉鎖状態Bにもってこられた場合、マスターピストン2およびスレーブピストン6は、複数のバルブ7の開閉運動の伝達において固く接続される。代わりに、ソレノイドバルブが開放されている場合、様々なピストンの複数のチャンバは、排出口12で低い圧力と連通し、スレーブピストン6は従って、マスターピストン6の動きから独立した状態にされる。ソレノイドバルブ8は通常、開放状態にあり、バルブ自体の電気的作動に続いて、閉鎖状態へと入る。
【0005】
記載されたシステムにおいて、ソレノイドバルブ8がアクティブ化される場合、すなわちそれが閉鎖状態にもってこられた場合、エンジンバルブがカムの動作(完全なリフト)に続く。エンジンバルブの予期される閉鎖は、加圧流体体積Vを空にし、それぞれの伸縮ばね(不図示)の作用の下でバルブ7の閉鎖を獲得すべく、ソレノイドバルブ8を開放することによって獲得され得る。同様に、バルブ7の遅らされた開放は、ソレノイドバルブ8の閉鎖を遅らせることによって獲得され得る一方で、バルブの遅らされた開放および予期される閉鎖の組み合わせは、対応するカムを押し出す間にソレノイドバルブを閉めたり開いたりすることによって獲得され得る。代替の戦略によると、本出願人の名で出願された欧州特許出願第1726790A1号(EP1726790A1)の教示と一致して、それぞれの吸気バルブは、マルチリフトモードで、すなわち2またはそれより多くの開閉の反復する「サブサイクル」に従って、制御され得る。それぞれのサブサイクルにおいて、吸気バルブが開放し、次に、完全に閉鎖する。
【0006】
上記で述べられたことを考慮し、電子制御ユニットが、開放の瞬間の、および/または閉鎖の瞬間の、および/または吸気バルブのリフトの変動を、アクセルペダルの位置、エンジンの毎分回転数(r.p.m.)、またはエンジン温度(例えば、油の温度または冷却材の温度)等のエンジンの1または複数の動作パラメータに応じて得ることが結果的に可能である。これは、最適なエンジン効率があらゆる動作条件で得られることを可能にする。
【発明の概要】
【0007】
[発明の目的および概要]
本出願人がここで追求する全体的な目的は、特に以下の複数の利点:
広い範囲の値の圧縮比、特に高い値の圧縮比でエンジンを動作させる可能性、
消費レベルの改善、
同じ出力が供給されることを仮定して、小さい寸法のエンジンを設ける可能性、
複数のピストンによって行われるポンプ作業の減少、および
ターボ過給機の作用の範囲内でより低い圧縮比を提供する可能性、の1または複数が実現されることを可能にするであろう複数のバルブの可変的な作動のためのシステムを提供することによって、エンジンの効率をさらに改善することである。
【0008】
上に示された目的は、請求項1の複数の特性を備える内燃エンジンのエンジンバルブの可変的な作動のためのシステムを介して実現される。
【0009】
本明細書において記載されるシステムは、エンジンの複数の動作条件に基づいて、特にエンジン負荷の複数の条件に基づいて、4行程動作モードおよび2行程動作モードで選択的にエンジンバルブを作動させることが可能である点で特徴付けられる。
【0010】
本明細書で記載されるシステムは、可変的な方法でエンジンバルブを作動させるべく、上記の複数の作動システムの能力を利用することにより、上記の二つで構成される動作モードを提供することが可能である。一般に、本明細書に記載されるシステムは、以下の複数の特性を提示する:
カムシャフトが、マスターピストンを介して少なくとも4行程エンジン動作モードでエンジンバルブを調節するための第1の部分によって画定され、少なくとも2行程エンジン動作モードでエンジンバルブを調節するように予め構成された第2の部分によってさらに画定される複合輪郭が設けられたカムを有し、
制御ユニットが、上述の第2のカム輪郭に沿って、または上述の第1のカム輪郭に沿って、スレーブピストンをマスターピストンから独立した状態にすべく、エンジン負荷の複数の条件に応じてエンジンバルブの2行程と4行程動作モードとの間で1つを選択し、選択されたモードに基づいて、ソレノイドバルブを制御するように構成されている。
【0011】
上述の2つの2行程および4行程エンジン動作モードでバルブの制御を可能にすることに加え、本明細書に記載されるシステムは、さらに、いかなる動作条件においても最適な効率を保証すべく、エンジンの複数の動作条件に応じてエンジンバルブの可変的な作動を提供することが可能である。
【0012】
以下で分かるように、望まれる実施形態において、作動システムは、クランクシャフトに対してカムシャフトの角度位置を調整するように設計された位相可変装置(phase variator)を想定する。
【0013】
本発明は、さらに、請求項9で定義されるように、当該タイプのエンジンバルブの作動のためのシステムのための制御方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[図面および本発明のいくつかの実施形態の簡単な説明]
本発明のさらなる複数の特性および利点は、非限定的な例として純粋に提供される添付の複数の図を参照して、次の記載から出現するであろう。
【0015】
図1】周知の技術による内燃エンジンのバルブの可変的な作動のためのシステムの図である。
【0016】
図2】2つの例、内燃エンジンの4行程動作サイクルに関する例、および2行程動作サイクルに関する例の概略図である。
【0017】
図3】本発明の一実施形態による内燃エンジンのバルブの可変的な作動のためのシステムの図である。
【0018】
図4A】4行程エンジンモードに対するエンジンの吸気バルブのリフトの輪郭を説明する。
図4B】2行程エンジンモードに対するエンジンの吸気バルブのリフトの輪郭を説明する。
【0019】
図5】吸気バルブの作動について本明細書に記載されるシステムで使用されるカム輪郭の例を説明する。
【0020】
図6】吐出しバルブの作動について本明細書に記載されるシステムで使用されるカム輪郭の例を説明する。
【0021】
図7A】4行程エンジンモードに対するエンジンの排気バルブのリフトの輪郭を説明する。
図7B】2行程エンジンモードに対するエンジンの排気バルブのリフトの輪郭を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次の記載において、様々な特定の詳細が、複数の実施形態の詳細な理解を可能にすることを目的とし示される。複数の実施形態が、特定の詳細の1または複数を用いずに、または他の複数の方法、構成要素、または材料等を用いて提供され得る。他の事例において、周知の複数の構造、材料または動作は、示されないまたは詳細に記載もされない。そうすることで、実施形態の様々な態様は不明瞭にはならないであろう。
【0023】
本明細書で使用される複数の参照は、便宜上提供されるのみであり、従って、複数の実施形態の保護領域または範囲を定義しない。
【0024】
周知であるように、内燃エンジンの典型的な4行程動作サイクルは、連続して、吸気行程、圧縮行程、拡張行程、および排気行程を備える。最初の2つの行程、吸気および排気行程が、第1のクランクシャフト回転で起こる一方で、次の2つの行程、拡張および排気行程が、後続のクランクシャフト回転で起こる。通常、ピストンが上死点(TDC)にまだ到達していなかった場合、吸気行程は、前のサイクルの排気行程の終了の少し前に開始する。
【0025】
また、2行程サイクルは、4つの行程‐吸気、圧縮、拡張、および掃気を想定している。しかし、それらの行程は、全く同じクランクシャフト回転の間に起こる。この動作モードにおいて、燃焼済みガスの排気はいわゆる掃気行程で生じ、主に、空気‐ガソリン混合物が燃焼室の中へ入る結果として生じ、それは、燃焼室から燃焼済みガスを押し出す。
【0026】
従来の2行程エンジンは、4行程エンジンとしての複数のエンジンバルブを有さないが、シリンダの複数の壁上に直接作成された複数のポートまたはスリットを有し、それらは、ピストンの往復運動の結果として開いたり、閉じたりする。
【0027】
ここで、当該技術分野の構成において、2行程モードにおいても動作させるための事前に計画された4行程内燃エンジンが既に提案されたことに留意されるべきである。これは、2行程モードに特有のさらなるカムセットを提供することによって、および、このカムセットを吸気および排気バルブと接続配置し、同時に通常の4行程モード用の複数のカムをそれらのバルブから切断するように設計された適切な複数の機械的部材を提供することによって得られる。
【0028】
この接続において、文献番号JPS58152139は、2行程動作モードにおける複数のバルブの作動用の第1のセット、および、4行程動作モードにおける複数のバルブの作動用の第2のセットといった複数のエンジンバルブの作動用の2つの異なるカムセットで正確に予め構成された、過給された内燃エンジンを記載している。2つのセットの一方または他方の選択は、複数のバルブに関連付けられる複数のロッカを位置付けるためのシステムを介して起こり、それは、複数のロッカを、それらの1方のセットのカムとの係合の条件とそれらの他方のセットのカムとの係合の条件との間で動かすように設計される。
【0029】
2行程サイクル用の複数のカムは、掃気行程において、吸気および排気バルブが同時に開放位置のままで保持されるような態様で構成され、そうすることで、吸気ダクトから入るガスが燃焼済みガスを燃焼室から押し出し得ることにさらに留意されるべきである。一方で、チャンバのこの掃気の作用は、空気‐ガソリン混合物が燃焼室の中へ供給される過給圧力によって促進される。
【0030】
また、2行程サイクルにもよる動作の可能性に由来する内燃エンジンの複数の利点は、主に高負荷の条件に関係があり、燃焼室内で起こる、関連する圧力を減少させるべく、4行程サイクルの燃焼事象の数の2倍の数のこのサイクルの燃焼事象を利用することが可能であるという事実に存在する。これは、いかなる爆発のリスクもなく、より高い圧縮比を設定し、場合によっては、同じ最大トルクが伝達されるという前提でエンジンの全体的な寸法を減少させる可能性をエンジンの設計者に提供する。
【0031】
本明細書で記載される複数のエンジンバルブを可変的に作動させるためのシステムは、上記で検討された文献番号JPS58152139の解決策によって想定される可能性と同じく、4行程動作モードから2行程動作モードへ移行することおよび2行程動作モードから4行程動作モードへ移行する可能性を提供すべく、予め構成される。
【0032】
以下で分かるように、上記の結果はしかしながら、始めに記載されたエンジンバルブの作動のための複数のシステムを特徴付ける油圧システムと同じタイプを使用して、かつエンジンバルブの可変的な作動のその能力を利用して得られる。
【0033】
上で得られた作動システムは、従って、上記の周知の複数のシステムと同じ信頼性および可制御性の特性を提示するという点で特徴付けられる。さらに、本明細書に記載されるシステムは、2行程モードと4行程モードとの間で最も適した動作モードにおいてエンジンバルブを作動させるだけではなく、いかなる動作条件においても常に複数の最適な動作パラメータに従ってエンジンも動作させることが可能である。
【0034】
図3は、本明細書に記載される作動システムの例の概略図である。特に、図は、内燃エンジンのシリンダの2つの吸気バルブ7の作動のための当該システムの適用を示す。
【0035】
本明細書で記載された作動システムは、まず第1に、図1を参照して上記に記載されたものと同様のタイプの油圧バルブ作動装置を備える。図3を参照すると、上記の装置は、マスターピストン42と、2つの吸気バルブ7を駆動するように設計された2つのスレーブピストン44および46とを備える。油圧回路Cは、ピストン42、44、46が中で移動可能なそれぞれのチャンバ47、51、53を画定し、ピストン42によって動かされる油圧回路に含まれる流体体積がスレーブピストン44および46上に及ぼす作用の結果として、ピストン42の動作がスレーブピストン44および46の対応する動作を引き起こすような態様で、上述のチャンバを共に油圧で接続する。さらに、当該装置は、チャンバ47、51、53と排出口61との間の油圧接続を制御するように設計されたソレノイドバルブ60を備え、順に、排出口61は、流体蓄圧器80に接続される。ソレノイドバルブ60が上記の複数のチャンバを蓄圧器80と連通させる場合、カムが引き起こすその動作中にピストン42によって動かされる流体は、蓄圧器内へ排出されて、結果的にピストンの動作は、2つのスレーブピストン44および46へ伝達されない。さらに、この条件において2つの吸気バルブがそれらの開放位置にある場合、回路内に設定された低い圧力が原因で対応する複数の伸縮ばねがそれらを閉鎖位置へ戻らせ、この戻りの動作中に2つのスレーブピストン44および46によって動かされた流体体積も流体蓄圧器80内へ排出される。
【0036】
代わりに、ソレノイドバルブ60が上記の蓄圧器との連通を閉鎖する場合、チャンバ47とチャンバ51および53との間に備えられる流体体積は、蓄圧器80へ向かって外へ出ることを阻止され、従ってピストン42の変位の結果としてピストン44および46を駆動し得る。この条件において、マスターピストン42ならびにスレーブピストン44および46は、全体として、複数のバルブの開閉の動作の両方において固く接続される。以下で分かることになるように、開放の動作はカムシャフトによって調節され、閉鎖の動作は、代わりに、2つのバルブおよび上述のピストンに関連する様々な伸縮ばねによって調節される。
【0037】
ソレノイドバルブ60の開閉時間を適切に制御することによって、所望の時および方法においてエンジンバルブをそれぞれのカムの機械的な輪郭から独立した状態にすることが可能であり、従って開放の瞬間の変動および/または閉鎖の瞬間の変動および/またはバルブのリフトの変動を得ることが可能である。従って、例えば、遅れた開放、早期の閉鎖、遅れた開放および早期の閉鎖の組み合わせ、またはこの場合もいわゆる上述のマルチリフト戦略によって特徴付けられる、想定される複数の制御方策があってもよい。様々な制御戦略は、システムの制御ユニットにおいて保管される。マスターピストン42は、カム52によって駆動される。
【0038】
本明細書に記載されるシステムにおいて、当該カムは、記載された油圧装置のマスターピストン42を駆動するように設計され、複合輪郭、すなわち2行程エンジン動作モードおよび4行程エンジン動作モードの両方において複数のバルブの作動を可能にするように構成された輪郭を有する。
【0039】
図5は、上述の輪郭の例を説明する。まず第1に、当該輪郭は、2行程エンジン動作モードにおいて想定されるように、それぞれのクランクシャフト回転のためにバルブの開放を調節することを可能にすべく、(図において参照番号52Aおよび52Bでそれぞれ表記される)その延長部に沿った2つの別個のリフト曲線を提示する点で特徴付けられる。さらに、2つのリフト曲線のそれぞれは、バルブの迅速な開放を可能にし、従ってサイクルの掃気行程に有利に働くように、より急勾配の上昇する輪郭である初期の伸びを有する。
【0040】
4行程エンジン動作モードにおいて、輪郭の2つのリフト曲線のうち1つのみが使用され、システムは、上記の油圧装置の介入を介して他方の曲線をゼロに設定する、すなわち、ピストンにおいてこの他方の曲線によって引き起こされる動作はスレーブピストン44および46によって「認識」されないような態様で、蓄圧器80と連通しているマスターピストン42のチャンバ47を設定することを想定している、ということがここで留意されるべきである。
【0041】
本明細書に記載されるシステムは、クランクシャフトに対してカム52のカムシャフトの角度位置を調整するように設計された位相可変装置70をさらに備える。
【0042】
これは、選択されたエンジン動作モードに基づいて、複数のバルブの開放の瞬間を変化させることが可能であるように行われ、特に、吸気バルブが2つのモードのそれぞれに典型的である複数の時間に従って作動され得るような態様で動作する。
【0043】
この接続において、図2を再び参照すると、4行程動作モードにおいて‐複数の従来の制御モードに従って‐吸気行程が上死点(TDC)に対してわずかに先立って開始し、下死点(BDC)の後に終了する一方で、2行程動作モードにおいて(掃気行程と同時に起こる)当該吸気行程は、およそBDCで実施され、BDCに対してわずかに先立って開始し、吸気行程が4行程動作モードで終了する時点におよそ対応する時点で終了することが留意され得る。
【0044】
図4Aおよび図4Bをここで参照すると、これらは、図5のカム輪郭から開始して得られる当該2つの動作エンジンモードにおいて〜720°のクランクシャフトの〜複数の吸気バルブが後に続く回転用の2つの可能なリフト輪郭を例として示す。上の図から明らかに現れるように、4行程動作モードのリフト輪郭は、カム52の2つのリフト曲線のうち1つだけを再生成する点で特徴付けられる(曲線52Aに示される例において、同じシステムが状況に従って2の曲線の一方または他方を使用するように構成され得たことに留意されるべきである)。一方で、2行程エンジン動作モードのリフト輪郭は、代わりに、4行程エンジン動作モードの輪郭に対して約180°位相シフトされ、カム輪郭の一部のみを再生成する点で特徴付けられるので、従ってカム輪郭によって画定される最大のものと比較してより低いリフトピークおよび上述のカム輪郭によっておそらく決定されるものよりもまた短いバルブの開放の持続時間を識別する。
【0045】
上述されたことを考慮すると、示された2つの輪郭に従ってエンジンバルブを調節すべく、システムは従って、4行程動作モードで、カム輪郭の2つのリフト曲線のうち1つをゼロにもってくるようにソレノイドバルブ60を制御することを想定する一方で、2行程動作モードで、システムは、バルブの作動を遅らせるように位相可変装置を調節することを想定する。同時に、システムは、カムによって調節される両方のリフトをシステムがソレノイドバルブ60に実行させることになるようにソレノイドバルブ60を制御するが、理解したように、カムによって画定された対応する輪郭よりも小さい寸法を有するそれぞれの曲線に従って、両方のリフトを実行させることになるように、ソレノイドバルブ60を制御することを想定する。
【0046】
上記の制御を提供することを可能にすべく、システムは、(図3において参照番号100で表記された)制御ユニットを備え、それはまず第1に、それの複数の動作条件に基づいて、特にエンジン負荷に基づいて、エンジン動作モードを選択するように構成されている。様々な望まれる実施形態において、制御ユニットは、所与の値よりも高い負荷の複数の条件のために2行程エンジン動作モードを選択し、他の条件では4行程エンジン動作モードを代わりに選択するように構成されている。エンジン負荷を測定するためのシステムによって使用される複数のパラメータは、例えば、アクセルペダルの角度位置、吸気ダクトまたは排気ダクト内の圧力、燃焼室内の圧力等であってよい。いずれにせよ、制御ユニットは、中に格納された上述のエンジン負荷の所与の値に対応する基準値を有し、測定されたパラメータと基準値との間の比較に基づいて動作モードを選択するように構成されている。
【0047】
制御ユニットは、次に、選択されたモードでエンジンバルブを調節すべく、ソレノイドバルブ60および位相可変装置を制御する。
【0048】
上述のように、本明細書で記載されるシステムはまた、いずれにせよ、図1を参照して始めに記載されたタイプの複数の可変バルブ作動(VVA)システムで起こるものと同様の態様において、エンジンのスピード、負荷、温度等のエンジンの複数の動作条件に応じて複数のエンジンバルブの可変的な作動を調節すべく予め構成される。特に、ソレノイドバルブ60を制御することによって、所望の時および方法において、複数のエンジンバルブをそれぞれのカムの機械的な輪郭から独立した状態にし、従って開放の瞬間の変動および/または閉鎖の瞬間の変動および/またはバルブのリフトの変動を得ることが可能である。従って、例えば、遅れた開放、早期の閉鎖、遅れた開放および早期の閉鎖の組み合わせによって、またはこの場合も上述のいわゆるマルチリフト戦略によって特徴付けられる、想定された制御戦略があってもよい。
【0049】
一方、本明細書で記載されるシステムにおいて、上述の複数のバルブの可変制御は、上述したエンジンの複数の動作パラメータだけに基づくのではなく、選択された動作モードにも基づいていることに留意されるべきである。
【0050】
本明細書で記載されたシステムにおいて、複数のエンジンバルブの制御のための様々なモード‐例えば、従来のモード、遅れた開放モード、早期閉鎖モード、遅れた開放および早期閉鎖モードの組み合わせ、およびマルチリフトモード‐を想定し、1つのエンジン動作モードと他との間で使用されるべき複数の制御モードを区別することが従って可能である。そうすることにより、エンジンの動作効率は、いかなる条件にも最適である。
【0051】
上記の記載はシリンダの吸気バルブのみを指すが、想定された2つの異なる動作サイクルにおいてエンジンを制御することが可能であるように、上記の同じアーキテクチャおよび同じ制御の手法が、複数の排気バルブの作動にも正確に適用されることが明らかである。特に、システムはまた排気バルブのために、4行程エンジン動作モードおよび2行程エンジン動作モードの両方で排気バルブを作動させることを可能にするように構成された複合カム輪郭(図6を参照)も想定するであろう。図7Aおよび図7Bは、4行程エンジンモードおよび2行程エンジンモードの両方のための排気バルブの2つの可能なリフト輪郭を示す。それらは、本明細書で記載されるエンジンバルブの作動のためのシステムによって実行される制御を介して図6のカム輪郭から得られる。
【0052】
当然のことながら、本発明の原理を損なうことなく、複数の実施形態および構造の詳細は、本明細書において純粋に例として記載され示されるものに対して添付の請求項によって定義されるように、これにより本発明の範囲から逸脱することなく顕著にさえ変化し得る。
【0053】
最後に、上記で示されたバルブ60は、任意の周知のタイプのソレノイドバルブであり得、またはさもなければ、圧電アクチュエータを有するバルブ等の異なるタイプの電気的に作動するバルブでもあり得ることに留意されるべきである。また、ソレノイドバルブの場合、バルブは、通常閉鎖したタイプ、またはさもなければ通常開放したタイプであり得る。後者の場合、明らかに、本発明によるシステムの目的について重要であるのは、バルブ60が、加圧流体の体積と流体蓄圧器80と連通している環境との間の連通を再び設定する瞬間の制御であり、これは電流供給源を中断するかまたは作動させることで得られるかどうかには関わらない。
【0054】
本出願の出願日ではまだ公開されていなかった本出願人の前の特許出願の主題を既に形成したさらなる特徴に従って、コントロールバルブが通常、開放したソレノイドバルブである場合、コントロールバルブの可動部材の動作に、これが加圧流体の体積と流体蓄圧器と連通している環境との間の連通の開放条件に対応するその移動終了位置(end‐of‐travel position)に到達する前にブレーキをかけるべく、電子制御ユニットがその通電の停止に続いてソレノイドにテール電流を供給するようにプログラムされ得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B