(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水蒸気バリア層とシーラント層を有する内層フィルムと、紙基材と、光沢層と、外層に熱可塑性樹脂層と、を有する積層シートから打ち抜かれたブランクシートのシール部が、熱シールされてなる液体用紙容器であって、
前記光沢層は、蒸着基材に金属が蒸着されてなる蒸着シートを所定幅にスリットしてなり、
前記シール部の全部または一部分において前記光沢層が存在せず、
上部が切妻屋根型であり、底面が平坦な形状であって、底面を形成するボトムシール部において、前記光沢層が存在せず、
前記ボトムシール部は、前記積層シートが、最も多い部分で8枚重ねられていることを特徴とする液体用紙容器。
【背景技術】
【0002】
近年、内容物の保存性に優れた紙容器が広く用いられている。紙容器は、再生産が可能な木材パルプを主原料としており、使用後も製紙原料としてリサイクルが可能である。このため、紙容器は、地球環境保護に対する意識の高まりに伴い、びん、缶、プラスチック容器等に比較して地球環境に対する負荷が少ない容器として評価されてきている。
【0003】
しかし反面紙容器は、びん、缶、プラスチック容器等に比較して意匠面において高級感に欠けるという欠点がある。この欠点を補う一つの手段として、表面に金属光沢を付与した紙容器が種々提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された紙容器は、金属酸化物蒸着層を含むガスバリア層とシーラント層を有する内層フィルムと、紙基材と、裏面に遮光層を有し表面に金属蒸着層を有する薄紙とを接着樹脂によって積層してなり、最外層に熱可塑性樹脂層を設けてなる積層シートからなる紙容器である。
【0005】
特許文献2、特許文献3に記載された紙容器は、金属蒸着フィルム層を紙層の外側に用いることによって、良好な金属光沢を示すようにした紙容器である。
【0006】
ところで、紙容器に、内容物の長期保存性を付与しようとした場合、紙層の内側に、ガスバリア性を有する層を設ける必要がある。ガスバリア性を有する層としては、少なくとも水蒸気バリア性を備えた層を用いる場合が多い。
【0007】
紙層は、通常内部に少量の水分を保持している。紙容器を成型する段階で、シール部に熱が印加された場合に、紙層内部の水分が蒸発して水蒸気となる。紙層の外側に蒸着層が存在しない場合には、この発生した水蒸気が外側に抜けるため、特に問題は生じない。
【0008】
しかし、紙層の内面に水蒸気バリア層を設け、外面に蒸着層や、アルミニウム箔層を設けた場合、紙層内部に発生した水蒸気の逃げ場がなくなり、シール部に気泡を生じる場合がある。
【0009】
この現象をバブリングと称するが、バブリングが発生すると、紙容器の外観を著しく損ねるばかりでなく、容器としての保存性能にも支障が生じる。この現象は、積層シートの重なり枚数が多いシール部において特に発生しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面に従って、本発明に係る液体用紙容器について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液体用紙容器1の一実施態様を示す斜視図である。本発明に係る液体用紙容器1の形状については、
図1に一例を示したような口栓付きのいわゆるゲーブルトップ型紙容器に限らず、ブロック形状や、円筒形の紙缶形状、あるいはカップ形状等任意であるが、
図1に示したような、上部が切妻屋根型であり、底面が平坦な形状を有する場合には、最もその特徴が発揮されやすい。
【0022】
図2は、本発明に係る液体用紙容器を構成する積層シート2から打ち抜かれたブランクシート2Bの一実施態様を示した平面説明図である。図の斜線部分は、光沢層5の存在する部分5Pを示している。
図2に示した実施態様においては、液体用紙容器1の切妻屋根型部分を形成するトップシール部6tおよび平坦な底面部分を形成するボトムシール部6bの部分には、光沢層5が存在しない。
【0023】
図2に示したブランクシート2Bにおいて、サイドシール部については、トップシール部6t、ボトムシール部6bと重複する部分以外は光沢層5が存在する。サイドシール部は、熱シールされる際の積層シートの重なり枚数が2枚だけであるため、水蒸気透過性の低い光沢層が存在してもバブリング現象は発生しにくい。
【0024】
これに対して、トップシール部6tにあっては、最大5枚の積層シートが重ねられた状態で熱シールが行われる。さらにボトムシール部6bに至っては、最大8枚もの積層シートが重ねられることになる。このため、ホットエアーによる予備加熱の条件も厳しくなり、シール部に水蒸気透過性の小さい光沢層5が存在するとバブリング現象が発生しやすいのである。
【0025】
本発明に係る液体用紙容器においては、シール部の全部または一部分において、光沢層5が存在しないので、シール部におけるバブリング現象の発生が抑制される。
【0026】
図1に例示した、上部が切妻屋根型であり、底面が平坦な形状であるいわゆるゲーブルトップ型液体用紙容器の場合、光沢層5の存在しない部分としては、
図2に示したようにトップシール部6tとボトムシール部6bとすることもできるが、
図6に示したように、ボトムシール部6bのみとすることもできる。
【0027】
光沢層5をどの部分において存在しないようにするかについては、紙容器の形状、サイズ、光沢層5の材質や水蒸気透過性、積層シートの厚さや熱伝導性等によって決定される。
【0028】
積層シート2の所定の部分に光沢層5を設けないようにする方法としては、貼り合せ工程において、光沢層5のシート幅を狭くする方法や、所定の幅にスリットした光沢層のシートを複数枚並べて貼り合せる方法などがある。
【0029】
図3は、本発明に係る液体用紙容器を構成する積層シート2の断面説明図であり、
図2におけるA−A‘断面を示している。本発明に係る液体用紙容器1を構成する積層シート2は、水蒸気バリア層10とシーラント層11を有する内層フィルム12と、紙基材8と、光沢層5とが、この実施態様においては、接着樹脂7、9によって積層されてなり、外層に熱可塑性樹脂層4、印刷絵柄層3を有する。
【0030】
この例では、光沢層5は、トップシール部6tに相当する部分において、存在しない構成となっている。また、
図3では示されていないが、ボトムシール部6bに相当する部分においても、存在しない構成となっている。
【0031】
光沢層5としては、アルミニウム箔や、アルミニウム蒸着フィルム、あるいはホログラム箔等の金属光沢あるいは光の干渉に基づく光輝感を有するシート類が使用できる。また後述するように蒸着層のみを光沢層5ととらえることもできる。
【0032】
光沢層5が、蒸着層5aである場合には、フィルムや、紙等、何等かの蒸着基材5bを必要とする。蒸着基材用のフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムや、ポリプロピレン樹脂(PP)フィルム等が一般的に用いられる。紙の場合には、蒸着アンカー層を設けた薄紙等が用いられる。
【0033】
なお
図3に示した実施態様においては、熱可塑性樹脂層4の上に印刷絵柄層3が設けられているが、印刷絵柄層3は、熱可塑性樹脂層4の下に設けてもよい。
【0034】
紙基材8としては、一般的に紙パック原紙が用いられるが、紙強度や衛生性の点で、坪量が250〜450g/m
2程度のバージンパルプ100%の紙パック原紙が好ましい。通常紙箱に使用される厚紙を用いることもできる。
【0035】
水蒸気バリア層10としては、アルミニウム箔、エチレンビニルアルコール共重合体層、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの他、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物をポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム等の表面に蒸着したガスバリアフィルムが好ましく用いられる。ガスバリアフィルムに用いる無機物としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、錫などの酸化物であり、特に酸化アルミニウムや酸化珪素や酸化マグネシウムなどが好ましい。
【0036】
水蒸気バリア層10としてアルミニウム箔を選択した場合、十分なガスバリア性に加えて十分な遮光性も得られるため、長期保存性において優れている。しかし、容器ごと電子レンジで加熱することはできない。
【0037】
一方、水蒸気バリア層10として金属酸化物蒸着層を含むガスバリアフィルムを選択し、さらに光沢層5としてアルミニウム箔のような金属箔単体を用いない場合には、容器ごと電子レンジに入れて加熱することができる。
【0038】
シーラント層11としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重
合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが使用される。
【0039】
図4は、本発明に係る液体用紙容器を構成する積層シートの他の実施態様を示した断面説明図である。この実施態様においては、光沢層5が蒸着基材5bに蒸着層5aを設けた蒸着フィルムであり、シール部6の全部または一部分において、光沢層5が存在しない構造となっている。
【0040】
蒸着基材5bについては、フィルムの場合には厚さが4〜25マイクロメーター程度のPETフィルムや、PPフィルムが最も一般的に使用される。この表面に形成する蒸着層5aとしては、アルミニウム蒸着層が最も一般的であるが、特に限定されない。例えば、金属酸化物を複数層形成した虹彩箔や、表面に微細な凹凸を形成したホログラム箔等を使用してもよい。
【0041】
蒸着層5aを形成するのに先立って、基材フィルム5bの表面に蒸着アンカーコート層を設けてもよい。こうすることにより、蒸着層の金属光沢度が向上すると共に、蒸着層のフィルムに対する密着性が向上する。なお蒸着基材5bが紙である場合には、図面では特に図示していないが、蒸着アンカーコート層は、必須である。
【0042】
図4に示した実施態様においては、蒸着基材5bの上面すなわち、紙容器の外側面に蒸着層5aが形成されているが、蒸着基材5bが透明なフィルムである場合には、蒸着層5aを蒸着基材5bの下面すなわち、紙容器の内側面に形成しても良い。
【0043】
図5は、本発明5に係る液体用紙容器を構成する積層シート2の一実施態様を示した断面説明図である。この実施態様においては、光沢層5が、蒸着基材5bの表面に形成された蒸着層5aであることを特徴とする。
【0044】
図5に示した実施態様においては、シール部6において、蒸着基材5bは存在するが、蒸着層5aのみが存在しない構造となっている。一般的に蒸着層5aの厚さは極く薄いものであるので、このような構造とすると、積層シート2の幅方向の厚さムラが無視できる程度に減少し、貼り合せ工程が容易となる。
【0045】
蒸着層5aを部分的に設けない方法としては、蒸着工程において、マスク板を設置して目的とする場所に蒸着がなされない様にする方法や、一旦全面に形成された蒸着層の所定の部分の蒸着層のみを除去する方法などがある。
【0046】
これらの方法としては、一般的に部分蒸着フィルムを作成する公知の方法を用いることができる。
【0047】
次に、以上の各層を積層シート2として貼り合せる工程について説明する。
図3に示した例としては、まず押出機からシーラント層11となる樹脂を押し出して、水蒸気バリア層10のシートと一体化し、内層フィルム12を作成する。
【0048】
次に別の押出機から、予め幅を狭くスリットした光沢層5の表面にポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を押し出して熱可塑性樹脂層4を形成する。熱可塑性樹脂層4は、光沢層5の幅よりも広い。次に熱可塑性樹脂層4の表面に、光沢層5の貼り合せ位置と位置合わせをしながら印刷絵柄層3を形成する。
【0049】
次に別の押出機から接着樹脂層7、9を押し出して、光沢層5を含む印刷済みシートと紙基材8と、先に作成した内層フィルム12とを貼り合せる。この時使用する接着樹脂と
しては、いわゆるポリサンド用樹脂が使用可能であり、具体的にはEMAA(エチレン−メタクリル酸共重合体)、EAA(エチレン−アクリル酸共重合体)等を添加した低密度ポリエチレン樹脂が好適に用いられる。
【0050】
以上のようにして得られた積層シート2を所定のブランク形状に打ち抜き、
図2に示したようなブランクシート2Bを得る。ブランクシート2Bを罫線に沿って折り曲げて、さらにのりしろ部分を加熱接着することにより、液体用紙容器1が成型される。
【0051】
のりしろ部分を加熱する際に、紙基材8に含まれていた水分が蒸発して水蒸気となる。紙容器の内面側には、水蒸気バリア層10が存在するので、紙基材から発生した水蒸気は透過することが出来ない。
【0052】
一方、シール部分の外面側には、光沢層5が存在しないため、バブリングを発生させる恐れが少なくなる。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
以下実施例に基づき、本発明に係る液体用紙容器について具体的に説明する。
水蒸気バリア層として、厚さ6マイクロメーターのアルミニウム箔を使用した。この裏面に押出機からシーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を60マイクロメーターの厚さに押し出して一体化し、内層フィルムを作成した。
【0054】
次に光沢層として厚さ12マイクロメーターのPETフィルムにアルミニウム蒸着層を形成した蒸着フィルムを、
図2の光沢層の存在する部分5Pの幅にスリットしたものを複数本用意し、この蒸着面に低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を厚さ18マイクロメーターとなるように押し出して熱可塑性樹脂層を形成し、さらにこの表面に硝化綿ウレタン系インキを用いて印刷絵柄層を形成した。
【0055】
蒸着フィルムの裏面(PET面)と、紙層として坪量380g/m
2の厚紙(ノーコートアイボリー)の表面とを、押出機より押し出した接着樹脂(LDPEにEMAA、EAAを添加)を用いて貼り合せた。次にこうして得られた貼り合せ紙と先に作成した内層フィルムとを、同様に押出機から押し出した同じ接着樹脂を用いて貼り合せた。
【0056】
以上により得られた積層シートを
図2の状態となるように位置合わせをしながら所定の形状に打抜き、口栓を取り付け、成型して
図1に示した形状の液体用紙容器となるべきブランクスを作成した。成型時のヒートシール条件は、温度250℃、圧力0.2MPa、圧締時間1秒とした。成型工程において、バブリングの発生は認められなかった。また得られた紙容器の外観は、高い光輝感をもった金属光沢を有するものであった。
【0057】
<実施例2>
ブランクシートの構成を、
図6に示したように、ボトムシール部の光沢層のみが存在しない構成となるように、光沢層の幅を調整した以外は、実施例1と同様にして、液体用紙容器を作成した。成型工程において、バブリングの発生は認められなかった。また得られた紙容器の外観は、高い光輝感をもった金属光沢を有するものであった。
【0058】
<実施例3>
光沢層として、厚さ12マイクロメーターのPETフィルムを裏打ち材とした厚さ6マイクロメーターのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例1と同様にして液体用紙容器を作成した。成型工程において、バブリングの発生は認められなかった。また得られた紙容器の外観は、高い光輝感をもった金属光沢を有するものであった。
【0059】
<比較例1>
ブランクシートの構成を、
図7に示したような、シール部にも光沢層が存在する構成となるように、光沢層の幅を調整した以外は、実施例1と同様にして液体用紙容器を作成した。得られた紙容器の外観は、高い光輝感をもった金属光沢を有するものであったが、成型工程において、バブリングの発生が認められた。
【0060】
<比較例2>
ブランクシートの構成を、
図7に示したような、シール部にも光沢層が存在する構成となるように、光沢層の幅を調整した以外は、実施例3と同様にして液体用紙容器を作成した。得られた紙容器の外観は、高い光輝感をもった金属光沢を有するものであったが、成型工程において、バブリングの発生が認められた。
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示されたように、シール部の全部または一部分において、光沢層が存在しないようにした、本発明に係る液体用紙容器は、良好なバブリング耐性と高い金属光沢を伴った外観を有する。