(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量制御部は、前記異常判定機能として、現在のバルブ動作電圧と、前記目標流量に対応する過去に測定したバルブ動作電圧との差分を求め、前記差分が所定の値を超えた場合に前記バルブ動作電圧が異常であると判定する機能を備えている、請求項1に記載の光ファイバ母材製造用ガス供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2には、バルブ電圧の異常をアラーム表示等した後の対処法については記載がない。
【0005】
本発明は、光ファイバ母材の製造中においてガス流量に異常が発生した場合でも、光ファイバ母材の現ロットの不良を防止可能な光ファイバ母材製造用ガス供給装置および光ファイバ母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光ファイバ母材製造用ガス供給装置は、
光ファイバ母材の製造に用いられるガスを供給するための光ファイバ母材製造用ガス供給装置であって、
前記ガスの流量を測定する流量センサと、
前記流量を調整する流量調整バルブと、
前記流量が目標流量と一致するように前記流量調整バルブを制御する流量制御部と、を含む流量調整器を備え、
前記流量制御部は、
前記流量調整バルブのバルブ動作電圧を測定する電圧測定機能と、
前記バルブ動作電圧が異常かどうかを判定する異常判定機能と、
前記異常判定機能の出力に応じて、前記流量調整器へのガス供給圧力を調整する調整機能と、を備えている。
【0007】
また、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法は、
ガス供給装置からガスを供給して光ファイバ母材を製造する光ファイバ母材の製造方法であって、
前記ガス供給装置は、前記ガスの流量を測定する流量センサと、前記流量を調整する流量調整バルブと、前記流量が目標流量と一致するように前記流量調整バルブを制御する制御部と、を含む流量調整器を備え、
(a)前記流量調整バルブのバルブ動作電圧を測定するステップと、
(b)前記バルブ動作電圧が異常かどうかを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)において前記バルブ動作電圧が異常であると判定された場合に、前記流量調整器へのガス供給圧力を調整するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバ母材の製造中においてガス流量に異常が発生した場合でも、光ファイバ母材の現ロットの不良を防止可能な光ファイバ母材製造用ガス供給装置および光ファイバ母材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の実施形態の概要>
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
本実施形態の一例に係る光ファイバ母材製造用ガス供給装置は、
(1)光ファイバ母材の製造に用いられるガスを供給するための光ファイバ母材製造用ガス供給装置であって、
前記ガスの流量を測定する流量センサと、
前記流量を調整する流量調整バルブと、
前記流量が目標流量と一致するように前記流量調整バルブを制御する流量制御部と、を含む流量調整器を備え、
前記流量制御部は、
前記流量調整バルブのバルブ動作電圧を測定する電圧測定機能と、
前記バルブ動作電圧が異常かどうかを判定する異常判定機能と、
前記異常判定機能の出力に応じて、前記流量調整器へのガス供給圧力を調整する調整機能と、を備えている。
この構成によれば、光ファイバ母材の製造中においてガス流量に異常が発生した場合でも、光ファイバ母材の現ロットの不良を防止することができる。
【0011】
(2)前記流量制御部は、前記異常判定機能として、現在のバルブ動作電圧と、前記目標流量に対応する過去に測定したバルブ動作電圧との差分を求め、前記差分が所定の値を超えた場合に前記バルブ動作電圧が異常であると判定する機能を備えていても良い。
この構成によれば、簡便かつ精度良くガス流量の異常を判定することができる。
【0012】
(3)前記流量制御部は、前記調整機能として、前記異常判定機能により異常と判定された場合に、前記ガス供給圧力を上昇させる機能を有していても良い。
バルブ電圧の異常の発生は、流量調整器の劣化によりガス流量が低下する予兆であることが多いため、ガス供給圧力を上昇させることで、ガス流量が低下するまでの時間を引き延ばすことができる。
【0013】
(4)前記流量調整器は、前記ガスをガラス微粒子生成用バーナへ向けて供給するガス供給配管の途中に配置され、
前記流量調整器よりも上流側の前記ガス供給配管が、フィルタを有する第一のガス供給配管と、前記第一のガス供給配管と並列されてフィルタを有していない第二のガス供給配管とを含み、
前記第一のガス供給配管と前記第二のガス供給配管とは、切替弁によって切り替え可能であり、
前記異常判定機能により異常と判定された場合には、前記流量制御部は、前記第一のガス供給配管から前記第二のガス供給配管にガス流路を切り替えるよう制御しても良い。
この構成を採用することで、適切かつ簡便にガス流量圧力を上昇させることができる。
【0014】
また、本実施形態の一例に係る光ファイバ母材の製造方法は、
(5)ガス供給装置からガスを供給して光ファイバ母材を製造する光ファイバ母材の製造方法であって、
前記ガス供給装置は、前記ガスの流量を測定する流量センサと、前記流量を調整する流量調整バルブと、前記流量が目標流量と一致するように前記流量調整バルブを制御する制御部と、を含む流量調整器を備え、
(a)前記流量調整バルブのバルブ動作電圧を測定するステップと、
(b)前記バルブ動作電圧が異常かどうかを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)において前記バルブ動作電圧が異常であると判定された場合に、前記流量調整器へのガス供給圧力を調整するステップと、
を含む。
この方法によれば、光ファイバ母材の製造中においてガス流量に異常が発生した場合でも、光ファイバ母材の現ロットの不良を防止することができる。
【0015】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、本発明に係る光ファイバ母材製造用ガス供給装置を備える光ファイバ母材製造装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る光ファイバ母材を製造する光ファイバ母材製造装置を示す構成図である。
図2は、光ファイバ母材製造装置が備えるガス供給装置の一部を示す構成図である。
【0016】
図1に示すように、光ファイバ母材製造装置(以下、製造装置と称する)1は、光ファイバ母材Fが形成される反応容器2と、反応容器2の上方から内部に吊り下げられた支持棒3と、支持棒3に取り付けられたガラスロッド4とを備えている。また、製造装置1は、反応容器2の内部下方に配置されたガラス微粒子生成用バーナ5(コア用バーナ5aおよびクラッド用バーナ5b)と、反応容器2の側面に取り付けられた排気管6と、を備えている。さらに、製造装置1は、支持棒3を昇降および回転させる昇降回転装置10と、バーナ5に供給されるガスの流量制御を行なうマスフローコントローラ(流量調整器の一例。以下、MFCと称する)20,20Aと、各部の動作を制御する制御部11とを備えている。
【0017】
MFC20は、コア用バーナ5aおよびクラッド用バーナ5bに供給されるガラス原料ガス(以下、原料ガスと称する)の流量制御を行なう装置である。MFC20は、制御部11から送信されてくる制御信号に基づいて、原料ガスの供給量の制御を行なう。原料ガスは、原料容器12内に収容された液体ガラス原料を気化させたものがガス供給配管15を通じてMFC20を介してバーナ5a,5bに供給される。
【0018】
MFC20Aは、コア用バーナ5aおよびクラッド用バーナ5bに供給するガスであって原料ガス以外のガス、例えば水素(H
2)や酸素(O
2)等の火炎形成ガスの流量制御を行なう装置である。MFC20Aは、制御部11から送信されてくる制御信号に基づいて、火炎形成ガスの供給量の制御を行なう。火炎形成ガスは、ガス供給配管17を通じてMFC20Aを介してバーナ5a,5bに供給される。
なお、図示は省略するが、バーナシールガスとして、例えば、窒素(N
2)、二酸化炭素(CO
2)、ヘリウム(He)ガスやアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスも、本実施形態に係るMFC20,20Aと同様の構成のMFCを介してバーナ5a,5bに供給され得る。
【0019】
図1に示すように、MFC20は、原料容器12からバーナ5a,5bまでの原料ガスの流路、例えばガス供給配管15の途中に設けられる。すなわち、供給管15の上流側端部が原料容器12内に配置され、供給管15の下流側端部が二股に分岐してバーナ5a,5bにそれぞれ連結される。また、MFC20Aは、ガス供給配管17の途中に設けられる。
なお、本例において、バーナ5a,5b、ガス供給配管15,17およびMFC20,20Aをまとめて光ファイバ母材製造用ガス供給装置と称する。MFC20とMFC20Aとは同様の構成を備えているため、以下では、MFC20について代表して詳述する。
【0020】
図2に示すように、MFC20は、例えばステンレススチール等により成形された流路21を備え、当該流路21が供給管15の途中に設けられている。すなわち、流路21の上流側端部(
図2の右側)および下流側端部(
図2の左側)はそれぞれ、供給管15と連結されている。MFC20は、原料ガスの流量を検出する流量センサ22と、原料ガスの圧力を検出する圧力センサ23と、流路21を通過する原料ガスの流量を調整する流量調整機構30と、流量センサ22からの信号に基づいて流量調整機構30を制御する流量制御部24と、を有している。
【0021】
流量センサ22は、流路21の上流側に設けられたバイパス管25を有している。バイパス管25の両端の流路21には、このバイパス管25を迂回するようにフローチューブ26が接続されている。フローチューブ26には、バイパス管25と比較して小量の原料ガスが一定の比率で流される。すなわち、フローチューブ26には、流路21内を通過する原料ガスの全流量に対して一定比率の原料ガスが常に流されるようになっている。フローチューブ26には直列に接続された制御用の複数の抵抗線Rが巻回されている。複数の抵抗線Rにはセンサ回路27が接続されている。センサ回路27は、原料ガスの流量値を示す流量信号S1を流量制御部24へ出力する。また、流量信号S1に基づいて、現在流れている原料ガスの流量が流量計28へ出力される。
【0022】
圧力センサ23は、例えば圧力トランスデューサから構成され、所定の時間間隔ごとに原料ガスの圧力をサンプリングして検出し、その検出された圧力値を圧力検出信号Svとして流量制御部24に向けて出力する。
【0023】
流量制御部24は、流量設定器29から、MFC20において流すべき原料ガスの目標流量を表す流量設定信号S2を受ける。そして、流量制御部24は、現在流している原料ガスの流量が流量設定信号S2で表される目標流量に一致するように、流量調整機構30を制御する。
【0024】
流量調整機構30は、流量センサ22よりも流路21の下流側に設けられた流量調整バルブ32を有している。流量調整バルブ32は、原料ガスの流量を直接的に制御するための弁体として、プランジャ34を有している。プランジャ34が流路21に形成された弁口36に向けて適宜移動(進退)することによって、弁口36の弁開度が任意に制御され得る。プランジャ34は、例えばソレノイド型のアクチュエータ38によって、その上部が覆われている。このアクチュエータ38は、流量制御部24からの駆動信号S3を受けてバルブ駆動回路40が出力するバルブ駆動信号としてのバルブ動作電圧S4により作動する。なお、アクチュエータとして、ピエゾアクチュエータやサーマルアクチュエータを用いることもできる。
【0025】
流量制御部24は、演算処理に必要な各種のデータ(情報)を記憶するために例えばRAMやROMを組み合わせてなる記憶部を有している。この記憶部には予め測定した流量調整機構30のバルブ特性が記憶されている。バルブ特性とは、弁口36の弁開度に対応するバルブ動作電圧S4と原料ガスの流量との関係や、原料ガスの圧力と流量との関係を示している。バルブ動作電圧S4が大きくなると、ガス流量は減少する。また、ガス圧力が上昇する程、その密度が高くなるため、ガス流量も多くなる。
【0026】
MFC20の上流側(
図2の右側)の供給管15は、その一部領域において、第一供給管15a(第一のガス供給配管の一例)と、第一供給管15aと並列して配置された第二供給管15b(第二のガス供給配管の一例)とを備えている。第一供給管15aは、その内部にフィルタ16を備えている。一方、第二供給管15bは、フィルタを備えていない。
【0027】
第一供給管15aおよび第二供給管15bの各上流側端部は、原料容器12内に連通する供給管15に統合される。一方、第一供給管15aおよび第二供給管15bの各下流側端部と、流路21と連通される供給管15との間には、切替弁18が設けられている。切替弁18は、流量制御部24によって制御可能である。流量制御部24は、切替弁18を制御することにより、第一供給管15aおよび第二供給管15bのいずれか一方を流路21と連通させることができる。すなわち、流量制御部24は、原料容器12からMFC20の流路21までの原料ガスの流路を、第一供給管15aと第二供給管15bとの間で適宜に切り替えることができる。なお、初期状態(通常状態)においては、原料容器12から流入される原料ガスが第一供給管15aを通じてMFC20の流路21へと流されるように、切替弁18が制御されている。
【0028】
次に、上記のように構成されたMFC20の動作について説明する。
まず、原料容器12から供給管15へ流入した原料ガスは、第一供給管15aを介して、MFC20の流路21内に流れ込む。流路21に流入した原料ガスは、その圧力が圧力センサ23により検出された後に、流量センサ22に至る。そして、この原料ガスの大部分はバイパス管25を介して流れるとともに、全ガス流量に対して一定の分流比となる一部の原料ガスはフローチューブ26内を流れる。そして、各原料ガスはバイパス管25およびフローチューブ26の下流側で合流した後に、流量調整機構30の流量調整バルブ32の弁口36内を流れる。その後、原料ガスは、流路21の下流側に連通する供給管15を通過してバーナ5a,5bに向けて流れて行く。
【0029】
ここで、フローチューブ26には抵抗線Rが巻回されており、フローチューブ26内を流れる原料ガスにより流路21内を流れる原料ガス全体の流量がセンサ回路27により検出される。流量制御部24は、センサ回路27により検出された検出値としての流量信号S1で表される流量が、流量設定器29より入力される流量設定信号S2で表される目標流量と一致するように、バルブ駆動回路40を介してバルブ動作電圧S4を発生させる。そして、バルブ動作電圧S4により流量調整バルブ32のアクチュエータ38を作動させてプランジャ34を伸縮駆動することにより、弁口36の弁開度を調整する。これにより、流量制御部24は、原料ガスの流量を目標流量と一致するように制御しつつ、原料ガスをMFC20の下流側に向けて流すことができる。
【0030】
次に、MFC20におけるバルブ動作電圧S4の異常判定時の処理について、
図3を参照して説明する。
まず、原料ガスの供給中に、流量制御部24は、流量調整バルブ32を動作させるためのバルブ動作電圧S4を測定する(ステップS100)。次いで、流量制御部24は、現在のバルブ動作電圧S4と、目標ガス流量に対応する過去に測定したバルブ動作電圧との差分を求める(ステップS102)。具体的には、流量制御部24は、ステップS100において測定した現ロットのバルブ動作電圧S4を、過去のロット(例えば、過去5ロット)のバルブ動作電圧の平均値と比較して、その差分を求めることができる。このとき、正確な異常判定のために、現ロットのバルブ動作電圧S4の測定時の目標流量と比較対象である過去ロットのバルブ動作電圧の目標流量とが同じであることが必要である。なお、比較対象である過去のバルブ動作電圧は5ロットの平均値である必要はなく1回以上であれば良い。ロット数を多くして平均化したほうが精度の良い判定ができるが、目標流量をその間一定に維持する必要があるため、実際の運用を考慮して適切な測定回数を選択することが望ましい。
【0031】
次いで、現在のバルブ動作電圧S4が異常かどうかを判定するため、流量制御部24は、現在のバルブ動作電圧S4と過去ロットのバルブ動作電圧との差分が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS104)。
ステップS104において、現在のバルブ動作電圧S4と過去ロットのバルブ動作電圧との差分が所定の閾値を超えていないと判定された場合は(ステップS104のNo)、流量制御部24は、現在のバルブ動作電圧は異常ではないと判定する(ステップS105)。そして、流量制御部24は、当該差分が所定の閾値を超えていると判定されるまでステップS104を繰り返す。
【0032】
これに対して、ステップS104において、現在のバルブ動作電圧S4と過去ロットのバルブ動作電圧との差分が所定の閾値を超えたと判定された場合には(ステップS104のYes)、流量制御部24は、現在のバルブ動作電圧S4が異常であると判定する(ステップS106)。そして、流量制御部24は、流量調整機構30へのガス供給圧力を調整する(ステップS108)。具体的には、流量制御部24は、ステップS108において、ガス供給圧力を上昇させるために、例えば、切替弁18を動作させて、第一供給管15aから第二供給管15bにガス流路を切り替える。これにより、フィルタを有していない第二供給管15bを通じて原料ガスが原料容器12からMFC20の流路21に流入するため、ガス供給圧力を上昇させることができる。このように、本実施形態においては、現在のバルブ動作電圧S4が正常(異常ではない)と判定されている間は第一供給管15aを通じて原料ガスをMFC20へ供給する一方で、現在のバルブ動作電圧S4が異常と判定された場合には切替弁18によりガス流路を切り替えて第二供給管15bを通じて原料ガスをMFC20へ供給するようにしている。
【0033】
そして、流量制御部24は、ステップS108の処理の終了後、ステップS100に戻り、各処理を繰り返す。
ステップS100〜S108にて説明したように、流量調整機構30を制御する流量制御部24は、流量調整バルブ32のバルブ動作電圧S4を測定する電圧測定機能と、バルブ動作電圧S4が異常かどうかを判定する異常判定機能と、異常判定機能の出力に応じて、流量調整機構30へのガス供給圧力を調整する調整機能と、を備えている。
【0034】
なお、MFC20のメンテナンスあるいは交換は、ステップS104において異常が発生したと判定されたときに製造されていた現ロットの光ファイバ母材Fの製造が完了してから実施される。MFC20のメンテナンスや交換が完了すると、次ロットの光ファイバ母材Fの製造が開始されるとともに、MFC20における異常判定の処理(ステップS100〜S108の処理)も再開される。
【0035】
MFC20が劣化するとプランジャ34の動作が鈍くなるが、このような現象はバルブ電圧が小さい状態で流量制御を行う場合の方が、バルブ電圧が大きい状態で流量制御する場合よりも顕著である。したがって、ガス供給圧力が増加すると、MFC20のバルブは閉側に変化し、バルブ電圧がより大きい状態で流量制御を行うことになるため、一時的にMFC20の流量制御を正常化することが可能となる。
【0036】
ところで、MFC20の劣化(あるいは第一供給管15aの目詰まり)等により光ファイバ母材Fの製造途中でガス流量が低下した場合には、製造条件に合致した目標流量と異なる流量で光ファイバ母材Fが製造されるため、製造中の光ファイバ母材Fのロット全体が要求特性を満たさずに不良となってしまう場合があった。
【0037】
これに対して、上記説明した本実施形態の構成によれば、流量制御部24は、バルブ動作電圧S4を測定し、測定されたバルブ動作電圧S4が異常かどうかを判定し、バルブ動作電圧S4が異常であると判定した場合には流量調整機構30へのガス供給圧力を調整する。そのため、光ファイバ母材Fの製造中においてガス流量に異常が発生した場合でも、ガス流量の制御を自動で行いながら光ファイバ母材Fを製造することができ、光ファイバ母材Fの現ロットの不良の発生を抑制することができる。
【0038】
また、流量制御部24は、現在のバルブ動作電圧S4と、目標ガス流量に対応する過去に測定したバルブ動作電圧との差分が所定の閾値を超えた際に、異常であると判定する。これにより、簡便かつ精度良くガス流量の異常を判定することができる。
【0039】
なお、バルブ動作電圧S4の異常の発生は、流量調整機構30の劣化によりガス流量が低下する予兆であることが多い。そのため、流量制御部24は、現在のバルブ動作電圧S4が異常であると判定した際には、ガス供給圧力を上昇させるよう流量調整機構30を制御することが好ましい。これにより、仮に流量調整機構30の劣化が生じたとしても、ガス流量が低下するまでの時間を引き延ばすことができ、光ファイバ母材Fの次ロットだけではなく現ロットの不良の発生をも適切に抑制することができる。
【0040】
ガス供給圧力を上昇させる方法としては、バルブ動作電圧S4が異常であると判定した際に、フィルタ16を備える第一供給管15aからフィルタを備えていない第二供給管15bにガス流路を切り替える方法を採用することが好ましい。これにより、簡便にガス供給圧力を上昇させることができる。
【0041】
なお、上記実施の形態では、MFC20において現在のバルブ動作電圧が異常であると判定された場合に、第一供給管15aから第二供給管15bへガス流路を切り替えて、原料ガスのガス供給圧力を上昇させているが、この例に限られない。例えば、第一供給管と第二供給管のいずれにもフィルタを備えておき、第一供給管からの原料ガスの供給から、第一供給管と第二供給管の両方から原料ガスを供給するようにガス流路を切り替えることでも良い。さらに、ガス流路を切り替えることに代えて、例えば、原料容器12の加熱温度を上げることで原料ガスのガス供給圧力を上昇させても良い。
【0042】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。