(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の減速装置500では、非制動状態において、制動力が僅かに発生するおそれがある。
図22は、非制動状態における特許文献1に記載の減速装置500の横断面図である。
図22では、ロータ502に対して制動力が僅かに発生している様子を示す。
【0008】
減速装置500は、図示しないエアシリンダ等の駆動部を備える。以下では、駆動部がエアシリンダであるとして説明する。エアシリンダは、シリンダ、ピストン及びロッドを備える。ピストンは、ロッドを介して可動支持リング506に接続される。ピストンがシリンダ内を移動することにより、可動支持リング506が回転し、複数の磁石505が回転する。ピストンがシリンダの一端に位置すると、
図20に示すように、複数の磁石505が非制動状態における位置に配置される。また、ピストンがシリンダの他端に位置すると、
図21に示すように、複数の磁石505が制動状態における位置に配置される。非制動状態及び制動状態では、複数の磁石505の位置は変化しないように駆動部により保持されている。
【0009】
以上のような減速装置500では、駆動部及び駆動部を固定するための取り付け部材に製造ばらつきが発生する場合がある。このような製造ばらつきにより駆動部の取り付け位置が設計時の位置からずれると、シリンダの一端が設計時の位置からずれるので、非制動状態における複数の磁石505の位置も設計時の位置からずれる。その結果、
図22に示すように、非制動状態における複数のポールピース504と複数の磁石505との位置関係にずれが生じる。
【0010】
また、複数のポールピース504及び複数のポールピース504を保持する保持部材にも製造ばらつきが発生する場合がある。このような製造ばらつきにより複数のポールピース504の回転軸周りの位置が設計時の位置からずれると、
図22に示すように、非制動状態における複数のポールピース504と複数の磁石505との位置関係にずれが生じる。以上のように、減速装置500の各部品の製造ばらつきによって、非制動状態における複数のポールピース504と複数の磁石505との位置関係にずれが生じるおそれがある。
【0011】
本来ならば、非制動状態では、
図20に示すように、磁石505b、ポールピース504b、磁石505cの順に通過する磁気回路が形成される。この場合、磁束はロータ502を通過しない。このような磁気回路が形成されるためには、非制動状態において、ポールピース504aと磁石505aとが対向する面積は、ポールピース504aと磁石505bとが対向する面積と等しい必要がある。更に、ポールピース504bと磁石505bとが対向する面積は、ポールピース504bと磁石505cとが対向する面積と等しい必要がある。
【0012】
しかしながら、非制動状態における複数のポールピース504と複数の磁石505との位置関係にずれが生じると、ポールピース504aと磁石505aとが対向する面積が、ポールピース504aと磁石505bとが対向する面積と異なってしまう。同様に、ポールピース504bと磁石505bとが対向する面積が、ポールピース504bと磁石505cとが対向する面積と異なってしまう。
図22では、ポールピース504aと磁石505aとが対向する面積が、ポールピース504aと磁石505bとが対向する面積よりも小さい。また、ポールピース504bと磁石505bとが対向する面積が、ポールピース504bと磁石505cとが対向する面積よりも小さい。この場合、ポールピース504bと磁石505bとの間の磁気抵抗は、ポールピース504aと磁石505bとの間の磁気抵抗及びポールピース504bと磁石505cとの間の磁気抵抗よりも大きくなってしまう。そのため、磁束は、ポールピース504aと磁石505bとが対向している部分及びポールピース504bと磁石505cとが対向している部分を通過しやすい。一方、磁束は、ポールピース504bと磁石505bとが対向している部分を通過しにくい。その結果、磁石505b、ポールピース504a、ロータ502、ポールピース504b、磁石505cの順に通過する磁気回路が形成される。その結果、ロータ502に渦電流が発生し、ロータ502に制動力が発生する。このような制動力は、車両の燃費の低下の原因となる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、非制動状態において、ロータに制動力が発生することを抑制できる渦電流式減速装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一形態に係る渦電流式減速装置は、
回転軸に固定されるロータと、
ロータと隙間を空けて対向し、回転軸回りに配列される複数の永久磁石と、
ロータと複数の永久磁石との隙間に設けられ、回転軸回りに配列される複数のポールピースと、
複数の永久磁石と複数のポールピースとの回転軸回りにおける位置関係が変化できるように、複数の永久磁石及び複数のポールピースを支持するステータと、
複数のポールピース及び複数の永久磁石の内のいずれか一方に接続され、複数の永久磁石と複数のポールピースとの回転軸回りにおける位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える駆動部と、
駆動部を制御する制御部と、
を備え、
制御部は、
複数の永久磁石と複数のポールピースとの回転軸回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えた後に、そのまま位置関係を保持する非制動側保持ステップと、
非制動側保持ステップの後に、複数の永久磁石と複数のポールピースとの回転軸回りにおける位置関係の保持を解除する非制動側解除ステップと、
を実行する。
【0015】
本発明の一形態に係る渦電流式減速装置において、
制御部は、
複数の永久磁石と複数のポールピースとの回転軸回りにおける位置関係を非制動状態から制動状態に切り替えた後に、そのまま位置関係を保持する制動側保持ステップと、
制動側保持ステップの後に、複数の永久磁石と複数のポールピースとの回転軸回りにおける位置関係の保持を解除する制動側解除ステップと、
を実行してもよい。
【0016】
本発明の一形態に係る渦電流式減速装置において、
渦電流式減速装置は、
回転軸回りに回転できるようにステータに支持され、かつ、複数の永久磁石を保持する磁石保持リングを、
更に備え、
複数のポールピースは、ステータに固定されており、
駆動部は、磁石保持リングに接続されてもよい。
【0017】
本発明の一形態に係る渦電流式減速装置において、
渦電流式減速装置の外部には、圧縮空気を生成する圧力源が設けられ、
駆動部は、
シリンダと、
シリンダ内の空間を制動側空間と非制動側空間とに仕切るピストンと、
圧力源と制動側空間とを接続する制動側経路と、
圧力源と非制動側空間とを接続する非制動側経路と、
制動側経路に設けられ、圧力源と制動側空間とを繋ぐ接続状態と制動側空間と大気圧となっている外部空間とを接続する解放状態とを切り替える制動側バルブと、
非制動側経路に設けられ、圧力源と非制動側空間とを繋ぐ接続状態と非制動側空間と外部空間とを接続する解放状態とを切り替える非制動側バルブと、
ピストンと磁石保持リングとを連結する連結部材と、
を含み、
制御部は、非制動側保持ステップにおいて、非制動側バルブを接続状態に制御すると共に制動側バルブを解放状態に制御し、非制動側解除ステップにおいて、制動側バルブ及び非制動側バルブを解放状態に制御してもよい。
【0018】
本発明の一形態に係る渦電流式減速装置において、
制動側バルブは、制御部が制動側バルブに通電しているときに接続状態に制御され、制御部が制動側バルブに通電していないときに解放状態に制御され、
非制動側バルブは、制御部が非制動側バルブに通電しているときに解放状態に制御され、制御部が非制動側バルブに通電していないときに接続状態に制御されてもよい。
【0019】
本発明の一形態に係る渦電流式減速装置において、
ピストンのストローク量に相当する複数の永久磁石の回転角は、複数の永久磁石のピッチの半分より大きくてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、非制動状態において、ロータに制動力が発生することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
[渦電流式減速装置の構成]
以下に、第1の実施形態に係る減速装置100の構成について図面を参照しながら説明する。
図1から
図3は、減速装置100を模式的に示す図である。
図1及び
図3は要部の横断面図であり、
図2は縦断面図である。また、
図3では、ロッド120及び先端部122の図示を省略した。
図4は、減速装置100における磁石3c〜3eの配列を示す斜視図である。
【0023】
以下では、
図1の紙面から手前に向く方向を前方向と定義し、
図1の紙面から奥に向く方向を後ろ方向と定義する。前後方向は、回転軸10が延びる方向と一致する。また、回転軸10に直交し、かつ、回転軸10から離れる方向を径方向と定義する。
図1の紙面で上向きを上方向と定義し、
図1の紙面で下向きを下方向と定義する。上下方向は、鉛直方向と一致する。
図1の紙面で右向きを右方向と定義し、
図1の紙面で左向きを左方向と定義する。前後方向、上下方向及び左右方向は互いに直交している。ただし、上下方向、左右方向及び前後方向の定義は、一例であり、例示した定義に限らない。また、本明細書において、時計回り及び反時計回りとは、前方から見たときにおける時計回り及び反時計回りを意味する。
【0024】
減速装置100は、
図1及び
図2に示すように、ロータ1、磁石保持リング2、複数の磁石3、複数のポールピース4、ポールピース保持リング5、ロータ支持部材6(
図2に図示)、ステータ7(
図2に図示)、制御部102及び駆動部106を備える。また、減速装置100の外部には、圧力源104が設けられる。
【0025】
ロータ1は、円筒状をなしており、制動力が付与される制動部材に相当する。ロータ1は、車両の回転軸10(例:プロペラシャフト、ドライブシャフト等)にロータ支持部材6を介して固定される。これにより、ロータ1は、回転軸10と一体となって回転する。また、ロータ1の外周面には、複数の放熱フィン1a(
図2に図示)が設けられる。
【0026】
磁石保持リング2は、円筒状をなしており、ロータ1の内側に配置される。磁石保持リング2は、ロータ1と同心状に配置される。磁石保持リング2の外周面には、
図3及び
図4に示すように、複数の磁石3が固定される。これにより、複数の磁石3は、ロータ1の内周面1bと隙間を空けて対向する。また、複数の磁石3は、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図1に示すように、複数の磁石3を時計回りの順に磁石3a,3b,3c,3d,3e,3f・・・と呼ぶ。磁石3の2つの磁極(N極及びS極)は、回転軸10を中心とする径方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3同士の磁極の配置は交互に異なる(
図3参照)。
【0027】
磁石保持リング2は、回転軸10回りに回転可能にステータ7(
図2参照)により支持される。これにより、複数の磁石3は、回転軸10回りに回転可能にステータ7により支持される。ステータ7は、車両の非回転部11(例:トランスミッションカバー)に固定される。
【0028】
複数のポールピース4は、ロータ1の内周面1bと複数の磁石3との隙間に配置される。複数のポールピース4は、強磁性体である。複数のポールピース4は、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図1に示すように、複数のポールピース4を時計回りの順にポールピース4a,4b,4c,4d,4e,4f・・・と呼ぶ。複数のポールピース4の数は、複数の磁石3の数と同数であり、例えば16個又は32個である。そのため、隣り合う2つポールピース4と回転軸10とを結ぶ2本の線が成す角度は、隣り合う2つの磁石3と回転軸10とを結ぶ2本の線が成す角度と等しい(
図1及び
図3参照)。
【0029】
ポールピース保持リング5は、円筒状をなしており、複数のポールピース4を保持する。ポールピース保持リング5は、非磁性体である。具体的には、複数のポールピース4は、ポールピース保持リング5に埋め込まれる。ただし、ポールピース保持リング5の径方向の厚みは、複数のポールピース4の径方向の厚みと実質的に等しい。そのため、複数のポールピース4の両主面は、ポールピース保持リング5から露出する。これにより、複数のポールピース4は、
図1及び
図3に示すように、複数の磁石3と隙間を空けて対向すると共に、ロータ1と隙間を空けて対向する。ポールピース保持リング5は、
図2に示すように、ステータ7に固定される。これにより、複数のポールピース4は、ステータ7に固定される。
【0030】
以上のように、ポールピース保持リング5がステータ7に固定され、磁石保持リング2がステータ7に回転可能に支持される。これにより、ステータ7は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係が変化できるように、複数の磁石3と複数のポールピース4とを支持する。
【0031】
駆動部106は、複数の磁石3及び複数のポールピース4の内のいずれか一方に接続され、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りの位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える。非制動状態とは、ロータ1に制動力が発生しない状態である。制動状態とは、ロータ1に制動力が発生する状態である。減速装置100では、駆動部106は、磁石保持リング2(すなわち、複数の磁石3)に接続される。したがって、駆動部106は、磁石保持リング2を回転軸10回りに回転させることにより、複数の磁石3と複数のポールピース4との位置関係を変化させる。
【0032】
駆動部106は、
図1に示すように、シリンダ108、ピストン110、非制動側経路112、制動側経路114、非制動側バルブ116、制動側バルブ118、ロッド120、先端部122、ベアリング124及びベース126を含む。シリンダ108、ピストン110、非制動側経路112、制動側経路114、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118は、アクチュエータを構成する。
【0033】
シリンダ108は、中空の円柱状部材である。シリンダ108の中心軸は、回転軸10を中心とする円の接線方向(
図1では、左右方向)に延びる。また、シリンダ108は、磁石保持リング2の上端近傍に配置され、ステータ7の一部であるハウジング130に固定される。磁石保持リング2の上端とは、磁石保持リング2において回転軸10の真上に位置する部分である。
【0034】
ピストン110は、円板であり、シリンダ108内の空間を非制動側空間Sp1と制動側空間Sp2とに仕切る。非制動側空間Sp1は、シリンダ108内におけるピストン110よりも右方に位置する空間である。制動側空間Sp2は、シリンダ108内におけるピストン110よりも左方に位置する空間である。ピストン110は、シリンダ108内において左右に移動することができる。
【0035】
非制動側経路112は、圧力源104と非制動側空間Sp1とを接続する。制動側経路114は、圧力源104と制動側空間Sp2とを接続する。圧力源104は、圧縮空気を生成し、例えば、車両のコンプレッサー及びエアタンクである。故に、圧力源104は、減速装置100の外部に設けられる。
【0036】
非制動側バルブ116は、非制動側経路112に設けられ、圧力源104と非制動側空間Sp1とを接続する接続状態と、非制動側空間Sp1と大気圧となっている外部空間とを接続する解放状態と、を切り替える。接続状態では、非制動側空間Sp1に圧縮空気が供給され、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧よりも高くなる。解放状態では、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧となる。非制動側バルブ116は、制御部102が非制動側バルブ116に通電していないときに接続状態に制御され、制御部102が非制動側バルブ116に通電しているときに解放状態に制御される。
【0037】
制動側バルブ118は、制動側経路114に設けられ、圧力源104と制動側空間Sp2とを接続する接続状態と、制動側空間Sp2と外部空間とを接続する解放状態と、を切り替える。接続状態では、制動側空間Sp2に圧縮空気が供給され、制動側空間Sp2の圧力が大気圧よりも高くなる。解放状態では、制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。制動側バルブ118は、制御部102が制動側バルブ118に通電しているときに接続状態に制御され、制御部102が制動側バルブ118に通電していないときに解放状態に制御される。
【0038】
ロッド120、先端部122、ベアリング124及びベース126は、ピストン110と磁石保持リング2とを連結する連結部材である。ロッド120は、ピストン110の右面の中央から右方に向かって延びる。ロッド120の先端(右端)は、シリンダ108から突出する。先端部122は、ロッド120の先端に設けられ、前方から見たときに長方形状をなす板状部材である。先端部122には、上下が反転したU字状の切り欠きが設けられる。切り欠きは、前方から見たときに、先端部122の下辺から上方に向かって延びる。
【0039】
ベース126は、磁石保持リング2の前面における上端近傍に固定されている板状部材である。ベアリング124は、ベース126に回転可能に支持されている円筒部材である。ベアリング124は、前後方向に延びる中心軸を有しており、中心軸回りに回転できる。また、ベアリング124は、切り欠き内に位置する。そのため、ベアリング124は、上方、右方及び左方の三方において先端部122により囲まれる。以上の構成により、ピストン110が右方に向かって移動すると、ベアリング124が先端部122により右方に押される。これにより、磁石保持リング2が時計回りに回転する。また、ピストン110が左方に向かって移動すると、ベアリング124が先端部122により左方に押される。これにより、磁石保持リング2が反時計回りに回転する。
【0040】
制御部102は、駆動部106を制御する。制御部102は、例えば、CPUである。具体的には、制御部102が、非制動側バルブ116を接続状態に制御し、制動側バルブ118を解放状態に制御すると、ピストン110が左方に移動する。これにより、磁石保持リング2が反時計回りに回転し、減速装置100が非制動状態に制御される。一方、制御部102が、非制動側バルブ116を解放状態に制御し、制動側バルブ118を接続状態に制御すると、ピストン110が右方に移動する。これにより、磁石保持リング2が時計回りに回転し、減速装置100が制動状態に制御される。以上のように、制御部102は、減速装置100を制動状態と非制動状態とに切り替える。
【0041】
[減速装置の動作]
次に、減速装置100の動作について図面を参照しながら説明する。
図5は、制御部102のフローチャートである。
図6ないし
図11は、減速装置100を模式的に示す図である。
図6ないし
図11は要部の横断面図である。
図6ないし
図11において、制御部102と非制動側バルブ116及び制動側バルブ118とを接続する線が実線で示されている場合には、制御部102が非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を通電することを意味する。また、
図6ないし
図11において、制御部102と非制動側バルブ116及び制動側バルブ118とを接続する線が点線で示されている場合には、制御部102が非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を通電しないことを意味する。
【0042】
まず、本処理は、例えば、車両のイグニションがONされることにより開始される。制御部102は、制御信号が出力されてきたか否かを判定する(ステップS1)。制御信号は、減速装置100を非制動状態から制動状態に切り替えることを示す信号(以下、制動ON信号とも呼ぶ)、又は、減速装置100を制動状態から非制動状態に切り替えることを示す信号(以下、制動OFF信号とも呼ぶ)である。制御信号は、車両の運転席に設けられているスイッチをドライバーが操作することによりスイッチから出力される。制御信号が出力されてきた場合、本処理はステップS2に進む。制御信号が出力されてこない場合、本処理はステップS1に戻る。この場合、制御信号が出力されるまでステップS1が繰り返される。
【0043】
制御信号が出力されてきた場合、制御部102は、制御信号が制動ON信号又は制動OFF信号のいずれであるのかを判定する(ステップS2)。制動ON信号である場合、本処理はステップS3に進む。制動OFF信号である場合、本処理はステップS6に進む。
【0044】
制動ON信号である場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電する(ステップS3・制動側保持ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を非制動状態から制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS3における減速装置100の動作について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
【0045】
ステップS3の直前には、減速装置100は、
図6に示す非制動状態となっている。非制動状態では、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1及び制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。そのため、ピストン110は、シリンダ108の左端近傍において左右方向に移動できる。ただし、非制動状態では、磁石3cがポールピース4dを吸引する力、及び、磁石3dがポールピース4dを吸引する力が生じる。そこで、磁石3c,3dは、これらの2つの力が釣り合う位置に移動しようとする。その結果、一つのポールピース4dが2つの磁石3c,3dを均等に跨ぐ。つまり、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積と等しくなる。この場合、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4dを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過せず、磁石3c,3dとロータ1との間に磁気回路が形成されない。その結果、ロータ1に渦電流が発生せず、ロータ1には制動力が発生しない。
【0046】
ステップS3において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電する。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116を解放状態に制御し、制動側バルブ118を接続状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧となる。また、制動側空間Sp2に圧縮空気が供給されて、制動側空間Sp2の圧力が大気圧よりも高くなる。その結果、
図7に示すように、ピストン110が右方に向かって移動を開始する。この後、本処理はステップS4に進む。
【0047】
次に、制御部102は、ステップS3の処理を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御部102は、ピストン110が右端まで移動したか否かを判定する。したがって、所定時間は、ピストン110がシリンダ108の左端から右端まで移動するのに必要な時間以上に設定される。所定時間が経過していない場合、本処理はステップS4に戻る。所定時間が経過した場合、本処理はステップS5に進む。
【0048】
所定時間が経過した場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない(ステップS5・制動側解除ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS5における減速装置100の動作について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
【0049】
ステップS4において所定時間が経過した場合、
図8に示すように、ピストン110がシリンダ108の右端に到達する。このとき、ピストン110がシリンダ108の右端に押しつけられる。そのため、複数の磁石3と複数のポールピース4との位置関係は保持される。ただし、磁石3c,3dはそれぞれ、ポールピース4d,4eに完全に重なっておらず、時計回り側にポールピース4d,4eから僅かにはみ出している。
【0050】
そこで、ステップS5において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1及び制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。そのため、ピストン110は、シリンダ108の右端近傍において左右方向に移動できる。すなわち、磁石3c,3dとポールピース4d,4eとの位置関係の保持が解除される。ただし、
図8では、磁石3cとポールピース4dとが完全に重ならないので、磁石3cにおいてポールピース4dからはみ出した部分がポールピース4dを吸引する。磁石3dとポールピース4eとが完全に重ならないので、磁石3dにおいてポールピース4eからはみ出した部分がポールピース4eを吸引する。よって、磁石保持リング2は僅かに反時計回りに回転する(
図9参照)。その結果、磁石3cがポールピース4dに完全に重なり、磁石3dがポールピース4eに完全に重なる。すなわち、減速装置100が制動状態となる。これにより、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4e、ロータ1及びポールピース4dを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過し、磁石3c,3dとロータ1との間に磁気回路が形成される。その結果、ロータ1に渦電流が発生し、ロータ1に制動力が発生する。この後、本処理はステップS9に進む。
【0051】
制動OFF信号である場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電せず、制動側バルブ118に通電しない(ステップS6・非制動側保持ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を制御状態から非制御状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS6における減速装置100の動作について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
【0052】
ステップS6の直前には、減速装置100は、
図9に示す制動状態となっている。減速装置100の制動状態については既に説明を行ったので、これ以上の説明を省略する。
【0053】
ステップS6において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電せず、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116を接続状態に制御し、制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1に圧縮空気が供給されて、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧よりも高くなる。また、制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。その結果、
図10に示すように、ピストン110が左方に向かって移動を開始する。この後、本処理はステップS7に進む。
【0054】
次に、制御部102は、ステップS6の処理を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7では、制御部102は、ピストン110が左端まで移動したか否かを判定する。したがって、所定時間は、ピストン110がシリンダ108の右端から左端まで移動するのに必要な時間以上に設定される。所定時間が経過していない場合、本処理はステップS7に戻る。所定時間が経過した場合、本処理はステップS8に進む。
【0055】
所定時間が経過した場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない(ステップS8・非制動側解除ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS8における減速装置100の動作ついて、
図11及び
図6を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
【0056】
ステップS7において所定時間が経過した場合、
図11に示すように、ピストン110がシリンダ108の左端に到達する。このとき、ピストン110がシリンダ108の左端に押しつけられる。そのため、複数の磁石3と複数のポールピース4との位置関係は保持される。ただし、
図6に示す非制動状態に比べて、
図11に示す状態では、磁石3が僅かに反時計回り側に位置する。そのため、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積よりも小さい。
【0057】
そこで、ステップS8において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1及び制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。そのため、ピストン110は、シリンダ108の左端近傍において左右方向に移動できる。すなわち、磁石3c,3dとポールピース4c,4dとの位置関係の保持が解除される。ただし、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積よりも小さいので、磁石3cがポールピース4dを吸引する力と磁石3dがポールピース4dを吸引する力とに差が生じる。そこで、磁石3c,3dは、これらの2つの力が釣り合う位置に移動しようとする。よって、磁石保持リング2は僅かに時計回りに回転する(
図6参照)。その結果、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積と等しくなる。すなわち、減速装置100が非制動状態となる。減速装置100の非制動状態については既に説明を行ったので、これ以上の説明を省略する。この後、本処理はステップS9に進む。
【0058】
前記ステップS9において、制御部102は、減速装置100の制御が終了したか否かを判定する(ステップS9)。制御部102は、車両のイグニションがOFFされた場合には減速装置100の制御が終了したと判定する。この後、本処理は終了する。一方、制御部102は、車両のイグニションがOFFされない場合には減速装置100の制御が終了していないと判定する。この後、本処理はステップS1に戻る。
【0059】
[効果]
以上のように構成された減速装置100によれば、非制動状態において、ロータ1に制動力が発生することを抑制できる。より詳細には、
図22に示すように、特許文献1に記載の減速装置500では、非制動状態における複数のポールピース504と複数の磁石505との位置関係にずれが生じるおそれがある。この場合、ポールピース504aと磁石505aとが対向する面積が、ポールピース504aと磁石505bとが対向する面積よりも小さくなる。また、ポールピース504bと磁石505bとが対向する面積が、ポールピース504bと磁石505cとが対向する面積よりも小さくなる。その結果、磁石505b、ポールピース504a、ロータ502、ポールピース504b、磁石505cの順に通過する磁気回路が形成される。よって、非制動状態において、ロータ502に渦電流が発生し、ロータ502に制動力が発生する。
【0060】
そこで、減速装置100では、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、ピストン110は、シリンダ108の左端近傍において左右方向に移動することが可能となる。そして、磁石3c,3dは、磁石3cがポールピース4dを吸引する力と磁石3dがポールピース4dを吸引する力とが釣り合う位置に移動しようとする。その結果、
図6に示すように、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積と等しくなる。
図6に示す状態では、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4dを通過して、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過しない。よって、減速装置100によれば、非制動状態において、ロータ1に制動力が発生することを抑制できる。
【0061】
なお、減速装置100は、制動状態において正常に動作することができる。より詳細には、減速装置100では、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を非制動状態から制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3とポールピース4との回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、ピストン110は、シリンダ108の右端近傍において左右方向に移動することが可能となる。そして、磁石3cは、
図9に示すように、磁石3cとポールピース4dとが完全に重なる位置に移動する。また、磁石3dは、
図9に示すように、磁石3dとポールピース4eとが完全に重なる位置に移動する。
図9に示す状態では、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4e、ロータ1、ポールピース4dを通過して、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過する。すなわち、減速装置100が制動状態となる。
【0062】
また、減速装置100が非制動状態と制動状態とに正常に切り替わることが可能となる。より詳細には、非制動状態において、制御部102は、ピストン110がシリンダ108の左端に到達後にピストン110が左右方向に移動できるように、駆動部106を制御する。したがって、
図11に示すようにピストン110が左端に到達したときに、複数の磁石3は、
図6に示す非制動状態における複数の磁石3よりも反時計回りに少し回転しすぎることが好ましい。これにより、ピストン110が左右方向に移動できるようになると、複数の磁石3は、吸引力により時計回りに回転して、
図6に示す非制動状態の位置に移動できる。同様に、制動状態において、制御部102は、ピストン110がシリンダ108の右端に到達後にピストン110が左右方向に移動できるように、駆動部106を制御する。したがって、
図8に示すようにピストン110が右端に到達したときに、複数の磁石3は、
図9に示す制動状態における複数の磁石3よりも時計回りに少し回転しすぎることが好ましい。これにより、ピストン110が左右方向に移動できるようになると、複数の磁石3は、吸引力により反時計回りに回転して、
図9に示す制動状態の位置に移動できる。
【0063】
以上のような動作を実現するためには、以下の条件を満たす必要がある。ピストン110のストローク量に相当する複数の磁石3の回転角をθ1(
図1参照)と定義する。ピストン110のストローク量に相当する複数の磁石3の回転角とは、ピストン110がシリンダ108の右端から左端まで(又は左端から右端まで)移動したときに、複数の磁石3が回転軸10を中心として回転する角度である。また、複数の磁石3のピッチの半分をθ2(
図1参照)と定義する。ピッチとは、円周方向に隣り合う2つの磁石3と回転軸10とを結ぶ2本の直線が成す角度である。このとき、式(1)が成立する。
【0065】
式(1)が成立することにより、
図11に示すようにピストン110が左端に到達したときに、複数の磁石3は、
図6に示す非制動状態における複数の磁石3よりも反時計回りに少し回転しすぎる。また、
図8に示すようにピストン110が右端に到達したときに、複数の磁石3は、
図9に示す制動状態における複数の磁石3よりも時計回りに少し回転しすぎる。そこで、
図11に示す状態においてピストン110が左右方向の移動を許されると、複数の磁石3は、吸引力により非制動状態の位置に移動する。また、
図8に示す状態においてピストン110が左右方向の移動を許されると、複数の磁石3は、吸引力により制動状態の位置に移動する。このように、式(1)が成立することによって、減速装置100が非制動状態と制動状態とに正常に切り替わることが可能となる。
【0066】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る減速装置100aの構成について図面を参照しながら説明する。
図12は、減速装置100aにおける磁石3Ac〜3Ae,3Bc〜3Beの配列を示す斜視図である。
図13から
図16は、減速装置100aを模式的に示す図である。
図13及び
図14は、非制動状態における減速装置100aの図である。
図15及び
図16は、制動状態における減速装置100aの図である。
図13及び
図15は、磁気回路の発生状況を示す縦断面図であり、
図14及び
図16は、磁気回路の発生状況を示す横断面図である。
【0067】
減速装置100aは、永久磁石及び磁石保持リングの構造において減速装置100と相違する。以下に、係る相違点を中心に、減速装置100aの構成について説明する。
【0068】
減速装置100aは、磁石保持リング2の代わりに磁石保持リング2A,2Bを備える。磁石保持リング2A,2Bは、同じ形状及び同じ大きさを有しており、円筒状をなす。すなわち、磁石保持リング2A,2Bは、磁石保持リング2が前後に2つに分割された構造を有する。磁石保持リング2A,2Bは、前方から後方へとこの順に並ぶ。磁石保持リング2A,2Bは、ロータ1の内側においてロータ1と同心状に配置される。
【0069】
また、減速装置100aは、複数の磁石3の代わりに、複数の磁石3A及び複数の磁石3Bを備える。磁石保持リング2Aの外周面には、複数の磁石3Aが固定される。複数の磁石3Aは、ロータ1の内周面1bと隙間を空けて対向し、回転軸10(図示せず)を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図12、
図14及び
図16に示すように、複数の磁石3Aを時計回りの順に磁石3Aa,3Ab,3Ac,3Ad,3Ae,3Af・・・と呼ぶ。磁石3Aの2つの磁極(N極及びS極)は、回転軸10(図示せず)を中心とする径方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3A同士の磁極の配置は交互に異なる(
図12参照)。
【0070】
磁石保持リング2Bの外周面には、複数の磁石3Bが固定される。複数の磁石3Bは、ロータ1の内周面1bと隙間を空けて対向し、回転軸10(図示せず)を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図12に示すように、複数の磁石3Bを時計回りの順に磁石3Ba,3Bb,3Bc,3Bd,3Be,3Bf・・・(
図12では、磁石3Bc,3Bd,3Beのみ図示)と呼ぶ。磁石3Bの2つの磁極(N極及びS極)は、回転軸10(図示せず)を中心とする径方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3B同士の磁極の配置は交互に異なる。
【0071】
複数のポールピース4は、ロータ1の内周面1bと複数の磁石3A及び複数の磁石3Bとの隙間に配置される。複数のポールピース4は、回転軸10(図示せず)を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図14及び
図16に示すように、複数のポールピース4を時計回りの順にポールピース4a,4b,4c,4d,4e,4f・・・と呼ぶ。複数のポールピース4の数は、複数の磁石3Aの数及び複数の磁石3Bの数と同数である。複数のポールピース4は、磁石保持リング2A,2Bとは異なり、分割されない。
【0072】
磁石保持リング2Aは、回転軸10(図示せず)回りに回転可能にステータにより支持される。一方、磁石保持リング2Bは、ステータ7に固定される。駆動部106(
図12から
図16には図示せず)は、磁石保持リング2A(すなわち、複数の磁石3A)に接続され、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bとポールピース4との回転軸10回りの位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える。したがって、駆動部106は、磁石保持リング2Aを回転軸10回りに回転させることにより、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bと複数のポールピース4との位置関係を変化させる。減速装置100aの駆動部106の構造は、減速装置100の駆動部106の構造と同じであるので説明を省略する。
【0073】
次に、減速装置100aの非制動状態及び制動状態について説明する。以下の説明では、磁石3Ab,3Ac,3Ad,3Bb,3Bc,3Bd及びポールピース4c,4d,4eに着目して説明する。
【0074】
非制動状態では、
図13に示すように、磁石3Aa,3Ab,3Ac,3Ad,3Ae,3Af・・・はそれぞれ、磁石3Ba,3Bb,3Bc,3Bd,3Be,3Bf・・・と前後方向において完全に重なる(
図13では、磁石3Ad,3Bdのみを図示)。このとき、前後方向において互いに隣り合う磁石3A及び磁石3B同士の磁極の配置は異なる。これにより、
図13に示すように、磁石3BdのN極から出た磁束は、ポールピース4dを通過し、磁石3AdのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過せず、磁石3Ad,3Bdとロータ1との間に磁気回路が形成されない。その結果、ロータ1に渦電流が発生せず、ロータ1には制動力が発生しない。
【0075】
制動状態では、
図15に示すように、磁石3Aa,3Ab,3Ac,3Ad,3Ae,3Af・・・はそれぞれ、磁石3Bb,3Bc,3Bd,3Be,3Bf,3Bg・・・と前後方向において完全に重なる(
図15では、磁石3Ac,3Bdのみを図示)。このとき、前後方向において互いに隣り合う磁石3A及び磁石3B同士の磁極の配置は同じになる。これにより、
図15及び
図16に示すように、磁石3AcのN極から出た磁束は、ポールピース4d及びロータ1を通過し、磁石3AbのS極又は磁石3AdのS極に到達する。また、図示を省略するが、磁石3BdのN極から出た磁束は、ポールピース4d及びロータ1を通過し、磁石3BcのS極又は磁石3BeのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過し、磁石3Ab,3Acとロータ1との間に磁気回路が形成される。同様に、磁石3Ac,3Adとロータ1との間に磁気回路が形成される。また、磁石3Bc,3Bdとロータ1との間に磁気回路が形成される。また、磁石3Bd,3Beとロータ1との間に磁気回路が形成される。その結果、ロータ1に渦電流が発生し、ロータ1に制動力が発生する。
【0076】
以上のような減速装置100aでは、減速装置100と同様に、製造ばらつきによって、シリンダ108(図示せず)の取り付け位置が設計時の位置からずれたり、ポールピース4の回転軸10回りの位置が設計時の位置からずれたりすることがある。そこで、減速装置100aにおいても、減速装置100と同様に、制御部102は、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bと複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bと複数のポールピース4との回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。これにより、非制動状態においてロータ1に制動力が発生することを抑制できる。
【0077】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る減速装置100bの構成について図面を参照しながら説明する。
図17から
図19は、減速装置100bを模式的に示す図である。
図17は、減速装置100bの縦断面図である。ただし、
図17では、減速装置100bの上半分のみの断面を示す。
図18は、非制動状態における減速装置100bの要部を示す図である。
図19は、制動状態における減速装置100bの要部を示す図である。
図18及び
図19は、減速装置100bのロータ1の周方向に沿う断面図である。
【0078】
減速装置100bは、ロータ、永久磁石、磁石保持リング、ポールピース及びポールピース保持リングの構造において減速装置100と相違する。以下に、係る相違点を中心に、減速装置100bの構成について説明する。
【0079】
ロータ1は、ディスク1A,1Bを含んでいる。ディスク1A,1Bは、前側から見たときに円環状をなす板状部材である。ディスク1A,1Bは、前方から後方へとこの順に並ぶ。ディスク1Aとディスク1Bとの間には隙間が設けられている。ただし、ディスク1Aとディスク1Bとは、連結されており、回転軸10回りに一体となって回転できる。
【0080】
磁石保持リング2は、前側から見たときに円環状をなす板状部材であり、ディスク1Aとディスク1Bとの間に配置される。磁石保持リング2は、複数の磁石3を保持する。具体的には、複数の磁石3は、磁石保持リング2に埋め込まれる。ただし、複数の磁石3の両主面は、磁石保持リング2から露出する。これにより、複数の磁石3は、ディスク1Aの後面1Ab(
図18参照)と隙間を空けて対向すると共に、ディスク1Bの前面1Bb(
図18参照)と隙間を空けて対向する。更に、複数の磁石3は、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図18及び
図19に示すように、複数の磁石3を時計回りの順に磁石3a,3b,3c,3d・・・と呼ぶ。複数の磁石3の2つの磁極(N極及びS極)は、前後方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3同士の磁極の配置は交互に異なる(
図18及び
図19参照)。
【0081】
磁石保持リング2は、回転軸10回りに回転可能にステータにより支持される。これにより、磁石3は、回転軸10回りに回転可能にステータにより支持される。
【0082】
また、減速装置100bは、複数のポールピース4の代わりに、複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bを備える。複数のポールピース4Aは、ディスク1Aの後面1Abと複数の磁石3との隙間に配置される。複数のポールピース4Aは、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図18及び
図19に示すように、複数のポールピース4Aを時計回りの順にポールピース4Aa,4Ab,4Ac,4Ad・・・と呼ぶ。複数のポールピース4Bは、ディスク1Bの前面1Bbと複数の磁石3との隙間に配置される。複数のポールピース4Bは、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、
図18及び
図19に示すように、複数のポールピース4Bを時計回りの順にポールピース4Ba,4Bb,4Bc,4Bd・・・と呼ぶ。また、ポールピース4Aa,4Ab,4Ac,4Ad・・・はそれぞれ、ポールピース4Ba,4Bb,4Bc,4Bd・・・と前後方向において重なるように配置される。複数の磁石3の数と、複数のポールピース4Aの数と、複数のポールピース4Bの数とは、同数である。
【0083】
減速装置100bは、ポールピース保持リング5の代わりに、ポールピース保持リング5A,5Bを備える。ポールピース保持リング5Aは、複数のポールピース4Aを保持する。具体的には、複数のポールピース4Aは、ポールピース保持リング5Aに埋め込まれる。ただし、ポールピース保持リング5Aの前後方向の厚みは、複数のポールピース4Aの前後方向の厚みと実質的に等しい。そのため、複数のポールピース4Aの両主面は、ポールピース保持リング5Aから露出する。これにより、複数のポールピース4Aは、複数の磁石3と隙間を空けて対向すると共に、ディスク1Aと隙間を空けて対向する。
【0084】
ポールピース保持リング5Bは、複数のポールピース4Bを保持する。具体的には、複数のポールピース4Bは、ポールピース保持リング5Bに埋め込まれる。ただし、ポールピース保持リング5Bの前後方向の厚みは、複数のポールピース4Bの前後方向の厚みと実質的に等しい。そのため、複数のポールピース4Bの両主面は、ポールピース保持リング5Bから露出する。これにより、複数のポールピース4Bは、複数の磁石3と隙間を空けて対向すると共に、ディスク1Bと隙間を空けて対向する。
【0085】
ポールピース保持リング5A,5Bは、ステータに固定される。これにより、ポールピース4A,4Bは、ステータに固定される。
【0086】
駆動部106(
図17から
図19には図示せず)は、磁石保持リング2(すなわち、磁石3)に接続され、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの回転軸10回りの位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える。したがって、駆動部106は、磁石保持リング2を回転軸10回りに回転させることにより、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの位置関係を変化させる。減速装置100bの駆動部106の構造は、減速装置100の駆動部106の構造と同じであるので説明を省略する。
【0087】
次に、減速装置100bの非制動状態及び制動状態について説明する。以下の説明では、磁石3b,3c及びポールピース4Ab,4Ac,4Bb,4Bcに着目して説明する。
【0088】
非制動状態では、
図18に示すように、磁石3bとポールピース4Abとが対向する面積は、磁石3cとポールピース4Abとが対向する面積と等しい。これにより、磁石3cのN極から出た磁束は、ポールピース4Abを通過し、磁石3bのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Aを通過せず、磁石3b,3cとディスク1Aとの間に磁気回路が形成されない。その結果、ディスク1Aに渦電流が発生せず、ディスク1Aには制動力が発生しない。
【0089】
同様に、非制動状態では、
図18に示すように、磁石3bとポールピース4Bbとが対向する面積は、磁石3cとポールピース4Bbとが対向する面積と等しい。これにより、磁石3bのN極から出た磁束は、ポールピース4Bbを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Bを通過せず、磁石3b,3cとディスク1Bとの間に磁気回路が形成されない。その結果、ディスク1Bに渦電流が発生せず、ディスク1Bには制動力が発生しない。
【0090】
制動状態では、
図19に示すように、磁石3bがポールピース4Ab,4Bbに完全に重なり、磁石3cがポールピース4Ac,4Bcに完全に重なる。これにより、磁石3cのN極から出た磁束は、ポールピース4Ac、ディスク1A及びポールピース4Abを通過し、磁石3bのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Aを通過し、磁石3b,3cとディスク1Aとの間に磁気回路が形成される。その結果、ディスク1Aに渦電流が発生し、ディスク1Aに制動力が発生する。
【0091】
同様に、制動状態では、磁石3bのN極から出た磁束は、ポールピース4Bb、ディスク1B及びポールピース4Bcを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Bを通過し、磁石3b,3cとディスク1Bとの間に磁気回路が形成される。その結果、ディスク1Bに渦電流が発生し、ディスク1Bに制動力が発生する。
【0092】
以上のような減速装置100bでは、減速装置100と同様に、製造ばらつきによって、シリンダ108(図示せず)の取り付け位置が設計時の位置からずれたり、複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bの回転軸10回りの位置が設計時の位置からずれたりすることがある。そこで、減速装置100bにおいても、減速装置100と同様に、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの回転軸10回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。これにより、非制動状態においてロータ1に制動力が発生することを抑制できる。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明に係る減速装置は、減速装置100,100a,100bに限らずその要旨の範囲内において変更可能である。
【0094】
なお、減速装置100,100a,100bの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0095】
なお、減速装置100,100a,100bでは、ポールピースがステータに固定され、磁石がステータに回転可能に支持される。しかしながら、磁石がステータに固定され、ポールピースがステータに回転可能に支持されてもよい。この場合、駆動部は、ポールピースを保持するポールピース保持リングに接続される。
【0096】
また、減速装置100,100a,100bでは、駆動部106は、空気圧により駆動しているが、油圧により駆動してもよいし、電動であってもよい。