(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の吸着セルのそれぞれの吸着セルにおいて前記セル壁は、前記それぞれの吸着セルに面する第一の壁面と、前記それぞれの吸着セルに面してかつ前記それぞれの吸着セルを介して前記第一の壁面に対向する第二の壁面とを有し、
前記第一の電極は、前記第一の壁面に設けられ、
前記第二の電極は、前記第二の壁面に設けられ、
前記複数のナノワイヤのそれぞれは、前記第一の電極と接触する第一の端部と、前記第二の電極と接触する第二の端部とを有する、請求項3に記載の化学物質濃縮器。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、本開示の実施の形態に係る化学物質濃縮器および化学物質検出器について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0009】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構造については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化している。
【0010】
図1は実施の形態における化学物質濃縮器20の斜視図である。化学物質濃縮器20は、試料100に含まれる化学物質101を濃縮する。実施の形態において試料100は気体である。化学物質101の濃縮は、例えば、検出過程における試料100の前処理として化学物質101の濃度を高めるために行われる。
【0011】
試料100としては、例えば、ヒトや動物の呼気、車や工場の排気ガス等がある。化学物質101としては、例えば、ケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、硫化水素、メチルメルカプタン、ジスルフィドなどの揮発性有機化合物がある。
【0012】
図2は
図1に示す化学物質濃縮器20の線II−IIにおける断面図である。
図3は
図2に示す化学物質濃縮器20の線III−IIIにおける断面図である。
図4は
図2に示す化学物質濃縮器20の線IV−IVにおける断面図である。
【0013】
化学物質濃縮器20は、化学物質101を含む試料100が流れ方向D20に流れる流路21と、流路21を複数の吸着セル22に区画するセル壁23とを有する。流路21は基板24に形成されている。
【0014】
基板24は、例えば、樹脂材料、半導体材料または金属等からなる。
【0015】
図5は化学物質濃縮器20の拡大断面図であり、吸着セル22を拡大して模式的に示す。複数の吸着セル22は、流路21内に設けられたセル壁23で区画されている。複数の吸着セル22のそれぞれ吸着セル22においてセル壁23は、壁面231と壁面232とを有する。壁面231は吸着セル22を介して壁面232と対向している。
【0016】
吸着セル22の内部には、電極25、26と吸着材27とが配置される。
【0017】
電極25は壁面231上に設けられている。電極26は壁面232上に設けられている。電極25、26は吸着セル22内において互いに離間して配置される。電極25、26は、例えば、金、銅、白金、カーボン等の導電材料よりなる。電極25、26は、同じ材料よりなっていてもよく、異なる材料よりなっていてもよい。
【0018】
吸着材27は試料100に含まれる化学物質101を吸着する。
【0019】
吸着材27は導電性を有し、電極25、26が吸着材27を介して互いに電気的に接続されるように電極25、26と接触する位置に配置される。電極25、26は電極25、26に電流を供給するための電源装置に接続される。
【0020】
吸着材27は、導電性を有する複数のナノワイヤ271の集合体である。ナノワイヤ271は、例えば、導電性の金属酸化物で形成される。ナノワイヤ271の間には空隙272が設けられている。気体の試料100に含まれる化学物質101は、空隙272を通過する間に複数のナノワイヤ271の表面に吸着する。複数のナノワイヤ271で形成される吸着材27は大きい表面積を有するので、化学物質101を効率良く吸着することができる。
【0021】
また、ナノワイヤ271は、電極25と接触する端部271Aと、電極26と接触する端部271Bとを有する。これにより、ナノワイヤ271には、電極25、26を通して電流が供給される。
【0022】
吸着材27は、電流の印加により熱を発する材料で形成される。つまり、電極25および電極26から電流を流すことにより、吸着材27は、ジュール熱を発する。
【0023】
導電性を有するナノワイヤ271は、例えば、SnO
2、ZnO、In
2O
3、In
2−xSn
xO
3(例えば、0.1≦x≦0.2)、NiO、CuO、TiO2、SiO
2などの金属酸化物、Al、Ag、Au、Pd、Ptなどの金属、カーボン、または、シリコンなどの導電材料よりなる。カーボンからなるナノワイヤ271としては、例えばカーボンナノチューブを用いてもよい。
【0024】
また、ナノワイヤ271は、表面が金属酸化物で覆われた樹脂等で形成されてもよい。このように、導電性の金属酸化物で被覆することにより、吸着材27は導電性を有する。
【0025】
このように、吸着材27は、導電性があり、かつ、ジュール効果による自己加熱が効率的に生じる程度の抵抗値を有している材料で形成されている。
【0026】
前述の従来の吸着分離システムにおいて、化学物質101は、吸着剤材料を介し熱伝導性フィラメントからの熱を受け取る。吸着剤材料を介した熱の移動において熱損失が生じるので、化学物質101は効率良く加熱されない。したがって、従来の吸着分離システムでは吸着剤材料に吸着された化学物質101が十分に脱離できない場合がある。
【0027】
実施の形態における化学物質濃縮器20では、吸着材27が発する熱により、吸着材27に吸着された化学物質101を直接加熱することができる。そのため、化学物質濃縮器20は、化学物質101を加熱する際の熱損失が小さくなる。
【0028】
化学物質濃縮器20は、複数の吸着セル22からなる吸着部211を有しており、それぞれの吸着セル22において、化学物質101を吸着および脱離するように構成されている。それぞれの吸着セル22内に設けられた電極25、26は、電極25、26に電流を供給するための電源装置に接続される。
【0029】
これにより、複数の吸着セル22のそれぞれにおいて、吸着材27に吸着された化学物質101は吸着材27の発熱により吸着材27から脱離する。したがって、化学物質濃縮器20は、吸着した化学物質101を効率よく、かつ、十分に吸着材27から脱離させて、試料100中での化学物質101を効率的に濃縮することができる。
【0030】
また、流路21が複数の吸着セル22に区画されていることにより、吸着材27のそれぞれを小さくすることができる。例えば、実施の形態では、流路21はナノワイヤ271が延びる高さ方向に3つに区画されることにより、流路21内に形成されるナノワイヤ271の長さは、区画されない流路21に配置されるナノワイヤの長さの約3分の1になる。複数の吸着セル22の高さ方向の長さは互いに同じでもよいし、異なってもよい。複数の吸着セル22の高さ方向と直角の幅方向の長さは互いに同じでもよいし、異なってもよい。
【0031】
液相成長法や気相成長法でナノワイヤ271を形成する場合、ナノワイヤ271が長くなると、ナノワイヤ271の形成にかかる時間が長くなる。そのため、流路21を複数の吸着セル22に区画しない化学物質濃縮器の生産効率は高くない。
【0032】
一方、実施の形態における化学物質濃縮器20は、流路21を区画した吸着セル22のそれぞれの内部にナノワイヤ271が配置されており、ナノワイヤ271は短い。したがって、化学物質濃縮器20の製造に係る時間は短縮される。
【0033】
複数のナノワイヤ271が長くなると、複数のナノワイヤ271の長さや太さのばらつきも大きくなるので、吸着材27を所定の大きさに制御することが難しくなる。ナノワイヤ271の太さや長さは、吸着材27の空隙272の大きさなどに影響する。ナノワイヤ271のサイズのばらつきは、吸着材27の吸着性能の劣化に繋がる。
【0034】
また、ナノワイヤ271の長さは、ナノワイヤ271の発熱に必要な消費電力に影響する。具体的には、ナノワイヤ271が長くなるほど抵抗が大きくなるので、発熱に必要な消費電力も大きくなる。
【0035】
以上のように、流路21を区画する吸着セル22に設けられたナノワイヤ271により、吸着材27および化学物質濃縮器20の性能は向上する。したがって、化学物質濃縮器20は、ナノワイヤ271がそれぞれ配置された複数の吸着セル22で構成することが好ましい。ナノワイヤ271の長さは、好ましくは、1μm以上100μm以下である。複数の吸着セル22のうちの1つの吸着セル22に配置された複数のナノワイヤ271の長さは、他の吸着セル22に配置された複数のナノワイヤ271の長さと同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。ナノワイヤ271の直径は、好ましくは、10nm以上1μm以下である。複数の吸着セル22のうちの1つの吸着セル22に配置された複数のナノワイヤ271の直径は他の吸着セル22に配置された複数のナノワイヤ271の直径と同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。複数の吸着セル22のそれぞれ1つの吸着セル22に配置された複数のナノワイヤ271の長さは互いに同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。複数の吸着セル22のそれぞれ1つの吸着セル22に配置された複数のナノワイヤ271の直径は互いに同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0036】
化学物質濃縮器20は、吸着材27を冷却する冷却部28を有していてもよい。吸着材27を冷却することにより、吸着材27は、より多くの化学物質101を効率よく吸着することができる。冷却部28は、例えば、流路21が形成された基板24の下面に設けられる。冷却部28は、例えば、ペルチェ素子、空冷素子、水冷素子等である。
【0037】
なお、冷却部28は、吸着材27を冷却することができれば、どこに設けられていてもよい。例えば、冷却部28は、流路21の内部または吸着セル22の内部に設けられていてもよい。
【0038】
また、セル壁23には、試料100が流れる流れ方向D20に延びる複数の貫通孔29が設けられていてもよい。
【0039】
貫通孔29は試料100が通るように構成されている。これにより、貫通孔29は化学物質濃縮器20の圧力損失を低減することができる。したがって、流路21の圧力損失が大きい場合であっても、試料100は停滞することなく流路21内を流れることができる。吸着材27には試料100が供給され続けるため、より多くの化学物質101を吸着することができる。
【0040】
外部の圧力で流路21に試料100を通す場合には、流れ方向D20に垂直の面内において流速分布が生じる。具体的には、流れ方向D20に垂直の面内において、周辺すなわち流路21の壁付近と比較して流路21の中央付近の流速が大きくなる傾向がある。貫通孔29はこれを考慮して設けられる。つまり、流路21の壁付近に設けられた貫通孔29の孔径は、流路21の壁から離れた流路21の中央付近に設けられた貫通孔29の孔径よりも小さいことが好ましい。これにより、流れ方向D20に垂直の面内において生じる流速差を小さくすることができる。より好ましい構成としては、流れ方向D20に垂直の面内において生じる流速を均一にすることができる。
【0041】
また、流れ方向D20に垂直の面内の流速
差を小さくする別の方法として、流路21の壁付近に設けられた貫通孔29の単位面積当たりの数を、流路21の壁23から離れた流路21の中央付近に設けられた貫通孔29の単位面積当たりの数よりも多くしてもよい。また、貫通孔29の単位面積当たりの数および孔径の両方を変えてもよい。具体的には、流路21の壁付近の貫通孔29は、流路21の中央付近の貫通孔29より単位面積当たりの数が多く、かつ、孔径も大きくてもよい。このように、貫通孔29は、複数の吸着セル22へ試料100が行き渡るよう設けられる。
【0042】
なお、貫通孔29は、流路21内に気体である試料100が流れる際の圧力損失を考慮して設けられる。したがって、化学物質濃縮器20において流路21の圧力損失が十分小さい場合は、セル壁23に貫通孔29を設けなくてもよい。
【0043】
図6は実施の形態における他の化学物質濃縮器20Aの断面図である。
図6において、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20と同じ部分には同じ参照番号を付す。化学物質濃縮器20Aでは、流路21はセル壁23により複数の吸着セル22と複数の空洞セル30とに区画されている、空洞セル30の内部には、電極25、26と吸着材27のいずれも設けられていない。空洞セル30は試料100が通るように構成されており、化学物質濃縮器
20Aの流路21の圧力損失を低減することができる。このように、空洞セル30は、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20の貫通孔29と同様の役割を有する。
【0044】
化学物質濃縮器20Aは
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20の貫通孔29をさらに有していてもよい。
【0045】
図7は実施の形態におけるさらに他の化学物質濃縮器20Bの断面図である。
図7において、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20と同じ部分には同じ参照番号を付す。化学物質濃縮器20Bでは、複数の吸着セル22はハニカム構造を構成する。吸着セル22がハニカム構造を構成することにより、流路21に流れる試料100は複数の吸着セル22に均一に流れる。したがって、各吸着セル22に吸着される化学物質101の量は、場所により偏りが生じ難くなる。そのため、化学物質濃縮器20Bは、効率よく化学物質101を吸着させることができる。また、吸着セル22の壁面と吸着材27との間には試料100が通る隙間22Gが形成されているので、ハニカム構造を構成する吸着セル22は、試料100が流れる際の流路21の圧力損失を低減することができる。
【0046】
なお、吸着材27の材料は、ナノワイヤ271に限られない。例えば、吸着材27は導電性を有する多孔質体よりなっていてもよい。多孔質体は、例えば、ナノワイヤの材料と同じ材料を用いて構成される。吸着剤27は、1種類の材料よりなっていてもよく、複数種類の材料よりなっていてもよい。
【0047】
図8は実施の形態におけるさらに他の化学物質濃縮器20Cの拡大断面図である。
図8において、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20と同じ部分には同じ参照番号を付す。
図8に示す化学物質濃縮器20Cは、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20の流路21の複数の吸着セル22の代わりに複数の吸着セル42に区画されている。
【0048】
吸着セル42はセル壁23により区画されている。セル壁23は、互いに対向する壁面231、232を有する。
【0049】
吸着セル42において、電極43、電極44および吸着材45は壁面231上に形成されている。つまり、電極43、電極44および吸着材45は、吸着セル42を形成するセル壁23の同一面上に設けられている。電極43、44は流れ方向D20に直角の方向に配列されている。
【0050】
この構成により、電極43と吸着材45とを安定に電気的に接続でき、電極44と吸着材45とを安定に電気的に接続することができ、化学物質濃縮器20Cの信頼性を向上させることができる。また、電極43、44と吸着材45を同一面上に形成することにより、簡単な製造プロセスで化学物質濃縮器20Cを製造することができる。
【0051】
ナノワイヤ451は、端部451Aと、端部451Aの反対側の端部451Bとを有する。ナノワイヤ451は、壁面231、232間で壁面231、232と交差する方向に延び、実施の形態では壁面231、232と実質的に直角に延びる。ナノワイヤ451の端部451Aは端部451Bに比べて壁面231に近く、端部451Bは端部451Aに比べて壁面232に近い。ナノワイヤ451の端部451Aは電極43、44に接続されている。複数のナノワイヤ451の壁面231に近い端部
451Aにおいて、複数のナノワイヤ451は部分的に互いに接合して接合部452を構成している。これにより、ナノワイヤ451には壁面231に沿って電流を流すことができる。なお、接合部452は、壁面231の近くでなくてもよい。例えば、複数のナノワイヤ451が部分的に互いに接合する接合部452は、壁面232の近くまたはナノワイヤ451の端部451A、451Bの間の中央に設けられていてもよい。
【0052】
また、吸着材45と壁面232との間に空間46が形成されており、吸着材45は壁面232から離れて壁面232と接触していない。空間46は、吸着材45が発する熱が壁面232に伝わることによる損失を防止することができる。
【0053】
なお、電極43および電極44は、流路21の流れ方向D20に沿って配列されていてもよい。
【0054】
化学物質濃縮器20Cは、電極43、44のそれぞれと壁面231との間に設けられた断熱層48を有していてもよい。同様に、
図5に示すように、化学物質濃縮器20は、電極26と壁面232との間に設けられた断熱層48Bと、電極25と壁面231との間に設けられた断熱層48Aとを有していてもよい。断熱層48Aは吸着材27と壁面231との間に設けられていてもよい。断熱層48A、
48Bにより、吸着材27、45から壁面231、232に伝わる熱を小さくでき、熱の損失を抑制することができる。
【0055】
図9は実施の形態におけるさらに他の化学物質濃縮器20Dの断面図である。
図9において、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20と同じ部分には同じ参照番号を付す。
図9に示す化学物質濃縮器20Dは、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20の電極25、26の代わりに複数の吸着セル22のそれぞれに設けられて吸着材27を加熱するように構成されて壁面231に設けられた加熱部25Dを備える。吸着材27のナノワイヤ271は加熱部25Dに接する。加熱部25Dは、例えば、白金の電極パターンよりなる。吸着材27(ナノワイヤ271)は吸着セル22の壁面232から離れている。
【0056】
図9に示す化学物質濃縮器20Dでは吸着材27のナノワイヤ271は加熱部25Dにより加熱されて吸着材27に吸着された化学物質を離脱させる。化学物質濃縮器20Dでは吸着材27(ナノワイヤ271)は自己加熱型ではなくてもよく、吸着材27の材料をより多くの種類の材料から選択することができる。
【0057】
図10は実施の形態におけるさらに他の化学物質濃縮器20Eの断面図である。
図10において、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20と同じ部分には同じ参照番号を付す。
図10に示す化学物質濃縮器20Eは、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20の電極25、26の代わりに、複数の吸着セル22の外部で基板24に設けられた加熱部25Eを備える。加熱部25Eは基板24を介して吸着材27(ナノワイヤ271)を加熱するように構成されている。吸着材27のナノワイヤ271は壁面231に接する。加熱部
25Eは、例えば、白金の電極パターンよりなる。吸着材27(ナノワイヤ271)は吸着セル22の壁面232から離れている。
【0058】
図10に示す化学物質濃縮器20Eでは吸着材27のナノワイヤ271は加熱部25Eにより基板24を介して加熱されて吸着材27に吸着された化学物質を離脱させる。化学物質濃縮器20Eでは吸着材27(ナノワイヤ271)は自己加熱型ではなくてもよく、吸着材27の材料をより多くの種類の材料から選択することができる。
【0059】
液相成長でナノワイヤ271を形成する場合、長いナノワイヤ271を作成することは難しい。
図10に示す化学物質濃縮器20Eでは、ナノワイヤ271が延びる高さ方向にナノワイヤ271を積層させるように複数の吸着セル22が配置されている。
【0060】
図11Aは実施の形態におけるさらに他の化学物質濃縮器210の斜視図である。
図11Aにおいて、
図1から
図5に示す化学物質濃縮器20と同じ部分には同じ参照番号を付す。
【0061】
化学物質濃縮器210は、流路21内に設けられた複数の吸着部211(211A、211B)を有している。吸着部211A、211Bのそれぞれは、複数の吸着セル22を有している。複数の吸着部211A、211Bは、流路21内に気体である試料100の流れ方向D20に沿って互いに離間して配置される。試料100は流れ方向D20に流れる。化学物質濃縮器210は、複数の吸着部211A、211Bを有することにより、多くの量の化学物質101を複数の吸着部211A、211Bで吸着することができる。
【0062】
吸着部211Aの吸着材27の材料は、吸着部211Bの吸着材27の材料と異なっていてもよい。吸着材27に吸着される化学物質101の種類は、吸着材27の材料によって異なる。そのため、化学物質濃縮器210は、吸着部211A、211Bで吸着材27の材料を異ならせることにより、吸着部211A、211Bで吸着される化学物質101を異ならせることができる。この構成により、化学物質濃縮器210は、複数の異なる種類の化学物質101を濃縮することができる。
【0063】
吸着部211Aと吸着部211Bとの間に試料100を攪拌するミキサーを設けてもよい。ミキサーは、インラインミキサー、ヘリカルミキサー、マグネティックスターラー、ファン、超音波ミキサー、衝突壁であることが好ましい。試料100に含まれる化学物質101の組成は吸着部211Aの後段において空間的または時間的な不均一を生じる可能性がある。吸着部211Aと吸着部211Bとの間に試料100を攪拌するミキサーを設けることによりこの不均一を解消できる。
【0064】
図11Bは流れ方向D20から見た化学物質濃縮器210の断面図である。
図11Bは吸着部211Aの断面を示すが、吸着部211Bの貫通孔29も併せて示す。流れ方向D20から見て、吸着部211Aに設けられた複数の貫通孔29は吸着部211Bに設けられた複数の貫通孔29に対してずれていることが好ましい。これにより、吸着部211Aの貫通孔29を通過した試料100は吸着部211Bの貫通孔29を通過しにくくなる。したがって、化学物質濃縮器210において多くの量の試料100が吸着材27と接触することができ、多くの量の化学物質101を吸着材27で吸着することができる。複数の貫通孔29の直径は互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0065】
図12は実施の形態における化学物質検出器50の上面斜視図である。気体の試料100は流れ方向D20に流れる。
【0066】
化学物質検出器50は、化学物質濃縮器20の後段すなわち流れ方向D20の下流側に設けられた検出素子51を備える。検出素子51としては、例えば、表面弾性波素子、電気抵抗変化素子、水晶発信子マイクロバランス、電界効果トランジスタを用いたバイオセンサ、または、近赤外分光センサ、テラヘルツ分光センサ、光学センサなどを用いることができる。
【0067】
化学物質検出器50は、化学物質濃縮器20で濃縮された化学物質を検出素子51で検出する。検出素子51は、複数の吸着セル22で構成される流路21に接続された流路52内に設けられている。つまり、複数の吸着セル22で吸着されて複数の吸着セル22から脱離した化学物質101は、後段の検出素子51により検出される。
【0068】
複数の吸着セル22の前段または/および後段に試料100を攪拌するミキサーを設けてもよい。ミキサーは、インラインミキサー、ヘリカルミキサー、マグネティックスターラー、ファン、超音波ミキサー、衝突壁であることが好ましい。
【0069】
なお、化学物質101は、複数の吸着セル22へ外部からの圧力、例えばポンプやファンなどにより発生する圧力によって搬送されてもよい。化学物質101は複数の吸着セル22へ拡散または対流により搬送されてもよい。複数の吸着セル22で吸着された複数の吸着セル22から離脱した化学物質101は、拡散または対流により検出素子51へ搬送されてもよい。化学物質検出器50では、検出素子51は化学物質濃縮器20の前段、化学物質濃縮器20の流れ方向D20の反対側に設けられていてもよい。
【0070】
また、複数の吸着セル22と検出素子51との距離は検出感度の観点から短いことが好ましい。複数の吸着セル22と検出素子51とは接していてもよい。化学物質検出器50は複数の検出素子51を備えていてもよい。検出素子51は流路52の上面に設けられてもよいし、下面または側面に設けられてもよい。
【0071】
実施の形態における化学物質検出器50は、試料100中の化学物質101を化学物質濃縮器20で濃縮することにより、化学物質101の濃度が低いもしくは化学物質101が微量であっても、感度良く化学物質101を検出することができる。
【0072】
以上、一つまたは複数の態様に係る化学物質濃縮器および化学物質検出器について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。