(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1受信フィルタ、前記第1送信フィルタ、および前記第2送信フィルタは、弾性表面波フィルタ、BAW(Bulk Acoustic Wave)を用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかである、
請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
前記第1送信フィルタ、前記第1受信フィルタ、および前記第2受信フィルタは、弾性表面波フィルタ、BAWを用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかである、
請求項4または5に記載のマルチプレクサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチプレクサの性能を評価するパラメータとしてアイソレーションが挙げられる。アイソレーションを確保する構成としては、従来、フィルタ内部にインダクタンス成分を付加する構成が挙げられる。
【0006】
しかしながら、マルチプレクサに割り当てられる周波数帯域が多くなるほど、つまり、通過帯域の異なるフィルタの共通接続数が多くなるほど、アイソレーションを確保すべき周波数帯域の組み合わせが多くなる。このため、フィルタ内部に付加されるインダクタンス成分(いわゆるラダーLまたは有極Lなど)だけでは、マルチプレクサのアイソレーション特性を向上させることが困難となっている。特に、送信用のフィルタが配置された送信経路と受信用のフィルタが配置された受信経路との間において、大電力の送信信号が受信経路に漏洩すると、マルチプレクサの受信感度が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、共通端子に接続された送信経路と受信経路との間のアイソレーションが向上したマルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るマルチプレクサは、共通端子、第1受信端子、第1送信端子、および第2送信端子と、前記共通端子と前記第1受信端子との間に配置された第1受信フィルタと、前記共通端子と前記第1送信端子との間に配置された第1送信フィルタと、前記共通端子と前記第2送信端子との間に配置された第2送信フィルタと、前記共通端子と前記第1受信フィルタとの間に直列接続された第1インダクタと、前記第1送信端子と前記第1送信フィルタとの間に接続された第2インダクタと、前記第2送信端子と前記第2送信フィルタとの間に接続された第3インダクタと、を備え、前記第1インダクタと前記第2インダクタとは磁界結合しており、前記第1インダクタと前記第3インダクタとは磁界結合している。
【0009】
上記構成によれば、第1送信端子から第1送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第1受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第1送信端子から磁界結合した第2インダクタおよび第1インダクタを経由して第1受信フィルタに向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。また、第2送信端子から第2送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第1受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第2送信端子から磁界結合した第3インダクタおよび第1インダクタを経由して第1受信フィルタに向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。つまり、送信フィルタが配置された送信経路と受信フィルタが配置された受信経路との間のアイソレーションを向上させることが可能となる。よって、相対的に電力の大きな送信信号が受信経路へ漏洩して受信感度を低下させることを抑制できる。
【0010】
また、前記第2インダクタは、前記第1送信端子と前記第1送信フィルタとの間に直列接続され、前記第3インダクタは、前記第2送信端子と前記第2送信フィルタとの間に直列接続され、前記第1インダクタのインダクタンス値は、前記第2インダクタのインダクタンス値よりも大きく、かつ、前記第3インダクタのインダクタンス値よりも大きくてもよい。
【0011】
信号経路にインダクタが直列接続された場合、当該インダクタのインダクタンス値が大きいほど、高周波信号の伝搬損失が大きくなる。特に大電力を送信する必要がある送信経路において、高周波信号の伝搬ロスを極力低減することがマルチプレクサの性能向上にとって重要となる。
【0012】
上記構成によれば、送信経路に直列接続された第2インダクタおよび第3インダクタは、受信経路に直列接続された第1インダクタよりもインダクタンス値が小さいので、第1インダクタと第2インダクタとの磁界結合、および、第1インダクタと第3インダクタとの磁界結合を確保しつつ、高周波送信信号の伝搬損失を低減できる。よって、マルチプレクサの高周波伝搬性能を向上させることが可能となる。
【0013】
また、前記第1受信フィルタは、第1周波数帯域に割り当てられた第1送信帯域および第1受信帯域のうちの前記第1受信帯域を通過帯域とし、前記第1送信フィルタは、前記第1送信帯域を通過帯域とし、前記第2送信フィルタは、前記第1周波数帯域と異なる第2周波数帯域に割り当てられた第2送信帯域および第2受信帯域のうちの前記第2送信帯域を通過帯域としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第1受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第1送信端子から磁界結合した第2インダクタおよび第1インダクタを経由して第1受信フィルタに向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、第1周波数帯域の送信信号および受信信号の間のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0015】
また、第2送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第1受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第2送信端子から磁界結合した第3インダクタおよび第1インダクタを経由して第1受信フィルタに向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、第1周波数帯域の受信信号および第2周波数帯域の送信信号の間のクロスアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0016】
また、前記第1受信フィルタ、前記第1送信フィルタ、および前記第2送信フィルタは、弾性表面波フィルタ、BAW(Bulk Acoustic Wave)を用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかであってもよい。
【0017】
これにより、第1受信フィルタ、第1送信フィルタ、および第2送信フィルタを小型化できるので、マルチプレクサの小型化および低価格化が可能となる。
【0018】
また、本発明の一態様に係るマルチプレクサは、共通端子、第1送信端子、第1受信端子、および第2受信端子と、前記共通端子と前記第1送信端子との間に配置された第1送信フィルタと、前記共通端子と前記第1受信端子との間に配置された第1受信フィルタと、前記共通端子と前記第2受信端子との間に配置された第2受信フィルタと、前記共通端子と前記第1送信フィルタとの間に直列接続された第1インダクタと、前記第1受信端子と前記第1受信フィルタとの間に接続された第2インダクタと、前記第2受信端子と前記第2受信フィルタとの間に接続された第3インダクタと、を備え、前記第1インダクタと前記第2インダクタとは磁界結合しており、前記第1インダクタと前記第3インダクタとは磁界結合している。
【0019】
上記構成によれば、第1送信端子から第1送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第1受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第1送信端子から磁界結合した第1インダクタおよび第2インダクタを経由して第1受信端子に向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。また、第1送信端子から第1送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第2受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第1送信端子から磁界結合した第1インダクタおよび第3インダクタを経由して第2受信端子に向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。つまり、送信フィルタが配置された送信経路と受信フィルタが配置された受信経路との間のアイソレーションを向上させることが可能となる。よって、相対的に電力の大きな送信信号が受信経路へ漏洩して受信感度を低下させることを抑制できる。
【0020】
また、前記第2インダクタは、前記第1受信端子と前記第1受信フィルタとの間に直列接続され、前記第3インダクタは、前記第2受信端子と前記第2受信フィルタとの間に直列接続され、前記第1インダクタのインダクタンス値は、前記第2インダクタのインダクタンス値よりも小さく、かつ、前記第3インダクタのインダクタンス値よりも小さくてもよい。
【0021】
これにより、送信経路に直列接続された第1インダクタは、受信経路に直列接続された第2インダクタおよび第3インダクタよりもインダクタンス値が小さいので、第1インダクタと第2インダクタとの磁界結合、および、第1インダクタと第3インダクタとの磁界結合を確保しつつ、高周波送信信号の伝搬損失を低減できる。よって、マルチプレクサの高周波伝搬性能を向上させることが可能となる。
【0022】
また、前記第1送信フィルタは、第1周波数帯域に割り当てられた第1送信帯域および第1受信帯域のうちの前記第1送信帯域を通過帯域とし、前記第1受信フィルタは、前記第1受信帯域を通過帯域とし、前記第2受信フィルタは、前記第1周波数帯域と異なる第2周波数帯域に割り当てられた第2送信帯域および第2受信帯域のうちの前記第2受信帯域を通過帯域としてもよい。
【0023】
上記構成によれば、第1送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第1受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第1送信端子から磁界結合した第1インダクタおよび第2インダクタを経由して第1受信端子に向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、第1周波数帯域の送信信号および受信信号の間のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0024】
また、第1送信フィルタを通過した高周波送信信号のうち第2受信フィルタに漏洩する高周波成分と、第1送信端子から磁界結合した第1インダクタおよび第3インダクタを経由して第2受信端子に向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、第2周波数帯域の受信信号および第1周波数帯域の送信信号の間のクロスアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0025】
また、前記第1送信フィルタ、前記第1受信フィルタ、および前記第2受信フィルタは、弾性表面波フィルタ、BAWを用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかであってもよい。
【0026】
これにより、第1送信フィルタ、第1受信フィルタ、および第2受信フィルタを小型化できるので、マルチプレクサの小型化および低価格化が可能となる。
【0027】
また、さらに、アンテナ素子に接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子と前記共通端子との間に接続されたインピーダンス整合回路と、を備えてもよい。
【0028】
これにより、第1インダクタ、第2インダクタ、および第3インダクタのインダクタンス値を、磁界結合の結合度を優先して調整しても、上記インピーダンス整合回路により各送信経路および各受信経路間のインピーダンス整合を最適化できる。よって、第1インダクタ、第2インダクタ、および第3インダクタのインダクタンス値の設定自由度が向上する。
【0029】
また、本発明の一態様に係る高周波フロントエンド回路は、上記いずれかに記載のマルチプレクサと、前記マルチプレクサに接続された増幅回路と、を備える。
【0030】
これにより、送信フィルタが配置された送信経路と受信フィルタが配置された受信経路との間のアイソレーションが向上した高周波フロントエンド回路を提供できる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る通信装置は、アンテナ素子で送受信される高周波信号を処理するRF信号処理回路と、前記アンテナ素子と前記RF信号処理回路との間で前記高周波信号を伝達する上記記載の高周波フロントエンド回路と、を備える。
【0032】
これにより、送信フィルタが配置された送信経路と受信フィルタが配置された受信経路との間のアイソレーションが向上した通信装置を提供できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るマルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置によれば、共通端子に接続された送信経路と受信経路との間のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ、または大きさの比は、必ずしも厳密ではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する場合がある。また、以下の実施の形態において、「接続される」とは、直接接続される場合だけでなく、他の素子等を介して電気的に接続される場合も含まれる。
【0036】
また、以下の実施の形態において、「インダクタAとインダクタBとが磁界結合する」とは、「インダクタAとインダクタBとが、磁界を遮断するシールド部材を介在せずに配置された状態で、磁界結合している」ことと定義される。
【0037】
(実施の形態1)
[1.マルチプレクサ1Aの基本構成]
図1Aは、実施の形態1に係るマルチプレクサ1Aの回路構成図である。同図に示すように、マルチプレクサ1Aは、送信フィルタ10および30と、受信フィルタ20および40と、インダクタ12、21および32と、アンテナ端子100と、共通端子101と、送信端子110および130と、受信端子120および140と、整合回路50と、を備える。
【0038】
アンテナ端子100は、アンテナ素子に接続される接続端子である。
【0039】
共通端子101は、送信フィルタ10および30、インダクタ21、ならびに受信フィルタ40と接続されており、また、整合回路50を介してアンテナ端子100に接続されている。
【0040】
送信端子110は、高周波送信信号を増幅するパワーアンプ回路に接続される第1送信端子である。送信端子130は、高周波送信信号を増幅するパワーアンプ回路に接続される第2送信端子である。
【0041】
受信端子120は、高周波受信信号を増幅するローノイズアンプ回路に接続される第1受信端子である。
【0042】
受信端子140は、高周波受信信号を増幅するローノイズアンプ回路に接続される受信端子である。
【0043】
送信フィルタ10は、共通端子101と送信端子110との間に配置され、送信回路(RFICなど)で生成された高周波送信信号を、送信端子110を経由して入力し、当該高周波送信信号をBandA1の送信通過帯域でフィルタリングして共通端子101へ出力する第1送信フィルタである。
【0044】
受信フィルタ20は、共通端子101と受信端子120との間に配置され、共通端子101から入力された高周波受信信号を入力し、当該高周波受信信号をBandA2の受信通過帯域でフィルタリングして受信端子120へ出力する第1受信フィルタである。
【0045】
送信フィルタ30は、共通端子101と送信端子130との間に配置され、送信回路(RFICなど)で生成された高周波送信信号を、送信端子130を経由して入力し、当該高周波送信信号をBandA3の送信通過帯域でフィルタリングして共通端子101へ出力する第2送信フィルタである。
【0046】
受信フィルタ40は、共通端子101と受信端子140との間に配置され、共通端子101から入力された高周波受信信号を入力し、当該高周波受信信号をBandA4の受信通過帯域でフィルタリングして受信端子140へ出力する。
【0047】
インダクタ12は、送信端子110と送信フィルタ10との間に接続された第2インダクタである。
【0048】
インダクタ32は、送信端子130と送信フィルタ30との間に接続された第3インダクタである。
【0049】
インダクタ21は、共通端子101と受信フィルタ20との間に直列接続された第1インダクタである。
【0050】
整合回路50は、アンテナ端子100と共通端子101との間に接続され、アンテナ素子とマルチプレクサ1Aとのインピーダンスを整合するインピーダンス整合回路である。整合回路50は、例えば、アンテナ端子100および共通端子101に直列接続された1つのインダクタで構成されていてもよいし、また、アンテナ端子100と共通端子101との接続ノードとグランドとの間に接続された1つのインダクタであってもよい。さらに、これらのインダクタのほか、キャパシタが直列または並列に接続されていてもよい。つまり、整合回路50は、1以上のインダクタおよび1以上のキャパシタのそれぞれが、直列または並列に接続された回路構成を有していればよい。
【0051】
上記回路構成を有するマルチプレクサ1Aにおいて、インダクタ21とインダクタ12とは磁界結合しており、かつ、インダクタ21とインダクタ32とは磁界結合している。
【0052】
これによれば、送信端子110から送信フィルタ10を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分と、送信端子110から磁界結合したインダクタ12および21を経由して受信フィルタ20に向かう高周波成分とを打ち消し合うことが可能となる。
【0053】
なお、上記2つの高周波成分が位相反転した関係となるようにインダクタ12および21の電磁界結合度を最適化し、送信端子110から送信フィルタ10を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分を最小化することが好ましい。
【0054】
また、送信端子130から送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分と、送信端子130から磁界結合したインダクタ32および21を経由して受信フィルタ20に向かう高周波成分とを打ち消し合うことが可能となる。
【0055】
なお、上記2つの高周波成分が位相反転した関係となるようにインダクタ32および21の電磁界結合度を最適化し、送信端子130から送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分を最小化することが好ましい。
【0056】
つまり、送信フィルタ10および30が配置された送信経路と、受信フィルタ20が配置された受信経路との間のアイソレーションを向上させることが可能となる。よって、相対的に電力の大きな高周波送信信号が受信経路へ漏洩してマルチプレクサ1Aの受信感度を低下させることを抑制できる。
【0057】
また、整合回路50が配置されることにより、インダクタ12、21および32のインダクタンス値を、磁界結合の結合度を優先して調整しても、アンテナ素子、各送信経路および各受信経路の間のインピーダンス整合を最適化できる。よって、インダクタ12、21および32のインダクタンス値の設定自由度が向上する。
【0058】
なお、整合回路50は、必須の構成要素ではなく、なくてもよい。
【0059】
また、本実施の形態に係るマルチプレクサ1Aにおいて、BandA1とBandA2とは、同じ周波数帯域であってもよいし、また、異なる周波数帯域であってもよい。BandA1とBandA2とが同じ周波数帯域である場合には、送信フィルタ10と受信フィルタ20とは、例えば、当該周波数帯域に送信通過帯域および受信通過帯域が割り当てられたデュプレクサを構成する。また、BandA1とBandA2とが異なる周波数帯域である場合には、送信フィルタ10および受信フィルタ20は、それぞれ、異なる通過帯域を有する単体フィルタを構成する。同様に、BandA3とBandA4とは、同じ周波数帯域であってもよいし、また、異なる周波数帯域であってもよい。BandA3とBandA4とが同じ周波数帯域である場合には、送信フィルタ30と受信フィルタ40とは、例えば、当該周波数帯域に送信通過帯域および受信通過帯域が割り当てられたデュプレクサを構成する。また、BandA3とBandA4とが異なる周波数帯域である場合には、送信フィルタ30および受信フィルタ40は、それぞれ、異なる通過帯域を有する単体フィルタを構成する。
【0060】
また、送信フィルタ10および30、ならびに、受信フィルタ20および40は、弾性表面波フィルタ、BAW(Bulk Acoustic Wave)を用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかである。これにより、各フィルタを小型化できるので、マルチプレクサ1Aの小型化および低価格化が可能となる。
【0061】
なお、送信フィルタ10および30、ならびに、受信フィルタ20は、弾性波フィルタであることが好ましい。特に、送信フィルタ10および30、ならびに、受信フィルタ20は、1以上の直列腕共振子および1以上の並列腕共振子からなるラダー型の弾性波フィルタであってもよい。この場合、インダクタ21、12および32は、フィルタ通過特性の減衰極を調整する機能およびインピーダンス整合機能を有することが可能となる。
【0062】
[2.変形例に係るマルチプレクサの構成]
図1Bは、実施の形態1の変形例に係るマルチプレクサ1Bの回路構成図である。本変形例に係るマルチプレクサ1Bは、2送信経路および1受信経路にインダクタが配置されている実施の形態1に係るマルチプレクサ1Aと比較して、1送信経路および2受信経路にインダクタが配置されている点が構成として異なる。以下、本変形例に係るマルチプレクサ1Bについて、実施の形態1に係るマルチプレクサ1Aと同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0063】
図1Bに示すように、マルチプレクサ1Bは、送信フィルタ10および30と、受信フィルタ20および40と、インダクタ22、31および42と、アンテナ端子100と、共通端子101と、送信端子110および130と、受信端子120および140と、整合回路50と、を備える。
【0064】
共通端子101は、送信フィルタ10、受信フィルタ20および40、ならびにインダクタ31と接続されており、また、整合回路50を介してアンテナ端子100に接続されている。
【0065】
送信端子110は、高周波送信信号を増幅するパワーアンプ回路に接続される送信端子である。送信端子130は、高周波送信信号を増幅するパワーアンプ回路に接続される第1送信端子である。
【0066】
受信端子120は、高周波受信信号を増幅するローノイズアンプ回路に接続される第2受信端子である。
【0067】
受信端子140は、高周波受信信号を増幅するローノイズアンプ回路に接続される第1受信端子である。
【0068】
インダクタ22は、受信端子120と受信フィルタ20との間に接続された第3インダクタである。
【0069】
インダクタ42は、受信端子140と受信フィルタ40との間に接続された第2インダクタである。
【0070】
インダクタ31は、共通端子101と送信フィルタ30との間に直列接続された第1インダクタである。
【0071】
上記回路構成を有するマルチプレクサ1Bにおいて、インダクタ31とインダクタ22とは磁界結合しており、かつ、インダクタ31とインダクタ42とは磁界結合している。
【0072】
これによれば、送信端子130から送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ40に漏洩する高周波成分と、送信端子130から磁界結合したインダクタ31および42を経由して受信端子140に向かう高周波成分とを打ち消し合うことが可能となる。
【0073】
なお、上記2つの高周波成分が位相反転した関係となるようにインダクタ31および42の電磁界結合度を最適化し、送信端子130から送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ40に漏洩する高周波成分を最小化することが好ましい。
【0074】
また、送信端子130から送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分と、送信端子130から磁界結合したインダクタ31および22を経由して受信端子120に向かう高周波成分とを打ち消し合うことが可能となる。
【0075】
なお、上記2つの高周波成分が位相反転した関係となるようにインダクタ31および22の電磁界結合度を最適化し、送信端子130から送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分を最小化することが好ましい。
【0076】
つまり、送信フィルタ30が配置された送信経路と受信フィルタ20および40が配置された受信経路との間のアイソレーションを向上させることが可能となる。よって、相対的に電力の大きな送信信号が受信経路へ漏洩して受信感度を低下させることを抑制できる。
【0077】
また、本変形例に係るマルチプレクサ1Bにおいて、BandA1とBandA2とは、同じ周波数帯域であってもよいし、また、異なる周波数帯域であってもよい。BandA1とBandA2とが同じ周波数帯域である場合には、送信フィルタ10と受信フィルタ20とは、例えば、当該周波数帯域に送信通過帯域および受信通過帯域が割り当てられたデュプレクサを構成する。また、BandA1とBandA2とが異なる周波数帯域である場合には、送信フィルタ10および受信フィルタ20は、それぞれ、異なる通過帯域を有する単体フィルタを構成する。同様に、BandA3とBandA4とは、同じ周波数帯域であってもよいし、また、異なる周波数帯域であってもよい。BandA3とBandA4とが同じ周波数帯域である場合には、送信フィルタ30と受信フィルタ40とは、例えば、当該周波数帯域に送信通過帯域および受信通過帯域が割り当てられたデュプレクサを構成する。また、BandA3とBandA4とが異なる周波数帯域である場合には、送信フィルタ30および受信フィルタ40は、それぞれ、異なる通過帯域を有する単体フィルタを構成する。
【0078】
[3.実施例に係るマルチプレクサ1Aの構成]
図2は、実施例に係るマルチプレクサ1Aの回路構成図である。本実施例に係るマルチプレクサ1Aは、実施の形態1に係るマルチプレクサ1Aを、LTE(Long Term Evolution)のBand25および66のクワッドプレクサに適用した例である。
【0079】
送信フィルタ10は、Band25(第1周波数帯域)の送信通過帯域(1850−1915MHz:第1送信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0080】
受信フィルタ20は、Band25(第1周波数帯域)の受信通過帯域(1930−1995MHz:第1受信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0081】
送信フィルタ30は、Band66(第2周波数帯域)の送信通過帯域(1710−1780MHz:第2送信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0082】
受信フィルタ40は、Band66(第2周波数帯域)の受信通過帯域(2110−2200MHz:第2受信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0083】
インダクタ12は、送信端子110と送信フィルタ10との間に直列接続されている。
【0084】
インダクタ32は、送信端子130と送信フィルタ30との間に直列接続されている。
【0085】
インダクタ21は、共通端子101と受信フィルタ20との間に直列接続されている。
【0086】
本実施例において、Band25の高周波送信信号が、受信フィルタ20が配置されたBand25の受信経路へと漏洩してしまうとともに、Band66の高周波送信信号が、共通端子101を経由してBand25の受信経路へと漏洩してしまう可能性がある。
【0087】
これに対して、実施例に係るマルチプレクサ1Aでは、インダクタ21とインダクタ12とが磁界結合しており、かつ、インダクタ21とインダクタ32とが磁界結合している。
【0088】
これによれば、送信フィルタ10を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分P25と、送信端子110から磁界結合したインダクタ12および21を経由して受信フィルタ20に向かう高周波成分N25とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、Band25の送信信号および受信信号の間のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0089】
また、送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分P66と、送信端子130から磁界結合したインダクタ32および21を経由して受信フィルタ20に向かう高周波成分N66とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、異なる周波数帯域の受信信号および送信信号の間のクロスアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0090】
また、本実施例に係るマルチプレクサ1Aでは、インダクタ21のインダクタンス値を5.2nH、インダクタ12のインダクタンス値を1.5nH、インダクタ32のインダクタンス値を3.9nHとしている。つまり、インダクタ21のインダクタンス値は、インダクタ12のインダクタンス値よりも大きく、かつ、インダクタ32のインダクタンス値よりも大きい。
【0091】
信号経路にインダクタが直列接続された場合、当該インダクタのインダクタンス値が大きいほど、高周波信号の伝搬損失が大きくなる。特に大電力を送信する必要がある送信経路において、高周波信号の伝搬ロスを極力低減することがマルチプレクサ1Aの性能向上にとって重要となる。
【0092】
インダクタ12、21、および32の上記関係によれば、送信フィルタ10が配置された送信経路および送信フィルタ30が配置された送信経路に直列接続されたインダクタ12および32は、受信フィルタ20が配置された受信経路に直列接続されたインダクタ21よりもインダクタンス値が小さい。よって、インダクタ21とインダクタ12との磁界結合、および、インダクタ21とインダクタ32との磁界結合を確保しつつ、高周波送信信号の伝搬損失を低減できる。よって、マルチプレクサ1Aの高周波伝搬性能を向上させることが可能となる。
【0093】
なお、送信経路における信号伝搬ロスを極力低減するという観点から、変形例に係るマルチプレクサ1Bでは、インダクタ31のインダクタンス値は、インダクタ22のインダクタンス値よりも小さく、かつ、インダクタ42のインダクタンス値よりも小さいことが好ましい。これにより、インダクタ31とインダクタ32との磁界結合、および、インダクタ31とインダクタ42との磁界結合を確保しつつ、高周波送信信号の伝搬損失を低減できる。よって、マルチプレクサ1Bの高周波伝搬性能を向上させることが可能となる。
【0094】
なお、インダクタ12、21、および32は、例えば、送信フィルタ10および30、ならびに、受信フィルタ20および40が実装された実装基板上に配置されたチップ状のインダクタンス素子であってもよい。この場合、インダクタ12とインダクタ21との磁界結合度、および、インダクタ12とインダクタ32との磁界結合度は、チップ状のインダクタ12とインダクタ21との間隔および配置方向、ならびに、チップ状のインダクタ32とインダクタ21との間隔および配置方向により調整される。
【0095】
また、インダクタ12、21、および32は、少なくとも1つが、実装基板内に内蔵されたインダクタンス素子であってもよい。この場合、実装基板内に内蔵されたインダクタンス素子は、例えば、実装基板内に積層されたコイルパターンにより構成される。この場合、インダクタ12とインダクタ21との磁界結合度、および、インダクタ12とインダクタ32との磁界結合度は、基板内蔵されたインダクタ12とインダクタ21との間隔および配置関係、ならびに、チップ状のインダクタ32とインダクタ21との間隔および配置関係により調整される。なお、基板内蔵された2つのインダクタの配置関係とは、コールパターンの巻回軸を重ねる、または、離間させるなどが挙げられる。
【0096】
なお、変形例に係るマルチプレクサ1Bにおいても、LTEのBand25および66のクワッドプレクサに適用することが可能である。以下、変形例に係るマルチプレクサ1BをLTEのBand25および66のクワッドプレクサに適用した例を示す。
【0097】
送信フィルタ10は、Band25(第2周波数帯域)の送信通過帯域(1850−1915MHz:第2送信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0098】
受信フィルタ20は、Band25(第2周波数帯域)の受信通過帯域(1930−1995MHz:第2受信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0099】
送信フィルタ30は、Band66(第1周波数帯域)の送信通過帯域(1710−1780MHz:第1送信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0100】
受信フィルタ40は、Band66(第1周波数帯域)の受信通過帯域(2110−2200MHz:第1受信帯域)を通過帯域とする帯域通過型フィルタである。
【0101】
インダクタ22は、受信端子120と受信フィルタ20との間に直列接続されている。
【0102】
インダクタ42は、受信端子140と受信フィルタ40との間に直列接続されている。
【0103】
インダクタ31は、共通端子101と送信フィルタ30との間に直列接続されている。
【0104】
本実施例において、Band66の高周波送信信号が、受信フィルタ40が配置されたBand66の受信経路へと漏洩してしまうとともに、共通端子101を経由してBand25の受信経路へと漏洩してしまう可能性がある。
【0105】
これに対して、変形例に係るマルチプレクサ1Bでは、インダクタ31とインダクタ42とが磁界結合しており、かつ、インダクタ31とインダクタ22とが磁界結合している。
【0106】
これによれば、送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ40に漏洩する高周波成分と、送信端子130から磁界結合したインダクタ31および42を経由して受信端子140に向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、Band66の送信信号および受信信号の間のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0107】
また、送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分と、送信端子130から磁界結合したインダクタ31および22を経由して受信端子120に向かう高周波成分とを位相反転させることで、これら2つの高周波成分を打ち消し合うことが可能となる。よって、異なる周波数帯域の受信信号および送信信号の間のクロスアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0108】
[4.実施例および比較例に係るマルチプレクサの特性比較]
次に、実施例に係るマルチプレクサ1Aと比較例に係るマルチプレクサとの高周波伝搬特性を比較する。
【0109】
なお、比較例に係るマルチプレクサは、実施例に係るマルチプレクサ1Aを構成する回路素子と同様の回路素子を有しているが、インダクタ21とインダクタ12とは磁界結合しておらず、かつ、インダクタ21とインダクタ32とは磁界結合していない点が、実施例に係るマルチプレクサ1Aと異なる。
【0110】
図3Aは、実施例および比較例に係るマルチプレクサのBand25におけるアイソレーション特性を比較したグラフである。
【0111】
比較例に係るマルチプレクサでは、Band25の高周波送信信号が、受信フィルタ20が配置されたBand25の受信経路へと漏洩してしまう。
【0112】
これに対して、実施例に係るマルチプレクサ1Aでは、インダクタ21とインダクタ12とが磁界結合しているため、Band25の送信フィルタ10を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分P25と、送信端子110から磁界結合したインダクタ12および21を経由して受信フィルタ20に向かう高周波成分N25とが位相反転している。これにより、これら2つの高周波成分P25およびN25が打ち消され、特に、Band25の受信帯域(
図3Aの破線内領域)においてアイソレーションが改善されていることが解る。
【0113】
図3Bは、実施例および比較例に係るBand25フィルタの通過特性を比較したグラフである。同図の上段には、Band25の送信フィルタの通過特性の比較が示され、同図の下段には、Band25の受信フィルタの通過特性の比較が示されている。同図の上段に示すように、Band25の受信帯域におけるアイソレーションが改善されたことに伴い、Band25の送信フィルタ10の受信帯域における減衰量も改善されていることが解る。一方、Band25の受信フィルタ20については、インダクタ21および12の磁界結合の有無により、通過特性はほぼ変化しないことが解る。
【0114】
図4は、実施例および比較例に係るBand25フィルタの電圧定在波比(VSWR)を表すグラフである。同図の上段には、マルチプレクサをアンテナ端子100側から見た場合のVSWRが示され、同図中段には、マルチプレクサを送信端子110側から見た場合のVSWRが示され、同図下段には、マルチプレクサを受信端子120側から見た場合のVSWRが示されている。
【0115】
図4に示すように、Band25の送信フィルタおよび受信フィルタについては、インダクタ21および12の磁界結合の有無により、入出力インピーダンスはほぼ変化しないことが解る。
【0116】
図5Aは、実施例および比較例に係るマルチプレクサのBand66送信フィルタ−Band25受信フィルタのアイソレーション特性を比較したグラフである。
【0117】
比較例に係るマルチプレクサでは、Band66の高周波送信信号が、受信フィルタ20が配置されたBand25の受信経路へと漏洩してしまう。
【0118】
これに対して、実施例に係るマルチプレクサ1Aでは、インダクタ21とインダクタ32とが磁界結合しているため、Band66の送信フィルタ30を通過した高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分P66と、送信端子130から磁界結合したインダクタ32および21を経由して受信フィルタ20に向かう高周波成分N66とが位相反転している。これにより、これら2つの高周波成分P66およびN66が打ち消され、特に、Band25の受信帯域(
図5Aの破線内領域)においてクロスアイソレーションが改善されていることが解る。
【0119】
図5Bは、実施例および比較例に係るBand66フィルタの通過特性を比較したグラフである。同図の上段には、Band66の送信フィルタの通過特性の比較が示され、同図の下段には、Band66の受信フィルタの通過特性の比較が示されている。同図の上段に示すように、Band25の受信帯域におけるクロスアイソレーションが改善されたことに伴い、Band66の送信フィルタ30のBand25受信帯域近辺における減衰量も改善されていることが解る。一方、Band66の受信フィルタ40については、インダクタ32および21の磁界結合の有無により、通過特性はほぼ変化しないことが解る。
【0120】
図6は、実施例および比較例に係るBand66フィルタの電圧定在波比(VSWR)を表すグラフである。同図の上段には、マルチプレクサをアンテナ端子100側から見た場合のVSWRが示され、同図中段には、マルチプレクサを送信端子130側から見た場合のVSWRが示され、同図下段には、マルチプレクサを受信端子140側から見た場合のVSWRが示されている。
【0121】
図6に示すように、Band66の送信フィルタおよび受信フィルタについては、インダクタ32および21の磁界結合の有無により、入出力インピーダンスはほぼ変化しないことが解る。
【0122】
図7Aは、実施例および比較例に係るマルチプレクサのBand66におけるアイソレーション特性を比較したグラフである。実施例および比較例に係るマルチプレクサにおいて、受信フィルタ40が配置された受信経路にはインダクタは配置されていないので、インダクタ32との磁界結合によるアイソレーションの改善効果は見られないと推測される。ただし、インダクタ32および21の磁界結合により、Band66の高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分P66が打ち消されているため、Band66の高周波送信信号のうち受信フィルタ40に漏洩する高周波成分も相対的に低減されているものと推測される。これにより、Band66の受信帯域においてもアイソレーションが改善されていることが解る。
【0123】
図7Bは、実施例および比較例に係るマルチプレクサのBand25送信フィルタ−Band66受信フィルタのアイソレーション特性を比較したグラフである。実施例および比較例に係るマルチプレクサにおいて、受信フィルタ40が配置された受信経路にはインダクタは配置されていないので、インダクタ12との磁界結合によるクロスアイソレーションの改善効果は見られないと推測される。ただし、インダクタ12および21の磁界結合により、Band25の高周波送信信号のうち受信フィルタ20に漏洩する高周波成分P25が打ち消されているため、Band25の高周波送信信号のうち受信フィルタ40に漏洩する高周波成分も相対的に低減されているものと推測される。これにより、Band66の受信帯域においてもクロスアイソレーションが改善されていることが解る。
【0124】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施例に係るマルチプレクサ1Aを備える高周波フロントエンド回路3および通信装置4について説明する。
【0125】
図8は、実施の形態2に係る高周波フロントエンド回路3および通信装置4の回路構成図である。同図には、高周波フロントエンド回路3と、アンテナ素子2と、RF信号処理回路(RFIC)80と、ベースバンド信号処理回路(BBIC)90とが示されている。高周波フロントエンド回路3と、RF信号処理回路80と、ベースバンド信号処理回路90とは、通信装置4を構成している。
【0126】
高周波フロントエンド回路3は、実施例に係るマルチプレクサ1Aと、送信側スイッチ61および受信側スイッチ62と、パワーアンプ回路71と、ローノイズアンプ回路72と、を備える。
【0127】
送信側スイッチ61は、マルチプレクサ1Aの送信端子110および130に個別に接続された2つの選択端子、ならびに、パワーアンプ回路71に接続された共通端子を有するスイッチ回路である。
【0128】
受信側スイッチ62は、マルチプレクサ1Aの受信端子120および140に個別に接続された2つの選択端子、ならびに、ローノイズアンプ回路72に接続された共通端子を有するスイッチ回路である。
【0129】
これら送信側スイッチ61および受信側スイッチ62は、それぞれ、制御部(図示せず)からの制御信号にしたがって、共通端子と所定のバンドに対応する信号経路とを接続する、例えば、SPDT(Single Pole Double Throw)型のスイッチによって構成される。なお、共通端子と接続される選択端子は1つに限らず、複数であってもかまわない。つまり、高周波フロントエンド回路3は、キャリアアグリゲーションに対応してもかまわない。
【0130】
パワーアンプ回路71は、RF信号処理回路80から出力された高周波信号(ここでは高周波送信信号)を増幅し、送信側スイッチ61およびマルチプレクサ1Aを経由してアンテナ素子2に出力する送信増幅回路である。
【0131】
ローノイズアンプ回路72は、アンテナ素子2、マルチプレクサ1Aおよび受信側スイッチ62を経由した高周波信号(ここでは高周波受信信号)を増幅し、RF信号処理回路80へ出力する受信増幅回路である。
【0132】
RF信号処理回路80は、アンテナ素子2から受信信号経路を介して入力された高周波受信信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された受信信号をベースバンド信号処理回路90へ出力する。また、RF信号処理回路80は、ベースバンド信号処理回路90から入力された送信信号をアップコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された高周波送信信号をパワーアンプ回路71へ出力する。RF信号処理回路80は、例えば、RFICである。
【0133】
ベースバンド信号処理回路90で処理された信号は、例えば、画像信号として画像表示のために、または、音声信号として通話のために使用される。
【0134】
なお、高周波フロントエンド回路3は、上述した各構成要素の間に、他の回路素子を備えていてもよい。
【0135】
以上のように構成された高周波フロントエンド回路3および通信装置4によれば、上記実施例に係るマルチプレクサ1Aを備えることにより、割り当てられる周波数帯域(バンド)の数が多くなっても、各送信フィルタが配置された送信経路と各受信フィルタが配置された受信経路との間のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0136】
また、通信装置4は、高周波信号の処理方式に応じて、ベースバンド信号処理回路90を備えていなくてもよい。
【0137】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態に係るマルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置について、実施例および変形例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態、実施例および変形例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る高周波フロントエンド回路および通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0138】
上記説明では、マルチプレクサとしてBand25+Band66のクワッドプレクサを例に説明したが、本発明は、これに限られず、例えば、3以上のフィルタを有し、それらが共通端子で接続されるマルチプレクサに適用することができる。