(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のカード1を券面から見た図、断面図である。
図1(A)は、カード1を券面から見た図である。
図1(B)は、カード1の層構成を説明する断面図(
図1(A)のB−B断面図)である。
図1(C)は、
図1(B)の矢印C部を拡大して示す図である。
実施形態及び図面では、券面(カード上面1a)から見た状態のカード1の長手方向を左右方向X、短手方向を縦方向Yとし、また、厚さ方向Zという。各図面において、厚さ方向Z等の構成等は、明確に図示するために、適宜大きさを誇張する。
【0010】
[カード1の構成]
カード1は、リーダライタ等の外部装置との間で通信可能なICカードである。
カード1は、上側Z2から下側Z1に向けて順に、印刷層10、透明層20、中間層30(色付シート層)、モジュール基板40、中間層50、透明層60が積層されている。
【0011】
印刷層10は、カード1の最上層に設けられている。
印刷層10は、上側Z2から下側Z1に向けて順に、絵柄層11、接着層12(隠蔽層)が積層され、また、レーザ加工領域15(透明層露出部)を備える。
絵柄層11は、カード1の名称等を有する絵柄が印刷された層である。絵柄層11は、オフセット印刷によって設けられる。
接着層12は、シルク印刷によってベタで設けられる。接着層12は、印刷層10及び透明層20間を接着する。
また、接着層12は、以下の機能を有する。
・接着層12は、絵柄層11の下面にベタ印刷で設けられているので、絵柄層11は、所望の色彩を表現しやすい。このため、接着層12は、絵柄層11の色合いをよくすることができる。
・接着層12は、このカード1を印刷層10側(上側Z2)から観察した状態において、カード1の内部構成が視認できないように隠蔽する。
なお、これらの機能は、接着層12を、隠蔽力を有するインク、隠蔽力を有する色彩(例えば、銀、白色系)にすると、より有効である。
【0012】
レーザ加工領域15は、印刷層10の一部がレーザ加工によって除去されることにより、透明層60が露出した領域である。
図1では、レーザ加工領域15の形状は、カード1の所有者の氏名「ABCD EFGH」の文字の形状である。
【0013】
透明層20は、透明な層である。透明層20は、例えば、PC(ポリカーボネイト)、PET−G(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)、PVC(塩化ビニル)等の樹脂シートである。
【0014】
中間層30は、カード1のコア層である。
中間層30は、上側Z2から順に、印刷層31(色付シート印刷層)、基材層32(基材)が積層されている。
印刷層31は、基材層32自体の色彩とは異なる色彩で、基材層32の上側Z2に印刷されている。印刷層31は、シルク印刷のベタ印刷によって設けられる。印刷層31の色彩は、金系又は銀系である。
基材層32は、中間層30のコアとなる層である。例えば、PC、PET−G、PVC等の樹脂シートである。基材層32自体の色彩は、一般に市場で多く流通している白色系である。このため、基材層32は、低コストで入手可能である。
【0015】
モジュール基板40は、ICチップ41等の電子部品、アンテナ42を備える。
ICチップ41は、半導体集積回路素子である。ICチップ41は、例えば、カード1の所有者、所有者を認証するための暗証番号等が記憶されている。
【0016】
アンテナ42は、外部のリーダライタ(図示せず)と通信を行うループコイル式のアンテナである。アンテナ42は、モジュール基板40上面に形成された導体であり、エッチング等の方法により形成される。ICチップ41は、アンテナ42を介して、リーダライタとの間で非接触により情報の送受信を行う。
【0017】
モジュール基板40は、例えば、PET、PEN等の材料から形成される。このため、モジュール基板40と、中間層30及び中間層50とは、熱溶着しにくい。そのため、モジュール基板40の外形は、他の層の外形よりも一回り小さい。
これにより、モジュール基板40は、モジュール基板40よりも外側の周囲45において、中間層30及び中間層50が熱溶着されることにより、カード1内に保持されるようになっている。
【0018】
中間層50及び透明層60は、中間層30及び透明層20に、厚さ方向Zにおいて、対称の形態であるので、詳細な説明は、省略する。透明層60の下面又は上面には、カード使用方法等を説明する印刷(図示せず)が設けられている。
なお、透明層60及び中間層50間の接着強度を向上するために、透明層60及び中間層50のいずれかに接着用のシルク印刷を全面に行ってもよい。
【0019】
[カード1の外観]
カード1の外観について説明する。
(カード上面1a)
図1(C)に示すように、レーザ加工領域15は、印刷層10が除去され、透明層20が露出した状態になっている。観察者は、カード1を上側Z2から観察すると、レーザ加工領域15からは、中間層30の印刷層31の上面の色彩を視認できる(矢印L参照)。これにより、観察者は、レーザ加工領域15を、金色又は銀色の文字として、カード1の所有者の氏名を読み取ることができる。
また、レーザ加工領域15以外の領域は、絵柄層11の絵柄を観察できる。
なお、中間層30の印刷層31の色彩は、金色又は銀色に限定されず、カード仕様等に応じて、適宜変更可能である。これにより、カード1は、文字色を、所望の色彩にすることができる。
【0020】
(カード端面1b)
図1(B)に示すように、カード端面1bには、モジュール基板40以外の層(印刷層10、透明層20、中間層30、中間層50、透明層60)が露出している。
中間層30の基材層32と、中間層50の基材層とは、白色系であり、中間層50、透明層60が透明であるので、カード端面1bは、ほぼ白色であるように観察される。
なお、中間層30の印刷層31は、カード端面1bに露出しているが、層の厚みが十分に薄い。このため、印刷層31は、カード端面1bに露出していても、目立つことがなく、外観を著しく低下させることはない。
【0021】
[カード製造方法]
カード1の製造工程について説明する。
図2は、第1実施形態のカード1の製造工程を説明する断面図である。
作業者、製造機械等は、以下の工程に従ってカード1を製造することができる。
なお、実際には、カード製造は、カード1が面方向に複数配置されたシート材(つまり多面付けのシート材)を各カードに個片にすることにより行われる。
図2は、簡略して1枚の例を図示する。
【0022】
(印刷層10の転写工程)
図2(A)に示すように、予め、レーザ加工領域15の加工前の状態の印刷層10が形成されたPETシート等(図示せず)を、透明層20上に転写する(矢印A10参照)。なお、絵柄層11は、接着性の低いオフセット印刷であるが、接着層12が接着を発現するので、透明層20上に積層することができる。
PETシート等は、印刷層10の転写後に、透明層20から剥離する。
(印刷層31の印刷工程)
基材層32の上面の全面に、シルク印刷よって印刷層31を設けて(矢印A30参照)、中間層30を作製する。
(積層工程)
上側Z2から順に、印刷層10が転写された透明層20、中間層30、モジュール基板40、中間層50、透明層60を積層し、積層体1Aを作製する。
【0023】
(熱プレス工程)
積層体1Aを上下から熱プレス板(図示せず)で挟んで、印刷層10の上面、透明層60の下面から加熱及び加圧する。
図2(B)に示すように、これにより、積層体1Aの層間が熱溶着される。所定のプレス時間が経過したら、積層体1Aから熱プレス板を離間し、積層体1Aを取り出す。
(個片工程)
多面付けで形成された積層体1Aを、抜き型でプレスして個片にする。
【0024】
(レーザ加工工程(透明層露出部形成工程))
図1に示すように、カード所有者(申し込み者)の氏名が入手できたら、個片化された積層体1Aをレーザ加工機によってレーザ加工することにより、透明層露出部を形成する。このレーザ加工では、レーザ照射することにより、透明層20が残存しかつ透明層20が露出するまで、印刷層10を除去する。
なお、レーザ加工工程は、カード発行時に行ってもよい。つまり、レーザ加工工程は、カード所有者の固有情報(口座番号、暗証番号等)をICチップ41に書き込む工程と、一連の工程で行ってもよい。
【0025】
ここで、レーザ加工時には、印刷層10が発熱する。この熱は、中間層30上に透明層20が設けられているので、中間層30に伝わりにくい。また、中間層30の印刷層31の色彩は、金系又は銀系であるので、熱及びレーザ光を反射する。
このため、カード1は、レーザ加工にともなう中間層30の損傷を、抑制できる。すなわち、カード1は、透明層20等により、中間層30を損傷させることなく、レーザ加工領域15の全ての印刷層10を除去できる。
また、レーザ加工の加工条件(レーザの出力、加工時間等)は、レーザ加工領域15において、印刷層10を全て除去し、かつ、中間層30を損傷しないように、調整しなければならない。カード1は、前述したように中間層30等により熱の影響を受けにくくなるので、この調整の幅が大きくなるため、条件設定が容易である。
なお、透明層20が厚み0.05mm以上であるカード1は、試作によって、中間層30を損傷なく加工できること、条件設定が容易であることの効果を確認できた。
以上の工程を経て、カード1を製造することができる。
【0026】
以上説明したように、カード1は、カード券面の文字等の表示を、印刷層10のレーザ加工領域15を除去して設ける。このため、摩耗等に起因して、表示が消えてしまうことがない。また、カード1は、文字表示をレーザ加工によって形成できるので、ウルトラグラフィック印字のような転写リボンが不要であり、低コストである。
【0027】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図3は、第2実施形態のカード201を示す図である。
図3(A)は、カード201を券面から見た図、断面図である。
図3(B)は、
図3(A)のB−B断面図である。
なお、第2実施形態以降の構成、図中の符号には、適宜、銀色の関連部分に「S」、金色の関連部分に「G」を付す。
【0028】
カード201のレーザ加工領域215(透明層露出部)は、氏名領域215G、口座番号領域215Sを備える。
カード201の中間層230の印刷層231(色付シート印刷層)は、金色に印刷された金色印刷領域231Gと、銀色に印刷された銀色印刷領域231Sとを備える。つまり、印刷層231には、2つの領域に2色の色彩(複数の色彩)が印刷されて形成されている。
カード上面から見た状態で、氏名領域215Gは、金色印刷領域231Gに設けられ、また、口座番号領域215S、銀色印刷領域231Sに設けられている。
【0029】
上記構成により、カード上面から観察すると、氏名領域215Gでは、金色印刷領域231Gの金色の色彩が観察され、その文字が金色の色彩で観察される。口座番号領域215Sでは、銀色印刷領域231Sの銀色の色彩が観察され、その文字が銀色の色彩で観察される。
このように、カード301は、レーザ加工領域215内において、氏名領域215Gと、口座番号領域215Sとで、観察される色彩が異なる。これにより、カード201は、デザイン性を向上できる。
【0030】
なお、印刷層231は、金色、銀色に限定されず他の色彩でもよく、また、これら2色に限定されず3色以上であってもよい。また、印刷層231は、色が連続的に変化するグラデーション印刷によって形成されていてもよい。この場合には、文字を、色彩が徐々に連続的に変化するように観察することができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
なお、第3実施形態以降の説明及び図面において、前述した第1及び第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図4は、第3実施形態のカード301を示す図である。
図4(A)は、カード301を券面から見た図、断面図である。
図4(B)は、
図4(A)のB−B断面図である。
第3実施形態以降の構成、図中の符号には、適宜、白色の関連部分に「W」を付す。
【0032】
中間層330の印刷層331Gは、基材層32上に金色に印刷された層である。
また、印刷層310は、上側Z2から下側Z1に向けて順に、絵柄層11、白印刷層312W(第1色彩印刷層)、銀印刷層312S(第2色彩印刷層)を備える。
白印刷層312Wは、白色(第1色彩)の印刷層である。
銀印刷層312Sは、白印刷層312Wとは異なる色彩である銀色(第2色彩)の印刷層である。銀印刷層312Sは、第1実施形態の接着層12と同様に、層間の接着、絵柄層11の色合いの向上、内部構成の隠蔽等としても機能する層である。
【0033】
カード301のレーザ加工領域は、氏名領域315G(透明層露出部)、口座番号領域315W(第1色彩印刷層露出部)、期限領域315S(第2色彩印刷層露出部)を備える。
これらの領域315G,315W,315Sは、加工時のレーザ照射の強度(レーザ光自体の強度、レーザ光のドット密度等)が互いに異なっているため、互いに異なる深さに加工されている。
【0034】
氏名領域315Gは、レーザ照射によって印刷層310の全体が除去され、つまり、カード上面から見たときに透明層20が露出するまで印刷層310が除去された部分である。
口座番号領域315Wは、レーザ照射によって絵柄層11が除去され、つまり、カード上面から見たときに白印刷層312Wが露出するまで、印刷層310が除去された部分である。
期限領域315Sは、レーザ照射によって絵柄層11及び白印刷層312Wが除去され、つまり、カード上面から見たときに銀印刷層312Sが露出するまで印刷層310が除去された部分である。
【0035】
上記構成により、カード上面から観察すると、氏名領域315Gでは、第2実施形態と同様に、印刷層331Gの金色の色彩が観察され、その文字が金色の色彩で観察される。また、口座番号領域315Wでは、白印刷層312Wの白色の色彩が観察され、その文字が白色の色彩で観察される。期限領域315Sでは、銀印刷層312Sの色彩が観察され、その文字が銀色の色彩で観察される。
このように、レーザ加工領域315の各領域315G,315W,315Sは、観察される色彩が互いに異なる。これにより、カード301は、デザイン性を向上できる。
【0036】
なお、白印刷層312W、銀印刷層312Sの印刷方法は、シルク印刷に限定されず、他の印刷方法であってもよい。
例えば、白印刷層312Wは、オフセット印刷層であり、銀印刷層312Sは、一般的にオフセット印刷よりも塗膜の厚いシルク印刷層であってもよい。一般的に、シルク印刷層は、オフセット印刷層よりも、レーザ照射によって除去されにくく、つまり、レーザ照射よる焼散、ガス化による消失等がされにくい。このため、オフセット印刷層である白印刷層312Wを除去するレーザ照射時において、シルク印刷層である銀印刷層312Sまで除去してしまうことを抑制できるので、加工性がよい。
【0037】
また、絵柄層11及び白印刷層312Wの間には、絵柄層11の色合いの向上のために、隠蔽力を有する銀色等の隠蔽層を設けてもよい。この場合には、口座番号領域315Wでは、絵柄層11に加えてこの隠蔽層を除去することにより、白印刷層312Wを露出させればよい。
【0038】
さらに、印刷層310の色彩印刷層は、2色に限定されず、3層以上を積層することにより、3色以上を表現してもよい。この場合には、例えば、3原色(イエロ、マゼンダ、シアン等)の3層を設けて、レーザ照射によるドッド加工によってこれらの層を選択的に観察可能することにより、様々な色彩を表現してもよい。この場合にも、各層間に隠蔽層を設けてもよい。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
なお、第4実施形態の説明及び図面において、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図5は、第4実施形態のカード401を示す図である。
図5(A)は、氏名領域415aの氏名「ABCD EFGH」(
図4(A)参照)の一部である文字「A」を拡大して券面から見た図である。
図5(B)は、
図5(A)のB−B断面図である。
本実施形態のカード401の層構成は、第3実施形態と同様であり、レーザ加工領域415の氏名領域415aの形態のみが第3実施形態とは異なる。
【0040】
図5(A)に示すように、氏名領域415aの文字「A」は、縁取りをされたように観察される。カード上面を見たときに、文字「A」の内部415G(透明層露出部)と、その縁部415S(色彩印刷層露出部)とは、連続している。
図5(B)に示すように、内部415G、縁部415Sは、1つの凹部によって形成される。但し、内部415Gと、その縁部415Sとでは、底部の深さが異なる。このように底部の深さが異なる加工は、第3実施形態と同様に、レーザ照射の強度を両者で異なるようにすればよい。
【0041】
内部415Gは、前述した第3実施形態の氏名領域315G(
図4参照)と同様な形態である。このため、カード上面から内部415Gを観察すると、透明層20が露出している。
縁部415Sは、第3実施形態の期限領域315S(
図4参照)と同様な形態である。このため、カード上面から縁部415Sを観察すると、銀印刷層312Sが露出している。
このため、文字「A」は、内部415Gでは透明層20を通して印刷層331Gの金色の文字として観察され、また、縁部415Sでは銀印刷層312Sの銀色によって印刷層331Gの金色の文字を縁取りしたように観察される。
氏名領域415aの他の文字も同様である。これにより、カード401は、氏名領域415aを、エンボス加工のように、立体的に見せることができる。また、カード401は、デザイン性を向上できる。
【0042】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
なお、第5実施形態の説明及び図面において、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図6は、第5実施形態のカード501を示す図である。
図6(A)は、期限領域515aの「11/17」(
図4(A)参照)の一部である文字「11」を拡大して券面から見た図である。
図6(B)は、
図6(A)のB−B断面図である。
本実施形態のカード501の層構成は、第3実施形態と同様であり、レーザ加工領域515の期限領域515aの形態のみが第3実施形態とは異なる。
【0043】
図6(A)に示すように、期限領域515aの文字「1」は、縁取りをされたように観察される。カード上面を見たときに、文字「1」の内部515S(第2色彩印刷層露出部)と、その縁部515W(第1色彩印刷層露出部)とは、連続している。
図6(B)に示すように、文字「1」の内部515S、縁部515Wは、1つの凹部によって形成される。但し、内部515Sと、その縁部515Wとでは、底部の深さが異なる。このように文字「1」の凹部の深さの異なる加工は、第3実施形態と同様に、レーザ照射の強度を互いに異なるようにすればよい。
【0044】
内部515Sは、第3実施形態の期限領域315Sと同様な形態である。このため、カード上面から内部515Sを観察すると、銀印刷層312S(第2色彩印刷層)が露出している。
縁部515Wは、第3実施形態の口座番号領域315Wと同様な形態である。このため、カード上面から縁部515Wを観察すると、白印刷層312W(第1色彩印刷層)が露出している。
このため、文字「1」は、内部515Sでは銀印刷層312Sの銀色(第2色彩)の文字として観察され、また、縁部515Wでは白印刷層312Wの白色(第1色彩)によって銀印刷層312Sの銀色の文字を縁取りしたように観察される。期限領域515aの他の文字も同様である。このため、カード501は、期限領域515aを、第4実施形態と同様に、エンボス加工のように、立体的に見せることができる。また、カード501は、デザイン性を向上できる。
【0045】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
なお、第6実施形態の説明及び図面において、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図7は、第6実施形態のカード601を示す図である。
図7(A)は、カード601を券面から見た図、断面図である。
図7(B)は、
図7(A)のB−B断面図である。
本実施形態のカード601の層構成は、第3実施形態と同様である。カード601は、第3実施形態に対して、レーザ加工領域615のマーク領域615aを、新たに設けたものである。
【0046】
図7(A)に示すように、マーク領域615aの外形は、カード上面から見た形状が楕円である。
マーク領域615aは、外側から中心に向けて、外領域615W(第1色彩印刷層露出部)、中間領域615S(第2色彩印刷層露出部)、内領域615Gを備える。
外領域615W及び中間領域615Sは、連続しており、また、中間領域615S及び内領域615Gは、連続している。
【0047】
図7(B)に示すように、マーク領域615aは、1つの凹部によって形成される。断面形状において、外領域615W、中間領域615Sの深さは、内側に至るに従って、徐々に深くなるように変化する。深さは、直線的に変化する。このような深さの加工は、レーザ照射の強度を、内側に至るに従って、強くなるようにすればよい。
内領域615Gは、氏名領域315Gと同様に、レーザ照射によって、透明層60が露出するまで印刷層30が除去されている。
【0048】
外領域615Wは、口座番号領域315Wと同様な形態である。このため、カード上面から外領域615Wを観察すると、白印刷層312W(第1色彩印刷層)が露出している。
中間領域615Sは、期限領域315Sと同様な形態である。このため、カード上面から中間領域615Sを観察すると、銀印刷層312S(第2色彩印刷層)が露出している。
内領域615Gは、前述したように、透明層60が露出している。
【0049】
上記構成により、カード上面からマーク領域615aを観察すると、外領域615Wでは白印刷層312Wの白色が観察され、中間領域615Sでは銀印刷層312Sの銀色が観察され、内領域615Gでは印刷層331Gの金色が観察される。これにより、カード301は、デザイン性を向上できる。
【0050】
なお、外領域615W、中間領域615Sの底部の断面形状は、直線的に変化する形態に限定されず、例えば湾曲していてもよい。この形態では、外領域615Wの白印刷層312Wの白色、中間領域615Sの銀印刷層312Sの銀色が、複雑に変化するので、複雑な模様を表現できる。この形態の加工は、白印刷層312W、銀印刷層312Sの耐レーザ照射性能に応じて、レーザ照射の強度を複雑に変化させる必要があるため、カード製造メーカ以外は、同様な模様を再現することが困難である。このため、この形態では、偽造抑制効果を向上できる。
【0051】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
なお、第7実施形態の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図8は、第7実施形態のカード701を示す図である。
図8(A)は、カード701を券面から見た図、断面図である。
図8(B)は、
図8(A)のB−B断面図である。
カード701は、基材積層体730上に、印刷層10を積層したものである。
【0052】
基材積層体730は、基材層32の上面、下面にそれぞれレーザ発色層720,721が積層されたものである。
基材積層体730は、レーザ発色層720、基材層32、レーザ発色層721が既に積層されたシート材を、市場から購入してもよい。このようなシート材は、押し出し成型によって製造可能であり、市場で流通している。又は、基材積層体730は、カード製造時の熱プレス工程(
図2参照)によって、これら各層を熱溶着してもよい。
【0053】
基材層32の上側の層構成は、上側Z2から下側Z1に向けて順に、絵柄層11、接着層12、レーザ発色層720、基材層32が積層される。この層構成は、第1実施形態から印刷層31を取り除き、また、透明層としてレーザ発色層720を積層した構成と同様である。
【0054】
レーザ発色層720は、透光性を有し、無色、透明である。レーザ発色層720は、レーザ光によって発色する発色剤を含有している。このため、レーザ発色層720のうちレーザ光が照射された範囲は、発熱し、また黒色に発色する。
図8(B)に示すように、このため、レーザ加工領域715では、印刷層10は、除去され、また、レーザ発色層720は、第1実施形態と同様なレーザ加工工程(透明層露出部形成工程)によって黒色に発色する。
【0055】
上記構成により、カード上面から観察すると、レーザ加工領域715の氏名「ABCD EFGH」の文字の形状が、黒色に観察される。
【0056】
なお、本実施形態のカード701は、以下のように変形してもよい。
(1)レーザ加工領域715でのレーザ照射は、印刷層10を除去し、かつ、レーザ発色層720を黒色に発色しない程度に、行ってもよい。この形態では、レーザ加工領域715のレーザ発色層720は、透明な状態であるので、レーザ加工領域715では、第1実施形態と同様にレーザ発色層720よりも下側の層が観察される。このため、レーザ加工領域715の氏名は、基材層32の白文字で観察できる。
また、この形態では、レーザ照射の強度を調整することにより、レーザ加工領域715のレーザ発色層720を、完全な黒色に発色しない状態にしてもよい。この場合には、レーザ加工領域715の氏名は、黒色と、基材層32の白色との中間色である灰色の文字で観察できる。
さらに、この形態では、レーザ発色層720及び基材層32との間に、第1実施形態の印刷層31と同様な印刷層を設ければ、レーザ加工領域715の氏名は、その印刷層の色彩で観察できる。
(2)本実施形態のカード701は、第1実施形態と同様に、モジュール基板を設けてもよい。
また、基材積層体730のレーザ発色層721よりも下側にも、印刷層(絵柄層11、接着層12)や他の層を積層してもよい。
【0057】
(3)本実施形態のカード701は、第2から第6実施形態と同様に変形してもよい。この場合にも、第2から第6実施形態に対応した作用、効果を奏する。なお、本実施形態のカード701に、第2から第6実施形態と同様に変形した上で、上記(1)、(2)の変形を行ってもよい。
【0058】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
なお、第8実施形態の説明及び図面において、前述した第7実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図9は、第8実施形態のカード801を示す図である。
図9(A)は、レーザ加工領域815の氏名「ABCD EFGH」(
図8(A)参照)の一部である文字「A」を拡大して券面から見た図である。
図9(B)は、
図9(A)のB−B断面図である。
本実施形態のカード801の層構成は、第7実施形態と同様であり、レーザ加工領域815(透明層露出部)の形態のみが第7実施形態とは異なる。
【0059】
図9(A)に示すように、レーザ加工領域815の文字「A」は、内部815W(色付シート層視認範囲)、縁部815B(レーザ発色視認範囲)を備える。
縁部815Bは、内部815Wの外側を縁取るような形態で、内部815Wに連続している。
【0060】
内部815Wは、レーザ発色層720がレーザ発色しない範囲である。
縁部815Bは、レーザ発色層720がレーザ発色した範囲である。
内部815W、縁部815Bでは、加工時のレーザ照射の強度(レーザ光自体の強度、レーザ光のドット密度等)が互いに異なっている。すなわち、レーザ照射の強度は、内部815Wでは、印刷層10を除去しかつレーザ発色層720が発色しない程度であり、一方、縁部815Bでは、印刷層10を除去しかつレーザ発色層720が発色する程度(つまり、内部815Wよりもレーザ照射の強度が強い)である。
【0061】
上記構成により、カード上面から観察すると、内部815Wでは、レーザ発色層720を透過して基材層32(色付シート層)の白色系の色彩が視認可能であり、一方、縁部815Bでは、レーザ発色層720がレーザ発色した黒色の色彩が視認可能である。レーザ加工領域815の他の文字も同様である。このため、カード801は、レーザ加工領域815の他の文字を、エンボス加工のように、立体的に見せることができる。また、カード501は、デザイン性を向上できる。
【0062】
なお、本実施形態のカード801は、以下のように変形してもよい。
(1)基材積層体730は、第2実施形態の印刷層231と同様な印刷層(色付シート印刷層)を備えてもよい。この場合には、内部815Wでは、その印刷層の色彩を観察できる。
(2)第7実施形態の(1)から(3)の変形は、カード801に対しても、同様に適用できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、後述する変形形態等のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0064】
(変形形態)
(1)実施形態の中間層の印刷層は、設けなくてもよい。この場合には、基材自体の色彩を、レーザ加工領域から透明層を介して視認することができる。
【0065】
(2)実施形態のモジュール基板は、設けなくてもよい。この場合には、2つの中間層を、1つの中間層にすることができるので、簡単な構成にすることができる。また、カードは、例えば、磁気ストライプ、バーコード等を有するタイプでもよい。
【0066】
(3)実施形態において、絵柄層は、最上層である例を示したがこれに限定されない。絵柄層よりも上側には、透明な保護層等を設けてもよい。この場合には、レーザ加工領域の保護層等は、レーザ照射により除去すればよい。