特許第6798635号(P6798635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798635
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20201130BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20201130BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20201130BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20201130BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20201130BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B32B7/12
   B32B3/30
   B32B37/02
   E04F15/02 A
   C09J201/00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-70425(P2020-70425)
(22)【出願日】2020年4月9日
(62)【分割の表示】特願2020-520337(P2020-520337)の分割
【原出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2020-116956(P2020-116956A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2018-193830(P2018-193830)
(32)【優先日】2018年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 智美
(72)【発明者】
【氏名】根津 義昭
(72)【発明者】
【氏名】茅原 利成
(72)【発明者】
【氏名】住田 陽亮
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−277708(JP,A)
【文献】 特開2007−092036(JP,A)
【文献】 特開2016−190481(JP,A)
【文献】 特開2003−138036(JP,A)
【文献】 特開平11−165497(JP,A)
【文献】 特開2016−190480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 201/00
E04F 13/08
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向において順に、基材と、絵柄層と、透明性樹脂フィルムとを備える化粧板の製造方法であって、
前記透明性樹脂フィルムの絵柄層が積層される側の面に接着剤層を形成する工程、及び、
前記接着剤層を介して、前記透明性樹脂フィルムと前記絵柄層とを貼り合わせる工程を有し、
前記透明性樹脂フィルムは、前記絵柄層が積層される側に凹凸形状を有し、該凹凸形状のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さ粗さRzが、15μm以上70μm以下の範囲である
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記透明性樹脂フィルムの前記絵柄層が積層される側と反対側に表面保護層を有する請求項記載の化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性樹脂フィルム、該透明性樹脂フィルムを用いてなる化粧板及び該化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷法の普及により、建材や加飾成形品等に用いられている化粧シートにおいても、多品種・小ロットにも対応できることや絵柄層として複雑な柄(文字、数字そして図形等)を印刷することが可能となった。
更に、インクジェット印刷法は印刷する基材がフィルムに限らず、平板や凹凸や曲面を備えた基材に対しても印刷が可能というメリットがある。
しかし、通常、インクジェット印刷法で印刷された絵柄層は基材の最表面にあることから、耐傷性や耐汚染性及び耐候性等の表面性能が不十分であり、その絵柄層を保護するために透明性樹脂フィルムを絵柄層の表面に積層する必要があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、絵柄層の表面に、透明性樹脂層及び透明性保護層を積層させることにより、化粧シートに生じるムラ、キズ等の欠陥を緩和ないしは解消し、化粧シートの表面に凹凸模様を設けることにより実際の木目等に近い意匠を表現する技術が開示されている。
しかしながら、従来から、絵柄層と該絵柄層の表面に積層させる透明性樹脂フィルムとの密着性が問題になっており、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−74682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、意匠性に優れ、絵柄層との密着性にも優れる透明性樹脂フィルム、該透明性樹脂フィルムを用いてなる化粧板及び該化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討し、透明性樹脂フィルムにおける絵柄層に積層される側の面の形状に着目した。その結果、透明性樹脂フィルムにおける絵柄層に積層される側の表面に所定の凹凸形状を形成することにより、絵柄層との間に設ける接着剤層との接着面積(表面積)を拡大させることができ、絵柄層との密着性にも優れ、尚且つ意匠性にも優れた透明性樹脂フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、厚み方向において順に、基材と、絵柄層と、透明性樹脂フィルムとを備える化粧板の製造方法であって、上記透明性樹脂フィルムの絵柄層が積層される側の面に接着剤層を形成する工程、及び、上記接着剤層を介して、上記透明性樹脂フィルムと上記絵柄層とを貼り合わせる工程を有し、上記透明性樹脂フィルムは、上記絵柄層が積層される側に凹凸形状を有し、該凹凸形状のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さ粗さRzが、15μm以上70μm以下の範囲であることを特徴とする化粧板の製造方法である。
【0008】
上記透明性樹脂フィルムの上記絵柄層が積層される側と反対側に凹凸形状を有し、該凹凸形状のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さ粗さRzが、30μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。
また、上記透明性樹脂フィルムの上記絵柄層が積層される側に接着用プライマー層を有することが好ましい。
また、上記透明性樹脂フィルムの上記絵柄層が積層される側と反対側に表面保護層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、化粧板に優れた意匠性を付与することができ、絵柄層との密着性にも優れる透明性樹脂フィルムを提供することができる。
このような本発明の透明性樹脂フィルムを用いてなる本発明の化粧板は、優れた意匠性を有し、絵柄層との密着性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の透明性樹脂フィルムの好ましい一例の断面を示す模式図である。
図2】本発明の透明性樹脂フィルムの好ましい別の一例の断面を示す模式図である。
図3】本発明の化粧板の好ましい一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まずは、本発明の透明性樹脂フィルムについて説明する。
本発明の透明性樹脂フィルムは、絵柄層に積層される側の面(以下、接着面ともいう)に所定の凹凸形状を有するため、絵柄層に接着剤層を介して積層した際に該接着剤層と上記接着面との接着面積が大きくなって密着性が優れたものとなり、また、上記接着面に気泡が入り込むことも好適に防止でき、意匠性に優れたものとなる。
【0012】
本発明の透明性樹脂フィルムの好ましい一例について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の透明性樹脂フィルム10は、絵柄層に積層される側の面(接着面)Bに凹凸形状を有する。
本発明の透明性樹脂フィルム10において、接着面Bの凹凸形状は、JIS B 0601(2001)で定義される最大高さ粗さRzが、15μm以上70μm以下の範囲である。上記Rzが15μm未満であると、接着剤層を設けた際の密着性向上効果を十分に得ることができず、70μmを超えると、接着剤層を設けた際に該接着剤層と凹凸形状との間に気泡が入り込み意匠性が低下してしまう。上記接着面BのRzの好ましい下限は20μm、好ましい上限は65μmであり、より好ましい下限は25μm、より好ましい上限は60μmである。
なお、上記接着面Bの最大高さ粗さRzは、例えば、JIS B0601(2001)に基づいて、表面粗さ計(株式会社東京精密製、商品名 SURFCOM FLEX−50A)により測定することができる。
【0013】
本発明の透明性樹脂フィルム10は、上記絵柄層が積層される側と反対側の面(以下、単に表面ともいう)Aに凹凸形状を有し、該凹凸形状のJIS B 0601(2001)で定義される最大高さ粗さRzが、30μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。表面のRzが30μm未満であると、低光沢感及び触感が低下することがあり、一方、表面のRzが100μmを超えると、透過率の低下により絵柄層の絵柄の視認性が低下してしまうことがある。
上記表面のRzのより好ましい下限は35μm、より好ましい上限は95μmである。
【0014】
本発明の透明性樹脂フィルムの表面A及び接着面Bに凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、熱によるエンボス加工、賦形シートによって凹凸形状を転写させる方法等が挙げられる。
熱によるエンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法が挙げられる。
また、エンボスの柄模様としては、例えば、砂目、ヘアライン、梨地、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、万線条溝等が挙げられる。
また、エンボス加工する際の温度としては特に限定されないが、加熱圧着成形時に凹凸模様が消失する所謂エンボス戻りが少なくなる温度が好ましい。
また、上記透明性樹脂フィルムの双方の面について、上記方法により凹凸形状を形成しても良いし、上記透明性樹脂フィルムの一方の面について、上記方法により凹凸形状を形成し、該一方の面に形成した凹凸形状に追従させて他方の面の凹凸形状を形成しても良い。
【0015】
上記透明性樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、凹凸形状の凹部の厚みが80μm以上であることが好ましい。上記透明性樹脂フィルムの凹凸形状の凹部の厚みが80μm未満であると、本発明の透明性樹脂フィルムに十分な耐久性能(耐摩耗性能、耐傷性)を付与できないことがある。
ここで、上記「凹凸形状の凹部」とは、本発明の透明性樹脂フィルムの厚みのうち最も薄い部分を指すものであり、図1に示したように、本発明の透明性樹脂フィルム10の凹凸形状の最も深い凹部を含む部分であり、本発明の透明性樹脂フィルムの断面を顕微鏡観察することにより、確認することができる。なお、上記最も深い凹部の底から接着面Bまでの長さが「凹凸形状の凹部の厚み」であり、例えば、図1に示したように接着面Bに上記凹凸形状に対応した突起部が形成されている場合、上記最も深い凹部の底から本発明の透明性樹脂フィルム10の接着面Bの突起部までの長さが「凹凸形状の凹部の厚み」である。
本発明の透明性樹脂フィルムの凹凸形状の凹部の厚みの上限は特に限定されないが、例えば、500μm未満であることが好ましい。
また、図1に示したように、本発明の透明性保護フィルムの表面Aから接着面Bまで(上述した突起部が形成されている場合は当該突起部まで)の長さが本発明の透明性樹脂フィルム10の総厚みであり、該総厚みの好ましい下限は60μm、好ましい上限は500μmであり、より好ましい下限は100μm、より好ましい上限は460μmである。
【0016】
次に、本発明の透明性樹脂フィルムの好ましい別の一例について、図2を用いて説明する。
図2に示したように、本発明の透明性樹脂フィルム10は、熱可塑性樹脂層14と表面保護層13とが積層され、熱可塑性樹脂層14及び表面保護層13を有する側と反対側に接着用プライマー層12を有することが好ましい。
本発明の透明性樹脂フィルム10の絵柄層に積層される側に接着用プライマー層12を有することで、上記絵柄層との密着性を強固にすることができ、このような観点から、上記絵柄層と接着用プライマー層12とが対向して積層されることが好ましい。
以下、本発明の透明性樹脂フィルムの各構成について説明する。
なお、熱可塑性樹脂層14と表面保護層13との密着性を強固にすることができる観点から、これらの層間に表面保護層用プライマー層(図示せず)を有することが好ましい。
以下の説明では、接着用プライマー層12と表面保護層用プライマー層とを合わせて説明するときは「プライマー層」と称する。
【0017】
上記熱可塑性樹脂層は、上記絵柄層を保護する役割を果たす層であり、上記熱可塑性樹脂層は、透明である限り後述する絵柄層が視認できる範囲であれば、半透明でも着色されていてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、以下の樹脂を1種以上含むものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタール酸共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アイオノマー等が挙げられる。なかでも、引張強度が高く、耐薬品性能に優れていることからポリプロピレンが好適に用いられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0018】
上記熱可塑性樹脂層は、未延伸であってもよいが必要に応じて1軸延伸又は2軸延伸されたものであってもよい。
また、上記熱可塑性樹脂層の厚みとしては特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は500μmであり、より好ましい下限は60μm、より好ましい上限は420μmである。上記熱可塑性樹脂層の厚みが20μm未満であると、強度が不十分となり上記絵柄層の表面を保護できないことがあり、500μmを超えると、上記透明性樹脂フィルムの透過率が低下し絵柄層の絵柄の視認性が低下してしまうことがある。
【0019】
上記熱可塑性樹脂層は、1層により構成されていてもよいし、2層以上の層により構成される積層体でもよい。
【0020】
また、上記熱可塑性樹脂層が複数の樹脂からなる場合、該複数の樹脂からなる基材を形成する樹脂の種類は同じであっても異なっていてもよく、また複数の樹脂からなる基材の厚みは同じであっても異なっていてもよい。
上記熱可塑性樹脂層を2層以上に積層する方法としては、一般的な方法であれば限定されず、ドライラミネート法や押出し熱ラミネート等が挙げられる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
【0022】
本発明の透明性樹脂フィルムは、上記絵柄層が積層される側と反対側に表面保護層を有することが好ましい。
上記表面保護層は、本発明の透明性樹脂フィルムに優れた耐久性(耐傷性、耐汚染性、耐候性等)を付与する層であり、より好適に絵柄層の表面保護が可能となり、本発明の透明性樹脂フィルム自体の傷付きによる意匠性の低下を好適に防止できる。
なお、上記表面保護層は、単一の層構成であってもよく、同一又は異なる材料からなる複数の層構成であってもよいし、下記に示す材料を混合させてもよい。
【0023】
上記表面保護層としては特に限定されないが、例えば、2液硬化型樹脂や電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物からなるものが挙げられ、該架橋硬化物は透明であることが好ましく、透明である限り後述する絵柄層が視認できる範囲であれば、半透明でも着色されていてもよい。
上記2液硬化型樹脂としては、後述するプライマー層のバインダー樹脂を用いればよい。
上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(以下、所謂プレポリマー、マクロモノマー等も包含する)及び/又は分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有するモノマーが好ましく用いられる。なお、ここで電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常は、電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。
【0024】
上記オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。これらオリゴマー、モノマーは、単独で用いるか、或いは複数種混合して用いることができる。なお、本明細書において、上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0025】
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等のオリゴマーが好ましく使用でき、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがさらに好ましい。分子量としては、通常250〜10万程度のものが用いられる。
【0026】
また、上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、多官能モノマーが好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート{5官能(メタ)アクリレート}、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート{6官能(メタ)アクリレート}等が挙げられる。ここで、多官能モノマーとは、複数のラジカル重合性不飽和基を有するモノマーをいう。
【0027】
本発明において、上述の電離放射線硬化性樹脂組成物がウレタンアクリレートオリゴマー及び多官能モノマーからなる電離放射線硬化性樹脂成分を含むことがさらに好ましく、電離放射線硬化性樹脂成分として、ウレタンアクリレートオリゴマー/多官能モノマー(質量比)が6/4〜9/1であることが特に好ましい。この質量比の範囲であれば、耐擦傷性により優れたものにできる。
なお、必要に応じ、上記電離放射線硬化性樹脂成分に加えて、単官能モノマーを本発明の目的に反しない範囲で適宜使用しても良い。
上記単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
上記電離放射線硬化性樹脂組成物を紫外線にて架橋させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤を添加することが好ましい。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合、上記光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。
また、上記電離放射線硬化性樹脂組成物がカチオン重合性不飽和基を有する樹脂系の場合、上記光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂成分100質量部に対して0.1〜10質量部程度である。
【0029】
なお、上記電離放射線硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種添加剤を加えても良い。これらの添加剤としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、ワックス、弗素樹脂等の滑剤、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、染料、顔料等の着色剤等である。
【0030】
なお、電離放射線の電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、70〜1000keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用できる。また、電子線の照射線量は、例えば、1〜10Mrad程度であることが好ましい。
また、上記電離放射線の紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用でき、上記紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。
【0031】
上記表面保護層の厚みとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は50μmであり、より好ましい下限は1μm、より好ましい上限は30μmである。上記表面保護層の厚みが0.1μm未満であると、十分に耐久性(耐傷性、耐汚染性、耐候性等)を付与することができないことがあり、50μmを超えると、本発明の透明性樹脂フィルムの透過率が低下し絵柄層の絵柄の視認性が低下してしまうことがある。
【0032】
上記プライマー層(接着用プライマー層12及び表面保護層用プライマー層)は、バインダー樹脂を含有することが好ましい。
上記プライマー層に含有されるバインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン共重合体、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。後述する表面保護層の電離放射線硬化性樹脂組成物にウレタンアクリレートオリゴマーを配合する場合は、上記絵柄層と後述する透明性樹脂フィルムとの密着性や生産時の効率からウレタン樹脂を含むものが好ましい。
【0033】
上記プライマー層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
特に、接着用プライマー層12が紫外線吸収剤を含有することにより、本発明の化粧板に好適に耐候性能を付与することができる。
【0034】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、有機系又は無機系の紫外線吸収剤を用いることができる。なかでも、透明性に優れる有機系の紫外線吸収剤が好適に用いられる。
上記有機系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サルチル酸フェニル、4−t−ブチル−フェニル−サリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤が挙げられる。
なかでも、耐候性能や意匠性、ブリード性等を好適に付与する観点から、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、4,4’,4’’−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリイミノ)トリス安息香酸トリス(2−エチルヘキシル)、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、N,N’,N’’−トリ(m−トリル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、2,4,6−トリス(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール等が挙げられる。
その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤等も用いることができる。或いは、高い透明度を要求されない場合は、無機系紫外線吸収剤を添加することもできる。無機系紫外線吸収剤としては、粒径0.2μm以下の酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄等を用いることもできる。
【0035】
上記プライマー層の紫外線吸収剤の含有量としては、使用する紫外線吸収剤の紫外線吸収能により上記紫外線透過率の範囲になるよう適宜決定される。
上記紫外線吸収剤としてトリアジン系紫外線吸収剤を用いる場合、上記プライマー層中1〜10質量%であることが好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。1質量%未満であると、耐候性能を十分に付与できないことがあり、10質量%を超えると、本発明の透明性樹脂フィルムの意匠性が低下したり、製膜・加工適性が低下したりすることがある。
【0036】
上記プライマー層は、厚みが0.5μm以上、10μm以下であることが好ましい。0.5μm以上であれば、本発明の透明性樹脂フィルムと後述する絵柄層や表面保護層との密着性を好適に確保でき、10μm以下であれば、本発明の透明性樹脂フィルムが厚くなり過ぎず好ましい。
なお、上記プライマー層は、シリカ等の無機微粒子を含んでいてもよい。
【0037】
本発明の透明性樹脂フィルムは、基材の一方の面上に積層された絵柄層を保護するために用いられ、更に接着面に所定の凹凸形状を有するので、接着剤層を介して上記絵柄層と本発明の透明性樹脂フィルムとを積層して化粧板とすると、これらの密着性能に優れ、凹凸形状に気泡が入り込まないため意匠性にも優れたものとなる。
このような、基材の一方の面上に絵柄層が積層され、上記絵柄層の上記基材を有する側と反対側に本発明の透明性樹脂フィルムが積層されている化粧板もまた、本発明の一態様である。
【0038】
次に、本発明の化粧板の好ましい一例について、図3を用いて説明する。
本発明の化粧板20は、基材25の一方の面上に絵柄層24が積層され、絵柄層24の基材25を有する側と反対側に本発明の透明性樹脂フィルム10が積層されている。
また、絵柄層24と、本発明の透明性樹脂フィルム10との密着性をより強固にする観点から、接着剤層23を有することが好ましい。
以下、本発明の化粧板の各構成について説明する。
【0039】
上記基材としては特に限定されず、例えば、本発明の透明性樹脂フィルムを用いてなる化粧板の用途に合わせて適宜決定される。
【0040】
上記基材を構成する材料としては特に限定されず、例えば、樹脂材料、木質材料、金属材料等公知の材料が挙げられる。その中でも、上記基材を構成する材料としては、剛性や軽さを備える樹脂材料や木質材料が好ましい。また、これらの複合材料であっても良い。
上記樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などのポリビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)などのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体などの熱可塑性樹脂の単体及び共重合体、あるいは、これらの混合樹脂が好ましく挙げられる。なかでも、ポリオレフィン樹脂やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、アイオノマー等が好ましい。更に、上記樹脂材料は、発泡されていてもよい。
【0041】
また、上記木質材料としては、例えば、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材等が挙げられ、また、芯材としては、これらの素材から作られた突板、木材単板、木材合板(LVLを含む)、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、集成材等のいずれか、ないし、これらを適宜積層した積層材であってもよい。
上記金属材料としては、例えば、鉄等が挙げられる。
また、上記基材は、無機化合物を含んでいてもよい。
【0042】
また、上記基材が複数の樹脂からなる基材を有する場合、該複数の樹脂からなる基材を形成する樹脂の種類は同じであっても異なっていてもよく、また複数の樹脂からなる基材の厚みは同じであっても異なっていてもよい。
【0043】
本発明において、上記基材は、中空構造であっていてもよいし、基材の一部にスリット溝や貫通穴を設けてもよいし、上記材料を組み合わせた枠状のものでもよい。
【0044】
上記基材の厚みとしては特に限定されず、例えば、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上50mm以下がより好ましい。
なお、基材は略板状も含み、凹凸や曲面を備えているものも含まれる。
【0045】
上記基材は、一方の面上に絵柄層が積層されている。
上記絵柄層は、本発明の透明性樹脂フィルムを用いてなる本発明の化粧板に装飾性を付与する層であり、例えば、均一に着色が施された隠蔽層(ベタ印刷層)でもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される図柄層であってもよいし、隠蔽層と図柄層とを組み合わせた層(以下、模様層)であってもよい。
【0046】
上記隠蔽層を設けることにより、上述した基材が着色していたり色ムラがあったりする場合に、意図した色彩を与えて表面の色を整えることができる。
また、図柄層を設けることで、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など、あるいはこれらを複合した寄木、パッチワークなどの模様を化粧板に付与することができる。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
【0047】
上記絵柄層に用いられるインキ組成物としては、バインダー樹脂に顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂などが好ましく挙げられる。上記バインダー樹脂としてはこれらの中から任意のものを、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、上記着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが好ましく挙げられる。
【0048】
上記絵柄層の厚みとしては特に限定されず、例えば、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上600μm以下がより好ましい。上記絵柄層の厚みが上記範囲内にあれば、本発明の化粧板に優れた意匠を付与することができ、また隠蔽性を付与することができる。
なお、突板等のように予め上記基材自体が意匠性を備えている場合には、絵柄層を設けなくてもよい。
【0049】
本発明の化粧板の厚みとしては特に限定されず、例えば、0.05mm以上が好ましく、1mm以上50mm以下がより好ましい。
【0050】
本発明の化粧板は、上記絵柄層と本発明の透明性樹脂フィルムとの間に、接着剤層を有することが好ましい。
上記接着剤層は、上記絵柄層と、本発明の透明性樹脂フィルムが有する熱可塑性樹脂層との間に設けられる層であり、上記接着剤層を有することにより、上記絵柄層と本発明の透明性樹脂フィルムとの密着性をより強固にすることができる。
また、上述した本発明の透明性樹脂フィルムは、絵柄層側の表面(接着面)に所定の凹凸形状が形成されているため、上記接着剤層の上記接着面への接着面積が大きくなる結果、接着剤層の密着性能が優れたものとなる。また、上記凹凸形状は所定の形状に制御されているので、上記接着剤層と凹凸形状との間に気泡が入り込むことを防止できる。
【0051】
上記接着剤層は、本発明の化粧板により優れた耐高性能を付与する観点から、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
具体的には、上記接着剤層は、紫外線吸収剤を0.5〜2質量%で含有することがより好ましい。上記範囲で紫外線吸収剤が含有されていることにより、本発明の化粧板により優れた耐候性能を付与することができる。
上記接着剤層は、紫外線吸収剤を1.0〜1.5質量%で含有することがさらに好ましい。
上記接着剤層に含有される紫外線吸収剤としては、上述したプライマー層で用いられる紫外線吸収剤を好適に用いることができ、特にトリアジン系紫外線吸収剤をより好適に用いることができる。
【0052】
上記接着剤層は、バインダー樹脂を含有することが好ましい。
上記接着剤層に含有されるバインダー樹脂としては、上述したプライマー層で用いられるバインダー樹脂を好適に用いることができる。
【0053】
本発明の化粧板の製造方法としては、上述した接着剤層を形成する接着剤等を用いて、上記基材、上記絵柄層、及び、上記透明性樹脂フィルムを積層させる方法等が挙げられる。
なかでも、上記化粧板の製造方法であって、上記透明性樹脂フィルムの上記絵柄層が積層される側の面に接着剤層を形成する工程、及び、上記接着剤層を介して、上記透明性樹脂フィルムと上記絵柄層とを貼り合わせる工程を有することが好ましい。
このような本発明の化粧板を製造する方法もまた、本発明の一態様である。
上記透明性樹脂フィルムでは、上記表面保護層側に凹凸形状を賦形する際に、エンボス加工等を施して凹凸形状を形成するが、エンボス加工を施した面側の凹凸形状に追従して、エンボス加工を施した面と反対側の面(絵柄層が積層される側)にも多少の凹凸形状が賦形されてしまう。このような場合には、上記透明性樹脂フィルムに形成された上記絵柄層が積層される側の凹凸形状に空気が入り込む、いわゆるエアガミが発生し、意匠性が低下することがある。
本発明の化粧板の製造方法では、上記透明性樹脂フィルムの上記絵柄層が積層される側の面に接着剤層を形成する工程を有するので、上記絵柄層が積層される側の凹凸形状の凹部にも接着剤層を入り込ますことができ、上述したエアガミの発生を防止し、意匠性の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
透明ポリプロピレンフィルム(厚み60μm)を用意し、該透明ポリプロピレンフィルムの一方の面に、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂を塗工し、厚み2μmの接着用プライマー層を得た。
次いで、前記透明ポリプロピレンフィルムのもう一方の面(接着用プライマー層の反対面側)に、透明ポリプロピレン系樹脂(厚み200μm)を溶融押し出し、それらを熱ラミネート方式で積層し、熱可塑性樹脂層を得た。
その後、熱可塑性樹脂層の上記透明ポリプロピレン系樹脂(厚み200μm)側の表面にコロナ処理を施した後、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂を塗工し、厚み2μmの表面保護層用プライマー層を得た。
その後、上記表面保護層用プライマー層の表面に、表面保護層として電離放射線硬化型樹脂であるウレタン(メタ)アクリレートをグラビアコート方式で塗工した後、加速電圧165keV、5Mradの条件で電子線を照射し、厚み15μmの表面保護層を形成した。
上記表面保護層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱した後、エンボス版(Rz:25.1μm)を接触させ、120℃、55kg/cmで180秒間プレスし、凹凸形状を賦形させ、透明性樹脂フィルムを得た。
その一方で、HDF(厚み3mm)を用意し、該HDFの一方の面上にインクジェットプリンターにて絵柄層を厚みが2μmとなるように塗工して基材を準備した。
得られた透明性樹脂フィルムの接着用プライマー層側に、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ポリエステル樹脂(厚み50μm)を塗布して接着剤層とし、透明性樹脂フィルムの接着用プライマー層側と基材の絵柄層側とを積層し、10kg/mの圧力を掛け3日間、常温環境下で養生した。
なお、透明性樹脂フィルムの凹凸形状の凹部の厚みは、表1に示す通りであった。
【0056】
(実施例2〜6、比較例1、2)
エンボス版を変更して、表面及び接着面の凹凸形状が表1に示した大きさとなるようにした以外は、実施例1と同様にして透明性樹脂フィルムと化粧板とを作製した。なお、透明性樹脂フィルムの凹凸形状の凹部の厚みは、表1に示す通りであった。
また、表1に記載の比較例1に対する接着面積比率は、実施例1〜6及び比較例2と、比較例1の透明性樹脂フィルムの接着用プライマー層を形成した面の表面積としてSdrを粗さ形状測定機(株式会社KEYENCE製、商品名 ワンショット3D形状測定機VR-3200)を用い、ISO25178に基づき、広視野モード、15型モニタ倍率25(横(H)12mm、縦(V)9mm)により測定し、[(実施例1〜6又は比較例2のプライマー層を形成した面のSdr)/(比較例1のプライマー層を形成した面のSdr)]により求めた。
【0057】
<密着強度>
実施例及び比較例について、得られた透明性樹脂フィルムの凹凸形状を有する側と反対側面と、基材の絵柄層を備える面とが接するように積層した際に、密着強度を評価した。その結果を表1に示した。
密着強度は、実施例及び比較例にて得られた化粧板について、テンシロン万能試験機「RTC−1250A」(オリエンテック社製)を用いて、引張速度200mm/min、剥離角度180°方向で透明性樹脂フィルムと、絵柄層が積層された基材とを剥がした際の剥離強度[N/25mm幅]を測定し、密着強度とした。
【0058】
<気泡の有無>
実施例及び比較例で得られた化粧板について、印刷柄を目視にて確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1に示した。
++:印刷柄が明瞭に見える
+:印刷柄が僅かに変色(曇って)見える
−:印刷柄が明瞭に見えない
【0059】
<最大高さ粗さ>
実施例及び比較例について、得られた透明性樹脂フィルムについて、表面保護層を備える面における最大高さ粗さ(表面最大高さ粗さ)、及び接着用プライマー層を備える面における最大高さ粗さ(接着面最大高さ粗さ)は、表面粗さ計(株式会社東京精密製、商品名 SURFCOM FLEX−50A)を用い、JIS B0601(2001)に基づき、評価長さ:12.5mm、測定速度:0.6mm/s、カットオフ値:2.5mm、フィルタ種別:ガウシアン、形状除去:直線、λs値:8.0μmにて測定した。その結果を表1に示した。
【0060】
<触感>
実施例及び比較例で得られた化粧板について、成人男女10人を試験者として手触り感を以下の基準で評価した。その結果を表1に示した。
++:手触り感が良好と評価した試験者が9割以上
+:手触り感が良好と評価した試験者が6割以上
−:手触り感が良好と評価した試験者が6割未満
【0061】
<意匠視認性>
実施例及び比較例で得られた化粧板を目視にて観察し、以下の基準で評価した。その結果を表1に示した。
++:絵柄層に形成された印刷柄が、明瞭に見える。
+:絵柄層に形成された印刷柄が、僅かに変色して(曇って)見える。
−:絵柄層に形成された印刷柄が、明瞭に見えない。
【0062】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、化粧板に優れた意匠性を付与することができ、密着性能にも優れる透明性樹脂フィルムを提供することができる。本発明の化粧板は、優れた意匠性を有し、密着性能にも優れるので住居用の床や、建具・引き戸等の扉に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0064】
10 透明性樹脂フィルム
12 接着用プライマー層
13 表面保護層
14 熱可塑性樹脂層
20 化粧板
23 接着剤層
24 絵柄層
25 基材


図1
図2
図3