特許第6798650号(P6798650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6798650
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   H01M2/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-543126(P2020-543126)
(86)(22)【出願日】2020年5月12日
(86)【国際出願番号】JP2020018911
【審査請求日】2020年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2019-93421(P2019-93421)
(32)【優先日】2019年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】天野 真
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝典
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−208384(JP,A)
【文献】 特開2003−126919(JP,A)
【文献】 特開2013−154388(JP,A)
【文献】 特開2016−195113(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/094724(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/097054(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/097329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01G 11/84
H01G 13/00
B29C 43/00−43/58
B21D 24/00−24/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体により構成された包材を成型することによって、蓄電デバイス用の収容体を製造するように構成された製造装置であって、
凹部を有する雌型と、
平面視において前記凹部と重なる位置に形成された孔を有する押え板と、
前記孔を貫通し前記凹部に進入するように構成された雄型とを備え、
前記雄型の面のうち前記凹部に進入する面に沿って延びる稜線の少なくとも一部には、丸みが形成されており、
前記包材が前記雌型と前記押え板とによって挟まれた状態で、前記雄型が前記凹部に進入することによって前記包材が成型され、
前記雌型の面のうち前記包材と接する第1面、及び、前記押え板の面のうち前記包材と接する第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、前記稜線の最大高さ粗さRz以下である、製造装置。
【請求項2】
前記第1面及び前記第2面の各々の最大高さ粗さRzは、前記稜線の最大高さ粗さRz以下である、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記第1面及び前記第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、1.6μm未満である、請求項1又は請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記稜線の最大高さ粗さRzは、0.8μm以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項5】
平面視における前記雄型の形状は、長方形状であって、長辺及び短辺を有し、
前記長辺の長さは、150mm以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項6】
少なくとも、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体により構成された包材を成型することによって、蓄電デバイス用の収容体を製造装置で製造する製造方法であって、
前記製造装置は、
凹部を有する雌型と、
平面視において前記凹部と重なる位置に形成された孔を有する押え板と、
前記孔を貫通し前記凹部に進入するように構成された雄型とを備え、
前記雄型の面のうち前記凹部に進入する面に沿って延びる稜線の少なくとも一部には、丸みが形成されており、
前記製造方法は、
前記雌型と前記押え板とによって前記包材を挟むステップと、
前記雄型を前記凹部に進入させることによって前記包材を成型するステップとを含み、
前記雌型の面のうち前記包材と接する第1面、及び、前記押え板の面のうち前記包材と接する第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、前記稜線の最大高さ粗さRz以下である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用の収容体を製造するように構成された製造装置、及び、該収容体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019−3842号公報(特許文献1)は、ラミネートフィルムによって構成された外装用包装材を備える蓄電デバイスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−3842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されるような蓄電デバイスにおいて、ラミネートフィルムによって構成された外装用包装材(収容体)は、内部に蓄電素子を収容する。蓄電素子の収容を容易にするために、多くの場合、収容体は成型されている。しかしながら、ラミネートフィルムのような包材を所望の形状に成型することは必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、包材を所望の形状に成型することによって、所望の形状の収容体を製造可能な製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う製造装置は、少なくとも、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体により構成された包材を成型することによって、蓄電デバイス用の収容体を製造するように構成されている。この製造装置は、雌型と、押え板と、雄型とを備える。雌型は、凹部を有する。押え板は、平面視において上記凹部と重なる位置に形成された孔を有する。雄型は、上記孔を貫通し上記凹部に進入するように構成されている。雄型の面のうち上記凹部に進入する面に沿って延びる稜線の少なくとも一部には、丸みが形成されている。包材が雌型と押え板とによって挟まれた状態で、雄型が上記凹部に進入することによって包材が成型される。雌型の面のうち包材と接する第1面、及び、押え板の面のうち包材と接する第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、上記稜線の最大高さ粗さRz以下である。
【0007】
仮に、上記第1面及び上記第2面の双方の最大高さ粗さRzが上記稜線の最大高さ粗さRzよりも大きいとする。この場合には、雌型及び押え板と包材との接触面積が小さく雌型及び押え板が包材を挟む力が弱いため、さらに、雄型の稜線と包材との接触面積が大きく雄型が包材を上記凹部内に引き込む力が強いため、包材の過度な引込みが発生し得る。その結果、たとえば、雄型の稜線上の丸み(アール(R))が包材に十分に賦形されず、包材の角がなだらかに湾曲した形状となり得る。また、たとえば、包材が過度に引き込まれることによって、包材の表面及び裏面に擦れキズが発生し得る。
【0008】
本発明に従う製造装置においては、上記第1面及び上記第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、上記稜線の最大高さ粗さRz以下である。したがって、上記第1面及び上記第2面の双方の最大高さ粗さRzが上記稜線の最大高さ粗さRzよりも大きい場合と比較して、雌型及び押え板と包材との接触面積が大きく雌型及び押え板が包材を挟む力が強いため、さらに、雄型の稜線と包材との接触面積が小さく雄型が包材を上記凹部内に引き込む力が弱いため、包材の過度な引込みが発生しない。その結果、この製造装置によれば、たとえば、雄型の稜線上の丸み(アール(R))を包材に賦形することができる。また、この製造装置によれば、包材が過度に引き込まれないため、包材の表面及び裏面に擦れキズが発生する事態を抑制することができる。
【0009】
第1面及び第2面の各々の最大高さ粗さRzは、上記稜線の最大高さ粗さRz以下であってもよい。
【0010】
この場合には、上記第1面及び上記第2面の一方のみの最大高さ粗さRzが上記稜線の最大高さ粗さRz以下である場合と比較して、雌型及び押え板と包材との接触面積が大きく雌型及び押え板が包材を挟む力が強いため、さらに、雄型の稜線と包材との接触面積が小さく雄型が包材を上記凹部内に引き込む力が弱いため、包材の過度な引込みが発生しない。その結果、この製造装置によれば、たとえば、雄型の稜線上の丸み(アール(R))を包材に十分に賦形することができる。また、この製造装置によれば、包材が過度に引き込まれないため、包材の表面及び裏面に擦れキズが発生する事態をより抑制することができる。
【0011】
第1面及び第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、1.6μm未満であってもよい。
【0012】
上記稜線の最大高さ粗さRzは、0.8μm以上であってもよい。
【0013】
平面視における雄型の形状は、長方形状であって、長辺及び短辺を有し、長辺の長さは、150mm以上であってもよい。
【0014】
本発明の他の局面に従う製造方法は、少なくとも、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体により構成された包材を成型することによって、蓄電デバイス用の収容体を製造する方法である。製造装置は、雌型と、押え板と、雄型とを備える。雌型は、凹部を有する。押え板は、平面視において上記凹部と重なる位置に形成された孔を有する。雄型は、上記孔を貫通し上記凹部に進入するように構成されている。雄型の面のうち上記凹部に進入する面に沿って延びる稜線の少なくとも一部には、丸みが形成されている。製造方法は、雌型と押え板とによって包材を挟むステップと、雄型を上記凹部に進入させることによって包材を成型するステップとを含む。雌型の面のうち包材と接する第1面、及び、押え板の面のうち包材と接する第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、上記稜線の最大高さ粗さRz以下である。
【0015】
本発明に従う製造方法においては、上記第1面及び上記第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、上記稜線の最大高さ粗さRz以下である。したがって、上記第1面及び上記第2面の双方の最大高さ粗さRzが上記稜線の最大高さ粗さRzよりも大きい場合と比較して、雌型及び押え板と包材との接触面積が大きく雌型及び押え板が包材を挟む力が強いため、さらに、雄型の稜線と包材との接触面積が小さく雄型が包材を上記凹部内に引き込む力が弱いため、包材の過度な引込みが発生しない。その結果、この製造方法によれば、たとえば、雄型の稜線上の丸み(アール(R))を包材に十分に賦形することができる。また、この製造方法によれば、包材が過度に引き込まれないため、包材の表面及び裏面に擦れキズが発生する事態を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、包材を所望の形状に成型することによって、所望の形状の収容体を製造可能な製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】製造装置の概略を示す図である。
図2】成型ユニットの概略を示す図である。
図3】雌型を下方から見た状態の概略を示す図である。
図4】押え板及び雄型を上方から見た状態の概略を示す図である。
図5図4のV−V断面図である。
図6図4のVI−VI断面図である。
図7】包材が雌型及び押え板によって挟まれており、かつ、雄型が上昇する前の状態を示す図である。
図8】包材が雌型及び押え板によって挟まれており、かつ、雄型が上昇した後の状態を示す図である。
図9】成型品の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
[1.製造装置の概要]
図1は、本実施の形態に従う製造装置10の概略を示す図である。製造装置10は、後述のリール30に取付けられた巻取体から包材20を繰り出し、下流側の成型ユニット100で包材20を成型するとともに、包材20を幅方向に断裁する方式を用いて、たとえば、蓄電デバイス用の収容体を製造するように構成されている。なお、図1における矢印UDLRFB(上下左右前後)の各々が示す方向は各図面で共通である。
【0020】
図1に示されるように、製造装置10は、リール30と、搬送ユニット40と、サーボ機構200,300と、成型ユニット100とを含んでいる。
【0021】
リール30は、シート状の包材20を繰り出すように構成されている。包材20は、いわゆるラミネートフィルムであり、少なくとも、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体により構成されている。搬送ユニット40は、包材20を製造装置10の上流側から下流側に搬送するように構成されている。サーボ機構200,300の各々は、成型ユニット100の駆動を制御するように構成されている。成型ユニット100は、サーボ機構200,300の各々から駆動力を受けることによって、包材20を成型するように構成されている。成型ユニット100による成型が完了すると、成型品50(収容体)が完成する。
【0022】
[2.成型ユニットの構成]
図2は、成型ユニット100の概略を示す図である。図2に示されるように、成型ユニット100は、基台102と、雌型110と、基台104と、複数のエアシリンダ132と、押え板130と、雄型120と、複数の柱106とを含んでいる。
【0023】
基台102の下方(矢印D方向)には雌型110が取り付けられている。基台102は、各柱106に対して上下方向に移動可能である。基台102は、サーボ機構200から供給される駆動力によって、上下方向に移動する。
【0024】
図3は、雌型110を下方から見た状態の概略を示す図である。図3に示されるように、雌型110は平面視矩形状である。なお、本明細書において、「矩形状」とは、四隅の角が直角の完全な矩形状の他、例えば、矩形の四隅に丸み(R)が形成されたような略矩形状も含む意味である。すなわち、図面において略矩形状で表現されているものは完全な矩形状に置換可能であり、図面において完全な矩形状で表現されているものは略矩形状に置換可能である。なお、本願明細書においては、角が丸みを帯びていることを「Rが形成されている」とも表現する。「Rが形成されている」とは、構造的には、面取り加工が施され、角が丸みを帯びた状態を意味する。また、「R」単独で角の丸みの半径を意味する場合がある。
【0025】
雌型110の面115(下面)には孔H1が形成されており、面115の孔H1の下流側(矢印R方向)には断裁刃(図示せず)が設けられている。孔H1の平面視における形状は、矩形の四隅にRが形成された形状である。すなわち、孔H1の平面視における形状は、略矩形状である。なお、孔H1の平面視における形状は、必ずしも略矩形状である必要はなく、完全な矩形状であってもよい。
【0026】
なお、雌型110には、必ずしも孔H1が形成されている必要はなく、単に窪みが形成されているだけであってもよい。本発明において、「凹部」は、単に窪みだけを意味するわけではなく、孔をも含む概念である。包材20の成型時には、基台102(図2)が下降し、雌型110の面115が包材20の上面(基材層(最外層))に接触する。
【0027】
再び図2を参照して、基台104の上方(矢印U方向)には、複数のエアシリンダ132を介して、押え板130が取り付けられている。押え板130は、エアシリンダ132から供給される駆動力によって、上下方向に移動可能である。包材20の成型時には、押え板130が上方に加圧された状態で、包材20が雌型110と押え板130とによって挟まれる。すなわち、包材20の成型時には、押え板130の上面が包材20の下面(熱融着性樹脂層(最内層))に接触する。
【0028】
図4は、押え板130及び雄型120を上方から見た状態の概略を示す図である。図4に示されるように、押え板130は平面視矩形状であり、押え板130の面135(上面)には孔H2が形成されている。孔H2の平面視における形状は、矩形の四隅にRが形成された形状である。すなわち、孔H2の平面視における形状は、略矩形状である。なお、孔H2の平面視における形状は、必ずしも略矩形状である必要はなく、完全な矩形状であってもよい。成型ユニット100における孔H2の位置は、平面視において孔H1(図2,3)と重なる位置である。押え板130の四隅の各々の下方には、エアシリンダ132が配置されている。
【0029】
再び図2を参照して、雄型120は、押え板130に形成された孔H2を貫通して、上下方向に移動可能である。雄型120は、サーボ機構300から供給される駆動力によって、上下方向に移動する。雄型120が上方に移動することによって、雄型120は、雌型110に形成された孔H1に進入する。包材20が雌型110と押え板130とによって挟まれた状態で、雄型120が孔H1に進入することによって、包材20の成型が行なわれるとともに、雌型110の面115の孔H1の下流側(矢印R方向)に設けられた断裁刃(図示せず)により包材20が幅方向(矢印FB方向)に断裁される。
【0030】
再び図4を参照して、平面視における雄型120の形状は、長方形であって、長辺及び短辺を有する。長辺の長さは、たとえば、150mm以上であり、短辺の長さは、たとえば、50mm以上である。また、雄型120の面125(上面)には、包材20の成型時に空気を逃がすための溝G1が形成されている。また、雄型120の面125の四隅には、丸み(R)が形成されている。すなわち、雄型120の平面視における形状は、略矩形状である。なお、雄型120の平面視における形状は、必ずしも略矩形状である必要はなく、完全な矩形状であってもよい。
【0031】
図5は、図4のV−V断面図である。図6は、図4のVI−VI断面図である。図5及び図6に示されるように、面125に沿って延びる稜線(面125と雄型120の各側面との間に存在する稜線)の各々には、丸み(R)が形成されている。包材20の成型時には、面125に沿って延びる稜線(以下、「雄型120の稜線」とも称する。)が主に包材20に接触する。なお、雄型120において、面125に沿って延びる稜線の各々に形成された丸み(R)は、平面視における面125の隅(図4)に形成された丸み(R)より小さい。
【0032】
[3.雌型及び雄型の表面粗さ]
図7は、包材20が雌型110及び押え板130によって挟まれており、かつ、雄型120が上昇する前の状態を示す図である。図8は、包材20が雌型110及び押え板130によって挟まれており、かつ、雄型120が上昇した後の状態を示す図である。図8に示されるように、雄型120が上昇することによって、包材20には、雌型110の凹部に向かって包材20が引き込まれる方向(図8における矢印方向)の力が加わる。
【0033】
仮に、面115,135の表面粗さが、面125に沿って延びる稜線の表面粗さよりも粗いとする。たとえば、面115,135の最大高さ粗さRz(3.2μm)が、面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRz(1.6μm)よりも大きいとする。なお、本明細書において、最大高さ粗さRzは、JIS B0659−1:2002附属書1表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)をいう。
【0034】
この場合には、雌型110及び押え板130と包材20との接触面積が小さく雌型110及び押え板130が包材20を挟む力が弱いため、さらに、雄型120の稜線と包材20との接触面積が大きく雄型120が包材20を雌型110の孔H1に引き込む力が強いため、包材20の過度な引込みが発生し得る。
【0035】
その結果、たとえば、雄型120の稜線上の丸み(R)が包材20に十分に賦形されず、包材20の角がなだらかに湾曲した形状となり得る。また、たとえば、包材20が過度に引き込まれることによって、包材20の表面及び裏面に擦れキズが発生し得る。
【0036】
特に、このような現象は、包材20のうち、成型時に雄型120の長辺が接する部分で顕著に生じる。包材20のうち雄型120の長辺が接する部分は、各エアシリンダ132(図4)から遠くに位置しており、雌型110及び押え板130によって十分に押さえられていない可能性があるためである。
【0037】
本実施の形態に従う製造装置10において、面115,135の表面粗さは、面125に沿って延びる稜線の表面粗さよりも滑らかである。すなわち、面115,135の最大高さ粗さRz(たとえば、0.8μm)が、面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRz(たとえば、1.6μm)以下である。
【0038】
したがって、雌型110及び押え板130と包材20との接触面積が大きく雌型110及び押え板130が包材20を挟む力が強いため、さらに、雄型120の稜線と包材20との接触面積が小さく雄型120が包材20を雌型110の孔H1に引き込む力が弱いため、包材20の過度な引込みが発生しない。
【0039】
その結果、本実施の形態に従う製造装置10によれば、包材20のうち成型時に雄型120の長辺が接する位置であったとしても、たとえば、雄型120の稜線上の丸み(R)を包材20に十分に賦形することができる。また、製造装置10によれば、包材20が過度に引き込まれないため、包材20の表面及び裏面に擦れキズが発生する事態を抑制することができる。
【0040】
面115,135の最大高さ粗さRzが雄型120の稜線の最大高さ粗さRz以下であるという条件を満たす前提で、面115,135の最大高さ粗さRzは、0.2μm以上、1.6μm未満であればよい。すなわち、面115,135には、いわゆる鏡面仕上げが施されていればよい。
【0041】
また、面115,135の最大高さ粗さRzが雄型120の稜線の最大高さ粗さRz以下であるという条件を満たす前提で、雄型120の稜線の最大高さ粗さRzは、0.8μm以上、3.2μm以下であればよい。
【0042】
[4.製造手順]
図9は、成型品50の製造手順を示すフローチャートである。図9に示される工程は、加工対象の包材20が雌型110と押え板130との間に配置された後に製造装置10によって実行される。
【0043】
図9を参照して、製造装置10は、基台102を下降させることによって、雌型110及び押え板130で包材20を挟み込む(ステップS100)。製造装置10は、各エアシリンダ132を制御して押え板130を上方に加圧することによって、包材20をより強く挟み込む(ステップS110)。たとえば、この場合の面圧は、0.27MPaである。なお、この面圧は、包材20の特性等によって適宜調整される。その後、製造装置10は、雄型120を上昇させることによって、包材20の成型を行なう(ステップS120)。これにより、成型品50が完成する。
【0044】
[5.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う製造装置10において、面115(第1面),135(第2面)の最大高さ粗さRzは、面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRz以下である。本実施の形態に従う製造装置10によれば、たとえば、雄型120の稜線上の丸み(R)を包材20に十分に賦形することができる。また、製造装置10によれば、包材20が過度に引き込まれないため、包材20の表面及び裏面に擦れキズが発生する事態を抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態に従う製造装置10において、面115(第1面),135(第2面)の最大高さ粗さRzは、面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRzよりも小さいことが好ましい。
【0046】
[6.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0047】
(6−1)
上記実施の形態に従う製造装置10においては、雌型110の面115及び押え板130の面135の双方の最大高さ粗さRzが、雄型120の面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRz以下であるとされた。しかしながら、必ずしも、面115及び面135の双方の最大高さ粗さRzが、雄型120の面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRz以下である必要はない。たとえば、面115,135のいずれか一方の最大高さ粗さRzのみが、面125に沿って延びる稜線の最大高さ粗さRz以下であってもよい。
【0048】
たとえば、面115の最大高さ粗さRzが雄型120の稜線の最大高さ粗さRz以下である場合には、包材20の基材層側の擦れキズの発生を抑制することができる。その結果、たとえば、蓄電素子を収容した成型品50を複数並べたモジュールにおいて、隣り合う成型品50間で絶縁破壊が生じる可能性を抑制することができる。
【0049】
また、たとえば、面135の最大高さ粗さRzが雄型120の稜線の最大高さ粗さRz以下である場合には、包材20の熱融着性樹脂層側の擦れキズの発生を抑制することができる。その結果、たとえば、蓄電素子を収容した成型品50において内部の絶縁性を維持することができる。
【0050】
(6−2)
また、上記実施の形態に従う製造装置10においては、上方に雌型110が配置され、下方に雄型120が配置されたが、たとえば、上方に雄型120が配置され、下方に雌型110が配置されてもよい。この場合には、押え板130、エアシリンダ132及びサーボ機構200,300等の位置も適宜調整される。
【0051】
(6−3)
また、上記実施の形態における成型品50が収容する蓄電デバイスの一例は、たとえば、全固体電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池である。また、蓄電デバイスの他の一例は、キャパシタ、電気二重層コンデンサ(EDLC)、リチウムイオンキャパシタである。
【0052】
(6−4)
また、上記実施の形態に従う製造装置10においては、雄型120の面125に沿って延びる稜線の全周にRが形成されていた。しかしながら、必ずしも稜線の全周にRが形成されている必要はない。たとえば、稜線の一部のみにRが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 製造装置、20 包材、30 リール、40 搬送ユニット、50 成型品、100 成型ユニット、102,104 基台、106 柱、110 雌型、115,125,135 面、120 雄型、130 押え板、132 エアシリンダ、200,300 サーボ機構、G1 溝、H1,H2 孔。
【要約】
製造装置は、少なくとも、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体により構成された包材を成型することによって、蓄電デバイス用の収容体を製造するように構成されている。製造装置は、雌型と、押え板と、雄型とを備える。雌型は、凹部を有する。押え板は、平面視において上記凹部と重なる位置に形成された孔を有する。雄型は、上記孔を貫通し上記凹部に進入するように構成されている。雄型の面のうち上記凹部に進入する面に沿って延びる稜線の少なくとも一部には、丸みが形成されている。雌型の面のうち包材と接する第1面、及び、押え板の面のうち包材と接する第2面の少なくとも一方の面の最大高さ粗さRzは、上記稜線の最大高さ粗さRz以下である。
図1
図2
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図9