(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光波長変換層は、前記半導体発光素子が配列されている方向と交差する方向の幅をW、前記半導体発光素子が発する光の主方向の高さをHとすると、H>0.5Wを満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本願発明は、あらゆる灯具や照明器具に適用できるが、特に、発光面が広い照明装置に好適である。以下の説明では、スタジオ照明として用いられる照明装置を例に説明する。
【0019】
(照明装置)
図1は、本実施の形態に係る照明装置の概略を示す上面図である。
図1では、照明装置の発光面となる拡散板の図示を省略している。
【0020】
本実施の形態に係る照明装置10は、長方形の樹脂の筐体50と、筐体50の底部に敷かれたアルミ製の底板52と、底板52の上に間隔をおいて配列されているライン状の複数の光源としての発光モジュール110と、発光モジュール110の発光面の正面側に配置されている長方形の板状の透過部材(
図1では図示省略)と、を備える。
【0021】
(発光モジュール)
本実施の形態に係る発光モジュールは、紫外線又は短波長可視光を発する複数の発光素子と、発光素子が発する光により励起され可視光を発する光波長変換層と、を備える。光波長変換層は、複数の発光素子を被覆するように構成されている。また、光波長変換層は、第1の層と、第1の層を挟んで発光素子と反対側に設けられた第2の層と、を有する。第1の層および第2の層は、赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体および青色蛍光体を含む。第1の層は、赤色蛍光体および緑色蛍光体の少なくとも一方を含む。第2の層は、黄色蛍光体および青色蛍光体の少なくとも一方を含む。なお、光波長変換層は、一つの層であってもよく、その場合は、発光色が互いに補色の関係である複数種(色)の蛍光体を含有していればよい。光波長変換層は、例えば、黄色蛍光体と青色蛍光体を含有する一つの層であってもよい。
【0022】
(発光素子)
本実施の形態に係る発光素子は、少なくとも紫外線又は短波長可視光を発するものであればその発光スペクトルは特に限定されるものではないが、発光装置の発光効率等の観点から、発光スペクトルのピークが350nm〜430nmの波長域にあることが好ましい。
【0023】
また、発光素子の具体例としては、例えば、LEDやLD、EL等の半導体発光素子、真空放電や熱発光からの発光を得るための光源、電子線励起発光素子等の各種光源を用いることができる。発光素子として半導体発光素子を用いることにより、小型で省電力、長寿命な発光装置を得ることができる。このような半導体発光素子の好適な例として、400nm付近の波長域の発光特性が良好であるInGaN系のLEDやLDを挙げることができる。
【0024】
(光波長変換層)
本実施の形態に係る光波長変換層は、含有する蛍光体の種類や量が異なる複数の層からなる。発光素子に近い第1の層には、赤色蛍光体および緑色蛍光体の少なくとも一方が含まれているとよい。また、第1の層を挟んで発光素子と反対側に設けられた第2の層には、黄色蛍光体および青色蛍光体の少なくとも一方が含まれているとよい。
【0025】
第1の層および第2の層は全体として、励起光の色が異なる少なくとも4つの蛍光体(例えば、赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体および青色蛍光体)を含んでいるため、演色性の高い新規な発光モジュールを実現できる。また、励起スペクトルが比較的長波長側まで存在する赤色蛍光体または緑色蛍光体が発光素子に近い第1の層に含まれているため、第1の層よりも発光素子から遠い側にある第2の層で励起された黄色光や青色光が第1の層で再吸収されることが抑制され、色ズレや光束の低下が低減される。
【0026】
(第1の層)
第1の層は、(i)主として赤色蛍光体および緑色蛍光体を含む場合、(ii)主として赤色蛍光体を含む場合、(iii)主として緑色蛍光体を含む場合、(iv)主として赤色蛍光体、緑色蛍光体および黄色蛍光体を含む場合、(v)主として赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体を含む場合、(vi)主として赤色蛍光体および黄色蛍光体を含む場合、(vii)主として緑色蛍光体および黄色蛍光体を含む場合、が挙げられる。各蛍光体は、シリコーン等の封止樹脂やガラスのマトリックス相に分散されている。なお、本実施の形態に係る光波長変換層においては、第1の層に含まれる蛍光体と同色の蛍光体が第2の層に含まれている場合も有り得る。例えば、光波長変換層全体に含まれるある色の蛍光体のうち、第1の層に90%以上、第2の層に10%以下含有させてもよい。あるいは、第1の層に95%以上、第2の層に5%以下含有させてもよい。あるいは、第1の層に98%以上、第2の層に2%以下含有させてもよい。
【0027】
第1の層に含有される蛍光体全体の濃度は、0.2vol%以上であればよく、好ましくは0.5vol%以上、より好ましくは0.8vol%以上である。蛍光体全体の濃度が0.2vol%以上であれば、発光素子が発する光により十分な光束の可視光を生成できる。また、第1の層に含有される蛍光体全体の濃度は、1.5vol%以下であればよく、好ましくは1.3vol%以下、より好ましくは1.1vol%以下である。蛍光体全体の濃度が1.5vol%以下であれば、蛍光体で励起された可視光が他の蛍光体で散乱、遮蔽される割合が低減され、発光モジュールの発光効率の低下が抑制される。
【0028】
(第2の層)
第2の層は、(i)主として青色蛍光体および黄色蛍光体を含む場合、(ii)主として青色蛍光体、黄色蛍光体および緑色蛍光体を含む場合、(iii)主として青色蛍光体、黄色蛍光体および赤色蛍光体を含む場合、(iv)主として青色蛍光体を含む場合、(v)主として黄色蛍光体を含む場合、が挙げられる。各蛍光体は、シリコーン等の封止樹脂やガラスのマトリックス相に分散されている。なお、本実施の形態に係る光波長変換層においては、第2の層に含まれる蛍光体と同色の蛍光体が第1の層に含まれている場合も有り得る。例えば、光波長変換層全体に含まれるある色の蛍光体のうち、第2の層に90%以上、第1の層に10%以下含有させてもよい。あるいは、第2の層に95%以上、第1の層に5%以下含有させてもよい。あるいは、第2の層に98%以上、第1の層に2%以下含有させてもよい。
【0029】
第2の層に含有される蛍光体全体の濃度は、0.6vol%以上であればよく、好ましくは0.8vol%以上、より好ましくは0.9vol%以上である。蛍光体全体の濃度が0.6vol%以上であれば、発光素子が発する光により十分な光束の可視光を生成できる。一方、蛍光体全体の濃度が0.6vol%より希薄であると、十分な変換性能を確保するためには第2の層(蛍光体層)が大きく(厚く)なり、大量にマトリックス相としての材料が必要となるため、コストが高くなる。また、第2の層に含有される蛍光体全体の濃度は、2.0vol%以下であればよく、好ましくは1.5vol%以下、より好ましくは1.2vol%以下である。蛍光体全体の濃度が2.0vol%以下であれば、蛍光体で励起された可視光が他の蛍光体で散乱、遮蔽される割合が低減され、発光モジュールの発光効率の低下が抑制される。
【0030】
(第1の樹脂層)
第1の樹脂層は、第1の層に含まれる各種蛍光体が分散されるマトリックス相である。具体的には、第1の樹脂層としては、−40〜100℃の範囲に含まれる少なくともいずれかの温度における貯蔵弾性率が10
4〜10
5Paのシリコーン樹脂が好ましい。また、第1の樹脂層は、導線(ボンディングワイヤー)を封止するように設けられていてもよい。これにより導線に働く応力を緩和できる。
【0031】
(第2の樹脂層)
第2の樹脂層は、第2の層に含まれる各種蛍光体が分散されるマトリックス相である。具体的には、第2の樹脂層は、ショアA硬度が30〜80のシリコーン樹脂が好ましい。これにより、第2の樹脂層で覆われた発光モジュールにおいて発光素子が保護される。
【0032】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が620nm〜750nmの範囲にある光を発するものであり、例えば、
(i)(Ca
1−xSr
x)AlSiN
3:Eu
2+(0≦x<0.4)
(ii)Sr
2Si
5N
8:Eu
2+
(iii)(Ca,Sr,Ba)
3SiO
5:Eu
2+
の組成式で表される物質が挙げられる。
【0033】
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が495nm〜570nmの範囲にある光を発するものであり、例えば、
(i)(Ba,Sr,Ca)
2SiO
4:Eu
2+
(ii)(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu
2+
(iii)Sr
2SiO
4:Eu
2+
(iv)Eu付活βサイアロン
(v)Ba
3Si
6O
12N
2:Eu
2+
(vi)SrGa
2S
4:Eu
2+
(vii)SrSi
2O
2N
2:Eu
2+
(viii)(Ba,Sr)Si
2O
2N
2:Eu
2+
(ix)SrAlO
4:Eu
2+
(x)(Sr,Ba)Al
2Si
2O
8:Eu
2+
(xi)(Ba,Sr,Ca)
2(Mg,Zn)Si
2O
7:Eu
2+
(xii)Sr
2Si
3O
8−2SrCl
2:Eu
2+
の組成式で表される物質が挙げられる。
【0034】
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が570nm〜590nmの範囲にある光を発するものであり、例えば、一般式が(M
2x,M
3y,M
4z)
mM
1O
3X
(2/n)
(ここで、M
1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくともSiを含む1種以上の元素、M
2はCa、Mg、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくともCaを含む1種以上の元素、M
3はSr、Mg、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくともSrを含む1種以上の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M
4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれる少なくともEu
2+を含む1種以上の元素を示す。また、mは0.11≦m≦8/6、nは5≦n≦7の範囲である。また、x、y、zは、x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0.01≦z≦0.3を満たす範囲である。)で表される蛍光体が挙げられる。
【0035】
(青色蛍光体)
青色蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が435nm〜495nmの範囲にある光を発するものであり、例えば、
(i)BaMgAl
10O
17:Eu
2+
(ii)(Sr,Ca,Ba)
10(PO
4)
6C
l2:Eu
2+
(iii)Ba
3MgSi
2O
8:Eu
2+
(iv)Sr
3MgSi
2O
8:Eu
2+
(v)SiO
2−CaI
2:Eu
2+
(vi)Sr
4Al
14O
24:Eu
2+
(vii)(Ba,Sr,Ca)
2(B
5O
9)X
2:Eu
2+(Xはハロゲン元素)
(viii)(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu
2+
の組成式で表される物質が挙げられる。
【0036】
(その他の蛍光体)
上述の蛍光体に加えて、あるいは一部の蛍光体に換えて橙色蛍光体や他の色の蛍光体を用いてもよい。橙色蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が590nm〜620nmの範囲にある光を発するものである。
【0037】
(発光モジュールの製造方法)
次に、本実施の形態に係る発光モジュールの製造方法の一例について説明する。はじめに、予め回路パターンを形成したアルミナ、アルミニウム又はガラス強化エポキシ樹脂等からなる基板上に、1個又は複数個の、近紫外線又は短波長可視光を発するLEDチップを実装する。実装方法は、予めLEDチップをパッケージ化した後、半田実装する方法や、LEDチップを基板にダイボンド材によりダイボンディングした後に金ワイヤーとボンディングを行うチップオンボード実装等により行われる。
【0038】
実装された各LEDチップの直上に、LEDチップからの発光を吸収し、緑色光に変換する蛍光体や、同様に赤色光に変換する蛍光体を含有するシリコーン樹脂を実装する。
【0039】
第1の層であるシリコーン樹脂の実装は、(1)予め蛍光体含有シリコーン樹脂をシート状に成形し、そのシリコーン樹脂を基板に接着する、あるいは(2)前述の蛍光体含有シリコーンをLEDチップ上に定量滴下塗布後、硬化させることにより行われる。この場合、LEDチップと接する樹脂((1)の接着、(2)の滴下)は、−40〜100℃の範囲に含まれる少なくともいずれかの温度における貯蔵弾性率が10
4〜10
5Paの低弾性率の樹脂が好ましい。
【0040】
次に、青色蛍光体や黄色蛍光体を分散したシリコーン樹脂(第2の層)を搭載する。具体的には、
(1)前述の第1の層を搭載した基板上に、青色蛍光体や黄色蛍光体を分散したシリコーン樹脂を3〜15mmの範囲の適正な厚みとなるように塗布し、150℃、1hで加熱硬化させる。
(2)金型の中に青色蛍光体や黄色蛍光体を分散したシリコーン樹脂を充填し、型の開口部に前述の第1の層を搭載した基板を設置し、加熱硬化させる。
(3)青色蛍光体や黄色蛍光体を分散したシリコーン樹脂を型に充填し、加熱硬化する。そして、硬化した成形品を、前述の第1の層を搭載した基板に、透明樹脂を用いて張り合わせる。
【0041】
図2は、本実施の形態に係る発光モジュールの概略を模式的に示した側面図である。
図3は、
図2に示す発光モジュールのA−A断面図である。
【0042】
図2に示す発光モジュール110は、セラミックスの基板112と、基板112上に樹脂を介して実装された複数のnUV−LEDチップ14と、基板112に形成されている回路パターンとnUV−LEDチップ14の電極とを接続する純金製のワイヤー16と、光波長変換層118と、を備える。nUV−LEDチップ14は、405nm近傍にピークを持つ短波長可視光を発するLEDチップである。
【0043】
光波長変換層118は、第1の層120と、第1の層120を挟んでnUV−LEDチップ14と反対側に設けられた第2の層122と、第1の層120と第2の層122とを接合する透明層124と、を有する。第1の層120は、第1の樹脂層21に赤色蛍光体24および緑色蛍光体126が分散されたものである。第2の層122は、第2の樹脂層28に黄色蛍光体30および青色蛍光体32が分散されたものである。透明層124には、第1の層120や第2の層122に用いられる蛍光体が含有されていても良い。
【0044】
本実施の形態では、貯蔵弾性率が0.4MPaの比較的軟らかいシリコーン樹脂(I)に、蛍光体全体の濃度が1.0vol%となるように、赤色蛍光体24((Ca,Sr)SiAlN
3:Eu
2+)、緑色蛍光体126(β−サイアロン)を重量比4:1で混合し、分散/真空脱泡してシリコーン樹脂(I)塗布液を作成した。なお、赤色蛍光体24および緑色蛍光体126の混合比は、赤色蛍光体:緑色蛍光体=65:35〜85:15(重量比)の範囲で適宜設定してもよい。
【0045】
本実施の形態に係る基板112は、長さが200mmのセラミックス基板であり、搭載面には8mmピッチで24個のnUV−LEDチップ14が実装されている。次に、含有された蛍光体の量が調整されているシリコーン樹脂(I)塗布液をディスペンサーを用いて、基板112上のnUV−LEDチップ14およびワイヤー16が封止されるように塗布し、150℃、1hで加熱硬化し、高さが1mm、幅が3mm、長さが200mm未満の第1の層20を形成する。これにより、ワイヤー16が保護される。
【0046】
次に、貯蔵弾性率が5.5MPaの比較的硬質のシリコーン樹脂(II)に、蛍光体全体の濃度が1.0vol%となるように、青色蛍光体32((Ca,Sr)
5(PO
4)
3Cl:Eu
2+)、黄色蛍光体30((Ca,Sr)
7(SiO
3)
6Cl
2:Eu
2+)を重量比1:1で混合し、分散/真空脱泡してシリコーン樹脂(II)を作成した。なお、青色蛍光体32および黄色蛍光体30の混合比は、青色蛍光体:黄色蛍光体=50:50〜90:10(重量比)の範囲で適宜設定してもよい。
【0047】
次に、含有された蛍光体の量が調整されているシリコーン樹脂(II)を、開口部の幅10mm、深さ8mm、長さ200mmの略三角柱状(
図3参照)のキャビティを持つ型に充填する。このとき空気を巻き込まないように、真空充填してもよい。
【0048】
次に、シリコーン樹脂(II)を充填した前述のキャビティ型を下型とし、キャビティを塞ぐような上型を準備する。上型は、中央部に幅が4〜8mm、高さが1〜3mmの凸状を有している。これらの下型と上型を型締めした後、加熱炉に入れて150℃、1h加熱処理することでシリコーン樹脂を硬化させ、脱型することで蛍光体含有のシリコーン成形体を得る。
【0049】
したがって、シリコーン成形体は、下面に幅4〜8mm、深さ1〜3mmの溝が形成されている。この溝に透明層124となる接着性のある透明樹脂(例えば、ジメチルシリコーン樹脂が好適である。)を充填し、第1の層20が形成された基板112を透明層124の上に積層し、150℃、1h加熱処理することで透明樹脂を硬化させ、発光モジュール110が製造される。
【0050】
図4は、実施の形態で用いられる赤色蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルの一例を示す図である。
図5は、実施の形態で用いられる緑色蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルの一例を示す図である。
図6は、実施の形態で用いられる黄色蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルの一例を示す図である。
図7は、実施の形態で用いられる青色蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルの一例を示す図である。
【0051】
図4に示すように、実施の形態に係る赤色蛍光体の発光スペクトルL1のピーク波長λpは、625nm〜635nmの範囲にある。また、励起スペクトルL2の励起端波長λeは、530nm〜540nmの範囲にある。ここで、励起端波長λeとは、励起スペクトルL2における長波長側の励起強度の低下が急減し始める波長を示している。また、励起スペクトルL2の半値波長λhは、560nm〜570nmの範囲にある。ここで、半値波長λhとは、励起スペクトルL2の長波長側のピーク強度Imaxの50%の強度Ihとなる波長を示す。
【0052】
図5に示すように、実施の形態に係る緑色蛍光体の発光スペクトルL3のピーク波長λpは、520nm〜530nmの範囲にある。また、励起スペクトルL4の励起端波長λeは、450nm〜460nmの範囲にある。また、励起スペクトルL4の半値波長λhは、470nm〜480nmの範囲にある。
【0053】
図6に示すように、実施の形態に係る黄色蛍光体の発光スペクトルL5のピーク波長λpは、570nm〜580nmの範囲にある。また、励起スペクトルL6の励起端波長λeは、410nm〜420nmの範囲にある。また、励起スペクトルL6の半値波長λhは、435nm〜445nmの範囲にある。
【0054】
図7に示すように、実施の形態に係る青色蛍光体の発光スペクトルL7のピーク波長λpは、455nm〜465nmの範囲にある。また、励起スペクトルL8の励起端波長λeは、390nm〜400nmの範囲にある。また、励起スペクトルL8の半値波長λhは、400nm〜410nmの範囲にある。
【0055】
(特性評価)
上述の実施の形態における発光モジュールにおいて、平均演色係数、色温度、色度座標(cx、cy)を測定した。その結果、平均演色係数Raが97、色温度が3208K、色度座標(cx、cy)が(0.424、0.402)である発光モジュールが得られた。このように、実施の形態に係る発光モジュール110は、電球色で演色性の高い光を実現している。
【0056】
図8は、実施の形態に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
図8に示すように、実施の形態に係る発光モジュール110は、発光スペクトルの緑色や赤色の波長域の強度が黄色や青色の波長域の強度よりも大きくなっており、演色性が高く暖かみのある電球色の発光を実現していることが分かる。
【0057】
上述のように実施の形態に係る発光モジュールは、励起スペクトルが比較的長波長側まで存在する赤色蛍光体および緑色蛍光体がnUV−LEDチップに近い第1の層20に含まれているため、第2の層で励起された黄色光や青色光が第1の層で吸収されることが抑制され、色ズレや光束の低下が低減される。
【0058】
なお、第1の層に赤色蛍光体を含ませ、第2の層に緑色蛍光体、黄色蛍光体および青色蛍光体を含ませてもよい。これにより、励起スペクトルが比較的長波長側まで存在する赤色蛍光体が発光素子に近い第1の層に含まれているため、第2の層で励起された黄色光や青色光が第1の層で再吸収されることが抑制され、色ズレや光束の低下が低減される。
【0059】
次に、発光モジュールの断面形状と照度分布との関係について説明する。
図9(a)は、本実施の形態に係る発光モジュールの断面図、
図9(b)は、ドーム型の発光モジュールの断面図、
図9(c)は、SMD(Surface Mount Device)タイプの発光モジュールの断面図である。
【0060】
図9(a)に示す発光モジュール110の光波長変換層118は、nUV−LEDチップ14が配列されている方向と交差する方向の幅をW、nUV−LEDチップ14が発する光の主方向の高さをHとすると、H>0.5Wを満たす。
【0061】
図9(b)に示す発光モジュール130の光波長変換層132は、nUV−LEDチップ14が配列されている方向と交差する方向の幅をW、nUV−LEDチップ14が発する光の主方向の高さをHとすると、H=0.5Wを満たす。
【0062】
図9(c)に示す発光モジュール140は、青色LEDチップ142と、青色LEDチップ142が底部に搭載された凹部に、青色LEDチップ142を覆うように充填された透明樹脂144と、透明樹脂144に分散された黄色蛍光体146と、を備える。透明樹脂144の厚みは約0.4mmである。
【0063】
図10は、
図9(a)〜
図9(c)に示す発光モジュールのそれぞれの照度分布を示す図である。
【0064】
図10に示すラインL11は、
図9(c)に示すSMDタイプの発光モジュールの照度分布であり、発光モジュールの正面の照度が高く、照射角が大きくなるほど(正面から大きく傾いた方向になるほど)照度が急激に低下する。つまり、発光モジュール140は、照射光の指向性が非常に高いものである。
【0065】
図10に示すラインL12は、
図9(b)に示す発光モジュール130の照度分布であり、発光モジュール140と比較して照射角が大きくなった際の照度の低下は軽減されている。しかしながら、なお改善の余地がある。
【0066】
一方、
図10に示すラインL13は、
図9(a)に示す発光モジュール110の照度分布である。発光モジュール110の光波長変換層118は、複数のnUV−LEDチップ14を被覆するように構成されており、発光モジュール110の正面の第1照射領域(照射角0度)に向かう光の光度よりも、発光モジュール110の正面と隣接する発光モジュール110の正面との間の第2照射領域(照射角±60度)に向かう光の光度が大きくなるように構成された出射面118aを有する。これにより、第2照射領域に向かう光の光束を増加させることができる。
【0067】
次に、上述の発光モジュール110を複数備えた照明装置の特性について説明する。以下では、発光モジュール110と同様の2つのライン状の発光モジュールを備えた照明装置における照射性能について測定した結果に基づいて説明するが、照射性能の傾向は
図1に示す照明装置10と同様である。
【0068】
図11(a)は、照明装置200の上面図、
図11(b)は、
図11(a)における照明装置200のB−B断面図である。
【0069】
照明装置200は、幅W’が50mm、長さL’が160mm、高さH’が15mmの筐体202の底部に、長さLが150mmの2つの発光モジュール210が搭載されている。発光モジュール210同士の間隔Gは20mmである。また、発光モジュール210の発光側正面の筐体開口部であって、光波長変換層118から離間した位置には、透過率が60%の拡散板204が装着されている。これにより、より輝度むらの少ない照明装置を実現できる。
【0070】
このような構成の照明装置200において、光波長変換層118の発光素子が発する光の主方向の高さHが異なる場合の拡散板204の出射面204aでの輝度分布を測定した。
【0071】
図12(a)は、Hが10mmの発光モジュールを備えた照明装置の拡散板出射面の輝度分布を示す図、
図12(b)は、Hが7.5mmの発光モジュールを備えた照明装置の拡散板出射面の輝度分布を示す図、
図12(c)は、Hが5mmの発光モジュールを備えた照明装置の拡散板出射面の輝度分布を示す図である。
【0072】
図12(a)〜
図12(c)に示すように、輝度が最大の領域を1とした場合の輝度の最大値と輝度の最小値との差は0.036〜0.063程度と非常に小さく抑えられている。これにより、少なくとも光波長変換層118の幅Wが10mm、高さHが5mm〜10mm以上であれば、つまり、H>0.5Wを満たすことで、拡散板204の出射面204aでの輝度の均斉度が0.8以上を実現できることが分かる。好ましくは、高さHが6.5mm〜8.5mmの範囲、つまり、H≧0.65を満たすとよい。ここで、均斉度とは、発光面における輝度の最大値と輝度の最小値との比率と捉えることができる。あるいは、発光面の輝度の最大値に対する発光面の平均輝度の比率と捉えてもよい。
【0073】
このように、本実施の形態に係る照明装置200においては、複数の発光モジュール210は、ある発光モジュール210から第2照射領域(
図11(b)に示す領域R2)に向かう光と隣接する光源から第2照射領域に向かう光とによって、第1照射領域(
図11(b)に示す領域R1)と第2照射領域との輝度の差が緩和されるように構成されている。そのため、拡散板204の出射面204a側の輝度むらも低減される。
【0074】
これにより、ある程度間隔を広げて複数のライン状の発光モジュールを配列しても、輝度(照度)むらの少ない照明装置を実現できる。また、発光モジュール同士の間隔がある程度広いため、放熱性がよく、出力の高い発光モジュールを用いることで明るい照明装置を実現できる。
【0075】
また、複数の光源は、透過部材の出射面での輝度の均斉度が0.6以上となるように構成されていてもよい。これにより、発光素子が少なく、重量、サイズ、コストでより優位な輝度むらの少ない照明装置を実現できる。
【0076】
本実施の形態に係る照明装置においては、幅が150〜250mm程度、長さが250〜350mm程度の大型で高光束な発光面を実現できる。また、発光モジュールの間隔も10〜30mm程度と広げられるため、放熱性がよく、ヒートシンクや他の放熱機構を省略あるいは簡素化できるため、軽量化や装置の薄型化にも寄与する。また、発光モジュールの実装密度が低く、照明装置自体の昇温が抑えられるため、筐体に低コストな樹脂を採用することができ、軽量化によるハンドリングや運搬性の向上も図られる。
【0077】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。