特許第6798811号(P6798811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6798811エポキシカルボキシレート化合物、ポリカルボン酸化合物、それを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798811
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】エポキシカルボキシレート化合物、ポリカルボン酸化合物、それを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/17 20060101AFI20201130BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20201130BHJP
   C08J 7/046 20200101ALN20201130BHJP
【FI】
   C08G59/17
   C08F290/06
   G03F7/027 515
   G03F7/032
   G03F7/004 505
   G03F7/027 502
   !C08J7/046 ACFD
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-144235(P2016-144235)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-12802(P2018-12802A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 和義
(72)【発明者】
【氏名】小淵 香津美
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−046604(JP,A)
【文献】 特開2015−134844(JP,A)
【文献】 特開2014−210854(JP,A)
【文献】 特開平11−140144(JP,A)
【文献】 特開2005−055814(JP,A)
【文献】 特開2015−193738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性
不飽和基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(b)及び一分子中に水酸基とカルボキ
シ基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合
物(A)。
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Rはそれぞれ独立
して水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基を示し、aはそれぞれ1〜3を表す。nは
繰り返し数であり1〜10である。)
【請求項2】
請求項1記載の反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)
を反応させて得られる反応性ポリカルボン酸化合物(B)。
【請求項3】
請求項1記載の反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又は請求項2に記
載の反応性ポリカルボン酸化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
更に、反応性化合物(C)を含む請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
更に、光重合開始剤を含む請求項3又は4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
更に、着色顔料を含む請求項3〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹
脂組成物。
【請求項7】
成形用材料である請求項3〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組
成物。
【請求項8】
皮膜形成用材料である請求項3〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹
脂組成物。
【請求項9】
レジスト材料組成物である請求項3〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化
型樹脂組成物。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物でオーバーコートされ
た物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂(a)に、分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(b)及び/又は分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(A)、その酸変性物であるポリカルボン酸化合物(B)、それらを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上のために、高精度化や高密度化が求められ、それに伴いその配線板の回路自体を被覆するソルダーレジストへの要求も増々高度となり、従来の要求以上の耐熱性、熱安定性と共に低誘電特性、高い信頼性、特に高温高湿下での電気特性に優れたものが要求されている。
【0003】
ソルダーレジスト材料(成膜形成用材料)として、特許文献1には、カルボキシレート化合物が、低酸価でありながら優れた現像性を有する材料として開示されている。さらにこの化合物がレジストインキ適性を有することも開示されている。特許文献2に記載の酸変性エポキシアクリレートは、硬化後に高い強靭性を示し、ソルダーレジストとしての検討が行われている。
【0004】
従来の酸変性エポキシアクリレート類、特にビフェニル骨格を有する酸変性エポキシアクリレート類は比較的良好な分散性を示すことが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−324490号公報
【特許文献2】特開H11−140144号公報
【特許文献3】特開2005−055814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載のビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を含有する硬化型樹脂組成物は比較的信頼性の高い硬化物を得ることができるが、極めて高い信頼性を求められる電子機器等への材料に用いるにはまだ不十分である。
【0007】
特に、近年活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には温度、湿度などに対してより高い信頼性を有すること、例えば、電気特性、悪条件下での駆動、耐衝撃性に優れていることが求められているうえ、微細加工性も要求されている。この際、感度、現像性、硬化性などは従来品と同等以上の性能を有することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前述の課題を解決するため、特定のビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を用いて得られる反応性エポキシカルボキシレート(A)、さらに、前記反応性エポキシカルボキシレート(A)を用いて得られる反応性カルボン酸化合物(B)を用いた樹脂組成物は、優れた特性を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(b)及び/又は分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)に関する。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基を示し、aはそれぞれ1〜3を表す。nは繰り返し数であり1〜10である。)
【0012】
さらに、前記反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる反応性ポリカルボン酸化合物(B)に関する。
【0013】
さらに、前記反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又は前記反応性ポリカルボン酸化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0014】
さらに、反応性化合物(C)を含む前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0015】
さらに、光重合開始剤を含む前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0016】
さらに、着色顔料を含む前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0017】
さらに、成形用材料である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0018】
さらに、皮膜形成用材料である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0019】
さらに、レジスト材料組成物である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0020】
さらに、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物に関する。
【0021】
さらに、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物でオーバーコートされた物品に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエポキシカルボキシレート(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)を用いることで、光感度に優れ、良好な現像性を有し、これによる硬化物は十分な硬化性、誘電特性などの諸特性に優れ、さらに、高温高湿下で優れた電気的信頼性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は成形用材料、皮膜形成用材料、レジスト材料に好適である。特に高温高湿下での信頼性から、プリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁材料、フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジスト、感光性光導波路等の用途に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)は、下記式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(b)及び、必要に応じて一分子中に水酸基とカルボキシ基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られる。
即ち、エチレン性不飽和基と水酸基を同時に任意の割合でエポキシカルボキシレート化合物の分子鎖中に導入することで、本発明の特徴が発揮されるものである。
【化2】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基を示し、aはそれぞれ1〜3を表す。nは繰り返し数であり1〜10である。)
【0024】
本発明において用いられるエポキシ樹脂(a)は、上記一般式(1)で示される多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂である。
式中の炭素数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
nは1〜10であり、2〜8であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
【0025】
使用するエポキシ樹脂(a)の軟化点(環球法)は50〜150℃が好ましく、さらに好ましくは52〜100℃、特に好ましくは52〜95℃である。50℃以下ではべた付きが激しく、取り扱いが困難であり生産性に課題が生じる。また150℃以上の場合、成型温度に近い温度であり、成型時の流動性が確保できないことから好ましくない。
【0026】
なお、エポキシ樹脂(a)の150℃における溶融粘度は0.05〜5Pa・sが好ましく、特に好ましくは0.05〜2.0Pa・sである。粘度が高いと流動性に課題が生じ、プレス時のフロー性や埋め込み性に問題が生じる恐れがある。0.05Pa・sを切る場合、分子量が小さすぎるため、耐熱性が足りない恐れがある。
【0027】
また、エポキシ樹脂(a)に残存している全塩素量としては1000ppm以下が好ましく、より好ましくは600ppm以下であり、特に300ppm以下であることが好ましい。また熱水抽出により抽出される硫酸イオンについても1000ppm以下が好ましく、特に600ppm以下が好ましい。
これらのエポキシ樹脂(a)を用いたエポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)は全塩素含有量が従来の50%以下であるため、高温高湿下での電気特性や金属腐食性を大幅に改善することができる。
【0028】
前記エポキシ樹脂(a)は下記式(2)で表される置換又は無置換のアリルエーテル樹脂を酸化することで得ることができる。酸化の手法としては過酢酸等の過酸で酸化する方法、過酸化水素水で酸化する方法、空気(酸素)で酸化する方法、カルボン酸ペルオキシドで酸化する方法などが挙げられるが、これらに限らない。
過酸によるエポキシ化の手法としては具体的には日本国特開2006−52187号公報に記載の手法などが挙げられる。
過酸化水素水によるエポキシ化の手法においては種々の手法が適応できるが、具体的には、日本国特開昭59−108793号公報、日本国特開昭62−234550号公報、日本国特開平5−213919号公報、日本国特開平11−349579号公報、日本国特公平1―33471号公報、日本国特開2001−17864号公報、日本国特公平3−57102号公報、日本国特開2011−225654号公報、日本国特開2011−079794号公報、日本国特開2011−084558号公報、日本国特開2010−083836号公報、日本国特開2010−095521号公報等に挙げられるような手法が適応できる。
【化3】
【0029】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基を表し、aはそれぞれ1〜3を表す。nは1〜10の繰り返し数の平均値を表す。)
【0030】
前記アリルエーテル樹脂は、公知の製造方法を用いて製造することができるが、特に限定されず、例えば、対応するフェノール樹脂とアリルハライド又はメタリルハライドなどとを、溶媒中、塩基の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0031】
本発明において用いられる分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物(b)は、活性エネルギー線への反応性を付与させるために用いられる。このような化合物にはモノカルボン酸化合物、ポリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0032】
モノカルボン酸化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。上記においてアクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0033】
ポリカルボン酸化合物としては、一分子中に複数の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸と複数のエポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0034】
これらのうち最も好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が挙げられる。一分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)としては、化合物中に水酸基を有さないものが好ましい。
【0035】
本発明において用いられる一分子中に一個以上の水酸基と一個以上のカルボキシ基を合わせもつ化合物(c)は、カルボキシレート化合物中に水酸基を導入することを目的として用いられる。これらには、一分子中に一個の水酸基と一個のカルボキシ基を合わせもつ化合物、一分子中に二つ以上の水酸基と一個のカルボキシ基を合わせもつ化合物、一分子中に一個以上の水酸基と二個以上のカルボキシ基を合わせもつ化合物がある。
【0036】
一分子中に一個の水酸基と一個のカルボキシ基を合わせもつ化合物(c)としては、例えばヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。一分子中に二つ以上の水酸基と一個のカルボキシ基を合わせもつ化合物(c)としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。一分子中に一個以上の水酸基と二個以上のカルボキシ基を合わせもつ化合物としてはヒドロキシフタル酸等が挙げられる。
【0037】
これらのうち、水酸基は一分子中に二個以上含まれるものが、本発明の効果を考慮すると好ましい。さらに、カルボキシ基は一分子中一個であるものがカルボキシレート化反応の安定性を考慮すると好ましい。最も好ましくは、一分子中に二個の水酸基と一個のカルボキシ基を有するもの好ましい。原材料の入手を考慮すれば、ジメチロールプロピオン酸とジメチロールブタン酸が特に好適である。一分子中に一個以上の水酸基と一個以上のカルボキシ基を合わせもつ化合物(c)としては、化合物中に重合可能なエチレン性不飽和基を有さないものが好ましい。
【0038】
これらのうち、前記のエポキシ樹脂(a)と前記化合物(b)及び/又は前記化合物(c)の反応の安定性を考慮すると、前記化合物(b)及び/又は前記化合物(c)が有するカルボキシ基が1つであることが好ましく、モノカルボン酸であることが好ましく、モノカルボン酸とポリカルボン酸を併用する場合でも、モノカルボン酸の総計モル量/ポリカルボン酸の総計モル量で表される値が15以上であることが好ましい。
【0039】
この反応におけるエポキシ樹脂(a)と前記化合物(b)および/又は前記化合物(c)のカルボン酸総計の仕込み割合としては、用途に応じて適宜変更される。エポキシ樹脂(a)の全てのエポキシ基をカルボキシレート化すると、未反応のエポキシ基が残存しないために、反応性カルボキシレート化合物(A)の保存安定性は高い。未反応のエポキシ基がない場合は、反応性カルボキシレート化合物(A)の反応性は導入した二重結合に依存する。
【0040】
一方、前記化合物(b)及び/又は前記化合物(c)のカルボン酸化合物の仕込み量を減量し未反応の残存エポキシ基を残すことで、導入した二重結合の反応性と、未反応のエポキシ基の反応性、例えば光カチオン触媒による重合反応や熱重合反応を複合的に利用すること(複合硬化)も可能である。しかし、この場合は反応性カルボキシレート化合物(A)の保存及び製造条件の検討には注意を要する。
【0041】
未反応のエポキシ基を有さない反応性カルボキシレート化合物(A)を製造する場合、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基が十分に反応する量の前記化合物(b)又は前記化合物(b)および前記化合物(c)を用いればよい。本発明において、前記化合物(b)および/又は前記化合物(c)の総計が、前記エポキシ樹脂(a)1当量に対し90〜120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりもカルボン酸化合物の仕込み量が多い場合には、過剰のカルボン酸化合物(b)又は(b)および(c)が残存してしまう恐れがあるために好ましくない。
【0042】
また、未反応のエポキシ基を有する反応性カルボキシレート化合物(A)を製造する場合、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基が残る量の前記化合物(b)又は前記化合物(b)および前記化合物(c)を用いればよい。本発明において、前記化合物(b)又は(b)および(c)の総計が、前記エポキシ樹脂(a)1当量に対し20〜90当量%であることが好ましい。カルボン酸化合物の仕込み量が少なすぎる場合、複合硬化の効率が低くなる。この場合は、反応中のゲル化や、反応性カルボキシレート化合物(A)の経時安定性に対して十分な注意が必要である。
【0043】
反応性カルボキシレート化合物(A)を製造する場合、一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシ基を合わせもつ化合物(b)と一個以上の水酸基と一個以上のカルボキシ基を合わせもつ化合物(c)の使用比率は、カルボキシ基に対するモル比において(b):(c)が9:1〜1:9であり、さらには4:6〜8:2の範囲が好ましい。この範囲であれば前記化合物(b)が少なすぎる場合の感度の低下を防ぐことができ、また前記化合物(c)が少なすぎる場合の(c)の効果が希薄になるのを防ぐことができる。本発明におけるカルボキシレート化反応(以下、「本カルボキシレート化反応」という。)において、(b)および(c)の仕込みの順序に特段の限定はない。
【0044】
本カルボキシレート化反応は、溶剤は必ずしも必要でないが、溶剤で希釈して反応させることもできる。ここで用いることが出来る溶剤としては、前記エポキシ樹脂(a)の合成で用いられる溶剤と同一でよく、本カルボキシレート化反応に対して反応を示さない溶剤であれば特に限定はない。溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるが、好ましくは反応物の総量の30〜90重量%、このましくは50〜80重量%である。
【0045】
用いることができる溶剤として、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。 また、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。 また、エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。また、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0046】
このほかにも、反応性カルボキシレート化合物(A)、反応性ポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化型樹脂組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0047】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち上記エポキシ樹脂(a)、前記化合物(b)及び/又は前記化合物(c)、及び場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0048】
また、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0049】
本反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは2mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
【0050】
こうして得られた本発明の反応性カルボキシレート化合物(A)の好ましい分子量の範囲としては、GPC測定におけるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1,000から30,000であり、より好ましくは1,500から20,000である。
この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されず、またこれよりも大きすぎる場合には、粘度か高くなり塗工等が困難となる。
【0051】
本発明の反応性カルボキシレート化合物(A)には、下記式(3)で表される構造を含むと考えられるが、これらに限るものではない。
【化4】
(式中、R、Rやaは、式(1)中のR、Rやaと同じである。)
【0052】
次に、本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(B)について説明する。
本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(B)は反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる。
【0053】
以下において、酸付加工程について詳細に説明する。酸付加工程は、前工程において得られた反応性カルボキシレート化合物(A)に必要に応じてカルボキシ基を導入し、反応性ポリカルボン酸(B)を得ることを目的として行われる。カルボキシ基を導入する理由としては、例えばレジストパターニング等が必要とされる用途において、活性エネルギー線非照射部にアルカリ水への可溶性を付与させる、また金属、無機物等への密着性を付与させる等の目的を持って導入される。具体的には、カルボキシレート化反応により生じた水酸基に多塩基酸無水物(d)を付加反応させることで、エステル結合を介してカルボキシル基を導入させる。
【0054】
多塩基酸無水物(d)を付加させる反応は、前記カルボキシレート化反応液に多塩基酸無水物(d)を加えることにより行うことができる。添加量は用途に応じて適宜変更される。
【0055】
用いることができる多塩基酸無水物(d)としては、例えば、一分子中に酸無水物構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸または、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0056】
本発明のポリカルボン酸化合物(B)をアルカリ現像型のレジストとして用いる場合は、多塩基酸無水物(d)を最終的に得られる反応性ポリカルボン酸化合物(B)の固形分酸価(JIS K5601−2−1:1999に準拠)が30〜120mg・KOH/g、より好ましくは40〜105mg・KOH/g、となる計算値を仕込むことが好ましい。このときの固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性が良好な現像性を示す。即ち、アルカリ水溶性現像性が良好とは、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅が広く、また過剰の酸無水物が残留しないことをいう 。
【0057】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち前記エポキシ化合物(a)、前記化合物(b)及び/又は前記化合物(c)から得られたカルボキシレート化合物(A)、及び多塩基酸無水物(d)、場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0058】
該酸付加反応は、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、エポキシ樹脂(a)の合成及びカルボキシレート化反応で用いられる溶剤と同一でよく、酸付加反応に対して反応を示さない溶剤であれば特に限定はない。また、前工程であるカルボキシレート化反応で溶剤を用いて製造した場合には、その両反応に反応を示さないことを条件に、溶剤を除くことなく直接次工程である酸付加反応に供することもできる。
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるが、好ましくは反応物の総量の90〜30重量%、より好ましくは80〜50重量%である。
【0059】
該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
また、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
また、エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
また、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0060】
このほかにも、後記する反応性化合物(C)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化型組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0061】
また、熱重合禁止剤等は、前記カルボキシレート化反応における例示と同様のものを使用することが好ましい。
【0062】
本反応は、適宜サンプリングしながら、反応物の酸価が、設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0063】
本発明のポリカルボン酸化合物(B)は、構造の例として下記式(4)で表される化合物を含むと考えられるが、これに限るものではない。
【化5】
(式中のR、Rやaは、式(1)中のR、Rやaと同じである。)
【0064】
次に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、前記反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又は前記反応性ポリカルボン酸化合物(B)を含有する。
【0065】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中に反応性カルボキシレート化合物(A)及び/又は反応性ポリカルボン酸化合物(B)は5〜97重量%であり、好ましくは10〜87重量%である。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、さらに反応性化合物(C)を含有してもよい。さらに、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
前記化合物(A)及び(B)以外の反応性化合物(C)を含む場合はその配合量は3〜95重量%であり、好ましくは3〜90重量%である。必要に応じてその他の成分を、70重量%程度を上限に含んでもよい。
【0067】
本発明において使用しうる反応性化合物(C)としては前記反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)及び反応性ポリカルボン酸化合物(B)以外のものが好ましい。具体例としては、ラジカル反応型のアクリレート類、カチオン反応型のその他エポキシ化合物類、その双方に感応するビニル化合物類等のいわゆる反応性オリゴマー類が挙げられる。
【0068】
アクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート、その他エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0069】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0071】
ビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0072】
さらに、いわゆる反応性オリゴマー類としては、活性エネルギー線に官能可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に官能可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、その他エポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に官能可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0073】
また、カチオン反応型単量体としては、一般的にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定はない。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA ジグリジジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4,−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6110」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製「ELR−4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4,−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6128」等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0074】
これらのうち、反応性化合物(C)としては、ラジカル硬化型であるアクリレート類が最も好ましい。カチオン型の場合、カルボン酸とエポキシが反応してしまうため2液混合型にする必要が生じる。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中に反応性カルボキシレート化合物(A)及び/又は反応性ポリカルボン酸化合物(B)を5〜97重量%、好ましくは10〜87重量%、(A)及び(B)以外の反応性化合物(C)は3〜95重量%、さらに好ましくは3〜90重量%を含む。必要に応じてその他の成分を70重量%程度を上限に含んでいてよい。
【0076】
本発明の反応性カルボキシレート化合物(A)及び/又は反応性ポリカルボン酸化合物(B)は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の用途に応じて適宜使い分けることができる。例えば、同じソルダーレジスト用途でも現像せず、印刷法によりパターンを成形する場合や溶剤等により未反応部位を流去させる、溶剤現像型の場合にはカルボキシレート化合物(A)を用い、アルカリ水により現像させる場合には反応性ポリカルボン酸化合物(B)を用いる。一般的にアルカリ水現像型の方が微細なパターンを作りやすいため、この用途には反応性ポリカルボン酸化合物(B)を用いる場合が多い。もちろん(A)、(B)を要求される用途・性能に応じて、どのような組み合わせで併用してもよい。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。ここで活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、α線、β線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0078】
本発明において用いうる着色顔料とは、本発明の活性エネルギー線樹脂組成物を着色材料とするために用いられる。本発明の反応性カルボキシレート化合物(A)、反応性ポリカルボン酸化合物(B)、は優れた顔料への親和性、即ち分散性を有するため分散が良好に進行し、顔料濃度を濃くすることができる。また現像を必要とされる組成物においては、分散がより好適な状態にあるために、良好なパターニング特性が発揮され、また現像溶解部における現像残渣も少ないため、好適である。
【0079】
着色顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック等、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらのうちカーボンブラックの分散性が高くもっとも好ましい。
【0080】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付けて物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光などを照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。
【0081】
具体的な用途としては、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行うナノインプリント材料、さらには特に熱的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0082】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用される。具体的な用途としては、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等これに該当する。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフィルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆるドライフィルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0083】
反応性ポリカルボン酸化合物(B)のカルボキシ基は基材への密着性を高める。さらに、反応性ポリカルボン酸化合物(B)がアルカリ水溶液に可溶性であることから、反応性ポリカルボン酸化合物(B)を含む本発明の組成物はプラスチック基材、若しくは金属基材を被覆するためのアルカリ水現像型レジスト材料組成物としても好ましい。
【0084】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。具体的には、照射部、または未照射部を何らかの方法、例えば溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させるなどして除去し、描画を行うことを目的として用いられる組成物である。
【0085】
本発明のレジスト用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば特に、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0086】
特に好適な用途は、強靭な硬化物を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途、顔料分散性が良好であるとの特性を生かして、印刷インキ、カラーフィルタ等のカラーレジスト、特にブラックマトリックス用レジストである。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、エネルギー線による硬化反応前の機械的強度が求められるドライフィルム用途にも利用される。即ち、本発明で用いられる前記エポキシ樹脂(a)の水酸基、エポキシ基のバランスが特定の範囲にあるため、本発明の反応性カルボキシレート化合物(A)が比較的高い分子量であるにも関わらず、良好な現像性を発揮する。
【0088】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物とは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させたものを指す。
【0090】
この他、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種用途に適合させる目的で、樹脂組成物中に70質量%を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては光重合開始剤、その他の添加剤、着色材料、また塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤等が挙げられる。下記に使用しうるその他の成分を例示する。
【0091】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0092】
また、カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0093】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート(三新化学工業社製サンエイドSI−60L/SI−80L/SI−100Lなど)等が挙げられ、ルイス酸のヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられ、ルイス酸のスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート(Union Carbide社製Cyracure UVI−6990など)、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(Union Carbide社製Cyracure UVI−6974など)等が挙げられ、ルイス酸のホスホニウム塩としては、トリフェニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0094】
その他のハロゲン化物としては、2,2,2−トリクロロ−[1−4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO 社製Trigonal PIなど)、2.2−ジクロロ−1−4−(フェノキシフェニル)エタノン(Sandoz 社製Sandray 1000など)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製BMPSなど)等が挙げられる。トリアジン系開始剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine Aなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine PMSなど)、2,4−トリクロロメチル−(ピプロニル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine PPなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン(Panchim社製Triazine Bなど)、2[2’(5”−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製など)、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0095】
ボレート系開始剤としては、日本感光色素製NK−3876及びNK−3881等が挙げられ、その他の光酸発生剤等としては、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾールなど)、2,2−アゾビス(2−アミノ−プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製V50など)、2,2−アゾビス[2−(イミダソリン−2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製VA044など)、[η−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,η)−(メチルエチル)−ベンゼン]鉄(II)ヘキサフロロホスホネート(Ciba Geigy社製Irgacure 261など)、ビス(y5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]チタニウム(Ciba Geigy社製CGI−784など)等が挙げられる。
【0096】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いても良い。また、ラジカル系とカチオン系の双方の開始剤を併せて用いても良い。開始剤は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0097】
その他の添加剤としては、例えばメラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することができる。
【0098】
また、その他の顔料材料としては例えば、着色を目的としないもの、いわゆる体質顔料を用いることもできる。例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0099】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆるイナートポリマー)、たとえばその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらは樹脂組成物中に40質量%までの範囲において用いることが好ましい。
【0100】
特に、ソルダーレジスト用途に前記反応性ポリカルボン酸化合物(B)を用いようとする場合には、活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類として公知一般のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これは活性エネルギー線によって反応、硬化させた後も前記化合物(B)に由来するカルボキシ基が残留してしまい、結果としてその硬化物は耐水性や加水分解性に劣ってしまう。エポキシ樹脂を用いることで残留するカルボキシ基をさらにカルボキシレート化し、さらに強固な架橋構造を形成させる。
【0101】
また使用目的に応じて、樹脂組成物中に50質量%、さらに好ましくは35質量%までの範囲において揮発性溶剤を添加することもできる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。
【0103】
軟化点、エポキシ当量、酸価、全塩素量は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量:JIS K 7236:2001に準じた方法で測定した。
2)軟化点:JIS K 7234:1986に準じた方法で測定
3)酸価:JIS K 0070:1992に準じた方法で測定
4)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:TSKGEL Super HZM−N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン); 0.35ml毎分.40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
5)全塩素量:樹脂を燃焼し、ガス純水に吸着後イオンクロマト(機器、測定条件)にて測定した。
【0104】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水25質量部、ジメチルスルホキシド500質量部、フェノール樹脂(フェノール−ビフェニレン型 水酸基当量200g/eq.軟化点65℃)500質量部を加え、45℃に昇温し溶解させた。次いで38〜40℃に冷却、そのままフレーク状の苛性ソーダ(純度 99% 東ソー製)130.0質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.3モル当量)を60分かけて添加した。その後、さらにメタリルクロライド(純度99% 東京化成工業製)294.3質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.3モル当量)を60分かけて滴下し、そのまま38〜40℃で5時間、60〜65℃で1時間反応を行った。
反応終了後、ロータリーエバポレータにて125℃以下で加熱減圧下、水やジメチルスルホキシド等を留去した。そして、メチルイソブチルケトン740質量部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した。その後油層からロータリーエバポレータを用いて、減圧下、窒素バブリングしながら溶剤類を留去することで、n=2.0である前記式(2)のメタリルエーテル樹脂(以下に、「MEP」という)600質量部を得た。
【0105】
(合成例2)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、合成例1で得られたMEPを含む酢酸エチル溶液(MEPの濃度:50質量%)1000質量部を投入し、さらにMEP1モル部当たり、タングステン酸化合物としてのタングステン酸カリウムを0.04モル部、リン酸化合物としてのリン酸カリウムを0.06モル部、そして、MEP100質量部当たり有機カルボン酸としての酢酸を60.0質量部投入し、この混合液を50℃に昇温した。昇温後、攪拌しながら、35%過酸化水素水溶液を、MEP中のメタリル基1モル当量に対し、過酸化水素が2モル当量となる量を20分間かけて添加した。添加終了後、そのまま50℃で24時間攪拌した。
ついで分液洗浄処理を行い、水相を分離することでエポキシ樹脂(a1)を含む溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量は274g/eq.、軟化点59℃、150℃におけるICI溶融粘度は0.07Pa・s、全塩素分は10ppm以下であった。
【0106】
(実施例1):反応性カルボキシレート化合物(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、エポキシ樹脂(a)として合成例2で得られたエポキシ樹脂(a1)を274g、前記化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を表1中に記載の量、前記化合物(c)としてジメタノールプロピオン酸(略称DMPA、Mw=134)を表1中に記載の量、触媒としてトリフェニルフォスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分が80%となるように加え、100℃24時間反応させ、本発明の反応性エポキシカルボキシレート化合物(A1)溶液を得た。得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A1)溶液の全塩素分は10ppm以下であった。重量平均分子量は1150であった。
反応終点は固形分酸価(AV)にて決定し、測定値を表1中に記載した。酸価測定は、反応溶液にて測定し固形分としての酸価に換算した。
【0107】
(比較例1):反応性カルボキシレート化合物の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、エポキシ樹脂(a)としてフェノール−ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製NC−3000H、軟化点70℃、エポキシ当量288g/eq、全塩素量500ppm)を288g、前記化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を、前記化合物(c)としてジメタノールプロピオン酸(略称DMPA、Mw=134)をそれぞれ表1中に記載の量を加え、 触媒としてトリフェニルフォスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分が80%となるように加え、100℃24時間反応させ、比較用のカルボキシレート化合物(A2)452gを得た。重量平均分子量は1400であった。
反応終点は固形分酸価(AV)にて決定し、測定値を表1に記載した。酸価測定は、反応溶液にて測定し固形分としての酸価に換算した。
【0108】
(表1)
【0109】
(実施例2):反応性ポリカルボン酸化合物(B)の合成
実施例1において得られた反応性カルボキシレート化合物(A1)溶液434gに、多塩基酸無水物(d)としてテトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA)を表2中に記載の量を、溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱し酸付加反応させ本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(B1)溶液を得た。得られた反応性ポリカルボン酸化合物(B1)溶液の全塩素分は10ppm以下であった。
【0110】
(比較例2):反応性ポリカルボン酸化合物の合成
比較例1において得られたカルボキシレート化合物(A2)溶液452gに、多塩基酸無水物(d)としてテトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA)表2中記載量、及び溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱し酸付加反応させ反応性ポリカルボン酸化合物溶液(B2)を得た。得られた反応性ポリカルボン酸化合物溶液の全塩素分は300ppmであった。
【0111】
(表2)
【0112】
(実施例3、比較例3):樹脂組成物の調製
実施例2、比較例2で得られた反応性ポリカルボン酸化合物(B1、B2)を56.73g、その他反応性化合物(C)としてDPCA−60(商品名:日本化薬(株)製 多官能アクリレート単量体)5.67g、光重合開始剤としてイルガキュアー907(BASF製)を2.92g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)を0.58g、硬化成分としてNC−3000H(日本化薬製)を17.54g、熱硬化触媒としてメラミンを0.73g及び濃度調整溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを5.67g加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させ樹脂組成物を得た。
【0113】
(実施例4、比較例4)
実施例4、比較例4で得られた樹脂組成物をワイヤーバーコータ#20を用い、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ20μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付け、ドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをポリイミドプリント基板(銅回路厚:12μm、ポリイミドフィルム厚:25μm)に、温度80℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
【0114】
次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスク、および感度を見積もるために、コダック製ステップタブレットNo.2を通して500mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、ドライフイルム上のフイルムを剥離し剥離状態を確認した。その後1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化膜(物)について感度、現像性、硬化性、誘電率、誘電正接を下記の測定条件に基づき測定した。その結果を表3に表す。
【0115】
・感度評価:感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、何段目の濃度部分までが現像時に残存したかで判定した。段数(値)が大きいほうがタブレットの濃部で高感度と判定される(単位:段)。
・現像性評価:現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に現像されきるまでの時間、いわゆるブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。
・硬化性評価:硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度をもって示した。評価方法は、JIS K5600−5−4:1999に準拠した。
・誘電率評価:誘電正接評価:(株)関東電子応用開発製の1GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にてテストを行った。ただし、サンプルサイズは幅1.7mm×長さ100mmとし、厚さは1.7mmで試験を行った。(誘電率単位:%)
【0116】
(表3)
【0117】
上記の結果から、本発明におけるレジスト組成物は、優位な差がみられなかったものの、紫外線等の活性エネルギー線等により硬化し、光感度に優れ、良好な現像性を有し、得られた硬化物は十分な硬化性、誘電特性などの諸特性に優れていることが確認できた。
【0118】
(実施例5、比較例5)
温度、湿度に対する信頼性評価として高温高湿下での電気特性を評価した。実施例4、比較例4で得られた評価基盤(硬化膜)を120℃、85%R.H.の高温高湿槽にて、DC100Vのバイアス電圧を印加し、100時間後、150時間後のマイグレーション現象の有無を確認した。
【0119】
(表4)
【0120】
前記の結果から、比較用の樹脂組成物を用いた硬化物に対して、本発明の樹脂組成物を用いた硬化物は、高温高湿下での電気特性評価において優れた結果が得られた。
【0121】
高温高湿下での電気信頼性評価では、120℃、85%R.H.の環境下、DC100Vのバイアス電圧を150時間かけても極わずかの変化に留まることが求められる。これらのことから、式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)を用いた本発明のエポキシカルボキシレート化合物は、比較用のエポキシカルボキシレート化合物を用いた場合と比較して、同等の感度、現像性、硬化性を有しつつ、さらに高温高湿下で優れた電気的信頼性を有することがわかる。