特許第6798813号(P6798813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金テックスエンジ株式会社の特許一覧

特許6798813電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法
<>
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000002
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000003
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000004
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000005
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000006
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000007
  • 特許6798813-電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798813
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/09 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   H02K15/09
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-152091(P2016-152091)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-23204(P2018-23204A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】原 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】稲谷 忠
(72)【発明者】
【氏名】権藤 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 俊一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄二
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−118566(JP,A)
【文献】 特開2000−184668(JP,A)
【文献】 特開昭62−092745(JP,A)
【文献】 特開2016−039190(JP,A)
【文献】 特開2016−077887(JP,A)
【文献】 特開2017−022951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線を所定の形状に成形するのに用いられる電機子巻線の型取り用治具であって、
板状のベースと、
前記ベース上に設けられ、前記電機子巻線の所定の形状に倣う形状部を有し、少なくとも一部が樹脂製である型取り部とを備え
前記電機子巻線は波巻型であり、山形形状をなすエンド部と、前記エンド部の両端に連続して、相互に平行に延びる一対の直線部と、前記一対の直線部に連続して適宜な角度で延出する一対の延出部とを有し、
前記型取り部は、前記エンド部に倣う形状部を有するエンド部用部品と、前記直線部に倣う形状部を有する直線部用部品と、前記延出部に倣う形状部を有する延出部用部品とに少なくとも分割して構成され、
少なくとも前記エンド用部品及び前記延出部用部品が樹脂製であることを特徴とする電機子巻線の型取り用治具。
【請求項2】
直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線を所定の形状に成形するのに用いられる電機子巻線の型取り用治具であって、
板状のベースと、
前記ベース上に設けられ、前記電機子巻線の所定の形状に倣う形状部を有し、少なくとも一部が樹脂製である型取り部とを備え
前記電機子巻線は重ね巻型であり、山形形状をなすエンド部と、前記エンド部の両端に連続して、相互に平行に延びる一対の直線部と、前記一対の直線部に連続して、山形形状をなす一対の延出部とを有し、
前記型取り部は、前記エンド部に倣う形状部を有するエンド部用部品と、前記直線部に倣う形状部を有する直線部用部品と、前記延出部に倣う形状部を有する延出部用部品とに少なくとも分割して構成され、
少なくとも前記エンド用部品及び前記延出部用部品が樹脂製であることを特徴とする電機子巻線の型取り用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電機子巻線の型取り用治具を作製する方法であって、
前記型取り部の樹脂製部を3Dプリンタにより造形することを特徴とする電機子巻線の型取り用治具の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線(アーマチュアコイル)を所定の形状に成形するのに用いられる電機子巻線の型取り用治具及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、例えば圧延機の圧延ロールの駆動源として、回転速度制御が容易である等の理由から直流電動機が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−264967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製鉄所で使用される直流電動機は、定期的に保守点検され、必要に応じて補修が行われる。直流電動機の補修の一つとして、その電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線を交換することが行われる。
ここで、直流電動機においては、例えば図7に示すように、回転子側の円筒状の電機子鉄心200にスロット201と呼ばれる溝を設け、予め所定の形状に成形された電機子巻線Cをスロット201に埋め込む構造が採用される(特許文献1等を参照のこと)。
【0005】
電機子巻線Cを交換する場合、熟練技能者が現物の電機子鉄心200等をスケッチして、電機子巻線Cの所定の形状に倣う形状部を有する木型(治具)を作製する。そして、この木型を用いて、新たな電機子巻線Cとなる巻線素材を所定の形状に成形する。
しかしながら、木型の作製には高度な技術と熟練した技能が必要であり、熟練技能者しか行えず、その後継者の育成も困難であるという実情がある。また、木材を削って木型としなければならず、その作製に時間がかかってしまう。しかも、木型ではその再現性が高いとはいえず、例えば木型の一部に変形や欠損が生じたとき、熟練技能者が同じ木型を作製しなおさなければならない。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、電機子巻線の型取り用治具を、作製しやすく、再現性の高いものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電機子巻線の型取り用治具は、直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線を所定の形状に成形するのに用いられる電機子巻線の型取り用治具であって、板状のベースと、前記ベース上に設けられ、前記電機子巻線の所定の形状に倣う形状部を有し、少なくとも一部が樹脂製である型取り部とを備え、前記電機子巻線は波巻型であり、山形形状をなすエンド部と、前記エンド部の両端に連続して、相互に平行に延びる一対の直線部と、前記一対の直線部に連続して適宜な角度で延出する一対の延出部とを有し、前記型取り部は、前記エンド部に倣う形状部を有するエンド部用部品と、前記直線部に倣う形状部を有する直線部用部品と、前記延出部に倣う形状部を有する延出部用部品とに少なくとも分割して構成され、少なくとも前記エンド用部品及び前記延出部用部品が樹脂製であることを特徴とする。
本発明の他の電機子巻線の型取り用治具は、直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線を所定の形状に成形するのに用いられる電機子巻線の型取り用治具であって、板状のベースと、前記ベース上に設けられ、前記電機子巻線の所定の形状に倣う形状部を有し、少なくとも一部が樹脂製である型取り部とを備え、前記電機子巻線は重ね巻型であり、山形形状をなすエンド部と、前記エンド部の両端に連続して、相互に平行に延びる一対の直線部と、前記一対の直線部に連続して、山形形状をなす一対の延出部とを有し、前記型取り部は、前記エンド部に倣う形状部を有するエンド部用部品と、前記直線部に倣う形状部を有する直線部用部品と、前記延出部に倣う形状部を有する延出部用部品とに少なくとも分割して構成され、少なくとも前記エンド用部品及び前記延出部用部品が樹脂製であることを特徴とする。
本発明の電機子巻線の型取り用治具の作製方法は、本発明の電機子巻線の型取り用治具を作製する方法であって、前記型取り部の樹脂製部を3Dプリンタにより造形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電機子巻線の型取り用治具を、作製しやすく、再現性の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具を示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具を用いて、電機子巻線を所定の形状に成形する手順を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具の変形例を示す斜視図である。
図4】第2の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具を示す斜視図である。
図5】第2の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具を用いて、電機子巻線を所定の形状に成形する手順を示す斜視図である。
図6】第2の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具の変形例を示す斜視図である。
図7】直流電動機における電機子鉄心及び電機子巻線の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2を参照して、第1の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具1を説明する。電機子巻線の型取り用治具1は、直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線100を所定の形状に成形する、より詳しくは、電機子巻線100を、回転子側の円筒状の電機子鉄心に設けられたスロットに埋め込むのに適した形状に成形するのに用いられる。
【0011】
本実施形態で対象とする電機子巻線100は波巻型であり、図2(C)に示すように、山形形状をなすエンド部101と、エンド部101の両端に連続して、相互に平行に延びる一対の直線部102L、102Rと、一対の直線部102L、102Rに連続して適宜な角度で延出する一対の延出部103L、103Rとを有する。電機子巻線100は、例えば複数の板状導体を積層させ、それを絶縁体で被覆した矩形断面を有する。
このようにした電機子巻線100は、一対の直線部102L、102Rが電機子鉄心のスロットに挿入され、一対の延出部103L、103Rが整流子に接続される。
なお、本実施形態でいう各方向は、図1に示すように型取り用治具1を平面に置いた状態で、一対の直線部102L、102R(一対の直線部用部品5L、5R)が配置される方向を左右とした方向とする。
【0012】
型取り用治具1は、板状の木材製のベース2と、電機子巻線100の形状に倣う凹凸や曲面等の形状部を有する樹脂製の型取り部3とを備え、型取り部3がベース2上に固定される。型取り部3は複数の部品に分割されており、エンド部101に倣う形状部を有する部品4(エンド部用部品と呼ぶ)と、直線部102Lに倣う形状部を有する部品5L(直線部用部品と呼ぶ)と、直線部102Rに倣う形状部を有する部品5R(直線部用部品と呼ぶ)と、延出部103Lに倣う形状部を有する部品6L(延出部用部品と呼ぶ)と、延出部103Rに倣う形状部を有する部品6R(延出部用部品と呼ぶ)とに分割されている。
【0013】
図2を参照して、第1の実施形態に係る型取り用治具1を用いて、電機子巻線100を所定の形状に成形する手順を説明する。
まず、図2(A)に示すように、エンド部用部品4を利用して、電機子巻線100のエンド部101を成形する。
エンド部用部品4は、左右から中央部に向かって曲面状に下がる傾斜面を有する。左右の傾斜面で傾斜の度合いが異なり、中央部に前後に延びる段差面9が形成される。電機子巻線100となる1本の巻線素材を上下に重ねるようにして折り曲げて、その折り曲げ部104を段差面9に沿わせる。
また、エンド部用部品4は、傾斜面よりも一段高くなるように配置され、エンド部101の山形形状に倣う凸部10を有する。折り曲げ部104を段差面9に沿わせた状態で、電機子巻線100を凸部10に沿わせるようにして左右に広げる。図2の例では、折り曲げ部104において上にある電機子巻線100を左方向に、下にある電機子巻線100を右方向に広げる。
【0014】
次に、図2(B)に示すように、直線部用部品5L、5Rを利用して、電機子巻線100の直線部102L、102Rを成形する。
直線部用部品5L、5Rは、前後にまっすぐに延びるように配置されており、エンド部用部品4を利用して左右に広げた電機子巻線100を、直線部用部品5L、5Rに沿わせるようにしてまっすぐに延伸させる。直線部用部品5L、5Rは傾斜面を有しており、一対の直線部102L、102Rは八の字状に開いたかたちでまっすぐに延伸する。直線部102L、102Rを挿入するスロットは円筒状の電機子鉄心の中心に向かうように配置されるので、スロットに挿入できるように直線部102L、102Rに適度の角度を持たせるものである。
【0015】
次に、図2(C)に示すように、延出部用部品6L、6Rを利用して、電機子巻線100の延出部103L、103Rを成形する。
延出部用部品6L、6Rは、内面が湾曲面をなす壁状とされ、その内面の前方に、電機子巻線100を上方向に曲げるための凸部11が設けられている。直線部用部品5L、5Rに沿わせた電機子巻線100を、凸部11に沿わせるようにして上方向に曲げる。
また、延出部用部品6L、6Rの内面の上部には、電機子巻線100を水平方向に折り曲げるための凸部12が設けられている。凸部11により上方向に曲げられた電機子巻線100を、凸部12に沿わせるようにして水平方向に曲げる。
【0016】
以上により、電機子巻線100を、エンド部101と、一対の直線部102L、102Rと、一対の延出部103L、103Rとを有する波巻型に成形することができる。
なお、エンド部用部品4及び一対の延出部用部品6L、6Rの適所には挿入穴7が形成されており、ピン8を挿入して電機子巻線100が動かないように固定することができる。
また、電機子巻線100を型取り部3の各部に沿わせるときには、電機子巻線100を木槌等でたたきながら変形させればよい。
【0017】
以上のように、型取り用治具1を、板状の木材製のベース2と、電機子巻線100の形状に倣う形状部を有する樹脂製の型取り部3とに分けて構成するようにしたので、型取り用治具1を、作製しやすく、再現性の高いものとすることができる。
より詳細に述べれば、板状のベース2の作製には高度な技術や熟練した技能は必要とされず、熟練技能者でなくても簡単に作製することができる。
一方、型取り部3は、電機子巻線100の形状に倣う凹凸や曲面等を持たせる必要があるので、その作製には高度な技術や熟練した技能が必要となる。本実施形態では、型取り部3を樹脂製とし、3Dプリンタにより造形する。この場合、3Dプリンタに与えるデータは、例えば熟練技能者が現物の電機子鉄心等の各種寸法を的確に把握したものをデータ化する必要があるが、データ化の後は、3Dプリンタにより簡単に型取り部3を造形することができる。しかも、型取り部3を複数の部品4、5L、5R、6L、6Rに分割して適宜なサイズとすることにより、汎用の3Dプリンタで各部品4、5L、5R、6L、6Rを短時間に造形することが可能となる。また、いったんデータ化しておけば、以降は同じ型取り部3を簡単に造形することができ、再現性が高い。例えば型取り部3を構成するいずれかの部品に変形や欠損が生じたときにも、その部品を3Dプリンタにより簡単に造形しなおすことができる。
【0018】
なお、型取り部3の分割の仕方は限定されるものではない。例えば図3に示すように、エンド部用部品4をその中央部で左右にさらに細分化する(エンド部用部品4L、4R)等してもよい。
【0019】
(第2の実施形態)
図4及び図5を参照して、第2の実施形態に係る電機子巻線の型取り用治具51を説明する。電機子巻線の型取り用治具51は、直流電動機の電機子鉄心に組み付けられる電機子巻線150を所定の形状に成形する、より詳しくは、電機子巻線150を、回転子側の円筒状の電機子鉄心に設けられたスロットに埋め込むのに適した形状に成形するのに用いられる。
【0020】
本実施形態で対象とする電機子巻線150は重ね巻型であり、図5(C)に示すように、山形形状をなすエンド部151と、エンド部151の両端に連続して、相互に平行に延びる一対の直線部152L、152Rと、一対の直線部152L、152Rに連続して、エンド部151と同様の山形形状をなす一対の延出部153L、153Rとを有する。電機子巻線150は、例えば複数の板状導体を積層させ、それを絶縁体で被覆した矩形断面を有する。
このようにした電機子巻線150は、一対の直線部152L、152Rが電機子鉄心のスロットに挿入され、一対の延出部153L、153Rが整流子に接続される。
なお、本実施形態でいう各方向は、図4に示すように型取り用治具51を平面に置いた状態で、一対の直線部152L、152R(一対の直線部用部品55L、55R)が配置される方向を左右とした方向とする。
【0021】
型取り用治具51は、板状の木材製のベース52と、電機子巻線150の形状に倣う凹凸や曲面等の形状部を有する樹脂製の型取り部53とを備え、型取り部53がベース52上に固定される。型取り部53は複数の部品に分割されており、エンド部151に倣う形状部を有する部品54(エンド部用部品と呼ぶ)と、直線部152Lに倣う形状部を有する部品55L(直線部用部品と呼ぶ)と、直線部152Rに倣う形状部を有する部品55R(直線部用部品と呼ぶ)と、延出部153L、153Rに倣う形状部を有する部品56(延出部用部品と呼ぶ)とに分割されている。
【0022】
図5を参照して、第2の実施形態に係る型取り用治具1を用いて、電機子巻線150を所定の形状に成形する手順を説明する。
まず図5(A)に示すように、エンド部用部品54を利用して、電機子巻線150のエンド部151を成形する。
エンド部用部品54は、左右から中央部に向かって曲面状に下がる傾斜面を有する。左右の傾斜面で傾斜の度合いが異なり、中央部に前後に延びる段差面59が形成される。電機子巻線150となる1本の巻線素材を上下に重ねるようにして折り曲げて、その折り曲げ部154を段差面59に沿わせる。
また、エンド部用部品54は、傾斜面よりも一段高くなるように配置され、エンド部151の山形形状に倣う凸部60を有する。折り曲げ部154を段差面59に沿わせた状態で、電機子巻線150を凸部60に沿わせるようにして左右に広げる。図5の例では、折り曲げ部154において上にある電機子巻線150を右方向に、下にある電機子巻線100を右方向に広げる。
【0023】
次に、図5(B)に示すように、直線部用部品55L、55Rを利用して、電機子巻線150の直線部152L、152Rを成形する。
直線部用部品55L、55Rは、前後にまっすぐに延びるように配置されており、エンド部用部品54を利用して左右に広げた電機子巻線150を、直線部用部品55L、55Rに沿わせるようにしてまっすぐに延伸させる。直線部用部品55L、55Rは傾斜面を有しており、一対の直線部152L、152Rは八の字状に開いたかたちでまっすぐに延伸する。直線部152L、152Rを挿入するスロットは円筒状の電機子鉄心の中心に向かうように配置されるので、スロットに挿入できるように直線部152L、152Rに適度の角度を持たせるものである。
【0024】
次に、図5(C)に示すように、延出部用部品56を利用して、電機子巻線150の延出部153L、153Rを成形する。
延出部用部品56及びそれによる延出部153L、153Rの成形の仕方は、エンド部用部品54及びそれによるエンド部151の成形の仕方と同様であり、ここではその説明を省略する。なお、エンド部151では、1本の巻線素材を上下に重ねるようにして折り曲げているが、延出部153L、153Rは相互に独立して整流子に接続される。
【0025】
以上により、電機子巻線150を、エンド部151と、一対の直線部152L、152Rと、一対の延出部153L、153Rとを有する重ね巻型に成形することができる。
なお、第1の実施形態と同様、エンド部用部品54及び延出部用部品56の適所には挿入穴7が形成されており、ピン8を挿入して電機子巻線150が動かないように固定することができる。
また、電機子巻線150を型取り部53の各部に沿わせるときには、電機子巻線150を木槌等でたたきながら変形させればよい。
【0026】
以上のように、第2の実施形態でも第1の実施形態で説明したのと同様、型取り用治具51を、板状の木材製のベース52と、電機子巻線150の形状に倣う形状部を有する樹脂製の型取り部53とに分けて構成するようにしたので、型取り用治具51を、作製しやすく、再現性の高いものとすることができる。
【0027】
なお、型取り部53の分割の仕方は限定されるものではない。例えば図6に示すように、エンド部用部品54及び延出部用部品56をその中央部に左右にさらに細分化する(エンド部用部品54L、54R、延出部用部品56L、56R)等してもよい。
【0028】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
上記実施形態では、板状のベースを木材製としたが、ベース上に、ベースとは別部材とした型取り部が設けられる構成であれば、ベースの材質は限定されるものではない。例えば板状のベースを樹脂製としてもかまわない。
また、型取り部はそのすべてを樹脂製とする必要はない。例えば直線部用部品5L、5R(55L、55R)は、他の部品(エンド部用部品4(54)、延出部用部品6L、6R(56))と比べて比較的簡易な形状であるので、直線部用部品5L、5R(55L、55R)は木材製としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1、51:型取り用治具
2、52:ベース
3、53:型取り部
4:エンド部用部品
5L、5R:直線部用部品
6L、6R:延出部用部品
54:エンド部用部品
55L、55R:直線部用部品
56:延出部用部品
100、150:電機子巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7