特許第6798837号(P6798837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798837
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ズボン
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/06 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   A41D1/06 G
   A41D1/06 A
   A41D1/06 501Z
   A41D1/06 502G
   A41D1/06 J
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-181342(P2016-181342)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-44266(P2018-44266A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】津川 佳代
(72)【発明者】
【氏名】道 明美
(72)【発明者】
【氏名】岩村 陽子
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−227008(JP,A)
【文献】 実開昭60−161110(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3097900(JP,U)
【文献】 特開平10−237710(JP,A)
【文献】 特開2002−285407(JP,A)
【文献】 特開2003−221708(JP,A)
【文献】 特開2004−238766(JP,A)
【文献】 特開平10−018109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/06−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下半身を覆うズボン本体と、前記ズボン本体の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部が設けられ、
前記ウエスト部には、裏生地と表生地が重ねられて長手方向に挿通空間形成され、前記裏生地の前記挿通空間の内側面には調整用ベルトが一端部を固定して設けられ、
前記表生地には、前記調整用ベルトの固定位置から挿通方向に所定の間隔だけ離れた位置に前記調整用ベルトの自由端が通過して前記表生地の外側面に引き出されるスリットが設けられ、
前記表生地の外側面には、前記スリットを挟んで前記調整用ベルトの固定位置とは反対側に設けられ前記調整用ベルトが挿通して折り返される環部材と、前記環部材に挿通されて折り返された前記調整用ベルトの自由端を任意の位置に係止する係止手段と、前記スリットと前記環部材を覆うとともに前記係止手段が露出する隠し布が設けられ、前記隠し布の端部から前記調整用ベルトの自由端が突出し前記係止手段に係止されることを特徴とするズボン。
【請求項2】
前記調整用ベルトは、着用者の両脇に各々設けられ、前記調整用ベルトの固定位置は着用者の前側に位置し、前記環部材は後側に位置し、前記スリットはその間に位置し、前記係止手段は、前記スリットよりも前側に位置している請求項1記載のズボン。
【請求項3】
前記調整用ベルトは、着用者の両脇に各々設けられ、前記調整用ベルトの固定位置は着用者の後側に位置し、前記環部材は前側に位置し、前記スリットはその間に位置し、前記係止手段は、前記スリットよりも後側に位置している請求項1記載のズボン。
【請求項4】
前記環部材は角カンであり、前記角カンは伸縮性を有する部材を介して前記表生地に取り付けられている請求項1記載のズボン。
【請求項5】
前記係止手段は面ファスナであり、前記調整用ベルトの先端付近に前記面ファスナの一方の部材が設けられ、前記表生地の外側面に前記面ファスナの他方の部材が設けられ、前記他方の部材は、ウエスト部に沿って長く設けられている請求項1記載のズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スキーズボン等の防寒性を有し、主に屋外等で着用するズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスキーをする際に着用する防寒ズボンは、下半身を覆うズボン本体と、ズボン本体をウエストに係止するウエスト部が設けられている。ウエスト部には、サイズを調整するアジャストベルトが設けられているものがある。特許文献1に開示されているズボンのウエストサイズのアジャスト構造は、ウエスト部に、後ろベルト布と前ベルト布が離間して設けられ、後ろベルト布と前ベルト布の間に襠が設けられている。前ベルト布及び後ろベルト布のいずれか一方に角環を設けると共に他方に面ファスナを有するアジャストベルトを設けている。特許文献2に開示されているスキー用ズボンも同様に、ウエスト部の両側部に、長さ調節機構を持った比較的幅の広いアジャスターベルトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3048862号公報
【特許文献2】実用新案登録3007001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術のいずれの場合も、アジャストベルトを締めるときにアジャストベルトの端部を持って後方引く動作が必要で有り、操作性が悪いものであった。しかも、アジャストベルト全体が見えているため、外観上好ましくないものであった。また、アジャストベルトを締めた時にウエスト部の側方に大きいしわが寄という問題がある。
【0005】
その他、既存のスキーズボンにおいて、アジャストベルトを前方に引いてウエスト部を締める構造のものもあるが、この構造の場合、前方にアジャストベルトを引くと、前部分のウエスト部が身体から浮いて空間が出来るので、片手で押さえながら操作しなければならない。従って、この構造のアジャストベルトは、片方ずつ締めなければならないものである。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な操作で長さを調節して身体にフィットさせることができ、着用感が良好で運動しやすいズボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下半身を覆うズボン本体と、前記ズボン本体の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部が設けられているズボンであ、前記ウエスト部には、裏生地と表生地が重ねられて長手方向に挿通空間形成され、前記裏生地の前記挿通空間の内側面には調整用ベルトが一端部を固定して設けられ、前記表生地には、前記調整用ベルトの固定位置から挿通方向に所定の間隔だけ離れた位置に前記調整用ベルトの自由端が通過して前記表生地の外側面に引き出されるスリットが設けられている。前記表生地の外側面には、前記スリットを挟んで前記調整用ベルトの固定位置とは反対側に設けられ前記調整用ベルトが挿通して折り返される角カン等の環部材と、前記環部材に挿通されて折り返された前記調整用ベルトの自由端を任意の位置に係止する係止手段が設けられ、前記スリットと前記環部材を覆うとともに前記係止手段が露出する隠し布が設けられ、前記隠し布の端部から前記調整用ベルトの自由端が突出し前記係止手段に係止されるものである。
【0008】
前記調整用ベルトは、着用者の両脇に各々設けられ、前記調整用ベルトの固定位置は着用者の前側に位置し、前記環部材は後側に位置し、前記スリットはその間に位置している。前記係止手段は、前記スリットよりも前側に位置している。
【0009】
前記係止手段は面ファスナであり、前記調整用ベルトの先端付近に前記面ファスナの一方の部材例えば雄部材が設けられ、前記表生地の外側面に前記面ファスナの他方の部材例えば雌部材が設けられ、前記雌部材は、ウエスト部に沿って長く設けられている。
【0010】
前記表生地の外側面に設けられた隠し布は、帯状であり前記隠し布の長手方向の端部は、前記表生地に設けられた前記面ファスナの端部と前記スリットの中間付近に達して、前記スリットと前記環部材を覆い、前記係止手段が露出している
【発明の効果】
【0011】
本発明のズボンは、操作性が良く、調整用ベルトが隠し布で覆われて外観上も良好な印象を与えるものである。特に、隠し布から突出する調整用ベルトの自由端を前方に引いて係止するという簡単な操作で大きさを調節することができる。調整用ベルトは、基端部は裏生地に固定され、他方の自由端は表生地に取り付けられた環部材に挿通されているため、調整用ベルトを引くと、表生地と調整用ベルトと裏生地が一体化して身体にフィットし、身体にフィットさせた状態でサイズ調整が行われ、着用感も良好で運動しやすいものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態のズボンの正面図(a)と背面図(b)である。
図2】この実施形態のウエスト部の横断面概略図(a)と正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のズボン10は、例えばスキーズボン等の防寒用の衣料であり、下半身を覆うズボン本体12を有し、ズボン本体12は防水性、防寒性を有する生地で作られている。
【0014】
ズボン本体12の上端部12aには、着用者のウエストに係止されるウエスト部14が設けられている。ウエスト部14は、着用者のウエストを水平方向に巻き回される。ズボン本体12とウエスト部14は、着用者の前側中心で破断されて、着脱用の開閉部18が設けられている。ズボン本体12の開閉部18にはスライドファスナ16が設けられ、開閉可能である。
【0015】
ウエスト部14は、身体側の裏生地20と、裏生地20を覆う表生地26が、重ねられて設けられ、裏生地20と表生地26の間には、ウエスト部14に沿って挿通空間22が形成されている。裏生地20と表生地26の長手方向の両端部は、裏生地20の表側面と表生地26の表側面とを合わせて縫って裏返して中表に縫い合わされ、開閉部18の側縁部を形成する。開閉部18の側縁部近傍には、開閉用のボタン32が、左右両側に各々設けられている。左右のボタン32は、互いに着脱可能な雄部材と雌部材である。
【0016】
表生地26は、身体の後側の2か所で、長手方向に交差して分割され、分割された部分は縫目36で各々連結されている。表生地26の外側面には、縫目36より前側で身体の両脇付近に、所定の長さの面ファスナ28の雌部材28aが設けられている。雌部材28aは、表生地26よりも細く形成され、表生地26の幅方向の中心に沿って設けられている。雌部材28aは、開閉部18と縫目36の間の長さの3分の1程度の長さであり、開閉部18と縫目36の中間に、それぞれから離間して設けられている。雌部材28aの少し後側の位置に、挿通空間22に連通するスリット30が形成されている。スリット30は、表生地26の長手方向に対して略直角な直線で形成され、後述する調整用ベルト44の幅が通過する長さに設けられている。
【0017】
表生地26の縫目36には、表生地26の外側面に重ねて、伸縮性を有する短い帯ゴム38が縫い合わされている。帯ゴム38の先端には、角カン用ベルト40を介して、矩形環状の角カン42が取り付けられている。なお、角カン42の位置は、スリット30と縫目36の中間付近に位置している。
【0018】
裏生地20は、身体の両脇の2か所で、長手方向に交差して分割され、分割された部分は縫目24で連結されている。縫目24は、表生地26の面ファスナ28の雌部材28aに重なる位置である。縫目24には、挿通空間22の内側面に重ねて調整用ベルト44が設けられている。調整用ベルト44は、一方の端部は縫目24に縫い付けられ、他方の自由端44aは、挿通空間22に沿って後側へ向かい、表生地26のスリット30を通過して、表生地26の外側面へ引き出されている。引き出された調整用ベルト44の自由端44aは、さらに表生地26に沿って後側へ向かい、角カン42に挿通され、折り返されて表生地26に沿って前側へ向かい、面ファスナ28の雌部材28aに達する。調整用ベルト44の自由端44aの、面ファスナ28の雌部材28aに重なる面には、面ファスナ28の雄部材28bが設けられ、雌部材28aの長手方向の任意の位置で、着脱自在である。なお、雄部材28bは、調整用ベルト44の先端近傍に小さい面積で設けられてもよい。
【0019】
身体の後側中心Aには、表生地26を覆う隠し布46が設けられている。隠し布46は、表生地26に沿う帯状であり、隠し布46の長手方向の端部46aは、表生地26の面ファスナ28の雌部材28aの端部とスリット30の中間付近に達し、角カン42とスリット30等を覆っている。隠し布46と表生地26との間には、ウエスト部14に沿う挿通空間50が形成されている。挿通空間50の中には、スリット30から外側へ引き出された調整用ベルト44が位置し、調整用ベルト44は角カン42で折り返され、自由端44aは、隠し布46の端部46aから外側に突出する。また、表生地26の面ファスナ28の雌部材28aは隠し布46の端部46aから露出しており、隠し布46の端部46aから突出する調整用ベルト44の自由端44aが、面ファスナ28の雌部材28aに接触して着脱可能に設けられている。
【0020】
ウエスト部14には、複数個所にベルトループ48が設けられている。ここでは、前側の両脇と、後側の両脇、後側中心Aの、5か所に設けられている。なお、裏生地20や表生地26、調整用ベルト44には、裏面に芯地が重ねられて設けられてもよい。
【0021】
この実施形態のズボン10の使用方法について説明する。開閉部18のスライドファスナ16とボタン32を開いた状態でズボン本体12に両足を入れ、ウエスト部14を腰まで引き上げ、スライドファスナ16とボタン32を閉じて着用する。
【0022】
ウエスト部14が、着用者の腰回りよりも大きい場合は、両脇の調整用ベルト44を面ファスナ28から剥がし、自由端44aを前側に引いて移動させる。これにより、調整用ベルト44が挿通された角カン42が前側に移動し、調整用ベルト44の固定位置である縫目24との距離が短くなり、ウエスト部14が小さくなる。調整用ベルト44は、基端部は裏生地20に縫い付けられて固定され、他方の自由端44aは表生地26に取り付けられた角カン42に挿通されているため、調整用ベルト44を前側に引くと、裏生地20に後側に引く力が働くため、前側のウエスト部14を押さえる必要がなく、片手で簡単に裏生地20と表生地26を寄せて、長さを調整する。
【0023】
調整用ベルト44は、裏生地20と表生地26で形成された挿通空間22に挿通されているため、調整用ベルト44の自由端44aが前側に移動して調整用ベルト44の挿通部分が短くなると、表生地26と裏生地20には適宜小さいしわが互いに均等に寄せられる。調整用ベルト44の基端部は裏生地20に固定され、反対側は表生地26の角カン42に挿通されているため、裏生地20と表生地26に、互いに近づく方向に力が働き、裏生地20と調整用ベルト44と表生地26が一体化する。これにより自由端44aを引いた時に、ウエスト部14全体が腰回りにフィットするような感覚が生じる。そして着用者の腰回りにフィットした状態で、調整用ベルト44の自由端44aを面ファスナ28の雌部材28aに接触させ、自由端44aの雄部材28bと雌部材28aを係止することができる。
【0024】
ウエスト部14を大きくするときは、逆に、調整用ベルト44の自由端44aを後側に移動させる。
【0025】
この実施形態のズボン10によれば、調整用ベルト44の自由端44aを前側に引いて係止するという簡単な操作で、ウエスト部14の大きさを調整することができる。調整用ベルト44の自由端44aを前側に引いた時、調整用ベルト44が挿通された角カン42が前側に移動し、調整用ベルト44の固定位置との距離が短くなり、ウエスト部14を小さくすることができ、操作性がよい。調整用ベルト44は、基端部は裏生地20に縫い付けられて固定され、他方の自由端44aは表生地26に取り付けられた角カン42に挿通されているため、調整用ベルト44を前側に引くと、裏生地20に、後側に引く力が働くため、前側を抑える必要がなく、片手で簡単に裏生地20と表生地26を寄せて、長さを調整することができる。
【0026】
また、調整用ベルト44を引くと、裏生地20と調整用ベルト44と表生地26が一体化し、ウエスト部14の厚み全体で引き寄せ、ウエスト部14全体が腰回りにフィットするような感覚を得ることができる。ウエスト部14が腰回りにフィットさせた状態でサイズを調整するので、着用感が良好となり、運動しやすいものである。
【0027】
角カン42は帯ゴム38で表生地26に連結されているため、ウエスト部14を調整した後も、伸縮性を有するため、苦しくなく、また激しい運動をしても身体にフィットする。角カン42は脇よりも少し背中側に配置しているため、厚みや固さを感じないものである。調整用ベルト44は角カン42に挿通して折り返されるため、調整用ベルト44の滑りが良く、小さい力でサイズの調節をすることができる。
【0028】
その他、デザインは、調整用ベルト44が隠し布46で覆われているため、外観上の印象が良好であり、角カン42も隠し布46に覆われていてすっきりしたものとなる。
【0029】
なお、この発明のズボンは、上記実施の形態に限定されるものではなく、防寒用のズボン以外に、日常の生活で着用するズボンや、作業ズボン、子供用のズボン等何にでも利用することができる。ウエスト部の開閉部の位置や、開閉するボタンやスライドファスナ等は適宜変更可能である。調整用ベルトや短い帯ゴムは、表生地や裏生地の分断された端部を連結する縫目に縫い付けられているが、縫目ではないところに取り付けられてもよく、表生地や裏生地は分断されていないものでもよい。また、この調整用ベルトによりサイズを調整する構造は、ズボンのウエスト部以外に裾に設けてもよく、またその他の物品に設けてもよく、例えば手袋の手首やジャケットの袖口等に設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 ズボン
12 ズボン本体
14 ウエスト部
20 裏生地
22 挿通空間
26 表生地
28 面ファスナ
28a 雌部材
28b 雄部材
30 スリット
42 角カン
44 調整用ベルト
44a 自由端
46 隠し布
46a 端部
図1
図2