(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のウインドシールド、または、その直前に設けられたコンバイナ上に映像光を投射し、その反射光により得られる虚像によって画像を運転者に提供するヘッドアップディスプレイ装置であって、
光源装置を備え、かつ、前記光源装置から投射される光により映像光を生成する映像表示装置と、
前記映像表示装置からの映像光を反射して前記ウインドシールド、または、前記コンバイナ上に投射する凹面ミラーと、を備え、
前記映像表示装置を構成する前記光源装置は、少なくとも、
光を発生する半導体光源素子と、
前記半導体光源素子からの出射光を前記映像光に変換する光学装置と、
前記半導体光源素子と前記光学装置との間に配置され、前記半導体光源素子からの出射光を入射する光入射部と、前記半導体光源素子から入射した光を前記光学装置に対して出射する光出射部とを備えた導光体とを備えており、
前記導光体の前記光出射部は、前記光学装置の光入射部に対応した形状を有しており、
かつ前記光源装置を構成する前記導光体は、前記光入射部を複数備えている、ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0012】
図1は、以下に詳述する本発明の実施例に係る光源装置を、一例として、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置1に適用した例を示す展開斜視図である。本発明の実施例に係る光源装置を含む映像表示装置30は、その筐体である外装ケース155の一部に取り付けられ、当該ケースの内部には、凹面ミラー141および歪み補正レンズ143等が収納されている。そして、上部外装ケース151の上面には、映像光がウインドシールド(図示せず)に向かって投射される開口部が形成されており、当該開口部は防眩板152(グレアトラップ)によって覆われている。また、図中の符号142は、上記凹面ミラー141の位置を調整するための電動モータなどにより構成される凹面ミラー駆動部を示している。
【0013】
かかる構成のHUD装置1では、上記の映像表示装置30から出射した映像光は、ここでは図示しない表示距離調整機構やミラー駆動部などを介して車両のウインドシールドに投射されることは、当業者であれば明らかであろう。また、凹面ミラー141の角度を調整することで、映像をウインドシールドに投射する位置を調整することにより、運転者が見る虚像の表示位置を上下方向に調整可能としてもよい。なお、虚像として表示する内容は特に限定されず、例えば、車両情報やナビゲーション情報、図示しないカメラ映像(監視カメラやアラウンドビュアー等)で撮影した前方の風景の映像などを適宜表示することができる。
【0014】
続いて、上述した映像表示装置30について、
図2を用いて以下に詳細に説明する。映像表示装置30は、例えば、プラスチックなどにより形成された光源装置ケース11の内部に、後にも詳述するLED素子、コリメータ、合成拡散ブロック、導光体などを収納して構成されている。また、映像表示装置30の上面には、液晶表示素子(LCD)50が取り付けられており、その一の側面には、半導体光源であるLED(Light Emitting Diode)素子やその制御回路を実装したLED基板12が取り付けられている。更に、当該LED基板12の外側面には、上記LED素子および制御回路で発生する熱を冷却するためのヒートシンク(放熱フィン)13が取り付けられている。
【0015】
また、上述した映像表示装置30では、光源装置ケース11の上面に取り付けられた液晶表示素子50は、液晶表示パネルフレーム51と、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネル52と、更に、当該パネルに電気的に接続されたFPC(フレキシブル配線基板)53とから構成されている。
【0016】
なお、以上の説明からも明らかなように、例えば、HUD装置の場合には、車両のダッシュボードと言う狭小な空間内へ組み込まれるという事情から、HUD装置1を構成する本発明の実施例に係る光源装置を含む映像表示装置30に対しては、特に、モジュール化により小型でかつ高効率であり、好適に利用可能であることが好ましい。
【0017】
図3には、上記映像表示装置30の内部、即ち、光源装置のケース11内に収納されている光学系の一例として、偏光機能を備えた光学系の構成を示す。即ち、本発明の実施例に係る光源を構成する複数(本例では、2個)のLED14a、14bが、LEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。
【0018】
なお、当該LEDコリメータ15の光の出射側には、詳細は後述するが、LEDコリメータ15の中心軸に対して、左右対称に配置された偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter)、位相板等の光学部材からなる偏光変換素子21が設けられている。更に、当該偏光変換素子21の出射側には、矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED14aまたは14bから射出された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって偏光変換素子21へ入射し、上記偏光変換素子21により所望の偏光光に変換された後、合成拡散ブロック16へ入射する。
【0019】
更に、上記合成拡散ブロック16の出射面側には、一例を示すと、上記
図3にも示すように、第1の拡散板18aを介して、断面略三角形の導光体17が設けられており、その上面には、第2の拡散板18bが取り付けられている。これにより、上記LEDコリメータ15の水平光は、当該導光体17の働きにより図の上方に反射され、上記液晶表示素子50の入射面に導かれる。なお、その際、上記第1および第2の拡散板18a、18bによって、その強度が均一化される。
【0020】
続いて、上述した本発明の実施例に係る光源装置を構成する主要な部品について、その各部の詳細を含めて以下に説明する。
【0021】
図4にも示すように、本発明の実施例に係る光源装置は、LED基板12上に形成された、単数または複数の半導体発光素子であるLED素子14a、14bと、当該素子の発光面に対向して配置されたLEDコリメータ15とから構成されている。なお、LEDコリメータ15は、例えば、ポリカーボネート等の耐熱性が優れ、かつ透光性の樹脂により形成されており、
図4にも示すように、LED基板12上において、LED素子14を中心としてその周囲を取り囲むように形成されている。より具体的には、LEDコリメータ15は、略放物断面を回転して得られる円錐形状の外周面156を有すると共に、光の入射側であるその頂部には、所定の湾曲面を有する凹部153が形成されており、その略中央部にLED素子14a、14bが配置される。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面151を形成する放物面(リフレクター部)は、凹部153の湾曲面と共に、LED素子14a、14bから周辺方向に出射して凹部153内の空気を通って当該LEDコリメータの内部に入射する光が、当該放物面において全反射する角度の範囲内で入射するように設定されている。このように、放物面における全反射を利用することによれば、LEDコリメータの外周面に金属の反射膜を形成するなどの工程を必要としないことから、装置をより安価に製造することが可能となる。
【0022】
また、LEDコリメータ15の凹部153の中央部には、所定の湾曲面を有する入射面(レンズ面)157が形成されており、対向する面(出射面)154に形成された凸状部(レンズ面)158と共に、所謂、集光作用を有する凸レンズを形成している。なお、この凸状部158は、平面または内側に凹んだ凹状のレンズ面として形成してもよい。即ち、LEDコリメータ15は、その円錐形状の外形の中央部には、LEDコリメータ15からの発光を出射面側に集める集光レンズの機能を有すると共に、その外周面156(リフレクター部)においても、同様に、LED素子14a、14bから周辺方向に出射する光を集光して出射面側に導く機能を有している。
【0023】
なお、上記のLED基板12は、
図4にも示すように、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED素子14a、14bが、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0024】
かかる構成によれば、LED素子14a、14bから放射される光のうち、特に、その中央部分から出射光軸(図の右方向)に向かって放射される光は、上述したLEDコリメータ15により、図に矢印で示すように、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157、158により集光されて平行光となり、また、その他の部分から周辺方向に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面(リフレクター部)156を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED素子14a、14bにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0025】
また、本実施例では、当該LEDコリメータ15の光の出射側には、偏光ビームスプリッタ、位相板等の光学部材からなる偏光変換素子21が設けられており、これらの素子は、図からも明らかなように、LEDコリメータの中心軸(図の一点鎖線を参照)に対して、左右対称に配置されている。更に、偏光変換素子の出射側には、矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED素子14aまたは14bから射出された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射する。
【0026】
このように、本構成によれば、
図5の比較例との比較からも明らかなように、より薄型で、かつ、材料使用量の低減により低コスト化を実現し、光源装置の小型化を可能にする。偏光変換素子の薄型化は、PBS膜で反射した光束と透過した光束の光路長差の増大を防止することから、光路長差による両者の光束形状の差が発生し難いため、特に、複数の光源およびLEDコリメータを用いた系においては、光束形状の違いを要因とする輝度分布の不均一性の解消に有効である。
【0027】
更に、
図6は、上記映像表示装置30の内部、即ち、光源装置のケース11内に収納されている光学系の他の構成例を示す。即ち、本発明の実施例に係る光源を構成する複数(本例では、4個)のLED素子14a、b、c、dが、LEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。
【0028】
なお、本実施例では、当該LEDコリメータ15の光の出射側には、矩形状の合成拡散ブロック16が設けられているが、上述した偏光変換素子21は設けられておらず、そのため、LED素子14a、b、c、dから射出された光は、偏光されずに、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射する構成となっている。
【0029】
更に、上記合成拡散ブロック16の出射面側には、一例を示すと
図6に示すように、第1の拡散板18aを介して、断面略三角形の導光体17が設けられており、その上面には、第2の拡散板18bが取り付けられている。これにより、上記LEDコリメータ15の水平光は、当該導光体17の働きにより図の上方に反射されて、上記液晶表示素子50の入射面に導かれる。なお、その際、上記第1および第2の拡散板18a、18bによって、その強度が均一化されることは上述の例と同様である。
【0030】
続いて、上記映像表示装置30の他の構成要素である、合成拡散ブロック16について、
図7を参照しながら説明する。なお、
図7(a)は、合成拡散ブロック16の側面を示しており、
図7(b)は、上記合成拡散ブロック16の一部を拡大した一部拡大断面を示している。
【0031】
アクリル等の透光性の樹脂により形成された合成拡散ブロック16では、
図7(a)および(b)からも明らかなように、その出射面には、多数の断面略三角形状のテクスチャー161がピッチSで形成されており、当該テクスチャー161の働きにより、LEDコリメータ15から出射する光が、以下に述べる導光体17の導光体光入射部(面)171の鉛直方向において拡散される。そして、上記略三角形状のテクスチャー161と、以下に述べる拡散板18a、18bの相互作用により、LEDコリメータ15が離散的に配置されていても、導光体17の出射部173から出射する光の強度分布を均一化することが可能となる。また、ヘッドアップディプレイ装置において、運転者が見る虚像の表示位置は、前述したように、凹面ミラー141の角度を調整することが可能であるが、左右位置の調整機能は一般的に無く、かつ虚像の確認は両眼視が前提になるので、虚像が視認できるエリアは、上下方向に対して、左右方向が広いことが望まれる。上記のような構成を実現するためには、光源装置の配光角の虚像の左右方向に相当する方向を、その前後方向に比べて広くすることが有効である。本構成では、前記合成拡散ブロックのテクスチャー161で拡散され、配向角が広くなる方向を、虚像表示の左右方向とすることにより、虚像が認識できるエリアを左右方向に広くした。
【0032】
特に、上述したテクスチャー161によれば、光の拡散方向を導光体側面方向に限定すること、更には、側面方向の拡散性の制御が可能となることから、上記第1および第2の拡散板18a、18bの等方拡散性を弱くすることが可能となり、その結果、光利用効率が向上し、特性の良い光源装置が実現できることとなる。なお、本例では、略三角形状のテクスチャー161の一例として、角度γ=30度、その形成ピッチS=0.5mmとした例を示す。
【0033】
<導光体>
続いて、上記映像表示装置30を構成する導光体17の詳細について、以下に、
図8を参照しながら説明する。なお、この導光体17は、上述した光源装置から平行光として入射面から取り入れた光を内部で反射・屈折して所望の方向に導くと共に、所望の面積有する面状の光として取り出す機能を有する。
【0034】
図8(a)は、当該導光体17の全体を示す斜視図を、
図8(b)はその断面を、そして、
図8(c)および(d)は、断面の詳細を示す一部拡大断面図である。
【0035】
導光体17は、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により断面略三角形(
図8(b)参照)に形成された部材であり、そして、
図8(a)からも明らかなように、上記合成拡散ブロック16の出射面に第1の拡散板18aを介して対向する導光体光入射部(面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(面)172と、第2の拡散板18bを介して上記液晶表示素子50の液晶表示パネル52と対向する導光体光出射部(面)173とを備えている。
【0036】
この導光体17の導光体光反射部(面)172には、その一部拡大図である
図8(c)および(d)に詳細に示すように、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。そして、反射面172a(図では右上がりの線分)は、図において一点鎖線で示す水平面に対してαn(n:自然数であり、本例では、例えば、1〜130である)を形成しており、その一例として、ここでは、αnを43度以下(但し、0度以上)に設定している。
【0037】
他方、連接面172b(図では右下がりの線分)は、反射面に対してβn(n:自然数であり、本例では、例えば、1〜130である)を形成している。即ち、反射部の連接面172bは、入射光に対して、後に述べる散乱体の半値角の範囲で影になる角度に傾斜されている。後にも詳述するが、α1、α2、α3、α4…は反射面仰角を形成し、β1、β2、β3、β4…は反射面と連接面との相対角度を形成しており、その一例として、90度以上(但し、180度以下)に設定されている。なお、本例では、β1=β2=β3=β4= …=β22=…β130である。
【0038】
図9および
図10には、説明のために、導光体17に対して反射面172aと連接面172bの大きさを相対的に拡大した模式図を示す。導光体17の導光体光入射部(面)171では、主たる光線が、反射面172aに対して入射角が大きくなる方向にδだけ偏向されている(
図10(b)参照)。即ち、導光体光入射部(面)171は、光源側に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。これによれば、合成拡散ブロック16の出射面からの平行光は、第1の拡散板18aを介して拡散されて入射し、図からも明らかなように、導光体光入射部(面)171により上方に僅かに屈曲(偏向)しながら導光体光反射部(面)172に達する(
図11の例と比較)。
【0039】
なお、この導光体光反射部(面)172には、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されており、拡散光は、各々の反射面172a上で全反射されて上方に向かい、更には、導光体光出射部(面)173や第2の拡散板18bを介して、平行な拡散光として液晶表示パネル52へ入射する。そのため、反射面仰角α1、α2、α3、α4…は、各々の反射面172aが前記拡散光に対して臨界角以上の角度となるように設定されており、他方、反射面172aと連接面172bとの相対角度β1、β2、β3、β4…は、上述したように一定の角度、その理由は後にも述べるが、より好ましくは、90度以上の角度(βn≧90°)に設定されている。
【0040】
上述した構成により、各反射面172aが前記拡散光に対して常に臨界角以上の角度となるような構成になっているので、導光体光反射部172に金属等の反射膜を形成しなくても、全反射が可能となり、低コストで、所望の方向に導くと共に、所望の面積有する面状の光として取り出す機能する、導光体を備えた光源装置を実現できる。一方、比較例となる
図11に示したように、導光体17の導光体入射部で、主たる光線の屈曲(偏光)が無い場合は、拡散光の一部が反射面172aに対して、臨界角以下になってしまい、十分な反射率が確保できないので、特性の良い(明るい)光源装置、即ち、映像表示装置が実現できない。
【0041】
しかるに上述した導光体17の導光体光反射部(面)172の形状によれば、主たる光の全反射条件を満たすことができ、導光体光反射部172にアルミ等の反射膜を設ける必要がなく、光を効率的に反射することが可能となり、製造コストの上昇を伴うアルミニウム薄膜の蒸着作業なども必要なく、より低コストで、明るい光源が実現できる。また、各相対角βは、連接面172bが、主たる光線L30が合成拡散ブロック16および拡散板18aで拡散した光に対して影になるような角度に設定した。これにより、連接面172bへの不要な光の入射を抑制することで、不要な光の反射を低減でき、特性が良好な光源装置を実現することが可能となる。
【0042】
また、上述した導光体17によれば、
図9に示すように、連接面Lc1,Lc2,Lc3・・・・と反射面Lr1,Lr2,Lr3・・・・の長さおよび比率を適宜設定することにより、光軸方向における導光体光出射部(面)173の長さを自由に変更することができることから、導光体光入射部(面)171に対して、導光体光出射部(面)173の大きさ(面サイズ)を、上記液晶表示パネル52などの装置に対して適合した、適宜、必要な大きさ(面サイズ)に変更可能な光源装置を実現することが可能となる。このことは、また、光源を構成するLED素子14a、14bの配置形状に依存することなく、導光体光出射部(面)173を所望の形状にすることか可能となることを意味し、即ち、所望の形状の面状の発光源が得られることとなる。更には、光源を構成するLED素子14a、14bの配置を含む設計における自由度の確保にもつながり、装置全体の小型化にも有利である。
【0043】
図12には、上記の変形例を示す。図からも明らかなように、この変形例では、導光体17の導光体光入射部(面)171を、上述した湾曲面とは異なり、上記LEDコリメータ15から出射する光に対して垂直な平面とすると共に、当該入射面には、入射する光を上方に僅かに屈曲(偏向)させるための断面垂直三角形状の補助の導光体17aを設けている。更に、
図13には、他の変形例として、導光体17の導光体光入射部(面)171を垂直な平面とすると共に、上記LEDコリメータ15を僅かに傾斜させ、もって、入射する光が上方に僅かに屈曲(偏向)させる構成が示されている。即ち、これらの変形例によっても、上記と同様の効果が得られる。
【0044】
また、
図14にも示すように、導光体光反射部(面)172を構成する連接面172bを適宜設定する(この例では、その中央部の一部の反射面172aでは光が反射しないようにする)ことによれば、導光体17の導光体光出射部(面)173において、反射面172aと連接面172bの比率Lr/Lcを場所によって大きく変更することも可能となる。これにより、図示の例では、導光体17の導光体光出射部(面)173から出射される光は、光軸の方向において左右に分けられている様子が示される。かかる構成は、例えば、HUD装置からの照明光をロス無く上下または左右に分離する場合等において好適であろう。また、前記比率Lr/Lcを適宜調整することにより、部分的に反射光を強くしまたは弱くすることも可能となる。
【0045】
加えて、上述した導光体17では、
図15にも示すように、その導光体光入射部(面)171と導光体光出射部(面)173の少なくとも一方に、それぞれ、以下に述べる機能性散乱面を付与(形成)することにより、上記
図6にも示した拡散板18a、18bのいずれかあるいは両方を省略することも可能である。
【0046】
この機能性散乱面は、空間周波数の高い成分(細かい成分)の面粗さを低減することにより、不要な発散構成分の低減を図るものである。
図16(b)に通常の散乱面の面粗さ空間周波数成分を、
図16(a)により好まし散乱特性を有する散乱面の面粗さ空間周波数成分を示す。同図で実線は、
図15における導光体の入射面あるいは出射面の紙面に対して鉛直方向に測定した場合の面粗さ空間周波数成分を、波線は、
図15における導光体の入射面あるいは出射面の紙面に対して平行方向に測定した場合の面粗さ空間周波数成分を示す。
【0047】
通常の散乱面の面粗さ空間周波数分布は、
図16(b)に示すように、空間周波数の逆数(1/f)に沿った分布を示す。それに対して、より好ましい面粗さの空間周波数分布は、
図16(a)で示すように、空間周波数10/mm以下の低周波および100/mm以上の高周波領域で、低い値となっており面粗さ空間周波数の低周波成分が少なく、中周波成分が適度にあるので、散乱むらが少ない光源が実現できる。また、面粗さ空間周波数の高周波成分が少ないので、散乱光の散乱角が大きくならず、不要構成分が減ることから、明るくかつ均一な輝度分布を有する光源が実現できる。このような特性を実現するためには、更に、前記機能性散乱面は、おり、特に100/mm以上の高周波領域での空間周波数成分を10nm以下にすると、可視光の範囲(波長400nm以上)で、不要な散乱成分を発生を防止できることが、実験により確認された。それに対して通常の散乱面は、
図17(b)に示すように、光源として利用可能な方向外にも光が散乱されるので、明るい光源を実現できない。
【0048】
また、上記の範囲内で、
図16(a)に実線および波線で示すように、空間周波数の成分を調整することにより、散乱角を調整できる。ヘッドアップティスプレイ装置は、前述したように虚像が視認できるエリアは、上下方向に対して、左右方向が広いことが望まれるので、光源装置の配向角はそれに対応した方向が広くなるように、散乱角を調整した。具体的には、
図15で示した導光体の入射面および出射面の紙面に対して鉛直方向に測定した面粗さの空間周波数分布は、
図16(a)の実線で示す分布とし、それに直交する即ち紙面に沿った方向で測定した面粗さの空間周波数分布は、同図の波線で示すように、実線に対して、相対的に高周波成分が更に少ない分布とした。
【0049】
上述した機能性散乱面を採用することによれば、導光体17の入射面と出射面での光の入射・出射の制御自由度が増加することとなり、光源装置からの光の輝度むらを低減し、その下流側に配置される光学系の装置(本例では、一例として液晶表示素子50)の特性に応じたきめ細かい制御が可能となり、更には、装置の低コスト化に有利であろう。
【0050】
また、導光体17の入射面は、
図15に示したように、導光体への入射光、出射光に対して平行となる面での断面において、中心部171cに対して、上端部171a、下端部171bの曲率を大きい形状とした。これは
図15に示したように比較的発光部のサイズが大きいLED14を用いる場合に有効である。即ちLED14の中央部から出射される光は、実線で示す光線L30c、L30a、L30bのようにLEDコリメータ15により平行光に変換されるが、LEDの上端、下端から出射した光は、一点波線で示す光線L30d,L30eのように平行光ではなく拡散光になるので、その光を平行光に変換するためには、導光体入射面を171a、171bに示すように、中心部171cに対して曲率を大きくすることが必要となる。以上の構成を採用することにより、比較的サイズが大きいLEDを用いた場合でも、特性の良い光源装置が実現できる。
【0051】
また、上記でも述べたように、β1=β2=β3=β4…βn≧90°としたが、これは、
図18にも示すように、導光体17を射出成形で作製するための金型40の加工において、底面と側面の相対角度がβのエンドミルによって、反射面172bと連接面172bとが、同時に、加工できるためである。また、反射面172aと連接面172bに対し、相対的に太い工具で加工が可能であることから、加工時間が大幅に短縮でき加工費の大幅な低減が可能となる。また、反射面172aと連接面172bとの境界エッジが精度良く加工可能でき、導光体17の導光特性の向上を図ることができる。
【0052】
図19は、上述した光源装置を適用した映像表示装置30の他の例を示す映像表示装置30の全体外観斜視図であり、この実施例では、詳細は示さないが、LED基板12で発生した熱は伝熱プレート13dを通じて装置下部に配置されたヒートシンク13cで冷却する構造となっている。本構成によれば、全長の短い光源装置が実現される。
【0053】
更に、以下には、上述した本発明の実施例に係る光源装置の更に他の実施例(実施例2)を示す。
図20は、上述した実施例と比較し、固体光源であるLED素子14の配置が3個×2列となった、より大きな液晶表示装置向けの光源装置を示している。この実施例2に係る光源装置では、導光体17を射出成形で作成するときに、導光体光入射部(面)171が厚くなることにより、成形型内での冷却時間が増加し、成形タクトが長くなりコスト増になることを防止するため、当該導光体光入射部(面)171の一部(図の上部)を削除したものである。
【0054】
また、
図21は、上記の実施例2の光源装置と同様、固体光源であるLED素子14の配置が3個×2列となったより大きな液晶表示装置向け光源装置を示しているが、この例では、導光体光入射部(面)171の一部を削除すると共に、導光体17の先端部(図の右側部分)を厚くすることにより、成型時の冷却速度の均一化を図ることにより、より高精度な成形を可能としたものである。なお、この例では、導光体17は、その先端部を厚くすることにより、主たる光線を、液晶パネル55への入射角を所定の角度ηだけ傾けて入射するように構成されている。これは、一般的に、液晶表示パネルに入射する主たる光線の傾きは、垂直に近い方が望ましい。しかしながら、市販されている液晶パネルの中には、その特性によっては入射角を5〜15°程度傾けた方がその特性が良い物があり、その特性に応じて液晶表示パネルへの入射光を角度η5°〜15°だけ傾けて入射する。
【0055】
更に、
図22は、上記
図15にも示した導光体17の入射面または出射面に形成した上述したテクスチャー175の具体例を示す上面図である。この模式図では、その反射面(または出射面)と連接面の境界が直線状に配置・形成された一例を
図22(a)に、そして、
図22(b)には、例えば、光源であるLED素子14a、14bが互いに離隔されて分散されて配置されている等、その必要性に応じて、曲線状に配置・形成された他の例をそれぞれ示している。
【0056】
<光源装置の他の構成例>
以上には、本発明の実施例に係る光源装置を、特に、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置1に適用した光源装置の例を示したが、以下には、当該光源装置の更に他の構成を含めた例について示す。
【0057】
図23には、上述したLED素子14a、14bや導光体17等を含む光源装置を、複数個(本例では、2個)、その導光体光出射部(面)173が同一面内となるように組み合わせ、より大型の液晶表示パネル52に対応した例を示している。なお、かかる組み合わせ構造によれば、更に、より多くの種類の面サイズと光量の導光体光出射部(面)173を備えた映像表示装置を実現することが可能となる。
【0058】
図24は、更に、複数(本例では、2個)の導光体光入射部(面)171a、171bを備えた導光体17’から構成された光源装置を示しており、図からも明らかなように、当該導光体17’の両側側面には、LED素子14a、14bやコリメータ15等から構成される光源からの光を入射する導光体光入射部(面)171a、171bが形成されており、当該導光体光入射部(面)171a、171bから入射した平行な光は屈折して、本例では導光体17’の底部に形成された導光体光反射部172に導かれる。この導光体光反射部172に表面には、断面が波状の凹凸が形成されており、更に、光を反射する反射膜(アルミ膜)が形成されている。これによれば、導光体光入射部(面)171a、171bから入射した平行光は、かかる導光体光反射部172により図に矢印で示すように、当該導光体光反射部172で反射されて導光体17’の上方に向かい、その導光体光出射部(面)173から、例えば、上記の液晶表示パネル52などの装置に向けて出射される。
【0059】
かかる構成の光源装置によれば、光を照射する液晶表示装置が大型化しても、比較的容易に対応して、即ち、その出射面を大型化した光源装置を実現することが可能となる。なお、上記からも明らかなように、比較的薄い導光体17’により光源装置が実現できるので、装置のより薄型化が可能となる。また、導光体17’の厚みがほぼ均一であり、その成形性は良好である。
【0060】
また、その導光体光入射部(面)171a、171bから入射した光をその内部において反射・屈折して、その導光体光出射部(面)173から外部装置(本例では、後段の光学装置である液晶表示パネル)に出射する導光体17’では、光入射面の面積S
INは、一般的に、光出射面の面積S
OUTよりも大きく(S
IN>S
OUT)設定され、更に、導光体17’の形状は、発光素子であるLEDの大きさや形状に適合した形状に形成することが可能であろう。
【0061】
更に、
図25にも示すように、合成拡散ブロック16後方に配置される導光体17”を偏光変換素子21’によって構成することも可能である。なお、この構成では、図からも明らかなように、偏光変換素子21’を構成する三角形柱の透光性部材211’と平行四辺形柱の透光性部材212’とを組み合わせ、それらの境界面には、LED素子14aから出射してLEDコリメータ15で平行光となった入射光のS偏光波(図中の記号(×)を参照)を反射するが、他方、P偏光(図中の上下の矢印を参照)を透過するPBS膜211が形成されると共に、平行四辺形柱の透光性部材212’の上面には、1/2λ位相板213が、そして、その側面には、反射膜212がそれぞれ形成されている。
【0062】
上述した構成によれば、図からも明らかなように、LED素子14aから出射してLEDコリメータ15で平行光となった入射光は、導光体17”を構成する偏光変換素子21’の働きによりS偏光に偏光されて、当該素子の上面から上方に向かって出射されることとなる。即ち、上記した構成では、特に、導光体17”を偏光変換素子21’によって構成することにより、装置の大幅な小型化や装置の製造コストの大幅な低減を実現することが可能となる。
【0063】
なお、上記の説明では、本発明の実施例に係る光源装置を、主に、HUD装置1の映像表示装置30に適用した例について述べたが、しかしながら、本発明の実施例に係る光源装置はそれのみに限定されず、例えば、車両用のヘッドライト装置を含む光源を構成する光源装置として適用することも可能であろう。
【0064】
以上の詳細な説明からも明らかなように、本発明の実施例に係る光源装置によれば、光源を構成するLEDの配置形状に依存することなく、その出射光を集光してその強度を均一化して所望の方向に導くと共に、液晶表示装置などの出力側の装置に対しては、その光入射面に対応して、所望の形状・面積を有する面状の光として出射する機能を有していることから、光源装置を含む映像表示装置の設計における自由度を大きく確保することが可能となり、かつ、装置全体のモジュール化や小型化に加え、発光光を効率高く利用することができることから、低消費電力でかつ環境保護にも優れた装置が提供されることからも有利であろう。
【0065】
以上、本発明の種々の実施例に係る光源装置について述べた。しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。