【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例及び比較例で処理する石炭微粒子含有排水として、SS濃度11,000mg/L、濁度7,500度、pH7.5の貯炭場排水を用いた。
【0037】
(実施例1−1)
上記貯炭場排水300mLをガラスビーカーに入れ、ジメチルアミン・エピクロロヒドリン縮合物(以下、有機凝結剤Aと称する。カチオンコロイド当量値は7.5meq/g。)を12mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌し、排水中の石炭微粒子をフロック化させた。次に、塩酸を添加して、pHを6.0に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水(処理水)の濁度を測定した。
【0038】
(実施例1−2)
上記貯炭場排水に有機凝結剤Aを12mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌した後に、PAC(Al
2O
310%)を150mg/L添加したこと以外は実施例1−1と同様の処理を行い、上澄み水の濁度を測定した。
【0039】
(比較例1)
上記貯炭場排水にPAC(Al
2O
310%)を300mg/L添加し、塩酸を加えてpH6.0に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後は、実施例1−1と同様の処理を行い、上澄み水の濁度を測定した。
【0040】
表1に、実施例及び比較例の上澄み水濁度の結果を示す。また、実施例及び比較例の処理におけるフロック形成、フロック沈降性、上澄み水外観を以下の基準により評価した。評価基準は以下の全ての実施例及び比較例も同様である。
・フロック形成
良好:概ね2mm以上のフロックが形成される。
やや不良:1mm前後のフロックが形成される。
不良:フロックが形成されない。
・フロック沈降性
良好:撹拌終了後、3分以内にほとんどのフロックが沈降する。
やや不良:撹拌終了後、10分以内にほとんどのフロックが沈降する。
不良:撹拌終了後、10分経過しても上澄み水にフロックが残存する。
・上澄み水外観
良好:30分静置後の上澄み水は清澄で濁度がほとんど無い。
やや不良:30分静置後の上澄み水にやや濁度が残存する。
不良:30分静置後の上澄み水に濁度が残存する。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、カチオンコロイド当量値が7.5meq/gである有機凝結剤Aを添加した実施例1−1及び1−2と、有機凝結剤Aを添加していない比較例1の上澄水濁度を比較すると、実施例1−1及び1−2の方が良好であった。また、実施例は、比較例1より少ない薬品使用量で、上澄み水濁度を低減させることができた。
【0043】
さらに、実施例1−1と1−2の上澄水濁度を比較すると、無機凝集剤を添加していない実施例1−1の方が良好であった。本来有機凝結剤には自己凝集性の作用が無いため、通常は実施例1−2のように有機凝結剤と無機凝集剤とを併用した方が、上澄み水の濁度を低減する効果が高いと考えられるが、実施例1−1が最良となった。この結果は、発明者らによって見出された新規な知見である。
【0044】
(実施例2−1)
上記貯炭場排水300mLをガラスビーカーに入れ、有機凝結剤Aを6mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌し、排水中の石炭微粒子をフロック化させた。次に、塩酸を添加して、pHを6.0に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水(処理水)の濁度を測定した。
【0045】
(実施例2−2)
有機凝結剤Aをポリエチレンイミン(以下、有機凝結剤Bと称する。カチオンコロイド当量値は6.6meq/g。)に変更したこと以外は、実施例2−1と同様の処理を行った。
【0046】
(実施例2−3)
有機凝結剤Aをポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、有機凝結剤Cと称する。カチオンコロイド当量値は6.2meq/g。)に変更し、添加量を6mg/Lから12mg/Lに変更したこと以外は、実施例2−1と同様の処理を行った。
【0047】
(比較例2)
有機凝結剤Aをジシアンジアミン・ホルムアルデヒド縮合物(以下、有機凝結剤Dと称する。カチオンコロイド当量値は5.6meq/g。)に変更したこと以外は、実施例2−1と同様の処理を行った。
【0048】
表2に、実施例及び比較例の上澄み水濁度の結果、フロック形成、フロック沈降性、上澄み水外観の評価結果を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、有機凝結剤A、B及びCを添加した実施例2−1、2−2及び2−3においては、濁度が低減した良好な処理水が得られた。特に、有機凝結剤B及びCを添加した実施例2−2及び2−3では、上澄み水濁度は1度未満となった。一方、有機凝結剤Dを添加した比較例2は凝集不良を起こし、上澄み水濁度を十分に低減させることはできなかった。
【0051】
実施例2−1、2−2及び2−3で用いた有機凝結剤A〜Cは、pH6におけるカチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上であり、比較例2で用いた有機凝結剤Dは、pH6におけるカチオンコロイド当量値が6.0meq/g未満である。したがって、pH6におけるカチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上の有機凝結剤が、石炭微粒子を含有する排水の処理に効果的であると言える。
【0052】
(実施例3)
石炭微粒子含有排水として、SS濃度を510、1,500、2,700、5,700及び11,000mg/Lに調整した貯炭場排水A〜Eを用いた。当該貯炭場排水A〜Eの濁度は400、1,100、1,900、4,000及び7,500度であった。
【0053】
貯炭場排水A(SS濃度510mg/L、濁度400度)300mLをガラスビーカーに入れ、有機凝結剤Bを2mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水の濁度を測定した。貯炭場排水B(SS濃度1,500mg/L、濁度1,100度)、貯炭場排水C(SS濃度2,700mg/L、濁度1,900度)、及び貯炭場排水E(SS濃度11,000mg/L、濁度7,500度)についても同様に有機凝結剤Bを2mg/L添加した条件について試験した。また、貯炭場排水D(SS濃度5,700mg/L、濁度4,000度)については、有機凝結剤Bを0.8mg/L添加した条件について試験した。
【0054】
図2は、実施例3における有機凝結剤の添加量(有機凝結剤濃度/排水のSS濃度)に対する上澄み水濁度の結果を示す図である。
図2に示すように、有機凝結剤の添加量を、有機凝結剤濃度/排水のSS濃度の比で0.0002〜0.001の範囲とすることで、上澄水濁度は1度未満となった。この結果から、有機凝結剤の添加量は、有機凝結剤濃度/排水のSS濃度の比で0.0002〜0.001の範囲が適切であると言える。
【0055】
また、この結果から、排水のSS濃度が変動しても、有機凝結剤の少量添加で、安定した処理が期待できると考えられる。例えば、貯炭場排水を有機凝結剤添加量1mg/Lで処理する場合、排水のSS濃度は以下の式から計算できる。
有機凝結剤添加量÷(有機凝結剤濃度/排水SS濃度)
ここで、より良好な処理が可能な有機凝結剤濃度/排水SS濃度は0.0002〜0.001の範囲なので、排水SS濃度は1,000mg/L(1÷0.001=1,000)〜5,000mg/L(1÷0.0002=5,000)となる。したがって、排水のSS濃度が1,000〜5,000mg/Lの範囲で変動しても、有機凝結剤を1mg/L添加するだけで、良好な処理が期待できる。
【0056】
(実施例4−1〜4−7)
石炭微粒子含有排水として、SS濃度11,000mg/L、濁度7,500度、pH7.5の貯炭場排水を用いた。
【0057】
上記貯炭場排水300mLをガラスビーカーに入れ、有機凝結剤Bを2mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌し、排水中の石炭微粒子をフロック化させた。次に、塩酸を添加して、pHを4〜10の範囲に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水(処理水)の濁度を測定した。
【0058】
表3に、実施例の上澄み水濁度の結果、フロック形成、フロック沈降性、上澄み水外観の評価結果を示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、実施例4−1〜4−7のいずれも、上澄み水濁度は十分に低減し、良好な処理が可能であったが、特に、反応pHを4〜9に調整した実施例4−1〜4−6においてより良好な処理が可能となり、pH5〜7に調整した実施例4−2〜4−4において更により良好な処理が可能となった。この結果から、有機凝結剤添加による石炭微粒子含有排水の処理においては、非常に広いpH範囲において、安定した処理が可能であることが明らかとなった。よって、従来技術と比較してpH調整剤の使用量を削減でき、石炭微粒子を含有する排水の経済的な処理が期待できる。