特許第6798867号(P6798867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798867
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/56 20060101AFI20201130BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20201130BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C02F1/56 K
   C02F1/52 K
   B01D21/01 101A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-243544(P2016-243544)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-94524(P2018-94524A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島村 祐司
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−133229(JP,A)
【文献】 特開2016−013541(JP,A)
【文献】 特開2016−187790(JP,A)
【文献】 特開2009−125649(JP,A)
【文献】 特開2016−013540(JP,A)
【文献】 特開平11−028499(JP,A)
【文献】 特開2003−053400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52−1/56
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭微粒子を含有する排水に有機凝結剤を添加して凝集処理を行う排水処理方法であって、
前記有機凝結剤は、カチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上である有機凝結剤を含み、
前記有機凝結剤の添加量は、前記排水のSS濃度に対する前記有機凝結剤の濃度の比で、0.0002〜0.001の範囲であることを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記排水への無機凝集剤の添加量は、前記排水のSS濃度に対する前記無機凝集剤の濃度の比で、0.05以下であることを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
石炭微粒子を含有する排水に有機凝結剤を添加して凝集処理を行う排水処理装置であって、
前記有機凝結剤は、カチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上である有機凝結剤を含み、
前記有機凝結剤の添加量は、前記排水のSS濃度に対する前記有機凝結剤の濃度の比で、0.0002〜0.001の範囲であることを特徴とする排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭微粒子を含有する排水の処理方法及び処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭微粒子を含有する排水の一例として、石炭火力発電所における貯炭場排水が挙げられる。石炭火力発電所では、石炭貯蔵のため、施設内に貯炭場が設けられる。野積み式の貯炭場の場合、主に雨水によって石炭微粒子を含有した黒色の貯炭場排水が発生する。石炭微粒子は貯炭場排水中に分散しているため、自然沈降による固液分離は困難であり、本排水をそのまま放流すると環境汚染の原因となる。
【0003】
そこで、従来、排水に硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)または塩化第二鉄などの無機凝集剤を添加して、濁度を低減する凝集沈殿処理が適用されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、排水貯槽に溜まった貯炭場排水を中和する中和槽と、中和された排水に凝集剤を加えて石炭微粒子を凝集する凝集槽を設けた水処理施設が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、石炭微粒子の沈降速度を高めるため、排水のpHを4以下に調整後、凝集剤を添加する処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−75949号公報
【特許文献2】特開2003−170173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術によって石炭微粒子を含有する排水を処理する場合、排水のSS濃度が変動すると、凝集剤添加量が不足して、処理水の濁度を十分に低減させることができないため、過剰の無機凝集剤を排水に添加して、処理を安定化させる対策を講じる必要がある。さらに、無機凝集剤を使用した従来の排水処理では、pH調整剤を使用して、凝集処理に適したpHに調整する必要があるが、一般的に無機凝集剤添加量が多くなる程、pH調整剤使用量も増大する。このように、従来技術では、処理水の濁度を低減するためには、多量の薬品が必要となるため、排水処理費用の増加に繋がることが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、石炭微粒子の凝集処理に使用する薬品の使用量を抑えながら、処理水の濁度を低減することができる排水処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、石炭微粒子を含有する排水に有機凝結剤を添加して凝集処理を行う排水処理方法であって、前記有機凝結剤は、カチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上の有機凝結剤を含み、前記有機凝結剤の添加量は、前記排水のSS濃度に対する前記有機凝結剤の濃度の比で、0.0002〜0.001の範囲であることを特徴とする。
【0011】
前記排水処理方法において、前記排水への無機凝集剤の添加量は、前記排水のSS濃度に対する前記無機凝集剤の濃度の比で、0.05以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態は、石炭微粒子を含有する排水に有機凝結剤を添加して凝集処理を行う排水処理装置であって、前記有機凝結剤は、カチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上の有機凝結剤を含み、前記有機凝結剤の添加量は、前記排水のSS濃度に対する前記有機凝結剤の濃度の比で、0.0002〜0.001の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、石炭微粒子の凝集処理に使用する薬品の使用量を抑えながら、処理水の濁度を低減することができる排水処理方法及び排水処理装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】実施例3における有機凝結剤の添加量(有機凝結剤濃度/排水のSS濃度)に対する上澄み水濁度の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す排水処理装置1は、凝集装置10、沈殿槽12を備えている。凝集装置10は、反応槽14、有機凝結剤添加ライン16を備えている。反応槽14には、撹拌機18が設置されている。
【0017】
図1に示すように、反応槽14の排水入口には、排水流入ライン20が接続されている。また、反応槽14の薬剤入口には、有機凝結剤添加ライン16が接続されている。また、反応槽14の排水出口には、排水排出ライン22の一端が接続され、沈殿槽12の排水入口には、排水排出ライン22の他端が接続されている。また、沈殿槽12の処理水出口には、処理水排出ライン24が接続され、沈殿槽12の汚泥排出口には、汚泥排出ライン26が接続されている。
【0018】
本実施形態に係る排水処理装置1の動作の一例について説明する。
【0019】
石炭微粒子を含む排水が、排水流入ライン20を通り、反応槽14に供給されると共に、カチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上である有機凝結剤が有機凝結剤添加ライン16から反応槽14に供給される。反応槽14内の排水及び有機凝結剤は、撹拌機18により撹拌される。石炭微粒子は粒子表面の負電荷によって互いに反発している状態であるが、有機凝結剤は分子構造中に正電荷を有するカチオン密度が高い化合物であるため、排水に有機凝結剤が添加されることで、石炭微粒子の負電荷が荷電中和され、粒子同士の反発が抑制される。ここで、本来、有機凝結剤には自己凝集性の作用が無いため、良好な固液分離のためには有機凝結剤と共に無機凝集剤の添加が必須であると考えられるが、カチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上の有機凝結剤を用いることで、無機凝集剤を添加しなくても、石炭微粒子は自己凝集してフロック化される。この知見は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0020】
フロック化した石炭微粒子を含む排水は、反応槽14から排水排出ライン22を通り、沈殿槽12に供給される。沈殿槽12内では、処理水とフロック化した石炭微粒子に固液分離される。そして、濁度が低減された処理水が、処理水排出ライン24から排出され、フロック化した石炭微粒子が汚泥として、汚泥排出ライン26から排出される。
【0021】
以下に、排水処理条件等について詳述する。
【0022】
処理対象である石炭微粒子を含む排水は、如何なる由来の排水でもよく、例えば、石炭火力発電所における貯炭場排水、排水処理設備における粉末活性炭含有水等が挙げられる。
【0023】
使用する有機凝結剤は、カチオンコロイド当量値が6meq/g以上の有機凝結剤であれば特に制限されるものではない。ここで、カチオンコロイド当量値とは、化合物中における正電荷の強さを表す指標であり、数値が大きくなるほど正電荷の強い化合物となる。カチオンコロイド当量値は、コロイド滴定法によって求められる。具体的には、有機凝結剤を分散させた水溶液をポリビニル硫酸カリウム溶液で滴定する。滴定時の溶液pHは6とする。
【0024】
カチオンコロイド当量値が6meq/g以上の有機凝結剤は、例えば、下記構造式(A)で表されるジメチルアミン・エピクロロヒドリン縮合物(カチオンコロイド当量値7.5meq/g)、下記構造式(B)で表されるポリエチレンイミン(カチオンコロイド当量値6.6meq/g)、下記構造式(C)で表されるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(p−DADMAC、カチオンコロイド当量値6.2meq/g)等が挙げられる。有機凝結剤は、1種単独でも2種以上を組み合せても良い。
【0025】
【化1】
【化2】
【化3】
【0026】
有機凝結剤は、カチオンコロイド当量値が6meq/g以上の有機凝結剤に加え、カチオンコロイド当量値が6meq/g未満の有機凝結剤を含んでいてもよい。カチオンコロイド当量値が6meq/g未満の有機凝結剤は、例えば、下記構造式(D)で表されるジシアンジアミン・ホルムアルデヒド縮合物(カチオンコロイド当量値5.6meq/g)等が挙げられる。
【0027】
【化4】
【0028】
有機凝結剤の添加量は、所望の処理水濁度が得られるように適宜設定されればよいが、例えば、排水のSS濃度に対する有機凝結剤の濃度の比(有機凝結剤濃度/排水のSS濃度)で、0.0002〜0.001の範囲であることが好ましい。上記範囲とすることで、処理水の濁度をより低減することが可能となる。本実施形態の排水処理方法における有機凝結剤の添加量は、従来の排水処理方法における無機凝集剤の添加量に比べて、非常に少ない量でよい。すなわち、本実施形態の排水処理方法では、非常に少量の有機凝結剤を排水に添加すれば、処理水の濁度を低減させることができるため、薬品使用量の削減を図ることが可能となる。
【0029】
本実施形態の排水処理方法は、従来の無機凝集剤を使用した排水処理方法と比べて、非常に幅広いpH範囲で、良好な凝集処理を可能とする。本実施形態において、凝集反応の際のpHは、良好な凝集処理を行う観点等から、例えば、4〜10の範囲であることが好ましく、4〜9の範囲であることがより好ましく、5〜7の範囲であることがさらにより好ましい。石炭微粒子を含有する排水のpHは、石炭種によって4〜10程度まで変動する場合があるが、本実施形態の排水処理方法によれば、上記pH範囲においても安定した凝集処理を行うことができるため、pH調整剤添加によるpH調整を必ずしも行う必要はない。この観点からも、本実施形態の排水処理方法によれば、薬品使用量の削減を図ることが可能となる。
【0030】
本実施形態の排水処理方法は、無機凝集剤の添加を制限するものではないが、無機凝集剤の添加量は、排水のSS濃度に対する無機凝集剤の濃度比で、0.05以下(無機凝集剤の添加無しも含む)であることが好ましい。無機凝集剤の添加量が上記範囲を超える場合、上記範囲を満たす場合と比較して、処理水濁度が高くなる場合がある。なお、無機凝集剤としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられる。
【0031】
本実施形態では、より良好な凝集処理を行うため、高分子凝集剤を添加してフロック径を成長させることが望ましい。良好な凝集処理を行う点で、石炭微粒子と有機凝結剤との凝集反応が完了した後に添加することが好ましい。具体的には、反応槽14の後段に第2反応槽を設置し、第2反応槽に高分子凝集剤を添加する。
【0032】
高分子凝集剤にはノニオン性高分子凝集剤またはアニオン性高分子凝集剤等、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドプロパンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる。高分子凝集剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
高分子凝集剤の添加量に特に制限はないが、例えば、0.5〜10mg/Lであることが好ましい。また、高分子凝集剤添加後は撹拌速度を緩やかにし、フロック径を成長させることが好ましい。
【0034】
凝集処理後の排水の固液分離は、沈殿槽12に限定されるものではない。固液分離方法は、例えば、沈殿処理、ろ過、膜分離等が挙げられる。沈殿処理は、沈殿槽を用いた自然沈殿処理以外に、遠心分離器等を用いた強制沈殿処理でもよい。また、ろ過処理も特に制限はなく、例えば、重力式、圧力式、サイフォン式、上向流式、ろ材循環式、連続ろ過式などのろ過器と、アンスラサイト、砂、けい砂、砂利、活性炭、プラスチック等のろ材を用いてろ過することができる。膜分離処理も特に制限はなく、例えば、精密ろ過膜、限外ろ過膜等を用いて膜分離することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例及び比較例で処理する石炭微粒子含有排水として、SS濃度11,000mg/L、濁度7,500度、pH7.5の貯炭場排水を用いた。
【0037】
(実施例1−1)
上記貯炭場排水300mLをガラスビーカーに入れ、ジメチルアミン・エピクロロヒドリン縮合物(以下、有機凝結剤Aと称する。カチオンコロイド当量値は7.5meq/g。)を12mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌し、排水中の石炭微粒子をフロック化させた。次に、塩酸を添加して、pHを6.0に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水(処理水)の濁度を測定した。
【0038】
(実施例1−2)
上記貯炭場排水に有機凝結剤Aを12mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌した後に、PAC(Al10%)を150mg/L添加したこと以外は実施例1−1と同様の処理を行い、上澄み水の濁度を測定した。
【0039】
(比較例1)
上記貯炭場排水にPAC(Al10%)を300mg/L添加し、塩酸を加えてpH6.0に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後は、実施例1−1と同様の処理を行い、上澄み水の濁度を測定した。
【0040】
表1に、実施例及び比較例の上澄み水濁度の結果を示す。また、実施例及び比較例の処理におけるフロック形成、フロック沈降性、上澄み水外観を以下の基準により評価した。評価基準は以下の全ての実施例及び比較例も同様である。
・フロック形成
良好:概ね2mm以上のフロックが形成される。
やや不良:1mm前後のフロックが形成される。
不良:フロックが形成されない。
・フロック沈降性
良好:撹拌終了後、3分以内にほとんどのフロックが沈降する。
やや不良:撹拌終了後、10分以内にほとんどのフロックが沈降する。
不良:撹拌終了後、10分経過しても上澄み水にフロックが残存する。
・上澄み水外観
良好:30分静置後の上澄み水は清澄で濁度がほとんど無い。
やや不良:30分静置後の上澄み水にやや濁度が残存する。
不良:30分静置後の上澄み水に濁度が残存する。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、カチオンコロイド当量値が7.5meq/gである有機凝結剤Aを添加した実施例1−1及び1−2と、有機凝結剤Aを添加していない比較例1の上澄水濁度を比較すると、実施例1−1及び1−2の方が良好であった。また、実施例は、比較例1より少ない薬品使用量で、上澄み水濁度を低減させることができた。
【0043】
さらに、実施例1−1と1−2の上澄水濁度を比較すると、無機凝集剤を添加していない実施例1−1の方が良好であった。本来有機凝結剤には自己凝集性の作用が無いため、通常は実施例1−2のように有機凝結剤と無機凝集剤とを併用した方が、上澄み水の濁度を低減する効果が高いと考えられるが、実施例1−1が最良となった。この結果は、発明者らによって見出された新規な知見である。
【0044】
(実施例2−1)
上記貯炭場排水300mLをガラスビーカーに入れ、有機凝結剤Aを6mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌し、排水中の石炭微粒子をフロック化させた。次に、塩酸を添加して、pHを6.0に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水(処理水)の濁度を測定した。
【0045】
(実施例2−2)
有機凝結剤Aをポリエチレンイミン(以下、有機凝結剤Bと称する。カチオンコロイド当量値は6.6meq/g。)に変更したこと以外は、実施例2−1と同様の処理を行った。
【0046】
(実施例2−3)
有機凝結剤Aをポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、有機凝結剤Cと称する。カチオンコロイド当量値は6.2meq/g。)に変更し、添加量を6mg/Lから12mg/Lに変更したこと以外は、実施例2−1と同様の処理を行った。
【0047】
(比較例2)
有機凝結剤Aをジシアンジアミン・ホルムアルデヒド縮合物(以下、有機凝結剤Dと称する。カチオンコロイド当量値は5.6meq/g。)に変更したこと以外は、実施例2−1と同様の処理を行った。
【0048】
表2に、実施例及び比較例の上澄み水濁度の結果、フロック形成、フロック沈降性、上澄み水外観の評価結果を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、有機凝結剤A、B及びCを添加した実施例2−1、2−2及び2−3においては、濁度が低減した良好な処理水が得られた。特に、有機凝結剤B及びCを添加した実施例2−2及び2−3では、上澄み水濁度は1度未満となった。一方、有機凝結剤Dを添加した比較例2は凝集不良を起こし、上澄み水濁度を十分に低減させることはできなかった。
【0051】
実施例2−1、2−2及び2−3で用いた有機凝結剤A〜Cは、pH6におけるカチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上であり、比較例2で用いた有機凝結剤Dは、pH6におけるカチオンコロイド当量値が6.0meq/g未満である。したがって、pH6におけるカチオンコロイド当量値が6.0meq/g以上の有機凝結剤が、石炭微粒子を含有する排水の処理に効果的であると言える。
【0052】
(実施例3)
石炭微粒子含有排水として、SS濃度を510、1,500、2,700、5,700及び11,000mg/Lに調整した貯炭場排水A〜Eを用いた。当該貯炭場排水A〜Eの濁度は400、1,100、1,900、4,000及び7,500度であった。
【0053】
貯炭場排水A(SS濃度510mg/L、濁度400度)300mLをガラスビーカーに入れ、有機凝結剤Bを2mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水の濁度を測定した。貯炭場排水B(SS濃度1,500mg/L、濁度1,100度)、貯炭場排水C(SS濃度2,700mg/L、濁度1,900度)、及び貯炭場排水E(SS濃度11,000mg/L、濁度7,500度)についても同様に有機凝結剤Bを2mg/L添加した条件について試験した。また、貯炭場排水D(SS濃度5,700mg/L、濁度4,000度)については、有機凝結剤Bを0.8mg/L添加した条件について試験した。
【0054】
図2は、実施例3における有機凝結剤の添加量(有機凝結剤濃度/排水のSS濃度)に対する上澄み水濁度の結果を示す図である。図2に示すように、有機凝結剤の添加量を、有機凝結剤濃度/排水のSS濃度の比で0.0002〜0.001の範囲とすることで、上澄水濁度は1度未満となった。この結果から、有機凝結剤の添加量は、有機凝結剤濃度/排水のSS濃度の比で0.0002〜0.001の範囲が適切であると言える。
【0055】
また、この結果から、排水のSS濃度が変動しても、有機凝結剤の少量添加で、安定した処理が期待できると考えられる。例えば、貯炭場排水を有機凝結剤添加量1mg/Lで処理する場合、排水のSS濃度は以下の式から計算できる。
有機凝結剤添加量÷(有機凝結剤濃度/排水SS濃度)
ここで、より良好な処理が可能な有機凝結剤濃度/排水SS濃度は0.0002〜0.001の範囲なので、排水SS濃度は1,000mg/L(1÷0.001=1,000)〜5,000mg/L(1÷0.0002=5,000)となる。したがって、排水のSS濃度が1,000〜5,000mg/Lの範囲で変動しても、有機凝結剤を1mg/L添加するだけで、良好な処理が期待できる。
【0056】
(実施例4−1〜4−7)
石炭微粒子含有排水として、SS濃度11,000mg/L、濁度7,500度、pH7.5の貯炭場排水を用いた。
【0057】
上記貯炭場排水300mLをガラスビーカーに入れ、有機凝結剤Bを2mg/L添加して、150rpmの回転速度で10分間撹拌し、排水中の石炭微粒子をフロック化させた。次に、塩酸を添加して、pHを4〜10の範囲に調整して、150rpmの回転速度で5分間撹拌した。その後、ノニオン系高分子凝集剤を2mg/L添加して、150rpmの回転速度で1分間撹拌した後、40rpmで5分間撹拌して、フロック径を成長させた。撹拌終了後、30分間静置して、上澄み水(処理水)の濁度を測定した。
【0058】
表3に、実施例の上澄み水濁度の結果、フロック形成、フロック沈降性、上澄み水外観の評価結果を示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、実施例4−1〜4−7のいずれも、上澄み水濁度は十分に低減し、良好な処理が可能であったが、特に、反応pHを4〜9に調整した実施例4−1〜4−6においてより良好な処理が可能となり、pH5〜7に調整した実施例4−2〜4−4において更により良好な処理が可能となった。この結果から、有機凝結剤添加による石炭微粒子含有排水の処理においては、非常に広いpH範囲において、安定した処理が可能であることが明らかとなった。よって、従来技術と比較してpH調整剤の使用量を削減でき、石炭微粒子を含有する排水の経済的な処理が期待できる。
【符号の説明】
【0061】
1 排水処理装置、10 凝集装置、12 沈殿槽、14 反応槽、16 有機凝結剤添加ライン、18 撹拌機、20 排水流入ライン、22 排水排出ライン、24 処理水排出ライン、26 汚泥排出ライン。
図1
図2