【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日:平成28年8月24日〜平成28年8月26日 集会名:2016年度日本建築学会大会[九州] 開催場所:福岡大学 七隈キャンパス 発行日:平成28年7月20日 刊行物:2016年度日本建築学会大会[九州]学術講演梗概集 1281〜1282頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クッション部材の荷重入力側の縁部には、荷重入力側に向かって膨出して少なくとも内側の角部の近傍で前記通気性弾性部材に接触する膨出部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の椅子の座。
前記通気性弾性部材は、前記荷重受け面に沿って延在する表面層と、前記荷重受け面に沿って延在し前記表面層と対向方向で離間して配置された裏面層と、前記表面層と前記裏面層を連結する接続層と、を有し、
前記表面層と前記裏面層とは、複数の線状体がメッシュ状に接合されてなり、
前記接続層は、荷重入力方向に沿う方向に弾性変形可能で前記表面層の線状体と前記裏面層の線状体を連結する複数の線状体によって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の椅子の座。
【背景技術】
【0002】
車両用の椅子として、着座者に快適性を与えるために、座面や、座面に隣接する乗員支持壁に、空気の吹出し部が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の椅子は、送風手段であるファンと椅子の座面や乗員支持壁の間がダクトやチューブによって接続されている。車両に用いられる椅子においては、設置スペースや供給電力をある程度充分に確保することができるため、出力の大きい大型のファンにより、ダクトやチューブを通しても吹き出し部に充分な空気を送出することができる。
【0004】
しかし、室内を移動させることを前提する事務用椅子等の場合、出力の大きい大型のファンを採用することは、スペース的にも電力供給の面でも難しい。そこで、これに対処するための椅子が案出されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
特許文献3に記載の椅子は、座のクッション上に前後方向に沿う凹部が設けられ、その凹部に流路形成部材が配置されるとともに、座の前端部側に流路形成部材に空気を送出するためのファンが設置されている。流路形成部材は、着座者の体重を受け止めつつ、前後方向の空気の流通を許容し得る構造が採用されている。また、座のクッションと流路形成部材の上面を覆う表皮材には、流路形成部材の後部に達した空気を着座者の背部側に吹き出すためのメッシュ状の排出口が形成されている。
【0006】
この椅子の場合、椅子の前端部側に設置されたファンによって座内の流路形成部材を通して排出口に空気を送る構造とされているため、流路形成部材を流れる空気によって座面を冷却することができるとともに、排出口から吹き出した空気を着座者の背部に当てることができる。そして、この椅子の場合、ファンと流路形成部材の間にダクトやチューブが介装されていないため、比較的小出力の小型のフィンを採用しても、着座者の所定位置に空気を当てることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の椅子の場合、ファンから流路形成部材の前部領域に対して、座の荷重入力方向と直交する方向から空気が送出される構造とされているため、流路形成部材の空気流通部の一部が着座者の荷重で狭められると、排出口に向かう空気の流れが阻害されてしまう。このため、充分な送気を得るためにはファンの出力をある程度以上小さくすることができない。また、流路形成部材の空気流通部の一部が着座者の荷重で狭められると、ファンの駆動負荷が大きくなり、騒音の発生原因となり易い。
【0009】
そこで本発明は、送風駆動源の出力の増大や駆動負荷の増大を招くことなく、着座者に円滑な空気の流れを付与することができる椅子の
座、椅子、及び、空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る椅子の
座は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る椅子の
座は、少なくとも着座者からの荷重入力方向に沿う空気の流通を許容する通気性弾性部材と、前記通気性弾性部材の着座者側に面する荷重受け面と相反する側において、着座者から入力される荷重を前記通気性弾性部材を介して支持する荷重支持部と、前記通気性弾性部材側から空気を吸入して吸入した空気を外部に排出する吸気装置と、を備え、前記吸気装置は、前記通気性弾性部材のうちの前記荷重受け面と相反する側の面に吸入部を対向させた状態で前記荷重支持部に支持されている
椅子の座において、前記荷重支持部は、硬質材料から成る支持ベースと、該支持ベースに保持されて前記通気性弾性部材を保持する難通気性のクッション部材と、を備え、前記クッション部材の荷重入力側の面には、前記通気性弾性部材に対向し、かつ、前端部から前記荷重入力側の面に沿うように前記吸気装置側に向かって延出する凹溝が設けられ、前記通気性弾性部材は、前端部が前記クッション部材の前端部領域に達するように前記クッション部材の上面に載置されていることを特徴とする。
【0011】
上記の構成により、送風駆動源である吸気装置が駆動されると、通気性弾性部材の荷重受け面と相反する側の面から吸気装置の吸入部に直接空気が吸入されるようになる。このとき、通気性弾性部材は、荷重入力方向からの空気の流れを許容する構造とされているため、吸気装置には荷重入力方向から小さい流通抵抗をもって空気が吸入される。また、通気性弾性部材は、着座者からの荷重を受けて弾性変形するため、着座者の動きに応じても内部の空気が動く。このため、着座者が姿勢を僅かに変化させたとき等に接触部位で空気の流れを感じ、快適感を得ることができる。
また、この場合、支持ベースに保持された難通気性のクッション部材により、通気性弾性部材の所望の位置からの吸気を妨げることなく、通気性弾性部材とともに着座者を柔軟に受け止めることができる。
また、この場合、通気性弾性部材の荷重受け面に沿う方向に流通しようとする空気の一部が凹部でバイパスして流れるようになるため、通気性弾性部材の広い範囲から空気を吸入装置に容易に吸入することが可能になる。荷重入力側の面に沿って吸気装置側に向かう空気の流れがよりスムーズになる。
【0012】
前記通気性弾性部材の前記荷重受け面のうちの着座者側からの吸気不要領域には、不通気性の吸入抑制シートが配置されるようにしても良い。
この場合、通気性弾性部材の内側に流入した空気が、通気性弾性部材の荷重受け面のうちの吸気不要領域から着座者側に逃げるのを吸入抑制シートによって抑制することができる。したがって、この構成を採用した場合には、通気性弾性部材の上面の所望の位置から空気をより効率良く吸い込むことが可能になる。
【0014】
前記クッション部材の荷重入力側の縁部には、荷重入力側に向かって膨出して少なくとも内側の角部の近傍で前記通気性弾性部材に接触する膨出部が設けられるようにしても良い。
この場合、膨出部の内側の角部の近傍で通気性弾性部材を係止することができる。したがって、この構成を採用した場合には、通気性弾性部材の位置ずれを抑制することができる。したがって、この構成を採用した場合には、吸気装置の吸入部と通気性弾性部材の間の位置関係に変動が生じにくくなるため、吸気装置の吸入効率を常に良好に維持することができる。
【0017】
前記通気性弾性部材は、前記荷重受け面に沿って延在する表面層と、前記荷重受け面に沿って延在し前記表面層と対向方向で離間して配置された裏面層と、前記表面層と前記裏面層を連結する接続層と、を有し、前記表面層と前記裏面層とは、複数の線状体がメッシュ状に接合されてなり、前記接続層は、荷重入力方向に沿う方向に弾性変形可能で前記表面層の線状体と前記裏面層の線状体を連結する複数の線状体によって構成されていても良い。
この場合、通気性弾性部材は、メッシュ状の表面層と裏面層が接続層の複数の線状体で連結されているため、荷重入力方向の空気の流れだけでなく、荷重入力方向と交差する方向の空気の流れも接続層の線状体間の隙間を通して許容する。また、接続層の線状体は、荷重入力方向に沿って弾性変形可能であるため、着座者の着座荷重を受けたときに通気性弾性部材が荷重入力方向に柔軟に弾性変形する。このため、着座者の着座感を良好に保つことができるうえ、着座者の僅かな動きに応じて内部の空気を容易に流動させることができる。
【0018】
本発明に係る椅子は、上記課題を解決するために、
上記のいずれかの座を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る空調システムは、上記課題を解決するために、室内に空調空気を流通させる室内空調装置と、上記椅子を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通気性弾性部材が荷重入力方向からの空気の流れを許容する構造とされているとともに、吸気装置の吸入部に、通気性弾性部材の荷重受け面と相反する側の面から直接空気が吸入されるようになっているため、送風駆動源である吸入装置の出力の増大や駆動負荷の増大を招くことなく、着座者に円滑な空気の流れを付与することができる。
また、本発明によれば、通気性弾性部材が着座者からの荷重を受けて弾性変形するため、着座者が姿勢を僅かに変化させたとき等に、着座者の動きに応じて通気性弾性部材の内部の空気が動き、着座者が接触部位で空気の流れを感じることができる。したがって、着座者の快適感を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明においては、椅子1に正規姿勢で着座した人の正面となる向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子1に正規姿勢で着座した人の上方となる向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子1に正規姿勢で着座した人の左側となる向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。図中の適所には、前方を指す矢印FRと、上方を指す矢印UPと、左側方を指す矢印LHが記されている。
【0023】
図1は、本実施形態に係る椅子1の全体構成を示す側面図であり、
図2は、椅子1を前部斜め上方から見た図である。
これらの図に示すように、本実施形態係る椅子1は、フロアF上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、支基3の上面に取り付けられた座受部材5と、座受部材5に前後位置調整可能に取り付けられ上面に着座者が着座する座4と、支基3から後部上方側に延出して座4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ6と、座受部材5の左右の側部に取り付けられ座4に着座した着座者の腕先が載せ置かれる肘掛け11と、を備えている。
【0024】
脚部2は、キャスタ7a付きの多岐脚7と、多岐脚7の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱8と、を備え、脚柱8の上端部に支基3が水平方向に回転可能に取り付けられている。
【0025】
支基3には、脚柱8の昇降調整機構と背凭れ6の傾動調整機構が内蔵されている。脚柱8のガススプリングの操作部は、支基3内の昇降調整機構に連結されている。
【0026】
背凭れ6は、側面視が略L字状の背凭れ支持フレーム9と、背凭れ支持フレーム9の後上部の前面に取り付けられ座4に着座した着座者の背中を直接支持する背凭れ本体10と、を備え、背凭れ支持フレーム9の前部下端が支基3内の傾動調整機構に連結されている。
【0027】
肘掛け11は、座受部材5の左右の各側部から上方に起立する肘掛け支柱11aと、肘掛け支柱11aの上端部に保持された肘載せ部11bと、を有している。肘載せ部11bの上面は平坦に形成され、その平坦な上面に着座者の腕先が載せ置かれるようになっている。
【0028】
本実施形態においては、座4が着座荷重支持構造体を構成している。
図3は、座4を上方から見た図であり、
図4は、後述する張材16を取り去って座4を前部斜め上方から見た図である。また、
図5は、座4の分解斜視図であり、
図6,
図7,
図8は、それぞれ
図3のVI−VI線沿う断面、VII−VII線沿う断面、VIII−VIII線沿う断面を示した図である。
【0029】
座4は、硬質樹脂または金属から成る支持ベース13と、支持ベース13の上面側に載置されたクッション部材14と、クッション部材14の上面の一部に保持される通気性弾性部材15と、通気性弾性部材15の後縁部の上面を覆う吸入抑制シート25と、クッション部材14、通気性弾性部材15、及び、吸入抑制シート25の外側面と支持ベース13の外周縁部を覆う通気性を有する張材16と、を備えている。本実施形態においては、支持ベース13とクッション部材14が、着座者から入力される荷重を、通気性弾性部材15を介して支持する荷重支持部を構成している。
【0030】
また、座4は、支持ベース13の後部寄りの下面に取り付けられた一対の送風ファン17(吸気装置)と、各送風ファン17の送出部17oに接続された送気誘導ダクト18(誘導通路)と、送気誘導ダクト18の先端部に設けられた吹き出し部19と、を備えている。送気誘導ダクト18と吹き出し部19は、送風ファン17から送出された空気を所定方向に案内して吹き出す誘導吹き出し手段を構成している。
【0031】
支持ベース13は、四隅が緩やかに湾曲した略矩形状の平面視形状に形成され、その幅方向の中央領域が下方に凹状に湾曲している。支持ベース13の上面には、支持ベース13の外形よりも一回り大きく、上下方向に十分な厚みを有する平面視が略矩形状のクッション部材14が載置されている。クッション部材14は、ウレタン等の弾性を有する難通気性の樹脂材料によって構成されている。クッション部材14の外周縁部は、支持ベース13の外周縁部を覆うようにして被着されている。また、支持ベース13の幅方向の中央領域で、かつ前後方向の中央よりも後方側に偏った位置(後縁部)には、上下方向に貫通する一対の貫通孔20が形成されている。一対の貫通孔20は、支持ベース13に左右に離間して形成されている。支持ベース13の下面には、吸入部17iが各貫通孔20に臨むように一対の送風ファン17が取り付けられている。
【0032】
クッション部材14の上面には、
図5に示すように、前後方向の中央よりも後部寄り位置から前端部に亘って平面視が略矩形状の窪み部22が設けられている。窪み部22内の後部寄り位置には、支持ベース13の各貫通孔20に連通する一対の連通孔21が形成されている。各連通孔21は、支持ベース13の貫通孔20の直上位置に上下方向に沿って形成されている。また、窪み部22内には、前後方向に沿って延出する複数の凹溝23(凹部)が形成されている。複数の凹溝23は、クッション部材14の前端部領域から送風ファン17の吸入部17iに向かう空気の流れを案内し、それによって通気性弾性部材15内の空気の前後方向の流通抵抗を低減させる。
【0033】
通気性弾性部材15は、着座者からの荷重入力方向(上下方向)に沿う空気の良好な流通を許容するシート状の部材であり、平面視が略矩形状に形成されている。通気性弾性部材15は、クッション部材14の窪み部22と略同幅でかつ、窪み部22よりも前後方向の長さが長く形成されている。通気性弾性部材15は、後縁部がクッション部材14の一対の連通孔21の上方に配置され、かつ前端部がクッション部材14の前端部に達するようにクッション部材14の上面に載置されている。
【0034】
通気性弾性部材15は、上面が着座者側に面する荷重受け面とされている。支持ベース13の下面に設置された各送風ファン17の吸入部17iは、支持ベース13の貫通孔20とクッション部材14の連通孔21を通して通気性弾性部材の15の後縁部の下面(荷重受け面と相反する側の面)に対向している。
【0035】
本実施形態の場合、通気性弾性部材15の左右の側縁部は、クッション部材14の窪み部22に挿入され係止されている。クッション部材14の上面側の椅子幅方向で窪み部22に隣接する部分(縁部)は、荷重入力側(上方側)に向かって膨出する膨出部24を構成している。左右の各膨出部24は、内側の角部の近傍で通気性弾性部材15の左右の側縁部に当接し、それによって通気性弾性部材15の左右方向の位置ずれを防止している。
【0036】
なお、通気性弾性部材15は、その左右の側縁部の上下方向の厚みが薄い場合には、各膨出部24の上面の一部に載置されるようにしても良い。この場合も、膨出部24の内側の角部の近傍が通気性弾性部材15の側縁部に接触するようにすれば、通気性弾性部材15の左右方向の位置ずれを防止することができる。また、
図4中の符号50は、着座者の着座状態と非着座状態を検出する着座センサである。着座センサ50は、着座者が離席したときに送風ファン17を自動的に停止させるために用いられる。
【0037】
吸入抑制シート25は、通気性弾性部材15の後部側の上面を覆うように、クッション部材14の後縁部に取り付けられている。吸入抑制シート25は、ポレエチレンシート等の不通気性のシート材によって形成されており、通気性弾性部材15の後縁部の上面からの通気性弾性部材15の内部への直接的な空気の流入を抑制する。通気性弾性部材15は、直下の送風ファン17の吸入部17iから吸引力を受けて上下左右前後の様々な方向から空気が流入するが、吸入抑制シート25の配置されている領域では上方からの空気の流入が制限されている。なお、吸入抑制シート25は、上記のポリエチレンシートの他、織り目の小さな織物や、編み目の小さな編物等であっても良い。
【0038】
本実施形態の場合、着座者の臀部の後方側に位置される部分が吸気不要領域とされ、その部分に吸入抑制シート25が設置されている。本実施形態においては、吸入抑制シート25は、通気性弾性部材15の上面のうちの送風ファン17の吸入部17iの直上位置に跨るように設置されている。なお、吸入抑制シート25は、通気性弾性部材15の上面の後縁部に限らず、通気性弾性部材15の上面のうちの吸気が不要な領域であればいずれの部分に設置しても良い。
【0039】
図9は、通気性弾性部材15の一部を拡大して示した図である。
通気性弾性部材15は、
図9に示すように、上面(荷重受面)に沿って延在する表面層26と、上面(荷重受面)に沿って延在し表面層26と対向方向で離間して配置された裏面層27と、表面層26と裏面層27の間にあって両者を連結する接続層28と、を有している。表面層26と裏面層27とは、化学繊維や天然繊維等の各種の繊維から成る線状体29がメッシュ状に接合された比較的に強度の高い層となっている。また、接続層28は、荷重入力方向に沿う方向に弾性変形可能なナイロンやポリエステル等の材料から成る撚っていない複数の線状体30(モノフィラメント)によって構成されており、表面層26の線状体29と裏面層27の線状体29を相互に連結している。
【0040】
通気性弾性部材15は、表面層26と裏面層27のメッシュ構造部が、接続層28の線状体30によって接続されているため、荷重入力方向(上下方向)の空気の流通を許容する。また、通気性弾性部材15は、接続層28の複数の線状体30の間に隙間が設けられているため、荷重入力方向と交差する方向の空気の流通も許容する。
【0041】
支持ベース13の下面に取り付ける送風ファン17は、本実施形態の場合、シロッコ式のファンによって構成されている。送風ファン17の送出部17oは、支持ベース13の下方において左右の側部後方側に向かって開口している。各送出部17oには、送気誘導ダクト18が接続されている。送気誘導ダクト18は、送風ファン17の送出部17oから支持ベース13の下面に沿って先端部が支持ベース13の側方に向かって延出している。送気誘導ダクト18の先端部には、正面視が略L字状の吹き出し部19が接続されている。吹き出し部19は、支持ベース13とクッション部材14及び張材16(座本体部)の左右の側面の外側を回り込んで先端部が上方に延出している。吹き出し部19は、支持ベース13の左右の側縁部の下面にブラケット31(
図3参照)を介して締結固定されている。
なお、本実施形態においては、送風誘導タクト18は、可撓性を有する部材によって構成されている。これにより、座4を座受け部材5に対して前後方向に位置調整するときに、座と一体に移動した送気誘導ダクト18が支基3側の部材と強接触するのを防止することができる。
【0042】
図10は、座4の左側方に配置される吹き出し部19の先端部を左前部上方側から見た図である。
本実施形態の場合、吹き出し部19は、座4の後部寄りの側方位置、より正確には、左右の対応する肘掛け11の肘載せ部11bの後部寄りの下方位置に配置されている。吹き出し部19の先端部は、上方に向かって開口する吹き出し口19aの内側に、吹き出し角度調整用のルーバー58が配置されている。本実施形態の場合、ルーバー58は、左右方向に角度調整可能とされている。また、吹き出し部19の外側側面には、角度調整用の回動操作子55(操作子)が取り付けられている。回動操作子55は、ルーバー58の図示しない回動機構に連係され、着座者による回動操作によってルーバー58の左右方向の指向角度を調整できるようになっている。
また、吹き出し部19の先端部は、図示は省略されているが、椅子1の幅方向に沿う軸心周りに傾動調整可能とされている。これにより、着座者が吹き出し部19の先端部を手で把持し、前後方向に傾動させることによって、吹き出し部19の先端部からの空気の吹出し方向を前後に適正に調整することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、吹き出し部19の吹き出し角度を調整する調整子が回動操作子によって構成されているが、調整子は回動式に限るものでない。また、本実施形態においては、吹き出し部19の空気の吹き出し方向が左右方向と前後方向に調整可能となっているが、吹き出し部19での空気の吹き出し方向は、左右方向と前後方向のいずれか一方のみ調整できるようにしても良い。
【0044】
また、
図2,
図3,
図5,
図6に示すように、左右の一方の吹き出し部19の前面には、風量調整スイッチを兼ねる送風ファン17の電源スイッチ56が設置されている。電源スイッチ56は、例えば、操作ノブをスライド操作するタイプのスイッチによって構成され、ノブの操作位置に応じて、送風ファン17の電源のON,OFFと、送風モード(送風の強弱)の切り換えを行えるようになっている。
【0045】
電源スイッチ56は、図示しない配線によって、
図8に示す送風ファン17の制御装置52に接続されている。送風ファン17と制御装置52には、送風ファン17の駆動電源であるバッテリ51が接続されている。
本実施形態の場合、バッテリ51と制御装置52は、座4の支持ベース13の後縁部側の下面に取り付けられている。なお、バッテリ51や制御装置52の設置位置はこの位置に限るものでなく、例えば、背凭れ6等に設置するようにしても良い。
【0046】
以上のように構成された椅子1は、以下のようにして着座者回りの空調が行われる。
即ち、座4に着座者が着座し、その状態で送風ファン17の電源スイッチ56が入れられると、座4の内部から左右の送風ファン17の吸入部17iに空気が吸入され、その空気が各送風ファン17の送出部17oから送気誘導ダクト18を通って、各吹き出し部19から吹き出される。吹き出し部19から吹き出された空気は着座者の脇部や腕部等に空気流として当てられる。
【0047】
また、送風ファン17の吸入部17iに吸引される空気は、
図8に示すように、支持ベース13の貫通孔20とクッション部材14の連通孔21を通して通気性弾性部材15の下面から吸い入れられる。通気性弾性部材15は、送風ファン17の吸入部17iの直上部位置こそ吸入抑制シート25によって上面側を閉塞されているものの、それよりも前方側の上面は閉塞されずに通気性の張材16によって覆われている。このため、送風ファン17の吸入部17iには、張材16の表面から通気性弾性部材15の内部に流入した空気が吸い込まれる。このとき、張材16のうちの着座者の着座位置の周囲から空気の吸い込みが行われ、このときの空気の流れが着座者に直接爽快感を与えるとともに、衣服や身体の水分の気化による冷却を促し、着座者に冷感を与える。
【0048】
図11は、本実施形態に係る椅子1の執務室60内での使用形態の一例を示す図である。
同図において、符号61は、執務室60内に椅子1とともに設置されたデスク装置であり、符号62は、執務室60の天井CとフロアFに設置された空調吹き出し部(室内に空調空気を流通させる室内空調装置)である。本使用形態においては、椅子1回りの空気の流れがタスク・アンビエント空調におけるタスク空調を構成している。
【0049】
タスク・アンビエント空調は、室内を、作業域(タスク域)とそれ以外の周辺域(アンビエント域)とに区画し、周辺域の熱負荷等を処理するベース空調と、執務空間での人体発熱等を処理するタスク空調とで構成することで、快適性を損なわずに省エネルギー化を図る空調システムである。本使用形態における空調システムは、執務室60内の空調吹き出し部62がベース空調を構成し、着座者回りの空気の流れを提供する椅子1の空気流通部がタスク空調を構成している。
【0050】
本実施形態に係る座4とその座4を用いる椅子1は、通気性弾性部材15が上方(荷重入力方向)からの空気の流通を許容する構造とされているとともに、送風ファン17が吸入部17iを通気性弾性部材15の下面に対向させた状態で座4の支持ベース13に固定されている。このため、送風ファン17の吸入部17iには、通気性弾性部材15の下面(荷重受け面と相反する側の面)から直接空気が吸入される。この結果、通気性弾性部材15の上面側(張材16)から、小さい吸入抵抗でもって空気をスムーズに吸入することが可能になる。
したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、送風駆動源である送風ファン17の出力の増大や駆動負荷の増大を招くことなく、着座者に円滑な空気の流れを付与することができる。
【0051】
本実施形態に係る座4や椅子1は、通気性弾性部材15が着座者からの荷重を受けて弾性変形するため、着座者が姿勢を僅かに変化させたとき等に、着座者の動きに応じて通気性弾性部材15の内部の空気が動き、着座者が接触部位で空気の流れを感じることができる。したがって、本実施形態に係る椅子1や座4を採用した場合には、着座者の快適感をより高めることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る座4や椅子1は、通気性弾性部材15の上面(荷重受け面)のうちの着座者側からの吸気不要領域に、不通気性の吸入抑制シート25が配置されている。このため、通気性弾性部材15の上面の所望の領域から内部に流入した空気が、通気性弾性部材15の上面の吸入不要領域から着座者側に逃げるのを吸入抑制シート25によって抑制することができる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、通気性弾性部材15の上面の所望の位置から空気をより効率良く吸い込むことができる。
特に、本実施形態においては、座4の上面のうちの着座者の臀部の後方に位置される部位に吸入抑制シート25が配置されているため、着座者が座4に長時間着座した場合に腰部から下肢にかけてが冷却され過ぎるのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、送風ファン17の吸入部17iの直上の通気孔21の上方位置に吸入抑制シート25が配置されているため、通気孔21の直上から集中して吸引されるのを防ぎ、所望の領域から空気を分散して吸引することによって座4上で局所的な冷却が生じるのを防止することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る座4や椅子1は、座4の通気性弾性部材15を支持する荷重支持部が、硬質材料から成る支持ベース13と、支持ベース13に保持されて通気性弾性部材15を保持する難通気性のクッション部材14と、を備えた構成とされている。このため、難通気性のクッション部材14により、通気性弾性部材15の所望の位置からの吸気を妨げることなく、通気性弾性部材15とともに着座者の荷重を柔軟に受け止めることができる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、良好な座り心地を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る座4や椅子1は、クッション部材14の窪み部22に隣接する左右の側縁部に、上方(荷重入力側)に向かって膨出して少なくとも内側の角部の近傍で通気性弾性部材15に接触する膨出部24が設けられている。このため、膨出部24の角部の近傍で通気性弾性部材15を係止し、通気性弾性部材15の位置ずれを防止することができる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、椅子1の長期間の使用によっても送風ファン17の吸入部17iと通気性弾性部材15の間の位置関係に変動が生じなくなるため、送風ファン17の吸入効率を常に良好に維持することができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る座4や椅子1は、クッション部材14の上面(荷重入力側の面)に、通気性弾性部材15の下面に対向し、かつ、送風ファン17の吸入部17iに向かって前後方向に延出する複数の凹溝23が形成されている。このため、
図8中の矢印で示すように、通気性弾性部材15の内部を後方に向かって流通しようとする空気の一部は、通気性弾性部材15を凹溝23でバイパスして後方側に良好に流れることになる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、通気性弾性部材15の前方側の広い範囲から空気を送風ファン17に容易に吸入することができる。
特に、本実施形態においては、クッション部材14の窪み部22内の凹溝23と連通する位置に通気孔21の上部が開口しているため、凹溝23から直接通気孔21に向かう空気の流れが生じ吸気抵抗をより低減することができる。
なお、本実施形態においては、クッション部材14の上面に、前後方向に沿う複数の凹溝23が形成されているが、クッション部材14の上面において、前後方向、及び、左右方向に空気のバイパス流れを許容する複数の凹部(凹凸部)を形成するようにしても良い。
【0057】
また、本実施形態に係る座4で用いられる通気性弾性部材15は、表面層26と裏面層27と、表面層26と裏面層27を連結する接続層28と、を有し、表面層26と裏面層27は、複数の線状体29がメッシュ状に接合されて成り、接続層28は、上下方向に弾性変形可能で表面層26の線状体29と裏面層27の線状体29を連結する複数の線状体30によって構成されている。この構成の通気性弾性部材15を採用した場合、メッシュ状の表面層26と裏面層27が接続層28の複数の線状体30で連結されているため、上下方向(荷重入力方向)の空気の流通だけでなく、前後方向や左右方向(荷重入力方向と交差する方向)の空気の流通も接続層28の線状体30間の隙間を通して容易に許容することができる。
【0058】
さらに、本実施形態の通気性弾性部材15は、接続層28の線状体30が、上下方向(荷重入力方向)に沿って弾性変形可能であるため、着座者が座4に着座したときに上下方向に柔軟に弾性変形する。したがって、本実施形態の通気性弾性部材15を採用した座4においては、着座者の着座感を良好に保つことができるうえ、着座者の僅かな動きに応じて座4の内部の空気を容易に流動させることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る座4や椅子1においては、送風ファン17が座4の中央部ではなく着座者の着座中心から外れた後側の縁部(外周縁部)に配置されている。このため、着座者が座4に着座したときに、着座者の臀部が通気性弾性部材15やクッション部材14を介して送風ファン17の設置部の突出部分に底付きしにくくなる。本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、座4における良好な着座感を得ることができる。
【0060】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、座4が荷重支持構造物とされているが、荷重支持構造物は背凭れ6であっても良い。また、上記の実施形態においては、吸気装置である送風ファン17が座4の支持ベース13の下面に取り付けられているが、送風ファン17は支持ベース13の上面側に設置するようにしても良い。
【0061】
また、上記の実施形態においては、座4の支持ベース13の上部にクッション部材14を設置し、そのクッション部材14に通気性弾性部材15を保持させているが、
図12に示すように、支持ベース13上にクッション部材を設置せずに、通気性弾性部材15を複数枚重ねて配置するようにしても良い。なお、
図12においては、上記の実施形態と同一部分に同一符号を付してある。